遡 及 事 業 雑 感
藤 原 秀 之 (和書データベース化事業室) 私が乙の遡及事業に参加する乙ととなったのは 今年の6月からである。それまでの1年間は、遡 及とはいわば車の両輪の関係にある和漢書係に所 属していたので、わずか2年の聞に現在行われて いる和書整理の最先端を、まさにその現場で体験 できるという幸運に恵まれたわけである。
しかし、同じ整理といっても、両者の聞には様々 な点において相違がある。
第一が対象とする資料の違いである。和漢書の 場合は、日々新たに受入れられる図書がその対象 となるので、必然的に新刊書がその大部分を占め るのに対し、遡及の場合には、既に一度受入れて 整理を終えた図書がその対象となる。乙の乙とは 書誌作成の際のMARCの利用という点からそれ ぞれ長短がある。まず新刊書、特に一般の流通本 の場合、その多くが若干のタイムラグを置けば市 販のMARCf乙データがあるので、書誌データの 作成が比較的スムーズ l乙行われる。しかし、新鮮 な情報の提供を第ーに考えた時、とのタイムラグ は致命的なものななりかねない。そうなると市販 のMARC化がなされる前に書誌を作る必要が生 れ、その他のMARCf[入ってこない書籍と共に オリジナルて、書誌を作成しなくてはならないわけ だが、 ζの時、既存のデータが全く参考とならな いような新しい分野の図書の場合、特に分野や件 名を付与する際に悩む乙ともあるのではないだろ
うか。
一方遡及の場合、 Japan MARC (J /M)仕 様でのデータ作成が基本となっているので、その 存在する期間、即ち1969年以降については十分に MARCの利用価値があったといえよう。しかし、
ζの6月に6咋以降の分が一応終了し、それ以前 のものが遡及対象となると、それらについてはほ ぼ全件がオリジナノレで、の書誌作成となるので、そ の労力はMARC存在部分とは比較にならないも のがある。特l乙、戦前から戦後にかけての保存状 態の悪い図書になると、奥付等がなくなってしまっ ているものも間々見受けられるようになった。そ
うなると、いくら現物主義といっても正確なデー タの作成が困難になってしまう。そんな時に頼り になるのが、事務用カードや冊子体目録等、受入 当時の状態を示す記録である。それらを利用して の書誌データ作成は、まさに蔵書の再整理といえ よう。
相違の第2点は、人員数とそれに伴う整理方法 である。遡及の場合、紀伊国屋書庖からの25名程 の入力担当者と図書館の4人の点検担当者が一斉 にlつの分野の書昔、作成K従事している。乙の方 法の利点は、 1つの分野を集中して行うのでその 分野に特有な内容に慣れる乙とができるし、相互 に情報を交換し、分類や件名等の統ーを図るζと が可能なため、データの整合性がとりやすい点に あるといえよう。このことは、効率のよい作業を 行っていく上で不可欠なものとなっている。
和漢書係では、若干名のアルバイトと学職が入 力を行い、 7人の専任職員が入力と点検を行って いる。しかし、専任の場合、他の日常業務との兼 合いから、データ作成lζ専念するというのは不可 能な乙とである。また、分野別に担当者が決まっ ているため、各人が各々の担当分野に精通する乙 とは可能かもしれないが、全体を通してのデータ の統ーをとる乙とが極めて困難であるといえよう。 両者のこの入力環境の相違には現在のと乙ろ如何
ともしがたいものがある。
データの整合性という点では、遡及が
J /
Mf[基本的に準拠しているのに対し、現行WINE の中には、 J/Mの他にTRC MARCや旧WIN E時代の名残が混在しているため、その乙とが特 l乙後者においてはデータの整合性を欠く原因のー っとなっている。
以上のように様々な相違の存在する現行、遡及 という 2つのWINEで作成されたデータが、乙の 8月、遡及から現行へのロードが始まりいよいよ 一つになった。しかし、著者名やタイトル、件名 等のメンテナンス、また現在進行中のWINEの新 しい入力基準との関係等、解決すべき問題が山積 しており、真の意味で2つがlつになるにはまだ 時閣を必要とするであろう。そして、乙の遡及事 業もζれからがその正念場とし、えるのかもしれな し
、。
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