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エリートスポーツ政策に対する国民の受容性 Public Acceptance of Elite Sport Policy

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Academic year: 2022

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(1)早稲田大学審査学位論文 博士(スポーツ科学) 概要書. エリートスポーツ政策に対する国民の受容性 Public Acceptance of Elite Sport Policy. 2015 年 1 月. 早稲田大学大学院 スポーツ科学研究科. 舟橋 弘晃 FUNAHASHI, Hiroaki 研究指導教員: 間野 義之 教授.

(2) 第 1 章 本論文の背景 「グローバル・スポーツ軍拡競争」(Oakley & Green, 2001)と呼称されるように,昨今のエリー トスポーツは競技者や指導者としての個人,あるいは競技団体の取り組み(プライベートなイシ ュー)から,国家的な関心事(ソーシャルなイシュー)へと変容している.日本においても,「遠 藤レポート」における提言以降,エリートスポーツの国策化が進んでいる. エリートスポーツ分野への財政支援の拡大は,メダル獲得数の増加のみならず,現状のパ フォーマンスレベルを維持するためにも必要であるとされ(De Bosscher et al., 2008),先進諸 国における政府の支援額は増加傾向にある.このような背景を考慮すると,持続可能なエリー トスポーツシステムを構築していくためには,国民(納税者)の受容性という視点が不可欠であ る.本研究ではエリートスポーツ分野への公共投資に対するリターン,つまり納税者やアウトカ ムの受益者の観点から,エリートスポーツ政策について検討をしていくこととした.政策に対す る国民の受容性を明らかにするために,「エリートスポーツ政策に対する国民の価値評価を明 らかにすること」および「エリートスポーツ政策に対する国民の受容態度の形成メカニズムを明 らかにすること」という 2 つの目的を設定した.. 第 2 章 先行研究の検討 本研究目的と関連する過去の研究を整理し,以下の 4 つリサーチクエスチョンを導出した. RQ1. エリートスポーツ政策に対する日本人国民の価値評価はどの程度あるのか?(研究 1) RQ2. その価値評価は時間的信頼性のある値なのか?(研究 2) RQ3. その価値評価とはどのような要因が関連するのか?(研究 3) RQ4. エリートスポーツ政策に対する日本人国民の受容態度はどのような社会心理構造で形 成されるのか?(研究 4). 第 3 章 国民にとってのエリートスポーツ政策の価値:仮想市場法を用いた貨幣的評価(研究 1,2,3) 研究 1 では,エリートスポーツ政策の価値評価を検討するために,トップアスリートが国際競 技大会で活躍することで国民にもたらされるアウトカムとしての価値の推計方法の提示および 結果が示された.具体的には,「スポーツ基本計画の目標(オリンピックにおける金メダル獲得 ランキング夏季大会 5 位・冬季大会 10 位)を達成するための国際競技力向上施策の拡充によ り創出可能な便益の価値」の値を WTP という経済的尺度で推計した.インターネット調査によ るクロス・セクション・データによると,WTP の中央値は 421 円と算出され,母集団の WTP の集 計値は約 439 億円であった..

(3) 研究 2 では,エリートスポーツ政策によって創出される価値の貨幣評価を縦断的に行った. その結果,オリンピック開催の前後で WTP が上昇し,半年後に微減するという傾向が確認され たものの,統計的に有意な水準ではなく,本研究において用いた CVM の設計により算出され た価値評価は時間的信頼性のある値であることがわかった. 研究 3 では,エリートスポーツ政策に対する価値評価に影響を与える要因を検証した.その 結果,高年齢で,世帯年収が高く,自国アスリートが活躍することが日本社会や自身とって多 くのベネフィットがあると認識しており,エリートスポーツ偏重の政策推進によって発生するリス クの認知レベルが低く,日本人アスリートを社会におけるロールモデルであると感じているもの ほど,表明する WTP が高い,つまりエリートスポーツ政策の価値を高く評価していることが明ら かになった.. 第 4 章 エリートスポーツ政策に対する国民の受容態度の形成メカニズム(研究 4) 研究 4 は,エリートスポーツ政策に対する国民の受容態度の形成メカニズムの検証を試み た初めての研究である.本研究で得られたクロス・セクション・データによると,エリートスポーツ 政策に対する受容態度モデルは 2 層の因果構造から構築されていることが示された.受容態 度はエリートスポーツサクセスがもたらす私的・社会的ベネフィットとエリートスポーツが孕むリス クの認知のバランスに規定される.そして,それらのベネフィットやリスクの判断は,エリートスポ ーツ政策アクターに対する信頼とアスリートのロールモデルとしての認識に依存することが証 明された.. 第 5 章 総合論議 以上の知見は,エリートスポーツにより国民が享受できる公共財としての価値に関する基礎 データを提供するものであり,第 3 章において実施した一連の需要サイド(受益者)の分析によ り,日本人国民がエリートスポーツ政策に対して総計約 450 億円程度の価値を評価しているこ とがわかったが,方法論の制約条件などもあるため,費用対効果分析に代表される競技力向 上の供給サイドの分析などと複合的に検討し,妥当と考えられる予算水準を判断することが重 要であることを論じた.さらに,エリートスポーツ政策に対する国民の受容性の向上のための政 策的なインプリケーションとして,(1)エリートスポーツ政策の推進・拡充がいかに多くのベネフ ィットを自国にもたらすことができるのかについて継続的かつ積極的に研究,そして周知してい くこと,(2)より一層のスポーツ関連団体・組織のガバナンス強化やアスリート教育を,予算の拡 充と両輪で行っていくこと,(3)エリートスポーツシステムの中で,社会の模範的な存在として活 躍するアスリートの養成をしていくことの必要性について論じた..

(4)

参照

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