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論文審査の要旨

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Academic year: 2021

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論文審査の要旨 博士の専攻分野の名称 博 士 ( 教育学 )

氏名 山田 真子 学位授与の要件 学位規則第4条第1・2項該当

論 文 題 目

小学校低学年における理科の授業に関する歴史的研究

―大正期から昭和初期を中心にして―

論文審査担当者

主 査 教授 磯﨑 哲夫 審査委員 教授 木原 成一郎 審査委員 教授 竹下 俊治

〔論文審査の要旨〕

本研究は,わが国の大正期及び昭和初期の小学校低学年(本研究では,第1学年から第 3学年までを対象とする)における理科の授業の特色を明らかにすることを通して,歴史 的視座から見た小学校低学年における理科のあり方への示唆を得ることを目的としてい る。本論文は,序章と終章を含めて,5章で構成されている。

序章では,問題の所在と本研究の意義,研究の目的,研究の方法及び構成について論じ ている。

第1章では,大正期の私立成城小学校の校長や教師らが執筆した低学年の理科に関する 研究論文や書籍等を分析することによって,同校の低学年における理科の目的論や指導の 方法論,実践について明らかにしている。それらの結果について,アメリカのnature study の影響という視座から考察している。そして,大正期の同校の低学年における理科の授業 の特色として,欧米諸国とは異なる日本の理科教育の文脈を考慮しながら,アメリカの

nature studyの考え方を参考にしていたことを指摘している。具体的には,生活の進歩,

改善を低学年における理科の第1の目的とし,児童の実態や興味・関心にもとづいて,児 童が主体的に自然の事物現象から学ぶことを意図した低学年における理科が実践されてい た。

第2章では,昭和初期の広島高等師範学校附属小学校(以下,広島高師附小とする)の 校長や教師らが執筆した低学年の理科に関する研究論文や書籍等を分析することによっ て,同校の低学年における理科の目的論や指導の方法論,実践について明らかにしている。

それらの結果について,①当時の教育思想の影響という視座,及び②明治末期及び大正初 期の低学年における理科に関わる学習の継承という視座から考察している。そして,昭和 初期の同校の低学年における理科の授業の特色として,成城小学校と同様に,欧米諸国と は異なる日本の理科教育の文脈を考慮しながら,明治末期及び大正初期の同校の郷土の教 材による低学年の理科に関わる学習の目的論や指導の方法論,実践を継承しつつも,アメ

リカの nature study や成城小学校の理科教育の考え方などを参考にしていたことを指摘

している。具体的には,児童が自然に親しむことや自然を愛する心情の育成などを低学年 における理科の目的とし,児童が主体的に自然の事物現象から学ぶことを意図した低学年

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における理科が実践されていた。

第3章では,大正期及び昭和初期の奈良女子高等師範学校附属小学校(以下,奈良女高 師附小とする)の校長や教師らが執筆した低学年の理科に関する研究論文や書籍等を分析 することによって,同校の低学年における理科の目的論や指導の方法論,実践について明 らかにしている。それらの結果について,①当時の教育思想の影響という視座から考察し,

②理科の学習を合科学習において行うことの問題点について考察している。そして,大正 期及び昭和初期の同校の低学年における理科の授業の特色として,アメリカの nature

study や,わが国の他の高等師範学校附属小学校や師範学校附属小学校の直観科,観察科

などの考え方や実践を参考にしながらも,同校の特色ある合科学習において理科的内容を 学習していたことを指摘している。その学習は,自然や人工の事物現象に対する好奇心や 求知心,探究心,疑問に思う心などの育成を目的とし,児童の発達の段階や興味・関心に もとづいて,児童が主体的に自然の事物現象から学ぶ実践が行われていた。

終章では,大正期の成城小学校,昭和初期の広島高師附小,大正期及び昭和初期の奈良 女高師附小の低学年における理科の授業の特色をまとめ,3校に共通する低学年における 理科の授業の特色を指摘している。そして,その特色をもとに,現在のわが国や諸外国の 初等理科教育の動向を勘案し,わが国の小学校低学年における理科のあり方についての示 唆を得ている。それらは,①小学校低学年における理科の目的論では,日本の理科教育が 歴史的に継承してきた自然を愛する心情の育成や,自然の事物現象に対する興味・関心の 喚起,好奇心,探究心の育成という情意面を重視することが必要であること,②小学校低 学年における理科の教科としてのあり方として,低学年における理科は,目的を明確にす れば,独立した教科としても,合科的な教科としても,学習することが可能であること,

③小学校低学年における理科の指導の方法論においては,児童が自然の事物現象に直接触 れ,観察・実験をするといった児童を主体とした能動的な指導方法を採ること,である。

本論文は次の3点において特に評価できる。

1.大正期から低学年における理科を研究・実践してきた指導的立場にあった高等師範学 校附属小学校や私立小学校のうち,これまで十分な研究がなされてこなかった私立成 城小学校,広島高師附小,奈良女高師附小の3校の低学年における理科の理論や実践 を明らかにしている点。

2.わが国の当時の小学校低学年における理科の理論に関わる研究論文や書籍等を分析す るのみならず,当時の実践に関わる学習指導案を収集し,分析するとともに,その理 論や実践に影響を与えたアメリカの教育思想についても原著を収集し,分析している 点。

3.小学校低学年における理科のあり方について,これまで等閑視されてきた歴史的視座 から論考している点。

以上,審査の結果,本論文の著者は博士(教育学)の学位を授与される十分な資格があ るものと認められる。

平成29年2月8日

参照

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