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ボ ン デ ィ ン グ 材 が ヒ ト 白 血 球 の 細 胞 機 能 に 与 える 影 響

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Academic year: 2021

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博 士 ( 歯 学 ) 藤 江 克 俊

学 位 論 文 題 名

ボ ン デ ィ ン グ 材 が ヒ ト 白 血 球 の 細 胞 機 能 に 与 える 影 響

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  一般に ,歯 科材料 は基本 的毒性 試験, 特殊 毒性試 験,使 用試験 など の生物学的評価を経て臨床 に供さ れる。 従来, 基本 的毒性 試験の うち特 に細 胞毒性 試験で は,主 に細胞の生死,増殖能,形 態ある いは溶 血性を 指標 として なされ てきた 。し かし, この細 胞毒性 試験と使用試験との間には 整合性 が得ら れてい ない 。その 理由と して, 細胞 の機能 試験の 欠落に あると思われる。そこで今 回,細 胞機能 のーつ 情報 伝達系 を利用 して, 歯髄 為害性 の問題 となっ ているボンディング材につ いて, ヒト好 中球の 生理 活性物 質の動 態にっ いて 調べた 。

  [材 料と方 法]

  I被 検 材1.ボ ン デ ィ ン グ材 は キ ャ タ リス 卜 , ベータ から なる2液性 のライ 卜フィ ルボン ド@

を 用い た 。2. 溶出 液 の 分析1) 溶出試 験:表 面が3. 8cnfの ボンデ ィング 材硬化 試料 をハン ク ス 液19mLに 浸漬 ,37℃で1,3,5及 び7日 間 振盪 さ せ , 各 期間 に お け る溶 出重量 を測定 した。

測定 は溶出 液をミ リポア フアル ター(ポアサイズ0. 45ロm)で濾過し,凍結乾燥より求めた。2) 溶 出 成 分 の 同 定 : HPLCに て ,Zorbax ODS iJラ ム を 使 用 し , 溶 出 はMeOH: H20(7:3, V/V) の 混 合 溶媒 で 流 速l mL/minで 行 い ,A:15で 検出 し た 。 基 準 液と し て , ト リエ チ ‐ レ ン グリ コ ー ル ジ メ タク リ レ ー 卜 (TEGDMA), ジ メ タク リ ロ キ シ エチ ル ヘ キ サ メチ レ ン ジ ウ レ チ ン(UDMA)を 用 い た 。3) 溶 解 度 試 験 : キ ャ タ リ ス ト , べ ー ス の 溶 解 度 は 各 々lgを ハ ン ク ス液lOOmLに 浸漬,37℃,ス ター ラーで24時間攪 拌後 ,濾過 丶した ものを 溶解原 液と し,凍 結 乾 燥 し , 溶 解 重 量 と し て 求 め た 。 硬 化 試 料 の 主 要 溶 出 成 分 で あ るTEGDMA,UDMAにっ い て も同 様に行 った。

  H細 胞 機 能 試験1. 細 胞 :健 常 人(25〜39才 )抹 消 血 よ り 採血 し , 好 中 球 を分 離 し た 。 ハン ク ス液を コント 口ー ルとし ,上記 溶出液 および 溶解 原液を ハンク ス液で5倍 ,50倍 希釈し た液に 好 中球(2. 0〜3.0xi0°cells/mL)を 浸 漬 し, 情 報 伝 達 系に お け る 生 理活性 物質を 測定し た。

2. 生 理 活 性 物 質 の 測 定 : ホル ボ ー ル ミ リ スチ ン 酸 ア セ テー ト(PMA)お よ び カル シ ウ ム イ オ

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ノ ホ アA 23187(A23187)刺 激 に よ る 好中 球 の02,PGEよ 産生 量 を そ れ ぞ れチ ト ク 口 ー ムC還 元法 ,PGE: [t2 I] ーRIA KITで測 定 し た 。3. 細 胞 生 存 率 の算 定 :色素 排除法 により 全細 胞数 に 対 す る 生細 胞 数 で 求 めた 。4. 乳 酸脱 水 素 酵 素(LDH) 漏 出の 測 定 : 乳 酸基 質 ・ ジ アホ ラ―ゼ 法で比 色定量 した。5. 好中球 の形 態学的 観察:硬化試料溶出液およびキャタリスト,ベー ス ,TEGDMA,UDMA各 溶 解 液 に お け る 好 中 球 の 形 態 は 各 溶 液 に37℃ ,1時 間 浸 漬 後 、 通 法 に従い 走査型 電子顕 微鏡(SEM)に て観察 した。

  [結  果]

  I溶 出 液 の 分 析1. 溶 出 量 : 硬 化 試 料 の ハ ン ク ス 液 へ の 溶出 量 は ,1日目 で322.5土239.O ロg7mLを 示 し ,3,5,7日 に お い て も 同 程 度 で あ っ た 。2. 溶 出 成 分 の 同 定 :HPLC溶 出 パター ンに おいて ,溶出 液とキ ャタ リスト と溶解 液は同 じ傾向 を示 した。 また,硬化試料の溶出 成 分 はTEGDMA,UDMA各 溶 解 液 のHPLC分 析 か ら , 主 に キ ャ タ リ ス ト 成 分 のTEGDMA とUDMAで あ る こ とが 解 っ た 。3. 溶 解 度 : ハ ンク ス 液 に 対 する キ ャ タ リ ス卜 の 溶 解 度 はべ ー スの約27倍を 示した 。また ,TEGDMAの溶解 度はUDMAの17倍で あっ た。

  H細 胞 機 能 試 験1. ・02: 各 浸 漬 期 間 の 硬 化 試 料 溶 出 液に お い て ,PMA及 びA23187刺 激 の 好中球Oz産生 量はコ ントロ ール のハン クス液(2. 82土O.17;1.57土0.17nm017min/106cells) に比べ 濃度 に依存 して有 意(pくO. 05)に低下 した。 キャタ リスト 溶解 液の0―2産生量は溶出液 と 同様 な結 果を示 した。 しかし ,ベー ス溶 解液で はA 23187刺激 のみ濃 度に依 存し て低下 した。

一 方 ,TEGDMAとUDMAの01産 生 量 は 両 刺 激 と も , 濃 度 に 依 存 し て 低 下 し た 。 従 っ て , 溶 出液 の02産 生は 刺 激 の 種類 により 抑制 機序が 異なり ,Oz産 生能の 抑制因 子はキ ャタリ スト 成 分 に 含 ま れ て い るTEGDMAとUDMAで あ る こ と が 解 っ た 。2.PGEユ 産 生 : 硬 化 試 料 溶 出 液 にお け るPGEよ 産 生 は 濃 度に 大 き く 左 右さ れ , 無刺 激では コント ロー ル(83. 44土24. 86pg/

106cells/30min) と ほ ば 同程 度 で , 溶 出液 の 希 釈 に よ り増 加 し た 。 一方 ,PMA刺 激 で はA23 187刺 激 と 異 な り 、 溶 出 濃 度 に 依 存 て 抑 制 さ れ た 。 な お ,TEGDMAとUDMAは 抑 制 度 の 違 い はあ る が , 共 にPGEエ 産 生を 抑 制 し た 。3. 細 胞 生 存率 : 硬 化 試 料溶 出 液とべ ―ス溶 解原 液 に お け る 細 胞 生 存 率 は コ ン 卜 口 ー ル に 比 し て 有 意 差 は な か っ た が ,TEGDMAとUDMAの 溶 液原液 には 有意差 が認め られた 。し かしナょがら,希釈することによりこの有意差はなくなった。

従 っ て , キ ャ タ リ ス ト 成 分 のTEGDMAとUDMAの 溶 解 度 が 大 き い 場 合 は 細 胞 毒 性 を 示 す こ と が 解 っ た 。4.LDHの 漏 出 : 硬 化 試 料 溶 出 液 に お け る 好 中球 のLDH漏出 は , い ず れも 濃 度 におい ても コント 口ール と有意 差は なかっ た。他 の溶解 原液に っい ては有 意差が認められたが,

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希釈するに従って有意差はなくなった。5.好中球の形態学的観察:溶出液とキャタリスト溶解 液における好中球のSEM像では・コント口ールに比べ,細胞表面,特に突起の形態変化が認めら れた。

  [考  察]

  好中球は種々の刺激に対して,0―2,PGE:等の様々な生理活性物質を産生・放出するが,そ の細胞応答 の情報伝達系の主軸のーっがCaz゛/リン脂質依存性のプロティンキナーゼCであ る。即ち, 刺激による好中球のOz,PGEエ産生には細胞内のCa2゛の移動,プロティンキナー ゼCの活性化が必要となる。著者はこの情報伝達系に注目して,ボンディング材の為害性にっい ての新しい生物学的評価法にっいて検索した。その結果,硬化試料溶接液は細胞生存率やLDH 漏出に大き な変化を与えなかったが,02,PGEユ産生を抑制した。一般に,O;産生は細胞膜 中 のNADPHオ キシダーゼが細胞内へのCaa゛流入,プロティンキナーゼCにより活性化され て惹起されるものと考えられている。従って,その抑制機序はプロティンキナーゼCを直接活性 化 するPMAの作 用抑 制, あ るい はプ ロテ ィン キ ナー ゼC,NADPHオキ シダーゼ活性の阻害 に基づくも のと思われる。一方,PGEユ産生の律速酵素であるフォスホリパーゼAエは細胞膜 に存在しCa2゛流入,プ口ティンキナーゼCより活性化されると考えられているが,今回は,細 胞膜が硬化試料溶出液によって形態変化することがSEM像解析より明らかになった。このこと か ら , 溶 出 液 のPGEよ 産生 の抑 制 は溶 出成 分TEGDMA,UDMAが細 胞膜 を 修飾 し,A23187 のCa2゛流入の抑制あるいは様々な刺激の情報伝達系を仲介をするプ口ティンキナーゼCの阻害 を反映しているものと考えられる。

  [結  論]

  ボ ンデ ィン グ 材は ハン クス 液 中に 溶出 し, その 溶 出成 分は 主にTEGDMAとUDMAであっ た。溶出液はヒト好中球の細胞生存律,LDH漏出検査において大きな変化を与えなかったが,

02,PGE:産 生能 には 影響を及ばした 。この変化はSEM像解析の細 胞表面突起の形態変化 と相関していた。従って,今後,従来の歯科材料の為害性に対する生物学的評価に情報伝達系を 介した試験法を加えることは,細胞機能の情報を得ることができ,細胞毒性試験と使用試験の相 関性を明らかにするー手法として寄与できるものと考えられる。

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学位論文審査の要旨

  歯科材料は基本的毒性試験,特殊毒性試験,使用試験などの生物学的評価を経て臨床に供され る。従来,基本的毒性試験のうち特に細胞毒性試験では,主に細胞の生死,増殖能,形態あるい は溶血性を指標としてなされてきた。しかし,この細胞毒性試験と使用試験との間に相関性を得 るには至っていない。その理由として,細胞の機能試験にっいての適切な評価がなされていなぃ こ とが考えられる。本研究は細胞機能の1つ,細胞刺激応答の情報伝達系に着目し,歯科材料が この系にどのような影響を与えるものかを調ベ,細胞機能試験としての可能性を検討したもので ある。研究成果は次の通りである。

  歯科材料として市販のキャタリスト,ベース2液からなるボンディング材(ライトフィルボン ド@)を用いた。最初にキャタリス卜,ベース,硬化試料およびこれらの主な成分卜リエチレン グ リコ ―ル ジメタクリレ一 卜(TEGDMA)とジメタクリ口 キシエチルトリメチルヘキ サメチ レンジウレタシ(UDMA)のハンクス液への溶 解(出)液を種々の濃度で希釈したものを試験 試 料 と し た 。 な お , キ ャ タ リ ス ト 液 は , 主 にTEGDMAとUDMAであ り ,ベ ース はTEGDMA である。細胞機能試験としては,ヒト好中球にホルボ―ルミリスチン酸アセテ―ト(PMA)及 びカルシウムイ オノホアA 23187(A23187)刺 激を与えた場合の02,PGEユ等の生理活性物質 を産生する系を用い,溶解(出)液を加えた場合のこれらの物質の変動を調べた。細胞の乳酸脱 水 素 酵 素 (LDH) 漏 出 , 生 存 率 , 形 態 変 化 に っ い て も 合 わ せ て 調 べ た 。   その 結果 ,硬 化試 料 から の溶 出及 びキ ャ タリ スト ,TEGDMA,UDMA溶解 液に お ける02 産生量は両刺激ともに濃度依存的に有意に低下した。しかし,ベース溶解液ではA 23187刺激の み 濃度 に依 存し て低 下 した 。従 って ,TEGDMA,UDMAが02産生の抑制因子として作 用し,

異種刺激材により反応の抑制機序が異なることがわかった。PGE:産生量は,硬化試料溶出液 では無刺激の場合は希釈により増加したのに対し,PMA刺激では溶出濃度に依存して抑制され た 。一 方,A 23187刺激 では 大 きな 差を 示さ なか っ た。TEGDMAとUDMAでは抑制精 度の違 いはあるが,共 にPGEエ産生を抑制した。ま た,溶出度の細胞生存率.LDH漏出は試験試料 を 加え ない 場合 (コ ン トロ ール )に 比ベ 有 意差 はな かっ が ,TEGDMAとUDMAの 溶 解原 液

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河 保

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は 有 意 に 細 胞 生存 率 の 低 下 ,LDH漏 出の 増 加 を も た らし た 。 しかし ,希釈 する に従い この有 意 差 は な く な っ た。 走 査 型 電 子顕 微 鏡(SEM) 像 観 察に お い て , 溶 出度 と キ ャ タ リス ト溶 解液の 好 中球 はコン ト口ー ルに比 べ, 細胞表 面,特 に突起 の形態 変化 が認め られた 。以上 の成 績から,

硬 化 試 料 溶 出 液 は 細 胞 生 存 率 やLDH漏 出 に 影響 を 及 ば さ ず,02,PGE: 産 生 を 抑制 す る こ と が 明ら かにな った。

  一 般 に ,02産 生 は 細 胞 内 へ のCa2゛ 流 入 や プ 口 テ ィ ン キ ナ ー ゼC(PKC)に よ りNADPH オ キ シ ダ ― ゼ が活 性 化 さ れ て惹 起 さ れ る もの と 考 え ら れて い る。従 って, その 抑制機 序はPKC を 直 接 活 性 化 す るPMAの 作 用 抑 制 , あ る い はPKC, NADPHオ キ シ ダ ー ゼ 活 性 の 阻 害 に 基 づ く も の と 思 われる 。一 方,PGEエは 細胞膜 のフオ スホ リパー ゼAユ活性 に依存 し,Ca2゛流 入,

PKCに よ り活 性 化 さ れ ると 考 え ら れ てい る 。 こ の こ とか ら , 溶 出 液のPGEよ産 生 の 抑制は 溶出 成 分TEGDMA,UDMAが 細 胞 膜 を 修 飾 し ,A23187のCa2゛ 流 入 の 抑 制 或 い 様 々 な 刺 激 の 情 報 伝達 系の仲 介をす るPKCの阻害 を反 映した ものと 考えら れる 。

  [ 結 論 ]硬 化 試 料 か らの 溶 出 液 は ヒ ト好 中 球 の 細 胞生 存 率,LDH漏 出検 査にお いて影 響を与 え な か っ た が ,02,PGE: 産 生 能 に 大 き く影 響 を 及 ぼ した 。 こ の 変 化はSEM像 の細 胞 表 面 突 起 の形 態変化 と関連 してい た。 従って ,本実 験に用 いた細 胞機 能試験 は従来 の試験 法に 加えて,

今 後細 胞毒性 試験と 使用試 験の 関連性 を明ら かにす る一手 法と して寄 与する ことが 示唆 された。

  審査は 審査員 全員に よっ て口頭 でなさ れた後 ,二 審査員 より筆 答試験 によっ て基 礎歯学の能カ テ スト がされ た。

  口頭試 験では ,最初 に論 文の概 要の説 明を求 め, 続いて 本細胞 機能試 験の情 報伝 達系,試験試 料 の濃 度と毒 性に対 する考 え方 ,細胞 として ヒト自 血球を 選ん だ理由 など個 々の内 容に っいて,

関 連事 項と合 わせて 質疑応 答が なされ た。

  これに 対して 学位論 文申 請者, いずれ も明快 かつ 適切な 回答を 示した 。また ,図 表の訂正を求 め たと ころ, これを 理解し 後刻 ,改訂 図表を 各審査 員に提 示し ,了承 を得た 。また ,基 礎能カテ ス トに っいて も合格 的を獲 得し た。

  審査の 結果, 本論文 の細 胞機能 試験は 今まで にな されて いない 新しい 材料の 生物 学的評価法で あ り,今後よた適切な材料の評価法を確立する上で大きナょ意義を有するものであると認められた。

  以上の 結果, 審査員 全員 によっ て,本 論文は 学位 論文と して十 分値し ,論文 申請 者は専門およ び 関 連 領 域 に っい て 十 分 な 学識 と 理 解が あり, 博士( 歯学 )の授 与に値 する者 と認定 され た。

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参照

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