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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 水 産 科 学 ) 矢 吹 英 雄

学 位 論 文 題 名

プロベラ特性を考慮した停止性能の推定と 操船・制御への応用に関する研究

学位論文内容の要旨

I研究の背景と目的1

  調査船では、定点観測の必要性から、操縦性能を向上させる目的で推力調整の容易な可 変 ピッチ プロベラ(CPP)が 使用され る。また 、種々 の超音波観測装置を使用することか ら船の静穏化が要求され、プロペラをHighly Skewed Propeller  (HSP)とする傾向がある。

こうしたプロペラは、通常の操船の局面において特段問題にはならないが、調査船の多く は1軸1舵船 であるこ とから 、停止性能については必ずしもプラスとなるとは限らない。

CPPでは 、翼角を後進側に操作して船を停止させる場合は、針路保持が困難になることが 知られており、また、プロペラのスキューが大きくなるほど後進推力自体が弱くなるとい う欠点も指摘されている。このような船の操船者にとって、停止性能は、船舶運航のさま ざまな局面で安全な操船を行う上で重要な指標のひとっであり、航海速カからの緊急逆転 停止性能に加え、投錨、着桟時に行われる比較的低速カからのそれも風潮等の外乱を考慮 し た 実 海 域 に お け る 停 止 性 能 に 関 す る 情 報 を 提 供 す る 必 要 が あ る 。   操船者に高度な技術が要求される操船局面として、桟橋へのアプローチ操船が挙げられ る。操船者は、停止運動に及ぼす風潮等の影響を推定しながら、舵、主機、スラスタ等の 複数のアクチュエータを同時に使用して複雑な船体運動を制御しつつ、本船を所定の位置 へ正確に停止させる必要があり、操船者の労働負荷と精神的負担が非常に大きくなる。こ の時、労働負荷と精神的負担の増加により、操船者の処理機能が低下して過ちを犯すヒュ ーマンエラーが起これぱ、桟橋への衝突、座礁といった海難事故にっながる。このような 事故を防止するためには、操船者が行うアプローチ操船を効率的に行えるように支援し、

操船者の労働負荷を軽減するための支援システムが必要である。

  本 研究 で は 、ま ず 停 止 性能 に 及 ぼすHSPとCPPの 特 性 、実 海 域 にお け るCPP1軸1舵 船の停止性能の特性を解明する。次にこの結果を踏まえて、安全運航に資する実用的な操

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船ブックレット及びプロペラの特性を考慮した実海域 における効果的な停止操船法を検 討し、また、操船者の労働負荷軽減のためのアプローチ操船支援システムの開発を目的と する。

【方法及び内容1

  本 研 究 で は 、 同 一の 実船 を用 いたHSPとCP、CPPとFPPそれ ぞれ の比 較 実験 、模 型 試験及びシミュレーション計算により、停止性能に及 ばすHSPとCPPの特性を検討する。

また 、実 海域 にお けるCPP1軸1舵 船の 停止 運動 を表現する数学モ デルを誘導し、風力 下における停止運動の特性と自力着桟操船の限界を推 定する手法及び操船ブックレット の作成法を検討するとともに、プロベラの特性を考慮 した効果的な操船・制御法につい て述べる。さらに、操縦運動数学モデルによるシミュ レーション手法と操船ブックレッ トを応用したアプローチ操船支援システムとその評価 について論じる。内容は以下のと おりである。第1章では、 停止性能に関するこれまでの研究を概括し、プロペラの 特性 を考慮した停止操船法と操船者の労働負荷軽減のため のアプローチ操船支援システムの 必要性について述べる。第2章では、実船実験、模型試験及ぴシミュレーション計 算に より 、停 止性 能に 及ば すHSPの特 性を 解析 する 。第3章で は、CPPとFPPの比 較実験に よ りCPPの 停 止 性 能 の特 性を 解析 する 。第4章で は、CPP1軸1舵船 の風 力 下の 停止 運 動を推定するための数学モデルを誘導する手法を述べ る。第5章では、シミュレー ショ ン計 算に よりCPP1軸1舵 船の 停止 性能 に及 ばす 風の影響を明らか にするとともに、風 力下における自力着桟操船の限界を推定する方法と実 用的な操船ブックレットの作成に ついて述べる。第6章では 、アプローチ操船におけるプロペラの特性を考慮した効 果的 な停止操船法について論じる。第7章では、シミュレーションと操船ブックレット を応 用したアプローチ操船支援システムについて述べる。第8章に本研究のまとめを述べる。

【結論及び考察l

1)HSPは 、低 速カ で前 進中に後進とした場合の推カが弱く、低速 カで行われる投錨操 船、 アプ ロー チ操 船の 局面 でCPに較 べ停 止時 間等 が長くなる。またHSPでは、プロペ ラ逆 転に 伴っ て誘 起さ れる横力及びモーメントがCPに較べ大きく 、停止操船における 横流れと回頭運動が大きくなる。この特性は、プロペラ自体の特性に起因するといえる。

2) CPPの停 止時 間等 はFPPに較べ短く、また、初速が大きいほど その違いが顕著であ り、CPPの停 止性 能が 優れている。CPPの回頭運動については、針 路安定性の良い船型 に あ っ て も 回 頭 方 向がFPPの よう には 一定 せず 、風 の影 響を 受け 易い 特 性が ある 。 3) CPPの停止性能は、FPPと同様に見掛け前進率Jso(=Uo/(n.P))を用いて整理する

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(3)

こ とができ るが、こ のときの ピッチと して有効 ピッチを使用する必要がある。

4

) CPP1軸1舵船の実海域における停止運動を表現する数学モデルは、FPP船の数学モ デルの考え方を適用して、模型試験及びデータベースから平均的流体力特性を特定する 方法により誘導することができるが、後進操作に伴って誘起される流体カに関しては資 料が少なく、煩雑な模型試験による推定が必要で、データベースの整備が課題である。

5

)風力下の停止運動特性及び操船限界をシミュレーションにより推定する手法を示し た。これにより、海上公試等で得られる操縦性能データを補足し、実用的な操船ブック レットとして整理することが可能となり、船舶の安全かっ効率的な運航に寄与できる。

6

) CPに較べ後進推カが弱い

HSP

船の停止操船では、最小舵効速カとした上、CP船よ り少し強めの後進とする操船法により、停止距離をCP船と同程度とすることが可能で、

かつ、回頭運動を小さく抑えることができる。また、CPP船の回頭運動は、翼角を後進 とする直前の操船履歴によって方向付けされる傾向があるが、後進とする前に大舵角で 操舵を行う操船法により回頭運動の制御が可能である。この操船・制御法は、停止操船 と同時に回頭運動の制御が必要な風力下の投錨操船、衝突回避等危急時の避航操船にも 適 用 可 能 で 、 実 海 域 に お け る 港 内 操 船 の 安 全 と 効 率 運 航 に 寄 与 で き る 。

7

)操船記録と操船ブックレットで構成するデータベース及ぴ操縦運動のシミュレーシ ヨン手法を用いて、操船計画の立案、操船時の運動推定と制御法の事前検討、操船の事 後評価を行う操船支援システムにっいて実船データによる評価を行い、その実用性を示 した。操船計画支援機能では、操船者の操縦運動法則についての知識をシミュレーショ ンにより補完することとしており、操船者は安全で効率的な操船計画を立案することが できる他、事前検証と予習が可能で、労働負荷の軽減と安全運航に寄与できる。操船者 の経験則を補完するデータベースは、操船を行う都度情報の質と検索の確度が向上する 学習型とし、操船者問の共有データベースとしたことより、操船者は、比較的短期間の うちに操船技術を習得することが可能で、船員の減少と急激な高齢化に伴って、従来の

OJT

による操船技術の伝承が困難となりつっある現状に対応できる。なお、労働負荷の 更なる軽減のためには、提案したシステムの機能のみでは不十分で、操船計画に従って 操船者が半自動で操船を行うことができる機能等、操船の実行段階における支援機能の 開発が課題となる。以上の、シミュレーションにより実海域における停止性能を推定し て操船ブックレット及び操船・制御法にまとめ、操船支援システムを構築する手法は、

一 般 船 舶 に も 適 用 可 能 で 、 安 全 運 航 と 効 率 運 航 に 貢 献 で き る 。

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学 位 論 文 審 査 の要 旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

芳 村 康 男 山本勝太郎 木 村 暢 夫 蛇 沼 俊 二

学 位 論 文 題 名

プ ロ ベ ラ 特 性 を 考慮 し た 停 止性 能 の 推 定と 操 船 ・ 制 御 へ の 応 用 に 関 する 研 究

  漁業 ・海 洋調 査 船で は, 定点 観測 の必 要性 から ,操 縦性 能を 向上 させ る 目的 で推 力調整の 容 易な 可変 ピッ チ プロ ベラ(CPP)が 使用 され る 。ま た, 精巧 な超音波観測装置を使用すること から船の 静穏化が要求され,騒音の低いHighly Skewed Propeller (HSP)が使用される。こうした プ ロペ ラは ,通 常 の操 船の 局面 にお いて 有益 であ るが ,停 止性 能に っい て は問 題が 多い。本 研 究で は,HSPとCPPの プロ ベラ 特性 が停 止性 能に 及ば す影 響を 明ら かに し ,こ れら のプロペ ラ を装 備し た船 の 停止 性能 の特 性を 解明 した 。続 いて ,安 全運 航に 資す る ため ,外 乱を含む 実 海域 にお ける 効 果的 な停 止操 船法 を検 討し ,ま た, 港内 のア プロ ーチ 操 船支 援シ ステムの 開発研究 を行った。

  主要な 研究成果は以下のとおりである。

1.  Highly Skewed Propeller(HSP)における停止性能の把握

Highly Skewed Propellerは, 低速 カで 前進 中 に後 進と した 場合の推カが弱く,低速カで行わ れ る投 錨操 船, ア プロ ーチ 操船 の局 面で 通常 のプ ロベ ラに 較べ て停 止時 間 等が 長く なる。ま た プロ ベラ 逆転 に 伴っ て誘 起さ れる横力 及びモーメントが大きく,停止操船における横流れと 回 頭 運 動 が 大 き く な る 。 こ れ を 模 型 船 の み な ら ず 実 船 試 験 で 定 量 的 に 明 ら か に し た 。 2.可変ピッチプロベラ(CPP)における停止性能の把握

可 変ピ ッチ プロ ペ ラ(CPP)の停 止時 間等は通常の固定ピッチプロペラ(FPP)に較べ短く,また,

初 速 が 大 き い ほ ど そ の 違 い が 顕 著 で あ り ,CPPの 停 止 性能 が優 れて いる 。CPPの回 頭運 動に っ い て は , 針 路 安 定 性 の 良い 船型 にあ っ ても 回頭 方向 がFPPの よう に は一 定せ ず, 風の 影響 を 受け 易い 特性 が ある こと を実 船実験で 明らかにした。また,停止性能が見掛け前進率を用い て整理す ることができることを明らかにし,このとき解析に適用するプロペラピッチとして有効ピ ッ チ を 使 用 す れ ば 通 常 の プ ロ ベ ラ と 同 様 に 取 り 扱 え る こ と を 明 ら か に し た 。

(5)

3

.数値シミュレーションによる停止性能の推定法の開発

  CPP

を装備した1軸

1

舵船の実海域における停止運動をシミュレーション計算するための数 学モデルを開発した。具体的には,

FPP

船の数学モデルを基本に,上記2.で明らかにした有 効ピッチを適用して,後進操作に伴って誘起される流体カの表現を試みた。シミュレーションは 実船実験の結果を比較的精度良く推定することが可能になった。ただし,後進操作時の流体 カについては資料が少なく,煩雑な模型試験による推定が必要で,今後はこうした流体カデ ータベースの整備が課題である。

4

. HSP,CPP装備船の停止操船・制御方法の開発

  

上記の数値シミュレーションを種々の操船環境の下で行うことによって,最適な停止操船・制 御方法の開発を試みた。

HSP

においては,最小舵効速カとした上,通常プロペラより強めの後 進とする操船法により,停止性能を通常プロペラと同程度にすることが可能である。また,CPP を装備した船では,後進操作直前に大舵角で操舵を行う操船法により回頭運動の制御が可能 なことを明らかにした。

5

.港内操船支援システムの開発

  

操船記録と操船ブックレットで構成したデータベース,及び操縦運動のシミュレーション手法 を用いて,操船計画の立案,操船時の運動推定と制御法の事前検討,操船の事後評価を行う 操船支援システムについて実船データによる評価手法を開発し,その実用性を示した。操船 計画支援機能では,操船者の操縦運動法則についての知識をシミュレーションにより補完する こととしており,操船者は安全で効率的な操船計画を立案することができる他,事前検証と予 習 が 可 能 で , 労 働 負 荷 の 軽 減 と 安 全 運 航 に 寄 与 で き る こ と が 明 ら か と な っ た 。

審査員一同が評価した点は以下の通りである。

1

)漁業・海洋調査船によく使用される可変ピッチプロペラ(CPP),あるいは騒音の低いHighly

  Skewed Propeller(HSP)

を装備した場合の船の停止性能の問題点について,力学的にメカ

  

ニズムを解明し,また,多くの実船試験を実施することによって,これらを定量的に明らかに

  

したこと。

2

)プロペラを後進に操作した場合の船の停止運動や停止性能について,数値シミュレーショ

  

ンを行うという実用的な推定手法を開発したこと。

3

)各種の外力条件下に対して数値シミュレーションを行うことにより,上記1)の停止性能の問

  

題点に対して,これを上手く解決する実用的な操船手法・制御方法を考案し,これを確認

  

したこと。

4

)更に,操船の労働負荷の軽減と安全運航を目的として,接岸,錨泊を行う港内操船の新し

  

い支援システムを,各種のデータベース,及び操縦運動のシミュレーション手法を用いて・

  

操船計画の立案,操船時の運動推定と制御法の事前検討,操船の事後評価を行う操船支

  

援システムを開発し,その実用性を確認したこと。

(6)

審査員一同は本研究が,漁業・観測調査船を含む一般船舶に対して,実海域における港内 操船の安全と効率運航に資するものと高く評価し,本論文が博士(水産科学)の学位を授与さ れる資格のあるものと判定した。

参照

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