国語科の主張
1 教科で育みたい人間像
現在,インターネットが普及したことで,人と人 5 とのつながりには広がりが見られます。しかし,世 代間の格差が生まれたり,同じコミュニティー内の やりとりに終始し,他者との直接的なかかわりが希 薄になったりしていると感じています。これらのこ とから,子どもたちは他者の考えや思いに寄り添う 10 必要性を,実感しにくくなっていると言えるでしょ
う。
しかし,人は一人では生きていけません。より豊 かに幸せな社会を実現するためには、他者との深い かかわりが必要になります。だからこそ,先人たち 15 が残してくれた言語文化を大切にしながら,自分の 考えを相手に伝えたり,相手の考えを受け止めたり しながら,よりよい人間関係を構築していく必要が あるでしょう。そのために,豊かなコミュニケーシ ョン力が求められているのです。
20 ここで言う豊かなコミュニケーション力とは,事
実(叙述)を正確にとらえたうえで,自分が意図した ことを正確に伝えるためにどのような言葉を選択す るのかという,言葉を吟味しながら他者に伝える力 と,他者の発した言葉に込められた思いを的確にと 25 らえようとする,言葉を吟味しながら受け止める力
の両方を含みます。
双方向の言葉を吟味することは,互いの思いや考 えをより正確に,そして豊かに伝え合うことでもあ ります。言葉の吟味は自他の思いや考えの吟味であ 30 り,結果として想像力や感受性を高め,他者を通し
て自分の生き方について考えることにつながりま す。
私たちは,子どもたちが言語を介して,自他の 思いや考えに寄り添ったり,迫ったりすること 35 で,豊かなコミュニケーション力を育みながら,
「よりよい人間関係を構築できる人間」に成長し てほしいと願っています。
2 育みたい人間像に迫るために教科で大切にすべきこと
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私たちが考える国語の授業とは,さまざまな作品 との出会いから,そこにつづられた言葉を吟味し,
作者,または登場人物などの思いや考え方にふれる 営みのことです。さらに,仲間と語り合う活動を通 45 して,共感や批判,疑問を抱いたり,自分の考えを 深めたりしながら言語感覚を豊かにしていきます。
このように,題材化した作品の言葉を通して,自 分自身や仲間と向き合うことで,言語や社会,他者 の人生に思いをはせながら,自分の生き方について 50 考えていくことが国語の授業であると考えます。
そうした狙いを,子どもたちが主体的に味わうた めの手立てとして,次の点を大切にした授業づくり をすすめていきたいと思います。
55 ・切実感を生む題材の選定と出会い
・授業構想「問いの共有」
上記の手立てが子どもたちの思考や経験に寄り添 ったものであれば,子どもたちが言葉を吟味しなが 60 ら,自分の考えを仲間に伝えたい,仲間の考えを知 りたいと自発的に思える授業になるはずだと考えま す。
そのためには,子どもたちにとってその作品が魅 力的であることと,その作品との出会いがいかに素 65 晴らしいものになるかが重要です。作品には自分と
他者をつなぐ要素があふれています。その要素と は,言葉を通してもたらされる驚きや疑問,新しい 価値観や知識などです。人が何かに興味をもつとき は,「もっと知りたい」「なぜだろう」という驚き 70 や疑問から出発することが多いでしょう。その出会 いを演出するのが私たち教師の役目だと考えます。
次に授業構想においては,「問いの共有」を大切 にしていきたいと考えています。「問い」を「どの ような手順で解決していくのか」「それぞれの考え 75 がどのようにかかわりそうか」といった見通しや考 えの関連性を,子どもたち自身がもっている状態を
「問いの共有」と考えました。この見通しや考えの関 連性を子どもたち自身で構築できれば,自分なりの 追求方法で作品の価値に迫り,仲間と語り合う確か 80 な視点をもつことができると考えます。
仲間と共に言葉を吟味しながら語り合い,深め 合うことを味わった経験のある子どもは,違う考 えをもつ他者の存在が自分にとって必要不可欠で あることや,人と人との結びつきの大切さを実感 85 しているでしょう。このように,仲間と言葉を深 める態度を育むことは,人間関係を構築できる人 を育むことにもつながるはずです。そのため,私 たち教師も,共に語り合う仲間の一人として学び 合いに参加し,「よりよい人間関係を構築できる 90 人間」を育んでいきたいと思います。