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マウス脳におけるガストリン放出ペプチド受容体の

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Academic year: 2022

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(1)人間科学研究. Vo1.18,Supp1ement(2005). 博土論文要旨. マウス脳におけるガストリン放出ペプチド受容体の 発現部位に関する免疫組織化学的解析 Immunohistochemica1Loca1ization. ofGastrin−Re1easing. inthe. Mouse. 上地 ボンベシンは1971年にヨーロッパ産スズガエルの皮膚か. Peptide. Receptor. Brain. さり(Sari. Kamichi). 指導:木村. 一郎教授. た。その現象が扁桃体外側核においてガンマーアミノ酪酸. ら、平滑筋を収縮させる活性を指標として単離・精製され. (γ一aminobutyric. acid:GABA)作動性インターニューロ. た生理活性ペプチドである。哺乳類では、1979年にブタの. ンにGRP−Rが発現し、GABAの分泌を調節していることに. 消化管からガストリン放出ペプチド(gaStrin−re1eaSing. 起因することが、行動学や電気生理学的な研究によって示. peptide:GRP)が精製され、1983年に南野らによってブ. されている。さらに、GABAの作動薬を扁桃体基底外側核. タの脊髄からニューロメジンB(neuromedin. へ注入すると、ボンベシン/GRPの拮抗薬投与による記憶. B:NMB). が精製された。哺乳類のボンベシン様ペプチドの機能は多. の低下が改善されることから、扁桃体基底外側核がボンベ. 岐にわたり、平滑筋の収縮以外に内外分泌の調節、ホメオ. シン/GRPによる記憶の形成に関与していること、さらに. スターシスの調節等、様々な生理作用を持つことが知られ. ボンベシン/GRPによる記憶保持効果はGABA作動性. ている。ボンベシン様ペプチドは受容体を介して作用する. ニューロンを調節することにより行われている可能性が示. ことが知られており、GRPに高親和性のGRP受容体(GRP. 唆されている。ボンベシン/GRPが孤束核や扁桃体におけ. receptor:GRP−R)、NMBに高親和性のNMB受容体. る記憶形成の調節に関与していることは、これまでの行動. (NMB. 実験の結果から明らかであるが、孤束核や扁桃体にGRP−R. receptor:NMB−R)、さらに、両者に相同性を示す. ものの内在性の高親和性リガンドがまだ判明していないボ. が発現し、機能しているかは組織化学的には明らかにされ. ンベシン受容体サブタイプ3(bombesinreceptor. ていない。孤束核や扁桃体だけではなく、脳内における. subtype3:BRS−3)が同定されている。いずれも細胞膜. GRP−Rの発現パターンを明らかにすることは、GRP−Rの. に存在し、膜を7回貫通するGタンパク質共役型受容体. 記憶や情動などの機能のメカニズムを解明する上で重要な. スーパーファミリーに属する。哺乳類においてボンベシン. 手掛かりとなる。しかし、免疫組織化学的手法に使用可能. 様ペプチドとその受容体がどのような機能を担っているの. なGRP−Rに対する特異的な抗体が作製されていなかった. か、また内在性のボンベシン受容体のサブタイプが個体レ. ことから、生体内におけるGRP−Rの発現パターンは明らか. ベルでそれぞれどのように機能分担をしているのかを解明. にされていなかった。またGABAとGRP/GRP−Rシステム. するため、遺伝子ノックアウト法によりボンベシン受容体. との関係についても行動実験や電気生理学的には報告され. の遺伝子欠損マウスが作製され、その行動学的な研究から、. てはいるが、組織化学的な報告はない。そこで本研究にお. それらが各々異なる表現型を示すことが報告されている。. いては、世界で初めて免疫組織化学的手法に適した抗. たとえば、GRP−R遺伝子欠損マウスでは、暗期自発運動. GRP−R抗体を作製し、マウス脳におけるGRP−Rタンパク. 量の増加と社会相互作用テストにおける非攻撃性杜会行動. 質の発現パターンについて、特にこれまで、記憶の形成、. の増加が観察され、また聴覚性恐怖条件付け試験において. 保持との関与が示唆されている脳の各部位に注目して解析. 恐怖記憶の保持が延長することが報告されている。NMB−. を試みた。. 作製したポリクロナール抗GRP−R抗体は、GRP−Rの第. R遺伝子欠損マウスでは、ストレス応答性の変化が認めら. れ、BRS−3遺伝子欠損マウスでは、中程度の肥満(20〜 30%)を呈することが観察されている。. ボンベシンに関する研究は数多く報告されているが、そ. 二細胞外ループ179−190番目のアミノ酸配 (FSDLHPFHVKDT)を認識し、アフィニティーカラムク cDNAを導. ロマトグラフィーを用いて精製した。GRP−R. れらの中でマウスやラットを用いた行動薬理学的な解析か. 入したCOS−7細胞を、作製した抗GRP−R抗体で免疫染色し. ら、ボンベシンが記憶・学習等の高次脳機能に関与するこ. たところ、免疫陽性反応が観察された。同様の免疫陽性反. とが示唆されている。近年、GRP−R遺伝子欠損マウスが. 応はNMB−RcDNA,BRS−3cDNAを導入したCOS−7細胞. 聴覚性恐怖条件付け試験において、恐怖記憶の保持の延長. では認められなかった。またGRP−R遺伝子欠損マウス切. を呈することが観察され、また扁桃体における記憶形成の. 片を用いて検討したところ、GRP−R免疫陽性反応は観察さ. 素過程とされるシナプス伝達の長期増強の充進が確認され. れなかった。これらのことから、作製した抗GRP−R抗体が. 一91一.

(2) 人問科学研究. Vo1.18,Supp1ement(2005). GRP−Rに特異的であるこ一とが確認された。さらに抗GRP−. 怖記憶の保持に関与し、それらがGABA作動性ニューロン. R抗体と各種神経マーカー特異的抗体との二重染色の結果、. の調節を介して行われている可能性が考えられた。. GRP−R免疫陽性細胞がニューロンに特異的なMAP−2抗体. GRP−R遺伝子欠損マウスは杜会相互作用テストにおけ. およびニューロンの核に特異的なNeuN抗体免疫陽性では. る非攻撃性社会行動の増加を示し、また生後45週齢に達す. あるが、アストロサイトに特異的なGFAP抗体免疫陽性で. ると有意な体重増加を認めることが報告されている。しか. はなかったことから、GRP−Rは主としてニューロンに発現. し、このような社会行動の異常や体重増加のメカニズムは. していることが確認された。. 未だ解明されていない。一方、視交叉上核や海馬において. .抗GRP−R抗体を用いて、マウス脳におけるGRP−Rタン. GRP/GRP−RシステムとGABA作動性システムとの関係性. パク質の発現パターンについて検討を行った。その結果、. が報告されているが、本研究においても、扁桃体における. GRP−R免疫陽性反応は大脳皮質、海馬、扁桃体、視床下部、. GRP−R免疫陽性細胞の一部がGABA作動性ニューロンで. 脳幹と広範囲に観察された。大脳皮質においてはGRP−R免. あることが確認されたことから、中枢神経における. 疫陽性反応はその全ての層で、また海馬においてはCA1・. GRP/GRP−RシステムとGABA作動性システムとは、記憶. CA2・CA3領域の錐体細胞と歯状回の穎粒細胞層で観察. だけではなく、社会行動や摂食行動等を含む様々な機能を. された。さらに梨状皮質と背側内梨状皮質においては強い. 調節している可能性が考えられる。いずれにせよ、抗GRP−. GRP−R免疫陽性反応が観察され、扁桃体では多くの神経核. R抗体を用いた免疫組織化学的研究は、様々な身体機能に. において広範囲にGRP−R免疫陽性反応が観察された。そこ. おけるGRP/GRP−Rシステムの役割を解明するのに重要か. で扁桃体の神経核について詳しく解析を行ったところ、. つ有意義であると考えられる。本研究によって、組織化学. GRP−R免疫陽性反応が基底外側核、基底内側核、内側核に. 的にGRP−R免疫陽性細胞の一部がGABA作動性ニューロ. おいて観察され、その他にも外側核、中心核、皮質核、介. ンであることが確認されたが、さらに、GABA以外の神経. 在核、外側嗅索核、海馬領域等の大部分の神経核で観察さ. 伝達物質(グルタミン、セロトニン等)の関与について検. れた。脳幹においても孤束核や網様核、模状束核、迷走神. 討し、電気生理学的手法を用いて、機能的にも両者の関係. 経背側核などを含む広い範囲でGRP−R免疫陽性反応が観. を明らかにする必要がある。. 察された。これらの結果により、GRP−Rは従来の行動学的. さらにヒトヘの応用として、GRP−R遺伝子欠損マウスに. な研究により、記憶調節に関与すると報告されている海馬. おいて、恐怖記憶の保持の延長が観察されることから、心. や庸桃体などに発現していることが明らかになり、記憶の. 的外傷後ストレス障害(Posttraumatic. 保持においてGRP−Rが重要な役割を果たしている可能性. PTSD)の原因解明に繋がる可能性が期待できる。GRPの. が示唆された。. 作動薬や拮抗薬を、GRP−R遺伝子欠損マウス以外のマウス. 近年、GRP−RがGABA作動性ニューロンに発現しGABA. stress. disorder:. について、特に恐怖条件付け試験において異常を呈するマ. 放出を調節している可能性が示唆されていることから、. ウスに投与することにより、PTSDの治療薬としての有用. GABA作動性ニューロンに特異的な抗GAD67抗体を用い. 性を検討し、さらには治療に有用な投与法、より強力な作. て解析を行ったところ、海馬や扁桃体の外側核、基底外側. 動薬や拮抗薬ペプチドの探索・設計などをバイオインフォ. 核、内側核、中心核等のGRP−R免疫陽性細胞の一部が. マティ・ツクスによるアプローチを含めて検討していかなけ. GAD67免疫陽性であることが明らかとなった。聴覚性恐怖. ればならないと考えている。. 条件付け試験によって、恐怖記憶の情報伝達は、聴覚野視 床や聴覚野皮質から扁桃体外側核に入力される刺激情報と、. 海馬から扁桃体基底内側核へ入力される刺激情報が、扁桃 体中心核において統合され、統合された情報が脳幹へ伝わ り、その結果、恐怖反応たとえば不動反応(フリージング). が起こると考えられている。聴覚性恐怖条件付けにおける. 情報伝達回路のうち、扁桃体外側核においてGRP−R mRNAがGABA作動性インターニューロンで発現するこ とが報告されている。本研究において、扁桃体の外側核以. 外にも多くの神経核においてGRP−Rが発現し、その一部が. GABA作動性ニューロンであることが確認された。した がって、扁桃体の外側核、中心核、基底外側核、基底内側. 核を合む多くの領域が、聴覚性恐怖条件付け試験による恐. 一92一.

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