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生前Duchenne型筋ジストロフィーと診断されていた兄の剖検骨格筋と,先天性筋ジストロフィーである妹の生検骨格筋におけるジストロフィンの免疫組織化学的検討

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(1)

〔書女医椋、多63巻平造讐蒲〕

生前Duchenne型筋ジストロフィーと診断されていた兄の剖検

骨格筋と,先天性筋ジストロフィーである妹の生検骨格筋に

おけるジストロフィソの免疫組織化学的検討

 東京女子医科大学 小児科学教室(主任:福山幸夫教授)

コンドウ  エ リ  サイトウカ ヨ コ  イケヤ キ ヨ コ  オオサワマ キ コ

近藤 恵里・斎藤加代子・池谷紀代子・大澤真木子

橿・簗シ.鰭欝・蘇瞬・種笛華美’

(受付平成5年6月22日)

Immunocytochemical Analysis of Dystrophin of Musc韮e Specimens in a Brother with

        Intra Vitam Diagnos量s of Duchenne Muscular Dystrophy and

      in His Sister with Collg¢nital Muscular Dystroplly

Eri KONDO, Kayoko SAITO, Kiyoko IKEYA, Makiko OSAWA, Satoshi KOMINE,

      Keiko SHISHIKURA, Haruko SUZUKI and Y腿kio FUKUYAMA

       Department of Pediatrics, Tokyo Women’s Medical College   We carried out immunocytochemical analyses of dystrophin in a boy diagnosed as Duchenne muscular dystrophy(DMD)during life and in his younger sister with congenital muscular dystrophy (CMD). The clinical courses of these patients afe discussed, with emphasis on the results of the brother.   11nmunocytochemical staining was performed using four dystrophin staining panels. In the brother, dystrophin was positive in muscle cell membranes, suggesting CMD rather than DMD. However, though dystrophin staining was positive with N−terminal antibodies, many membranes showed weak or absent staining with rod domain and C・terminal antibodies. Western blotting revealed two bands with molecular weights of about 400 Kd and 380 Kd with the N−terminal antibody, but only one band, at about 400 Kd, with the C・terminal domain. There were no deletions in his dystrophin DNA. In the sister, membrane dystrophin stained pos童tlve with the four antibodies. We also analyzed spectrin in the brother. About 60%of cells showed abnormal staining. We therefore have three poss藍bil量ties which may account for this abnormal dystrophin staining with C−terminal antibodies.   1.Fragility of the muscle cell membrane.   2.Abnormality of the dystrophin associated protein complex.   3. Alteでed expression of dystroph三n.   We plan to examlne both siblings in order to determine whether these cases. have a common etiology, and to observe the clinical course.of the younger sister・        緒  言

 先天性筋ジストロフィー(CMD)の骨格筋にお

ける抗ジストロフィン抗体を用いた免疫組織化学

的検討では,細胞膜には正常のジストロフィ

ン1>∼3)が存在するにも拘らず,組織内に混在する

壊死線維,再生線維のジストロフィン染色性の低

下や欠如が見られることが知られている4)5).我々

は,生前にDuchenne三筋ジストロフィー(DMD)

の臨床経過を示した1男児例の剖検筋に関して,

免疫組織化学的検討を行った.ジストロフィンは

(2)

細胞膜に存在しており,DMDではなかったこと

が判明した6)∼11).しかし,ジストロフィンのC末

端を認識する抗体で,多数の陰性細胞を認めた.

そこで,このDMD様臨床像を呈した進行性筋ジ

ストロフィー例の病因を考察した.更に,Hoppy

infantであり, CMDの臨床像を示している妹の

生検筋についても,同様な検討を行ったので報告

する.

        対象および方法

 1.症例

 図1に家系図を示した.両親に近親婚はない.

症例1は14歳で死亡した男児.第1子がDMDと

診断されていたため,出生前診断を目的に他院産

婦人科にて施行された羊水診断後の自然流産児1

(77> □:男,

   十

    14y   SA   gy   4y    匡亟コ  h・瓠・hy配・lthy    (1000−8000)         (76)    (66)

       図1 家系図

○:女,SA:spontaneous abortion

ly8m

(6000) ()=CK mUlm量

case1

case2

:翫趣  悪隠

}   F 1

、欝

      図2 全身像

上:症例1.つかまり立ち可能9ヵ月,独歩開始2歳1ヵ月.腰椎前轡あり.歩行は

膝を曲げずに,歩幅を広くとり,足内反傾向を示す.顔筋罹患,著明な仮性肥大を認 める.下:症例2.生下時より且oppy infant.定頸3ヵ月,1歳過ぎより坐位をとら せれば保持するが,寝返り等は未だ不可能.

(3)

人,健康な妹2人を間にして,且oppy infantを呈

した三女を症例2とする.

 (1)症例1(図2上)

 新生児期より高creatine kinase(CK)血症

(1,000∼8,000mU/ml).乳児期より運動発達遅滞

を認め,定頸4ヵ月,坐位保持7ヵ月,寝返り1

歳頃,独歩開始2歳1ヵ月であった.最高到達運

動機能は5歳頃,階段昇降可能.筋力低下,関節

拘縮が徐々に進行し,7歳1ヵ月,独歩不能.顔

筋罹患,著明な仮性肥大を認めた.知能障害があ

り,13歳時では一桁のたし算が可能で,知的レベ

ルは5,,6歳程度と推測された.14歳時,急性胃

腸炎罹患後,急激に呼吸困難,心不全症状を来し,

呼吸停止より2時間後,蘇生に反応せず永眠した.

剖検上,大脳と小脳に小多脳回を認めた.

 (2)症例2(図2下)

 現在1歳8ヵ月.生下時より,Hoppy infantで

あり,定頸は3ヵ月で可能となったが,8ヵ月に

なっても坐位保持不可能で,血清CK値6,000

mU/mlであった.1歳過ぎより,かろうじて坐位

保持可能となるが,寝返りは不可能.

 DMD, CMDの運動機能障害進展過程のシェー

マ12)に,これらの2症例を重ねてみると,症例1で

はDMDに近い経過をたどり,症例2ではCMD

の経過であるといえる(図3).

 2.方法

 症例1では死後3.5時間の剖検骨格筋(肋間筋),

症例2では1歳7ヵ月時の生検筋(大腿筋)より

新鮮凍結切片を作製し,ジストロフィン分子の異

なる部位を認識する4種類の抗体を用いて,

Avitin−Biotin Complex法(ABC法)による免疫

組織化学染色を施行した.両症例とも,検体採取

後は速やかに処理,凍結を行い,一80℃にての保存

状態は良好であった.この検討に用いた3種類の

ポリクローナル抗体および1種類のモノクローナ

ル抗体の認識部位とジストロフィン分子モデルを

図4に示した.POO(認識部位アミノ酸番号

11∼60),P23(2360∼2409), P34(3495∼3544)

の3種類の抗ジストロフィンポリクローナル抗体

は,いずれもジストロフィンcDNAの塩基配列13)

に基づいて人工的に合成されたポリペプチドをウ

サギに免疫し作製されたものである(国立精神・

神経センター:小沢瑛二郎博士より分与)。また,

1種の抗ジストロフィンモノクローナル抗体,2−5

運 動 蜷 嗜 窟 8 7 6 5 4 3 2 1 0 片足跳ね ジャンプ うまく 走る

  1

  ! \

 正常

   ’       、   !         、

       、、

 , !_一、、・D・・henne型

   ノ         へ      

 ’/     、・ \〆

  ノ       、  ’      、  ’      、    、、

1! r噛\、 \、

\∼.

〃   ノ ト∼、  \、

4/CMD\ \\[亟コ

       

  匝]   ’一\、 ’一冒…良好例

       、、

       ㌔。一一●一一一一一一一一平均 一一一一一一一一一一一一一一一一一

d症例

06123456789101112131415歳

か月

      年 齢

      図3 運動機能障害の進展過程

(新小児医学大系,進行性筋ジストロフィー・大沢らより引用,一部改変)

症例1はDuchenne型筋ジストロフィー(DMD)に近い経過をたどり,症例2は先天

性筋ジストロフィー(CMD)の経過であるといえる.

(4)

両・曼一5E2一

矯瞬撫押毒

IMMUNOCYTOCHEMICAL ANALYSIS OF DYSTROPHIN

       P2気

      『34

   ∵語園毒

   ご〆職.巌

   岬ノ !∴沸麟

   照

  “

  警ぎ施       適mjnlerCOSτales

 .購  艶     ∵艦削ぐ則1

      ・ 細柳…痴㌔爽

纏幾 戴・響:1δ亭

      図4 ジストロフィソの免疫組織化学染色像(×100) ジストロフィン分子モデルと4種類の抗ジストロフィン抗体の認識部位を示した. 上:症例1,14歳時,剖検骨格筋(肋間筋).N末端側を認識する抗体ではジストロフィ ソ陽性細胞が多いのに対し,ロッドドメインからC末端側の抗体ではジストロフィン 染色性の低下した細胞や陰性細胞が多くみられる.中:症例2.1歳7ヵ月時,生検 骨格筋(大腿四頭筋).ジストロフィンは抗体による染色性の差はなく,陽性であった. 下:FCMD,17歳剖検例(肋間筋).

E2(440∼489)は,富士レビ欝欝製を用いた14}.

Horiらの方法に基づいて筋抽出液を作製し, P34

を用いたイムノブロット法10)15}によるジストロ

フィソ分析を行った.また,multiplex PCR法16)17)

によるジストロフィン遺伝子の分析も行った.更

に,スペクトリン18)∼20)に対しても,FITC標識抗

ヤギ血清(TAGO社製)を二次抗体に用いた間接

蛍光抗体法による免疫組織化学染色を施行した

(東京女子医大生化学教室:高桑雄一教授より抗

体を分与).

 ジストロフィン染色のコントロールとして,17

歳で死亡した福山型先天性筋ジストロフィー(以

下FCMD)例の剖検筋(死後剖検まで5.5時間)を

用い,スペクトリン染色ではさらに,ジストロフィ

ソに異常のない他疾患の剖検筋(死後2時間)と

DMD例の生検筋をコントロールとして加え,比

較検討を行った.

 一方,これらのジストロフィンとスペクトリン

の染色性に定量的検討を加えるため,染色パター

ンを6型に分類し,抗体別に約400個の筋細胞につ

いて比較した.

         結  果

 1.2症例の骨格筋の一般病理像(図5)

 Gomori−trichrome染色で,両症例ともに筋ジ

ストロフィーの所見であるが,症例2の方が進行

が早く,症例1の8ヵ月時と比較すると,症例2

(5)

case1

c裂se2

        図5 Gomori・Trichrome染色(×100)

左:症例1.筋線維大小不同,壊死・再生線維群,中心核増加,結合織・脂肪増加を 認める.右:症例2.著しい筋線維の小円形化,結合織・脂肪浸潤を認める.症例1 に比べ,筋ジストロフィー所見のの進行がはやい.

の1歳8ヵ月では,すでにadvanced stageの像

であった.

 2.2症例のジストロフィン免疫組織化学染色

(図4)

 症例1丁目ストロフィン陽性と判断し,DMD

は否定された.しかし,N末端側を認識する抗体

ではジストロフィン陽性細胞が多いのに対し,

ロッドドメインからC末端の抗体では,ジストロ

フィン染色性の低下した細胞や,陰性の細胞が多

く見られれた(図4上).症例2では,抗体による

染色性の差はなく,細胞膜のジストロフィンは陽

性であった(図4中).また,FCMD例の剖検筋で

は,抗体による染色性の差は認めなかった(図4

下).

 3.症例1に対するジストロフィンイムノブ

ロット(図6)およびmultiplex PCR法でのジス

トロフィン遺伝子解析

 症例1におけるイムノブロットでは,ジストロ

フィンN末端側を認識する抗体2−5E2で,正常の

ジストロフィン分子量約400Kdと,分子量約380

Kdの2本のバンドを認めた(図6左).分子量約

380Kdの方が太いバンドであった.ジストロフィ

ンC末端側を認識する抗体P34では,分子量約

dysレ

C F 1

’ .. ,,.℃‘

2−5E

C F 1

願轡騨一

器:し遷}

讐轡繍

   P34

図6 Westem blottingによるジストロフィソ解析  C:control, F:福山型筋ジストロフィー(FCMD),

 1:症例1

 症例1は,control, FCMDに対し,2倍量の試料を  泳動した.2−5E2では,分子量約400Kdと約380Kdの  2本のバンドを検出(矢印左).P34Cでは,分子量  約400Kdのバンドのみを検出(矢印右).

400Kdのバンド1本のみを認めた(図6右). mul−

tiplex PCR法16)17)では,ジストロフィン遺伝子の

二丁は認めなかった.

(6)

 4.症例1およびコントロールに対する抗スペ

クトリン抗体を用いた免疫組織化学染色

 症例1における筋細胞膜の障害をみるマーカー

として,スペクトリソを用いて検討した.そして,

死後変化によるアーティファクトか否か判断する

ため,死後剖検までの時間との関係もみた.

 症例1において,スペクトリン染色性の低下し

た細胞の混在が,症例2やFCMDの剖検筋に比

べ,多数認められた.また,DMDの生検筋では,

スペクトリンの異常染色パターンを示す細胞はご

くわずかであった(図7).

 5.症例1のジストロフィン,スペクトリンの染

色性の定量的検討(図8)

 症例1においいて,抗体別に染色パターンを比

較した.スペクトリソでは,正常の染色性を示す

細胞が38%,反応が極度に低下した細胞が35%で

あり,この2種類が大部分を占めた.異常染色パ

ターンを示した細胞の割合は,全体で約60%で

あった.また,全抗体間で,陰性細胞の割合を比

較すると,ジストロフィンC末端を認識する抗体

(P23, P34)では約50%,ジストロフィンN末端

やスペクトリンの抗体では約5%と,C末端の陰

性細胞が明らかに多く認められた.

         考  察

 変性,壊死,再生を繰り返すジストロフィー変

化により筋細胞膜に障害を受けた細胞では,免疫

組織化学染色において,ジストロフィン染色性,

およびスペクトリン染色性が共に低下,あるいは

消失するが,これは本質的には二次的,非特異的

所見とされている.Arikawaらは, FCMDでのジ

ストロフィン異常染色パターンの出現頻度は平均

28%,スペクトリン異常染色パターンの出現頻度

control

FCMD

2y/2hrs 症例1では, 17y/5.5hrs

c繍se1

  鍮 勢

購.難鋼

  m.intercostales 14y13.5hrs

case2

DMD

ly8m

   図7 スペクトリンの免疫組織化学染色像(x100)

スペクトリン染色性の低下した細胞の混在が多数認められる.

   2y8m

age/pos‘morIem time P{N1 2.5E2 P23 P34 、pedrin 図8 症例1におけるジストロフィン,  現頻度の比較 ■完全欠損 園反応か極度低下 □細胞質か淡染 圖一部が断裂 □正常の染色性 圏正常より強い染色性 % スペクトリン免疫組織化学染色パターンの出

(7)

dystrophin

      そむ

spectrln

25k 菅菅管DAPC   156k band 3 glycophorin i56k ら       3愁

  C

59k F・actin N dystrophin  35k43k  25k

 5k

C  ’59k

 N

Factin  ankyrin βSpeCtrin       aCtin 1翁齪斡 4,1 protein

       図9 ジストロフィン,スペクトリンの細胞摸結合模式図

*Ervasti(1991)ら22)より引用,一部改変.**高桑(1988)19)より引用,一部改変.***dystrophin associated protein complex ジストロフィン,スペクトリンはともに,細胞膜を裏打ちする細胞膜骨格蛋白である,それぞれ膜 に固定するanchoring proteinが存在し,ジストロフィンではジストロフィン結合蛋白複合体,ス ペクトリンではバンド3,アンキリン,グリコフォリン,4.1蛋白質等がその役目を果たしている.

は平均25%であったと報告している4).今回の症

例1は,ジストロフィンN末端側を認識する抗体

ではArikawaらの報告とほぼ同様な異常染色パ

ターンの出現頻度であったのに比較し,ジストロ

フィンC末端側を認識する抗体で,特に陰性細胞

の出現頻度は,.この報告の割合を明らかに上回る

結果であった.また,スペクトリソ異常染色パター

ンの割合が約60%と高率で,内訳は主に,スペク

トリソ反応の低下した細胞であった.従って,壊

死再生による筋細胞膜の二次的変化が強いケース

でもあるとみなした.

 以上より,症例1の特徴は,他のFCMDの報告

と比較し,筋細胞膜の障害がより強いことと,ジ

ストロフィンC末端のみ陰性細胞が多かったこ

とであるといえる.

 これら症例1の結果が,死後変化によるアー

ティファクトか否かを判断するため,死後剖検ま

での時間との関係を検討したが,FCMDの剖検筋

では死後時間が長いにもかかわらず,ジストロ

フィン,スペクトリソとも症例1のような結果は

認めなかった.

 さらに,死亡に至るたでの経過も考慮した.死

亡に至るまで長時間の人工呼吸器管理を行い,死

後剖検までは数時間の他疾患における剖検筋で

は,ジストロフィン,スペクトリン染色ともに異

常がなかった.しかし,数年間の人工呼吸器管理

に死亡し,かつ,死後剖検まで9時間と経過の長

い例では,ジストロフィンC末端側で陰性細胞の

出現率が高く,また,スペクトリン染色の一部断

裂している細胞が多かった21).症例1は急激な心

不全症状により約2時間で死亡に至っており,死

亡直前の経過は短く,更に,死後短時間で剖検が

行われた.それにも拘らず,ジストロフィンC末

端側の変化は強く,スペクトリン異常染色パター

ンを示した細胞は約60%を占めた.したがって,

症例1の所見は,死亡に至るまでの低酸素状態,

あるいは,死後変化によるものではなく,本症例

の病因,病態の結果であろうと考えた.

 細胞膜の基本構造をシェーマで示した(図

9)19)20}22).ジストロフィンとスペクトリンはとも

に,細胞膜を裏打ちして細胞形態を保持する役割

をもつ細胞膜骨格蛋白である.ジストロフィンの

ロッドドメインにおけるアミノ酸の繰り返し配列

は,スペクトリンのアミノ酸の繰り返し配列と類

似している23)∼25).そしてこれらはanchoring pro−

tein(ジストロフィンではジストロフィン結合蛋

白複合体,スペクトリンではアンキリン,4.1蛋白

質,バンド3,グリコフォリンなど)によって細

胞膜に固定されている.更に,ジストロフィンの

細胞膜への結合部は,システインリッチドメイン

からC末端ドメイン前半部であることが,最近判

明した26)∼30).このことより症例1においての,ス

(8)

ペクトリン,ジストロフィンN末端の陰性細胞の

割合を明らかに上回るジストロフィンC末端で

の陰性細胞の存在は,筋細胞膜自体の障害とは別

に,ジストロフィンやジストロフィンと筋細胞膜

との結合に関する異常の可能性も示唆されると考

えた.

 ジストロフィンを膜に固定するanchoring pro−

tein,すなわちジストロフィン結合蛋白複合体

(dystrophin associated protein complex)は6

種類の蛋白質からなり,うち4種(156Kd,50Kd,

43Kd,35Kd)が七言を有することから, dystro−

phin associated glycoprotein(DAG),残り2種

(59Kd,25Kd)はdystrophin associated protein

と呼ばれている.このDAGの欠損や発現異常の

免疫組織化学的な研究が注目されている.臨床症

状はDMDに類似し,常染色体性劣性遺伝の遺伝

型式を呈するsevere childhood autosomal reces−

sive muscular dystrophy31)32)では,50Kd−DAGが

欠損しており,FCMDでも特に43Kd−DAGの反

応が認められないことがMatsumuraらによって

報告されている33>∼35).本症例におけるDAGの異

常の有無は大変興味深く,今後の課題としたい.

 一方,症例1のイムノブロヅトの結果からは,

ジストロフィン蛋白の発現異常も示唆されると思

われた.ジストロフィンN末端側を認識する抗体

では,正常分子量の他に,分子量が低下したバン

ドが認められるのに対し,ジストロフィソC末端

側を認識する抗体では正常分子量のバンドのみで

あることより,正常のジストロフィンと,C末端側

は認識されないような異常をもつ,サイズの小さ

い異常ジストロフィンの2種類が存在することが

想像し得る.

 本症例1が,ジストロフィンC末端の染色パ

ターンの異常を来した原因についての可能性を以

下の3つにまとめる.第1に,筋細胞膜自体の脆

弱性.第2に,ジストロフィンを筋細胞膜に固定

するanchoring proteinの生合成異常.第3に,ジ

ストロフィン蛋白発現異常である.第2または第

3の可能性の結果として,第1にあげた筋細胞膜

の脆弱性を来したことも考えられる.また,症例

1は,ジストロフィンは欠損していないにもかか

わらず,以上に述べたような可能性によって,蛋

白質本来の機能が発揮できず,DMD様臨床像を

呈したとも考えられる.ジストロフィンと筋細胞

表 家族内発症例でありながら症例間の臨床症状が異なる家系例の報告 報告者 両親の近親婚 症例 診断名

MR

仮性肥大

CK

最:高運動機能 関節拘縮開始部位 塚越ら  ’73 兄 22y ?@4y+

CMD

bMD

升廿 ±? ↑? つかまり立ち i6y6m∼7y) H ?? 桑島ら  ’74 姉 14y

?@5y6m

不明のPMD

@CMD

什十 ?+?  ↑ ェ∼↑↑ 支持歩行 i5y∼11y)いざり 膝? 西川ら  ’74

@ 症例2

一 兄 8y

增@4y

 CMD

cuchenne ?廿 ?十 ↑↑↑ ?歩 行 i2y6凱∼)  ? 熹ス尖足 西川ら  ’74

@ 症例3

一 姉 4y8m

增@3ylm

肢帯型

bMD

十? 十? ? 歩 行 i3y3m∼) H ?? 板垣ら  ’80 兄 14y5m

增@3ylm

 CMD

cuchenne 十什 ?十 ↑↑ ェ↑↑ 坐位(12m)

焉@行

i1y10m∼8m)  ? 熹ス尖足 陸ら   ’82 姉 17y

增@10y

ARCMD

@CMD . 十十 十十 ↑↑↑ 歩 行

X灘虚も

メ・膝・足内反尖足 陸ら   ’82 またいとこ

@結婚

父 51y長兄

沍Z

肢帯型

eCMD

]性麻痺

eCMD

苓ウ十 写φ? 3φf↑ 走 行9ウつたい歩き(5y) 写φウ 大沢ら(1985)38)より引用.

(9)

膜との結合に関する問題が,その臨床症状とのつ

ながりにおいて重要視.される1症例と思われた.

 症例1は,剖検にて脳の奇形性病変を認め,剖

検骨格筋のジストロフィン免疫組織化学染色が陽

性であったことより,最終的に,X連鎖性遺伝を

とるDuchenhe型ではなく,常染色体性劣性遺伝

であり,先天性筋ジストロフィーのIII/IV型36)37)

であった可能性を推測している.一方,症例2は

現在のところ,臨床およびジストロフィンの免疫

組織化学的検討結果より,先天性筋ジストロ

フィー1型(FCMD)36)37)と判断しているが,今後

の経過をみながら,症例1と症例2の病因が共通

であるか否かを.含めた検討を進めていきたい.

 最:後に,家族内発症でありながら,症例間の臨

床症状が異なる家系例の報告を,大沢ら(1985)

のまとめより引用し,表に示した38)(表).本兄妹

例は,臨床経過からは,西川ら(1974)の症例2

.に最も類似すると思われるが,骨格筋のジストロ

フィン免疫組織化学的検討を含めた同胞例の報告

は,これまでに1例もない.今後の報告の集積に

より,さらなる遺伝メカニズムの解明が期待され

る.

      結  語

 1.DMDと臨床診断されていた男児例の剖検

筋につい.て,細胞膜骨格.蛋.白の免疫組織学的検討

を行った.ジストロフィンは陽性と判明したが,

ジストロフィンC末端に,陰性細胞が多数認めら

れた.

 2.原因として,筋細胞膜の脆弱性,筋細胞膜に

布けるanchoring proteinの障害,又は細胞骨格

蛋白の発現異常の可能性を考えた.

 3.CMDである妹の生検骨格筋における同様

な検討でに,抗ジストロフィン抗体の認識部位に

よる染色性の差は認めず,陽性であった..

      文  献

 1)Monaco AP, Neve RL, Colletti・Feener C et   al: Isolation of candidate cDNAs for portions   of the Duchenne muscular dystrophy gene.   Nature 323:646−650,1986  2)Koe魏ig M, Hojfman EP, Bertelson CJ et al:   Complete cloning of the Duchenne muscular

  dystrophy (pMD)cDNA and preliminary

  genomic organization of the DMD gene ln   normal and affected individuals. Ce11 50:   509−517, 1987

3)Hojfman EP, Bmwn RH, Kunkel LM:

  Dystrophin:The protein product of the Du・   chenne muscular dystrophy locus. Cell 51:   919−928, 1987 4)ArikaWa E, Ishikara T, Nonaka 1. et al:   Immunocytochemical analy6is of dystrophin in   congenital muscular dystrophy, J Neuroi Sci   105:79−87, 1991 5)板垣泰子,斎田恭子,西谷 裕:各種神経筋:疾患   におけるジストロフィン,デスミソの染色性一福   山型先天聖明ジスト・フィーを中心に一.神経内

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  薮内川治ほか編)pp243−302,中山書店,東京

  (1986) 13)Koenig M, Ho∬man EP粟Berte艮son CJ et a1:   Complete cloning of the Duchenne muscular

(10)

   dystrophy (DMD)cDNA and preliminaly

   genom量。 organization of the DMD gene in    normal and affected individuals. Cell 50:    509−517, 1987 14)池谷紀代子,斎藤加代子,山内あけみほか:小児    神経筋疾患におけるジストロフィソテストの臨床    的有用性.脳と発達 25:328−333,1993 15)Hori S, Sugiura H, Sbimizu T et al:Detec・    tlon of dystrophin on two dimentiona王gel    electrophoresis. Biochem Biophys Res Cmmun    161 :726−731, 1989 16)Chamberlain JS, Gibbs RA, Ranier JE et al:    Deletion screening of.Duchenne muscular dys−    trophy locus via multiplex DNA ampli且cation.    Nucleic Acids Res 16:111141−111156,1988 17)Beggs AH, Koe鷺ig M, Boyce FM et al:    Detection of 98%of DMD/BMD gene deletions    by polymerase chain reaction. Hum Genet 86:    45−48, 1990 18)Sbimizu T, Takakuwa Y, Koizumi H et a1:    Immunohistochemical analysis of human skin    using antispectrin and anti一β一fodrin antibodies.    Arch Demlatol Res 282:274−277,1990 19)高桑雄一:赤血球膜骨格の構造と機能.化学と生    物26:287−294,1988 20)八幡義人,神崎野郎:細胞骨格とその分子形態.    rAnnual Review血液1992」(高久史麿,青木延雄i,    仁保喜之ほか編),pp19−47,中外医学社,東京    (1992) 21)池谷紀代子,斎藤加代子,近藤恵里ほか:剖検例    の筋組織におけるジストロフィンの免疫組織化学    的研究.東女医大誌 63(臨増):43−53,1993 22)Ervasti JM, Campbell KP:Membrane orga・    nization of the dystrophin−glycoprotein com−    plex. Cell 66:1121−1131, 1991 23)Hammonds RG Jr:Protein sequence of DMD    gene is related to actln・binding domain of    α.actinin. Cell 51:1, 1987 24)Koenig M, Mo皿aco AP, Kunkel LM:The    complete sequence of dystrophin predicts a    rod・shaped cytoskeletal protein. Cell 53:    219−228, 1988 25)Cross RA, Stewart M, Kendrick・Jones J:    Structural predictions for the central domain    of dystrophin. FEBS Lett 262:87−92,1990 26)HoEman.EP, Kunkel工M:Dystrophin abnor−    malities in Duchenne/Becker muscular dystro一    phy. Neuron 2:1019−1029,1989

27)Ca胤pbell KP, Kahl SD=Association of

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34)Matsumura K, Nonaka I, Campben KP:

   Abnormal expression of dystrophinassocねted    proteins in Fukuyama・type congenital muscu・    lar dystrophy. Lancet 341:521−522, 1993 35)Hi萱ton・Jones D, Sαuier MV:Dystrophin・    asSOciated protein Complex;CliniCal impliCa・    tions. Lancet 341:528−529, 1993 36)Fukuyama Y, Osawa M, Sロzuki H:Congeni.    tal progressive muscular dystrophy of the Fu・    kuyama type−Clinical, genetic and pathologi・    cal considerations. Brain Dev 3:1−29,1981 37)Osawa M, Yumi A, Ikenaka H et al:Fu−    kuyama type congenital progressive muscula「    dystrophy. Acta Paediatr Jpn 33:26レ269,1991 38)大澤真木子,福山幸夫:先天型筋ジストロフィー    症の疫学と遺伝.「筋ジストロフィー症の臨床」(祖    父.江逸郎,西谷 裕編)pp20−31,医歯薬出版,東    京(1985)

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