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卒業論文

2000 年度(平成 12 年度)

「スポーツ誌のマーケティング戦略」

―スポーツ総合誌の未来を考える―

一橋大学 商学部

学籍番号:

71156

高橋優一

指導教官:早川武彦

(2)

∼もくじ∼

序章 はじめに

………

1

第一節 問題設定

………1

第二節 研究手法

………3

第一章

出版市場の現状

………

5

第一節 出版業界の現状………

5

第二節 発行部数について………

8

第三節 スポーツ誌………

10

第二章

コンテンツからの

スポーツ誌マーケティング戦略

………

13

第一節 仮説の設定………

13

第二節 『

Number』概略………14

第三節 『

SPORTS Yeah!』概略………19

第四節 『

Number』分析

………

21

第五節 分析結果の検証………

26

第六節 比較対象―コンテンツとしての野球………

29

(3)

第七節 総合誌と専門誌………

30

第八節 潜在マーケット………

33

第九節 比較検証―新聞における

コンテンツとしてのサッカー………38

第十節 総括………

42

第三章 スポーツ誌のマーケティング戦略

……

44

第一節 商品としての雑誌の特性………

45

第二節 マーケティング・ミックスと

競争地位別戦略…………

49

第一項 マーケティング・ミックス

………

49 第二項 競争地位別戦略

………

50

第三節 スポーツ誌戦略モデル………

52

第四節 ブランドマネジメント………

54

第一項 先発優位性と後発優位性

………

54 第二項 ブランド基本戦略

………

57 第三項 商品価値構造モデル

………

58 第四項 ブランディング・メディアとしての雑誌

……

61

第五節 ターゲット・マーケティング………

63

(4)

第六節 総括………

65

終章 まとめ

………

67

まとめ………67

論文を終えての反省点、問題点………

70

おわりに………71

参考文献………72

巻末資料

(5)

序章 はじめに

第一節 問題設定

時代の転換点だった。 2000 年 10 月は後世、そう呼ばれるかもしれない。野球からサッカーへ。日本の「国技」が変 わろうとしている。 ミレニアムの ON 対決と騒がれた日本シリーズ。優勝を決めた第6戦の視聴率は36.4% (ビデオ・リサーチ調べ、関東地区)だった。日本シリーズ中継では歴代14 位という記録だっ た。 その 2 日後、10 月 30 日未明、サッカー日本代表がアジア・カップを制覇した。日曜日の深 夜 1 時 20 分からの放映にも関わらず、視聴率は12%(同)。シドニー五輪では準々決勝の対 アメリカ戦で 42.3%を記録している。 ブームとして J リーグが生まれて 7 年。代表の人気は膨らみ、彼らはアジアの頂点に立っ た。 社会を映す鏡が、野球からサッカーへと変わったように見える。(1 ) 『AERA』では「サッカーが国技になった」と題して以上のように特集している。 また 2000 年 12 月 13 日の「ニュース 23」(TBS)では、筑紫哲也氏が野球の衰退に ついて触れた際にこう述べている。 「日本における、最も人気のあるスポーツは野球からサッカーに取って代わるだろう。」(1)と。1 『AERA』(朝日新聞社)2000 年 11 月 13 日号 p9 1 「ニュース 23」(TBS)2000 年 12 月 13 日、「多事争論」より

(6)

テレビ、新聞、雑誌などのメディアにおいてサッカーに触れる機会が年々増えている。 公式スポンサーになった朝日新聞も月に一度、「2002 年サッカーW 杯特集○月号」 と題して二面を使って特集している。限られたスペースしかない新聞にとっての二面と いえばかなりの分量であることは間違いない。 国際情報誌である『SAPIO』さえも、2000 年 11 月 22 日号の「台頭する新ニッポン 人」という一見サッカーには関係ないテーマにおいて、「サッカー『ヤングジャパン』 を世界標準に押し上げた個人技と戦力眼」と銘打って特集している。 1993 年、J リーグ開幕。それ以来、日本のあらゆるメディアがサッカーについて大 きく扱うようになった。それまで月刊だった専門誌は隔週刊から、さらに週刊化し、専 門誌以外の雑誌も多くのページをサッカーに割き、スポーツ新聞や一般紙の一面をサッ カーが飾ることも珍しいことではなくなったのである。サッカー専門誌の老舗である 『サッカーマガジン』(ベースボール・マガジン社)、『サッカーダイジェスト』(日本ス ポーツ企画社)は1992 年に月刊から隔週刊へ、1993 年 10 月 20 日号から週刊化した。 これはJ リーグのニュースをいち早く伝えるためである。

また、私は日頃からスポーツ総合誌『Sports Graphic Number』(文藝春秋・以下 『Number』)を購読しているが、ここ数年ある疑問を抱いてきた。それは、「スポーツ 総合誌」という雑誌にしてはサッカーに関する特集が多いのではないか、ということで ある。雑誌において、サッカーというスポーツは欠くことのできない重要なコンテンツ に成長したのではないか、という問題意識を持つに至ったのである。 こうして、メディアにおけるサッカーの重要性を研究しようと決心した。そのメディア のなかでも雑誌に限定して研究することにする。 雑誌というメディアに注目するその理由は、以下の通りである。 ・ 研究材料としての前例のないテーマであり、取り組む価値があるに違 いない。 ・ 唯一のターゲットメディアである雑誌ならば、作り手と読者の意図が 明確であり汲み取りやすいのではないだろうか。 ・ 自分自身が将来携わる分野であり、雑誌がどうしたら成長していくの かという考察は将来につながるはずである。

(7)

第二節 研究手法

スポーツとメディアの関係において、放送ビジネスとスポーツソフトとの関係につい て論じた著作は、BS デジタル放送の開始も影響して、少なからず存在する。しかし、 スポーツと雑誌メディアとの関係になると、その著作は皆無に等しいと断言してよいだ ろう。 このような状況のため、自らデータや概念図モデルを作成・分析し、それについて検 証するという立場を取った。しかし、それだけでは一学生の主観的な意見に終始してし まい、客観的かつ確証的な主張に欠けてしまうだろう。そこで、実際にスポーツメディ アの最前線に関わる3 人の方々に取材を申し込み、インタビューを行うことにした。そ の3 人とは、株式会社角川書店『SPORTS Yeah!』編集部の中島圭介氏(以下、中島氏)、 株式会社文藝春秋『Number』編集部の川田未穂氏(以下、川田氏)、そして朝日新聞 運動部の潮智史氏(以下、潮氏)である。そのインタビュー内容を参考資料として、第 二章を中心に本文中に引用していきたいと思う。 本論文の全体的な流れとしては、第一章では、スポーツ誌について論じるにあたって まず出版業界について考察する。 第二章では、サッカーというコンテンツについてのスポーツ誌における重要性を確か める。それと同時にスポーツ誌を様々な視点から分析・考察する。具体的な作業として は、まず仮説を設定し、それを実証するためにスポーツ誌の分析を行いデータ化して、 その結果から仮説の成否を検証することにする。 第三章では、雑誌をひとつの商品として一般的なマーケティング戦略に適応させる。 そして、スポーツ総合誌が発展するためのマーケティング戦略について、戦略モデルを 提起してその可能性について考察する。 終章は第三章までの議論を総括し、幕を閉じる。同時に本論文における反省点・問題 点を挙げる。 現在、インターネットの発展とともに雑誌をはじめとした紙媒体の危機が叫ばれてい るが、本論文ではその議論については排除し、雑誌という1つのメディアのなかにおけ る戦略を考察することにする。

(8)

第一章 出版市場の現状

第一節 出版業界の現状

まず、雑誌について語る前に現在の出版業界の現状を『出版年鑑』2000 年版(出版ニュース社)をもとに考察することにする。それでは、最も新しい資料であ る1999 年について分析してみよう。 1999 年の出版界の総売り上げ額は 2 兆 5548 億 2336 万円(対前年比 2.4%減)。前年 の2.3%減とほぼ同率の減少である。これで 3 年連続前年割れとなった。内訳は、書籍 1 兆 420 億 7760 万円(1.8%減)、雑誌 1 兆 5127 億 4576 万円(2.8%減)であった。 書 籍が前年よりは減少率は少なくなったがやはり厳しい数字である。雑誌は前年より1.8 ポイント減少率が大きくなっている。3年連続前年割れというのは初めての経験である。 特に、雑誌が悪いことが、全体に大きな影響を与えているといってよい。 ちなみに、2 兆5000 億円という数字は、1994 年の総売り上げ 2 兆 5400 億円とほぼ同額である。な んと5 年前の水準ということになる。この年の前年比伸び率が 2.3%増であるからいか に悪い数字であるかが分かるであろう。 2.3%増が 2.4%減となったわけだが、この 5 年間の推移をみると1995 年 2.2%増、1996 年 3.6%増、1997 年 0.7%減、1998 年 2.3% 減となる。(【表1‐1】参照) 数字は実態を表しているが、この落差は出版界が大きな 転換期にあることを示している。特に雑誌が減少傾向にあるということは、”雑高書低” で依存度が高い出版界としては深刻といえよう。 創刊雑誌に関しては、前年よりも増加して194 誌(前年 170 誌)となった。また、 休刊誌は148 誌(同 160 誌)と減少している。 創刊誌が増加した理由は売り上げ不振 のなかで出版社が試行錯誤的に新たなジャンルの開拓へ向けて創り続けたことの結果 である。 広告収入を求めての創刊雑誌、といわれた時代もあったが、景気低迷のなかで”成功 した”といえるものは少ない。

(9)

雑誌の売り上げのなかで定価の値上げがほとんどできなかったことも売り上げに影 響しているといえよう。なによりも全体的に低迷した最大の理由である。戦後最低の伸 び率といわれた1999 年は、雑誌低迷の年といっても過言ではない。 ■分類別点数■ 1999 年の雑誌分類別点数は 4396 点収載されている(【表 1‐2】参照) ■部数と実売金額■ 1999 年の推定発行部数は月刊誌が 28 億 8137 万冊(前年比 3.9%減)、週刊誌 20 億 9094 万冊(同 3.7%減)と推計し合計 49 億 7231 万冊。これに、雑誌の平均定価を 434 円として算出すると、総発行定価額は2 兆 1579 億 8254 万円となり、また返品率は約 29.9%であったから、雑誌の実売金額は 1 兆 5127 億 4576 万円(同 2.8%減)となる。 ■出版社数■ 2000 年版に収録されている出版社は 4406 社で前年より 48 社少なくなっている。不 況を反映しこれで2 年連続の減少となった。 出版社4406 社の総実売総金額が約 2.5 兆円であるが、比較対象例として、 トヨタ1 社の売り上げは約 9 兆円である。出版業界がいかに小さな業界であるかという ことが理解できるだろう。 【表1‐1】過去 10 年間の雑誌発行推移 雑誌総発行部数(万冊) 雑誌実売総金額 書籍+雑誌 実売総金額 月刊誌 週刊誌 (万円) (万円) 前年度比 (%) 1990年 248,655 200,664 130,217,139 215,161,750 6.8 1991年 254,871 209,895 134,886,244 227,522,632 5.7 1992年 264,301 211,364 142,659,068 238,466,316 4.9 1993年 280,688 213,900 150,061,956 249,230,193 4.5 1994年 286,863 211,761 151,581,696 254,977,767 2.3 1995年 293,748 217,902 155,521,134 260,502,034 2.2 1996年 302,560 218,773 159,840,697 269,800,802 3.6 1997年 303,165 219,210 157,255,770 267,880,353 -0.7 1998年 299,830 217,128 155,620,363 261,723,069 -2.3 1999年 288,137 209,094 151,274,576 255,482,336 -2.4 [注]『出版年鑑』各年版による。発行部数、実売総金額は推定。

(10)

こうして出版業界の頭打ちの状態が続くなかで、各出版社とも社会情勢の変化、読者 ニーズを踏まえた上で、将来の収益となるような雑誌づくりをさかんに進めているので ある。 現在の雑誌出版に影響を及ぼしている社会トレンドとしては、以下の6つが挙げられ る。 ・世代の交代 これまで雑誌文化をリードしてきた「団塊の世代」の高齢化と「団塊ジ ュニア世代」の台頭 →熟年誌、ティーン誌の充実 ・余暇時間の増大 労働時間の短縮に伴うオフタイムの有効活用、レジャー・リゾートへの 関心の高まり →余暇情報誌、アウトドア情報誌の充実 ・女性の社会進出 →働く女性をターゲットにした雑誌づくり ・国際化の進展 →海外出版社の日本進出、海外雑誌との提携、編集の国際ネットワーク化 ・男女のボーダーレス化 男性の女性化、女性の男性化 →男女の別を意識しない雑誌づくり ・モノからココロの時代へ モノの充足からココロの充足への価値転換 →読者とのコミュニケーション重視、精神面での充足をテーマにした雑誌づくり ・ マルティメディア化の進展 パソコンの普及など →メディアを楽しむための雑誌づくり こうした社会情勢、読者のニーズを満たした雑誌をつくることが雑誌不況、出版不況 を抜け出す第一歩となるはずである。

(11)

第二節 発行部数について

雑誌にとって発行部数というのは、その売り上げを左右する非常に重要な数字であ る。しかし、発行部数と一口で言っても実際にはいろいろな団体が、いろいろな名目で 算出した数字が存在する。主に発行部数には、“公称部数”、“発行部数”、“実売部数” の3つがある。 ■公称部数■ 雑誌が自社で発表している「発行部数」のことを指す。「公称部数」は広告スポンサ ー向け・雑誌同士のライバル関係により水増しした部数で、実態とはかなりかけ離れて いる数字である。 ■発行部数(ABC 部数)■ 社団法人日本 ABC 協会(以下、日本 ABC 協会)の公査員(事務局職員)が発行社 を訪問し、調査・確認した部数を掲載する半年に1 回発表する「雑誌発行社レポート」 での部数のことをいい、最も実態に近いと言われている。別名「ABC 部数」ともいう。 ■実売部数■ 雑誌が実際に何冊売れたかという「実売部数」は、編集部の最も基本的な機密の1 つ であり、編集部によっては編集者の士気に影響するので、具体的な数値を内部の者にも 明かさない場合さえある。

※発行部数を調べるためには

読者が簡単に発行部数を見ることができる資料は限られている。実態に近いといわれ ている日本ABC 協会の「雑誌発行社レポート」は、調査対象となるメディア数は出版 社54 社 101 誌であり、全発行誌の 1 割ほどでしかない。 また、インターネット上で唯一公式で発行部数を公開しているところでは、「社団法 人日本雑誌協会(以下、日本雑誌協会)」が存在する。しかし、ここでの発行部数は「公 称部数」であり、あまり信用できるデータではない。ちなみにデータは年に1 回追加・ 修正が行われている。 雑誌について研究する上で、発行部数を詳しく知ることができないのは致命的でもあ る。どの雑誌が売れているかという物理的な指標がないからである。しかし視点を変え れば、そのことは、「その雑誌の良さは発行部数で測るものではない」と考えることも できるであろう。

(12)

しかし、作り手にとっては最終的には発行部数という数字を考慮しなくてはいけない ものであるし、また透明性を読者に伝える上でも、発行部数はもっと積極的に公表され るべきものであるはずだ。

第三節 スポーツ誌

それではここで、スポーツ誌について分析してみよう。 『出版年鑑』2000 年版に収監されているスポーツ誌は計 301 誌である(【表 1‐2】 参照)。内訳としては、月刊189 誌、月 2 回刊 12 誌、週刊 10 誌、隔月刊 28 誌、既刊 21 誌、その他 41 誌となっている。雑誌総数は 4396 誌であるから全体に占める割合は 6.85%である。最も割合の高い「工学」でも 9.92%であるから、雑誌における 1 つの ジャンルとして、「スポーツ」というカテゴリーが確立されていることは明らかである。 スポーツの種目に関しては、雑誌として発行されていないスポーツはないと断言して いいほど、ありとあらゆる種目のスポーツ誌が発行されている。 【表1‐2】1999 年分類別雑誌点数 ジャンル 誌数 ジャンル 誌数 ジャンル 誌数 ジャンル 誌数 図書 96 風俗習慣 10 宗教 81 短歌 30 総合 76 自然科学 50 音楽舞踊 115 俳句 42 歴史地理 128 医学衛生 436 演劇映画 56 読物 492 政治 61 工学 493 体育スポーツ 301 女性 78 時局外事 60 家事 166 諸芸娯楽 104 青年 5 法律 41 農畜林水 94 日本語 13 児童 189 経済統計 188 商業 108 英語 15 学習参考 11 社会 144 交通通信 160 他外語 7 計 4396 労働 77 芸術 109 文学文芸 109 教育 199 哲学 31 詩 21 【出典】『出版年鑑』2000 年版(出版ニュース社)

(13)

それでは、どんなスポーツ誌があるのか、具体的に分析してみよう。 第二節で述べたが、実数に近い部数を発表している日本ABC 協会の「雑誌発行社レポ ート」には、スポーツ誌はわずか3 誌しか登録していない。(1その3 誌とは『Number』 (文藝春秋)、『週刊 Gallop(競馬)』(産業経済新聞社)、『アルバトロス・ビュー(ゴ ルフ)』(小池書院)である。3 誌しか登録されていないため、多くのスポーツ誌につい ては詳しい概要を知ることはできない。また、公称部数を発表している日本雑誌協会で は81 誌について公開されている。(巻末資料Ⅰ参照)しかし、先に述べたとおり、この 数値は「公称部数」であるので、あくまでも参考程度に留めて欲しい。 この日本雑誌協会公表の表を眺めてみて、私はある問題意識を抱くに至った。サッカ ー専門誌が多いのではないか、ということである。スポーツ誌81 誌のうち、サッカー 専門誌は最多の8 誌である。もちろん、日本雑誌協会によるこの資料だけで判断するこ とは正しくないが、1993 年に J リーグが開幕して以来、サッカーがメディアに露出す る機会が増え、サッカーというスポーツは雑誌においても非常に重要なコンテンツに成 長してきたのではないか、そう感じたのである。 第一章では出版業界についての現状を考察してきた。そして雑誌出版全体におけるス ポーツ誌の規模と位置付けを分析し、コンテンツとしてのサッカーの重要性という問題 提起をした。 第二章では、この考えを仮説とし、分析を試みて検証したいと思う。さて、その分析 材料であるが、専門誌におけるサッカー専門誌について、そのシェアや規模などを分析 するということが理想かもしれない。しかし、発行部数についてそれぞれの専門誌の数 字を得られないため、比較することができないという欠点がある。 そこで、私はスポーツ総合誌に着目することにした。1 つの限られたスポーツではな く様々なスポーツを取り上げる総合誌ならば、その1誌のなかだけにおいて比較するこ とが可能である。スポーツ総合誌と呼べる雑誌は現在は2誌のみ、『Number』と 『SPORTS Yeah!』(角川書店)である。よって第二章では『Number』を中心にして、 様々な視点からスポーツ総合誌誌について分析してみよう。 ここで、本論文における専門誌と総合誌の定義を明確にしておきたい。 専門誌とは、ある1つの限定されたスポーツについて取り上げるスポーツ誌とする。 総合誌とは、ある1つのスポーツに限定されずに複数のスポーツについて取り上げる スポーツ誌とする。 (1 日本 ABC 協会には会社単位ではなく各雑誌ごとに登録する。

(14)

第二章

コンテンツからの

スポーツ誌マーケティング戦略

第二章では、雑誌のマーケティング戦略について、その雑誌を成すコンテンツから 戦略を探っていくことにする。具体的には、スポーツ総合誌である『Number』と 『SPORTS Yeah!』について、様々な視点からの分析を試みる。「コンテンツ」という 言葉の定義は、映像、音楽、出版など様々な媒体を通じて流れる情報の中身のことであ る。

第一節 仮説の設定

ここでまず、仮説を立てる。第二章においてはこの仮説を大前提として、常に考慮し ながら論を進めていくことにする。 第一章・第三節でも少し触れたが、スポーツ誌におけるコンテンツとして、サッカー が重要なソフトに成長したのではないかということである。よって、以下の仮説を設定 した。 また、この仮説に相反する対立仮説も設定しておく。 対立仮説

サッカーの記事は数年前に比べて増加している。

サッカーを特集したときは発行部数が伸びる。

サッカーの記事が増加しているという顕著な実例はない。

サッカー特集と、その際の発行部数には関係性はない。

(15)

第二節 『

Number』概略

スポーツ総合誌を分析する前に、まず『Number』と『SPORTS Yeah!』がどのよう な雑誌であるかということを知ることが必要である。よって、第二節では『Number』 について、第三節では『SPORTS Yeah!』についての概略を述べたいと思う。 まず『Number』という雑誌についての概略を確認することにする。その際、日本 ABC 協会の「雑誌発行社レポート」を参考にする。 ●発行社名 株式会社 文藝春秋 ●創刊年月 1980 年 4 月 ●種別 総合誌 ●発行周期 隔週刊 ●定価 510 円 その特色について「雑誌発行社レポート」で次のように述べられている。 1980 年 4 月、「スポーツを愛する全ての人々へ」というメッセージを込めて船出した『スポー ツグラフィックナンバー』。創刊20 周年を迎え、確固たる雑誌の地位と評価を築き上げてきま した。この間、野球中心だったわが国のスポーツをめぐる状況が劇的な変化を遂げました。J リーグのスタートとサッカーW 杯出場は最も象徴的な出来事ですが、F1、NBA、MLB、競馬な ど、創刊時には一部マニアの関心の対象でしかなかったスポーツ、それも世界中のスポーツ に、世代や性別を越えた人々が感動と共感を分かち合っています。 そんな時代の追い風を受けて、『ナンバー』は指折りの幅広い読者に支持されるメディアへ と成長してきました。勝負の一瞬を捉えた迫力あるビジュアルと研ぎ澄まされた文章を基本と した雑誌づくりが、多くの読者を魅了し続けています。1994 年から、それまでの月2 回発売が 隔週木曜日発売になり、土曜・日曜に実施されたスポーツイベントもいち早く速報できるよう になりました。読者層は、20 代から 30 代の男性が中心で、スポーツ雑誌というよりもスポー ツマインドを持つ若者向けの総合誌という認知が高まっています。(1 ) また、編集長の井上進一郎氏は『編集会議』において、創刊当初の状況と『Number』 の姿勢について次のように語っている。 (1 『雑誌発行社レポート』2000 年 1∼6 月(日本 ABC 協会)

(16)

創刊当初は、どんなテーマを扱うか、どんな切り口にするかなど、試行錯誤の連続でした。 特集主義を全面に打ち出し始めた頃からですね、部数が伸び始めたのは。 テレビや新聞では、人物の内面に迫るにはどうしても限界があるんです。テレビだってごく 一部を切り取って見せているだけで、全てが見えるわけじゃない。新聞は紙面が限られてし まう。雑誌は速報性という部分ではテレビや新聞には劣りますが、その分取材に時間をかけ ることもできる。取材していくと、表からは見えないいろいろなことが見えてくる。「あの場面は 実はこういうことだったんだ」という、核心に迫ることができるんです。読者にもそれを発見で きる喜びがある。そういう隠れた事実の発掘を目指してやってきたんです。(2 ) 読者層については、性別、職業、年齢についての詳細が公表されている。次ページの ようにグラフ化する。 【グラフ2‐1】『Number』読者性別(1) (2 『編集会議』2000 年 6 月号(宣伝会議)p64 1)(2『雑誌発行社レポート』2000 年 1∼6 月(日本 ABC 協会)より作成。 男性 86% 女性 14% 男性 86% 女性 14%

(17)

【グラフ2‐2】『Number』読者職業別(2) 【グラフ2‐3】『Number』読者年齢層(1) (1『雑誌発行社レポート』2000 年 1∼6 月(日本 ABC 協会)より作成。

44%

26%

8%

3%

4%

3%

12%

会社員

学生

公務員

自由業

自営業

教員・研究者

その他

44%

26%

8%

3%

4%

3%

12%

会社員

学生

公務員

自由業

自営業

教員・研究者

その他

16.0 19.7 16.0 13.3 16.8 11.4 4.8 1.3 0.6 0.1 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 2 0 下 2 1 2 3 2 4 2 6 2 7 2 9 3 0 3 4 3 5 3 9 4 0 4 4 4 5 4 9 5 0 上 無 回 答 <年齢> <%> 16.0 19.7 16.0 13.3 16.8 11.4 4.8 1.3 0.6 0.1 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 2 0 下 2 1 2 3 2 4 2 6 2 7 2 9 3 0 3 4 3 5 3 9 4 0 4 4 4 5 4 9 5 0 上 無 回 答 <年齢> <%>

(18)

また、発行部数については、各号の細かい発行部数までは明らかにすることはできな かったが、日本ABC 協会を直接訪問して、半期ごとの平均部数についての数字を知る ことができた。それが次ページの【表2‐4】【グラフ2‐5】である。ちなみに、『Number』 は1994 年から日本 ABC 協会に所属したため、1994 年下期からの数値となっている。 【表2‐4】【グラフ 2‐5】『Number』平均部数(1

期日

部数平均

94年下期 160,511

94年

160,511

95年上期 156,130

95年下期 163,089

95年

159,609

96年上期 162,613

96年下期 161,133

96年

161,902

97年上期 161,482

97年下期 212,910

97年

187,195

98年上期 251,687

98年下期 227,412

98年

239,551

99年上期 186,129

99年下期 203,233

99年

194,681

00年上期 183,430

平均

185,813

【グラフ 2‐1】、【グラフ 2‐2】、【グラフ 2‐3】、【表 2‐4】、【グラフ 2‐5】、につ いては第二章・第四節以降において、随時、解説・分析していくこととする。 (1日本ABC 協会事務局次長、大郷睦夫氏から提供していただいた資料から作成。 『Number』平均部数 140,000 150,000 160,000 170,000 180,000 190,000 200,000 210,000 220,000 230,000 240,000 250,000 260,000 270,000 9 4年 下 期 9 5年 上 期 9 5年 下 期 9 6年 上 期 9 6年 下 期 9 7年 上 期 9 7年 下 期 9 8年 上 期 9 8年 下 期 9 9年 上 期 9 9年 下 期 0 0年 上 期 『Number』平均部数 140,000 150,000 160,000 170,000 180,000 190,000 200,000 210,000 220,000 230,000 240,000 250,000 260,000 270,000 9 4年 下 期 9 5年 上 期 9 5年 下 期 9 6年 上 期 9 6年 下 期 9 7年 上 期 9 7年 下 期 9 8年 上 期 9 8年 下 期 9 9年 上 期 9 9年 下 期 0 0年 上 期

(19)

第三節 『

SPORTS Yeah!』概略

次に、もうひとつのスポーツ総合誌である『SPORTS Yeah!』という雑誌の概略につ いて確認する。『SPORTS Yeah!』は創刊されて間もなく、部数などの詳細はどの公表 機関にも発表されていないため、それを把握することはできない。よって、中島氏のイ ンタビューを参考にする。 ●発行社名 株式会社 角川書店 ●創刊年月 2000 年 9 月 ●種別 総合誌 ●発行周期 隔週刊 ●定価 480 円 その特色について、中島氏は次のように述べている。 最 初 に ま ず、『Number』に対抗する雑誌を創りたいという考えがありました。しかし、 『Number』と同じことをやっていたら当然売れないので、その違いは何かというと、読者に分 かりやすいスポーツの情報を提供するということです。『Number』というのはどちらかといえ ば試合が終わった後に、「実はその裏にはこういうことがあった」ということを伝えるものだけ ど、一方で『SPORTS Yeah!』の場合は反対に、前打ちといって、「こういうところが見所です よ」とか、「こういう情報を知っていればスポーツを楽しく見られますよ」など、そういう前打ち の姿勢というのが『Number』よりも強いです。だから、読者に何を伝えたいかといったら、その スポーツ自体の持っている魅力を伝えたいというふうに思っている性格の雑誌ですね。私が 思うのは、スポーツというのは読むものではなく、見るものなのではないかということです。で すからスポーツは見るものだと仮定した場合、『SPORTS Yeah!』が生き残るためには、その 見るためのガイドとなって、「こういうところが見所ですよ」などと伝えることにテーマを絞った のはなかなかいい観点だと思います。だから、読むスポーツを確立したのは『Number』であ るけれど、見るためのスポーツの指針として『SPORTS Yeah!』が手助けするという差別化を 計らなければなりま せ ん。しかし前打ちばかりだとただの情報誌になってしまうので、 『Number』とは差別化するけれども、『Number』と共通している部分、いわゆる検証の部分で すね、そういう点も大切にしていく、そういう姿勢です。

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読者層については、「創刊当初から一貫して 20 代から 30 代の男性というターゲットに絞 ってやってい」るという。また、発行部数については、「公称部数は一応 15 万部となって いますけど、実際はそれの半分以下だと思います。」と述べている。 以下の表はこれまで(2001 年1月現在)に発売された号の特集をまとめたものであ る。

【表

2‐6】『SPORTS Yeah!』特集ジャンル・タイトル

号数 特集ジャンル

特集タイトル

2000年 1号 オリンピック SYDNEY2000 ニッポン新たなる挑戦

2号 オリンピック Sydney Climax

3号 オリンピック ニッポン戦いの全て

4号

野球

永遠の対決

5号

サッカー

クラブチームサッカー最新レポート

6号

サッカー

日韓W杯予選特集

7号

格闘技

格闘新世紀

8号

サッカー

日本サッカー世界へ

2001年

9号

サッカー

SERIE A特集

10号

総合

2001年主役の証言

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第四節 『

Number』分析

第四節では『Number』について実際に分析を試みる。そして、『Number』の分析結 果から、その仮説の成否について検証していく。 分析 分析としては、『Number』の特集について各スポーツの特集回数を調べることにす る。『Number』というのは特集主義を採用しており、各号はある1つのスポーツを中 心に取り上げている。故に、その特集回数を調べることによってその時々に読者が求め ている読みたいスポーツは何なのか、またそれは発行部数にどのような影響を及ぼして いるのかが明らかになるのではないか、と考えたからである。 その分析結果が巻末資料Ⅲである。1989 年から 2000 年までの 12 年間、計 301 号に おける、その特集スポーツのジャンル、タイトルについてデータ化した。『Number』 は1980 年創刊であるのにどうして 1989 年からの分析であるかというと、1989 年を含 めたそれまでの10 年間においては、サッカー特集が全く見当たらないということであ る。ここでは、サッカーを中心に分析していくので、そうした分析方法を採った。 次ページからの【グラフ 2‐7】は、特集におけるサッカーと野球の比率を年別にま とめたものである。野球についても分析したその理由は、1989 年以前の『Number』 は野球が中心であり、それがサッカーの台頭によってどのように影響されてきたのかを 測る意味でも、サッカーとの比較対象として最適であると判断したからである。 野球 については第六節で詳しく言及する。また、【グラフ2‐8】はその比率の 12 年間の推 移である。

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【グラフ2‐7】『Number』特集比率(1989 年∼2000 年)(1) (1 巻末資料Ⅲより作成。 1989年 野球 38% サッカー 0% その他 62% 1989年 野球 38% サッカー 0% その他 62% 1990年 野球 28% サッカー 5% その他 67% 1990年 野球 28% サッカー 5% その他 67% 1991年 野球 23% サッカー 5% その他 72% 1991年 野球 23% サッカー 5% その他 72% 1992年 野球 22% サッカー 5% その他 73% 1992年 野球 22% サッカー 5% その他 73%

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1993年 野球 22% サッカー 13% その他 65% 1993年 野球 22% サッカー 13% その他 65% 1994年 野球 19% サッカー 27% その他 54% 1994年 野球 19% サッカー 27% その他 54% 1995年 野球 24% サッカー 16% その他 60% 1995年 野球 24% サッカー 16% その他 60% 1996年 野球 25% サッカー 21% その他 54% 1996年 野球 25% サッカー 21% その他 54%

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1997年 野球 21% サッカー 30% その他 49% 1997年 野球 21% サッカー 30% その他 49% 1998年 野球 15% サッカー 34% その他 51% 1998年 野球 15% サッカー 34% その他 51% 1999年 野球 17% サッカー 35% その他 48% 1999年 野球 17% サッカー 35% その他 48% 2000年 野球 16% サッカー 40% その他 44% 2000年 野球 16% サッカー 40% その他 44%

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【グラフ2‐8】『Number』特集比率の推移(1

第五節 分析結果の検証

それでは、これまでのグラフや表を参考にして、仮説を検証してみよう。 まずは、単純に特集記事の比率についてであるが、【グラフ2‐7】や【グラフ 2‐8】 から明らかなようにサッカーの特集が年々増加しているのは一目瞭然である。1989 年 までは全く取り上げられていなかったが、2000 年には 40%までに達している。 それでは、どうしてこれほどサッカーの特集が増加してきたのか、またこの増加は発 行部数にどのような影響を及ぼしているのだろうか。 川田氏はコンテンツとしてのサッカーの重要性を次のように述べている。 はい、確かにそう言えます。『Number』では、サッカーというのは、J リーグが開幕する前ま でには、釜本選手が引退した時のたった1回しか特集していないのですね。だから、J リーグ 開幕、フランスW 杯出場、日韓W 杯開催決定など、大きな出来事を経験して、特集の頻度は1 【グラフ 2‐8】より作成。 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 1 9 8 9 1 9 9 0 1 9 9 1 1 9 9 2 1 9 9 3 1 9 9 4 1 9 9 5 1 9 9 6 1 9 9 7 1 9 9 8 1 9 9 9 2 0 0 0 ︿ % ﹀ 野球 サッカー 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 1 9 8 9 1 9 9 0 1 9 9 1 1 9 9 2 1 9 9 3 1 9 9 4 1 9 9 5 1 9 9 6 1 9 9 7 1 9 9 8 1 9 9 9 2 0 0 0 ︿ % ﹀ 野球 サッカー

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急速に増えてきたのです。編集部にも「サッカーの特集が多いのではないか」という意見はあ ります。しかし、日本におけるプロスポーツというのは野球とサッカーぐらいしかありません。 まあ、ゴルフやテニスもありますが、それらはDo Sports、つまり自分でやるスポーツとしての 認知度のほうが高いですよね。一方、観るスポーツとして定着してきたのはこの2つ(野球と サッカー)しかないわけです。そして、野球に比べてサッカーの特集が多い理由としては、サ ッカーというのは世界観があるのです。世界中の国にリーグがあり、W 杯も存在する、そうい う意味で扱いやすい素材であるといえます。 【グラフ2‐5】をみると、『Number』の発行部数は 1997 年上期から 1998 年上期に かけて急激な上昇を遂げている。この時期は【グラフ 2‐8】においてもまさにサッカ ーの特集が増加している時期に重なっている。 この時期にサッカー界で何があったかというと、1997 年 11 月のフランス W 杯最終 予選や1998 年 6 月の日本が初出場したフランス W 杯開催など、日本サッカー界にと っては歴史的な出来事が起こっていたのである。それに伴って『Number』の発行部数 にも影響して「異常に売れ」(川田氏)るという結果になったのである。 その当時の状況を川田氏は次のように述べている。それと同時に、1999 年上期と 2000 年上期の発行部数が相対的に減少しているが、それに関しても同時に触れている。 (1999 年上期の減少については)何のイベントもなかったからです。減少といっても前年の 1998 年が売れすぎただけで、それ以前に比べれば二万部ほど底上げされています。それだ けリピーターである読者が増加したわけです。そして、2002 年の W 杯が終わった後にまた少 し底上げされればいい、そういうふうに捉えています。1998 年というのはスポーツ界にとって も『Number』にとっても激動の年でしたね。スポーツ誌がこれほど売れるのはおかしいですよ。 スポーツ誌の規模は雑誌全体を考えると非常に小さいのです。 (2000 年上期の減少については)それは今年(2000 年)はスポーツの大きなイベントがなか ったからです。1998 年は長野オリンピックやフランスW 杯があって異常に売れました。それま で 15 万部前後で売れてきたのが一気に20 万部以上に上がりました。今年はシドニーオリン ピックがありましたが、自国開催でないと、オリンピックというのはあまり強いコンテンツでは ありません。そういった意味からは、今年はまずまず好調といえると思います。広告収入など を含めた全体的な売り上げでいけば、非常に利益をあげていますし。だから、日本ABC 協会 の数字だけでは全ては判断できません。編集部にとってもこの減少は特に問題ではなく、 「2002 年にはまた上昇するだろう」という考えです。 1998 年 4 月 23 日付けの東京新聞では、フランス W 杯開催に伴う出版ブームについ て次のように書かれている。

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東京・千代田区の書店では入り口近くの一角にサッカー関連本が積み上げられ、雑誌コー ナーにも特集号や保存版が並んでいる。店頭に並んでいる書籍は約55 種類に上り、雑誌の 特集号や保存版などは約35 種類刊行されている。大手取次店「日販」文化広報室の小池佳 世さんは、「平成に入って以降、特定の出来事に関する出版ブームで、今回をしのぐものは なかった」と話している。(1) この記事から、フランスW 杯に対する当時の盛況がいかに大きかったのかが伺える。 その出版ブームのなかで『Number』も然り、サッカー界の大きなイベントによって 発行部数が影響されてきたのである。この傾向は 2002 年の日韓 W 杯の時にはさらに 顕著に表れることは想像に難くないだろう。川田氏はオリンピックについて、自国開催 の際のコンテンツとしての強さを述べているが、それは同じ世界的イベントである W 杯についても同様にいえるであろう。 それでは、もう一方の総合スポーツ誌である『SPORTS Yeah!』としては、コンテン ツとしてのサッカーに関してどう考えているのであろうか。 やはり2002 年の日韓 W 杯に向けて、サッカーというのが盛り上がっていくのはもう明らかで す。サッカー以外のスポーツでそういった世界的なイベントはないですよね。読者アンケートを 取ってもサッカーに関しては需要が非常に高いです。サッカーというのは見る人それぞれの 視点を入れ込めるスポーツですね。また、選手が海外に移籍すれば、その移籍したリーグに ついて特集するというように、コンテンツとしての可能性が広がっていくのです。(中島氏) 『SPORTS Yeah!』においても、サッカーの重要性は明らかなようである。【表2‐6】 にあるように、やはりサッカーの特集が多くみられるのがわかるであろう。シドニーオ リンピックを機会に創刊された『SPORTS Yeah!』ではあるが、それ以後はサッカー特 集が中心となっている。 ここまで検証してきたが、最初に設定した仮説は果たしてこれで立証できただろうか。 もう少し様々な視点から探ってみることにする。1 『東京新聞』1998 年 4 月 23 日付

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第六節 比較対象―コンテンツとしての野球

サッカーとの比較対象として、野球についても分析を試みる。【グラフ2‐7】、【グラ フ 2‐8】からわかる通り、サッカー特集の増加と入れ替わるように野球の特集は年々 減少している。その比率が初めて逆転したのがJ リーグが開幕した 1994 年である。1980 年の創刊から続いてきた『Number』における野球のシェアは 1989 年の 38%をピーク に、近年は15%近くまでに衰退してしまっている。特に、フランス W 杯が開催された 1998 年には最も低い 15%であった。まさに、これまで『Number』における特集の中 心であった野球はサッカーに取って代わったと断言してもよいのではないだろうか。 野球衰退の原因としては、 「野球ファンにおけるかなりの比率を占める巨人ファンというのはあまり雑誌を買わない傾 向があります。テレビなど他のメディアによって十分報道されているからです。まあ、買ってい るとしても年齢層は高いです。極端に売れていないわけではないです。野球は、現在のまま ではいけないという意識はありますが、われわれにはどうすることもできません。コンテンツと してサッカーが重要になってきたけれど、それはマスコミが恣意的に煽ってのではなく、サッ カーという競技自体が努力した結果ですね。」(川田氏)という。 また、『SPORTS Yeah!』に関しても、 「野球の日本シリーズを特集した号(4 号)がもっとも売れなかったのです。これは顕著な現 象で、野球のファンというのは平均年齢が高く、40 歳近いのですね。一方、サッカーというの は 10 代から 20 代、30 代近くまでに人気があって、どの層が『SPORTS Yeah!』を買うかという とやはり 30 代までの人なんです。すると、野球のようないわゆる「おやじスポーツ」を特集し ても若い人は買わないですね。」(中島氏)という意見もある。 野球はシーズン中ほとんど毎日試合が行われるため、『Number』や『SPORTS Yeah!』 などの隔週刊の雑誌には適合しないのではないか、そう考えたところ、 「確かにそうです。だから、試合内容ではなくて選手個人に焦点を絞るしかないですね。ま た、スポーツ新聞を見れば結果などが詳しく書いてあるので、そこでは取り上げられないよう な選手の心の動きとかそういうことをやっていかなければ、特集としての野球は成り立たない ですね。」(中島氏)ということである。 しかし、サッカーがJ リーグ開幕やフランス W 杯開催を機に野球を抜き去ったこと

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と同様のことが、野球にも起こり得る可能性はもちろん秘めているわけである。野球に ついての詳しいコンテンツについてはここでは触れないが、そうした現象を巻き起こす ためにも、野球界の奮起が期待されるだろう。

第七節 総合誌と専門誌

ここまで、スポーツ総合誌におけるサッカーの重要性について分析、検証してきた。 そして、サッカー特集とその際の発行部数に関連性があることもグラフやインタビュー 内容などからほぼ立証することができた。 ここで、ある提案を思い抱くに至った。それは、サッカー特集で部数が伸びるのなら ば、極端な手法ではあるがスポーツ総合誌ではなくサッカー専門誌に切り替えてしまっ てはどうか、ということである。 サッカー専門誌の代表的なものとしては、『サッカーマガジン』(ベースボール・マガ ジン社)や『サッカーダイジェスト』(日本スポーツ企画社)などがあるが、日本雑誌 協会公表の資料(巻末資料Ⅰ参照)によれば、発行部数はそれぞれ43 万部となってい る。もちろんこれは公称部数であるために正確ではない。それを考慮して、スポーツ誌 のなかで比較してみても、発行部数の多い雑誌といえるのではないだろうか。 こうした考えを中島氏と川田氏に提案した。 ―どうして専門誌ではなく総合誌でいくのですか? まず、専門誌を創れるスタッフがいるかどうかという問題があります。また、サッカー専門誌 というのは、現在は数も多いし、『サッカーマガジン』や『サッカーダイジェスト』がある程度の 部数を確保していることからも、かなり成熟した市場だと思います。それに比べてスポーツ総 合誌というのは『Number』しかなかったので、まだ入り込む余地があると考え、そこをターゲッ トとして絞ればサッカー専門誌以上の部数を期待できるのではないかということです。または、 『SPORTS Yeah!』が参入して市場を成熟させるということは、それとともにそのマーケット自 体が拡大していく可能性もあるわけで、それに賭けたということもいえると思います。(中島 氏)

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―総合誌と専門誌のメリットとデメリットはなんですか。 『サッカーマガジン』などの専門誌は、記者がそのスポーツだけを取材しているので、内容 が 詳 し す ぎ て 一 般 の 読 者 に は つ い て い け な いという場 合 が あります。それに比べて 『Number』を作っているわれわれは普通の人間だから読者と同じ視点から作れますよね。デ メリットとしては、専門誌の記者よりも知識に乏しいという点がありますが、それならば詳しい ライターを雇うなどして補っています。メリット、デメリットというのはいろいろあるとは思います が、スポーツを伝えるということは本質的にはそれほど変わらないのではないでしょうか。技 術やルールが変化しても選手のモチベーションや喜怒哀楽などの気持ちというのは変わらな いですよね。スポーツ文化というのはトータルなもの、総合的なもので、専門誌では伝えきれ ないものもあるはずだから、総合誌のままでいいと思います。(川田氏) ―しかし、サッカーを特集すれば部数が伸びるわけですよね。 それは確かにそうです。2001 年はさらに特集が増えますね。しかし、だからといってサッカ ーばかりをやるというのも問題があるので、『Number PLUS』という形で出すわけです。(川田 氏) ―極端ですが、『Number』をサッカー雑誌にしてしまうという考えについ てはどう思いますか。 もしも、そうしてしまったらサッカー以外のスポーツのことを知ることができなくなってしまい ますよね。それに、野球などの他のスポーツを特集した時にもそれなりに売れますし、いろい ろなスポーツを好きな読者が『Number』を支えてくれていると思います。サッカーを特集したと きでも、その読者の半分以上は、サッカーだけが読みたいという読者ではないですね。格闘 技の特集は買うけどサッカーの特集は絶対に買わないという読者もいるだろうし、つまり、毎 号買ってもらうというのは難しいかもしれませんね。じゃあ、いくつかのスポーツを満遍なく均 等に取り上げればいいかといえばそういうわけにもいきません。スポーツによってそれぞれ 規模や時期が全く違うので同じスペースで割るということは不可能です。それはもうしょうが ないです。だからその時々の旬なスポーツを取り上げていくのです。しかし、サッカーだけに なることはあり得ません。例えば、『anan』で木村拓哉を表紙にすれば売れるらしいのですが、 かといって毎回毎回彼が表紙というわけではないし、または女性誌でもメイク特集は売れる けど、メイク雑誌には絶対にならない、それと同じことだと思います。(川田氏)

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なるほど、やはりスポーツ総合誌にもサッカー専門誌にもそれなりのメリット・デメ リットがあり、それぞれが独自のコンセプト、読者に伝えたいメッセージなどを持って いるように、発行部数だけにとらわれない視点もまた重要であるということである。 また、ここで総合誌と専門誌のどちらがよいかということを断言できないその理由は、 総合誌である『Number』と専門誌である『サッカーマガジン』や『サッカーダイジェ スト』の正確な発行部数を比較することができないからである。

第八節 潜在マーケット

第八節では、読者層に注目してみよう。 【グラフ2‐1】、【グラフ 2‐3】から、『Number』の読者層は、性別では男性がほと んど(86%)で、年齢層も 35 歳未満だけで 81.8%を占めている。この層がいわゆるコ ア・ターゲット(core target)である。 『SPORTS Yeah!』についても、「創刊当初から一貫して20 代から 30 代の男性という ターゲットに絞ってやっている。」(中島氏)ことから、コア・ターゲットは『Number』 とほぼ同じであると考えてもよいだろう。 発行部数を伸ばすためには、このコア・ターゲットをさらに膨らますことも重要であ ろうが、しかし、スポーツ総合誌のさらなる発展のためにはコア・ターゲット以外の層、 つまり潜在マーケットを開拓することも戦略のひとつとしてまた重要ではないだろう か。 そこで私は潜在マーケットとしてまず「女性」に注目してみた。『Number』の女性 読者が 14%しか存在しないように、女性読者をさらに獲得できればスポーツ総合誌の 市場全体を大きくすることができるのではないか、そう考えたのである。しかし、 女性読者については全く意識していません。潜在マーケットとしても女性に読んでもらおう という考えはなく、創刊当初から一貫して20 代から 30 代の男性というターゲットに絞ってやっ ています。つまり、部数を増やすためには、新たな層を開拓するのではなく、既存のターゲッ トのなかで、その層の読者をいかに増やしていくか、ということです。少し年代を広げようとし て、野球や競馬を特集すると、今度はコアな層が逃げていってしまう、そういう難しさがありま す。女性の読者に関しても、同じことが言えますね。だからまだそういう時期ではなく、まずは 最初に定めた特定のターゲットに向けて定着させなければならないと思います。(中島氏)

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男性のアスリートのメッセージを加工して女性に伝えていくということもできますけど、なん といっても女性はミーハーすぎますね。それだったら、女性アスリートを取り上げて共感させる というほうがいいです。しかし、日本の女性選手は本当に自立できているかというと疑問です。 きちんとプロとしてやっていく意識があるか、そういう意味でいったら、まだまだアスリートとし ての意識に達していないし、見る側の目も肥えていないですね。また、女性の選手とは話す 機会があるのですが、オリンピックでメダルを取った選手にせよ、企業に所属する選手にせよ、 考えが未熟で甘いです。指導者にしても、ソフトボールの宇津木さんやシンクロの井村さんな ど優れたコーチはいますが、それでも数えるほどしかいません。そういう意味で、「女性が活 躍したからじゃあ特集しよう」というのは表面的な考えではないか、そう思います。あくまでも 私の考えですけど。まあ、未開拓の分野なのでこれからですね。(川田氏) 予想外の答えが返ってきた。現場の意見としては、女性読者はターゲットとしてはあ まりふさわしくないらしい。『SPORTS Yeah!』については創刊して間もないため、ま ずはコア・ターゲットに向けて発信してその地盤を固めるという戦略は理解できる。し かし、創刊から 20 年もの年月を経た『Number』はどうであろうか。川田氏や編集長 の井上氏は同じようなことを述べている。 ある層に向けて創っているという意識はありません。マーケティングはほとんどやっていま せんね。編集部の人間がそういう世代の編集者なので、自分たちがおもしろいと思ったもの を創っています。(川田氏) 雑誌の多くで導入されているマーケティングも『Number』ではほとんど行っていません。つ まり、作る側としては読者層を特に意識していません。読者の半分は10 代から20 代ですが、 10 代はもちろん昔から読んでいる40∼50 代の読者もいる。それだけ幅広いとマーケティング も意味がありません。自分たちがおもしろいと思うものを、読者にどうやって発信していくか。 これが基本的な考え方です。(井上氏) やはり、20 年間の努力によってある程度の読者は根づいているという自負があるの であろうか。余裕に近いものが感じられる。 また、この二人の意見には、ある特定のターゲットに向けた極端な誌面づくりをする と、それ以外のターゲットが逃げてしまうという中島氏の見解を含んでいるのではない だろうか。この点こそがスポーツ総合誌の難しい論点なのである。 女性読者に論点を戻そう。ここで、女性をコア・ターゲットしているサッカー専門誌

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の例を挙げる。『サッカーai』(日刊スポーツ社)である。『日本サッカーは本当に強く なったのか』(中央公論社)のなかで荻島弘一編集長はその狙いについて語っている。 完全に若い女性層にターゲットを絞っています。類似誌が存在しなかったのでそうしたの ですが、サッカーに興味はあるけれども『サッカーマガジン』は難しいという人に読んでほしい という思いもありましたし、女性ファンを増やすのも、たとえ最初はミーハー人気であっても、 サッカーを見る層を増やすためにもそういう雑誌は必要だという動機でした。(1 ) このように女性をコア・ターゲットとして成立しているサッカー専門誌も存在するの である。ということは市場として成り立っているわけだから、スポーツ総合誌にとって も開拓する価値と可能性はあると考えてもよいのではないだろうか。 そうはいっても、『サッカーai』の場合は専門誌であるからそれができるのであって、 先ほども触れたように、総合誌にはそうした誌面づくりができないのである。 であるから、潜在マーケットとしての女性は、スポーツ総合誌を発展させるための可 能性のひとつとして今後も考察していく必要があるだろう。 もうひとつの潜在マーケットとして川田氏は「子供」を提起している。 私は潜在マーケットとしては「子供」だと思います。例えば、サッカーが強くなった理由は、 ナショナルトレーニングセンターをきちんと整えてセレクションを行ったり、コーチの強化を推 進したり、子供にあたる部分に力を注いできて、こうした草の根レベルからの努力が実を結 んだんですね。そういうことから、女性よりも子供のほうが重要だと思います。例えば、サッカ ーの中村俊輔選手。子供たちにはとても人気があるのですが、彼らは新聞を読まないし、 『Number』もそうだけど、これまでのスポーツ誌は大人向けだし、情報を知りたいと思っても 知れないわけです。しかし、知りたいという欲求はあるわけだから、そういうニーズを満たす ことができる雑誌を創りたいと思っています。(川田氏) 川田氏の言う「子供」とは何歳未満をいうのかはわからないが、仮に「子供」を 15 歳未満と定義した場合、『Number』というのは「子供」向けとはいい難いし、彼らに とっては、文章が多い「読みもの」であろう。しかし、かといって『Number』を「子 供」向けにするわけにはいかない。そこで、『Number』とは別の「子供」向け『Number』 を創るというのである。なるほど、それによってスポーツ総合誌の市場が拡大する可能 性もあるだろう。 (1大住良之/後藤健生日本サッカーは本当に強くなったのか』、2000 (中央公論社)p157

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また、「高齢者」という潜在マーケットについてはどうであろうか。 第一章・第一節において、世代交替という社会情勢の影響によって熟年誌の充実につ いて述べた。やはり、この少子高齢化の時代にあってますます多くなるであろう「高齢 者」という層は、スポーツ誌にとっても無視のできない存在であることは間違いない。 しかし、『Number』などは字数も多く、「高齢者」に優しい雑誌とはいい難いだろう。 「女性」、「子供」と同じように、市場を拡大するための可能性のひとつとして「高齢 者」という層について考察していくことも非常に重要であろう。 最後に、この節で考察した読者層についてのモデルを構築して終わる。 【図2‐9】スポーツ総合誌読者概念図モデル

(20∼30 代の男性)

女性

子供

サッカー

野球

高齢者 コア・ターゲット 潜在マーケット

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※ コア・ターゲットとは20 代∼30 代の男性であり、そのなかにそれぞれ のスポーツ が大小異なって存在する。様々な種類のスポーツが好きな読者もいれば、あるひとつ のスポーツだけが好きな読者もいる。そして潜在マーケットとして、「女性」や「子 供」、「高齢者」など、これから成長する余地のあるマーケットが存在する。

第九節

比較検証―

新聞におけるコンテンツとしてのサッカー

第九節では、雑誌との比較対象として、マスコミ四媒体のひとつである新聞について の分析を試みる。新聞におけるコンテンツとしてのサッカーの重要性はどうなっている のか、ということである。その際、朝日新聞運動部の潮智史氏へのインタビューを参考 にする。 まず、新聞におけるコンテンツとしてのサッカーの重要性について聞いてみた。 1993 年に J リーグが開幕して以来、どの新聞も一斉に取り上げはじめました。しかし、サッ カーがどれだけ重要であるかというのは今のところ判断の最中であるといえます。例えば、 シドニーオリンピックにおいて、サッカーはメダルを獲得できなかったけれどあれだけ大きく取 り上げられて、一面にも何回も登場しました。しかし、我々には賛否両論の意見があって、こ こまで大きく報じるべきなのかという意見もあります。だからとりあえずは、2002 年の W 杯が 終わってその後、それぞれの新聞がどう扱うかというのは変わってくると思います。 では、将来的にサッカーが記事の中心になる可能性はあるのだろうか。 別に中心とか一番になる必要があるとはあまり感じていません。様々な競技に関心のある 人がそれぞれいるわけで、それを数字にするとたまたま野球、サッカー、相撲などが突出す るだけです。例えば、サッカーの人気が一番と言うけど、じゃあサッカーの人気って一体何な んだろうと考えた時に、果たして野球の人気は減るのかというと決してそういうわけではない だろうし、それぞれの競技をできるだけ幅広く扱えるようになれればいいなと考えています。 結局、Jリーグが開幕してサッカーの扱いが増えたことで、それまでは載せていたある競技が

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載せられなくなったりとか、小さくなってしまったという、それは明らかなことです。できれば、 そういうサッカー偏重になるのではなく、関心がないスポーツが載っていても、「ああこういう スポーツも楽しそうだな」ということを読者に思ってもらえるような紙面を作ることが使命、役 割だと思います。 なるほど、潮氏のこの発言には、新聞というのは限られたスペースのなかで伝えたい ことを伝えなくてはならない、という新聞の特性を考慮してのものだろう。 東京新聞社の財徳健治氏は、前出の『日本サッカーは本当に強くなったのか』(中央 公論社)のなかで、サッカーの記事を書くときの難しさを次のように述べている。 サッカーは野球と違って絶えず動いているスポーツでしょう。例えば、絶好調のストライカ ーに最初にボールが渡ったときに、相手チームのディフェンダーが素晴らしいタイミングで当 たっていってボールを奪ったプレーが、その後の試合の流れを決めたかもしれないわけです。 でも、そんなことを書いてある記事にはまずお目にかかれない。試合全体を通して、勝敗を 決める伏線となるプレーはあるにもかかわらず、そういう捉え方のできる記者がまず少ないし、 そんなことを書いてもわかりにくいと言われて喜ばれない。ついつい派手なゴールシーンだ けを書いてしまう。実際、その試合をあまさずに描くには、一般紙の限られたスペースでは難 しい競技だな、ということがあります。(1 ) また、読者ターゲットが明確に定めてある雑誌と違って、新聞はスポーツ欄以外にも 政治・経済・社会などあらゆる分野の記事が掲載されているわけで、その読者層も不特 定多数に及んでいる。スポーツに詳しい読者もいれば、スポーツに関して全く無知な読 者もいるわけである。この点について潮氏は次のように述べている。 J リーグが開幕した当初、「ハットトリック」という言葉を載せたところ、「それはどういう意味 だ?」という問い合わせがきたんですね。となると、「じゃあヒットエンドランは分かります か?」なんていうことになってしまう訳ですよ。そこは難しいところですが、バランスを取りなが らやっているつもりです。しかし、新聞というのはある部分では読者を啓蒙するというか、そう いう役割も持っていると思うので、偏ることなくバランスを取りながらですね。例えば、J リーグ を 10 年 20 年の長い目で見て、少し難しいけど読者の興味を引くような書き方とか、少し専門 的なことに触れたりとか、そういうことを重ねていくことがとても大事だと思います。また、サッ カーの本質を伝えるために、こういう見方もありますよとか、ひとつブロックを積み上げていく ような感じで、読者の興味をより引き上げたりとか、そういう文章の書き方など、バランスを取1 大住良之/後藤健生日本サッカーは本当に強くなったのか』、2000 (中央公論社)p159

参照

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いない」と述べている。(『韓国文学の比較文学的研究』、

たRCTにおいても,コントロールと比較してク

析の視角について付言しておくことが必要であろう︒各国の状況に対する比較法的視点からの分析は︑直ちに国際法

検討対象は、 RCCV とする。比較する応答結果については、応力に与える影響を概略的 に評価するために適していると考えられる変位とする。

(79) 不当廉売された調査対象貨物の輸入の事実の有無を調査するための調査対象貨物と比較す

電気事業については,売上高に おいて販売電力量を四半期ごとに 比較すると,第1四半期・第3四