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博士(工学)秋本 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)秋本 学位論文題名

高・中速中性子スペクトルの飛行時間測定法に関する研究

学位論文内容の要旨

  原子炉 炉心に おける 中性子 スペ クトル は,臨 界質量 ,中 性子束 分子, 制御棒効果,反応度の温 度 係数, 増殖 比等の 原子炉 のほと んど 総ての 核的持 性に影 響を与 える 因子で ある。高速中性子体 系 におい ては ,体系 の組成 ,断面 積に 強く依 存し, 体系毎 に異な った 形をし ている。従って高速 中 性子ス ペク トルの 把握は ,核特 性計 算の最 も重要 な要素 である 。し かし設 計に用いられる各核 デ ータラ イブ ラリー 間には 食い違 いも あり, 未だ実 験結果 と計算 結果 の完全 な一致にはいたって い ない。 原子 炉材料 体系内 の中性 子の 集団的 振舞い を反映 する中 性子 スペク トルで核データを評 価 するこ とは ,微分 断面積 デ一夕 を直 接求め るなど の微分 測定と は原 理の異 なる実験による評価 と いう意 味が あり, 併せて 計算コ ード の精度 の検証 にも有 効であ る。

  パルス 状中性 子源を 用いて ,単 純な形 状の単 一材料 集合 体中の 中性子 スペクトルを,飛行時間 法(TOF法 ) で 測 定 し理 論 解 析 の 結 果と 比 較 す る べン チ マ ー ク 実験 が 開 発され ,核 データ の評 価 等 が 進 め ら れ て い る 。 数keVか ら 十数MeVの 中性 子 ス ペ ク トル を 対 象 に した べ ン チ マ ーク 実 験は, 核デ ータの 評価は もとよ り, 遮蔽設 計や核 融合炉 中性子 工学 におい ても重要になってき た 。 高・ 中速中 性子ス ペクト ル測 定は正 確な検 出器効 率の把 握や ,中性 子が7線と 混在す ること や 高 速 領 域 には 有 効 な 中 性子吸 収体が 無くSN比向上 のため の困 難さを 伴う等 ,技術 的に難 しい 実 験であ る。

  本論文 は,高 速炉材 料,核 融合 炉材料の核データの評価や遮蔽設計のためのべンチマーク実験,

高 ・中速 中性 子標準 場の作 成等を 目的 として 開発し た,高 ・中速 中性 子を対 象にした飛行時間分 析 装置を 中心 とした スペク トル測 定法 にっい て書か れたも のであ る。 時間分 析器における計数損 失 補 正 , 高 速 マ ルチ チ ャ ネ ル スケ ー ラ (MCS)の 開 発,2次 元 波 高分 析 器 の 開 発 と検 出 器 効 率 の 較 正 実 験 や 時 間 依 存 ス ペ ク ト ル の 測 定 へ の 応 用 等 に っい て 述 べ る も ので8章 か ら なる 。   第1章 は序論 であり ,高・ 中速中 性子 スペク トル研 究の意 義, 本研究 の目的 などに っいて 述べ る 。

  第2章 では, 高・中 速中性 子スペ クト ル測定 法の全 般にっ いて 概説を 行い, 本研究 で主に 使用

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す る中 性子飛 行時間 法の測 定の原 理な どにっ いて述 べる。

  第3章 で は , 電 子 線 型 加 速 器(LINAC)を 利 用 した 黒 鉛 体 系 の漏 洩 中 性 子 ス ペク ト ル の 測 定 を 通し て,中 性子コ リメー タや検 出器 の効率 ,時間 分析器 にお ける計 数損失等に留意して開発し た 高・ 中速中 性子ス ペクト ル用飛 行時間分析装置の概要,測定法,デー夕処理法にっいて述べる。

っ い で , 実 験対 象 体 系 の中 性子ス ペクト ル計算 につ いて述 べ,実 験結果 との比 較検 討を行 う。

  数MeV以 下 の 中 性子 ス ペ ク ト ル は5% 以 下 の 精度 で 求 め る こと が で き,パ ルス中 性子 法によ る 高・ 中速中 性子に 関する 飛行時 間実 験を対 象にし た総合 的な システ ムが完成した。飛行時間分 析 器 に は , 通 常 のMCSは , 時 間 分 解 能 の 点 か ら 適 さ ず , 時 間波 高 変 換 器(TPHC)と 多 重 波 高 分 析 器(PHA)を 組 み 合 わ せ た 時 間 分 析 器 が 使 わ れ る 。 た だ1パ ル ス1計 数 型 で あ る ので , 高 強 度パ ルス源 を利用 した飛 行時間 実験 に使用 する場 合には 制約 がある 。しかし本分析装置のため に 作成 した, トリガ 信号入 力後任 意の 時間入 力信号 を除去 でき るアン チコインシデンス・ゲート 回 路 は , 測 定 デ ー タ に 対 す る 計 数 損 失 補 正 式 と 相 ま っ て 有 効 で あ っ た 。   第4章 で は ,LINAC―TOF法 の 時 間 分 析 器 に ,TPHC―PHA時 間 分 析 器 を 使 用 し た 場 合 の 計 数損 失補正 式を求 めると ともに ,実 験的に この補 正式の 妥当 性を検 証する。測定時間中に発生 し た全 リニア ックパ ルスに 対する ,あ る飛行 時間チ ャネル の計 数の寄 与するパルスの割合の物理 的 考察 から計 数損失 補正式 を求め た。 補正式 の妥当 性の検 証に アンチ コインシデンス・ゲート回 路 の ゲ ー ト 幅を 適 宜 変 え て 実験 を 行 っ た 。TPHC―PHA時 間 分析 器 は , こ の回 路 の 採 用 のも と に 本補 正式の 適用 により ,本来 低計数 率で しか使 用でき ないと いう欠 点を 補い,1パ ルスあ たり 1以上 の高強 度に も適用 できる 。

  第5章 では , 高 ・ 中 速中 性 子 ス ペ クト ル 測 定 に 適応 で き る , 高 時間 分解能 を有 するMCSの開 発 に っ い て 述べ る 。TOF法 に よ る 高 速中 性 子 ス ペクト ルの測 定には ,極 めて高 速な時 間分解 能 が 要求 される 。到来 信号を 時系列 に記 録して いくメ モりに 画像 処理用 の高速シリアルアクセスメ モ り を 用 い て, パ ソ コ ン を べー ス に し た 高速 中 性 子TOF測 定 用 高 速MCSシス テムを 開発 した。

こ のMCSはド ウ ェ ル タ イム は50nsで ,15m程 度 の 短 い 飛行 距 離 で も ,数MeV以 下の エ ネ ル ギ ー の 中性 子が分 析可 能であ る。ま たライ ンメ モりを2バ ンク構 成にし ,交互 に切り 換え て使用 する こ とに より実 質的な サイク ルタイ ムを 短縮し パルス の高い 繰り 返しに も適応できるようにした。

  第6章では ,パ ルス中 性子源 法によ る飛行 時間 スペク トル測 定には 本質 的にっ きまと う時間 依 存 性を 検討す る目 的で開 発した ,時間 とエ ネルギ 一等の2次 元測定 のため の,パ ソコ ンをべ ース に した2次元 多重 波高分 析シス テムに っいて 述べ る。

  このシ ステム は,セ グメ ントレジスタの動的な活用による大容量の配列データの容易な取扱や,

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座標に対応したビッ卜データを直接グラフィックメモリヘ書き込む方法によるグラフィック表示 の高速化等,パソコンの処理速度やメモリ容量等の機能を有効に利用した高性能で簡便なシステ ムである。 さらにこのシステムを2台のパソコンにより構成し,それぞれのCPUが資源を共有 しながら,独立に動作し,リアルタイム処理を行うマルチタスクのシステムに拡張し,さらに安 定なシステムとした。

  第7章では,パソコンをべースにして開発した2次元多重高分析システムの高・中速中性子ス ペクトル測定への応用にっいて述べる。第1は中性子検出器の効率および応答関数の測定への利 用である。高速中性子スペクトルの標準スペクトルとみなせる゜5゜ Cf自発核分裂中性子源を,

個々の核分裂事象に着目しパルス源とみなし利用した,液体シンチレー夕NE213の検出器応答 関数の実験的評価で,中性子工ネルギーと検出器出力波高の2次元測定である。これにより通常 バンデグラフ加速器等からの単色中性子ビ―ムで行っているこの種の実験に連続中性子ビームの 利用の道を開いた。

  第2の適用例は高速炉材料体系内の時間依存スペクトルの測定である。理論計算により時間依 存スペクトルは非弾性散乱断面積等の変化に敏感であり,群構造にも依存することがわかった。

2次元多重波高分析システムを用いて,飛行時間法と波高分布測定法の組合せによる方法によっ て,空間と角度に関する時間依存スペクトルのような2パラメ一夕の同時測定が可能になった。

  第8章では,得られた結諭をまとめて述べる。

  以上,高・中速中性子エネルギ―スペクトル測定用飛行時間分析システムを開発し,測定法を 検 討し た。 さ らに 時間 依存 スペ ク トル 測定 技術 への 発 展を 試み ,有 用 な結果を 得た。

学位論文審査の要旨

  中性子工ネルギースペクトルの研究は原子炉の核設計,遮蔽設計,核融合炉ブランケット設計 等で極めて重要な役割を担っている。特に,高・中速中性子のスペクトルは,核反応断面積の評

邦 男

寛 揚

正 初

   

田 崎

部 戸

成 山

阿 榎

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

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価,高速炉の炉心設計,構成材料の中性子損傷などに多くの影響を与えるものである。またこれ は中性子遮蔽設計に重要であるばかりではなく,将来の核融合炉のトリチウム生成率の評価など のためにも重要性を増してきている。

  高・中速中性子スペクトルの実験的研究は,スペクトル測定のための良好な検出器の不足,7 線との混在などのため難しい技術が要求される。このため実験で得られたスペクトルtま,理論計 算結果と比較検討するためには十分な精度とはいえなかった。

  本論文は,理論解析と実験結果を比較検討する目的で,電子線形加速器を使って原子炉材料な どの高・中速中性子スペクトルを飛行時間測定で決定するための装置の製作および測定法の改良 に関するものである。全体 は8章から構成され,主な研究成果は以下のように要約される。

  1章および2章は,高・中速中性子スペクトル測定研究の現状と電子線形加速器をパルス中性 子源とする飛行時間測定法を概説したものである。

  3章では,北海道大学45MeV電子線形加速器の飛行時間分析装置の概要,黒鉛体系の中性子 スペクトルを測定したとき発生した諸問題,中性子コリメ一夕の製作法,検出器効率,時間分析 器の計数損出補正公式,デー夕処理法など本研究の先駆けとなる問題を提起している。さらに時 間波高変換による飛行時間分析器にアンチコインシデンス・ゲ―ト回路の使用など2,3の問題 に対する有効な解決法を提示している。

  4章では,前章で提起した時間波高変換ー時間分析器の計数損出補正問題に理論的解決法を提 供し,実験的に補正公式およびアンチコインシデンス・ゲ―ト回路の使用の有効性を確認してい る 。 そ の 結 果 , 飛 行 時 間 分 析 に 必 要 な 測 時 間 を 減 少 さ せ る こ と に 成 功 し て い る 。   5章では,新しい考えに基づく飛行時間分析のための装置,40ナノ秒ドエルタイム高速マルチ チャネル・スケーラを製作し,その性能を確認している。これは現在,市販されているものより 1桁高速のマルチチャネル ・スケーラである。これにより15mの飛行距離で数MeVの中性子工 ネルギーが測定可能になったことが示されている。

  6章では,時間とエネルギ一等の2次元測定のための,パソコンをべースにした2次元多重波 高分析システムの製作と性能にっいて述べている。これは飛行時間スペクトル(エネルギースペ クトル)の時間依存性を検討する目的で開発された。

  このシステムは,パソコンの処理速度やメモリ容量等の機能を有効に利用した高性能で簡便な システムである。さらにこのシステムを2台のパソコンにより構成することによって,それぞれ のCPUが情報を共有しながら,独立に動作し,リアルタイム処理を行うマルチタスクのシステ ムに拡張した。この結果従来,極めて高度の技術を要した時間的に変化するエネルギースペクト

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ルの測定が比較的簡便なものとなった。

  7章では,2次元多重波高分析システムの高・中速中性子スペクトル測定への応用を2っ記述 してある。

  第1は 5゜ Cf自発核分裂中性子源を,高速中性子スペクトルの標準スペクトルとみなして,

液体シンチレータの検出器応答関数を2次元測定で行って成功している。これは単色中性子ビー ムで行っているこの種の実験に連続中性子ビームの利用の道を開いた極めてユニークな方法であ る。

  第2は2次元多重波高分析システムの本来の利用方法である時間依存スペクトルの測定であ る。これにより時間依存スペクトルは非弾性散乱断面積等の変化に敏感であり,原子炉解析で使 用するエネルギ一群構造にも依存することを明らかにしている。

  8章は,結果と結論をまとめてある。

  以上のように,本論文は,北海道大学45MeV電子線形加速器に,飛行時間法による高・中速 中性子スペクトル測定システムを完成させ,いくっかの新しい測定法と分析装置を開発し,それ らの有用性を示したもので,放射線計測学および原子炉工学に対して貢献すること大いなるもの がある。

  よ っ て 著 者 は , 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る 。

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