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背景 急性大動脈解離は致死的な疾患である. 上行大動脈に解離を伴っている急性大動脈解離 Stanford A 型は発症後の致死率が高く, それ故診断後に緊急手術を施行することが一般的であり, 方針として確立されている. 一方上行大動脈に解離を伴わない急性大動脈解離 Stanford B 型の治療方法

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Academic year: 2021

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(1)

学位論文の要約

Mid-Term Outcomes of Acute Type B Aortic

Dissection in Japan Single Center

(急性大動脈解離

Stanford B 型の早期、遠隔期成績)

南 智行

横浜市立大学医学研究科

外科治療学教室

(指導教員:益田宗孝)

(2)

【背景】 急性大動脈解離は致死的な疾患である.上行大動脈に解離を伴っている急性大動脈解離 Stanford A 型は発症後の致死率が高く,それ故診断後に緊急手術を施行することが一般的 であり,方針として確立されている.一方上行大動脈に解離を伴わない急性大動脈解離 Stanford B 型の治療方法については現在,多くの議論がなされている.一般的に合併症を 伴わない急性大動脈解離Stanford B 型は降圧および安静による保存的加療が基本とされ, 破裂,臓器灌流不全などの合併症を伴う急性大動脈解離Stanford B 型においては緊急外科 的治療が必要であるとされている.急性期以後の大動脈解離Stanford B 型症例は,遠隔期 に大動脈の拡大あるいは破裂が生じることもあり,この際も外科的治療が必要である.発 症時の偽腔形態が合併症発生,あるいは遠隔期大動脈イベントに関与すると報告されてい る.また近年,合併症を伴う急性大動脈解離Stanford B 型に対する緊急の外科的治療とし てステントグラフト治療が注目されており,有用性も報告されている. 【研究1】急性大動脈解離 Stanford B 型の早期,遠隔期成績 【目的】 急性期に入院加療を施行した急性大動脈解離Stanford B 型症例を偽腔形態から偽腔閉塞 型と偽腔開存型の 2 群に分け,破裂,臓器潅流不全の発生率,初期治療成績及び遠隔期治 療成績を明らかにし,偽腔形態がどのように予後に影響するか検討する. 【対象及び方法】本研究は横浜市立大学附属市民総合医療センター心臓血管センターで, 2000 年 1 月から 2010 年 7 月までに急性大動脈解離 Stanford B 型発症時に入院加療を施行 した229 例を対象とした.偽腔閉塞型の症例は 128 例,偽腔開存型の症例は 101 例であっ た.全症例の平均年齢は67±12.2 才,男:女は 155:74 であった. 【結果】偽腔閉塞型では破裂が6 例,臓器血流障害が 4 例,合併症なしは 118 例であった. また,早期死亡は5 例(3.9%:破裂 2 例,腸管虚血 2 例,呼吸不全 1 例)であった.偽腔 開存型では破裂が12 例,臓器血流障害が 19 例,合併症なしが 70 例であり,早期死亡は 6 例(5.9%:破裂 2 例,腸管虚血 4 例)であった.偽腔閉塞型と偽腔開存型の全生存率は各々 1 年 94.7%±2.2%,90.2%±3.2%,5 年 84.3%±4.6%,85.9%±4.3%であり,有意差は 認めなかった(p=0.892).一方大動脈関連 event free rate は各々1 年 85.6%±3.4%, 48.3%±5.5%,5 年 76.0%±5.1%,35.2%±7.2%であり,有意に偽腔開存型で低かった (p<0.001).

(3)

【考察】偽腔開存型では,急性期に破裂及び臓器血流障害の発生が偽腔閉塞型よりも高率 であった.また遠隔期に大動脈関連イベント発生率が高かったが,遠隔期生存率は偽腔閉 塞症例と差がなかった.厳重な経過観察及び加療により,偽腔閉塞型と同等の成績が保た れると考えられた.

Minami, T., Imoto, K., Uchida, K., Yasuda, S., Karube, N., Suzuki, S., Masuda, M. (2013), Mid-Term Outcomes of Acute Type B Aortic Dissection in Japan Single Center,

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【研究2】急性大動脈解離 Stanford B 型破裂に対する緊急治療成績 【目的】

急性大動脈解離Stanford B 型の破裂症例に対して,開胸手術とステントグラフト治療と

を比較し,急性大動脈解離 Stanford B 型破裂症例に対する

Thoracic endovascular

aortic repair

(以下 TEVAR)の有用性,問題点を検討した.

【対象及び方法】横浜市立大学附属市民総合医療センター心臓血管センターで,2000 年 1

月から2012 年 3 月までに急性大動脈解離 Stanford B 型に入院加療を施行した症例は 294 例であり破裂を伴った症例は30 例であった.平均年齢は 71±15 才,男:女は 20:10 で あり,この内23 例に外科的治療を施行した.9 例に対して TEVAR 治療を施行(TEVAR 群)し,14 例に対して開胸手術を施行(Open surgery 群)した.TEVAR の治療方針は 1)primary entry の閉鎖,及び 2)下行大動脈の secondary tear の閉鎖を原則とした. 【結果】TEVAR 群のすべての症例で,初回手術での primary entry 閉鎖は成功し,出血の コントロールも可能であった.手術死亡症例はなく,脳梗塞を1 例で認めた.Open surgery 群では入院死亡を2 例で認め,4 例で脳梗塞を認めた.入院期間は Open surgery 群で長い 傾向があった.TEVAR 群と Open surgery 群の全生存率は 1 年で 71%±17%と 86%±9% であり,有意差は認めなかった.(p=0.89).

【考察】急性大動脈解離Stanford B 型の破裂症例での TEVAR の成績は開胸手術と比べて 遜色がなかった.破裂の治療では出血のコントロールが目的であり,TEVAR治療で primary entry 閉鎖及び下行大動脈の secondary tear の閉鎖を得ることでそれが可能であった.解

剖学的に可能であり,すぐに使用できるのであれば,低侵襲性の優れたTEVAR が急性大動

脈解離Stanford B 型の破裂症例に対する Open surgery に代わりうる術式になり得ると考 えられた.

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Minami, T., Imoto, K., Uchida, K., Yasuda, S., Sugiura, T., Karube, N., Suzuki, S., Masuda M. (2013), Clinical outcomes of emergency surgery for acute type B aortic dissection with rupture, Eur J Cardiothorac Surg, 44, 360-364. より著者改編

(6)

総括 研究1 では,急性大動脈解離 Stanford B 型偽腔開存型は,急性期で破裂及び臓器血流障 害の発生,遠隔期で大動脈イベントが,偽腔閉塞型よりも高率であることが確認された. 一方で厳重な経過観察及び積極的な治療介入により,偽腔開存型は偽腔閉塞型と同等の成 績が得られたことが確認された. 研究2 では,急性大動脈解離 Stanford B 型破裂に対する TEVAR 治療は,開胸手術と比 べ,早期成績,遠隔期成績で差がなく,低侵襲であり,有用な治療手段であることが確認 された 現在,合併症を伴わない大動脈解離Stanford B 型偽腔開存症例での積極的な TEVAR 治 療の有用性は議論中である.亜急性あるいは慢性の,合併症を伴わない大動脈解離Stanford B 型に対する TEVAR と内科的療法の比較は,1 年では差が出なかったとの報告がある (Nienaber et al., 2010).しかし研究 1 の結果からは,偽腔が開存していることによって大 動脈関連イベントが高率におきているため,計画的に偽腔の血栓化を得ておくことが望ま しいと考えられる.研究 2 では TEVAR 治療が開胸手術と比べても遜色ないと確認されて いる.しかしながら遠隔期イベントへの対応の重要性も認識させられた.今後さらに安全, かつ合併症を起こすことなくTEVAR 治療が施行可能となれば,合併症を伴わない大動脈解 離Stanford B 型偽腔開存症例に対しての積極的な治療が行われる可能性が高いと考えられ る.新しいデバイスの開発,今後の大規模研究の展開が期待される.

(7)

引用文献

Nienaber, C.A., Kische, S., Akin, I., Rousseau, H., Eggebrecht, H., Fattori, R., Rehders, T.C., Kundt, G., Scheinert, D., Czerny, M., Kleinfeldt, T., Zipfel, B., Labrousse, L., Ince, H. (2010), Strategies for subacute/chronic type B aortic dissection: The Investigation Of Stent Grafts in Patients with type B Aortic Dissection (INSTEAD) trial 1-year outcome,

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論文目録 Ⅰ 主論文

Mid-Term Outcomes of Acute Type B Aortic Dissection in Japan Single Center. Minami T, Imoto K, Uchida K, Yasuda S, Karube N, Suzuki S, Masuda M. Ann Thorac Cardiovasc Surg. 2013; 19:461-467

Ⅱ 副論文

Clinical outcomes of emergency surgery for acute type B aortic dissection with rupture. Minami T, Imoto K, Uchida K, Yasuda S, Sugiura T, Karube N, Suzuki S, Masuda M. Eur J Cardiothorac Surg. 2013; 44:360-365

Ⅲ 参考文献

Intramural haematoma should be referred to as thrombosed-type aortic dissection. Uchida K, Imoto K, Karube N, Minami T, Cho T, Goda M, Suzuki SI, Masuda M. Eur J Cardiothorac Surg. 2013; 44:366-369

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