124 (46) 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
ヤマ ウチ テル オ山内照夫(昭和3
博士(医学) 乙第1392号平成5年9月17日
学位規則第4条第2項該当(博士の学位論文提出者)
脳血管障害性痴呆と血圧・脈拍の概日リズムに関する研究 (主査)教授 丸山 勝一 (副査)教授 橋本 葉子,今井 康晴論 文 内 容 の 審 査
目的 本邦では,痴呆の原因として多発性脳梗塞が最も多 いが,危険因子をコントロールすることで予防可能な 疾患でもある.特に高血圧は最も重要な危険因子であ り,その治療には血圧・脈拍の概日リズムを考慮した 適切な降圧が必要である.本研究では多発性脳梗塞患 者について,血圧・脈拍郷国リズムを測定し,その特 徴と痴呆および病巣との関連,さらに治療上の問題点 についても検討を行った. 対象および方法 対象は臨床症状,神経学的所見ならびに頭部CT, MRIの画像検査により確認した多発性脳梗塞患者64 例(平均年齢73.9±7,2歳)で,痴呆の有無については DSM-IIIRを用いて判定した.器質的脳疾患を有さな い50例を対照とした.血圧・脈拍概日リズムの測定は 日本コーリン社製ABPM630を用い,30分間隔で24時 間にわたり計測した. 結果 (1)対象のうち痴呆を伴わない群では,降圧薬服用 の有無に関わらず生理的な夜間の下降を認めた.(2) 痴呆を伴う群では降圧薬服用の有無に関わらず,夜間 の血圧下降が認められず,血圧二日リズムの異常を認 めた.脈拍については,夜間の生理的な低下がみられ, 概日リズムの異常は認められなかった.(3)夜間の血 圧の平均値は対照群,および痴呆を伴わない群に比較 し,痴呆群で有意に高値であった(p<0.05).(4)血 圧の昼夜差(覚醒時と睡眠時の平均値の差)が,長谷 川式簡易痴呆スケール,mini-mental state等の認知機 能検査と有意に相関し,痴呆が高度になるほど昼夜の 平均血圧に差がみられなくなった.(5)血圧概日リズ ム異常は各病巣部位とは有意な相関を認めなかった. 考察 血圧聖日リズムの異常は痴呆群でより高率,かっ高 度にみられた.痴呆群では,重度の器質的障害に加え, 認知障害のため外界の同調因子の影響を受けることが できない可能性が考えられた.また,脈拍網引リズム が正常であったことは,脈拍が外界の同調因子の影響 を受け難く,また副交感神経系の機能と強く相関し, 生命維持機構としての安全性を維持するためと考えら れた.血圧概日リズムの異常と病巣部位に有意な相関 を認めなかったのは,同一患者の病巣が多岐に渡り, 責任病巣を特定できないためと思われた.また痴呆患 者では,夜間血圧の持続的高値が脳実質障害を増悪さ せ,痴呆を進行させる危険因子となっていると考えら れる.著者はnicardipine LA, nilvadipine等のCa拮 抗薬が認知機能に影響を与えず,安全な降圧薬である ことを報告しているが,今後も夜間血圧に対する適切 な降圧療法を行い,これらの悪循環を断つ方向を求め ることが望まれる. 結論 多発脳梗塞性痴呆患者では血圧概日リズムの異常が 高頻度かつ高度に認められた.特に夜間血圧の高値が 痴呆を進行させる危険因子となる可能性があり,降圧 治療に際して考慮すべき要素の一つと考えられた. 一730一125