ホしlibZ医誌8(2/3),94〜99(1955>
カルシウム及びカリウムの心臓作用の心電図的考察
宮沢秀之 水上勝太郎 藤野澄子 篠原 護 田辺恒義
札幌医科大学薬理学教室 (主任 田辺教授)
Elec七rocardiographic Observations of七he Actions of Calcium and Potassium on the Hear七 By
HIDEYuKI MIYAzAwA, KATsuTARo MlzuKAMI, SuMIKo FuJエNo,
MAMoRu SHINoHARA and TsTJNEyosHI TANABE
Depenrtmen (ゾPんαrmαcology, SαpaPOTOσ吻θγS励〃げルfedicivee (Chief二P7げ. T. TAIVABE)
強心配糖体は体内に吸収された場合,体内の電解質代謝 に影響を与えることは多くの報告の中に述べられている。.
特にK:イオンの代謝に対する影響についてはCalhoun&
Harrisoni), Cattell&Goodel12)等の交献に述べられてお
り,また当教室の田中等3)や田辺等4)も報告している。即 ち彼等は筋肉内のK濃度の減少と血満内のK濃度の増加 を強調している。この事実は心筋において特に著明のよう である。また一方,Digi七alis中毒に対するK:投与の効果 に関してSampson等5), Enselberg等6)の報告がある。
彼等はDigi七alis中毒愚著にKを投与して罠好な結果を
得たと述べている。またCaと強心配糖体が体内で協力作用を現わすことは
Loewi7)一f)), Hoffmanio ), Billigheimeri1)一ltl)の他多くの
研究者の発表がある。特にLoewi8)rO>は強b配糖体の強 心作用はCaそのものの作用であろうと推測している。し かしFischer14)及びCloettai5)はこの説に反対してい観 彼は強心配糖体は心臓のCaに対する感度を高めるが,こ れは特異酌なものではないと述べている。Meyer等16)は 強心作用は心臓及び血中のKとCaの比率に関係すると述 べている。またFleckenstein等17)はCaは筋肉のKの透
過性を減じ:たと報告し,またSzent−Gy6rgyiiS)はDigitaljsもこのような作用をもつと述べている。
他方K及びCaの心臓作用を心電図学的に調べた研究は 多い。1938年Winkler agtOl)が血中のK過剰による心電図 上の変化を犬について研究し,弐いでChamberlain等ヨ。)
及びCrisman等IDは猫について, Nahum等2s)は家兎に
ついて,Th. Gay et−Hallion :S)はモルモットについて何れ も同様な研究を行い,大略似たような結果を得た。さらに 人間についてもK中毒による心電図上の変化が多くの
94
文献勃引)に記載されている。またMerklen等35)及び
Thuillier 9¥r fi)は犬及び家兎を用いて, Kの心臓作用がCaによって拮抗されることを心電図学的に証明した。
われわれの教室37)においては,Digitoxint}s), g−Stro−
phanthin ・9)及びConvallatoxin io)の投与量と心電図上の
変化との関係について研究を行ったが,それらの心電図上 1の変化が強心配糖体に因る電解質の変動に起因するか否か は未解決であった。そこでわれわれは,強心配糖体の投与 コ
実験の場合と同じ方法によってCaまたはKを累々に与え 投与量と心電図の変化との関係を時問を追うて観察せんと した。そしてCa及びK:による心電図上の変化を知ると同 時に,その変化を強心配糖体による変化と比較検討せんと
した。
實瞼材料及び實験方法
300〜500gのモルモットをUrethan(皮下)麻酔を行い,
これを背位に固定し,頸静脈より被検液の一定量宛を心臓
の停止するまで5分おぎに注射し泥。被検液は1.6% CaCl,・液及び1.15% KCI液である。これ等はモルモッh血液と ほぼ等張である。この液を5分おきに15回位注射した時 に動物が死亡するように一回量を予め定めて注射したので あるが,個体差があって頭初予定の時聞には死亡しない場 合が多かった。心電図は5分ないし10分おぎに第2誘導 法にて撮影した。また呼吸麻痺を防ぐために必要に応じて
人工呼吸を併せ行った。心電計の電極はよく鷹いた1/3皮下針を用い,増幅器は
3段CR結合でll寺窟数は1,2秒,バイブレーターは横河製
H型を用いた。
8巻2/3号
宮沢.・他 Ca, K:の心臓作用と心電図学t
第1表 1.6%CaC12溶液の頸静脈内闇歓注射によって求めた致死丑(モルモット)
95
動物
No.
ゆ モ
のヨ ヰ う ほ ア 弓田鋤鋤鞠舞町融鞠闘三富釦翻釦a国訓 CCCCCCCCCCCCCCCCCC
日/眠 性 別 体 亜:
(g)
皿皿憾W川州W研創皿皿皿皿皿以降凪凪 ノ ノ ノ ノ ノ ノ ノ ノ ノ ノ ノ ノ ノコ ノ ノ ノ ノ ノ 233445679017077889 噌⊥
可占1
9日 ♂♂♀♀ε♀♀δδδ♀δ♀δ♀♂ε6 000000000000000000 24275950.0500829235 434443344334344444
溶液の注入量
課齢(cc>
O.4 ×12 0.34×11
0.4・2 × 10
0.47×14 0.5 ×12 0.4 ×16 0.4 ×16 0.6 ×8 0.55×7 0.5 ×14 0.45 × 13 0.55 × 12
0.5 ×10 0.5 ×9 0.7 ×10 0.6 ×10 0.7 ×18 0.7 ×18
〈: :吊〔
(ce) ce/100 g
040800005050000000872504488086050066 43︒4aα6︒a4.3︒エ翫a54T6︐22. 11⊥ 430034306055213330110436829096374498111111110211111122
C耳G12 全 母
(mg)
882306686066000066697562261235022611756090096190871900
1 11 1 1 1 22mg/100 g
370433324024118908846216945216672274111222221332212244
第2表 1.15%K:Clの溶液の頸静脈内間歓注射によって求めた一死量〔モルモット)
動 物 No.
管 O − 2!2 3 4 5 6 ユ の ヨ る う も ケ ユ コ エ エ エ ド KKKKKKKKKKKKKKKKK
日/月
可W皿顎WWWWWW珊珊皿医医医眠 / / / / / / / / / / / 〆 一 ノ 一 ノ 一 990122669991aOOO1 112222222223 1111
性 別
♀♀66♀♀66εδ63♀♀OT♀QT
体 重 匿㈱枷卿㎝鰯獅卿枷面輔蜘蜘蜘謝凱伽脚 垂糧岡 溶 液 の 注 入景
1.2×16 1.3×lo
1.5 × 14 1.0 × 15
1.5× 10 1.0× 16 1.25 × 14
1.3×23 1.2×12 1.0×11
1.2 × 13 1.0 × 17
1.0×22 1.0×18 1.0×20 1.0×15
全 量 (ce)
02000005940600000 α9︐a口占5︐巳7.24目皿吼a8.0.5 2112111121111212ユ
cc/lOO g
0215378523850119333333233532346544
KCI
全 量 g.g.) mg/lOO g
ce Ki:この1例は1%K:Clを使用したためvalttt(軽度)を起した。
os 宮沢・他一Ca, Kの心臓作用と心電図学 ホLr幌医誌 1955
實瞼成績
1.6%CaC12溶液の一定脱着を5分おきに注射して行く と遂には心電図の波形が変形し心臓が瀞止する。第1表は この心臓静止またはそれに近い状態に至るまでのCaC12の 注射量を表示した。1.15%KCI溶液についても同様な方法 で致死量を求めたのが第2表である。これ等塩類溶液の作 ノ 用は勿論注射速度によって影響を受けるので,1回注射量 を概ね1分かxつて注射するようにした。特にKCIの場 合には心臓静止近くになると,注射の途中で一旦心博動が 不規則不充分となり,注射終了後は再び規則的搏動に復帰 し完全静止点を決定するのにやや困難を感ずることもあっ
た。
第1表及び第2表の総ての例について5心ないし10分 おきに心電図を撮影したのであるが,それ等の中典例かは 裟置其の他事故のために満足に図形解読を行い得なかっ た。かかる例を例外して整理した結果は第1〜6図に示す
如くである。図形中の番号は表に示した動物番号と一致す
る。
第1図はPQの延長がCa及びKの何れによっても例 外無しに起っていることを示す。Caの場合は注射開始後 直ちに延長し始め,その程度はKの場合よりも大き い。
第2図はRRがCa及びK:によって延長することを示して いる。特にCaによるRRの延長は顕著なものがある。
QTcがCa及びKに.よって減少傾向を示すことはeg 3図 に示すとおりである。この場合にもCaの影響の方が大き かった。丁波高は第4,5図に示す如く,Caによっては抑.制
されたがKによっては著明な増高が見られた。STはK 注射時の少数例において下降したのであるが,Ca注射の 場合には何等の変化も認められなかった。ag 6図の左上方 は,心電図形の明瞭に撮影出来た7例のK:注射例の中2 例においてST下降が認められ,その程度をmVで表わし
た図である。 ッ図の下段には比較のためにDigitalis及び
g−Stropha耽hinによるST下降を示した。
6
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60 min.
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︶
5
1
]3 L 4 v2
4
O 2e 40 60 min.
第1図 Ca及びKのPQに及ぼす影響 横軸は注射開始からの時間的経過,縦軸はPQ間隔の
増減率(注射前値に対する百合比),上はCaCl,・の注射下はKICIの注射を行った場合,数字は第1表及び第
2表に示した動物番号に一致。
!00 0/4
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︺ ︹
o
K
30
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D6
50 .A ., 70 min
12
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●−
4
7Ωり
o 20 40 60 min一.
第2図 Ca及びKのRRに及ぼす影響
横軸は注射關始からの時間的経過,縦軸はPQ問隔の
増滅率(注射前輿に対する百分比),上はCaC12の注射
下はKCIの注射を行った場合,数字は表に示した動
物番号に一・致。 ・8巻2/3号 宮沢・他一一 一Ca , K の心臓作用と心電図学 97
7
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1
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60 tnin第5図 KCIの注射による丁波高の上昇
o ac 4e so mifi.
第3図Ca及びKによるQTcの減少傾向
横軸;時間的経過,縦長:注射前値に対する百分比
V2
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第4図 CaC12注射による丁波高の減少傾向
皿in,
ユ5
第6図
横軸=実験の時言的経過,
mV),数字の分母は観察例数で分子はそめ申のST下降 を起した例数,上段の左はK注射の場合で7例中2例 にST下降が認められ,上段右はCa注射の場合で全例.
がST下降を起ざない,下段は比較のために強心配糖体・
によるST下降を示す。
Digitoxin . rtrephanthin
STに及ぼすCaとK:との影響
縦軸:ST下降の程度(単位
98
宮沢・他一一Ca, K:の心臓作用と心電図学ホL屯晃医誌 1955
縮括及び考按
以上の如くCaまたはK:の投与によって心電図上の変
化が著明CC 奄?lることを述べたのであるが,これ等の所見
はWinkler等1ρ), Nahum ¥L s), Th. Gayet−Hallionzs),
Merklen ag・3E ,)及びThuillier ¥3c,)が報告している記載に
ほぼ一致しているま。またわれわれの前述の所見を強心配糖体投与の場合の心 電図上の変化と比較検討すると衣の如くなる。強心配糖体 注射時の所見と類似した点としては,Ca及びKの揚合で はRR, PQ, QTc等が挙げられ,更にCaの場合では丁波 高も挙げられる。また相違した点としては,Kの場合の丁 波高の増大,Caの場合ではSTに変化を認めなかったこ
とが挙げられる。
以上のことから考察すれば強心配糖体による心電図上の 変化はそのために惹起された体内のK叉はCa代謝の変化 の結果として起つたものとは考えられない。配糖体自身に よる特有の作用によって心電図上の変化が起るものと考え るべきである。即ちLoewi等の述べたように,強心配三 体の心臓作用はCaそのものの作用であると極言すること はいい過ぎのように思われる。但し一部に類似した点を見 出し得ることから,これら相互間に何等かの関連のあるこ とは推察される。現在の段階ではMeyer等幼が述べたよ うに,強心配糖体の作用は心臓及び血中のK:とCaの比率 に関連すると考えることが至当と思う。
結 論
1.モルモットの静脈内にCaC12及びKCIの注射を行 い,心電図上に現われた変化を観察した。
2.CaはPQ及びRRを著明に延長せしめ, QTcの滅 少傾向と丁波高の抑制とを示した。KはPQ及びRRを延 長せしめQTcを滅じ,丁波高を著明に増大せしめ, ST下
降を起すこともあった。3.Ca及びKlによる心電図上の変化を強心配糖体によ るそれと比較検討し強心配糖体の心臓作用の機序について
論述した。(日一跡030.7. 30受f寸〉
交 献
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38)藤野:未発表:
39>宮沢:札幌医学誌7,280(1955).
40)水上:未発表.
8巻2/3号
宮沢・他 Ca, K:の心臓作用と心電図学99・
Summary
A study was conducted with guinea pig on electrocardiograPhic changes induced by intravenous injections of calcium chloride and potassium chloride.
Calcium and potassium produced a marked prolongation of PQ intervals and RR intervqls and a decrease in QTc. T waves were depressed by calcium and enhanced by potassium. A discussion was made on the mode of action of cardiac glycosides, bY comparative study on electrocardiographic changes between electrolytes and cardiac
glycosides.(Received July 30, 1955)
. 曜