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トンネル覆工の大変形破壊挙動に 関する実験的研究

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2019

年度 修士論文

トンネル覆工の大変形破壊挙動に 関する実験的研究

首都大学東京大学院

都市環境科学研究科 都市基盤環境学域

学修番号

18851528

森田 倫先

指導教官 砂金 伸治 教授

(2)

目次

1章 序論 ... 1

1.1 研究背景と目的 ... 1

1.2 論文構成 ... 2

2章 ... 3

2.1 覆工およびインバートの概要 ... 3

2.1.1 覆工 ... 3

2.1.2 インバート ... 5

2.2 トンネルに生じる変状と原因 ... 8

2.2.1 変状現象の分類 ... 8

2.2.2 変状原因の分類 ... 8

2.3 トンネルの大変形事例 ... 10

2.3.1 被害事例まとめ ... 10

2.3.2 音中トンネル ... 13

2.3.3 俵山トンネル ... 15

2.4 既往研究 ... 16

2.4.1 鉛直荷重作用時の山岳トンネル覆工の挙動に関する実験的考察10) ... 16

2.4.2 小土被りトンネルの地震被害を想定した模型実験11) ... 17

2.4.3 せん断変形下のRC山岳トンネル覆工の変形破壊挙動に関する数値解析12) .. 18

2.4.4 まとめ ... 19

3章 実験装置及び実験材料 ... 21

3.1 実験装置 ... 21

3.2模擬地山 ... 23

3.3 模型材料の開発 ... 24

3.3.1 模型材料の選定 ... 24

3.3.2 収縮対策 ... 25

3.3.3 簡易4点曲げ試験 ... 27

3.4 模型材料における物性試験 ... 30

3.4.1 1軸圧縮試験 ... 30

3.4.2 割裂引張試験 ... 35

4章 模型実験 ... 37

4.1 実験ケース ... 37

4.2 覆工模型の作製 ... 38

4.2.1 型枠 ... 38

4.2.2 覆工模型作製方法 ... 39

(3)

4.3 実験装置および計測装置 ... 41

4.4 実験方法 ... 42

5章 実験結果 ... 46

5.1 模擬地山の挙動 ... 46

5.2 変形破壊挙動およびひずみ計測結果 ... 47

5.2.1 各ケースの変形破壊挙動およびひずみ計測結果 ... 47

5.2.2 変形破壊挙動およびひずみ計測結果のまとめ ... 59

5.3 画像解析による断面変形計測結果 ... 63

5.3.1 各ケースのマーカーの軌跡 ... 63

5.3.2 断面変形の計測結果 ... 64

5.3.3 断面変形の計測結果のまとめ... 69

6章 結論 ... 70

6.1まとめ ... 70

6.2今後の課題 ... 71

謝辞 ... 72

(4)

1

第 1 章 序論

1.1 研究背景と目的

山岳トンネルは,一般的にNATMと呼ばれる工法で施工される.NATMでは吹付けコン クリートとロックボルトを主要な支保部材とし,周辺地山が持っている支保機能によるグ ラウンドアーチを形成させトンネル内空空間の安定性を確保することを基本としている.

その後,支保工内面に防水とアイソレーション効果を兼ねた防水シート工を施し,最後に 場所打ちコンクリートによる覆工を施工する.

NATM における覆工は,支保工で地山を安定させ,地山の変形が収束した後に施工され る.そのため,覆工に外力は作用しないと考えられ,力学的な性能を付加させないことが 一般的である.しかし,地下水圧が作用する場合や膨張性地山などにより土圧が作用する 場合,地質不良区間などで地震の影響を受ける場合などでは,外力を想定した覆工の設計 を行い,力学的な性能を付加させる.その際は,覆工やインバート厚を増加させたり,イ ンバートの曲率半径を小さくしトンネル断面を力学的に有利な真円に近づけたりすること でトンネルの耐力を向上させることが検討される.

これまで大規模な地震の発生や膨張性地山に位置することなどにより想定を超えた大き な外力が作用し,トンネルが大変形・破壊した事例が散見されている.しかしながらその 破壊のメカニズムや大変形から破壊に至るまでの挙動は明らかになっていない.その理由 の一つとして,数値解析や模型実験による再現が難しいことが挙げられる.数値解析では 現在有限要素法(FEM)などの線形解析が主流となっており,ひび割れ発生後の大変形破 壊挙動を再現することができる非線形解析は実務上で行われることが少ない.また,模型 実験では,モルタルやコンクリート製の模型に大変形を生じさせるためには適切な方法で 大きな外力を安定的に,再現よく作用させる必要があり,実験自体の手法や装置の載荷力 といった様々な制約のため困難であることが多いと考えられる.

そこで,本研究では,インバート厚の増加や曲率半径を小さくするといったトンネルの 耐力向上を目的として用いられている設計が,トンネルの大変形時の破壊挙動に与える影 響について,簡易に模型実験ができる模型材料および載荷方法を開発し,開発した手法を 用いてトンネル覆工に大きな外力を作用させる模型実験を実施し,トンネルが大変形した 際の破壊時の挙動を検討することを目的としている.

(5)

2 1.2 論文構成

本論文は6章から構成されている.

1章では,本論文の研究背景と目的,論文の構成について述べる.

2 章では,トンネルに発生する変状およびその要因についてまとめ,実際に発生した トンネルの大変形の事例および既往研究について述べる.

3 章では,模型実験に使用した実験装置と模擬地山,本研究で新たに開発した模型材 料とその物性試験について述べる.

4章では,本研究で実施した実験ケースと模型実験方法について述べる.

5章では,模型実験を実施して得られた結果について述べる.

6章では,前章までの研究結果について考察し,今後の課題について述べる.

(6)

3

第 2 章

2.1 覆工およびインバートの概要

本研究では,山岳トンネルにおける覆工およびインバートに大変形が生じた際の挙動に ついて検討することを目的としている.はじめに,本節では,一般的な山岳トンネルにお ける覆工やインバートの機能と効果,設計の考え方,施工時の対策について示すとともに,

地震や膨張性地山によって外力が作用する場合に現在用いられている対策についてまとめ る.

2.1.1 覆工

1) 覆工の設計の考え方

道路トンネルにおける覆工に要求される機能は,表 2.1.1 に示すように供用性に関する 機能,地山の劣化などの不確定要素に対する安全率付与機能,力学的機能に分類される.

覆工の設計は,覆工に力学的な性能を付加させるか,付加させないかに大別される.

NATM では支保工で地山を安定させ,地山の変形が収束した後に覆工が施工されることが 一般的であるため,覆工に外力は作用しないと考えられ,力学的な性能を付加させないこ とが多い.この場合,覆工に持たせる性能は供用性が主であり,覆工は無筋コンクリート で設計,施工される.ただし,膨張性地山などにより土圧が作用する場合,地質不良区間 などで地震の影響を受ける場合,地下水圧が作用する場合などでは,外力を想定した覆工 の設計が行われ,力学的な性能を付加される.膨張性地山においても覆工は変位が収束し た段階で施工することを基本としているが,変位が収束せず,支保工のみでは土圧に対抗 することが不利と判断した場合には,耐荷性能に優れた鉄筋コンクリートや,じん性に優 れた繊維補強コンクリート等を用いて覆工を早期に施工し,覆工にも荷重を負担させるこ とがある.

2) 覆工の形状

覆工の形状について,トンネル標準示方書(山岳工法編)1では「覆工の形状は所要の内 空断面を包含し,かつ軸力が無理なく伝達され,曲げモーメントが極力小さくなる形状と しなければならない.」としている.覆工の形状は,膨張性地山など不良地山になるのに応 じて力学的に有利な円形に近づく.力学的には円形が最も望ましいと考えられるが,円形 断面は施工性が悪く,不必要な掘削面積が多くなってしまう.

覆工厚は,トンネルの使用目的に応じて標準設計厚が設定されており,標準設計厚は,

著しく地山が不安定な場合や,トンネル坑口付近の場合を除いて,十分な品質管理のもと で施工すれば,一般に覆工に必要な性能を満足する厚さであると考えられている.不良地 山などで覆工厚を増加させることは掘削断面を大きくすることになり,土圧が増加する恐 れがある.そのため,覆工の形状を力学的に有利な形状としたり,覆工材料として鉄筋コ ンクリートや高強度コンクリートを使用して曲げ強度を向上させることや,繊維補強コン

(7)

4

表 2.1.1 道路トンネルにおける覆工の機能 1)

クリートを使用して曲げじん性を向上させることが検討される.

覆工の機能 概 要 備 考

内空断面

保持機能 道路として必要な内空断面を確保する.

防水機能

高い防水性を確保することで,漏水落下による視野障害,路面 の摩擦抵抗の急激な変化,寒冷地におけるつらら・氷結・路面 凍結,側壁の汚れによる快適性の低下,坑内諸設備の絶縁不 良・腐食などを防止する.

耐火機能

火災中の高温による地山や支保の著しい損傷を防ぎ,トンネル 崩壊を起こさない.また,火災鎮火後にわずかな補修補強によ って再使用できる.

保守管理 機能

覆工表面を目視観察しやすく保つことで,供用中のトンネル変 状の兆候を早期に発見する.

内装機能

覆工面を清掃し側壁の輝度を高く保つことで,前方の障害物の 視認性向上,心理的圧迫感の軽減を図る.また,換気において は通気抵抗を小さく抑え効率を上げる.

トンネル内 施設保持機

照明・換気・非常用などの諸設備,およびこれらを機能させる ための電力・信号ケーブル類の取り付け性を確保する.

余力保持 機能

支保品質の不均一性や経時劣化,地山の経時劣化や緩み,ある いは異常降雨に起因する水圧上昇など将来の不確定な理由に より覆工に追加する荷重が作用することを想定して,想定荷重 に耐えうる余力を保持する.また、あらかじめ想定することが 難しい地震等の荷重に対しても余力を保持する機能を有する.

変形性能 保持機能

破壊に至るまでの形状の保持機能が高く,覆工構造の崩壊が一 気に進展しない.また、あらかじめ想定することが難しい地震 等の荷重が作用した場合についても変形保持機能を有する.

構造的 安定機能

インバートや梁盤コンクリートを設置することで、側圧の増 大、偏圧の作用、覆工脚部の支持力不足に対する構造的安全性 を確保する.

地山劣化防止

付加外力 支持機能

覆工施工後の水圧の回復,切盛土・双設トンネル・近接施工な どの予め確定している理由により土水圧が変化し,外力が作用 する場合に,これを支持する.内水圧、外水圧、グラウト注入 圧について構造物としての安定性を保持する.地震荷重を載荷 して検討する場合に地震時の安定性を保持する.

都 市 部 の ト ン ネ ル や 土 被 り の 薄 い 土 砂 ト ンネル(特殊地 山)

支保工補完 機能

トンネルの変形が収束しない状態で覆工を施工し,支保工に追 加してトンネルの安定に必要な拘束力を与える.

膨 張 性 地 山 な ど 変 位 や 荷 重 が 大 き い 地 山

(特殊地山)

(8)

5 2.1.2 インバート

1) インバートの力学的な効果

(1)構造部材としての力学的な機能

インバートはコンクリートと鋼材等で構成される部材であり,軸圧縮,せん断,および 曲げに抵抗する.また,インバートと地山との境界面で,主に鉛直方向の地圧に抵抗する.

a)軸圧縮抵抗

コンクリートの軸圧縮耐力や剛性によって,インバート外面に作用するおもに内空方面 の均一な外力やアーチ部の覆工を介して作用する外力に起因して生じる軸力および変形に 抵抗する.

b)せん断抵抗

コンクリート及び補強材のせん断耐力や剛性によって,局部的なせん断力やせん断変形 に抵抗する.

c)曲げ抵抗

コンクリートおよび補強材の曲げ耐力や剛性によって,局部的な押出し等に起因する曲 げモーメントに抵抗する.

(2)インバートの力学的な効果

インバートは,(1)に示した構造部材としての機能が複合的に組み合わさることで,以 下のような力学的な機能を発揮する.なお,インバートはここに挙げた力学的な効果以外 に,掘削面を被覆することで空気との接触による地山の風化,あるいは湧水との接触によ る地山の軟化や土粒子の流出等を防止する効果も期待できる.

断面閉合効果

アーチ状の支保工や覆工と逆アーチ状のインバートによりトンネル支保工増がリング状 に断面閉合される.これにより部材発生応力が圧縮主体となり,コンクリートの圧縮強度 を生かすことができるようになる.この結果,図 2.1.2 に示すように土砂地山や膨張性地 山等で想定される地圧に対する耐荷力を増強する効果を期待できる.また.覆工に適切な 剛性を付与することで,トンネルの内空変位を抑制できる.

水平ばり効果

側圧が大きい地山では水平方向の変位が卓越して許容変位量を超過したり,あるいはア ーチの部材に大きな曲げモーメントが発生する場合がある.このような場合に設置するイ ンバートは,図 2.1.2 に示すように水平方向の剛な圧縮ばりとして荷重に耐え,トンネル の水平変位やアーチ部材への曲げモーメントの発生を抑制する効果が期待できる.上半掘 削段階において仮インバートとして施工される場合もある.

内圧付与効果

土砂地山や膨張性地山等大きな地圧により変形が大きくなる地山では,図 2.1.2 に示す ようにインバートが反力として半径方向外向きの拘束力σiを地山に与えることで軸差応力

(9)

6

が小さくなり,安定性が増す.また,インバート下部の地山を三軸状態に保つことで地山 の強度低下を抑制する効果を期待できる.

弱層の補強効果

図 2.1.2 に示すように,トンネル断面を横切る断層破砕帯等の弱層をインバートが支持 することにより,地山内の弱層に起因する変形等の影響を低減する効果が期待できる.

設置面積拡大効果

図 2.1.2 に示すように,支保工や覆工の脚部から伝達される主に鉛直方向大きな荷重を 設置面積の大きいインバート全体で地山に分散させることによって,変形係数が小さい,

あるいは強度が小さい地山におけるトンネルの沈下を抑制する効果が期待できる.

2) インバートの設計

インバートは覆工および支保工と一体となって,トンネル全体を安定させるものである.

大きな作用荷重あるいは偏土圧等が予想される場合には,インバートの曲率半径を小さく するなどの対策が取られる.ただし,この場合は掘削量が増加し施工性も悪くなるので,

インバートへの鉄筋コンクリート,鋼繊維補強コンクリートの使用や一次インバートの設 置等の検討も併せて行われる.インバートの形状,覆工との取り付け部の位置関係等は,

通常は過去の施工実績等から定められるが.大断面のトンネルの場合や強大な土圧が作用 する場合,土被りの小さい未固結地山の場合等については,別途,強度や厚さの検討がな される.

インバートの設計厚は,道路トンネルでは表 2.1.2 に示すような標準支保パターンの一 部として地山等級に基づき定められている.不良地山になるほど設計厚は大きくなる.

図 2.1.2 インバートの力学的な機能3)

(10)

7

表 2.1.2 道路トンネルの(中断面)の支保パターン1)

(11)

8 2.2 トンネルに生じる変状と原因

前節でまとめたように,山岳トンネルはこれまでの施工事例による経験的実績や数値解 析により十分な安全率が確保された設計がされているものの,様々な要因により変状が発 生することがある.そこで,本節では,トンネルに発生する変状現象とその要因について まとめる.

2.2.1 変状現象の分類

トンネルの変状メカニズム4)では,トンネルの変状を「完成したトンネルにおいて外力の 発生,支持力不足による沈下,材料劣化,設計・施工等に起因して覆工等に変形,ひび割 れ,剥落,漏水などが生じ,トンネルに要求される機能が阻害されている状態,あるいは,

放置すればその恐れがある状態.」と定義している.変状現象は多様であり,覆工に現れる 覆工のひび割れ・剥離・剥落だけでなく,路盤,坑門および周辺地山などにも変状が現れ ることがある.

2.2.2 変状原因の分類

トンネルの変状原因は図 2.2.1 に示すように,外因(外力や環境等の外的な要因)と内因 (材料や設計,施工等に起因する構造的な要因)に大別される.外因は図 2.2.2 のように細 分化できる.トンネルの変状現象の多くは複数の原因によって生じるため,外因と内因の 組み合わせによって変状原因を推定しなければならない.

本研究では,特に大きな変状,例えばインバートの盤ぶくれや覆工の崩落について着目 する.これらの変状が発生する原因としては,膨張性地山による土圧や地震により作用す る大きな外力を想定している.

図 2.2.1 トンネルの変状の分類4)

(12)

9

図 2.2.2 外因の分類4)

(13)

10 2.3 トンネルの大変形事例

2.2 節ではトンネルに生じる変状およびその原因についてまとめたが,盤ぶくれや覆工の 崩落といった大きな変状の発生要因には,膨張性地山や地震が関係している場合が多い.

そこで,これまでに膨張性地山や地震による外力によって大きな変状が発生した事例につ いてまとめる.その中でも特に大きな変状が発生した事例として,音中トンネルと俵山ト ンネルの事例を示す.

2.3.1 被害事例まとめ

本項では,膨張性地山に位置することや地震による外力などにより山岳トンネルに大き な変状が発生した事例についてまとめる.

表 2.3.1に膨張性地山に位置することにより発生した変状事例についてまとめた.

表 2.3.1 膨張性地山により発生した変状事例

(14)

11

表 2.3.2に地震により発生した被害事例についてまとめた.

表 2.3.2 地震により発生した被害事例

(15)

12

表 2.3.2にまとめたトンネル以外にも,地震による被害を受けたトンネルが存在する.

地震による山岳トンネルの主な被害モードは,土木研究所資料5によると,図 2.3.1に示 すようなタイプに大別されることが示されている.いずれのケースも,地山の変形に対し て覆工が追随することができず,覆工に被害が生じたものと考えられている

図 2.3.1 地震による山岳トンネルの主な被害モードと,推定される主な被害要因5)

(16)

13 2.3.2 音中トンネル

1) 概要

音中トンネルは,延長4,686mのトンネルである.地質は中部蝦夷群の泥岩,空知層群の 玄武岩類・砂岩及び下部蝦夷層群の砂岩・泥岩からなり,これらの基盤岩類に時代不詳の 蛇紋岩が貫入している.蛇紋岩が分布する区間は延長460mにわたり,土被りは最大で320m である.

2) 変状状況

蛇紋岩区間では支保工を2重構造(図 2.3.2)とし,インバート半径を3.0R(R:上半半 径)から1.5Rに変更して円形に近づけ,脚部等に応力が集中しない変状とした(表 2.3.3) また早期閉合に瞬結高強度吹付けコンクリートを用いて,初期変位と変位増大の抑制が図 られていた.

上記の支保により掘削が進められていたが,蛇紋岩区間において切羽の押出しと盤ぶく れが確認された.変状は切羽から坑口側に波及し,切羽から延長180m区間で盤ぶくれや 支保工の変形・破断が確認された.変状発生から約50日後に,切羽から約250m付近で約 30mにわたり天端が崩落した.天端崩落箇所から坑口方向の約150m区間で盤ぶくれや支 保工の変状が発生した(写真 2.3.1, 写真 2.3.2 , 写真 2.3.3)

図 2.3.2 蛇紋岩区間の支保構造 8)

表 2.3.3 蛇紋岩分布区間における支保パターンの概要8)

(17)

14 3) 想定される変状発生メカニズム

図 2.3.3に変状の進行概念図を示す.傾斜30°の割れ目に起因して切羽に最初の変状が 発生し,トンネル変位や支保の破壊をきっかけとして地山内の拘束圧の変化に伴い蛇紋岩 に発達する割れ目沿いを主体としてゆるみが進行し,変状が順次坑口側に波及したと想定 されている.蛇紋岩のうち最も脆弱な粘土状~葉片状蛇紋岩が分布する区間では急激に波 及し,高角な割れ目が多く相対的に良好な葉片状蛇紋岩が分布する区間では変状が波及し なかった.

写真 2.3.1 盤ぶくれ状況8) 写真 2.3.2 鋼製支保工の破断8)

写真 2.3.3 天端の崩落状況8)

図 2.3.3 変状の進行概念図 8)

(18)

15 2.3.3 俵山トンネル

1) 概要

俵山トンネルは,延長2,057mNATMトンネルである.本トンネルは2016年に発生 した熊本地震の震源から約17kmに位置する.

2) 変状状況

覆工コンクリートの目地部付近の圧縮破壊によるひび割れや,せん断破壊によるひび割 れ,盤ぶくれ,崩落といった変状が発生した.

スパン167では,写真 2.3.4に示すように覆工コンクリートの崩落により防水シートが 露出した状態となっていた.この区間付近には断層があることが建設時の資料から確認さ れている.覆工が崩落した箇所の支保工は,写真 2.3.5に示すように縦断方向・横断方向 10cm程度のずれが生じていた.

3) 変状対策(復旧工)

内装工(内装版撤去工,内装版設置工)

はく落対策工(形鋼当て板工,ネット設置工,シート接着工,断面修復工)

ひび割れ対策工(止水注入工,ひび割れ注入工)

舗装撤去・復旧工

各種補強工(覆工コンクリート工,インバートコンクリート工,吹付けコンクリート 工)

大きな被害を受けたスパン165の一部,166,167では支保工の入れ替えが行われた.

写真 2.3.4 覆工コンクリートの崩落状況5) 写真 2.3.5 支保工の状況5)

(19)

16 2.4 既往研究

本節では,覆工の変状やひび割れの発生メカニズムに関する研究についてまとめる.

2.4.1 鉛直荷重作用時の山岳トンネル覆工の挙動に関する実験的考察10)

河田らは,トンネル周辺の地山が鉛直圧縮変形した際の覆工に生じる被害,対策工とし て内巻補強工(繊維シート)を実施した際の効果について模型実験を実施し比較している.

図 2.4.1 に模型実験の概要を示す.模型実験の規模は一般的な2車線道路トンネルの約1/20 で,地山は貧配合モルタル,覆工はプレーンモルタルで作製した.内巻補強工は炭素繊維 シート(円周一方向,目付50g/m2)を天端から脚部まで補強した.表 2.4.1に模型実験の 諸条件を示す.

実験結果を図 2.4.2に示す.載荷より側壁部に圧ざによるひび割れが,天端には引張に よるひび割れが発生した.また,側壁とインバートの接続部でひび割れと周辺部の破壊が 生じた.鉛直方向から載荷する方法により,地震による山岳トンネルの被害事例の一つで ある側壁に圧縮破壊が生じる変形モードが確認された.シートによる対策工では,側壁に 生じる圧ざ等を抑制することはできないと考えられることや,インバートの破壊が全体の 耐力に影響を及ぼす可能性があることが述べられている.

図 2.4.1 模型実験の概要10)

表 2.4.1 模型実験の諸条件10)

図 2.4.2 覆工内面のひび割れ状況10)

(20)

17

2.4.2 小土被りトンネルの地震被害を想定した模型実験11)

野城らは,小土被り山岳トンネルの地震時の被害の発生メカニズムを模型実験によって 再現を試みている.実験装置のせん断土槽は2m×2m×3m(図 2.4.3)で,模擬地盤とし て乾燥した珪砂を用いた.トンネル模型は在来工法により建設された新幹線標準断面の 1/20スケールで,モルタル製である(図 2.4.4).載荷は図 2.4.5に示すように変位制御(入 力位置における地盤のせん断ひずみΔ/Hの増加速度0.6%/min)とし,最大でΔ/H6%

に達するまで,交番載荷により静的に行った.トンネル脚部の水平方向の移動を固定して いる.実験ケースを表 2.4.2に示す.

図 2.4.6 に変状展開図を示す.健全なケースではひび割れはアーチ両肩部にのみ発生し ているが,背面空洞や巻厚不足により天端部にもひび割れが発生する.図 2.4.7 にひび割 れ・圧ざの発生時期を示す.ひび割れ・圧ざが発生するときの地盤のせん断ひずみを比べ ると,健全なケースがより大きなひずみで発生している.

この実験により,小土被り山岳トンネルの地震被害を再現し,被害メカニズムや覆工の 破壊が生じる地盤のせん断変形量を把握した.

図 2.4.7 ひび割れ・圧ざの発生時期11) 図 2.4.6 トンネル模型の変状展開図11)

図 2.4.3 実験装置の概要11)

表 2.4.2 実験ケース11)

図 2.4.5 載荷ステップ11)

図 2.4.4 トンネル模型の寸法11)

(21)

18

2.4.3 せん断変形下の RC 山岳トンネル覆工の変形破壊挙動に関する数値解析12)

野城らはせん断変形下のRC山岳トンネル覆工の変形破壊挙動を数値解析により検討し た.全土被り荷重を与えた骨組み解析により常時設計を行った後に,せん断変形を与える FEM解析を行った.

図 2.4.11,図 2.4.12に解析結果を示す.地盤のせん断変形に合わせてトンネルも全体的 にせん断変形した.覆工のアーチ右肩,左下隅角部では負曲げが,アーチ左肩,右下隅角 部では正曲げが発生した.せん断ひずみが大きくなると,曲げモーメントMが大きくなる 隅角部,アーチ左右両肩部,インバート端部などで鉄筋の降伏が生じるが,鉄筋降伏後は 降伏箇所では曲率が増加しなくなり,降伏範囲が広がる傾向が見られた.

図 2.4.11 断面力図(ケース 1)(地山のせん断ひずみ 3%)12)

図 2.4.12 覆工の曲げ損傷の進展12)

図 2.4.10 常時設計による断面12) 図 2.4.8 常時設計12) 図 2.4.9 地震時の検討12)

(22)

19 2.4.4 まとめ

本節では,山岳トンネルの覆工に発生するひび割れ等の変状の発生メカニズムについて 既往の研究をまとめた.模型実験や数値解析で覆工模型に鉛直・水平荷重や,せん断変形 を与えることによって地震被害の発生メカニズムを再現している研究は多く見られる.し かし,いずれの研究も覆工のひび割れや圧ざの発生までを追うものであり,覆工の大変形 や崩壊までを追う研究は見当たらなかった.

本研究ではこれらの研究を参考に,山岳トンネル覆工に地震や膨張性地山によって外力 が作用し大変形が生じる際の挙動について検討する.

(23)

20

【参考文献】

1) 土木学会トンネル工学委員会:2016年制定 トンネル標準示方書[共通偏]・同解説/

[山岳工法編]・同解説,土木学会,2016.8,pp.103-107,111-114149-151,315-317 2) 土木学会トンネル工学委員会:トンネルライブラリー12 山岳トンネル覆工の現状,

土木学会,2002.9,pp.2-8

3) 土木学会トンネル工学委員会山岳トンネルのインバートに関する検討部会:トンネル ライブラリー25 山岳トンネルのインバート―設計・施工から維持管理まで―,土木 学会,2013.11

4) 土木学会岩盤工学委員会トンネル変状メカニズム研究小委員会:トンネルの変状メカ ニズム ,土木学会 2003.9

5) 国立研究開発法人土木研究所 道路技術研究グループトンネルチーム:土木研究所資 料 山岳トンネルの地震時挙動と耐震対策に関する研究報告書,平成293 6) 下村哲雄・北岡治・天野淨行・高橋孝二:トンネルインバート設置区間の供用後にお

ける盤膨れと地質,土木学会第69回年次学術講演会(平成269月),pp.413-414 7) 山田浩幸・高橋俊長・大村修一・高田篤:大土被り蛇紋岩地山における最善管理型二

重支保の設計と施工,第39回岩盤力学に関するシンポジウム講演集,2010.1,pp.375-380 8) 荒川大輔・楡井賢司・今野秀一:蛇紋岩地質の強大な地圧による変状について-一般国

40号音威子府村音中トンネル-,平成27年度

9) 小林暁・松久浩・佐々木博一・堀田靖文・掛田浩司・大塚智久・竹花大介:蛇紋岩地 質の強大な地圧による変状について-一般国道 40 号音威子府村音中トンネル-,北海道 土木技術会トンネル研究委員会,トンネル技術研究会論文集,pp25-34

10)河田皓介・日下敦・砂金伸治:鉛直荷重作用時の山岳トンネル覆工の挙動に関する実 験的考察,土木学会第70回年次学術講演会(平成279月),pp.217-218

11)野城一栄・橘直毅・小島芳之:小土被りトンネルの地震被害を想定した模型実験,土 木学会第63回年次学術講演会(平成209月),pp.667-668

12)野城一栄・赤澤正彦・芳賀康司・陶山雄介・瀧山清美:せん断変形下のRC山岳トンネ

ル覆工の変形破壊挙動に関する数値解析,土木学会第 68 回年次学術講演会(平成 25 9月),pp.507-508

(24)

21

第 3 章 実験装置及び実験材料

トンネルに大変形を生じさせる要因として地震や膨張性地山による土圧などが考えられ る.地震や膨張性地山によるトンネルの変形モードは震源との位置関係や地質構造など 様々な要因で変化するが,本研究では変形モードの一つとして地山にせん断変形が生じる と仮定し,その変形に対してトンネルも追従する場合を想定し,単純せん断変形を与える ことができる実験装置を使用した.また,その実験装置で覆工模型の破壊挙動を確認する ため,低強度な覆工用の模型材料を開発した.本章では実験に用いた実験装置および模擬 地山,模型材料について述べる.

3.1 実験装置

本実験には写真 3.1.1 および図 3.1.1 に示す模擬地山に単純せん断変形を与える実験装 置を使用した.この装置は長方形に固定された反力フレームと,反力フレーム側板上部の 左右 2 ヶ所に取り付けられた載荷棒,さらに載荷棒で押すことで長方形から平行四辺形に 変形し模擬地山に単純せん断変形を与える土槽から構成されている.反力フレームの四隅 及び土槽天板の端部は直角に固定されている.土槽は底部で反力フレームと,また土槽天 板と側板は蝶番で固定されており,長方形(写真 3.1.1 左)から平行四辺形(写真 3.1.1 右)へと変形可能な構造となっている.模擬地山を設置する土槽の寸法は幅 500mm×高さ

560mm×奥行き100mmである.覆工模型は図 3.1.1に示すように土槽側板から2D (D:ト

ンネル径),土槽底板から模型天端までが 3D となる位置に設置し実験を行う.載荷棒は反 力フレーム側板の土槽底面から高さ455mmの位置に取り付けられており,1回転で土槽側

板を1mm(地山のせん断ひずみ約 0.2%)強制変位させることができる.この載荷棒を回

転させて模擬地山及び覆工模型に強制変位を与えて実験を行う.実験中は最大で65mm(地 山のせん断ひずみ14.4%)まで変位を与える.

反力フレームの天板および底板は写真 3.1.2 に示すようなコの字型断面のものにするこ とで曲げに対して十分な強度を有している.写真 3.1.3 に示す載荷棒は鉄製で,載荷時に 変形しない十分な強度を有している.載荷棒は直接外枠に取り付けるのではなく,中央部 にねじ穴をあけた鉄製の金具を取り付け穴に設置し,その金具の中に載荷棒を取り付け,

鉄製金具が反力を反力フレームに伝える構造になっている.

(25)

22

写真 3.1.1 実験装置

写真 3.1.2 反力フレーム天板 写真 3.1.3 載荷棒 図 3.1.1 実験装置概要

(26)

23

表 3.2.1 アルミ棒積層体諸元 3.2 模擬地山

模擬地山の材料としてアルミ棒積層体を用いて未固結粒状体の地山モデルと仮定した.

写真 3.2.1に示すアルミ棒は長さ100mmの円形断面であり,以下のような特徴がある.

アルミ棒積層体は自立するため前後面を壁体で支える必要がなく,試料と前後の壁面間 の摩擦が皆無である.

アルミ棒の比重は2.69であり,砂礫などの比重に類似している.

アルミ棒積層体のせん断試験の結果,内部摩擦角がほぼ30°となり一般の砂の内部摩擦 角に近い結果となっている.

扱いやすく,繰り返し使用しても物性変化がないため再現性が高い

積層体としてのせん断抵抗が小さく変形させやすい

また,アルミ棒の寸法,重量混合比については,アルミ棒を地山材料とする既往の研究 1) を参考にし,直径1.6mm3.0mmのものを重量混合比で32の割合となるよう混合した.

2種類の径を混合した理由は次のとおりである.単一粒径のアルミ棒による地山では,地山 内に粒子が規則配列となる大きな領域がいくつか生じる.この領域境が弱線となり節理系 岩盤のような滑りを生じる.この規則列の滑りが全体の挙動を支配し,未固結粒状体地山 の挙動にならない.よって,弱線となる規則配列の境界の除去するために2種類の径を混合 し,不規則配列の地山となるようにした.

アルミ棒の径については,アルミ棒を用いた粒状体の地質モデルの研究結果2)に基づいて 決定した.この研究では,9,5,3,1.6mm の径のアルミ棒が用いられ,3.0mm1.6mm の組み合わせが砂質地盤のモデルとして良いことが示されており,この文献結果に基づき アルミ棒積層体を用いた実験が多く行われているため,本研究でも同様の径を用いた.表 3.2.1にアルミ棒積層体の諸元を示す.

材質 アルミ合金 長さ(mm) 100

径(mm) φ12=1.6 : 3.0 重量混合比 φ12=3 : 2 単位体積重量(kN/m3) 21.4

粘着力(N/mm2) 0 内部摩擦角(°) 30 写真 3.2.1 アルミ棒

(27)

24 3.3 模型材料の開発

3.3.1 模型材料の選定

過去にトンネル覆工模型モデルとして用いられてきた材料を図 3.3.1に示す.

過去にはセメント系材料が主に用いられてきた.本実験では破壊挙動を確認することが 目的であるため塑性変形をする材料でなければならない.また,縮尺を合わせるために覆 工模型厚は5mm程度を想定している.平成28年に川瀬4)はセメントを石灰石微粉末で体 積置換した低強度モルタルを用いて覆工模型を作製したが,打設及び脱型が困難であるこ とから覆工模型厚を10mmより小さくすることが困難であった.また,覆工模型厚10mm の模型で実験を行ったところ,実験装置の載荷力の制約から破壊挙動を確認することがで きなかった.そこで,低強度かつ薄肉に作製が可能な新たに模型材料を開発することとし た.

低強度の新材料を模索した結果,塗り壁材を主な模型材料として採用した.塗り壁材は 写真 3.3.1に示す家庭化学工業株式会社の「じゅらく壁(聚楽壁) 京壁 1坪用No.3」(以 下京壁)を使用した.その成分を表 3.3.1に示す.京壁単体では乾燥収縮が非常に大きく,

模型作製は困難であるため,収縮を抑制する方法を検討した.

木粉 51%

じゅらく土 28%

繊維質材料 8%

セルロース系接着剤 7%

粉末顔料その他 6%

写真 3.3.1 京壁

表 3.3.1 京壁の成分 図 3.3.1 過去に用いられた模型材料3)

(28)

25 3.3.2 収縮対策

京壁単体では,乾燥収縮が非常に大きく覆工模型の作製が困難であったため,別の材料 を混合させ,収縮を抑制することとした.混合する材料として検討したものはケイ砂7号,

マイカ,豊浦砂である.これらについては京壁と各材料の混合比および水分量を変えたサ ンプルを作製し,収縮量を確認した.

※サンプル作製および収縮量比較手順

1. 京壁と混合する材料をそれぞれ計量し混ぜ合わせる

2. 水をゆっくり加えながら手で練り,模型作製に適した軟らかさにする 3. 型枠の上で延ばす

4. 型枠から取り出す 5. 60℃で24時間炉乾燥

6. 乾燥した材料を型枠に入れて収縮量を確認する

サンプルは金型に合わせて縦9cm,厚さ8mmとし,横幅は5cm以上となるように作製 した.収縮量の比較は,乾燥後に型枠に戻すことができるかどうか(縦方向の収縮量)で 行った.

1) ケイ砂7

表 3.3.2に各サンプルの配合量を示す.写真 3.3.2に示すようにいずれも乾燥後に2~

3mm程度収縮した.ケース12でケイ砂の混合量を変えているが収縮量は同程度であり,

収縮の抑制効果は高くないと考えられる.

表 3.3.2 配合表(ケイ砂)

ケース 3

写真 3.3.2 実験結果(ケイ砂)

ケース 1 ケース 2

(29)

26

ケース 2 写真 3.3.3 実験結果(マイカ)

ケース 1 2) マイカ(雲母)

表 3.3.3表に各サンプルの混合量を示す.写真 3.3.3に示すように,いずれのケースも 収縮が確認されたため,収縮対策には不適当であると判断した.

3) 豊浦砂

表 3.3.4に各サンプルの混合量を示す.実験結果を写真 3.3.4に示す.ケース11mm 程度収縮している.ケース23は水がやや多く軟らかくなってしまったため,乾燥する までにわずかに延びてしまい型枠に戻すことができなかった.しかし,乾燥収縮していた 場合,型枠に戻すことができていたと考えられ,ケース23の乾燥収縮は無いものと判 断した.

乾燥収縮量の比較実験により,収縮対策として京壁に豊浦砂を混ぜて使用することを決 定した.

表 3.3.3 配合表(マイカ)

表 3.3.4 配合表(豊浦砂)

ケース 2

ケース 3

写真 3.3.4 実験結果(豊浦砂)

ケース 1

(30)

27 3.3.3 簡易 4 点曲げ試験

京壁に豊浦砂を混合することで収縮が抑制されることが確認できた.次に,豊浦砂の混 合量を変えた表 3.3.5に示す2ケースで簡易的な4点曲げ試験を行い,それぞれの強度を 比較した.

1)供試体

供試体として縦9cm,横10cm,厚さ8mmのものを各ケース3体作製した.

※供試体作製方法

1. 京壁,豊浦砂を計量し水を加える前に十分混ぜ合わせる 2. 水を加えながらよく練る

3. 金型の上で延ばし,規定のサイズに成型

4. 60℃に設定した炉乾燥機を使用し1日乾燥させる

2)実験方法

簡易的に試験を行うため,載荷の支点には直径3mmのアルミ棒を使用した.写真 3.3.5 に供試体設置状況を示す.載荷用の支点を固定した金具を供試体の上に置き,その金具の 上に分銅を置き,載荷した(写真 3.3.6).試験後の供試体の様子を写真 3.3.7に示す.乾 燥後の供試体すべてに多少の反りが発生してしまったため,実験時には反りの向きを全て 同じにして,条件が変わらないようにしている.

表 3.3.5 配合表

写真 3.3.5 供試体設置状況

写真 3.3.6 試験中の様子 写真 3.3.7 試験後の供試体

(31)

28 3)試験結果

曲げ強度は次式により求めた.

𝑍 =𝑤𝑡2 6 Z:断面係数

w:供試体の幅(mm) t:供試体の厚さ(mm)

𝑀𝑚𝑎𝑥=𝐹𝑚𝑎𝑥(𝐿 − 𝐿𝑖) 4 Mmax:最大曲げモーメント(N・mm)

Fmax:最大荷重(N)

L:支点間距離(mm)=80mm Li:荷重点間距離(mm)=20mm

𝜎 =𝑀𝑚𝑎𝑥

𝑍 σ:曲げ強さ(MPa)

表 3.3.6 試験結果

(32)

29

試験結果を表 3.3.6および図 3.3.2に示す.1-1および2-2は載荷に失敗したため,曲げ 強さは残りの2つの平均で比較する.この試験からケース2はケース1に比べて約20%強 度が低いことが確認できた.

ケース2の配合で模型を作製したところ,模型を立てた状態で乾燥させる際に材料が軟 らかすぎたため自重に耐えられず,模型下部に偏ってしまった.そこでケース2の配合か ら水を1g減らすことにした.

以上の結果から,模型材料の配合は表 3.3.7に示すように京壁:豊浦砂:水=18:4(重 量混合比)と決定した.

0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30 0.35

ケース1 ケース2

(MPa)

図 3.3.2 曲げ強さ比較

表 3.3.7 模型材料の配合(重量混合比)

(33)

30 3.4 模型材料における物性試験

3.4.1 1 軸圧縮試験 1) 供試体

供試体の寸法は日本工業規格「土の一軸圧縮試験方法」を参考に,直径5cm,高さ10cm とした.供試体は3体作製し試験を行った.

本材料は水を揮散させることで固まる材料である.そのため,コンクリート強度試験用 の供試体成形型枠のような材料の大部分が覆われている型枠を用いると乾燥に著しく時間 を要するため,乾燥時には可能な限り材料の全面から均等に乾燥させることが望ましい.

また,高温で乾燥させると供試体内部に空洞が発生したため,乾燥炉は30℃に設定した.

※供試体作製方法

1. 厚さ0.3mm のテフロンシートとネットで直径5cm,高さ 10cmの円筒をそれぞれ作る

(型枠)(写真 3.4.1)

2. ネットの円筒を,テフロンシートの内側に入れる(写真 3.4.2)

3. 京壁,豊浦砂,水を配合通りに計量し練る

4. 型枠に材料を複数回に分けて詰める(写真 3.4.3)

5. 金属棒を使用して材料を突き,締め固める(写真 3.4.4,写真 3.4.5)

6. テフロンシートのみを引き抜き,ネットの上に載せて30℃に設定した乾燥炉に入れる 7. 1週間炉乾燥させる(写真 3.4.6)

8. 乾燥後ネットを剥がす(写真 3.4.7)

9. 上下端面をやすりで平滑になるよう成形する(写真 3.4.8)

写真 3.4.1 型枠の用意 写真 3.4.2 型枠

(34)

31

写真 3.4.3 打設 写真 3.4.4 締固め

写真 3.4.5 打設完了

写真 3.4.8 供試体完成 写真 3.4.7 乾燥後

写真 3.4.6 炉乾燥

(35)

32 2) 試験方法

日本工業規格「土の一軸圧縮試験方法」を参考に,写真 3.4.9 示す実験装置を使用し実 施した.

1. 供試体作製(No.1~3,直径5cm・高さ10cm)

2. 供試体を加圧版中央に置き,上部加圧版を供試体に密着させる 3. 変位計・荷重計の原点を調整する

4. 毎分1%圧縮ひずみが生じるように連続して圧縮

5. 圧縮量0.02cmピッチで圧縮力を測定

6. 供試体が破壊したら試験を終了する(写真 3.4.10)

7. 供試体の観察・記録

※試験終了後,供試体内部に空洞が発生していないか,特に注意して観察する.

写真 3.4.9 試験装置 写真 3.4.10 試験後の供試体

(36)

33 3) 試験結果

次式により圧縮強度を求めた.

ε =∆𝐻 𝐻0

× 100

ε:供試体の圧縮ひずみ(%)

ΔH:圧縮量(cm)

H0:圧縮する前の供試体高さ(cm)

σ = 𝑃 𝐴0

× (1 − 𝜀

100) × 10

𝐴0=𝜋𝐷02 4 σ: 圧縮応力(kN/m2

P: 圧縮ひずみが ε のときに供試体に加えられた圧縮力(N)

A0:圧縮する前の供試体の断面積(cm2 D0:圧縮する前の供試体の直径(cm)

図 3.4.1 に応力ひずみ曲線を示す.多少のばらつきはあるものの,おおむね同じ挙動を 示している.グラフの立ち上がりに変曲点が存在するのは,供試体の端面の整形が難しく 完全には平滑になっていなかったためと考えられる.このことから,物性試験を行う場合 には,供試体を 3 体に限らず,より多くのケースで試験を行い,同程度の値となるのか慎 重に判断する必要がある.

図 3.4.1 応力ひずみ曲線 0

0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35 0.4 0.45 0.5

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3

応力σ(N/mm2)

圧縮ひずみ ε()

No.1 No.2 No.3

(37)

34

表 3.4.1 に一軸圧縮試験により求めた圧縮強度及び弾性係数の値を示す.弾性係数は応 力ひずみ曲線の立ち上がりに変曲点があったため,圧縮ひずみ0.8%から1%間のグラフの 傾きから算出した.

この結果から,模型材料は圧縮強度0.4MPaで弾性係数は42MPaであり,再現性を有す る低強度な材料であることが確認された.

表 3.4.1 試験結果

(38)

35 3.4.2 割裂引張試験

1) 供試体

3.4.1に述べた手順で直径5cm,高さ10cmの供試体を3体作製し,試験を行った.

2) 試験方法

試験方法は日本工業規格「コンクリートの割裂引張強度試験方法」を参考に行った.試 験の様子を写真 3.4.11に示す.試験終了後の供試体の様子を写真 3.4.12に示す.

3) 試験結果

次式により引張強度を求めた.表 3.4.2 割裂引張試験結果を示す.供試体により多少の ばらつきはあるものの,引張強度は0.06MPaであり,模型材料の引張強度は圧縮強度の約 1/7である.

𝑓𝑡 = 2𝑃 𝜋𝑑𝑙 ft:引張強度(N/mm2

P:最大荷重(N)

d:供試体の直径(mm)

l:供試体割裂面の長さ(mm)

写真 3.4.11 供試体設置状況 写真 3.4.12 試験後の供試体

表 3.4.2 試験結果

(39)

36

【参考文献】

1) 村山朔郎:砂層内局部沈下部にかかる垂直土圧,京大防災研究所年報,第 11 号,

pp.123-138,1968.

2) 高橋 能久:垂直縫地ボルトの補強効果,東京都立大学修士論文,2007.

3) 土木学会:トンネルライブラリー16 山岳トンネルにおける模型実験と数値解析の実務,

pp36~41

4) 川瀬洸佑:地震時のトンネル覆工の破壊挙動に関する実験的研究,首都大学東京,平成 28年度卒業論文,2017

(40)

37

第 4 章 模型実験

4.1 実験ケース

覆工はトンネル断面を閉合し,真円に近づけるほど軸力が卓越し,発生する曲げモーメ ントは小さくなり耐力は向上する.馬蹄形でトンネルの安定が保たれることが多いが,ト ンネルに大きな荷重が作用する考えられる場合にはインバートが採用されるほか,膨張性 地山等など地山が著しく悪い場合にはインバートの曲率半径を小さくし,より真円に近づ けるか真円にするといった対策がされている.

そこで,本実験ではインバートの曲率半径を小さくすることや,インバート増厚により トンネルの耐力を上げた場合,大変形時の挙動にどのような影響を与えるのか確認するた めインバートの曲率半径とインバート厚をパラメータに実験ケースを設定した.実験ケー スを図 4.1.1に示す.ケース1 は基本ケースとして,一般的な2車線道路トンネル相当の 約1/100で,インバート比3.0R(上半アーチの曲率半径R1:インバートの曲率半径R3=1:3)

としたものである.そこからインバートの曲率半径を小さくし,ケース 3 はインバート比 2.0Rに,ケース5ではインバート比1.5Rとした.ケース6はインバートの曲率半径を 上半アーチと同じにまで小さくした外径100mmの真円である.ケース2・4はインバート 厚を増加させたケースで,ケース1とケース3のインバート厚を8mmに増厚した.

模型の奥行きは模擬地山であるアルミ棒の長さ100mmに合わせて各ケースとも100mm とした.また,インバートと側壁部の打継ぎ目のない模型となっている.

図 4.1.1 実験ケース

(41)

38 4.2 覆工模型の作製

4.2.1 型枠

型枠は任意の形状に変更可能であること,作製が容易であることからケント紙と学校芸 能工作用紙,テフロンシートで作製した.作製した型枠を写真 4.2.1に示す.

型枠は写真 4.2.2に示す円筒形のパーツと,写真 4.2.3に示す学校芸能工芸用紙で作製 した上下のフランジで構成されている.円筒形パーツにある突起と,フランジに入れた切 れ込みをはめ合わせた後に粘着テープで固定し型枠となる,フランジは型枠全体の剛性を 高めるほかに,材料を型枠に巻き付ける際に材料の厚さを均一な状態を維持する役割があ る.脱型時にはフランジを取り外し,円筒形パーツを模型から引き抜くことで脱型でき,

低強度な材料でも脱型が容易な構造となっている.フランジと円筒形パーツはともに,厚

0.05mmのテフロンシートで覆い,模型材料が付着しないようにする.円筒形パーツの

内側には写真 4.2.2に示すように作製する型枠の形状に切った学校芸能工作用紙を上下端 から2cmの位置に入れ,テープで固定することにより強度を上げ,覆工模型作製時に型枠 が歪まないようにした.

写真 4.2.1 型枠

写真 4.2.2 円筒形パーツ

写真 4.2.3 フランジ

表 2.1.2  道路トンネルの(中断面)の支保パターン 1)
図 2.2.2  外因の分類 4)
表 2.3.2 に地震により発生した被害事例についてまとめた.

参照

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