研究論文
臨床心理外部実習における学校臨床心理実習
ー大学院生による実習の受け止め方から実践のあり方への考察一
O u t s i d
e lacitcarP snginiraT nilacinilC Psychology Sta lsooch : Based on geduatra tsughhos'tntudest tabou rieht edistuo .sgniniart
岡 本 淳 子
l)永 井 智
l)佐 藤 秀 行
l)下 山 晃 司
2)J u n k
o Okamoto ruotSa aiagN iukydeiH otaS ijoK Shimoyama
本大学院では、臨床心理外部実習の中で修士
2年生は医療や教育、福祉など多様な領域の外 部機関に出向いている。その一環として、学校臨床心理実習については
2年生全貝を通年で週
1回ずつ学校に派遣している。教職課程における教育実習のように法的システムが構築されて いないところで現実の学校教育と折り合いをつけながら実習を通年継続することは、大学院側 にとっても数々の工夫を迫られるところである。本年度、学校実習に対する意識のアンケート 調査を実習開始前と開始後約
1年近く経過した時点で派遣実習生対象に実施した。「学校(実 習)に対する不安」は実習を継続するなかで有意に低下するものの、「楽しみな気持ち」も有 意に低下していた。また、「学校(実習)に対するわからなさ」が低いほど、「学校(実習)に 対する不安」も低下することや、実習前の「学校(実習)に対する不安」が高いほど、「楽し みな気持ち」が低下していることが分かった。これらの結果は大学院における教育に示唆を与 えるものと考えられた。
[キーワード]スクールカウンセラー,スクールカウンセリング,臨床心理外部実習,
大学院生
I
.
問 題
1 9 9
5
年から国により始められたスクールカウン セラー活用事業を初めとして、地方自治体の施策 によるスクールカウンセラーやそれに準じる職は 全国的にみると相当数に上る。全国的に職の少な さもあって、臨床心理士整成大学院修了生は在学 中にそれを希望していた者以外にも、スクールカ ウンセラーや巡回派遣相談貝、学生相談等、教育 領域での臨床心理職に就くケースが多い。そこで、
本大学院では修士
2年生で全貝に学校での実習を 経験する機会を用意してきた。
大学院修士課程における臨床心理専門職に備え た教育・訓練課程としては、臨床実習が中核的な 位置を占めている(中村,
5)002。しかし、現実 的な運びには、実習にはそれを支える多様な物理 的環境や人的資源、時間的余裕など多くの要素が 必要である。理想的な実習を実現するために、各 大学院では多くの課題を抱えながら実践を煎ねて いることが報告されている(岡本,
8a200、岡本,
2 0 0 8 b
) 。
2 0 0
8
年度からは鹿児島大学・九州大学による高 度専門職業人整成に関する教育推進プログラム構 築の研究として、「臨床心理実習における客観的
1) 立正大学心理学部 ultyFac Pfo gy,sycholo Rissho yrsitiveUn
2) 立正大学心理臨床センター Center orf Psychotherapy and ,lingnseCou Rissho yrsitiveUn
評価方法の構築」が開始され、評価のあり方から 逆に実習のあり方を探ろうとしている。このよう に、臨床心理士養成教育のあり方についての研究 が散見されるようになったが、まだその途につい たところと言っても過言ではないだろう。また、
実習の進め方の研究は、その指導体制のあり方の 課題とも表裏の関係にあるものであり、スーパー ヴァイザーを勤めた教員やスーパーヴァイジーの 経験から、実習のあり方を考える報告もみられて いる(藤原,
5002、青木ら,
)8002臨床実習の中でも、学校臨床心理実習のあり方 についての研究には、学校における実践を事例的 にまとめることにより考察しているもの(志村ら,
2 0 0
3
、奥野ら,
3002、北林ら
8002など)が多い。
内容的にはその多くが学校での実践が定沿していっ た経緯や実態について述ぺ、学校の中に心理臨床 の相談的機能が少しずつ根付いていく工夫や観点 について考察している。また筆者らも、本大学院 におけるこれまでの学校臨床実習の経過を報告し てきた(岡本ら,
6002、岡本ら,
)7002。
しかし、これら実践の経緯を報告する研究が多 い一方で、実際に実習を行う大学院生の心理に焦 点を当て、研究として取り上げた例はほとんど見 当たらない。臨床外部実習では、現場に応じて自 身の存在の仕方を調整し、それぞれの場に応じた 援助のあり方を考えていく(中村,
)5002必要が ある。特に、本大学院のように年間を通して継続
i l l
. 方 法 1
. 対 象
学校実習へ参加する大学院修士課程
2年生
31名 を対象とした。
2
.
学校実習に対する意識の測定
学校実習に対する意識を測定するための項目を
11
項目作成した(項目は表
2参照)。それぞれに ついて「
1 :全くない」「
2 :あまりない」「
3 :どちらともいえない」「
4 :ややある」「
5 :かな りある」の
5件法で回答を求めた。
3
.
測定時期
実習前の
4月(実習前)と、実習がほぽ終了に 近い翌年
1月末(実習後)に質問紙を実施した。
なお、
1月末時点における各実習生の実習回数を 表
1に示す。小学校および中学校では、概ね週一 回の実習を実施しており、各実習生の実習回数は
15-25
回程度であった。高校においては夏休み中
などにも実習を行ったため、実習回数は
04回を越 えていた。
表
1 1月末における実習回数のまとめ
実習先 実習回数
実習生 A
32実習生 B
12的に実施する実習では、その前後で実習に対する 小学校 実習生 C
72意識も変化すると考えられる。そのため、各実習
生への柔軟な対応やサポート体制の在り方を考え るとき、こうした内的な状態についても把握して いく必要がある。そこで本研究では、本大学院の 本年度実習生における、学校実習に対する意識を 測定し、その変化について検討を行った。
I I
. 目 的
学校実習を経験している大学院生の意識とその 変化を把握し、大学院生へのサポートのあり方に ついてのヒントを探る。
中学校
高校
実習生 D
61実習生 E
52実習生
F 32実習生 G
42実習生
H 52実習生
I 14実習生
J 52実習生
k 42実習生
L 24実習生
M 24N. 結 果 1
. 学校実習に対する意識の記述統計
各項目の実習前と実習後における記述統計を表
2に示す。この内、実習前においては、「
1 :学 校(実習)に対する不安」「
2 :学校(実習)に 対する緊張」「
4 :楽しみな気持ち」「
:10実習を 学校(教育)臨床にいかしたい気持ち」「
:11実 習を他領域の臨床にいかしたい気持ち」の
5項目 が 、
4を上回る値を示した。一方、実習後におい ては、 「
10:実習を学校(教育)臨床にいかした い気持ち」「
1:1実習を他領域の臨床にいかした い気持ち」の
2項目のみが、
4を上回る値を示し ていた。
2
.
学校実習に対する意識の変化
学校実習の前後における学校実習に対する意識 の変化を検討するため、各項目の実習前と実習後 の得点に対して、対応のある
t検定を行った。そ の結果、項目
1と項目
4の
2つの項目で有意な結 果が示された。すなわち、「
1 :学校(実習)に 対する不安」は、実習後の得点が有意に低下して い た
t(343.2)=(1 p .01< Mean=4.15 .sv 3. 1 5
)
。 「
4 :楽しみな気持ち」も同様に、実習 後 の 得 点 が 有 意 に 低 下 し て い た
tC 02) =3.90 p .01< Mean=4.62 .sv )64.3。残る項目には、い
ず れ も 有 意 な 平 均 値 の 差 は 示 さ れ な か っ た
C
t )21( =0.00-1.72 .n).s 。 3
.
実習前の意識と意識の変化量との関連 最後に、実習前の意識と、実習を通した意識の 変化量との関連を検討した。まず、
t検定におい て有意な結果の示された項目について、実習前と 実習後の差を算出し、意識の変化鼠を求めた。す なわち、「
1 :学校(実習)に対する不安」にお ける実習後の値から実習前の値を引いたものを
「項目
1の変化星」、「
4 :楽しみな気持ち」にお ける実習後の値から実習前の値を引いたものを
「項目
4の変化最」とした。「項目
1の変化屈」と
「項目 4 の変化鼠」の記述統計を表 3 に示す。
続いて、実習前の各項目の値と、「項目
1の変 化贔」および「項目
4の変化屎」との相関係数を 算出した(表
4参照)。その結果、「項目
1の変化 量」と「
3 :学校(実習)に対するわからなさ」
との問に有意傾向の正の相関が示された
2.5r=( p<.10)。すなわち、実習前の「
3 :学校(実習)
表
3項目変化量の記述統計
Mean SD
得点範囲
Min Max
項目
1の 変 化 屈 ー
00.1 80.1 -2 1項目
4の 変 化 梵 ー
51.1 70.1 -3 0表
2各質問項目の記述統計 実習前
Mean SD
4 . 1
5 08.0 4
. 0
8 68.0 3
. 8
5 09.0 4
. 6
2 15.0 3
. 0
8 91.1 3
. 3
1 59.0 3
. 8
5 99.0 3
. 0
8 68.0 3
. 0
8 21.1 4
. 7
7 44.0 4
. 6
9 84.0 1
学校(実習)に対する不安
2
学校(実習)に対する緊張
3
学校(実習)に関する「分からなさ」
4
楽しみな気持ち
5つらそうな感じ
6何かできそうな気持ち
7
子どもとうまく話せそうな気持ち
8先生とうまく話せると思う
9保護者になじめそうだと思う
10
実習を学校(教育)臨床に生かしたい気持ち
11
実習を他領域の臨床に生かしたい気持ち
34 26 88 20 11 86 11 86 05 88 44 S l l L o 1 1 O L O L o o
後 習
n実
ea 15 62 54 46脚 競
3 1
郎
4 6
糾
7 7 M 3 3 3 3 3 2 3 3 2 4 4
表
4実習前の値と項目
1および
4との相関 項目
1項目
1の変化星
I00.項目 4 の変化駄— .55'
項目
2項目
3項目
4項目
5項目
6項目
7項目
8項目
9項目
01項目
11 .4
5 125. 51. -
. 3
5 -.46 40.
注:
N=l3'p<.10,'p<.05
変化屈=実習前の値一実習後の値
に対するわからなさ」が低いほど、「
1 :学校
(実'[})に対する不安」が低下していることが示 された。また、「項目
4の変化凪」と「
1 :学校
(実習)に対する不安」との間に、有意な負の相 関が示された
(r= - .55 p < .)50。すなわち、実 習前の「
1 :学校(実習)に対する不安」が高い ほど、「
4 :楽しみな気持ち」が低下しているこ とが示された。
V.
考 察 1
. 学校実習に対する意識の変化と関連要因
t検定の結果、実習後の「
1 :学校(実習)に 対する不安」が実習前に比べて有意に低下してい ることが示された。すなわち実習生の抱く不安は、
全般的には、実際に学校へ入って活動を実施する ことで低下していく傾向にあるといえる。
この項目
1の変化凪と、実習前の意識との相関 を分析した結果、「
3 :学校(実習)に対するわ からなさ」との間に有意傾向の正の相関が示され た。つまり、実習開始時におけるわからなさが低 い場合、実習を通して不安が低下する傾向にある 可能性が示唆された。ただし、ここでの「わから なさ」が具体的にどのような点についての「わか らなさ」を指しているのかは、現段階では明らか でない。そのため、どういった点の「わからなさ」
が、実習を通しての不安の変化と関連していくの か、今後更に検討していく必要があると考えられ る 。
また、実習後の「
4 :楽しみな気持ち」も、実 習前に比ぺて有意に低下していることが示された。
この点をどう評価するかについては、様々な解釈 が可能である。実習に対する楽しみな気持ちが低
. 1
3 -.08 -.23 00. -.07 81. 23. -
. 1
2 50. 73. 01. -.06 08-. -.10
下することは、一見ネガティプな変化と受け取れ る。しかし、実際に学校の中で活動をしてみるこ とで、実習生が現場の難しさに直面することは当 然多い。そうした現実に直面することによって、
楽しみな気持ちが低下することは、心理臨床トレー ニングの上で必ずしも悪いことではないと考えら れる。
本研究で対象となった実習生は、もともと実習 前における「
4 :楽しみな気持ち」が全体的に高 い値を示していた
(Mean=4.62)。また、実習後 の楽しみな気持ちも、決して極端に低い水準まで 低下した訳ではない
(Mean= )64.3。そのためこ うした変化は、実習前に抱いていた高い期待が、
実際の現場に行くことで落ち着いた水準へと移行 したという見方もできる。
しかし、この「
4 :楽しみな気持ち」の低下は、
実習前における「
1 :学校(実習)に対する不安」
の高さと関連していることが示された。もし、不 安が高い状態で実習に臨んだために、「
4 :楽し みな気持ち」が低下したのならば、この変化は、
やはり望ましいものとは言い難い。このように、
「
4 :楽しみな気持ち」の低下の意味については 様々な解釈が可能であり、現段階では結論を出す ことができない。こうした点については、研究方 法を工夫しながら、より詳細に検討する必要があ
ると考えられる。
2
.
学校実習において必要とされるサポート体制
変化量を用いた分析からは、実習前のわからな
さや不安の高さが、不安や楽しみな気持ちの変化
に関連していた。このことから、実習に入る前の
段階において、特にこうしたわからなさや不安を
緩和できるような取り組みが軍要となる可能性が ある。具体的には、一般的な学校臨床における知 識や実習先となる各学校個別の情報などを伝える などの方法をより充実させることが考えられる。
こうした点については、今後更に検討していく必 要があると考えられる。
もちろん、実際に学校へ入ったことのない実習 生にとっては、ある程度のわからなさや不安は当 然生じるものである。逆に、実習を前にわからな さや不安を一切抱えないことが望ましいという訳 でもない。しかしながら、単純に知識や情報の不 足から、わからなさや不安が高くなっているよう な場合には、こうしたサポートは意味を持つであ ろう。
また実習前のサポートだけでなく、実習が始まっ てからの実習生に対するサポートも同様に重要で ある。本研究では、不安や楽しみな気持ちには変 化が見られたが、逆に残る
9項目では有意な変化 が示されなかった。これらの項目の中には、実習 の目的を考えれば、実習を通して上昇することが 望ましい項目も存在する(例「 8 : 先生と上手く 話せると思う」)。そのため実習を通して、こうし た意識をどのように高めてゆくかという点につい ても、同様に検討してゆく必要があるであろう。
そのためには、学校実習開始後の実習生に対する サポート体制をより工夫し、その具体的な効果に ついて明らかにしていく必要があると考えられえ
る 。
3.
本研究の留意点と今後の課題
本研究での調査対象者は 3名と非常に少ないも 1 のになっている。これは、大学院の在籍者による 実習という形式上仕方のないことであるが、様々 な統計的分析を行うのに十分な数とは言えない。
特に、学校実習で実習生が経験する意識の変化を より明確にするためには、学校の特性や各実習生 の特性、個別の実習内容など、多くの要因を含め て検討を行う必要がある。そのため、こうした検 討を加えるためには、本研究で行ったような調査 を今後も継続してゆき、より多くのデータを収集
する必要があると考えられる。
最後に、今後行うぺき研究の方向性として以下 の
3点が挙げられる。まず第
1は、実習生の意識 の変化とその関連要因について、より詳細に明ら かにすることである。そのためには、先に述ぺた ようなデータの継続的蓄積が必要であろう。また、
場合によっては質的な方法を用いた検討も有効と なる可能性がある。
第
2に、既に実施されているサポート体制が、
こうした実習生の意識の変化に及ぽす影響を明ら かにすることが必要であると考えられる。前節で は、今後構築すぺき実習生のサポート体制のあり 方を、本研究の結果に基づいて考察した。しかし 本大学院では、実習生に対して既に様々なサポー ト活動が実施されている ( , . g . e 岡本ら, ) 0 9 2 0 。 こうした既存のサポートの意義について検討する ことも、新たなサポートのあり方を模索する上で 有益な知見をもたらすものと考えられる。
そして最後に、以上のような研究に甚づき、具 体的な実習生のサポートの実践とその効果につい て、検討を重ねてゆくことが必要であると考えら れる。本研究では、実習前後における、実習生の 意識の変化および、その関連要因をある程度明ら かにしたという点で意義があるといえるが、こう した成果はまだ甚礎的なものである。今後、さら に様々な検討を重ねることで、学校実習における、
より効果的なサポート体制を構築してゆくことが 望まれる。
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Outside alticacPr Trainings Cni lacniil Psychology at Schools : Based on graduate students'thoughts about eirth utsideo .gsininrat
Junko Okamot
釘
Satoru Naga朽
Hideyuki Sato 1 J Koji Shimoyama 2 l[ A b s t r a c t ]
Our ategradu ,loohcs psa tar tfo eh editsuo lacitcarp sgninairt nilacinilc y,ogolhycps s
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