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自動車交通 1998

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1998

1998年2月

(2)

自動車交通1998の発行にあたって

日産自動車株式会社

取締役 総合研究 所長 環境・交通研究 所長  

中川 泰彦

 1997年は第32回東京モーターショーにおいて環境を意識したさまざまな車が出品された り、気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)が京都で開催されたことから、環境問題へ の関心が国民的に高まった年であった。また、日本の社会の高齢化を象徴するかのように高 齢運転者標識が登場した。環境保全や高齢社会への対応は、自動車交通においても重要な課 題となったことを強く感じる。  日産自動車では車の改良はこれまでも進めてきているが、今後はさ らに交通システムとして自動車交通を捉え、その課題にも挑むべきで あると考えている。即ちハードウェアとして自動車や道路を改良する だけでなく、人・車・道路の協調により相乗効果を高める工夫や、それ らの利用の仕方の改善などソフトウェア的なアプローチが重要である と考える。さらには公共交通機関を含めた総合的な交通システムの一 翼を担うものとして自動車交通を捉える必要がある。  「自動車交通」は自動車交通のおかれている現状を分析し理解す る上で、幾許かでも参考にしていただければとの願いを込めた小冊 子である。  今号ではご利用いただいている方々のご意見も参考に、掲載内容の 充実を図るべく見直しを行った。最近の日産自動車の調査研究の中か ら超小型電気自動車、クリーンエネルギー車など環境問題に関するも のや、高齢者の事故の特性やドライバーの経路選択行動など人に着目 したもの、配送計画の最適化による物流の効率化などを新たにご紹介した。道路財源に関し て初めて取り上げたほか、環境やITSといった最近注目されている項目についても充実を 図った。  自動車会社の使命として、実現できることは出来るだけ早く商品の形でご提供できるように 努力したい。その一方で一自動車会社だけでは実現が困難で、社会と連携して進めなければで きないものも多い。この「自動車交通」をきっかけとして日産自動車の交通に関する調査研究 に興味をお持ちいただき、自動車交通システムの改善に向けた今後の連携にまで発展できれば 幸いである。

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もくじ

自動車交通 1998 3 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 1 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 3 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 4

自動車交通1998の発行にあたって

もくじ

日本の交通における最近の動向

日産の調査研究から

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 8 ‥‥‥‥‥‥‥ 10 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 12 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥14 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥16 ‥‥‥‥‥‥18 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥20 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥22 1 超小型電気自動車の環境改善効果と交通システム 2 クリーンエネルギー車のエネルギーフローに沿った現在及び将来の効率 3 燃料電池自動車 クリーン・高効率な次世代自動車 4 実交通流における燃費測定技術 5 高齢ドライバーの交通事故 高齢ドライバーの事故の特徴 6 人-情報-交通系モデルによるドライバーの情報ニーズと渋滞改善効果の分析 7 配送計画支援システムによる配送ルートの最適化とその効果     関連発表論文, 資料リスト(1995∼1997) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥59 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥81

統計・資料

索 引

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥48 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥50 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥52 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥54 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥56

3 人・自然との共存 

3-1 自動車のリサイクルへの取り組み 3-2 騒音対策 3-3 大気汚染改善への取り組み 3-4 エネルギー効率の改善 3-5 地球温暖化防止への取り組み

2 安全で快適なモビリティ確保への取り組み

2-1 道路交通事故への取り組み 2-2 ITS(高度道路交通システム) ITS関連資料 2-3 駐車問題 2-4 誰もが使いやすい交通サービスへ 2-5 既存交通手段の工夫 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥36 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥38 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥40 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥42 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥44 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥46

1 多様なモビリティとそれを支える交通網

1-1 変化するモビリティの量と質 1-2 交通ネットワークの現状 1-3 施設整備の将来像 1-4 交通需要マネジメント 1-5 物流の課題と対策 1-6 道路財源 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥24 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥26 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥28 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥30 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥32 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥34

交通の現状

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日本の交通における最近の動向

表 1 国内における交通この 1 年

1. 交通空間の整備

'95年12月、国土審議会計画部会(伊藤 滋部会長)は、「新しい全国総 合開発計画の基本的考え方」をとりまとめ同審議会に報告した。「生活 の豊かさと自然環境の豊かさが両立する、世界に開かれた活力ある国 土の構築」を基本目標としており、'97年度末を目処に計画を策定する 予定である。 '97年8月、新たな道路整備五箇年計画(案)(期間1998∼2002年度)が 策定された。「新たな経済構造実現に向けた支援」「活力ある地域づく り・都市づくりの支援」「よりよい生活環境の確保」「安心して住める国 土の実現」を施策の柱としている。五箇年間の道路投資額は、総額78 兆円(調整費3兆円含む)を見込んでいる。道路網の整備進捗状況は、 '96年度末で高規格幹線道路が6,768km、地域高規格道路が965kmの供用 に達した。上信越自動車道小諸∼信州中野間供用開始('96.11)による関 越自動車道から中央自動車道への回廊路の形成、東磐越自動車道の全 通('97.10)、秋田自動車道の全通('97.11)など、ネットワークらしい幹 線網になってきた。また、阪神大震災で不通となっていた3号線神戸 線が '96年9月に復旧し、1年8カ月ぶりに阪神高速道路が全通したこ と、9年間と約1.5兆円とを投じた東京湾横断道路アクアラインが'97年 12月に供用開始されたことなどが特筆に値する。 久方ぶりに新幹線に新しい路線が加わった。長野冬季オリンピック 開催に向けて、'97年10月に開通した長野行(北陸)新幹線である。在来 線あさま(上野発)で3時間弱を要していた東京∼長野間を、新幹線あ さまでは最短79分で結ぶことになった。また、長野行新幹線に先立 ち、'97年3月、秋田新幹線こまちが運行開始された。山形新幹線つば さと同じミニ新幹線方式で、盛岡から秋田までは在来線を走行し、東 京∼秋田間を約4時間で運行する。今まで秋田への長距離アクセスは 空路が優位であったが、秋田自動車道の開通ともあいまって、交通機 関分担がどのように変化するか興味深いところである。

2. ITS

(高度道路交通システム)

の進展

ITSは、個々のシステムの研究開発段階から全体の枠組みの下に統 合に向けての検討、国際標準化の検討の段階に入ってきた。 '95年2月、政府は「高度情報通信社会推進に向けた基本方針」の中で  実質 GDP 成長率 2.9%と '96 年度には回復の兆しを見せていた日本経済も、'97 年 4 月以降、消費税率引き上げによ る個人消費の落ち込みや金融機関の相次ぐ経営破綻などにより不透明感が広がっている。'96年度の人の移動は前年度 比 1.5%、物の輸送は 2.5%増加した。旅客、貨物とも自動車と航空が定常的な伸びを示した。道路交通事故死者数は、 '96 年に9年ぶりに 1 万人を下回り、'97 年には 9,640 人とさらに減少した。  交通分野での大きな話題は、'97 年 12 月に京都で開催された COP3(気候変動枠組条約第3回締約国会議)であった。 環境意識は急速に高まり、'97 年10 月に開催された第 32 回東京モーターショーでも、都市型超小型車やハイブリッド 車など環境対応技術が主要な訴求点の一つとなった。また、橋本内閣は 2001 年の中央省庁再編を目指す行政改革の 方向を打ち出した。省庁再編案中に国土交通省の設立がある。実現すれば、分散している交通行政機能が一部統合さ れることになり、今後の交通政策に期待したいところである。 谷口 正明 95年度又は 96年度又は 前年比 95年度末 96年度末 (%) 合計 13,880 14,086 1.5  乗用車等 8,201 8,369 2.0 旅客  バス 973 949 -2.5 交 (億人・km)  鉄道 4,001 4,022 0.5 通  旅客船 55 56 1.8 量  航空 650 690 6.2 合計 5,590 5,732 2.5 貨物  自動車 2,946 3,055 3.7 (億トン・km)  鉄道 251 250 -0.4  内航海運 2,383 2,418 1.5  航空 9.2 9.6 4.3 合計 119,738 (2.7)  乗用車 46,264 (5.9) エネルギー  トラック 40,850 (3.0) 消費量  バス 1,874 (0.3) (原油換算 千kl)  鉄道 4,874 (1.9)  海運 16,964 (-7.4)  航空 8,912 (8.5) 合計 65,353 67,199 2.8 自動車保有台数  乗用車 44,680 46,868 4.9 (千台・年次)  貨物自動車 20,430 20,089 -1.7  バス 243 242 -0.4 運転免許保有者数 合計 68,564 69,875 1.9 (千人・年次)  男性 41,406 41,973 1.4  女性 27,158 27,902 2.7 高規格幹線道路延長(km) 6,551 6,768 3.3 改 道 良済国都道府県 路延長 (km・年度初) 121,569 123,397 1.5 自動車排出ガス測定局 NO2濃度 (三大都市地域) 75.6 84.8 12.2 環境基準非適合局比率(%) 交通事故(年次) 発生件数(千件) 761.8 771.1 1.2 30日死者数(人) 12,670 11,674 -7.9 注)1.( )は1995年度/1994年度比   2.出典、参照文献等については本編参照ただし一部は下記の通り  『エネルギー消費量』‥[運輸関係エネルギー要覧・運輸省]  『高規格幹線道路延長』‥[道路ポケットブック・全国道路利用者会議]  『改良済国都道府県道路延長』‥[道路統計年報・建設省]  『環境基準非適合局比率』‥[平成8年度大気汚染状況について・環境庁]  『交通事故 30日死者数』‥[交通統計・交通事故総合分析センター]

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自動車交通 1998 5 ITSの推進を位置づけ、同年8月、警察、通産、運輸、郵政、建設の5 省庁は「道路・交通・車両分野における情報化実施指針」を作成して、11の 推進施策と9つの開発分野を示した。翌'96年7月には、「高度道路交通 システム推進に関する全体構想」を策定し、ドライバーへの交通関連情 報の提供、交通流の最適化、公共交通の運行・運行管理支援、歩行者へ の経路案内など20の利用者サービスを提示している。 個々のシステムの進捗では、道路交通情報通信センター(VICS)が、 '96年4月、東京都市圏での道路交通情報の提供サービスを開始した。 '97年12月現在では、高速道路や大阪、京都、名古屋都市圏へとサービス エリアが拡大している。わが国のカーナビゲーションの普及台数は230 万台('97.9時点)に達しており、今後VICS対応機種の普及が見込まれる。 料金所渋滞の解消が期待される自動料金収受システム(ETC)は、'97年3 月から小田原厚木道路で試験運用が開始され、'98年度の実用化導入を目 指して準備が急がれている。安全運転支援の分野では、'96年9月、供用 前の上信越自動車道を利用して、自動走行や衝突防止などの安全走行シ ステムの走行実験・デモが実施された。同年9月には、技術研究組合 走 行支援道路システム開発機構(AHS研究組合)が発足した。

3. TDM

(交通需要マネジメント)

への取り組み

鎌倉市では'96年5月、鎌倉地域交通計画研究会(高橋 洋二会長)が、 「鎌倉地域の地区交通に関する提言」を市長に提言した。計画の精神を表 明する「鎌倉地区交通 市民宣言(案)」、自動車の抑制、公共交通への転 換、歩行・居住環境の向上を目指した「地区交通計画−TDM施策メ ニュー」を盛り込んでいる。提言の特徴は、市民参加・市民主体で提言立 案をしていること、市民自らの自動車利用自粛を念頭にロードプライシ ング(道路料金賦課制度)の実施が有効と判断していることである。'96年 11月には、七里ケ浜駅周辺でパーク・アンド・レールライド実験を実施し ており、'98年度の自動車流入コントロールの本格実験を目指している。 運輸省は'95年度から都市交通円滑化プロジェクトで、公共交通機関を 利用する上での阻害要因や利用者のニーズを把握する「公共交通機関利 用促進調査」を行なっている。'96年度は札幌市、浜松市、大分市で調査 を実施し、'97年度も新潟市、堺市、広島市で実施する。また、警察、運 輸、建設の3省庁は、新渋滞対策プログラムにおける「総合渋滞対策支 援モデル事業」で、都市ごとに展開しているTDM施策を支援している。 '97年度は浜松市を13番目のモデル事業実施都市に指定した。

4. 交通安全への取り組み

'96年中の交通事故死者数は対前年比737人減少し9,942人となった。死 者数が1万人を下回ったのは'87年以来9年ぶりで、'97年も9, 640人と引 き続き減少した。一方、負傷者数は'96年942,203人(前年比2.1%増)と依 然増加の傾向を示しており、予断を許さない状況である。年齢層別に死 者数を見ると、16∼26歳の若者と65歳以上の高齢者が多く、全体の53% を占めている。若年層は減少傾向であるものの、高齢者層は増加が続い ており、その対応が急務になってきた。 政府では'96年3月に中央交通安全対策会議(橋本 龍太郎会長)を開催 し、'96∼2000年度を計画期間とする「第6次交通安全基本計画」を作成し た。年間の交通事故死者数を'97年までに1万人以下、2000年までに9千人 以下にすることを目標に掲げている。目標達成に向けて、高齢者の交通 安全対策の推進、事故多発地点対策の推進、事故調査・分析や交通安全 図2 ITS 開発・展開計画 ITS は 2000 年頃 を第 1 フェ ーズ とし 、ナビ ゲー ショ ン シ ス テ ム 等 の 一 部 先 行 シ ス テ ム の サ ー ビ ス が 開 始 し 、2005 年 頃の 第 2 フ ェー ズ では 、最 適交 通 機関 情 報 提供 や 安 全 運 転の 支 援 等 の 利用 者 サ ー ビス が 実 現 、 2010 年頃 の第 3 フェ ーズ では ITS を社 会シ ステ ム と して定着させるための法的制度の整備が行われると予 想さ れる 。 1.ナビゲーション  2.自動料金収受 3.安全運転の支援 4.交通管理の最適化 5.道路管理の効率化 6.公共交通の支援 7.商用車の効率化 1995 2000 2005 2010 2015 オンデマンド 走行環境情報の提供 自動運転 ‥研究開発 ‥展開・普及 商用車の運行管理支援 8.歩行者等の支援 9.緊急車両の 商用車連続運転 公共交通利用状況の提供 商用車の運行管理支援 商用車の運行管理支援 公共交通の運行・運行管理支援 危険警告及び運転補助 危険警告及び運転補助 システムの高度化 運行支援 システム 図1 パブリック・インボルブメント(PI) 方式の考え方が道路計画づくりに '98 年度 から の道 路 整備 五箇 年計 画策 定に 向け て広 く 国民 の意 見を 聞 いて 道路 整備 計画 へ反 映す るた め、道 路 審 議 会 基 本 政 策 部 会 「 2 1 世 紀 の み ち を 考 え る 委 員 会」(森 地 茂委 員長 )は PI 方式 を採 用し 、キッ クオ フ レポ ート に基 づ き '96 年 5 ∼ 7 月に 意見 募集 を 行っ た。 全国 3 万 5 千人 から 寄せ ら れた 意見 は、'96 年 11 月に ボイ ス ・レポ ート にま と めら れ発 表さ れた 。

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  に関する調査研究の充実など11項目の重点施策を挙げている。 基本計画の指摘を受けた形で、'97年9月、「交通事故の発生と人身 障害及び社会的経済的損失に係わる総合的分析に関する調査研究委員 会」(高津 光洋委員長)は、交通事故による社会的・経済的損失額は年 間約4兆4千億円という推計結果を報告した。より精度の高い算定が 必要としているが、交通事故の損失額を具体的に示したことは意味の ある報告といえる。 車両側での対応では、'96年9月に、道路運送車両の保安基準及び道 路運送車両法施行規則の一部を改正する省令が公布され、車両の安全 規制が強化された。キャブオーバー乗用車などのブレーキ能力の強化 や前面衝突時の乗員保護強化に加え、側面衝突時の乗員保護(乗用 車、2.8トン以下の貨物車)を新たに規定している。

5. 環境・エネルギー問題への取り組み

窒素酸化物など都市部大気環境改善では、'96年3月、東京都や神奈 川県などで構成する七都県市首脳会議が「低公害車指定制度」を発足さ せた。続いて'96年11月、大阪府や京都府などで構成する京阪神六府県 市低NOx車普及促進協議会が設立され、「低NOx車指定制度」がスター トした。これらの制度は、国の定める許容限度より厳しい排出ガス指 定基準(概ね現行規制値の1/ 2以下:乗用車、3.5トン以下のバス・トラッ ク)を設け、それに合致する自動車を指定車として認定し、導入推進 するものである。 また、'97年11月中央環境審議会大気部会(斉藤 孟会長)は「今後の自 動車排出ガス低減対策のあり方について(第二次答申)」をまとめた。 新たな対策では、排出ガスの許容限度目標値を現行規制値の32%(乗 用車)に低減することを目指しており、'78年以来の大幅な規制強化と なる見込みである。 地球温暖化対策に関しては、'97年12月に気候変動枠組条約第3回締 約国会議(COP3)が京都で開催された。2008∼12年に温室効果ガスの 排出を先進国平均で'90年比5.2%削減する(日本6%、米国7%、EU8 %)とする議定書が採択された。各国は法的拘束力のある国際約束と して目標の達成を義務づけられる。また排出権取引を認めるなど目標 達成に柔軟性を持たせた内容となったが、具合的な実施規定は第4回 会議で検討される。 我が国ではCOP3に先立ち'97年8月、地球温暖化問題への国内対策 に関する関係審議会合同会議が結成された。この合同会議は、道路審 議会、中央環境審議会、経済審議会、国民生活審議会など9審議会の 代表が参加しており、11月に報告書をまとめた。予測されるエネル ギー消費の伸びと実施可能な対策を産業、運輸、民生部門別に検討 し、部門ごとの削減量を示している。運輸部門のCO2排出量は特段の 対策を講じない場合、2010年に'90年比40%増と予測されている。ガソ リン乗用車の新車について2010年度までに'95年度比で燃費を20%超向 上させるなど、自動車交通を中心にエネルギー消費効率の向上を図る としている。こうしたなか、大幅に燃費の向上した直接噴射エンジン の搭載、先進電池を搭載した電気自動車のリース販売開始、ハイブ リッド乗用車発売など、自動車各社が新技術を次々と導入したことが 注目を集めた。 図 3 低公害車の開発が進む 地球温暖化防止の意識の高まりとともに、低公害車の概念も 拡大してきた。排気、燃費両面を改善するためにさまざまな 低公害車の開発が進められている。 低NOX 低CO2

燃費

(CO

排気

(NO

X

ディーゼル DI ディーゼルIDI ガソリン DI リーンバーン メタノール 天然ガス HEV EV 低NOX車 低公害車 (広義) 低公害車 (狭義) <代替エネルギー車> ガソリン車 (三元触媒)

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  日産の調査研究から

超小型電気自動車の

環境改善効果と交通システム

 日常生活での利用がほとんどであるクルマ利用の実態 と、高まる交通環境改善の要求とに応えるものとして、 都市生活に最適な超小型電気自動車を提案した。  ここでは、この車のエネルギー消費量、CO2排出量、必 要駐車場面積の優位性を示し、ユーザーの複数保有の負担 を軽減する共同利用等の交通システムや利用環境の整備な ど、普及方策についても提案する。

1.クルマ利用の実態

人の移動におけるクルマ利用の実態をみると、利用 頻度(トリップ数)では 30km 以下の短距離移動が9割 以上を占める1)。レジャーなどの長距離移動も伸びて いるが、増加量はこの短距離移動が大きい。さらに今 後、女性や高齢ドライバーの増加により、この短距離移 動の増加傾向は強まっていくと考えられる(図1)。 この大きな割合を占める短距離移動において、日常 利用に特化した必要十分な性能の車を用いれば、環境 負荷を現在より低減できる。さらに、短距離移動に、 走行中排ガスを出さず、エネルギー効率にも優れた電 気自動車(EV)を適用すると、電池が少量で済み、EV のコスト面での実用性が飛躍的に高まる。 日常の短距離移動が用途の中心と思われる軽乗用車 の利用データをみると、1日の総走行距離が 50km 未 満、乗車人員1∼2名といった場合がほとんどである (図2)。このような「日常の短距離移動に適した車両」 というコンセプトを具現化した、超小型EV「ハイパー ミニ」を1997年東京モーターショーに出展した。

2.ハイパーミニの環境への影響

EV であることと、超小型にしたことで、エネルギー 消費量・CO2排出量は、乗用車やバスと比較してかなり 少なくなる(図4、5)。また、このほかにも騒音レベル も低くなる。 日 常 交 通 非 日 常 交 通 短距離 長距離 将来 現在 短距離化の ベクトル 長距離化の ベクトル (%) 30 40 50 60 70 80 90 100 1∼10 ∼100 ∼200(km) 50km ※個人所有の自家用のみ 走らなかった人は除く 走行距離 1 2 3 4 5(人) 100 60 70 80 90 (1人=運転手のみ) 乗車人数 (%) ∼ ∼ ∼ 図2 軽乗用車の平日総走行距離と乗車人数(累積分布)2) 走行距離(km):130 最高速度(km/h):100 乗車定員(名):2 全長×全幅×全高(mm):     2,500 × 1,475 × 1,550 ホイールベース(mm):1,790 最小回転半径(m):3.5 駆動方式:2WD(RR) 電池:リチウムイオン電池 図 4 エネルギー消費量 (kcal/人km) 0 200 400 600 800 乗用車 乗合バス 鉄道 軽乗用車 発電・精製・輸送 時等の消費量 走行時消費量 ハイパーミニ 岩崎 雅彦・原 加代子・笠井 純一 図3 ハイパーミニとその主要諸元 図1 2 極化する車の使われ方

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自動車交通 1998 9

3.超小型サイズの利点

(駐車場)

幅が軽自動車並に狭く、全長が普通乗用車の半分であ るパイパーミニは、狭い道路でのすれ違いやクランクで のとりまわしが容易である。 図7のような駐車場の場合、乗用車は6台しか入らな いがパイパーミニは 14 台入り、スペース効率は 2.6倍に なる。駐車スペースのせまいところでも駐車しやすく、 同じスペースでも駐車台数を増やすことができる。 図7 駐車場

4.超小型 EV を用いた交通システム

用途に応じて最適な車を使い分けるには、複数台の 車両が必要となり、経済的に難しい人も多い。特に都 市部では、渋滞などによる環境悪化の改善要望が強い が、保管場所(車庫)の制約が高く、さらに複数保有は 難しい。そこで、保有しなくても車が使える、共同利用 できるシステムを検討している。

4-1. マンション居住者用共同利用システム

マンションなどの集合住宅で、住人が共同で車両を 複数保有し、利用するシステム。利用を促進するため、 超小型 EV 駐車場を出入り口に近い便利な場所に用意 する、利用予約がマンション内のケーブルテレビなど により簡単にできるようにする、など利便性を高める (図8)。 図8 共同利用システム

4-2. コミューターシステム(パーク&ライド)

自宅と最寄り駅の往復などの端末交通のための超小 型コミューターシステム。共同利用とすれば、任意の 車両を取り出せるようにしなくてもすむため、通路を なくすなど、高密度な駅駐車場の設計が可能である (図9)。 図9 コミューターシステム

5.今後に向けて

超小型EVは、既存の車の置き換えではなく、生活に密 着させた都市交通という新しいモビリティに位置づけて いる。短距離は超小型EV、長距離は大きめの保有車、な どと用途に応じて使い分ける利用の仕方を提案したい。 そのため、今後、実証実験などにより、環境改善と利用 者の利便性向上の効果を確認し、住民や関係者の理解を 深めながら、一歩ずつ実現に向けて進めていきたい。 (g-C/人km) 0 10 20 30 40 50 60 発電・精製・輸送 時等の排出量 走行時排出量 ハイパーミニ軽乗用車 乗用車 乗合バス 鉄道 15m 11m 乗用車 充電器 15m 11m ハイパーミニ ○ハイパーミニ ○軽乗用車・乗用車・バス・鉄道 走行キロ・輸送人キロ 輸送人数・エネルギー消費量 …1993年度各実績値 燃費…0.08kwh/km(10・15モード) 乗車人数…1.25人(軽乗用1人、2人乗り平均) 図 6 試算前提 図 5 CO2排出量 〈参考文献〉 1)道路交通センサス,1990 2)石田他;自動車の運行状況からみた低公害車の適用 可能性,環境システム研究,Vol.21,1993.

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日産の調査研究から

クリーンエネルギー車のエネルギー

フローに沿った現在及び将来の効率

 温暖化防止への対応などの方策として、現行車の改善の ほかハイブリッド化や燃料電池の活用などが期待されてい る。このような異なるエネルギーやシステムを利用する自 動車間でエネルギー効率や CO2排出を比較するには、走行 段階だけでなく、エネルギーの生産や輸送まで遡った評価 が必要となる。本稿では代表的なクリーンエネルギー車に ついて、エネルギーフロー全体から見た効率、燃費および CO2排出についての評価を紹介する。

1.はじめに

 温暖化防止への対応などを背景に、米国のP N G V (Partnership for a New Generation Vehicles)、欧州の3 リッターカー、日本の高効率クリーンエネルギー自動 車プロジェクトなど、高効率でクリーンな自動車の開 発が各国で行われている。それぞれの燃費は現行車の 2倍∼3倍を目標においている。この目標を達成する 候補としてハイブリッド電気自動車(HEV)、燃料電池 自動車(FCV)などが挙げられている。  本稿ではこれらの代表的なクリーンエネルギー自動 車について、エネルギーフロー全体から見た効率、燃 費、C O2排出などを検討し、将来の自動車の方向を 探ってみたい。

2.考え方

 異なるエネルギーやシステムを利用する自動車間 で、エネルギー効率やCO2排出を比較することになる ので、走行段階だけでなくエネルギーの生産、輸送な どを含むエネルギーフロー全体で評価する。検討の考 え方を表1に示す。自動車の性能やエネルギー製造技 術に関して、現在ケースと将来の効率向上を盛り込ん だ将来ケースの二時点を想定し、ガソリン車をベース に他の自動車を見ていく。今回の想定では、現在の 表1 検討の考え方 ●検討車種  乗用車。ただし航続距離などの性能をクリーンエネルギー車と 現行車で等しくなるように仕様設定して比較していない。 ●評価モード  10・15モード ●検討対象の時期  現在∼近未来(2000年頃)および(2010年頃)の二時点で評 価する。 ・将来については、その時点で最良の技術を想定し評価する。 ●エネルギーの製造段階の効率  各種報告書をもとにまとめた。現在∼近未来ケースから将来ケ ースで見直したのはメタノールの転換効率のみ。発電段階につ いては現状のままとした。 ●走行段階の効率 ・ガソリン車およびディーゼル車の現在の効率は参考文献1)に よる。 ・ガソリン車およびディーゼル車の将来の効率はエンジンの直噴 化や無段変速機等により50%向上すると仮定した。 ・オットーサイクルのCNG車、メタノール車の車両効率は、ガ ソリン車と同等とした。 ・電気自動車と燃料電池自動車はモーターの効率向上、ハイブリ ッド電気自動車はモーターと内燃機関の効率向上を見込んだ。 ・電気自動車、ハイブリッド電気自動車、燃料電池自動車のエネ ルギー回生は現在∼近未来ケースで20%、将来ケースで30% と仮定した。 武石 哲夫・小林 紀 注):1.ガソリン車走行、ディーゼル車走行の効率は自動車工業会の推定による。   2.□の上の数値は各段階でのエネルギー効率で、右表の総合効率は各段階の数値の積。   3.EVのCO2排出量は日本の電源構成による。 4.HEVはシリーズタイプとする。   5.EV,HEV,FCVはエネルギー回生を20%とした。   6.EVの重量増加は300kgとし、自動車の燃費悪化は20%とした。    HEV,FCVについては重量増加による影響は考慮していない。   石油 石炭 天然ガス 採掘 海上輸送 精製 発電 発電 海上輸送 採掘・微粉化 海上輸送 水素製造 貯蔵 ガス化 輸送 輸送 給油 圧縮 採掘・液化 海上輸送 採掘・変換 発電 輸送 給油 ディーゼル車走行 HEV走行 EV走行 充電 送変電 FCV走行 天然ガス車走行 メタノール車走行 ガソリン車走行 99 97 98 88 98 64 98 34 94 89 18 22 81 47 15 15 41 76 90 93 99 98 36 99 G90,D95,発電99 95 15 倍 0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 13 16 18 22 24 28 13 9 総合効率(%) ガソリンEng発電 買電 化石燃料平均 メタノール(米国) 同量の一時エネルギーで 走行可能な距離 =燃費(ガソリン車=1) 一定距離の走行あたりの CO2排出量 (ガソリン車=1) 図 1 エネルギーフロー、総合効率、燃費、CO2(現在∼近未来)

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自動車交通 1998 11 ディーゼル車の走行の効率はガソリン車の1.2倍とし、 将来それぞれに直噴エンジン等の新技術が導入された 場合も相対的な関係は変わらないと仮定した。

3.結果

 図1に現在ケース、図2に将来ケースを示す。 エネルギーフローの図で□の上にある数値は各段階で のエネルギー効率を示し、総合効率はこれらの数値の 積となる。総合効率の右にあるグラフで燃費、 CO2 は、総合効率をベースに電気自動車(EV)の重量増加や EV、HEV、FCVのエネルギー回生を考慮している。燃 費は同量の一次エネルギーで各車が走行可能な距離、 CO2は一定の距離を走行するときに排出される量でと もにガソリン車を1とした相対値で示している。  なおHEVは車輪をモーターのみで回すシリーズタイ プを対象としている。HEVなどでは電池重量などの具 体的な仕様によって評価が異なってくるのであくまで も参考値として見ていただきたい。

3-1. 現在∼近未来

 HEV、EV、FCVの燃費性能は、ガソリン車に対し2 倍前後のポテンシャルを示している。CO2もHEV、 EV、FCVで半分以下に減少する。  現行のガソリンエンジンをベースにハイブリッド化 することにより高効率でクリーンな自動車となる。 天然ガス自動車(CNGV)は走行の効率をガソリン車 と同等と仮定しているが、このときCO2はガソリン車 の約7割に低減される。

3-2. 将来

将来的にもFCVは、効率が最も高くクリーンな自動 車と位置づけられる。エネルギー源としては今回対象 とした水素のほかメタノールも考えられている。これ らのエネルギーは太陽電池やバイオマスなどのよりク リーンな再生可能エネルギーから製造することもで き、FCVは究極のクリーン自動車とも考えられてい る。ただし、ガソリン車の燃費が直噴エンジン等の新 技術の採用などにより向上することが期待されるの で、相対的な倍率は低くなる。今回想定した性能向上 では、将来のガソリン車およびディーゼル車の燃費ポ テンシャルは、現在のガソリン車のそれぞれ1.5倍、1.8 倍になる。ディーゼル車の排気、騒音・振動などの改 善が重要なポイントとなる。  HEVはエンジン発電が買電の効率と同等か、さらに 上回る可能性が示された。

4.今後に向けた期待

 FCVなどのクリーンエネルギー車の性能向上ととも に、それらと競うように従来からあるガソリン車や ディーゼル車も向上していく。そして、時代の要求に 応じて適材適所で使われていくことが望ましい。  一方、高効率・クリーンエネルギー車の普及には、性 能向上と同時にコスト低減が不可欠であり、コスト低 減のための研究開発の推進が一層重要となる。  今後も新技術の動向などに注目し、将来の自動車の 方向性についての検討の充実を図っていく。 〈参考文献〉 1)自動車のCO2排出検討会、自動車技術会 学術講演会 前刷集, No.996, 1996-10 図 2 エネルギーフロー、総合効率、燃費、CO2(将来) 注):1.□の上の数値は各段階でのエネルギー効率で、右表の総合効率は各段階の数値の積。   2.EVのCO2排出量は日本の電源構成による。 3.HEVはシリーズタイプとする。   4.EV,HEV,FCVはエネルギー回生を30%とした。   5.EVの重量増加は300kgとし、自動車の燃費悪化は20%とした。    HEVについては重量増加による影響は考慮していない。   石油 石炭 天然ガス 採掘 海上輸送 精製 発電 発電 海上輸送 採掘・微粉化 海上輸送 水素製造 貯蔵 ガス化 輸送 輸送 給油 圧縮 採掘・液化 海上輸送 採掘・変換 発電 輸送 給油 ディーゼル車走行 HEV走行 EV走行 充電 送変電 FCV走行 天然ガス車走行 メタノール車走行 ガソリン車走行 99 97 98 88 98 70 98 34 94 89 27 30 86 50 23 23 41 76 90 93 99 98 36 99 G90,D95,発電99 95 23 倍 0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 19 24 25 25 27 29 19 15 総合効率(%) ガソリンEng発電 買電 化石燃料平均 メタノール(米国) 同量の一時エネルギーで 走行可能な距離 =燃費(ガソリン車=1) 一定距離の走行あたりの CO2排出量 (ガソリン車=1) LNG

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日産の調査研究から 0 200 400 1000 800 600 '88 '90 '92 '94 '96 出力密度 [W/リットル] PNGV Goal 1000 85 140 290 570 1000 ガソリンエンジン 400

燃料電池:Ballard Power Systems社 ガソリンエンジン:SR20DE PNGV:米国の高効率自動車の共同開発プログラム

燃料電池自動車

クリーン・高効率な次世代自動車  電気自動車は低公害で高効率な自動車として期待されて いるが、現状では航続距離が短く充電に時間がかかるなど、 利便性の面では従来の内燃機関自動車には及ばないという 課題を残している。そこで電気自動車の電池を燃料電池に 置き換えた燃料電池自動車の研究開発が盛んになりつつあ る。ここでは燃料電池、および燃料電池自動車について概 説する。

1.燃料電池自動車とは

燃料電池とは図1のように外部から反応物質を供給 する限り電気を起し続けることができる発電装置であ る。電気を起す原理は乾電池や蓄電池と同じで、効率 は一般に高い。 乾電池や蓄電池では電池内部の反応物質がすべて反応 し終わると電気を起すことができないのに対して、燃料 電池は反応物質を外部から供給することで連続的に電気 を起こすことが可能である。したがって、図2のように 電気自動車の電池を燃料電池に置き換えれば航続距離を 格段に延ばすとともに、充電が不要になるのでエネル ギー補給に必要な時間の大幅な短縮が可能となる。また 排気は燃焼反応を利用しないので電気自動車並にクリー ンである。

2.PEM型燃料電池について

燃料電池自動車用には、出力密度が高く、100℃以下 の低温運転が可能で、コンパクトに設計できるPEM型 燃料電池(Proton Exchange Membrane Fuel Cell)と呼ば れる燃料電池が適する。近年のPEM型燃料電池の出力 密度の向上は図3のように急峻で、ガソリンエンジン の出力密度を上回っている。燃料電池の出力密度はほ ぼ実用可能な領域に達したと言ってよい。 また、従来PEM型燃料電池のコストを支配してきた 白金使用量は激減しており、更にコスト低減に向けた 技術開発が進められている。

3.燃料供給の方法とその課題

燃料電池内で反応物質となるガスを反応ガスと呼 び、PEM型燃料電池の場合の反応ガスは水素である。 水素は常温常圧では気体のためエネルギー密度が低 い。エネルギー密度が低いと車載できるエネルギー量 が低下し、航続距離を延ばせない。燃料のエネルギー 密度を高めるために、どのように水素を車載し燃料電 池に供給するかが課題となる。 一つは水素を高密度化して車載する方法で、高圧タ ンク、水素吸蔵合金、液体水素などの利用が考えられ ている。 もう一つの方法として、エネルギー密度の高い炭化 水素を車載し、化学反応(改質反応)により炭化水素か 2H+ 2e- 2e-プロトン交換膜 連続的に発電 プロトン交換膜:プロトン(H+)だけを通し、電子(e-)を通さない膜 供給 排出 供給 排出 H2 H2O / 1 2O2 モーター

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電気 燃料電池 電池 置き換え ◎高効率 ◎排気クリーン ○航続距離長い ○燃料補給時間短い 燃料電池自動車 ◎高効率 ◎排気クリーン △航続距離短い △充電時間長い 電気自動車   盛田 幸治・小林 紀 図1 燃料電池のしくみ(PEM 型燃料電池の例) 図2 燃料電池自動車のイメージ 図3 PEM 型燃料電池の出力密度の推移

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自動車交通 1998 13 ら水素を車上で生成する供給システムが考えられてい る。炭化水素としてはメタノール、天然ガスやガソリ ンが考えられている。この場合、水素とともに生成さ れる僅かな一酸化炭素がPEM型燃料電池の性能を低下 させてしまうという問題がある。

4.燃料電池自動車の開発動向

表1に各社の燃料電池自動車の開発状況をまとめ る。開発初期は高圧タンクや水素吸蔵合金を利用し水 素を車載していたが、メタノール等の炭化水素を車載 するものへシフトしている傾向が見られる。これは水 素を車載する燃料供給システムの重量・スペース効率 の向上が容易でないことを物語っている。 また、対象車種はバス、ミニバンから乗用車へと小 型化してきた。これは、燃料電池の出力密度の向上に よるコンパクト化に加えて、電気自動車の開発過程で モーター等の小型高性能化が進んだことも要因として 指摘できる。

5.メタノール改質型燃料電池自動車

図4に97年東京モーターショーで日産自動車が発表 した燃料電池自動車の構成を示す。 燃料電池としてPEM型燃料電池を使用し、改質器を 用いて車上でメタノールから水素を生成することを特 徴とする。以下にメリットを示す。 ① 水素を直接車載する場合に比べ航続距離を2∼3倍 程度に延ばすことが可能 ② 二酸化炭素の排出量をガソリンエンジン車の半分以 下に低減することが可能 図4で、電池を搭載しているのは制動エネルギーを 回収し、再利用するためである。電力源として燃料電 池を持ち、電池だけで走行する必要がないので、電池 搭載量は電気自動車と比較して少なくてよい。

6.燃料電池の課題

燃料電池の出力密度の向上は、モーター駆動の自動 車用電力源としての可能性を高めた。今後、燃料電池 自動車の実現に向けて解決すべき課題として、システ ム全体としての①軽量・コンパクト化、②低コスト 化、③信頼性の確保等がある。

7.今後に向けて

今後普及が期待される代替エネルギー車には以下の ような社会的な要求も満たすことが求められる。 ① 燃料の製造から走行までの総合的なエネルギー消費 と二酸化炭素の排出が少ないこと ② 燃料は資源的に供給可能性が高く、供給インフラは 広く整備される可能性のあること 燃料電池自動車は、燃料電池およびモーターの総合 効率のポテンシャルは高いので、① ②を満たすような 技術開発とそれに応じた燃料の選択が鍵となる。将 来、利用が期待されている太陽光などの再生可能エネ ルギーからも水素やメタノールは製造可能であり、燃 料電池自動車は将来の高効率・クリーン自動車実現への 有力候補の一つとして研究開発されている。 発表年 '95 車載燃料 純水素 供給システム 燃料電池 '96 '96 '97 '97 メーカー BPS Benz トヨタ トヨタ Benz 純水素 純水素 メタノール メタノール 高圧タンク 高圧タンク 吸蔵合金 改質 改質 車種 バス ミニバン RV RV 乗用車 PEM型燃料電池 モーター

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電気 水素 メタノール メタノール 二酸化炭素 水 空気 電池 改質器 PEMFC タンク コントローラー 表1 燃料電池自動車の開発状況 注)'97/11 時点で発表済のものを掲載(計画は除く) 図4 メタノール改質型燃料電池自動車の構成

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  日産の調査研究から ABSパルス イベント入力 波形整形/ ドライバー回路 ECCS 自己診断 装置端子 RS232C I/F RS232C端子 拡張Box ノート パソコン サンプリングレート 10Hz プッシュSW カウンター ボード Dioボード バッテリ イベントSWBox 車両既設 インバータ エンジン回転数 燃料噴射パルス巾

実交通流における燃費測定技術

1.はじめに

実交通流における走行時の燃料消費量(以下、燃 費)は、交通流の状況によって大きな影響を受ける。 従って、燃費改善のためには、自動車単体の燃費性能 だけではなく、実交通流の状況毎に燃費特性を的確に 把握することが必要である。 これまでにも、燃料流量計を用いた燃費測定技術が知 られているが、1)燃料供給システムの改造が必要であ り、取り扱いに専門的知識が必要である、2)測定時間 単位が粗く、燃費の変動を正確に測定することができな い、3)出力データから分析データまでの処理に時間が かかるものが多い等の問題があり、実交通流での燃費特 性の把握が十分に行われない原因となっている。 ここでは、上記の問題を解消し、比較的簡便に実交 通流走行時における燃費を把握する計測システムを紹 介する。

2.実交通流における燃費測定技術

2-1. 燃費測定システムの原理

最近の自動車には、電子式エンジン集中制御システ ム(以下、ECCS)が普及している。この装置は電子制御 により、運転状態に応じて燃料噴射や点火時期等を最 適なレベルにコントロールするシステムであり、この システムから、燃料噴射パルス巾とエンジン回転数を 測定することによって、以下のように燃費を計算する ことが可能になる。   Q=(α×Ti−β)×N   ただし、    Q:燃料消費量    Ti:燃料噴射パルス巾    N:エンジン回転数    α,β:定数

2-2. 燃費測定システムの構成

日産のECCS搭載車には、エンジンやミッションの情 報を取り出すための自己診断装置端子が設置されてい る。今回開発した燃費測定システムは、1)自己診断装 置端子から得られる燃料噴射パルス巾やエンジン回 転、2)精度の高い車速信号を得るためのABS(アンチ ロックブレーキシステム)パルス、 3)計測の開始・終 了点や車線変更時のチェックなどに利用するイベント 信号を、デジタルデータとして車載したパソコンに取 り込む構成となっている。(図1) また、データのサンプリングレートは、10Hzとして おり、車速変動時の燃費変化を詳細に測定することが 可能となっている。

2-3. 燃費測定手順

燃費の計測は、燃費測定プログラムの起動とイベン トSWによる計測の開始・終了等のチェックを行うだけ で簡便に行うことができる。 この測定によって取得できるデータは、固定レコー 図 1 燃費計測システム機器構成  近年、環境・エネルギー問題が注目され、自動車走行時 の燃費改善が求められている。燃費改善のためには、実交 通流における燃費特性を的確に把握する必要がある。そこ で、電子式エンジン集中制御システム(ECCS)の信号を応 用して、測定操作が容易で、速度変動時の燃費変化をも測 定できる手法を開発した。  ここでは、その燃費測定技術の概要と測定結果の分析例 について紹介する。 貴志 泰久・谷口 正明

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自動車交通 1998 15 時間 [s] 0 120 240 360 480 600 -3 0 3 3 2 1 0 加速度 [m/s ] 2 燃料消費 [g/s] 速度 [km/h] 0 20 40 60 <-1行目 <-2行目以降 イベント信号 項目数 11byte 燃料噴射 パルス巾 エンジン回転数 開始時刻(時:分:秒) ダミーデータ ABSパルス ド長(11byte)のバイナリファイルであり、各データは 10Hzで1レコードずつ追加される。記録されるデータ の内容を図2に示す。

2-4. 燃費計測システムの精度

このシステムにおける燃料消費量の計測精度は、誤 差は0.6%以内である。精度の検証は、10・15モードに おけるシャシーダイナモ上でのCVS値(排気中のCO、 CO2、HC、NOx濃度から燃費を算出した値)との比較で 行った。

3.燃費計測システムの利用方法

この燃費計測システムは、測定方法やデータの加工 の仕方により、様々な指標について検討することが可 能である。以下に測定、分析例を示す。 図3は、車速と加速度、及び燃料消費量の時系列変 化を示している。この図から実交通流においては、挙 動や燃費が時々刻々激しく変化することがわかる。 図4は、異なる3日間を同じ路線で走行した場合の 走行パターンの違いを示している。この図から交通状 況は日によって変化し、それによって走行パターンが 変化することがわかる。 測定した路線は片側1車線の一般道路であり、測定 時間帯、車種、ドライバーは同じとしている。 図 2 記録されるデータ 図 3 車速、燃費及び加速度の時系列変化 図 4 同じ路線での走行パターンの違い 図 5 渋滞 / 非渋滞における走行パターンと燃費の違い 図5は、渋滞/非渋滞における走行パターンと燃費の 違いを示している。この図から燃費は渋滞によって大 幅に悪化し、その影響は大きいことがわかる。 対象区間は自動車専用道路の料金所付近とし、朝の 通勤ラッシュによる料金所渋滞の影響を見ている。

4.まとめ

このシステムの開発により、簡便にリアルタイムの 車両挙動や燃費のデータ収集及び評価が可能となっ た。また、このシステムの利用範囲は幅広く、燃費向 上策の検討や交通現象の解析など様々な方面で役立て ていきたいと考えている。 0 20 40 60 80 100 0 1 2 3 4 5 合流 プラザ入口 測定終了 速度(km/h) 走行距離(km) 時刻 7:50 旅行速度   27km/h 総燃料消費量 440cc 燃料消費率  11.4km/l 料金所 プラザ出口 3 4 5 0 1 2 プラザ入口 プラザ出口 測定終了 走行距離(km) 時刻 9:10 旅行速度   62km/h 総燃料消費量 359cc 燃料消費率  13.9km/l 0 20 40 60 80 100 速度(km/h) 料金所 合流 <渋滞時> <非渋滞時> 0 10 20 30 40 50 60 70 0 1 2 速度(Km/h) 走行距離(km) 0.5 1.5 Sample1 Sample2 Sample3

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  日産の調査研究から 今後、高齢化の加速以上に高齢ドライバーは増加してい く。また車は、高齢者の生活の質向上に重要な役割を持つ ようになってきている。しかしそれとともに、高齢ドライ バーの関係する事故の増加も指摘されるようになってきた。 本報告では、今後の交通環境、車両などでの事故防止に 向けた取り組みの参考とするため、「年齢層別に見た、免許 保有者数あたりの事故件数」を用いて、高齢ドライバーの 関係する事故の特徴を明らかにした。

1.はじめに

日本では、今後、高齢化が加速する1)。また人口の高 齢化以上に、自動車運転免許保有者数に占める高齢者の 割合が増加しており、2010年には免許保有者の23%が60 歳以上となる2)。また最近、自動車運転中の高齢者の死 者数の、増加率の高さが注目されており3)4)、今後自動車 交通の高齢化対策が重要になる。 今回の分析では、年齢層別の事故件数を、その年齢 層の自動車免許保有者数で割った値を「免許保有者1 万人あたりの事故件数」として用いた。 図1 昼夜別 年齢層別自動車事故 図2 年齢層別 事故類型別 本報告では、加齢に伴なってこの値が、顕著に上昇 するタイプの事故について紹介する。分析のための事 故データは、(財)交通事故総合分析センターから購入 した、1994年分の集計値を用いた。

2.昼夜別

まず年齢層別昼夜別に、免許保有者1万人あたりの 事故件数をみてみると、60歳を境に加齢に伴ない、昼 間の値は上昇し、夜間の値は下降している(図1)。 このような結果になる理由として、高齢ドライバーは 夜間の運転を控える傾向がある3)ことが考えられる。 したがって、高齢ドライバーの事故の特徴を分析す るためには、昼間の事故に注目したほうがよい、と判 断した。

3.車両相互事故

自動車ドライバーが第一当事者の場合、車両相互事 故が84%(1996年値5)で一番多い。そこで、昼間の車 両相互事故を、事故類型別に集計したのが図2であ る。この中で出合頭事故の件数は、70歳を超えると、 20-24歳よりも多くなる。 出合頭事故の92%(1996年値5)は、交差点で起きて いる。出合頭事故が、なぜドライバーの加齢とともに 増加するのかを明らかにするため、交差点での事故を 分析した。 信号のない交差点で、出合頭事故を筆頭とする車両 相互事故が多いのは、容易に推測できる。また、信号 のある交差点でも、車両相互事故の件数は、信号のな い交差点での56%(昼のみ、1996年値5)ある。 そこでまず、昼間の車両相互事故のうち、信号のあ る交差点に限定して、法令違反別に集計してみた(図 3)。加齢に伴い「信号無視」による件数が上昇する。 また、昼間の車両相互事故のうち、信号のある交差 点に限定して、行動類型別に集計したのが図4であ る。加齢とともに上昇し、一番件数の多いのは「等速 での直進」で、二番目は「右折」となっている。 ちなみに、昼間の車両相互事故のうち、信号のない 交差点に限定して集計し、加齢とともに事故件数が上 昇する項目を見てみると、法令違反別では「指定場所 一時不停止」と「安全不確認」、行動類型別では「等 速での直進」であった。 0 20 40 60 80 100 120 (件/1万人) 20-24 30-34 40-44 50-54 60-64 70-74 25-29 35-39 45-49 55-59 65-69 75歳以上 昼 夜 (件/1万人) 20-24 30-34 40-44 50-54 60-64 70-74 25-29 35-39 45-49 55-59 65-69 75歳以上 0 5 10 15 20 25 30 追 突 出合頭

高齢ドライバーの交通事故

高齢ドライバーの事故の特徴 木戸 美帆・笠井 純一 年齢層別免許保有者 1 万人あたりの事故件数 年齢層別第一当事者の事故件数(自動車運転中) 年齢層別自動車免許保有者数/ 10000 =

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自動車交通 1998 17 る。なぜこのような特徴が出るのか考察してみた。 信号のない交差点で「一時不停止」「安全不確認」 が多く、信号のある交差点で「信号無視」が多いこと から、判断を誤っているというより、信号、停止線、 標識などを、見えているはずだが「認知はしていな い」状況なのではないかと思われる。信号の有無に関 わらず行動類型別で「等速での直進」が多いことから も、このことは推測できる。 また、昼間の車両単独事故について、走行速度が相 対的に低い6)高齢ドライバーに多い理由は、今後検討 が必要であろう。 図3 年齢層別 法令違反別(信号有り交差点) 図4 年齢層別 行動類型別(信号有り交差点) (件/1万人) 20-24 30-34 40-44 50-54 60-64 70-74 25-29 35-39 45-49 55-59 65-69 75歳以上 0 2 4 6 8 10 12 直進(等速) 左折 右折

4.車両単独事故

車両単独事故は、図5のようになる。昼間だけだ と、自動車免許保有者1万人あたりの事故件数は、加 齢とともに増加している。車両単独事故は、車両相互 事故に比べると絶対数は少ないが、この増加傾向は注 目される。 (件/1万人) 20-24 30-34 40-44 50-54 60-64 70-74 25-29 35-39 45-49 55-59 65-69 75歳以上 0 1 2 3 4 5 6 図5 年齢層別 車両単独事故

6.まとめ

車はドアツードア性があり、動くことが辛くなる高 齢者にこそ望ましい移動手段であるが、身体能力の低 下する高齢ドライバーは、事故の危険が増加すること も事実である。高齢者本人も夜の運転を控えるなどの 予防をしているが、視界中のものを認知できないので あれば、根本的には本人の努力に任せるだけでなく、 交通環境や車両側で工夫する必要がある。 現在考えられる、事故防止のための車両と交通環境 の取り組みとしては、標識や信号、停止線の車室内 ディスプレイや、赤信号や停止線、障害物に対応した 自動ブレーキ、またレーンキーピングなどのITS技術 が、特に高齢ドライバーの事故低減に効果が大きいと 期待できる。 〈参考文献〉 1)高齢社会白書,平成9年版,総務庁 2)生内;「現役ドライバー」の高年齢化,人と車, 1995年10月号,(財)全日本交通安全協会 3)鈴木他;高齢ドライバーの人的事故要因に関する調 査研究 中間報告書,(財)国際交通安全学会,1991年 3月 4)交通安全白書,平成9年版,総務庁 5)交通統計,平成8年版,(財)交通事故総合分析セン ター 6)溝端;高齢ドライバーと高齢歩行者の交通特性につ いて,IATSS Review,Vol.16,No.1,pp49-57,1990

5.考察

以上から、自動車免許保有1万人あたりの事故件数 が、加齢とともに上昇するタイプの(=高齢ドライバー に特徴的な)事故をキーワードにしたのが、表1であ 表1 高齢ドライバーの事故のキーワード 「昼間」に「交差点」で 「直進(等速)」「右折」時に 「一時不停止」「信号無視」等を犯し 「自動車」に「出合頭」でぶつかる。 (件/1万人) 0 1 2 3 4 5 6 7 信号無視 外在的前方不注意 20-24 30-34 40-44 50-54 60-64 70-74 25-29 35-39 45-49 55-59 65-69 75歳以上

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  日産の調査研究から

人 - 情報 - 交通系モデルによるド

ライバーの情報ニーズと渋滞改

善効果の分析

 効率的な道路交通環境の実現を目指した高度交通情報提 供システムが注目されている。こうしたシステムをより効 果的な運用にするためには、様々な交通情報をどのように 運用すればドライバーが満足するのか、あるいは渋滞が改 善するのかといったシステムの運用の指針が必要となる。 ここでは、ドライバーの交通情報に対するニーズを明らか にすると共に、交通情報提供による渋滞改善効果について 検討事例を紹介する。

1.人-情報-交通系モデルとは?

カーナビゲーション等を使った様々な交通情報の提 供に大きな期待が寄せられている。しかし、実際に は、ドライバーの情報利用行動や既存の信号現示等を 考慮しないまま単に情報を提供しただけでは、渋滞が 悪化してしまうケースもある。どういった情報をどの ようなドライバーに、どういったタイミングで提供す ることが、ドライバーと道路ネットワーク双方の観点 から効果的なのか?こうした点を総合的に検討するこ とが効果的に情報提供を行う上で必要となる。 本稿ではこうした問題を統合的に検討するために、 人-情報-交通系モデルを考える。ドライバーの行動、 道路ネットワークの状態、提供情報の特性はそれぞれ が関連しあう。これらの現象のインタラクションをモ デルで表現することで、より効果的な交通情報提供の 方法を検討することを狙っている。このモデルを用い て、交通情報に対するニーズを明らかにするととも に、情報提供による渋滞改善効果検討を行う。

2.交通情報のニーズ分析

2-1. 分析データの収集方法

人-情報-交通系モデル構築のためには情報に対する 反応をどのように測定し、モデル化するかが重要とな る。ここでは様々な移動シナリオに対するドライバー の反応データをもとにモデル化を行った。 データ収集には、従来のアンケート手法では、走行 時のデータの収集が困難なため、イントラネット上で 稼働するインタラクティブな調査プログラムを開発 し、収集された被験者の反応データをモデル推定に用 いた。調査では、特定事業所の従業員を対象に、被験 者が通常使う道路を車で移動することを想定し、ブラ ウザを通して動画等により走行環境を表示し、交通情 報に対する被験者の情報アクセス行動や経路選択デー タを収集した。 図 1 人 - 情報 - 交通系モデル

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被験者 被験者 被験者 被験者 調査プログラム 回答結果 調査者 WWW サーバ 確認済回答 調査依頼メール 人-情報-交通系モデル データ データ 図 2 調査の方法 情報獲得モデル 経路選択モデル 交通モデル 情報提供モデル 人系モデル 交通系モデル 情報系モデル 情報生成方法の 検討 情報の利用料と アクセス割合の 検討 情報に対する経 路選択反応の検 討 情報提供による 渋滞改善効果の 検討 情報の内容 個人特性 移動目的 交通状況 更新周期 インターフェイス 情報アクセス行動 目的地 経路選択行動 経路分岐率 羽藤 英二・香月 伸一

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自動車交通 1998 19

2-2. 交通情報はどんな時に必要か?

得られたデータを使って、情報獲得モデルと経路選 択モデルの2つのモデルパラメータを推定した。モデ ルの適合度は統計的に有意な値を示した。モデルを 使って情報の利用料と走行環境の関係について検討し た(図3)。情報の利用料が高くなると情報のアクセス 確率が低くなっている。こうした関係はドライバーの 走行環境に依存し、渋滞してくれば、多少のお金を 払っても情報にアクセスしようとするが、渋滞してい ないときは無料でも情報を利用しないといった行動が 行われることを示している。 さらにその他の要因についてもモデルを用いて検討 した結果、以下の現象を確認した。 1)時間制約のある移動の際に交通情報の必要性が 高い 2)目の前の交通状況を渋滞だとを感じているドラ イバーほど交通情報にアクセスしやすい 3)精度の悪い交通情報はアクセス率が低くなる 4)情報端末で情報を表示する操作数が多い場合、 情報のアクセス率が低くなる 交通情報のニーズは個人特性、移動特性、情報の質 や提供方法によって大きく変化する。ドライバーの ニーズに対応した情報の提供方法が重要といえる。

3.交通情報で渋滞は改善するか?

次に交通情報提供による道路ネットワークの交通状 況の変化に着目し、人―情報―交通系モデルを用いて交 通情報提供による渋滞改善効果を検討する。モデルは コンピュータ上で個々の車両の加速や減速、交通情報 に対する経路選択行動などの動きを再現しており、実 際の道路ネットワーク条件を入力し、より現実的に交 通情報提供時の渋滞改善効果が検討できる。ここでは イントラネット調査の対象とした地域の道路ネット ワークの交通量、信号現示調査結果をもとに、当ネッ トワークにおいて交通情報を提供した場合の渋滞改善 効果を検討した。(図4) シミュレーション結果では、交通情報を提供するこ とで、渋滞が30%から40%程度改善することがわか る。交通情報提供による渋滞改善効果は期待できると いえる。但し、交通情報の利用割合が高くなると渋滞 の改善効果が少なくなる現象が確認できる。これは、 ハンチング現象によるもので、経路Aが早いという交 通情報が提供され、ほとんどの人がその情報に従って 経路Aを選択した場合、経路Aに交通需要が集中し、 逆に経路Aが渋滞してしまうことによって、道路ネッ トワークの効率が落ちてしまう。こうした現象は、情 報の更新周期や信号現示によってその発生の仕方が異 なる。交通情報提供時には、こうした検討を事前に行 い、信号現示や情報の更新周期などを考慮し、最適な 方法で情報を提供する必要があるといえる。

4.まとめ

本研究では、人―情報―交通系モデルを用いて、情報 の利用料や操作性等により情報アクセス行動が大きく 変化することを確認した。さらに情報提供による渋滞 改善効果を確保するためには、変化する情報利用割合 に応じて、情報の更新周期や信号現示を考慮した情報 提供を行う必要があることがわかった。 図 3 情報利用料と情報アクセス行動 図 4 情報提供による渋滞改善効果試算例 0 5 10 15 0 10 20 30 40 0.5 1 走行速度(km/h) 継続時間(分) 情 報 ア ク セ ス 確 率 情報利用料(無料) 情報利用料(30円/回) 20 情報アクセス 確率=50% ※情報利用料:情報を1回配信するのに必要な料金(通信費用を含む)  継続時間 :走行速度の継続時間 0.5 1 5 10 15 0 10 20 30 40 0 走行速度(km/h) 継続時間(分) 20 情報アクセス 確率=50% 表 1 ドライバーの情報利用特性 50 100 渋滞悪化 渋滞改善 旅 行 時 間 短 縮 割 合 (%) 交通情報提供のみ +情報更新 周期短縮 +信号現示 最適化 情報利用割合 (%) + 5 -10 -20 -30 ± 0

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  日産の調査研究から

配送計画支援システムによる配

送ルートの最適化とその効果

1. 配送計画支援システムとは

近年、都市内ではトラックによる交通渋滞や環境問 題が深刻化しており、社会的に効率的な輸送が求めら れている。また、荷主にとっても経営的な視点から物 流費を削減し、トータルのコストを低減したいという 大きなニーズがある。このような点から複数の荷主の 荷を物流センターに集約し1台のトラックに混載して 配送先に一括輸送する共同配送が盛んになっている。 ところが、実際の配送計画をみると、配車担当者やド ライバーの経験と勘に依存している部分が多く、必ず しも配送が最適化されている訳ではない。この配送計 画の難しさは、日々変動する荷量、配送先の納入時間 指定、配送ルートの交通渋滞など、複雑な要因を考慮 してルートを決定しなくてはいけない点にある。この ような組み合わせ最適化問題を解くことは人間の限界 を越えており、これを計算機のパワーを用いて最適に 近い計画を自動的に立案させたり、あるいは配車担当 者と計算機の間の対話的な試行錯誤で配送計画を立案 するシステムを配送計画支援システムと呼んでいる。 このようなシステムの導入により、交通渋滞や環境 問題に対するインパクトも大幅に軽減されることが期 待できる。本稿は、今回開発した配送計画支援システ ムとはどのようなものかを紹介し、ケーススタディに よる改善効果の試算結果を報告する。

2. 日産配送計画支援システムNavimos

2-1. Navimosの位置付け

日産配送計画支援システム Navimos(Nissan Advanced Vehicle Management Object-Oriented Simulater)は、複数 の拠点を巡回配送する問題を最適化するための最適化 プログラムおよび対話的な試行錯誤を可能にするイン タフェースによって構成される。  トラック輸送は、その機動性の高さから運輸全体に占め る割合が非常に高くなっているが、一方で交通や環境に与 える影響が社会問題となっている。これに対して本稿では、 計算機を用いた最新の配送計画支援システムによって配送 計画を最適化することで、物流費を軽減し、社会問題に与 える影響を和らげる試みを紹介する。このシステムでは、 計算機は配車担当者の支援ツールであり対話的なインタ フェースを通して最適な配送計画を立案することが可能で ある。 図 1  Navimos の操作パネル 主な機能は、 ・最適な配車の指示 ・最適な配送順序の指示 ・最適な巡回コースの指示 ・配車担当者による対話的修正 である。従来の配送計画シミュレータが組合せ最適化 アルゴリズム万能の立場にたち、現場の配車担当者の 存在を否定するような位置づけであったのに対し、こ のシステムでは、アルゴリズムの高度化よりも、配車 担当者とのインタラクティブな配送計画の立案を前面 に出している。配車担当者と協力して、その経験や勘 を採り入れることで、トラック輸送ならではの柔軟性 を計算機システムが損ねないように配慮している。

2-2. Navimosの特徴

Navimosの主な特徴として、 ・ マルチビュー(地図、タイムテーブル、リスト)  による視覚的な配送計画の提示 ・さまざまな情報の多次元的表示  ・ドラッグ&ドロップによるユーザーの意図に沿っ た計画の修正 上田 哲郎・佐藤 康治・岡田 和義

参照

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