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各種抗菌薬に対する2008年臨床分離好気性グラム陰性菌の感受性サーベイランス

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(1)

各種抗菌薬に対する

2008

年臨床分離好気性グラム陰性菌の

感受性サーベイランス

吉田 勇

1

・山口高広

1

・工藤礼子

2

・藤 理絵子

2

・高橋長一郎

3

太田玲子

3

・賀来満夫

4

・國島広之

4

・岡田正彦

5

・堀川良則

5

塩谷譲司

6

・木野博至

7

・小野由可

7

・藤田信一

8

・松尾収二

9

河野 久

9

・浅利誠志

10

・豊川真弘

10

・草野展周

11

・能勢資子

11

堀井俊伸

12

・谷本綾子

12

・宮本仁志

13

・犀川哲典

14

平松和史

14

・河野 茂

15

・ 原克紀

15

・山根誠久

16

仲宗根 勇

16

・巻 秀樹

1

・山野佳則

1 1塩野義製薬株式会社創薬・疾患研究所 2市立札幌病院 3山形大学医学部附属病院 4東北大学病院 5新潟大学医歯学総合病院 6癌研究会有明病院 7三井記念病院 8金沢大学医学部附属病院 9天理よろづ相談所病院 10大阪大学医学部附属病院 11岡山大学病院 12鳥取大学医学部附属病院 13愛媛大学医学部附属病院 14大分大学医学部附属病院 15長崎大学病院 16琉球大学医学部附属病院 (2011 年 11 月 28 日受付) 2008年に全国 16 医療施設において種々の臨床材料から分離された好気性グラム陰 性菌 22 菌種,1145 株に対する各種抗菌薬の MIC を主に微量液体希釈法で測定し, 抗 菌 力 の 比 較 検 討 を 行 っ た。Escherichia coli,Klebsiella pneumoniae,Klebsiella

oxytoca,Proteus mirabilis,Proteus vulgaris に お け る extended-spectrum ȕ-lactamase

(ESBL)産生株と考えられる株の分離頻度は,それぞれ 3.8%,2.6%,6.8%,5.5%,

(2)

は 3.2% か ら 6.8% に 上 昇 し,P. mirabilis で は 18.8% か ら 5.5% と 大 き く 減 少 し た。

PCR法 に よ り ペ ニ シ リ ン 結 合 蛋 白 質 3(PBP3)に 何 ら か の 変 異 が 確 認 さ れ た

Haemophilus inÀuenzae の分離頻度は,2006 年の 67.7%から 2008 年は 61.7% と 2004

年の 58.7% と同程度になった。Pseudomonas aeruginosa に対する各抗菌薬の抗菌力 は 2006 年 と 比 較 し て ほ と ん ど 変 わ っ て い な か っ た が,tobramycin が 1 ȝg/mL,

doripenemが 4 ȝg/mL の MIC90を示した。主要な抗 P. aeruginosa 薬の内,耐性菌分離

率が,1992 年から 2008 年までの間,10% 以下を維持しているのは,doripenem だけ であった。P. aeruginosa 以外のブドウ糖非醗酵グラム陰性桿菌においては,ほとんど の抗菌薬の抗菌力は 2006 年分離株の感受性測定結果と比較して大きな変化は起こっ ていなかった。 最新の臨床分離菌株の抗菌薬に対する感受性状 況を把握することは,臨床現場における感染症治 療において empiric chemotherapy のための抗菌薬 選択や検出菌の薬剤感受性検査の上で重要な情報 になる。また,既発売抗菌薬に対する今後の感受 性動向を予測し,耐性株の出現頻度を抑制する, あるいは新規抗菌薬開発へとつなげていくために は,各種臨床分離株に対する経年的な調査を実施 することが必要となる。そこで我々は 1992 年よ り隔年で感受性調査を行い,その成績を報告1∼15) してきた。今回,2008 年に全国 16 医療施設の各 種臨床材料から分離された好気性グラム陰性菌 22菌種,1145 株におけるȕ-ラクタム系薬(BLs) を中心とした注射用抗菌薬に対する感受性の調査 結果を報告する。

材料と方法

1) 使用抗菌薬 微量液体希釈法による MIC 測定時にはフロー ズンプレート(栄研化学)を使用した。測定した 抗 菌 薬 は,penicillin 系 抗 菌 薬(PCs):ampicillin (ABPC), piperacillin (PIPC), sulbactam/ABPC (SBT/ABPC),tazobactam/PIPC(TAZ/PIPC),セ フ ェ ム 系 抗 菌 薬(CEPs):cefazolin(CEZ),

cefotiam(CTM),cefmetazole(CMZ),Àomoxef

(FMOX), ceftriaxone (CTRX), ceftazidime (CAZ),cefotaxime(CTX),cefpirome(CPR),

cefozopran(CZOP), cefepime (CFPM),

sulbactam/cefoperazone(SBT/CPZ), latamoxef (LMOX),カ ル バ ペ ネ ム 系 抗 菌 薬(CBPs):

doripenem(DRPM), meropenem (MEPM),

imipenem(IPM),panipenem(PAPM),biapenem (BIPM),モ ノ バ ク タ ム 系 抗 菌 薬:aztreonam (AZT),ア ミ ノ グ リ コ シ ド 系 抗 菌 薬(AGs): tobramycin(TOB),amikacin(AMK),ニューキ ノロン系抗菌薬(NQs):ciproÀoxacin(CPFX), その他:minocycline(MINO),fosfomycin(FOM) および sulfamethoxazole-trimethoprim(ST)(混合 比 19 : 1)である。抗菌薬毎に設定されている適応 菌種を参考にして適宜測定抗菌薬を選択した。な お,ST は,trimethoprim の濃度で表記した。寒天 平板希釈法により MIC 測定を行った FOM は力価 の明らかな原末を用いた。 2)使用菌株 全国の 16 医療施設において,種々の臨床材料 から 2008 年に分離された好気性グラム陰性菌の 各菌種を用いた。各医療施設より各菌種 3∼10 株 ずつの分与を受けた。なお,分与菌株は抗菌薬に

(3)

対する耐性度を考慮せずに収集した。収集株は,

Manual of Clinical Microbiology Ninth Edition16 に準じた方法で再同定した後,全部で 22 菌種,

1145株を実験に使用した。

3) 抗菌薬感受性試験

MICは Clinical and Laboratory Standards Institute (CLSI)の標準法17,18に準じ,CLSI の指定菌株18

を精度管理用菌株として使用し,微量液体希釈法 または寒天平板希釈法で測定した。すなわち,

Haemophilus属以外の菌種および ST と FOM 以外 の抗菌薬における感受性測定は,カチオン濃度を 調整した Mueller-Hinton broth(Difco)(CAMHB) を使用した。Haemophilus 属の測定には,Haemophilus test medium(HTM)を使用した微量液体希釈法で 行った。ST の測定には,日本化学療法学会の標準 法(微量液体希釈法)19である CAMHB に 7.5% 馬 溶血液を添加した培地を用いた。FOM の測定に は,25 ȝg/mL の glucose-6-phosphate を 添 加 し た

Mueller-Hinton agar(Difco)培地を使用して寒天 平板希釈法で行った。 感性,低感受性,耐性の分類については CLSI 判定基準18に準じ,規定のない抗菌薬は同系統の 抗菌薬の基準を適応した。 4) ȕ-Lactamase 産生試験 Nitroce¿n を反応基質とする chromogenic 法に より行った。すなわち,nitroce¿n 125 ȝg/mL 溶液 に各菌株のコロニーを懸濁し,30 分後および一晩 後の色の変化を目視で判定し,どちらかの判定で 色調が黄色から橙色に変化した菌株をȕ-lactamase 産生株とした。

5) Extended spectrum ȕ-lactamase(ESBL)産 生試験

Escherichia coli, Klebsiella 属, Proteus 属 の

ESBL産生性の有無について CLSI の検出法17,18 に準じて検査を実施した。すなわち,CAZ あるい は CTX のいずれかの MIC が 2 ȝg/mL 以上を示し, かつ clavulanic acid(CVA)4 ȝg/mL 併用時に 8 倍 以上感性に変化した菌株を ESBL 産生株とした。 ESBL産生株と判定された株については,ESBL のタイプを PCR 法により,CTX-M, TEM, SHV の 3種に分類した20,21 6) Haemophilus inÀuenzae の ペ ニ シ リ ン 結 合 蛋白質 3(PBP3)遺伝子の変異と TEM 型 ȕ-lactamase 遺伝子の検出 生方ら22の報告に基づきインフルエンザ菌遺 伝子検出試薬(湧永薬品)を使用して,PBP 3 遺 伝子の変異と TEM 型ȕ-lactamase 産生遺伝子を PCR法で検出し,ȕ-lactamase-negative

ampicillin-susceptible H. inÀuenzae

(gBLNAS),ȕ-lactamase-negative ampicillin-resistant H. influenzae

(gBLNAR),ȕ-lactamase-positive

ampicillin-resistant H. inÀuenzae (gBLPAR),

ȕ-lactamase-positive ampicillin-clavuranic acid-resistant H.

inÀuenzae (gBLPACR)等の分類を行った。 7) IMP-1 遺伝子の検出 SHIROTO23の方法により IMP-1 遺伝子を PCR 法で検出した。

結 果

1. 腸内細菌科 1) Escherichia coli E. coli 157株の 22 抗菌薬に対する感受性分布を

Table 1に 示 し た。CEPs で は CFPM, CPR, CZOP および CTRX の抗菌力が強く,MIC90は 0.125 ȝg/ mL以下であった。次いで FMOX, CTX, LMOX,

CAZが 0.5 ȝg/mL 以下の MIC90を示した。CBPs で

は DRPM, MEPM および BIPM の抗菌力は強く,

(4)

Table 1. Susceptibility distribution of 157 clinical isolates of Escherichia coli.

Fig. 1. Trends of distribution of extended-spectrum ȕ-lactamase among E. coli, Klebsiella spp. and Proteus spp.

(5)

および PAPM も MIC90が 0.25 ȝg/mL 以下と強い抗 菌力を示した。全ての CBPs において,1 ȝg/mL 以 上の MIC を示す菌株はなく,低感受性および耐性 株は認められなかった。ESBL 産生株と判定され たのは 6 株(3.8%)存在し,分離頻度は 2006 年と 同程度であった(Fig. 1)。主要な BLs 8 薬剤に対 する ESBL 産生株の感受性分布を Table 2 に記載 した。CBPs と LMOX は,全ての ESBL 産生株に対 し,MIC 4 ȝg/mL 以下の抗菌力を示した。FMOX も 1 株を除き,MIC 0.5 ȝg/mL 以下であった。 2) Klebsiella pneumoniae K. pneumoniae 76株の 20 抗菌薬に対する感受 性 分 布 を Table 3 に 示 し た。PIPC, TAZ/PIPC,

CEZ, CMZ, SBT/CPZを 除 く 全 て の 抗 菌 薬 は,

1 ȝg/mL 以下の MIC90を示した。特に,DRPM お

よ び MEPM の 抗 菌 力 は 強 く,MIC90は 0.063 ȝg/ Table 2. Susceptibility of ESBL-producing Enterobacteriaceae clinically isolated in 2008.

(6)

mL以下を示した。ESBL 産生株と判定された菌 株は 2 株(2.6%)認められ,それらに対し,CBPs,

LMOX, FMOXの MIC は 0.5 ȝg/mL 以下であった。

3) Klebsiella oxytoca

K. oxytoca 59株の 20 抗菌薬に対する感受性分 布 を Table 4 に 示 し た。PIPC, CEZ, TAZ/PIPC,

CTM, SBT/CPZ以外の抗菌薬は,1 ȝg/mL 以下の MIC90を 示 し た。特 に,抗 菌 力 が 強 い の は, DRPM,MEPM,CPR で,それらの MIC90は 0.063 ȝg/ mL以下を示した。一方,CBPs を含む全ての BLs に対し,低感受性あるいは耐性を示す菌株が 1 株 分離された。この株は,PCR 法により IMP-1 の遺 伝子を保有していることが確認された。ESBL 産 生 株 と 判 定 さ れ た 菌 株 は 4 株(6.8%)で あ り,

Table 4. Susceptibility distribution of 59 clinical isolates of Klebsiella oxytoca.

(7)

CBPs, LMOX, FMOXの MIC は 0.5 ȝg/mL 以 下 で あった。 4) Proteus mirabilis P. mirabilis 55株の 20 抗菌薬に対する感受性分 布を Table 5 に示した。CAZ, CTRX, CTX, CFPM の抗菌力が強く,それらの MIC90は 0.063 ȝg/mL 以下であった。ESBL 産生株と判定された菌株は 3株(5.5%)存在し,2006 年(18.8%)より大き く減少した。ESBL 産生株に対して,TAZ/PIPC,

FMOX, CAZ, LMOX, DRPM, MEPMの MIC は, いずれも 0.5 ȝg/mL 以下を示した。

5) Proteus vulgaris

P. vulgaris 56株の 19 抗菌薬に対する感受性分 布 を Table 6 に 示 し た。CEPs で は CAZ, CFPM,

CTX, CTRXと LMOX が強い抗菌力を示し,それ

ら の MIC90は,0.25 ȝg/mL 以 下 で あ っ た。一 方, Table 6. Susceptibility distribution of 56 clinical isolates of Proteus vulgaris.

(8)

CBPsでは MEPM および DRPM が,他の CBPs よ りも強く,それらの MIC90は,0.25 ȝg/mL 以下を示

した。ESBL 産生株と判定された株は 1 株であっ た。

6) Providencia 属

Providencia rettgeri 23株, Providencia stuartii

11株 お よ び Providencia alcalifaciens 2 株 の 17 抗 菌薬に対する感受性分布を Providencia 属として

Table 7に示した。CEPsではLMOX, CFPM, FMOX,

CZOPの抗菌力が他よりも強く,それらの MIC90 は 0.25 ȝg/mL 以下であった。CBPs では,MEPM および DRPM の抗菌力が強く,それらの MIC90 は,0.25 ȝg/mL 以下であった。 7) Morganella morganii M. morganii 61株の 17 抗菌薬に対する感受性分 布を Table 8 に示した。CFPM と CPR が BLs の中 で最も強い抗菌力を示し,その MIC90は 0.063 ȝg/ mL以下であった。次いで,MEPM と LMOX であ り,そ の MIC90は そ れ ぞ れ 0.125 ȝg/mL お よ び 0.25 ȝg/mL であった。

Table 8. Susceptibility distribution of 61 clinical isolates of Morganella morganii.

(9)

8) Citrobacter freundii group

C. freundii 44株および Citrobacter braakii 15 株 の 17 抗 菌 薬 に 対 す る 感 受 性 分 布 を C. freundii groupとして Table 9 に示した。CBPs の DRPM お よ び MEPM の 抗 菌 力 は 特 に 強 く,MIC90 0.063 ȝg/mL 以下を示した。一方,CBPs を除く他 の BLs では,抗菌力の分布域が広く,二峰性の MIC分布を示し,多数の低感受性あるいは耐性を 示す菌株が認められた。 9) Enterobacter cloacae E. cloacae 74株の 17 抗菌薬に対する感受性分 布を Table 10 に示した。CBPs の抗菌力は強く,全 ての株に対し,MIC は 2 ȝg/mL 以下を示した。一 方,CBPs を除く他の BLs では,抗菌力の分布域 が広く,多数の低感受性或いは耐性を示す菌株が 認められた。 10) Enterobacter aerogenes E. aerogenes 46株の 17 抗菌薬に対する感受性 分布を Table 11 に示した。MEPM, DRPM, CFPM,

Table 10. Susceptibility distribution of 74 clinical isolates of Enterobacter cloacae.

(10)

CPRおよび CZOP の抗菌力は,他の BLs よりも強 く,MIC90は 0.25 ȝg/mL 以下であり,MIC 1 ȝg/mL 以上を示す菌株は認められなかった。一方,CBPs および CFPM, CPR, CZOP を除く抗菌薬では,抗 菌力の分布域が広く,低感受性あるいは耐性を示 す菌株が認められた。 11) Serratia marcescens S. marcescens 93株の 17 抗菌薬に対する感受性 分布を Table 12 に示した。CBPs の中では,MEPM と DRPM の抗菌力が強く,MIC90で 0.25 ȝg/mL 以 下を示した。一方,CEPs の中では,CPR,CFPM および CZOP の抗菌力が強く,MIC90で 0.25 ȝg/ mL以下を示したが,MIC が 64 ȝg/mL 以上の耐性 株も認められた。 2. Moraxella catarrhalis,Haemophilus 属 1) Moraxella catarrhalis M. catarrhalis 54株の 15 抗菌薬に対する感受性 分布を Table 13 に示した。CBPs および TAZ/PIPC は,全株に対し,MIC 0.125 ȝg/mL 以下を示した。

次いで CAZ と FMOX および PIPC の抗菌力が強 く,MIC90は 0.25∼0.5 ȝg/mL を示し,全株の発育 Table 12. Susceptibility distribution of 93 clinical isolates of Serratia marcescens.

(11)

を 1 ȝg/mL 以下で阻止した。 2) Haemophilus inÀuenzae H. inÀuenzae 94 株を,PCR 法により PBP3 遺伝 子における変異と TEM 型ȕ-lactamase 遺伝子の有 無を検出した結果から,生方らの分類22に基づ き,以下のように分類した。すなわち,PBP3 遺伝 子に変異が認められず,TEM 型ȕ-lactamase 遺伝 子が検出されない株を gBLNAS,PBP3 遺伝子に 変異が認められ,TEM 型ȕ-lactamase 遺伝子が検 出されない株を gBLNAR, PBP3 遺伝子に変異が 認められず,TEM 型ȕ-lactamase 遺伝子が検出さ れた株を gBLPAR, PBP3 遺伝子に変異が認めら れ,TEM 型ȕ-lactamase 遺伝子が検出された株を gBLPACRと し た。そ の 結 果,gBLNAS 32 株 (34.0%),gBLNAR 55 株(58.5%),gBLPAR 4 株 (4.3%),gBLPACR 3 株(3.2%)に 分 類 さ れ た。

Table 14. Susceptibility distribution of 89 clinical isolates of Haemophilus inÀuenzae.

Table 15. Susceptibility distribution of 32 clinical isolates of ȕ-lactamase-negative ABPC-susceptible Haemophilus inÀuenzae (gBLNAS)*.

(12)

Table 17. Susceptibility distribution of 50 clinical isolates of ȕ-lactamase-negative ABPC-resistant Haemophilus inÀuenzae (gBLNAR)*.

Table 16. Susceptibility distribution of 7 clinical isolates of ȕ-lactamase-positive ABPC-resistant Haemophilus inÀuenzae (gBLPAR) and ȕ-lactamase-positive clavulanic acid/amoxicillin-resistant H. inÀuenzae (gBLPACR)*.

(13)

Fig. 2. Classi¿ed using PCR in clinical strains of Haemophilus inÀuenzae isolated in 2000, 2002, 2004, 2006 and 2008.

Fig. 3. Classi¿cation according to susceptibility to ampicillin or PCR results in 89 strains of

Haemophilus inÀuenzae.

BLNAS: ampicillin MIC侑1 ȝg/mL, BLNAR: ampicillin MIC侒2 ȝg/mL, BLPAR: ȕ-lactamase positive

and sulbactam/ampicillin MIC侑1 ȝg/mL, BLPACR: ȕ-lactamase positive and sulbactam/ampicillin

(14)

Table 14には H. inÀuenzae 全株,Table 15,16,17

には,gBLNAS, gBLPAR+gBLPACR, gBLNAR それぞれの薬剤感受性分布を示した。感受性測定 時 に 生 育 が 認 め ら れ な か っ た 5 株 は 除 い た。

gBLNASに 対 し て,PIPC, TAZ/PIPC, CTRX,

CTX, CPRおよび MEPM は,強い抗菌力を示し,

MIC90で 0.063 ȝg/mL 以 下 で あ っ た。 一 方, gBLNARは,gBLNAS と比較して,全ての BLs に 対し低い感受性を示す傾向がみられたが,PIPC,

TAZ/PIPC, CTRX, CAZお よ び MEPM の MIC90 0.5 ȝg/mL 以下を示した。 上述の PCR 法の結果に基づいて分類した結果 から,2000 年以降におけるそれぞれの分離頻度 を,Fig. 2 に示した。2006 年までは,gBLNAS が 減少して,gBLNAR が上昇する傾向が続いてお り,2006 年には gBLNAS 以外で約 2/3 を占めるま で上昇していたが,2008 年においては,2004 年と 同程度の分離頻度を示す結果となった。また, ABPCに対する感受性とȕ-lactamase 産生の有無に

より,BLNAS, BLNAR, BLPAR+BLPACR の 3 種 に分類し,PCR 法による分類との相関を Fig. 3 に 示した。ABPC に対する感受性による分類では 46 株が BLNAS であったが,その内の 14 株(30.4%) が gBLNAR であった。 3) Haemophilus parainÀuenzae H. parainÀuenzae 32 株の 9 抗菌薬に対する感受 性分布を Table 18 に示した。測定した抗菌薬の中 で,CTRX および MEPM の抗菌力は強く,それら の MIC90は,0.25 ȝg/mL を示した。次いで,CTX, DRPM, IPM, PAPMが強く,MIC90は 0.5 ȝg/mL を

示した。ABPC に対しては,耐性を示す株は認め られなかったが,MIC が 2 ȝg/mL の低感受性を示 す株が 2 株認められた。 3. ブドウ糖非醗酵グラム陰性桿菌 1) Pseudomonas aeruginosa P. aeruginosa 94株の 18 抗菌薬に対する感受性 分布を Table 19 に示した。全体的に抗菌薬に対す る感受性は低く,ほとんどの抗菌薬の MIC90は, 16 ȝg/mL 以上であったが,TOB の MIC90が 1 ȝg/ mL,DRPM が 4 ȝg/mL,次いで AMK と CPFX が 8 ȝg/mL の抗菌力を示した。今回,CAZ に耐性 (MIC:32 ȝg/mL 以上)を示す菌株は 6 株検出され

た。また,TAZ/PIPC の MIC50, MIC80, MIC90値は,

それぞれ 4, 16, 64 ȝg/mL と,PIPC と全く同じ値を 示し,P. aeruginosa に対する抗菌活性発現におい て,TAZ の効果は低いことが示唆された。IPM 感 性及び IPM 低感受性(MIC:8 ȝg/mL 以下)67 株 と,IPM 耐性(MIC:16 ȝg/mL 以上)27 株に分類 して,それぞれの成績を Table 20 および Table 21 に示した。IPM 感性株及び IPM 低感受性におい て,MIC90で各抗菌薬を比較すると,TOB および BIPMが 1 ȝg/mL と 最 も 強 く,次 い で DRPM, MEPMお よ び IPM が 2 ȝg/mL の値を示した。一 方,IPM 耐性株においては,抗菌力の分布域が IPM感性株より耐性側にシフトしていた。測定し

(15)

た抗菌薬の中では,TOB が最も強く,その MIC90 は 2 ȝg/mL を示した。9 種類の抗 P. aeruginosa 薬 に対する 1992 年から 2008 年までの隔年における 耐 性 菌 分 離 率 を Table 22 に 示 し た。こ れ ら 抗 P. aeruginosa薬の内,耐性菌分離率が 10% 以下を 維持しているのは DRPM だけであった。一方, MEPMと IPM に対する耐性分離率は,経年的に 増加傾向が認められた。 2) Burkholderia cepacia B. cepacia 14株の 4 抗菌薬に対する感受性分布 を Table 23 に示した。ST が MIC90 1 ȝg/mL を示し た以外は,抗菌力は弱かった。 3) Stenotrophomonas maltophilia S. maltophilia 47株の 6 抗菌薬に対する感受性

Table 19. Susceptibility distribution of 94 clinical isolates of Pseudomonas aeruginosa.

Table 20. Susceptibility distribution of 67 clinical isolates of IPM-susceptible or IPM-intermediate

(16)

分 布 を Table 24 に 示 し た。MINO が MIC90 1 ȝg/ mLを示した以外は,抗菌力は弱かった。

4) Acinetobacter 属

Acinetobacter baumannii 41株 お よ び Acinetobacter

lowf¿i 2 株 の 12 抗 菌 薬 に 対 す る 感 受 性 分 布 を Acinetobacter属 と し て ま と め,Table 25 に 示 し た。CBPs および MINO の MIC90は 0.5 ȝg/mL 以下

を示したが,低感受性あるいは耐性を示す株も認

Table 22. Rate of antimicrobial resistance in Pseudomonas aeruginosa clinical isolates in Japan from 1992 to 2008 (N=894).

Table 21. Susceptibility distribution of 27 clinical isolates of IPM-resistant Pseudomonas

(17)

められた。

考 察

我々は,1992 年∼2006 年の隔年で実施してき た過去 8 回の調査に引き続き,2008 年に全国の 16 医療施設で各種臨床材料から分離された好気性グ ラム陰性菌 22 菌種,1145 株について,各種抗菌薬 の MIC 測定を行い,各種抗菌薬における抗菌力の 現状調査を行った。今回の結果と過去 8 回の報 1,3,5,7,9,11,13,15との比較検討を行った結果,経年 的な感受性変化,耐性株の分離頻度あるいは耐性 因子の検出等の結果から,耐性化が危惧される傾 向が見られる,あるいは今後注意が必要と考えら れる例について,他の報告との比較を含めて以下 に示した。 1点目は,H. inÀuenzae における BLNAR の増加 である。 BLNAR の分離頻度については,我々の ABPCに対する感受性の成績では 1992 年 3.3%, 1994 年 3.5%, 1996 年 15.6%, 1998 年 24.4%, 2000年 37.0%,2002 年 30.0%,2004 年は 40.0%, 2006年は 25.6%,2008 年は 40.4% と,1996 年以降

Table 23. Susceptibility distribution of 14 clinical isolates of Burkholderia cepacia.

Table 24. Susceptibility distribution of 47 clinical isolates of Stenotrophomonas maltophilia.

(18)

急 激 に 上 昇 し,2006 年 は 若 干 減 少 し た も の の 2008年は再び上昇し,高率を維持していた。一 方,PCR 法による分類に基づくと,PBP3 に変異 を有する菌株の分離率は 2000 年 43.0%,2002 年 50.0%,2004 年は 58.7%,2006 年は 67.7%,2008 年は 61.7%と 2004 年以降は 60% 前後の数値で推 移している。ABPC に対する感受性と PBP3 の変 異の有無の関係を見た場合,ABPC に対する感受 性で BLNAS と分類された 46 株中 14 株(30.4%) が,PCR 法では gBLNAR(gLow-BLNAR を含む) と判定され,ABPC に対する感受性で BLNAS と 判定された株の約 3 割の株に PBP3 の変異が生じ ていることが確認された。他の日本の臨床分離株 で の 報 告 で は,INOUE24の 2005 年 分 離 の H. inÀuenzae 89 株で gBLNAR は 52.7%,山口ら25 2007年 分 離 の H. inÀuenzae 675 株 中 50.1% が BLNARNIKI26の 2007 年呼吸器感染症からの 分離の H. inÀuenzae 206 株の中 101 株(49.0%)が BLNARと発表しており,我々の成績より多い分 離頻度であった。我々の成績では BLNAR の分離 頻度は 2004 年以降上昇傾向が見られなくなって きているが,坂田らの報告27では 2006 年以降 2008年も含めて BLNAR の分離頻度は上昇して おり,他の報告においても我々より高い分離頻度 が報告されていることから,我々の調査でも今後 の動向について注意していく必要がある。一方, 海外の報告では,MORRISSEY28の英国における 1999年から 2007 年臨床分離 H. inÀuenzae の非感 受 性 菌 の ト レ ン ド を 調 査 し た 成 績 で は, ȕ-lactamase 産生株は全ての年度において約 15% 程度であり,BLNAR は全年度で 0.9%,69 株しか 検出されなかった。Amoxicillin に対する非感受性 菌の分離は 2005 年以降約 30% に上昇しており, BLNARの分離頻度が 2005 年以降上昇している ことを示唆する成績であった。PEREZ-TRALLERO29 の ス ペ イ ン で の 1996 年∼1997 年 分 離 菌 と 2006 年∼2007 年分離菌の比較をしている。ȕ-lactamase 産生株は 25.7%から 15.7%に BLNAR は 13.5%か ら 0.7%にそれぞれ減少しているが,2006 年から 2007年株にはこれ以外に 4.9%の株に PBP3 に変 異が入っていることが報告されている。BAE30 の 2005 年から 2006 年にかけての韓国での分離菌 540株の成績では 255 株(47.2%)がȕ-lactamase 産 生 株,33 株(6.1%)が BLNAR で あ り,28 株 (5.2%)が BLPACR であったと報告している。海 外のいずれの報告も我々および日本の他の報告よ ȕ-lactamase 産生株は多く,BLNAR の分離率は 低かった。 2点目は,ESBL の分離状況である。2008 年の

ESBL保 有 株 の 検 出 率 は,E. coli で 3.8%,K.

pneumoniae で 2.6%, K. oxytoca で 6.8%, P. mirabilisで 5.5%,P. vulgaris で 1.8% 検出された。 E. coli,Klebsiella 属では 2006 年に比較して若干 上 昇 し て い た が 大 き な 変 動 で は な か っ た。P. mirabilisにおける ESBL の分離頻度が 2006 年ま では年度ごとに上昇していたが,2008 年は 5.5% ま で 減 少 し た。し か し,山 口 ら の 報 告25で は 10.8%と高い分離頻度も報告されていることか ら,今後の動向に注意する必要があると考える。 一方,日本における他の報告では,前述の山口ら の報告25では 2007 年の臨床分離株の E. coli で 8.6%,K. pneumoniae では 5.3%,P. mirabilis では 10.8%であった。別の山口ら31では 2009 年臨床 分離株では E. coli では 10.4%,K. pneumoniae で

2.5%,P. mirabilis では 3.7% と報告している。ISHII

らの報告32では,2006 年の臨床分離株で E. coli では 6.2%,K. pneumoniae で 4.2% の株が ESBL 産 生株だとしている。一方,海外の報告では,JONES 33は 2007 年 に 米 国 で 分 離 さ れ た E. coli で 7.5%,Klebsiella 属で 23.3% の株が ESBL 産生株 であったと報告している。同時に Klebsiella 属で は 10.1% の株が KPC-type serine carbapenemase を 産生していることを報告しており,日本において もこの carbapenemase 産生株の分離には注意を払

(19)

う必要がある。一方,HSUEH34の 2008 年アジ ア環太平洋地域での腹腔内感染症分離株における 成績では,E. coli において,インドで 61.2%,中 国で 59.1%,タイで 52.9%,韓国で 30.4% 等であ り,K. pneumoniae においては,インドで 46.8%, フィリピンで 35.7%,中国で 34.4% 等と,日本に 比べて,アジア環太平洋地域の ESBL 産生株の 分離頻度は,高い報告が多い。日本は,これらの 国々との人的交流も多いことから,今後の日本の ESBL産生株の分離状況については,その動向を 追跡していく必要があると考える。今回,分離さ れた ESBL 産生株に対し良好な抗菌力を示した主 要な抗菌薬に対する感受性結果と PCR 法により 判別した ESBL のタイプを Table 2 に示した。いず れのタイプの ESBL 産生株に対しても,CBPs と LMOXは他の BLs に比べ強い抗菌力を示した。一 方,TAZ/PIPC や CFPM, CAZ, FMOX に 対 し て は,MIC が 64 ȝg/mL 以上を示す株も散見された。 これらの株の CAZ あるいは CTX に対する感受性 が,CVA 添加により,MIC で 3 管以上向上するこ と,CBPs およびオキサセフェム系薬に対し,高 い感受性を示していること,PCR により CTX-M タイプの ESBL が多く検出されていることなどか ら,耐性を示す要因として,主に CTX-M タイプ の ESBL 産生が考えられた。また,今回調べた中 では,CTX-M タイプの ESBL 産生株が最も多く, 16株中 14 株を占めた。CTX-M タイプの中でも, CTX-M-15は,世界中において多く分離されてお り,注目されている。そこで,PCR の結果から, CTX-M-15と思われる株について,ESBL 遺伝子 の塩基配列を決定した結果,E. coli SR33982 株と E. coli SR34100株の 2 株が CTX-M-15 の遺伝子を 持っていることが明らかとなった。この 2 株に対 し,TAZ/PIPC の MIC は 32 ȝg/mL,CAZ と CFPM

の MIC はそれぞれ 64 ȝg/mL 以上を示した。特に,

TAZ/PIPCは,ȕ-lactamase 阻害剤の TAZ が配合さ

れているにもかかわらず,このように高い MIC を 示す株が見られたことから,ESBL 産生株の治療 に TAZ/PIPC を使用する場合には注意を要すると 考 え ら れ た。一 方,CBPs は,い ず れ も MIC が 0.25 ȝg/mL 以下,オキサセフェム系薬の LMOX お よび FMOX も,MIC が 0.25∼4 ȝg/mL の抗菌力を 示しており,起因菌として ESBL 産生株が想定さ れる感染症に対し,CBPs だけでなく,LMOX と FMOXも有効であることが示唆された。 3点目は,P. aeruginosa の耐性化の問題である。 P. aeruginosa では,例年と同様に耐性株の分離頻 度が高く,BLs では DRPM が 4 ȝg/mL の MIC90 示したが,それ以外は 16 ȝg/mL 以上であった。そ れ以外の系統では TOB が 1 ȝg/mL,AMK および CPFXが 8 ȝg/mL の MIC90を 示 し た が,MINO と FOMは 64 ȝg/mL 以 上 で あ っ た。CAZ 耐 性 株 (MIC:25 ȝg/mL 以上)の分離頻度は,1992 年が 23%,1994 年が 18%,1996 年が 24%,1998 年が 26%,2000 年が 13%,2002 年が 17%,2004 年が 14.4%,2006 年は 8.5%,2008 年は 6.4% であり, 2004年以降引き続き減少傾向にある。IPM 耐性株 は 2002 年から 2004 年にかけて減少したが,その 後再び上昇傾向に転じ,2008 年は 28.7%になって いた。MEPM も IPM ほどではないが徐々に上昇 している傾向が見られ,2008 年は 18.1%であっ た。これらに比較して DRPM は 1992 年からほと んど変化しておらず,耐性株が出現しにくい薬剤 であることを示唆する成績であった。この原因と して,SAKYO35が,寒天平板を用いたカップ法 の阻止円内に,MEPM と IPM はコロニーが出現 するが,DRPM は出現しないことを報告してい る。これらのコロニーは,CBPs に対する感受性 が低下しており,MEPM や IPM により,親株の培 養液中から約 10−7∼10−8の頻度で選択され出現 するが,DRPM では,選択されないとしている。 IPM耐性株の分離頻度についての他の日本の報告 では,山口ら25の 2007 年臨床分離株の報告では 尿路感染症由来で 589 株中 17.5%,呼吸器感染症

(20)

由来で 673 株中 24.7% であった。ISHIIらの報告36 では IPM 耐性株の分離頻度は 2002 年が 21.8%, 2004年が 19.3%,2006 年が 24.5% と発表してお り,我々の成績と同様であった。また,CBPs 耐性 株に関する海外の報告では,LIVERMORE37 2001年から 2006 年の英国とアイルランドで分離 された P. aeruginosa の成績では 2001 年の 6.0% か ら 2006 年の 11.3% に IPM 耐性株の分離が有意差 を 持 っ て 上 昇 し て い る こ と が 示 さ れ て い る。 PILLAR38は 2005 年から 2006 年に米国で分離さ れた菌株について比較しているが,IPM 非感性 P. aeruginosaの分離率は 875 株中 207 株 23.7%で あり,これらの株に対して DRPM は 55.6% の株が 感性を示し,MEPM の 42.5% より高い成績である ことを報告している。HAWSER39は 2008 年に ヨーロッパで分離された臨床分離株における IPM 感受性率を 69.0% と報告しており,非感性率に直 すと 31.0%なっていた。 P. aeruginosa における多剤耐性化の問題で,多 剤耐性 P. aeruginosa(MDRP)と判定される菌株 の分離頻度は,今回の我々の成績では 94 株中 1 株 1.1%であり,2006 年の 106 株中 3 株 2.8%,2004 年の 90 株中 2 株 2.2% から上昇していなかった。 MDRPについての日本の他の報告では,NIKIらの 報 告26で は 171 株 中 1 株 0.6%,山 口 ら の 2 報 25,31では尿路感染症由来で 589 株中 33 株 5.6%, 呼 吸 器 感 染 症 由 来 で 673 株 中 12 株 1.8% お よ び 294株中 7 株 2.4%といずれも上昇傾向は認められ なかったと述べており,我々の成績と同様で低い 分離率であった。抗緑膿菌薬 9 剤に対する耐性化 の 解 析 で は,9 剤 中 6 剤 に 耐 性 株 の 分 離 率 は, 2008年は 94 株中 4 株 4.3%,2006 年は 106 株中 6 株 5.7%,2004 年 は 90 株 中 11 株 12.2% で あ り, 徐々に減少している結果であり,各医療施設の緑 膿菌感染症に対する耐性化阻止対策の結果が現れ ていると考えられるが,今後の状況について注意 していく必要がある。 一方,海外における薬剤耐性グラム陰性菌につ いては,矢野ら40が報告しており,今後問題になる と考えられる耐性株として,New Delhi-metallo-ȕ-lactamase-1(NDM-1),KPC 型 carbapenemase, ESBL産生菌および多剤耐性 Acinetobacter を取り 上げている。ESBL 産生菌については,上述した が,我々のサーベイランスでも E. coli,Klebsiella 属においては徐々に分離頻度が上昇している傾向 を示した。NDM-1 産生株と KPC 産生株に関して は,これまで調査を行っていないが,今後注意深 く薬剤感受性結果を精査していく必要があると考 える。 多剤耐性 Acinetobacter については,データは示 し て い な い が,感 受 性 結 果 か ら 一 部 の 菌 株 で OXA型の carbapenemase の有無を調査しており,

OXA-51型,OXA-23 型,OXA-24 型,OXA-58 型 の遺伝子が検出されている。しかし,その分離頻 度が上昇している傾向は認められなかった。CPR, CZOP, CFPM等の広域 CEPs および CBPs は好気 性グラム陰性菌の多くの菌種に対して強い抗菌力 を有しているが,それらの抗菌薬においてもほと んどの菌種で耐性株が検出されている。これらの 上述の耐性菌の分離頻度が今後どのように推移す るかを調べていくことは,非常に重要と考えられ る。さらに,最新の臨床分離株の感受性調査は, 抗菌薬の経験的治療のための基礎データとして, あるいは耐性株の出現,蔓延を防ぐための方策を 考えるためにも重要であると考えられる。今後も 薬剤感受性サーベイランスを継続し,基礎データ を蓄積していくと共に新しい知見,新規抗菌薬に ついても追加して,最新の臨床分離株のデータと して提供していく予定である。

謝 辞

本稿を終えるに当たり,2008 年臨床分離株薬剤 感受性サーベイランスに使用した菌株の提供に御

(21)

協力いただいた社会保険中京病院検査部の諸先生 方に深謝致します。

文 献

1)佐々木 緊,長野 馨,木村美司,他:種々 の臨床分離株の各種抗菌薬に対する感受性 サーベイランス。日本化学療法学会雑誌43: 1226, 1995 2)木村美司,長野 馨,東山伊佐夫,他:種々 の臨床分離株の各種抗菌薬に対する感受性 サーベイランス―その11994年度分離グラ ム陽性球菌について―。日本化学療法学会雑 44: 595609, 1996 3)長野 馨,木村美司,東山伊佐夫,他:種々 の臨床分離株の各種抗菌薬に対する感受性 サーベイランス―その21994年度分離グラ ム陰性菌について―。日本化学療法学会雑誌 44: 610625, 1996 4)木村美司,吉田 勇,東山伊佐夫,他:各種 抗菌薬に対する臨床分離株の感受性サーベイ ランス―その11996年分離グラム陽性球菌 について―。日本化学療法学会雑誌46: 324 342, 1998 5)吉田 勇,長野 馨,木村美司,他:種々の 臨床分離株の各種抗菌薬に対する感受性サー ベイランス―その21996年度分離グラム陰 性菌について―。日本化学療法学会雑誌46: 343362, 1998 6)木村美司,吉田 勇,東山伊佐夫,他:各種 抗菌薬に対する臨床分離株の感受性サーベイ ランス―その11998年分離グラム陽性球菌 および嫌気性菌―。日本化学療法学会雑誌48: 585609, 2000 7)吉田 勇,東山伊佐夫,木村美司,他:各種 抗菌薬に対する臨床分離株の感受性サーベイ ランス―その21998年分離グラム陰性菌―。 日本化学療法学会雑誌48: 610632, 2000 8)吉田 勇,木村美司,東山伊佐夫,他:各種 抗菌薬に対する臨床分離株の感受性サーベイ ランス―2000年分離グラム陽性球菌および嫌 気性菌に対する抗菌力―。日本化学療法学会 雑誌51: 179208, 2003 9)吉田 勇,杉森義一,東山伊佐夫,他:各種 抗菌薬に対する臨床分離株の感受性サーベイ ランス―2000年分離グラム陰性菌に対する抗 菌力―。日本化学療法学会雑誌51: 209232, 2003 10)藤村享滋,吉田 勇,地主 豊,他:各種抗 菌薬に対する2002年臨床分離好気性グラム陽 性球菌および嫌気性菌の感受性サーベイラン ス。日本化学療法学会雑誌54: 330354, 2006 11)吉田 勇,藤村享滋,地主 豊,他:各種抗 菌薬に対する2002年臨床分離好気性グラム陰 性菌の感受性サーベイランス。日本化学療法 学会雑誌54: 355377, 2006 12)藤村享滋,吉田 勇,伊藤喜久,他:各種抗 菌薬に対する2004年臨床分離好気性グラム陽 性球菌および嫌気性菌の感受性サーベイラン ス。日本化学療法学会雑誌56: 543561, 2008 13)吉田 勇,藤村享滋,伊藤喜久,他:各種抗 菌薬に対する2004年臨床分離好気性グラム陰 性菌の感受性サーベイランス。日本化学療法 学会雑誌54: 562579, 2008 14)山口高広,吉田 勇,伊藤喜久,他:各種抗 菌薬に対する2006年臨床分離好気性グラム陽 性球菌および嫌気性菌の感受性サーベイラン ス。Jpn. J. Antibiotics 63: 431456, 2010 15)吉田 勇,山口高広,伊藤喜久,他:各種抗 菌薬に対する2006年臨床分離好気性グラム陰 性 菌 の 感 受 性 サ ー ベ イ ラ ン ス。Jpn. J. Anti-biotics 63: 457479, 2010

16MURRAY, P. R.; E. J. BARON, J. H. JORGENSEN,

et al.: Manual of Clinical Microbiology,

9th ed. American Society for Microbiology, Washington, DC, 2007

17 Clinical and Laboratory Standards Institute CLSI: Methods for dilution antimicrobial

susceptibility tests for bacteria that grow aerobically. Approved standard. 7th ed., M7-A7. CLSI, Wayne, PA 2006

18 Clinical and Laboratory Standards Institute CLSI: Performance standards for antimicrobial

susceptibility testing. Eighteenth informational supplement, M100-S18. Clinical and Laboratory Standards Institute, Wayne, PA, 2008

19)日本化学療法学会抗菌薬感受性測定法検討委 員会報告(1989年)微量液体希釈によるMIC

測定法(微量液体希釈法)日本化学療法学会 標準法。Chemotherapy 38: 102105, 1990 20SHIBATA, N.; H. KUROKAWA, Y. DOI, et al.: PCR

(22)

genes identi¿ed in clinically isolated Gram-negative bacilli in Japan. Antimicrob. Agents Chemother. 50: 791795, 2006

21SENDA, K.; Y. ARAKAWA, S. ICHIYAMA, et al.: PCR detection of metallo-beta-lactamase gene

blaIMPin Gram-negative rods resistant to broad-spectrum beta-lactams. J. Clin. Microbiol. 34: 29092913, 1996 22)生方公子,千葉菜穂子,小林玲子,他:本邦 において1998年から2000年の間に分離され Haemophilus inÀuenzaeの分子疫学解析―肺 炎球菌等による市中感染症研究会収集株のま とめ―。 日本化学療法学会雑誌50: 794804, 2002

23SHIROTO, K.; Y. ISHII, S. KIMURA, et al.:

Metallo-ȕ-lactamase IMP-1 in Providencia rettgeri from

two different hospitals in Japan. J. Med. Microbiol. 54: 10651070, 2005

24INOUE, S.; Y. WATANUKI, N. MIYAZAWA, et al.: High frequency of ȕ-lactamase-negative,

ampicillin-resistant strains of Haemophilus

inÀuenzae in patients with chronic bronchitis in

Japan. J. Infect. Chemother. 16: 7275, 2010 25)山 口 惠 三,大 野  章,石 井 良 和,他:2007

年に全国72施設から分離された臨床分離株

12,919株の各種抗菌薬に対する感受性サー

ベ イ ラ ン ス。Jpn. J. Antibiotics 62: 346370, 2009

26NIKI, Y.; H. HANAKI, T. MATSUMOTO, et al.: Nationwide surveillance of bacterial respiratory pathogens conducted by the Japanese Society of Chemotherapy in 2007: general view of the pathogens antibacterial susceptibility. J. Infect. Chemother. 15: 156167, 2009

27)坂田 宏:当院における小児の臨床材料から 分離されたampicillin耐性Haemophilus inÀuenzae 10年間の変動。Jpn. J. Antibiotics 62: 341

345, 2009

28MORRISSEY, I., K. MAHER, L. WILLIAMS, et al.: Non-susceptibility trends among Haemophilus

inÀuenzae and Moraxella catarrhalis from

community-acquired respiratory tract infections in the UK and Ireland, 1999-2007. J. Antimicrob. Chemother. 62: Suppl. 2: ii97-ii103, 2008

29PEREZ-TRALLERO, E.; J. E. MARTIN-HERRERO, A.

MAZON, et al.: Antimicrobial resistance among respiratory pathogens in Spain: Latest data and changes over 11 years 1996-1997 to 2006-2007. Antimicrob. Agents Chemother. 54: 29532959, 2010

30BAE, S.; J. LEE, J. LEE, et al.: Antimicrobial resistance in Haemophilus inÀuenzae respiratory

tract isolates in Korea: Results of nationwide acute respiratory infections surveillance. Antimicrob. Agents Chemother. 54: 6571, 2010

31)山口惠三,石井良和,岩田守弘,他:Meropenem

を含む各種注射用抗菌薬に対する2009年臨 床 分 離 株 の 感 受 性 サ ー ベ イ ラ ン ス。Jpn. J. Antibiotics 64: 5395, 2011

32ISHII, Y.; K. TATEDA, K. YAMAGUCHI, et al.: Evaluation of antimicrobial for ȕ-lactam using

the Etest method against clinical isolates from 100 medical centers in Japan 2006. Diagn. Microbiol. Infect. Dis. 60: 177183, 2008 33JONES, R. N.; J. T. KIRBY & P. R. RHOMBERG:

Comparative activity of meropenem in US medical centers 2007: initiating the 2nd decade of MYSTIC program surveillance. Diagn. Microbiol. Infect. Dis. 61: 203213, 2008

34HSUEH, P. R.; R. E. BADAL, S. P. HAWSER, et al.: Epidemiology and antimicrobial susceptibility pro¿les of aerobic and facultative Gram-negative bacilli isolated from patients with intra-abdominal infections in the Asia-Paci¿c region: 2008 results from SMART Study for Monitoring Antimicrobial Resistance Trends. Int. J. Antimicrob. Agents, 36: 408414, 2010 35SAKYO, S.; H. TOMITA, K. TANIMOTO, et al.:

Potency of carbapenems for the prevention of carbapenem-resistant mutants of Pseudomonas

aeruginosa the high potency of a new

carba-penem doricarba-penem. J. Antibiotics 59: 220228, 2006

36ISHII, Y. & K. YAMAGUCHI: Evaluation of the susceptibility trends to meropenem in a nationwide collection of clinical isolates in Japan: a longitudinal analysis from 2002 to 2006. Diagn. Microbiol. Infect. Dis. 61: 346

(23)

37LIVERMORE, D. M.; R. HOPE, G. BRICK, et al.: Non-susceptibility trends among Pseudomonas

aeruginosa and other non-fermentative

Gram-negative bacteria from bacteraemias in the UK and Ireland 2001-06. J. Antimicrob. Chemother. 62: Suppl. 2, ii55-ii63, 2008

38PILLAR, C. M.; M. K. TORRES, N. P. BROWN, et

al.: In vitro activity of doripenem a carbapenem for the treatment of challenging infections caused by Gram-negative bacteria, against recent clinical isolates from the United

States. Antimicrob. Agents Chemother. 52: 43884399, 2008

39HAWSER, S.; D. HOBAN, S. BOUCHILLON, et al.: Antimicrobial susceptibility of intra-abdominal Gram-negative bacilli from Europe: SMART Europe 2008. Eur. J. Clin. Microbiol. Infect. Dis. 30: 173179, 2011

40)矢野寿一,平潟洋一,賀来満夫:海外におけ る薬剤耐性グラム陰性桿菌の動向。日本化学 療法学会雑誌59: 815, 2011

Antimicrobial susceptibility of clinical isolates of aerobic

Gram-negative bacteria in 2008

I

SAMU

Y

OSHIDA1

,

T

AKAHIRO

Y

AMAGUCHI1

,

R

EIKO

K

UDO2

,

R

IEKO

F

UJI2

,

C

HOICHIRO

T

AKAHASHI3

,

R

EIKO

O

OTA3

,

M

ITSUO

K

AKU4

,

H

IROYUKI

K

UNISHIMA4

,

M

ASAHIKO

O

KADA5

,

Y

OSHINORI

H

ORIKAWA5

,

J

OJI

S

HIOTANI6

,

H

IROYOSHI

K

INO7

,

Y

UKA

O

NO7

,

S

HINICHI

F

UJITA8

,

S

HUJI

M

ATSUO9

,

H

ISASHI

K

ONO9

,

S

EISHI

A

SARI10

,

M

ASAHIRO

T

OYOKAWA10

,

N

OBUCHIKA

K

USANO11

,

M

OTOKO

N

OSE11

,

T

OSHINOBU

H

ORII12

,

A

YAKO

T

ANIMOTO12

,

H

ITOSHI

M

IYAMOTO13

,

T

ETSUNORI

S

AIKAWA14

,

K

AZUFUMI

H

IRAMATSU14

,

S

HIGERU

K

OHNO15

,

K

ATSUNORI

Y

ANAGIHARA15

,

N

OBUHISA

Y

AMANE16

,

I

SAMU

N

AKASONE16

,

H

IDEKI

M

AKI1

and

Y

OSHINORI

Y

AMANO1

1

Shionogi Pharmaceutical Research Center, Shionogi & Co., Ltd.

2

Sapporo City General Hospital

3

Yamagata University Hospital

4

Tohoku University Hospital

5

Niigata University Medical & Dental Hospital

6

Cancer Institute Hospital

7

Mitsui Memorial Hospital

8

Kanazawa University Hospital

9

Tenri Hospital

10

Osaka University Hospital

11

Okayama University Hospital

12

Tottori University Hospital

13

Ehime University Hospital

14

Oita University Hospital

15

Nagasaki University Hospital

16

University Hospital of the Ryukyus

(24)

We determined MICs of antibacterial agents against 1145 clinical strains of aerobic

Gram-negative bacteria

22 species

isolated at 16 Japanese facilities in 2008. MICs were determined

using mostly broth microdilution method and antibacterial activity was assessed. Strains

producing extended-spectrum

ȕ-lactamases

ESBL

accounted for 3.8% of Escherichia coli,

2.6% of Klebsiella pneumoniae, 6.8% of Klebsiella oxytoca, 5.5% of Proteus mirabilis and

1.8% of Proteus vulgaris. ESBL produced strains were 6.8% at K. oxytoca that increased

compared with 3.2% and 5.5% at P. mirabilis that decreased compared with 18.8% in 2006.

Among Haemophilus in

Àuenzae, 61.7% that decreased compared with 67.7% in 2006, equaled

58.7% in 2004, were strains when classi¿ed by penicillin-binding protein 3 mutation. Against

Pseudomonas aeruginosa, the activity of most antibacterial agents was similar to that in 2006.

Although two antibacterial agents that tobramycin showed an MIC

90

of 1

ȝg/mL and doripenem

showed an MIC

90

of 4

ȝg/mL against P. aeruginosa have potent activity. Of all P. aeruginosa

strains, 4.3% were resistant to six agents of nine antipseudomonal agents, that decreased

compared to 12.2% in 2004 and 5.7% in 2006. Against other glucose-non-fermentative

Gram-negative rods, the activity of most antibacterial agents was similar to that in 2006.

Fig. 1. Trends of distribution of extended-spectrum ȕ-lactamase among E. coli,  Klebsiella spp
Table 2. Susceptibility of ESBL-producing Enterobacteriaceae clinically isolated in 2008.
Table 4. Susceptibility distribution of 59 clinical isolates of Klebsiella oxytoca.
Table 6. Susceptibility distribution of 56 clinical isolates of Proteus vulgaris.
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参照

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