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博 士 ( 薬 学 ) 明 石 真 也

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Academic year: 2021

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博 士 ( 薬 学 ) 明 石 真 也

学 位 論 文 題 名

窒 素 ガ ス 及 び 大 気 中 窒 素 の 有機 合 成 へ の利 用

一 新 規 ヘ テ ロ 環 合 成 反 応 の 開 発 一

学 位 論 文 内 容 の 要旨

  窒 素 は生 物 の 生存に 必須であ り重要 な元素で ある。20世紀初頭 、人口 の増加に 伴い 窒素 資 源 の不 足 によ る食料危 機が懸 念され、 分子状窒 素の固 定法を開 発する ことが人 類の 生 存 の為 に 急務 となった 。多く の努カの 結果1911年 、高温・ 高圧条 件下、鉄 を触 媒と し 窒 素と 水 素か らアンモ ニアを 合成する 「ハーバ ー・ボ ッシュ法 」が開 発され、

こ の 反 応 は そ の 後 の 人 口 増 加 お よ び 文 明 の 発 展 を 根 本 か ら 支 え て い る 。   分 子 状窒 素 は 非常に 安定であ り「不 活性ガス 」と呼 ぱれ通常 の条件で はほと んど反 応性 を 示 さな い 。こ のため、 分子状 窒素を化 学的に変 換し利 用するこ とは非 常に難し い。窒 素資源の 枯渇とい う問題 はハーパ 、−・ ポッシュ法により解決されたが、常温・

常圧 下 で の窒 素 固定 反応の開 発は未 だ興味深 い課題で ある。1960年代、 常温・常 圧下 での窒 素固定反 応が知ら れるよ うになっ た。す なわち、遷移金属と分子状窒素が常温・

常圧条 件で反応 し錯体を 形成す ることが 示され 、現在までに数多くの遷移金属‐窒素錯 体が合 成されて いる。し かし、 遷移金属 ‐窒素 錯体を有機合成に用いた例は、数例知ら れるのみで、未だ未開拓の分野である。著者は遷移金属‐窒素錯体を有機合成に利用し、

新た な 含 窒素 有 機化 合物の合 成法を 開拓すべ く研究を 行った 。これま でに著 者の所属 す る 研 究 室 で は 、TiCI。 、Liお よびTMSC1を1気圧 の 窒 素気 流 下 、THF中室 温 に て撹 拌するという簡便な方法で、分子状窒素をTi‑N錯体として捕捉できることを報告し一aゝる。

また 、 こ のTi‑N錯体 と 分 子内 に2つの ケ ト ンを持 つ化合 物を反応 させる と、ピロ ール 誘導 体 が 合成 で きる ことを報 告して いる。著 者はTi‑N錯 体の合成 法に検 討を加え 、こ の錯体 の合成にTi(OiPr)4を 利用でき ること を新たに 見い出 した。次 に、この系を用い 分子 内 に アル キ ンと ケトンを 持つ化 合物を基 質として 、ヘテ ロ環を合 成する ことに成 功し た 。 この 過 程 でTi‑N錯体 と エ ステ ル か ら1段 階でニ トリルを 合成す る反応を 見い 出し た 。 さら に 、大 気中窒素 を有機 合成に利 用するこ とを検 討し|大 気中窒 素を用い てへ テ 口 環を 合 成す る反応を 開発し た。この 反応を天 然物合 成へと応 用し、 (土)‐

PumiliotoxinCの 合 成 に 成 功 し た 。 こ れ ら の こ と に つ い て 報 告 す る 。   著 者 はま ず 、Ti‑N錯体の 合成に 用いるチ タン化合 物につ いて検討 を加え た。チタ ン 化 合 物 、 チ タ ン に 対 し10当 量 の 還 元 剤 お よ び10当 量 のTMSCIをTHF中1気 圧 の 窒 素気 流 下 撹拌 しTi‑N錯体 を合成し た。得 られた錯 体を加 水分解し 窒素由 来の化合 物を アン モ ニ アに 変 換後 、ベンゾ イルク ロライド と反応さ せ、固 定された 窒素を べンズア ミド に 変 換し チ タン に基づい て収率 をもとめ た。種々 検討を 加えた結 果、チ タン化合 物とし てTi(O'Pr)4、 還元剤 .としてLiを用い ると、TiCl4およびLiを用いたときと同様 に窒素が捕捉出来ることが明らかとなった。

  次に、Ti(0′Pr)。 から合成したTi‑N錯体を、ヘテ口環の合成に利用することを検討し

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た 。シ クロヘ キサノン の2位に2.プ口ピ ニル側 鎖を持っ ケトー アルキン とTi‑N錯体 と 反応 にっいて 検討を加 えた。 アルキン 上にメトキシカルボニル基を有するケト‐アルキ ンとTi(O'Pr)4から 合成し たTiーN錯体を室温にて反応させたところ、基質のカルポニル 炭素 および側 鎖のアル キンの2位の 炭素に 窒素−炭 素結合が 生成し、環化反応が進行し た結 果、イン ドール誘 導体が 高収率で 得られた。そこで、Ti(0′Pr)4から合成したTi‑N 錯体と種々のケト‐アルキンとの、反応を検討した。この結果インドール誘導体、ピロー ル 誘導 体、キ ノリン誘 導体、 ピペリジ ン誘導 体および インドリ ジン誘 導体を合 成する こ とに 成功し た。以上 の結果 は分子状 窒素を 窒素源と して、簡 単な方 法で様々 なへテ ロ 環を 合成し たことに なり非 常に興味 深い。 この反応 の機構は 完全に は解明で きてい ないものの、活性種としてチタン‐イミド型の錯体((|PrO)Ti=N‑TMS))もしくはこれと 等価なチタン.アミド型の錯体((fP雨)ClTiボ(TMS)2)が働しゝているものと考えられた。

  イ ン ドリジン 誘導体を 合成し た際に、 生成物 のメトキ シカル ボニル基 がニト1jルに 変換 された化 合物が少 量なが ら得られ ていた 。そこで 、エス テルとTi・N錯体からニト リ ルを 合成す ることを 検討し た。この 結果、 分子状窒 素を窒素 源とし て、エス テルか らニトリルを1段階で合成する反応を開発することに成功した。

  窒素 は大気中 の80ワ。 を占め豊 富に存在する気体であり、大気中窒素を直接固定する こ とは 非常に 興味深い 課題で ある。著 者は本 系を用い ることに より、 大気中窒 素を固 定 でき る の で はな い か と考 え た 。大気中 には窒 素の他に02,H20などが含 まれる 。前 周 期金 属 は 一 般に 酸 素 に対 し て はそれほ ど鋭敏 な反応性 を示さ ないが、H20に対 して は 非 常 に 反応 性 が 高 いこ と が 知ら れ て いる 。 そ こで 、H20を 除 くぺ く 、MS4A管 及び Caa2管 を 通じ て 乾 燥し た 空 気を 用い 、Ti−N錯体を 合成する ことに した。得 られた 錯 体 を加 水分解 し、捕捉 した窒 素を先と 同様の 方法でべ ンズアミ ドに変 換し、チ タンに 基づき収率をもとめた。その結果、Tia4`Ti(OIPr)。いずれを用いても良好な収率で大 気中窒素が捕捉できることがわかった。

  そこ で大気中 窒素か ら合成し たTi.N錯体を 用いて、 ヘテ口 環を合成することを検討 した 。大気中 窒素、Ti(OIPr)4、Li及びTMSaから合成したTi‐N錯体を種々のケト.ア ル キン と反応 させたと ころ、 窒素ガス を用い た場合と 比較する と若干 収率が低 下する も のの インド ール誘導 体、キ ノリン誘 導体お よびピペ リジン誘 導体を 合成する ことが で きた 。大気 中窒素を 用いて 、ヘテロ 環が合 成できた ことは非 常に興 味がもた れる。

  著 者 は、先の 検討にお いてキ ノリン誘 導体が 得られた ことか ら、この 反応を天 然物 合 成へ と応用 すること にし、PumiliotoxinCの 合成を行 うこと にした。PumiliotoxinC は南米の亜熱帯地方に生息する矢毒ガェルD伽加みdfぞsp mffめやDピ凡dmみロf蝕ロ rnfHJ から 単離され たシス‐ デカヒ ドロキノ リン骨格を持つアルカ口イドである。著者は適当 な位 置に置換 基をもっ ケト‐ アルキン とTi‐N錯体を 反応さ せ、キノリン骨格を構築し た 後、 接触還 元を行い シス‐ デカヒド ロキノ リン骨格 に変換し 、側鎖 の変換を 行えば PumiliotoxinCが合成できるものと考えた。そこで、市販の3‐メチル‐2‐シク口ヘキセノ ン から7工 程 で、 基 質 とな る2位に2‐プ ロピニ ル置換基 をもつ シク口ヘ キサノン 誘導 体を 合成した 。このものを、大気中窒素、Ti(OIPr)4`Li及びTMSClから合成したTiーN 錯 体と 反応さ せたとこ ろ、目 的とした キノリ ン誘導体 を良好な 収率で 合成する ことが でき た。この ものを、 接触還 元しシス ‐デカヒド口キノリン骨格を構築した後、側鎖の 変 換 を 行 う こ と に よ り ( 土 ) _PumiliotoxinCを 合 成 す る こ と に 成 功 し た 。   以 上 の結果は 、分子状 窒素を 非常に簡 便な方 法で有機 合成に 利用した ことにな り、

大変興味深いものであると言える。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

窒素ガス及び大気中窒素の有機合成への利用

― 新 規 ヘ テ ロ 環 合 成 反 応 の 開 発 ―

  分 子 状 窒 素 は 従 来 、 不 活 性 ガ ス と さ れ 化 学 的 変 換 は 困 難 で あ る と 考 え ら れ て き た 。 し か し 、1967年 、 山 本 ら は 初 め て 窒 素 ガ ス 由 来 の 窒 素 分 子 が 配 位 し た コ バ ル ト ‐ 窒 素 錯 体 を 常 温 ・ 常 圧 で 合 成 し ¨ 、 さ ら に1969年Tiに よ る 窒 素 固 定 を 報 告 し た そ の 後 、 様 々 な 遷 移 金 属 錯 体 と 窒 素 分 子 が 常 温 ・ 常 圧 で 反 応 す る こ と が 知 ら れ る よ う に な っ た 。 し か し な が ら 、 こ れ ら の 錯 体 を 有 機 合 成 に 用 い た 例 は、 現在 まで に数 例知 られ るの みで ある。これまでに 当研究室では、TiCl。ニLiお よ びTMSC1を 常 圧 の 窒 素 気 流 下 、THF中 室 温 に て 撹 拌 す る と い う 簡 単 な 方 法 で 、 分 子 状 窒 素 をTi―N錯 体 と し て 捕 捉 し 、 こ のTi‑N錯 体 と カ ル ポ ニ ル 化 合 物 を 反 応 さ せ る と 、 ヘ テ 口 環 化 合 物 が 合 成 で き る こ と を 報 告 し て い る 。 今 回 、 明 石 君 は Ti― N錯 体 の 合 成 法 に 検 討 を 加 え 、 以 下 の 結 果 を 得 て い る 。

1. Ti‑N錯 体 を 用 い た 新 規 ヘ テ 口 環 合 成 反 応 の 開 発

  当 研 究 室 で はTiCl4,Li,TMSCIを 用 い る こ と に よ り 窒 素 固定 に成 功し てい る。

そ こ で ま ず 、 こ の 系 に 他 のTi化 合 物 が 利 用 で き る か ど う か 、 調 べ た 。 種 々 検 討 し た 結 果 、Ti(OiPr)。 をTiCl4の 代 わ り に 用 い た と こ ろ91ワ。 の収 率でPhCONH2と し て 窒 素 が 捕 捉 さ れ 、 こ の 系 がTiCl。 を 用 い る 系 と 同 様 に 、 窒 素 の 捕 捉 に 有 効 で あ る こ と が わ か っ た 。

  次 に 、Ti(O'Pr)4か ら 合 成 し た 錯 体 が 、TiCl4か ら 合 成 し た錯 体と 同様 に有 機合 成 に 利 用 で き る か ど う か を 検 討 す る こ と に し た 。 分 子 内 に ア ル キ ン と ケ ト ン を 持 つ 化 合 物 とTi―N錯 体 と の 反 応 を 検 討 し た そ の 結 果TiCI』 か ら 合 成 し た 錯 体

子 一

保 洋

美 俊

   

   

   

橋 藤

森 橋

高 佐

授 授

授 師

教 教

教 講

査 査

査 査

主 副

副 副

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を用い反応を行ったところ、90a/o という高収率でインドール誘導体が得られた。

一方、Ti(O'Pr) 。から合成した錯体の場合は、室温でも82u/o の収率で目的物を与 え た。 っづ いて 、この 反応 の適 用範 囲の拡大を行った。これまでの知見から、

アルキン上の置換基はェステルとし、様々な基質で検討した。ピ口ール誘導体、

キ ノ リ ン 誘 導 体 な ど が 高 し ゝ 収 率 で 得 ら れ る こ と が わ か っ た 。    本研究過程で、エステルからニトリルガ一段階で得られることを見い出した。

そ の結 果、 不飽 和工ス テル では 収率 が低下するものの、飽和のエステルを用い た場合、良い収率でニトリル体が得られた。

2 .大気中窒素の有機合成への利用

   窒素 は大 気中 の80u/0 を占め豊富に存在する気体である。しかし、大気中窒素 を 有機 合成 に利 用し た例 はこ れま でに 知ら れていない。明石君は本系を用いる と 、大 気中 窒素 を有 機合 成に 利用 でき るの ではないかと考えた。大気中には窒 素 の他 に02 ,H20 など が含 まれ る。 前周 期金 属は 一般 に酸 素に 対し ては それほ ど 鋭敏 な反 応性 を示 さな いが H20 に 対し ては 非常 に反 応性 が高 いこ とが 知られ て いる 。そ こで 、本 系で 大気 中窒 素の 捕捉 が可能がどうかを調べるため、大気 中 の H20 を 除 く べ く 、 MS 4A 管 及 び CaCl2 管 を 用 い て 乾 燥 し た空 気を 用い 、錯 体 を合 成し た。 得ら れた 錯体 を加 水分 解し 、捕捉した窒素を先と同様の方法で べ ンズ アミ ドに 変換 し、 得ら れた べン ズア ミドから捕捉した窒素の収率をTi に 対して求めた。その結果、TiCl4 ,Ti(OiPr)4 いずれの場合も良好な収率で大気中窒 素 が捕 捉さ れる こと がわ かっ た。 次に 、大 気中窒素から合成したTi‑N 錯体を用 い て、 ヘテ ロ環 を合 成す るこ とが 可能 かど うかを検討することにした。この結 果 、い ずれ の場 合も 若干 収率 の低 下が みら れるものの、目的とするへテ口環を 合 成す るこ とが でき た。 これ らの 結果 は、 簡便な方法で大気中窒素を有機合成 に 利用 する 全く 新し い反 応を 開発 した こと になる。演者は、キノリン誘導体15 が 高い 収率 で得 られたことに興味を持ち、PumiliotoxinC の合成を検討すること とした。PumiliotoxinC は亜熱帯地方に生息する毒ガェルDendrobates pumilio や Dendrobates auratus から単離されるアルカ口イド群の中の代表的な化合物であ る。

   まず シク 口ヘ キセ ン誘 導体 から 7 工程 で基 質を 合成 した 。大 気中 窒素 から合 成 した Ti‑N 錯体 と基質を反応させたところ、目的としたキノリン誘導体が58010 の 収率 で得 られ た。 一方 、分 子状 窒素 を用 いた場 合79% の 収率 でが 得ら れた。

接触還元し、アミノ基を保護側鎖の変換を行い(土)‑PumiliotoxinC の塩酸塩に導

いた。このものの各種機器デ一夕は文献値ll )と良い一致を示したが、最終的に

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X 線構造解析によりその立体化学を確認した。

明石真也君の論文の内容は非常に興味ある結果を含んでおり、北海道大学の博

士の学位に値することが認められた。

参照

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