近 世 末 期 念 仏 講 成 立 の 一 考 察 ( 田 中 )
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念 仏 講 の 成 立 に つ い て 徳 本 の 信 州 教 化 を 中 心 に 考 え て み た い。﹃徳 本 行 者 集 ﹄ の 中 に ﹃ 蓮 華 勝 会 信 州 上 州 教 化 記 ﹄ ( 以 下 記 録 と か う。 ) が 入 つ て い る。 そ れ に は、 そ の 道 中 の 詳 細 な 様 子 が 知 れ る。 文 化 十 三 年 ( 一 八 一 六 ) 三 月 廿 日 江 戸 小 石 川 の 草 庵 を 出 発 し た 徳 本 の 一 行 ( 慈 眼 院 ・ 本 極 を は じ め と し て 総 員 六 名) が、 志 村、 上 尾、 浦 和、 高 崎、 深 谷 を へ て 信 州 上 田 に 着 い た の は 四 月 一 日 で あ つ た。 同 日 の 記 録 に よ る と、 横 川 関 の 役 人 に 十 念 を 授 け て い る こ と は、 他 の 教 化 と 同 様 で あ る け れ ど も、 そ の 小 幅 名 号 ( 版 刷 り の も の。 三 十 糎 ×十 八 糎 ) が、 通 行 手 形 の 役 割 を し て い る。 ま た そ れ が 上 田 願 行 寺 で の 三 日 間 教 化 の 中 九 千 枚 も 配 布 さ れ た と 記 録 は し て い る。 し か も か な り 遠 方 の 伊 豆 川 津 浜 講 中 や 大 阪 ・ 紀 州 め 講 中 が 報 告 に き て い る。 一 行 は 芳 泉 寺 を へ て 松 本、 ・ 松 代、 川 中 嶋 の 教 化 を し た。 記 録 に よ る と、 近 辺 の 交 渉 を 持 つ た も の を 記 し て い る。 ち な み に そ れ を 記 し て み る と、 大 塚 村 講 中 ( 一 五 七 人 ) 善 光 寺 後 町 十 念 寺 講 中 ( 三 八 三 人 ) 下 小 嶋 田 村 講 中 ( 一 〇 〇 人 ) 上 真 嶋 梵 天 東 講 申 ( 一 〇 一 人 ) 上 氷 施 上 村 講 中 ( 八 一 人 ) 大 塚 南 村 講 中 ( 一 〇 三 人 ) 同 北 嶋 講 中 ( 一 五 七 人 ) 上 布 施 村 ( 一 〇 三 人 ) 大 北 村 ( 五 三 人 ) 花 立 村 ( 八 二 人 ) 大 塚 新 町 ( 一 四 一 人 ) 高 井 郡 保 科 村 嘉 増 組 ( 三 〇 人 ) 更 級 村 丹 村 真 嶋 組 ( 一 〇 二 人) 同 上 組 ( 一 〇 四 人 ) な ど で あ る。 こ れ ら を 合 せ る と、 十 四 組 一 六 九 八 人 で あ る。 四 月 十 七 日 に は 塩 崎 の 善 導 寺 に い た。 そ こ に は 江 戸 浅 草 の 好 身 寺 院 と 専 修 院 が 氷 砂 糖 と 書 翰、 小 幅 名 号 四 十 万 枚 を 持 つ て 陣 中 見 舞 に や つ て き て い る。 一 ヵ 月 以 上 の 長 い 教 化 に な る と、 か な ら ず 江 戸 の 徳 本 を 支 援 す る 寺 院 や 草 庵 と の 連 絡 が 持 た れ た。 一 行 は 二 十 日 に 善 光 寺 に 参 詣 し、 二 十 三 日 に は 寛 慶 寺 に 入 つ た。 徳 本 の 随 伴 は 同 寺 に 対 し て 覚 書 を 出 し た。 そ れ に ょ る と、-334-定 法 差 出 し 候 事 一、 講 中 名 号 出 候 は ハ 当 二 五 日 四 ツ 時 よ り 八 ツ 時 迄、 五 月 朔 日 剋 限 同 行、 同 五 日 剋 限 同 行、 一、 諸 願 謁 日 当 二 六 日 四 ツ 時 よ り 八 ツ 時 迄、 五 月 朔 日 剋 限 同 行、 同 五 日 剋 限 同 行、 一、 二 四 日 二 五 日 右 之 外 来 月 五 日 迄 ハ 寺 院 た り と 云 へ と も 逢 決 而 無 レ 之 候 事 一、 善 導 寺 観 音 寺 之 外 諸 用 不 レ 承 之 事、 右 之 通 得 二御 意 一候 以 上 四 月 二 三 日 役 僧 寛 慶 寺 御 役 僧 申 と あ る。 講 中 名 号 ・ 諸 願 の 日 を 定 め、 連 絡 係 を 指 定 し た も の で あ る。 種 々 講 中 と の 交 渉 は あ つ た け れ ど も、 こ の 様 に 日 を 定 め な け れ ば な ら な い ほ ど 雑 多 な 中 請 願 が あ つ た の で あ ろ う。 そ れ で そ れ を 規 制 し な け れ ば な ら な い ほ ど の 念 仏 講 が、 で き て い た こ と が 知 れ よ う。 こ の 結 果、 寛 慶 寺 近 辺 の 村 々、 さ ら に 高 井 郡 ・ 伊 奈 郡 筑 摩 郡 な ど 遠 く は 越 後 の 魚 沼 講 中 ・ 長 岡 栃 尾 組 ・ 出 羽 米 沢 な ど か ら も 講 中 名 号 の 中 請 が 出 た。 記 録 は ﹁ 合 而 講 中 二 拾 組 此 人 数 四 千 七 百 五 十 四 人 ﹂ と し て い る。 し か し 記 録 を 合 計 し て み る と、 六 十 九 組 四 千 六 百 三 十 五 人 と な る。 記 録 の 合 計 と 相 異 し て い る。 こ の 記 録 の 記 述 者 は、 随 伴 の 一 人 で も あ つ た 本 極 で あ る ( そ の 私 記 な ど か ら 知 れ る。 ) ゆ し か し 現 存 す る 九 品 院 本 も 実 は 一 行 院 本 の 写 本 ( 戦 災 で 焼 失 ) で あ る か ら し て、 そ の 記 載 自 体 前 述 の 小 幅 名 号 四 十 万 枚 な ど の 疑 問 と 合 せ る と か な り 注 意 を 要 し よ う。 と も か く こ の 合 計 数 は 別 と し て、 講 申 と し て 記 し て い る も の 十 組、 そ う で な く 何 村 ・ 何 組 と し て い る も の が、 五 十 九 組 あ る。 す な わ ち す で に 名 号 中 請 が な さ れ た 時 に は、 講 が 組 織 さ れ て い た も の と、 そ う で な い も の に 分 か れ て い て、 後 者 は そ の 名 号 を 得 る た め に、 そ の 組 織 化 を 余 儀 な く さ れ た も の で あ ろ う。 前 述 し た 川 中 嶋 教 化 で も、 そ れ が 端 的 に わ か ろ う。 五 月 九 日 の 記 録 を み る と、 一、 無 常 院 丹 生 寺 御 念 仏 講 の 本 尊。 仕 候 間、 御 名 号 唐 紙 一 枚。 御 染 筆 相 願 候 処、 御 聞 済 御 認 メ 被 レ遣 け る、 一、 講 中 次 第 に 出 来 事 繁 用 不 審 に も 粗 餌 相 聞 へ 依 レ之 相 談 之 上 八 十 人 己 下 八 唐 紙 四 ツ 切 二 致 す へ く、 三 十 人 己 下 ハ 六 万 遍 差 遣 し 候 様 決 定、 尤 も 三 十 人 已 下 ハ 見 斗 之 事 と あ る。 徳 本 の 名 号 が、 念 仏 講 の 本 尊 と な つ て い る こ と が わ か る。 し か も そ れ を 規 制 な く 授 け た 結 果 は 決 し て 芳 し く な か つ た。 そ こ に 規 制 し な け れ ば な ら な か つ た 原 因 が あ ろ う。 さ ら に 同 廿 五 日 の 南 原 蓮 香 寺 の 教 化 記 録 を み る と、 細 部 に わ た つ て 規 定 し て い る。 そ れ に よ る と 総 連 印、 名 主、 菩 提 寺 の 添 印 が な く て も 従 来 は 授 与 し て い た け れ ど、 今 後 は 許 可 し な い。 ま た 講 中 名 前 帳 の 提 示 の 義 務 づ け と、 そ れ を 随 伴 で 従 来 近 世 末 期 念 仏 講 成 立 の 一 考 察 ( 田 中 )
-335-近 世 末 期 念 仏 講 成 立 の 一 考 察 ( 田 中 ) よ り 厳 重 に 吟 味 す る こ と な ど を 定 め て い る。 記 録 は っ、 い で、 御 名 号 頂 載 仕 候 上 百 人 以 上 ハ、 年 々 三 度 ツ、 何 村 講 中 誰 と 中 名 札 持 参 致 為 二 御 伺 一罷 出 候 様 中 渡 ス、 と あ る。 百 人 以 上 の 講 中 は 一 年 に 三 度 連 絡 す る 貯 を 定 め て い る。 百 人 以 上 と い え ば 前 述 の 講 中 に は 十 七 組 も あ る。 多 い の は 三 百 人 を 越 え る の も あ る。 年 三 度 に は 当 然 何 か の 金 品 が 持 参 さ れ、 徳 本 を 中 心 と す る 一 行 院 の 経 済 基 盤 の 一 部 と な つ た の で あ ろ う。 そ れ ば か り で な く 執 筆 名 号 下 附 願 の 書 式 も 定 め て い る。 そ れ に よ る と、 当 村 の 者 共 御 念 仏 講 取 立、 永 ヒ 相 続 の 為 メ 右 本 尊 二 仕 度 候 間、 御 染 筆 被 二 成 下 一 候 様 奉 二願 上 蝋 候、 若 又 御 念 仏 講 相 止 候 ハ 被 二 下 (候 脱 力 ) 置 一候 御 名 号 御 取 上 可 レ 被 レ 下 候 共、 年 頃 御 悔 中 上 間 舗 依 而 為 二 後 日 一連 印 如 レ 件 年 月 日 誰 印 右 之 願 二 相 定 メ 置 候 信 巻 と あ る。 結 局、 講 中 名 号 授 与 に つ い て は 段 階 的 な 規 制 が 行 な わ れ た こ と が わ か る。 名 号 を 乱 配 し す ぎ た こ と に 端 を 発 し、 そ の 書 式 ま で 規 定 す る 様 に な つ た の で あ る。 こ の 信 州 教 化 は 六 ヵ 月 に も 及 ん で い る け れ ど、 そ れ ぞ れ の 会 場 へ 全 国 の 講 中 が 連 絡 に や つ て き て い る。 そ ん な こ と も だ ん だ ん 義 務 づ け た の で あ る。 現 存 す る 徳 本 の 名 号 石 は 大 小 合 せ て 四 一 三 基 あ る け れ ど、 そ れ か ら し て も そ の 配 布 さ れ た 範 囲 と そ の 数 は 日 本 仏 教 史 上 ま れ に み る も の で あ る。 講 中 で し て み れ ば、 名 号 は 徳 本 自 身 で あ つ た に 相 異 な い。 小 幅 名 号 で も 同 様 で あ る。 入 府 初 期 の 布 教 方 法 は 草 庵 で の 別 時 会 の 際 に、 称 名 の 数 に よ り、 名 号 を 授 け て い た。 そ れ も だ ん だ ん 多 く な つ た。 関 西 で の 名 声 が 相 伴 つ て 念 仏 講 形 成 が な さ れ た の で あ る。 す な わ ち 徳 本 の 布 教 方 法 に 発 展 的 な 展 開 が 見 ら れ る こ と を 強 張 し た い。 百 人 以 上 の 講 な ど は、 そ の 永 続 性 も 要 求 し 年 三 回 の 連 絡 を 持 た せ た の で あ ろ う し、 講 単 位 の 布 教 に 展 開 さ れ る に 至 つ た の で あ る。 そ の 点 が 信 州 教 化 の 特 色 で も あ る。 し か も 信 州 に 現 存 し た 講 中 に も 新 規 の 講 中 に も 名 号 を 配 布 す る、 ま た 講 中 で し て み れ ば そ れ を 要 求 し 講 の 再 組 織 化 も し た の で あ ろ う し、 新 組 織 結 成 と な つ た。 そ の 徳 本 と 名 号 へ の 魅 力 が そ の 母 胎 と な つ た の に 相 異 な い。 徳 本 は け つ し て、 浄 土 宗 の 僧 と し て 寺 社 奉 行 に 認 め ら れ た も の で は な か つ た。 紀 州 で の 修 行 は 念 仏 こ そ 修 し て い た け れ ど、 多 種 多 様 な 修 行 を し て い る。 結 局 晩 年 に な つ て、 そ の 布 教 効 果 と 相 伴 つ て 認 め ら れ た の に す ぎ な い。 し か し 近 世 末 期 全 国 に 相 当 数 の 念 仏 講 が 始 め ら れ る け れ ど、 徳 本 の 布 教 の 動 線 上 の そ れ は い ず れ も そ の 関 係 が あ つ た も の だ ろ う し、 そ の 活 躍 は 見 逃 し て は な ら な い。 し か も そ れ が 浄 土 宗 教 団 と い う セ ク ト と は 別 に 展 開 さ れ た こ と も 注 目 さ れ よ う。