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田辺恒義篠原護藤野澄子     南雲 猜 宮沢秀之

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(1)

木L虚晃医誌  8 (1),7〜10 (1955)

強心配糖体の致死量に及ぼす肝臓障碍の影響

田辺恒義篠原護藤野澄子

    南雲 猜 宮沢秀之

  札幌医科大学薬理学教室 (主任 田辺教授)

The Effect of Liver Damage on七he Le七hal Dose          of Cardiac Glycosides,

       By

TsuNEYosm TANABE, MAMoRu SHエNoHARA, SuMIKo FuJエNo,

    TAKEsm NAGuMo and HIDEyuKI MlyAzAwA

Depart77zent of Pharmacology, SappoTo University of Medicine          (Chief: PTof. T. TA2vABE)

 強心配解体が肝臓に多く分布することはかなり以前D尾4 から知られていた。田辺等5)・6)は強心配糖の致死量が肝臓 の機能如何によって影響を受けることを強調した。特に,

われわれの一人南雲7)はDigitoxinについてまた宮沢8)は gStrophan七hinについて,猫及びモルモットの肝臓を門 脈血流から遮断すると致死量が著しく減ずることを証明し

た。

 他方ラット及びモルモットの如き与国類においては,強 心配糖体が肝臓へ大量に排泄される故に,肝臓除去によっ てその致死量が滅ずるという実験がある(Fara砂, Farah

&Smuskowiczio), Giertz et aLi 1))。これと同時に鰯歯類の 肝臓には比較的多くの強心配糠体が分布し,これが謄汁を 介して一部排泄され一部は破壊されているらしい成績が発

表されている(Friedman at aLiLi), St. George et al.】s), St.

George&Friedmani4), Geiling15))。特にラットについて は,肝臓の除去のみならず,肝臓毒の中毒によってもg−

Strophanthinに対する致死量が減ずる(Farah&Smus−

kowiczie))。しかしラットは強心配糖体に対して特別な抵 抗を有しており,モルモットや猫の致死量の数百倍もの強 心配糖体に耐えられるのである。St. George et al.1「 )の結

果から見ても人間や犬とラジトとではDigitoxinの肝臓 への分布状況が異なっている。

 そこでわれわれは,強心配糖体に特に感受性の大きい猫 及びモルモットにおいても,肝臓毒または疾病によって肝 障碍が起るとDigitoxin及び9−Strophanthinに対する抵 抗力轍弱するかどうかを知らんとしてこの実験を企てた。

実駿材料及び実瞼方法

実験動物としては体重300〜700gのモルモット及び体 7

重2〜3kgの猫を用いた。無麻酔で肝臓毒を適用した後に これ等を絶食しておき・,概ね2日後に致死量測定実験に供 した。致死量測定の際には動物を麻酔した。即ちモルモッ

トでは体重100g当り0.2 gのUrethanの皮下注射,猫 ではエーテル吸入によって麻明した。

 肝臓毒としては四塩化炭素,黄燐,クロロホルム及びメ チールアルコール等を用いた。動物に四塩化炭素。.7cc/kg

(オレーフ油にて10倍に稀釈したものを用いた)またはメ タノールの14cc/kgを経口投与した後24時聞を経て,こ れを致死量測定実験に供した。また黄燐はこれを切砕して テレビン油にて1%溶液となし,この溶液を。.3 cc/kgの 割に経口投与してから16〜20時問経た後に致死量測定実 験を行った。クロロホルムの場合には,その1ec/kgを皮 下注射し,24時間後に致死量測定実験を行った。

 モルモットを用いてDigitoxinの致死量を求めた後に開 腹し,コクチヂムム感染によって肝臓に小膿瘍が斑点状に 一面に生じている揚合を経験した。このコクチジウム感染 モルモットについて求めた致死量を集めて肝疾病時の成績 とした。

 致死量測定実験はDigitoxinについては南雲7)の方法に 従いg−Strophanthinにつし、ては宮沢8>の方法に従った。

実駿成績

 モルモットに対するDigitoxin致死量が肝臓障碍によっ て如何なる影響を受けるかについて行った実験結果を総:括 すると第1図に示す如くなる。図の対照は既に南雲が32 例の正常モルモットについて求めた致死:量の平均であり,

その値は。.105mg/loO gである。四塩化炭素中毒モルモッ トにつbて得た致死量は0.045〜0.063mg/100 gの範囲に

(2)

8

 80

田辺・他一強心醜躰の致死量と肝障碍

ワ0

60 50 ao 30

20 10

       致

e

ei

e

 ●●●

e e e

O.68

O.06

ao4

O.02

第1図 肝臓障碍によるDigi七〇xin致死量   の減少(モルモットにおける実験〉

札幌医誌1955 入り,その平均は0.053mg/100 gである。この平均致死量 は正常致死量の50.4%に相当する。同様に燐,クP r?ホル ム及びメチールアルコールに中毒.したモルモッ1・について それぞれ求めた平均致死量はO.075 mg/lOO g (O.062 ・y O. 094 mg/loo g), O.07 mg/ユ00 g (o.05〜o.089 mg/loo g)及び。.059

mg/100 g(0.039〜O.078 mg/100 g)となっている。これ等の 平均致死量の正常値に対する百分比はそれぞれ71.5%,66.9

%及び56%となっている。さらにコクチジウム感染によ って肝臓全体が強く侵されたモルモットについて求めた致 死量は平均O.074 mg/lOO g(0.056〜0.081 mg/100 g)で,こ れは正常致死量の70%に過ぎない。

 肉食動物に属する猫については四塩化炭素中毒時のみに ついて実験を行い第2図の如き 結果を得た。正常猫に対す るDigi七〇xin致死量は南雲の発表した如く0.45 mg/kgで ある。四塩化炭素中毒猫においては致死量は,平均O.32 mg/kg(0.28〜0.39 mg/kg>となり,これは正常値の70.1%

に当っている。

 次にg・Strophanthinについて行った実験結果を第3図 に示す。図の対照は宮沢が25例の正常モルモットを用い て求めた致死量の平均値。.031 mg/loo gである。四塩化炭 素で肝臓障碍を起すと平均致死量が0.022mg/100 g(0.018

〜o.026 mg/loo g)となり,これは対照の7ユ%に相当する。

 100

一量

比ワ5

50

25

一   一  需  一  一  一   一  r

●●●8

    Vt.毘炭

   ,照  イと素 第2図 四塩化炭麦中毒猫と    DigitQxin致死量

mS/Kg

   σゑ致   死   量   )

0.3

O,2

O.1

  g㎜致妊量比

ワ5

50

25

●●

●●

●●

嘘  一

●● ●0●     吻致死量説

。.o?

O.01

       判  醍

      塩        照  1縢

第3図四塩化炭素申毒によるg・Strophanthin 黎死量の脚(モ.ルヂ取おける実験)

(3)

8巻1号 田辺■一品一一va心配糖体の致死量と肝障碍 9

純括考按

 以上の実験から明白な如く,四塩化炭素,燐,クロロホ ルム及びメタノール等の肝臓毒中毒後にはDigi七〇xin及び g−S七rophan七hinに対する抵抗が滅じ,従って致死量が滅

菌する。しかもこのtt実はモルモットのみならず,猫にお いても認められたのである。Farah&Smuskowiczがラ ットを用いて肝障碍後にはg−Strophanthinの致死量が減 ずることを認めたが,われわれの成績はその事実をモルモ ット及び猫についても証明したことになり,さらにこの事 実がg−StrophanthinのみならずDigitoxinについても確 かめられたのである。

 致死量測定実験後に動物を病理解剖学的に検査した結果 によると,何れも中等度より強度に至る程度の種々な病変 像(細胞浸潤,塞胞形成,細胞質脱失,限局性出血等を伴 なう肝実質破壊,出血を伴なう壊死等)が認められた。し かしその病変程度は概して四塩化炭素の場合に最も著明で あり,次いでメタノール,クロロホルム,燐の順となって いた。この順位は概ね致死量減少の順位と一致している。

即ち肝障碍の著しいほど致死量の減り方が明き いといえそ うである。

 南雲りの実験によると,門脈結紮によって肝臓を血流か ら遮断すると,Digitoxinの致死量が減ずる。モルモット では門脈左枝結紮によって肝臓の約70%が血流から除外 されるが,この時の致死量は正常致死量の73.5%に相当 する。肝臓毒中毒によって致死量が約50・一70%に低下し たのであるからその影響は肝臓の70%を除外した時より 大きい結果となった。但し門脈血流の全遮断の揚合よりは 遙かに影響が少ない。何となれば全遮断を行うと致死量が 32.5%に減ずることを南雲が示しているからである。

 四塩化炭素中毒によって侵.されるのは肝臓のみとは限ら ず,他の実質性臓器にも及ぶことは当然考えられる。例え ばFarah&SmuskowicziO)によると,四塩化炭素中毒時 にはg−Stropha11七hinに対するラット心臓の感受性が増加 するものらしい。従って四塩化炭素申毒によって致死量の 減じた理由が肝臓障碍のみに起因するとは極言出来ない。

しかし少な,くとも肝臓障碍がその最大の原因であることに は異議をはさむ余地が無いと考えられる。

 既に述べた如く,肝臓障碍によって致死量の滅少が起る 理由として,諸家】)噂4)・9)一11)の考え方は配糖体の肝臓排泄 の障碍を挙げているが,われわれはこれと異なった見解を 持っている。即ち既にわれわれ6)・10Pが発表した如く,肝臓 においては非常に大量の配糖体が捕捉されるのであるか

ら,従って肝臓障碍が起れば当然捕捉される配糖体の量が 減じ,その分だけ多く肝臓以外の臓機特に心臓の方へ流れ

て行くものと考えられる。これが恐らく肝障碍時に致死量 の減ずる最大理由であろうと考えられる。肝障碍によって 起る致死量の減少率がモルモットにおけるよりも猫におい てやや少ない理由は,肝臓の捕捉能力が前者の方が遙かに 大きいからと考えられる。

 強心配糖体の致死量が肝臓障碍に.よって如何なる影響を 受:けるかを研究し,ヲ(の結果を得た。

 1.モルeットに二おいては,コクチジウム感染に二よつて 肝膿瘍が起つた場合や,四塩化炭素,燐,クロロホルム及 びメタノール等の申毒の場合には,Digitoxinの致死量が 著明に減じ,その減少率は肝実質の障碍の程度と平行する

ようである。

 2.猫においても,四塩化炭素中毒時に.はDigitoxin致 死量が著明に減ずる。

 3.モルモットに対するg−S七rophanthinの致死量は四 塩化炭素中毒時には著明に減少する。

 4.強心配糖体の致死量が肝臓障碍時に著明に減少する のは,肝臓における配糖体の捕捉力が障碍されるためと考 えられる。

      (昭和30.7.9受:付)

1) Hatcher & Eggleston: J. Pharmaeol. Exp. Therap.

  12, 405 (1919).

2) Hanzlik & Wood: J. Pharmacol. Exp・ Therap. 37,

  67 (1929).

3) Doek, Stockton & Wood: Proc. Soc. Exper, Biol.

  & Med 25, 278 (1928).

4) Kiese, Gummel u. Garan: Areh. exper. Path. u.

  Pharmakol. 184, 197(1937).

5) Tanabe&Suzuki: Jap. J. Pharmacol. 2, 28(1952).

6)田辺・他二日薬理誌48,158§(昭27);49,140§(昭28).

7)南雲:札幌日誌4,155(昭28);5,95(昭29).

8) 宮沢: オ…L幌医誌 7,82(日君30).

9) Farah: 」. Pharmacol. Ekp. Therap. 86, 248 (1946).

10)Farah&Smuskowicz:工Pharmacol. Exp. Therap.

  96, 139 (1949).

11) Giertz, Hahn u. Schunk: Areh. exper. Path. u.

  Pharmakol. 221, 34 (1954).

12) Friedman, St. George, Bine, Byers & Bland:

  Circulation 6, 367 (1952).

ユ3)St. George, B量ne&Friedman:Circulation 6,661

  (1952).

14) St. George&Friedrnan: Cireulation 6, 851(1952).

15) Geiling: Ann, Distr. Columbia 20, 197 (1951).

16)南雲:日薬理誌51,123(1955).

(4)

10 田辺・他 強心配糖体の致死量と肝障碍 札幌医誌.1955

Summary

   A marked decrease in lethal doses of digitoxin and g−strophanthin was observed in guinea pigs, when the liver was damaged by infection of coccidia or poisoning induced by CC14, phosphor, chloroform and methanol. lt was demonstrated that cats poisoned with CC14 show a marked reduction of tolerance to digitalis. lt is suggested that the reduction of tolerance,which is produced by liver damages, is due to the disturbance of glycoside uptake in liver.

      (Received July 9, 1955)

参照

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