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入眠状態およびレム睡眠時眼球運動の自動計測

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(1)

入眠状態および レム睡眠時眼球運動の自動計測

広 重

佳 治 キ

キーワー ド

:急

速眼球運動

,緩

徐眼球運動

,入

眠状態

,レ

ム睡眠

,自

動計測

AutomatiC measurement of eye movementsin hypnagogic sttte and REM sleep

HIROSHIGE,Yoshiharu*

KeyWordsirapid eye movements,slow eye movemen偽

,hypnagottC State,REM sleep,

automatic lneasurement.

は し め :こ

睡眠 時 には

2種

類 の眼球 運動 が出現 す る。 その一 つ は跳 躍 性 の急速眼球 運動

(rapid eye

movements:配

Ms)で

ある。

REMsの

発見 (Aserinsky&Kleitman,1953)は 今 か ら半世紀前 に報告 され

,現

代の睡眠科学の基礎 を築 く一大発見 となった。

REMsは

入眠後約100分前後の間隔 をおい て出現す る周期性眼球運動であ り,その出現期には脳波 が段階1に類似 した低振幅速波の賦活パ タ ンを示す とともに

,抗

重力筋の消失,自律神経系の乱れが生 じる。さらに,この時期 に睡眠者 を呼 び起 こす と視覚心像 を伴 う奇異 な夢 を見ていたとい う内省報告 が得 られ る。こうした特徴か ら配

Ms

を伴 う睡眠状態 はそれ までに知 られていた睡眠 とは異質な状態 と考 えられ,レム睡眠 あるいは逆説 睡眠 と呼ばれ る。第

2の

眼球運動 は左右の眼球 が振 り子様 に緩 やかに揺れ る緩徐眼球運動(slov eye

movements:SEMs)で

ある。

SEMsの

出現は古 くか ら知 られてい るが

,最

近,この眼球運動 は入眠 状態 (hypnagogic state)の モデル化 に有用な生理指標であると考 えられてい る (広重,2001)。 つ まり

,SEMsは

覚醒 と睡眠の移行関係 と結びついた消長 を示 し

,SEMs出

現期 には眠気,過小評価の 傾向 を示す時間知覚 ,後 退 した思考内容 あるいは夢見様幻覚 さらには随意運動の崩壊 など覚醒時に 存在 した自我の連続性の減弱 を示唆す る一連の心理行動的変化が認め られ る。 眼球運動 は

,脳

波 お よび筋電位 とともに

,人

の意識水準 を他覚 的に とらえる睡眠 ポ リグ ラフ ィ

(polysomnOgraphy PSG)を 構成す る必須の記録要素である偲

echtSCharen&胞

les,1960。 睡眠時

の眼球運動 は角膜側 がプラスに,網膜側がマイナスに帯電 した角膜網膜電位の変化 を取 り出す眼電 図法 (electr00culography EOG)に よる記録が一般 的であ り,国際基準の

PSGに

おいては左右眼宿 外側縁部 と耳柔 (あるいは乳様突起部

)間

の電位 を導出す る基準電極法の

EOGが

推奨 されてい る。 基準電極法による

EOG記

録 は水平方向の眼球の動 きに対 して角膜網膜電位の極性が反転す ることを 利用 した もので ,信 号性眼球運動 を左右

EOG曲

線の位相逆転 として記録す る。これに対 して非信号 性の電極 由来の アーチ ファク トは同位相の振れ として記録 され るので ,信 号 との識別が視察で も比 *鳥取大学教育地域科学部 学校教育課程 人間教育講座

*Depattment ofHuman Educadon,Faculty ofEduca■

(2)

広重佳治 :入眠状態および レム睡眠時眼球運動の自動計測 較的容易である。また

,REMsと

SEMsの

判別は運動経過時間 (前者が ミリ秒単位,後者が秒単位) や波形パ タンの違いか ら視察印象で も可能であるが ,実 際の計測場面 においては信号判定の恣意性 あるいは計測 における人為的な誤差の介入 とい う問題 に しば しば直面す る。特 に

,SEMsに

おいて はその運動経過が非常に緩慢で あるため

EOG曲

線の変化点(山と谷)の 判読は容易でない。加 えて, 膨大な記録か ら個 々の信号 を判読 し計測す る労力 と精神的負荷の大 きさ,あるいは計測作業 に要す る時間の長 さなどは無視す ることので きない問題である。自動計測法の開発 はそ うした問題への現 時的な対処 とい う動機づ けか ら取 り組 まれ る面が強いテクニ カル な研究であるが ,同 時に眼球運動 の計測 を客観化 し標準化す るとい う方法論の発展 に寄与する点 も決 して少なくない。 眼球運動の 自動計測法の開発は電子技術の進歩 とともに改善 されつつ あるが,脳波の周波数分析 のように標準化 された計測法は未 だ確立 していない。則

Msと

SEMsの

両者 を同時 に計測対象 とす る自動計測法 と しては,シュ ミッ ト回路 を用いた運動周期検 出法 (菅野・稲永,1972),ス ムージン グ法 (島薗 ら

,1980),低

域微分デ ィジタル フ ィル タ法 (Varri et al.,1996)あ るいは島薗 らの計測 法 を改善 したテ ンプ レー トマ ッチ ング法 (篠・八名,1999)な どが これ までに報告 されている。国際 基準の

PSGへ

の適用 とい う点か ら考 えると

,左

2チ

ャネルの

EOG曲

線の位相 関係 を評価す る計 測法が望 まれ るが

,従

来,そ うした計測法 に関す る報告例 はきわめて少 ない。著者の知 る限 り,う

とうと状態 (drOwsiness)の モニ ターシステム (Vari et』.,1996)が 唯―の もので あろう。

Va

ら の システムは,有限 インパル ス応答 フィル タo weighttd HR‐ median‐hybrid ilteつ による眼球運動 の 信号波形

(SEMs,saccadesお

び瞬 目

)の

分離

,2チ

ャネルの

EOG曲

線の相関 と対称性の評価 およ び波形パ ラメータによる最終判定 とい う

3段

階の処理工程か ら構成 されている。

先 に

,移

動式直線回帰分析 (a mO ng linear regression analysis)1こ 基づ く眼球運動の 自動計測 法 (広重

,1999)に

ついて報告 した。それは

SEMsの

計測の 自動化 を主要 な目的 と して考案 された もので

,EOG曲

線の接線の傾 きを任意の時刻 において推定す ることで曲線の変化点 を検 出 し,信 号 波形の特徴抽出パ ラメー タを計測す るアル ゴ リズムで構成 されてい る。その後の共 同研究 (鈴木 ら ,2000)に おいてアーチフ ァク ト処理 などに改善 を加 え,テンプ レー トマ ッチ ング法(篠・八名,1999) との比較検討 を行い ,覚 醒か ら睡眠への移行過程 における眼球運動信号の認識が高速かつ高精度で 可能であることを再確認 した。 しか し

,REMsの

検 出精度の向上 あるいは体動等 に伴 うアーチ ファ ク ト処理 についてはなお改善の余地があると考 えられた。本研究 は,そうした残 された問題の解決 策 として先の移動式直線 回帰分析 に基づ く計測法 を発展 させ

,国

際基準の

PSGに

準拠 した左右2 チャネル

EOG曲

線 か ら眼球運動信号 (皿

Msと

SEMs)を

認識す る自計測法の開発 を試みた。今回 は

,入

眠状態のみな らず レム睡眠時に も本計測法 を適用 し

,眼

球運動信号の計測精度 を吟味 した。 方 法 被験者

:大

学生

3名

(男2名

,女

1名

,年

齢20∼ 22歳)。

記録 :脳 波

(EEG),限

球運動

(EOG),筋

電図

(EMG)を

同時記録す る終夜睡眠

PSGを

実施 し た。

EEGは

時定数0.3秒で後頭部

(01)と

中心部

(C3)よ

,EOGは

時定数

6秒

で左右眼害外側縁 部(Elと

E2)よ

りそれぞれ基準電極法 (乳様突起部 を基準電極部位 とす る導出

)で

記録 した。オ ト ガイ筋電位の

EMGは

時定数0.01秒で双極導出 した。入眠状態 (20分),レム睡眠 (レム睡眠開始か

ら強制覚醒 までの期間

),お

よび強制覚醒後の再入眠状態 (20分

)の

記録 を標本化周波数100Hz(Δ

(3)

鳥取大学教育地域科学部紀要 教育 。人文科学 第

4巻

1号

(2002) 107

手続 き :被験者一人あた り

3夜

(計

9夜 )の PSGを

実施 し

,被

験者が レム睡眠 に達す ると強制覚 醒法 によ り被験者 を目覚 め させて夢見体験 を聴取 した。夢見の聴取は

,レ

ム睡眠 (配

Ms出

現 ある いは筋電消失)と判定 された時点 より筋電図上 に怖ichの出現 を認 めた後 に,強制 的 に被験者 を眠 り か ら起 こ して実施 した(強制覚醒法)。 覚醒直前

Q夢

見体験 の有無 と夢内容 についての報告 (所定の 質問項 目への回答 と自由会話

)を

求めた。夢見聴取終 了後

,被

験者 に再入眠 を許可 し

,PSGを

再開 した。本報告では眼球運動 と夢見 との関連性の分析 は省略す る。 資料整理:本報告は

9夜

の終夜睡眠記録か ら

1夜

(被験者

MAの

2夜

)を

選び出 し,自然入眠

1例 ,再

入眠

3例

および強制覚醒 までの レム睡眠

6例

の資料 を分析 した。

(1)AD変

換 によって得 ら れた

2チ

ャネルの

EOG時

系列 を10秒毎の区画 (500点 ,△ t=20ms)イ こ分 け

,各

区画 に本研究の 自 動計測法 を適用 した。検出 された

SEMsと

REMsの

波形の特徴抽出パ ラメータの計測値 ,出 現時刻, 出現区画および検出個数 を集計 し,入 眠状態 とレム睡眠 との間で眼球運動の出現様式の異同を比較 検討 した。 処理過 程 本計測法は同一のデータ時点 において則

Msと

SEMsの

計測 を平行 して行 うアル ゴ リズムを用い た。その主要 な処理過程 は,Fig,1の ブロックダイアグ ラムに示すよ うに

,EOG曲

線の頂点 (変化 点)の検 出 ,位 相逆転の判定 ,偏 位度の判定,アーチファク ト処理,および波形の特徴抽 出パ ラメー タの判定 よ り構成 された。以下に

,各

処理の特徴 を概要す る。

EOG曲

線の頂点の検 出

:2つ

EOG電

位時系列 を対応す る時刻で減算 して差分時系列 (双極導出 の

EOG時

系列 に相当

)を

求め,その差分時系列 に移動式直線回帰分析 (広重

,1999)を

適用 して回 帰直線の傾 きか ら頂点 (変化点

)を

推定 した。つ まり

,標

本化時間 (△

t-20ms)の

単位で時間長

k

の窓 を移動 させ なが ら,窓内に落 ちる差分時系列 lytl(呵,ittk‐

1)に

適合す る回帰直線gjを接線 の 近似 として最小 自乗法によ り推定 した。 この回帰直線 の傾 きの逆正接の絶対値

,つ

ま り速度指数 l θ

jlを

EOG曲

線の変化点jを検 出す る指標 と して用 いた。速度指数 は式(1)で与 えた。ここで,

σyzは

EOG電

位 yと 直交 多項式の

1次

係数 zを 独立変数 とす る回帰直線 との共分散,σ 2zは

1次

係数zの 分散で ある。窓の時間長 (k)は

SEMsに

つ いて は

400ms(k=20),配Msに

つ いては

100ms

(k〓

5)を

採用 した。 l θ

jl=arcttn(σ

yZ/σ 22)j … ……… ―…… … (1)

SEMsの

頂点 と立 ち上 が り点の検 出基準 はともにlθ l〓20deg/△tに改 めた。頂点の検 出処理 はlθ lが20deg/△ t以下 となるデー タ点 よ り開始 し,隣 り合 うl θjlと l θⅢ

llを

逐次比較 し て lθ

}11>l

θjlと なる時点iを真の項点 と判定 した。頂点問間隔の処理 は先 の計測法 と同様 に

,600msよ

り短 い間隔で現れ る後続 の頂点 を棄却 した。

REMsに

つ いて は

,短

時間の速い変化 に追従 で きるよ うに修正 を加 え, lθ

l>80deg/△

tと なる時点iを立 ち上 が り点, lθ

l≦

80deg/Δ tとなる時点

,1(>i)を

停留点 とした。 脚注 (1)2000年度教育学部卒業研究「 レム睡眠 と夢見に関する心理学的研究」(寺坂麻紀)に おいて得 られた資料の 一部を分析 した。

(4)

108 広重佳治:入眠状態およびレム睡眠時眼球運動の自動計測 peak Of E0

( lθ

l

/ phase re

「く。o deflec A1/メ anifa ″″′ reatureぃe) 製 ml end ofc i>S( G curve yes

versal ,6

/

yes

Hon i2

/

yes‐

/

no

"

yes > yes 曲

的式 区

百τ

_ … 市me cumulative REMs gFOSS eye mOvement

銀 大 Y 茸〓 O O O W T PT PA:peak amplitude PT:peak time RAirising angle(=arctan(PV肝 )) j封+1 "indow

(5)

鳥取大学教育地域科学部紀要 教育・人文科学 第

4巻

1号

(2002)

位相逆転の判定:眼球運動の信号波形 は左右

2チ

ャネルの

EOG曲

線の位相逆転 として現れ る。両眼 球がほぼ同期 して水平方向に回転す る共役性眼球運動 (coniugatt eye movement)を 示す と,これ にほぼ比例 して左右眼省外側部電極 の角膜網膜電位が反転す るため,基準電極法によ り導 出 した左 右の

EOG曲

線 は逆位相の振れ を示す。これに対 して,基準電極 の不良,活性電極の不良 あるいは装 置に原因があるアーチファク トによる非信号性の波形 は

EOG曲

線の同位相の振れか片一方のチ ャネ ルのみの片振れ として現れ る。

EOG曲

線の片振れ を片眼性眼球運動の信号 とす る考 えもあるが,そ の出現率 はレム睡眠で

4%程

度 と低 く(福田,1981他

),活

性電極部位 に由来す るアーチ ファク トの 可能性 も否定で きない。本研究 はこうした眼球運動の信号波形 と非信号波形 を識別す るために

,左

2チ

ャネルの

EOG曲

線の位相情報 をピアソンの積率相関係数

(r)を

用いて定量的に評価 した。 相関係数計算のためのデータ長 は固定長ではな く,眼球運動の立 ち上が り点 か ら項点

(SEMs)あ

る いは停留点

(REMs)ま

での期間 と した。位相逆転 は相関係数

rが

負の値 をとるが

,r<‐

0.60を信 号波形の判定基準 とした。この判定基準 は

,SEMsと REMsの

検 出率が

rが

o.6以下 に落 ちると顕 著に減少す るとい う検 出度数分布

(rを

‐0.1のキザ ミで変化 させて入眠状態 とレム睡眠の資料 よ り 作成 した分布

)の

特徴 に基づいて経験的に定めた。

偏位度の判定:相関係数

rは

EOG曲

線の位相関係 (逆位相 と同位相

)の

情報 を提供す るが

,全

分散 による標準化処理 が施 されているため曲線の振れの大 きさを評価す ることがで きない。そ こで

,左

右の

EOG曲

線の偏位度 を項点振幅 (図のAlと

A2)を

用いて

2段

階に分 けて判定 した。第

1段

階の

判定 は各チ ャネルの

EOG曲

線 が示す偏位が

PAの

基準値

(SEMs:立

ち上 が り点 と頂点間の電位,

REMs:立

ち上 が り点 と停留点間の電位

)の

450/O以下 となる場合,非信号性の偏位 として破棄 した。

この第

1段

階 を通過す ると,次に

2チ

ャネル間の頂点振幅比 によって偏位度の等質性 を判定 した。そ

の頂点振幅比 が一定値cを下回る (c≦ 0.2)あ るいは越 える (c≧

5)と

き等質性の低 い偏位 として 破棄 した。

アーチファク ト処理

iSEMsの

誤検 出を導 く可能性が高い もの として

,次

2種

類のアーチ ファク トを経験 的に定 めた。①

REMsの

累積による

EOG曲

線の偏位 :跳躍的な

REMsが

積み重 なるとき

EOG曲

線 は階段状 に変化 して

SEM様

の波形 を示す ことがある。この場合

,SEMの

頂点検 出処理 中 に出現 した

REMsの

頂点振幅

(PA)の

累積値 が

SEM様

波形の

PAの

5誂以上 を占めるとき

SEMの

信号処理 を破棄 した。②粗大眼球運動 による

EOG曲

線の偏位:粗大眼球運動 は開閉眼に伴 って生 じ やすい。その記録波形 は配

Msあ

るいは

SEMsに

類似 してい るが ,高電位で比較的運動経過 が長い。 判定基準 を

PA≧

500 μ

V,500ms≦

項点時間

PT≦

800msと して

REMsお

よび

SEMsか

ら区別 した。 粗大眼球運動 を含む形 で

SEMの

頂点が検出 され る場合 は

,SEMの

PAの

5開以上 を粗大眼球運動 が

占めるとき

SEMの

信号処理 を破棄 した。

特徴抽出パラメータの判定:眼球運動の信号処理の最終段階である。個 々の

SEMsお

よび

REMsの

項 点振幅

(PA),頂

点時間

(PTJお

よび立ち上が り角度

(RAlを

判定 した。

RAは

arctanm/FDよ

り求めた (広重,1999)。 パ ラメータの判定基準は

,SEMsに

ついては

PA≧

45 μ

V,Pr≧ 5CXlms,RA

≦20degと した。

REMsに

ついては

PA≧

40 μ

V,60ms≦

PT<500ms,RA≧

25degと した。以上の 基準 を満たす

SEMsと

Msの

出現時刻 を記録開始時点か ら検出時点までの経過時間として求めた。

先の 自動計測法 (広重 ,1999)は

1区

画毎 に処理 が完結す る区画分離型処理 を採用 したため,信号 性眼球運動 が

2つ

の区画にまたがって経過す る場合 にはその信号が見落 とされ るとい う弱点があっ

た。そうした見落としを回避するために,本計測法はデータを半区画ずつ移動する半区画重複移動

(6)

広重佳治 :入眠状態および レム睡眠時眼球運動の自動計測 を行った。この方式 によると先行区画で検出 された信号が半区画重複移動後に再検出 され ることが あるので

,検

出処理完 了後

,出

現時刻の一致 を手 が掛か りに重複信号 を除去 した。 結 果

EOG信

号処理例 本研究で考案 した自動計測法による眼球運動信号の処理例 をFig.2からFig.6に示す。各図は上段 か ら左右

2チ

ャネルの

EOG曲

,SEMsと

Msの

信号検 出マーク(信号の持続時間を矩形波で表 示)および速度指数 lθ lの時間変動曲線の順 に描 いた。速度指数の縦軸のスケールの表示 は

SEMs

と配

Msで

逆転 させ た。

SEMsの

立 ち上が り点 と頂点の基準値 (20deg/△ t),並びに配

Msの

検 出 開始点の基準値 (50deg/△ t)お よび立 ち上が り点 と停留点の基準値 (80deg/△ t)を それぞれ実線 の水平線 で描いた。また

,右

欄の上段 に

SEMs,下

段 に 配

Msの

特徴抽出パ ラメータの計測値 を頂 点振幅 (μ

V),頂

点時間

(ms),立

ち上が り角度

(deg)の

順 に示 した。

Fig.2aに ,入眠状態 において出現す る典型的な

SEMsの

原記録 と自動計測 を例示 した。左右の

EOG

曲線は位相が緩 やかに逆転 して正弦波様の律動的な変動 を示 した。これに自動計測法 を適用 した結 果

,5つ

の逆位相パ タンが

SEMsと

して検出 され た。それぞれのパ ラメータ計測値 (右端上段 の数 値

)は

原記録の視察か ら得 られ る

SEMsの

印象 を忠実に再現 した。Fig.2bは レム睡眠の開始時 に現 れた

SEMの

原記録 と自動計測の結果である。後述す るよ うに

,レ

ム睡眠期 に も入眠状態 と同様 の

SEMsの

出現例 を相 当数認めた。本例の

SEMは

頂点時間 (5.5秒

)が

非常 に長 く

,項

点振幅 (549μ

V)も

かな り大 きな波形 として計測 された。 Fig。3に

,レ

ム睡眠期 における典型的な 配

Ms群

発の原記録 と自動計測 を例示 した。左右 の

EOG

曲線は位相 が短時間で急速 に逆転す る矩形状 あるいは階段状の波形が連続 した。自動計測の結果,21 個の鋭角な位相逆転が皿

Msと

して順次検出 された。原記録の視察印象 をほぼ忠実 に再現す るパ ラ メータ計測値 (表示の都合上

,最

初の

4個

を除 く17個の

REMsの

計測値のみ を表示

)が

得 られた。

SEMsの

速度指数変動曲線上に付記 した黒丸 は

SEMsの

頂点検 出処理 をその時点で破棄 した ことを 示 してお り

,SEMsの

誤検出が回避 された。 配

Msと

SEMsは

それぞれが単独で出現す るほかに

,時

間的に相前後 して

,あ

るいは重畳 して出 現す るとい う複合的な出現様式 をみせ た。Fig,4aに

,入

眠状態 における配

Msと

SEMsの

複合的出 現 を例示 した。本例 の場合

,SEMsの

律動的な出現 中に

REMの

混入 を検 出 してお り,その

REMの

検出によって

SEMの

頂点検出処理 が破棄 された

(SEMs速

度指数変動曲線上の黒丸 にて表示)。 レ

ハ睡眠期 に も

REMsと SEMsの

複合 的出現が認め られ

,そ

れ は

wMsに

後続 して出現す る

SEMs

(Fig,4b)あ るいは

SEMに

重畳す る配

Ms(Fig,4c)と

して検 出 された。複合的出現様式 を示す場合

の 皿

Msは

群発時 にものに比べて立 ち上が り角度が低 くなる傾 向がみ られた。 非信号性眼球運動の処理 は本計測法 にとって重要 な処理 である。Fig.5は

,体

動 に伴 って

EOG曲

線 に同位相の偏位 が生 じた記録例である。こうした緩 やかな同位相の偏位 は1チャネルの

EOG記

録 においては

SEMと

して誤検出 され る可能性が高いが,本計測法ではピアソンの積率相関係数 によ り 非信号 として処理 された。Hg.6に,も う1つの非信号性眼球運動 である粗大眼球運動の検 出結果 を 例示 した

(EOG曲

線上の▽印で指示)。 本例 はレム睡眠時に検 出 された粗大眼球運動で

,そ

の頂点

時間は

REMsよ

り長 く

(PT=540ms),立

ち上 が り角度 は

REMsに

類似 して急峻で あった

(RA

(7)

鳥取大学教育地域科学部紀要 教育・人文科学 第

4巻

1号

(2002) SEH」 U ― U L」

│_

(window:400m6) EpOch 44(1) 100/ι U │ l lsec s 0 0 0 0 0 m 0 2 4 0 6 0 6 2 6 4 2 2 1 1 1 ∪ 1 3 7 0 5 μ 34 鉤 ︲1 釘 9 de9 9.7 6.6 5.4 9.6 3.7 岬 猛 E B     5 6     4 REM l θ l(window:100ms) 90!!■■ど =Ⅲ

TT翌

1………Ⅲ………■■■ど……… =■=… …… 1………

Fig,2a Detection of SEMs in hypnagogic state.From the topI EOGs:left and right eye movementsI SEM: detection mark oF SEMs,REM:detection mark of REMsI SEMI θ l:temporal change in velocity index of SEMsl and REMI θ li temporal change in velocity index of REMs,The velocity index l θ l, given as the arctangent to the siope of a regression line computed for each moving window,works

to detect the turning point of EOG curve.The detection mark drawn as a rectangie indicates the duration of EO(,signals.Measurements of reature_extracted parameters(peak amplitudei peak

tirne and rising angie) Were listed on the right cotumn in the order of detection of SEMs(upper)

and REMs 9ower).

Epoch 59(1) 」 Oμ ∪ l sec μ ∪ ms de9 SEM I L_____―――――――――――――――- 549 5500 5.7 SEM □ │(windo引 :400ms) l θ l(windOw!199m3) 印 9   5   0 R 9     4

(8)

広重佳治 :入眠状態およびレム睡眠時眼球運動の自動計測 」刊孔

_____「

日 同一

__」

L∫

■ l θ l(window:4日 Oms) θ l(windOw:100ms)

0

■ ■― Vl l EpOch 42(D) 」 Oμ U l sec μ∪

ms deg

624 260 67.4 591 220 69,6 274 140 63.日 44 8日 ρ9.1 277 180 57.B 472 200 67.0 145 12B 50。3 234 18日 57.7 331 160 64.2 298 182 53.9 232 130 57.4 311 200 57.⊇ 507 300 59。 4 54日 ρ00 69,7 553 240 66.5 133 16049,5 614 260 67.0

Fig.3 Detection of REMsin REM steep.

く似てい るが

,立

ち上が り角度 がやや緩 やかであった。こうした粗大眼球運動 は視察では

REMsと

して判定 され るか もしれないが

,波

形 の定量的計測 によると

REMsと SEMsの

中間的な特性 をもつ ことがわかる。

SEMsと

REMsの

特徴才由出パラメータ

Table lに

,本

計測法 によって検 出 され た

SEMs,REMsお

よび粗大眼球 運動

(grOss eye

movements)の

波形の特徴抽 出パ ラメータの平均

(PA:頂

点振幅

,Pr i頂

点時間

,RA:立

ち上 が

り角度

),EOG曲

線の位相逆転の程度 を示す相関係数 (r)の平均および検 出総数

(n)を

入眠状態 とレム睡眠 に分 けて示 した。

SEMsは

入眠状態 (n=712)において多数検出 されたが,レム睡眠 での 検 出数 (n=599)も 決 して少な くなかった。

sEMs波

形の特徴抽出パ ラメータは入眠状態 とレム睡眠 の間で比較す ると比較的 よ く似 た値 を示 しているが

,レ

ム睡眠 で は

PTの

延長傾 向 がみ られ た。

REMsの

検 出数 はレム睡眠 (n=1184)で圧倒的に多 く,入眠状態 (n=42)の 約28倍で あった。

REMs

波形の特徴抽出パ ラメータの うち

Frは

入眠状態 とレム睡眠で共に

180ms台

でほぼ一致す る値 を示 すが

,PAの

値 が レム睡眠期で大 きく

,し

たがって レム睡眠期の

REMsは

よ り急峻 な傾斜

(RA)を

示す傾 向があった。粗大眼球運動の検 出数 (n=13)は少 ないが

,REMsが

多発す る睡眠後半の レム

睡眠期に認められた。その波形は

PAが

500

μ

Vを

越えて

PTが

500msよ

り長い大型の運動であるが

,

REMsと

ほぼ同様に急峻な傾斜をみせた。相関係数

rは

いずれの眼球運動においても高い負の値をと

り,か つ分散 も小 さい ことか ら

,EOG曲

線の明瞭 な位相逆転 に基づいて信号性 お よび非信号性眼球 運動の計測が行われたことを示 してい る。

(9)

45 鳥取大学教育地域科学部紀要 教育・人文科学 第

4巻

1号

(2002)

■3 Epoch 36(1) 」 Oμ ∪ l sec μ

U ms deg

191 1160 6.4 219 1480 8.4 36 1000 4.9 423 2020 11.3 89 160 29.0 SEMI θ l(windO叫 :490ms) 0………Ⅲ 9B……▼………―‐…… …………三正三 ………

REM I θ l(HindO岬 :102ms)

Fig.4a Detection of combined appearance of SEMs and REMs in hypnagogic state.

SEHl θ l(windo岬:40日ms) Epoch 3(1) 」 Oμ ∪ l sec M M E E S R μu ms 143 1140 150 1500 9 4 7 e   ・   ・ d 7 5 □ 45

︲ 3

︲ 1

︲ 6

8 6

7 9

120 49.1 140 39.6 14C3 32.1 160 56.2 140 50.2 100 34.9 140 31.4 120 33.2 200 ?9.0 │(window:l②日ms)

(10)

114 広重佳治:入眠状態および レム睡眠時眼球運動の自動計測 SE14 1 θ l(window:400ms)

0 :

だ… 9日

…… …

▼ ト M E 0 R 9 l θ l(HindOw:loom3) EpOch 27(0) ピ OμU l sec μ

u ms deg

390 1580 13.9 110 169 34.5 143 240 30。 9 59 120 26.1 117 162 36.2

Fig.4c Detection of REMs superimposed on SEM in REM s10ep.

SEMsと

Msの

波 形 の類似性 が入眠状態 とレム睡眠 において どの程度維持 されてい るの か を調 べ るため に

,特

徴 抽 出パ ラメ ー タ間で ピア ゾンの積率相 関係 数 を算 出 した。 その結果 をTable 2に

まとめた。

SEMsの

波形は入眠状態 とレム睡眠にほぼ共通する特徴があった。

SEMsは PAが PTお

よび

RAと

正に相関 し

,振

幅が大 きいものは経過時間が長 く

,傾

斜が鋭 くなる関係があった。

RAと

PTは

負に相関したが

,RAの

計算式から予想されるさほど強いものではなかった。一方

,皿

Msは

入眠状態 とレム睡眠で検 出数が極端 に異 なっているものの ,い ずれの状態において も

PAが PTお

よ び

RAと

正 に相関 し,振 幅が増大す ると経過時間が長 く,傾斜 が一層鋭 くなる関係があった。以上の ように

,SEMsと REMsの

波形パ ラメー タ間の関係 (直線性

)は

睡眠状態の差違 に関わ らずほぽ維 持 されていることが判明 した。

SEMsと

REMsの

出現様式

Table 3に

,SEMsと

REMsの

検 出区画率 (括弧 内に実数

)を

入眠状態 とレム睡眠に分 けて表示 し た。入眠状態 は

SEMs優

位で あった。

SEMsの

検 出区画が全区画の半数以上 (56.9%)を 占め

,残

り の区画の大半 は眼球運動 を欠いた。

REMsの

検出区画は少 ないが,その多 くは

SEMsの

検 出区画 と 一致 した。レム睡眠 は眼球運動の検出区画率 (76.1%)が 入眠状態 に比較 して

2割

近 く増 え

,眼

球運 動優位の睡眠状態であった。

SEMsあ

るいは配

Msの

みが単独で検 出 され る区画(表中のSEMs only

REMs Only),両

者が同時に検 出 される区画

(SEMsand REMs)の

割合 は入眠状態 と異 な り

,ほ

ぼ均衡する傾向がみられた。しかし

,REMsの

検出区画率は予想に反して低い値であった。つまり

,

(11)

鳥取大学教育地域科学部紀要 教育・人文科学 第

4巻

1号

(2002)

■5 Epoch 25(1) lGO/と∪ │ l scc Iを∪ 「nS deC」 REM 45 9B …… REMI θ l(HindOw:100ms)

90 ,

■■■ 45 日

Fig.5 Artifact of a body motility,An in… phase deflection of two‐channei EOGs was produced by a body

movementi and it was reieCted as a nonsignal・

Epoch 50(1) 100/之U │ I sec μ(l ms dc9 工 到

lコ

ー SE 0   45   鋼 0   5   0 9   4 … 164 460 2BD 53.3 140 49.5 220 64.4 420 59.3 269 `= 706 REM I θ l(windO岬 :100ms) 33ω 200 53.9 256 220 49.3 420 200 64.5 966 20日 61.4 340 180 62.1 231 140 58.8 134 14C3 43.8 252 180 54.4 半 el107rb

Fig.6 A gross eye movement and REMs,A gross eye FnOVement vvith a peak amplitude of rnore than

500 μ V and a peaktime of morethan 500ms(馬 ″)iOOkS Similar to a large REM(V)i

(12)

広重佳治 :入眠状態および レム睡眠時眼球運動の自動計測

Table l Means offeature― extracted parameters of sIOw eyemovements,rapid eye movementsl and gross eye movements du ng the hypnag00ic state and REM steep

Hypnagogic state REM steep

SIow eye movements

PA(μ

V) PT (ms) RA(deg) r n 159.3 ( 88.03) 1570.7 (636,30) 5.9 ( 2.40) -0.86( 0.10) 712 156.6 ( 96.83) 1619.7 (740.60)

5.6( 2.37)

-0.87( 0.10) 599

Rapid eye movements

PA (μV) PT (ms) RA(deg) r n

121.6(69.16)

183.8(79.29)

32.7 ( 6.90) -0.39( 0.10) 42 193.6 185,0 42.2 -0.96 1184 141.16) 80.45) 11.24) 0.05)

Gross eye movements PA (μ V) PT (ms) RA(deg) r n 一   一   一   一   一 613.4 593.8 46.0 -0.97 13 71.21) 81,40) 5.07) 0.08)

PA:peak amplitude, PT:peak time! RA:rising angie(edge sIOpe)! r: Pearsoni s

product―moment correlation coefficienti n:the number of detected EOC signals. SDs are given in parentheses. The sign of a dash indicates no detectiom.

Table 2 Pearsonts product‐moment correiation coefFicients between feature―

extracted parameters of sIOw eye movements and rapid eye movements during the hypnagogic state and REM sieep

Hypnagogic state REM steep

SIow eye movements PAxPT PAxRA PTxRA n .643 .632 -.448 712 .664 .612 -.437 599

Rapid eye movements PAxPT PAxRA PTxRA n .785 .611 .039 42 .758 .795 ,320 1184

(13)

鳥取大学教育地域科学部紀要 教育・人文科学 第

4巻

1号

(2002)

Table 3 Perecentage of epochs wit“ EOG signals(SEMs and/or REMs)and nO

eye movements during the hypnagogic state and REM sieep

Hypnagogic state REM sieep EpOchs with

SIow eye movements only Rapid eye movements onty SEMs and REMs

No eye movements

52.7(253)

1.3( 6)

4.2 ( 20) 41.9 (201) 35.7 (175)。

15,7(77)

24.7 (121) 23.9 (117) Total epochs 100.0 (480) 100.0 (490)

e The reai number of epochs is given in parentheses

REMsの

2倍

以上 と多 く現れた。配

Msの

単独検 出区画率 は ,睡 眠前半の レム睡眠で低 く(8.5%),

睡眠後半の レム睡眠で高 くなる (26,7%)傾 向があった。以上

,入

眠状態の眼球運動 は

SEMsが

優位

であ り

,SEMsの

消失 は眼球運動の停止 とほぼ同義で あった。 これに対 し,レ ム睡眠の眼球運動 は

SEMsと

REMsが

共存す る出現様式 をみせ

,REMsの

出現 は睡眠時間の関数 として変化 した。 最後 に

,本

報告で分析 した 10例 のデータファイル の処理時間 を調べた。記録時間

20分

のデータ ファイルの分析 に要 した時間は最長347秒であった。各データファイル において

,開

始区画か ら最 終区画 までに要 した時間 を全処理画面数 (半区画移動 も含むので区画数の

2倍

となる

)で

除 した平 均処理時間を求めた。平均処理時間は1.44±0,01秒

/画

面で あ り

,検

出信号総数 (最小44∼最 多

504)の

寡 多に関わ らず安定 していた。 考 察 睡眠段階判定の国際基準は左右眼球から導出 した

2チ

ャネル

EOG記

録を標準 とする

PSGに

基づ いてお り

,特

にレム睡眠の判定には眼球運動

(REMs)が

不可欠の指標 となる (Rechtschaffen& Kales,1968)。 近年,日本睡眠学会ヨンピュータ委員会 (1999)は 睡眠段階判定の国際基準について 不確実 さの問題があるとの認識から再検討 を重ね

,修

正 と補足 を加 えた判定マニュアル「学習用

PSGチ

ャー ト:睡眠ポ リグラフ記録の判読法と解説」を発刊 している。そのマニュアルの特徴の一 つは

SEMsの

持統的な出現 を段階 1の 判定基準に追加 し

,段

階 1判 定の改善措置 をとっている点で ある。

SEMsを

段階

1判

定の補完指標 として明確 に位置づけたことは従来の国際基準の曖昧 さを是 正す る措置 として特筆 される。ただ し

,SEMsの

記録波形の歪みの原因となる時定数の選択 (広重 ,1997)に ついてはなお不十分 さを残 している。

SEMsに

ついては,段 階 1の 随伴現象 としての扱い にとどまらず,覚醒か ら睡眠への移行を橋渡 しする入眠状態 を規定する生理指標 として積極的に位 置づける考え方 (広重

,2001)か

らすれば、歪みの少ない記録波形が得 られる時定数 (6.0秒

)が

望 ましい。いずれにせよ,レ ム睡眠および段階 1の 状態像 さらには覚醒と睡眠との連続性など

,睡

眠 状態の諸相 を明確にする上で眼球運動が重要な生理指標であるという認識はより明確なもの とな り つつ ある。 眼球運動の 自動計測法の開発 において左右

2チ

ャネルの

EOG曲

線の位相関係 を考慮す ることは, 国際基準の

PSGの

判定の客観化,と りわIす判定が難 しい とされ る覚醒から段階

1へ

の移行過程 (あ るいは入眠状態

)の

判定改善 に寄与す るところが大 きい。その意味で1ヽ

T誼

ら(1996)が考案 した

(14)

広重佳治:入眠状態およびレム睡眠時眼球運動の自動計測 自動計測法は先駆的な性格 をもつ もの として位置づ け られ る。彼 らの計測法は,まず

HRフ

ィル タ を用いて左右2チャネルの

EOG曲

線 か ら

3種

類の眼球運動 (blinks,saccades,SEMs)を分離 した 後 に

,積

率相関係数 を乗数 としてアーチファク トを除去 し

,振

幅 と経過時間の閾値 に基づいて検 出 信号の最終 的判定 を行 うとい う解析手順 をとってお り

,2チ

ャネル

EOG曲

線の位相関係 が相 関係数 によって数量的に評価で きるとす る点で特徴がある。しか し,Variらの計測法にはい くつかの問題 点 もある。まず

,相

関係数 は原理的には時系列の共分散 と全分散積の比 であるか ら

,全

分散 がチ ャ ネル間で大 きく異 なってい る場合で もデータの変動傾向が類似 ない し相似する関係 にあれば強い相 関 を得 るとい う不都合 が生 じる。事実

,Varriら

の報告 は検 出信号の視察判定 との一致率 が低 く

(SEMsi4誂

,saccades i 62%),視 察で判定 された

SEMsの

38%は範疇化が困難 な混合パ タン

(oher

eye movements)で あると述べている。第2の問題 は

,移

動式小型脳波記録器 (ambulatOry cassette

EEG recorder)への適用 とい う実用性 を意図 してい るため と推測 されるが,眼球運動の記録 に脳波 と同 じ0.3秒の時定数 を使用 している点である。0,3秒とい う短時定数 は

SEMsの

記録波形 に著 しく 大 きな歪みを与 えることか ら,入眠状態の

EOGに

は少 な くとも

3秒

の時定数が必要であることが判 明 してい る (広重,1997)。 最後 に

,検

出波形のパ ラメータ計測値が報告 されていないため

,信

号波 形の特性 を他の研究成績 と相互比較す ることが困難で ある。 本研究で開発 した眼球運動の 自動計測法 は 配

Msと SEMsを

同時 に認識対象 とす るもので あ り, その主要 な処理過程 は移動式直線回帰分析 (広重,1999)に よる

EOG曲

線の変化点の検 出

,2チ

ャ ネル

EOG曲

線の位相関係 と偏位度の判定,アーチ ファク ト処理 ,波形の特徴抽出パ ラメータの判定 および半区画重複移動処理 か ら構成 された。その結果

,電

極 や体動 に由来す るアーチ ファク トある いは脳波成分の混入 (同位相の振れ と片振れ

)を

信号 とす る過誤や信号の見落 としがな くな り

,先

の計測法 (広重

,1999)に

比べて高い検 出精度 を得 ることがで きた。加 えて

,そ

の適用範囲が入眠 状態 に限定 されず,レム睡眠 にまで拡大で きるとい う汎用性 も確認 された。さらに

,6秒

とい う長 時定数で増幅記録 した

2チ

ャネルの

EOG曲

線か ら

SEMsと

Msの

両信号 を同時に処理す ることが できる点で

,眼

球運動の種類 に応 じて時定数 を変 えるとい う措置 (例えば

,配

Msに

0.3秒

,SEMs

に1.5秒と異 なる時定数 による記録

)を

必要 としない とい うメ リッ トを備 えていた。 本研究 は終夜睡眠下で記録 した

EOG記

録 にたい して信号性眼球運動の 自動計測 を試みた。その結 果

,昼

間仮眠の成績 (広重,1997,1999)と同様 に

,夜

間の入眠状態 (再入眠 を含む

)は

SEMsが

優 勢 な眼球運動であった。一方,レム睡眠期には

REMsが

多数検出 されたが,レム睡眠の出現時刻 に

よって

REMsの

出現様態が異 なるとい う時間効果 とともに

,REMsと

SEMsの

複合的な出現様式 を

認めた。特徴抽出パ ラメータ間の相関関係は入眠状態 とレム睡眠のいずれにおいて も同様で あ り,信

号波形の特徴 が睡眠状態の差 によって大 きく変化す ることはなかった。

SEMsと

REMsは

いずれ も 頂点振幅が増大す ると頂点時間が延長 して立 ち上 が り角度が大 きくなるとい う正の相関関係 があっ

た。

SEMsの

結果 は昼間仮眠時の成績 (広重

,1999)と

基本的に一致 した。

レム睡眠期 に

SEMsの

出現 を認めるとす る知見 は これ までに も散見 され る (Jacobs et al.,1971;

福田,1985)。 それ らは直流

(DC)増

幅の

EOG記

録の視察判定 に基づ く報告であるが

,SEMsは

レ ム睡眠の初期 に現れやす く,レム睡眠期の全眼球運動の

2割

程度 を占め るとされてい る。従来 の知 見 (時定数無限大

)と

本研究結果 (時定数

6秒

)を

考 え併せ ると

,レ

ム睡眠期の眼球運動 を

REMs

の相動的出現

(皿

Msの

活動 と沈静の交替

)と

す る特徴づけは短時定数の低域周波数逃断効果 によ るもので あって,レム睡眠期の眼球運動の実像 を十分にとらえたものではないと考 えられ る。本研 究の成績 か らみて

,皿

Msと

SEMsの

共存 あるいは複合 的出現様式が レム睡眠期の眼球運動の基本

(15)

鳥取大学教育地域科学部紀要 教育 。人文科学 第

4巻

1号

(2002)

■9 的な特徴であると考 えられ る。こうした考 え方 をさらに進めると,レム睡眠期の心理的特徴である 夢見 と眼球運動 との関係 について従来の走査仮説 (Dement,1965)と は異 なる視点か ら再検討す る 可能性 が提供で きるか もしれない。

Dementの

走査仮説は夢見の視覚心像 を 配

Msが

追随す るとい うものであるが,その評価 は賛否両論 に分かれている。レム睡眠期 にお ける

REMsと SEMsの

複合 的出現様式の一般性 を確 かめるには本計測法による分析例 を増やす必要 がある。

引用文献

Ase

n蛹

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(16)

広重佳治 :入眠状態および レム睡眠時眼球運動の自動計測

Abstract

Automatic measurement of eye movementsin hypntttOgic state and REM sieep

HIROSHIGE Yoshiharu

This study presented a re sed mettod to automttically dettct and measure rapid eye moveIIlents (REMo and slow eye movements sEMo in sと

ep.The mehOd was based on he applicadon ofa mo ng linear regression analysis to dettcdOn ofhe peak Or trough ofEOG cuⅣ e 01irOshige,199の

,

he evaluatiOn ofphase reversal of two cright and leftJ‐ channcI EOGs and he processing of anifacts.

e standard polysomnographic recording(Rechtscharen&Kales,1960 was made hree nights for

each ofthree adultvoluntters Mth heir consents to he purpose and procedure ofthe present expe洋

ment.EOGs were recorded monopolany h a ime constantof6s,andAD convened data coG ttme

seneO du ng the hypnagogic state and REM sieep were obtained a sampling frequnecy of 100Hz and analyzed cOnsecutively every 10s.

The results indicate hat he mehOd pelfOrmed wellin dettcting]配 Ms and SEMs,High correta‐

■OnS QinerantyJ were fOund among three feature‐ extracted parameters of SEMs and REMs,respec‐ dvely.SEMs were dominantin he hypnagogic state,帝 hereasin REM sleepwerefound complex Sngle,

combined and superimposed)fOrms Ofappearance of REMs and SEMs.The possibllities were dis‐

cussed for he present mehod to investigate dynamics of eye movements duttng sleep. 120

Table lに ,本 計測法 によって検 出 され た SEMs,REMsお よび粗大眼球 運動 (grOss eye
Table 3に ,SEMsと REMsの 検 出区画率 (括 弧 内に実数 )を 入眠状態 とレム睡眠に分 けて表示 し た。入眠状態 は SEMs優 位で あった。 SEMsの 検 出区画が全区画の半数以上 (56.9%)を 占め ,残 り の区画の大半 は眼球運動 を欠いた。 REMsの 検出区画は少 ないが ,そ の多 くは SEMsの 検 出区画 と 一致 した。レム睡眠 は眼球運動の検出区画率 (76.1%)が 入眠状態 に比較 して 2割 近 く増 え ,眼 球運 動優位の睡眠状態であった。

参照

関連したドキュメント

2.1で指摘した通り、過去形の導入に当たって は「過去の出来事」における「過去」の概念は

ムにも所見を現わす.即ち 左第4弓にては心搏 の不整に相応して同一分節において,波面,振

 第1報Dでは,環境汚染の場合に食品中にみられる

SD カードが装置に挿入されている場合に表示され ます。 SD カードを取り出す場合はこの項目を選択 します。「 SD

或はBifidobacteriumとして3)1つのnew genus

tiSOneと共にcOrtisODeを検出したことは,恰も 血漿中に少なくともこの場合COTtisOIleの即行

線遷移をおこすだけでなく、中性子を一つ放出する場合がある。この中性子が遅発中性子で ある。励起状態の Kr-87

および皮膚性状の変化がみられる患者においては,コ.. 動性クリーゼ補助診断に利用できると述べている。本 症 例 に お け る ChE/Alb 比 は 入 院 時 に 2.4 と 低 値