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ブランドマネジメント

ドキュメント内 橡卒業論文全体.PDF (ページ 49-57)

第三章  スポーツ誌のマーケティング戦略

第四節    ブランドマネジメント

第一項  先発優位性と後発優位性

ここでは、『Number』を先発ブランド、『SPORTS Yeah!』を後発ブランドとして、そ の優位性について検証する。

  

<先発ブランドの優位性>

  マーケティング競争においては、先発製品が後発製品よりも有利な立場を閉める傾向 にある。これは先発優位性と呼ばれ、ある特定市場へ最初に参入した製品のほうが、後 から参入した製品よりも大きな利益や大きな市場シェアを獲得できることを意味して いる。こうした先発優位性はなぜ生じるのだろうか。

  第一に、消費者(読者)の心のなかに「参入障壁」を形成できることである。ある製 品市場に真っ先に参入したブランドは、当該製品カテゴリーとの間に強い結びつきを生 み出すことができる。

→『Number』はもちろんスポーツ総合誌の先駆けであるから、「スポー       ツ総合誌といえば『Number』」という意識を消費者に認識させること

  ができた。

 

  第二に、経験効果を得られることである。モノの生産では、累積生産量が増えれば増 えるほど単位当たりのコストが低下する。競争相手よりも早く市場へ参入することで、

それだけ当該市場と当該製品をよく知り、より多くの知識と経験を蓄え、有利なコスト 競争を展開することができる。

→『Number』は創刊から多くの試行錯誤を経験してスポーツ総合誌におけ   る特集主義などの手法を確立してきた。

  第三は、うま味のある市場を獲得できるということである。先発ブランドは、イノベ ータ層や初期採用者層へと真っ先に浸透することができる。彼らは、新製品に強い興味 を持ち、新製品を受け入れることにそれほど抵抗感を有していない。価格に対しても、

それほど敏感ではない。企業からすると、最もうま味のある市場といえるだろう。一方、

後発ブランドは、新製品の採用に消極的な残りの消費者層を狙うことになる。

 

<後発ブランドの優位性>

  上では、市場に一番手に参入することが、いかに競争を展開する上で有利であるかと いう先発優位性について論じた。とすれば、先発できなかったブランドは諦めるしかな いのであろうか。

  後発ブランドが勝負するためには、競合ブランドよりいかに優れているのかを主張す るのではなく、何が新しいのかを主張すべきなのである。

  仮に新しいカテゴリーを創造できなくても、後発であるがゆえのメリットもいくつか ある。

 

  第一は、需要の不確実性を見極められることである。市場の先行きが不透明な段階で 意思決定を強いられる先発ブランドに対して、後発ブランドは市場が成長するか否かを 見極めて投資を行うことができる。

 

  第二は、広告・販促費への投資を節約できることである。ある新製品が市場に出てし ばらくの間、従来品との違いや当該製品がもたらす便益を知っている消費者は少ない。

そうした製品カテゴリーの存在すら知らない消費者もいる。そこで先発ブランドは、消 費者に当該製品を認知させ理解させるために、広告・販促費への莫大な投資を余儀なく させられる。ところが後発ブランドは、自社ブランド名だけを消費者へ浸透させればよ く、きわめて効率のよいプロモーション戦略を展開することができる。

 

  第三は、研究開発コストを低く抑えられることである。後発ブランドとして模倣する コストは、先発ブランドとしてイノベーションを生み出すコストよりもはるかに低い。

→『Number』という雑誌が先発ブランドとしてスポーツ総合誌という市場を確立し、

ある程度の需要を獲得することが可能であるという事実を認識することができた。よっ て、後発ブランドである『SPORTS Yeah!』は、『Number』の手法を模倣しながらそ の市場に容易に参入することができたのではないであろうか。ここで断定としないのは、

『SPORTS Yeah!』はスポーツ総合誌の市場においてまだ定着したとはいい難いからで ある。 

 

第二項  ブランド基本戦略

 

ブランドマネジメントを進める場合、まず最初に基本方針を決定しておく必要がある。

これをブランドの基本戦略と呼ぶ。ブランドの基本戦略は、対象とする市場が既存なの か新規なのか、採用するブランドが既存なのか新規なのか、という2つの次元によって 整理することができる。(【表3−4】参照)

 

  ブランド強化とは、対象市場もブランドも変更しない戦略である。従来の戦略の強化・

延長であり、最もリスクの少ない戦略である。市場への浸透が不十分であったり、競争 が激しくなった場合、この戦略が採られる。

具体例:花王のシャンプー「メリット」では、数年に一度のペースで成     分の検討やパッケージ・デザインの改良が行われている。これ

    は、最新の技術やセンスをブランドに取り入れ、ブランドの陳            腐化を防ぐためである。

 

  ブランド・リポジショニングでは、既存のままのブランドで新しい市場が狙われる。対象 市場を思い切って新しいセグメントへと変更し、売上高の増加を狙う戦略である。

 

  ブランド変更とは、同じ市場をターゲットとし続けるが、ブランドを新規なものへと 変更する戦略である。値崩れしてきたブランドを廃棄したり、消費者へ新しいブランド で鮮度を訴えることができるなどの効果がある。反面、過去に築き上げてきた知名度や ロイヤル・ユーザーを放棄し、再びゼロからのスタートとなるので、かなりリスクを伴 った戦略である。

 

  新しいブランドで新しい市場を狙う戦略がブランド開発である。経験のない市場に、

全く消費者に知られていないブランドで参入するので、最もリスクの高い戦略と言える。

典型的なハイリスク・ハイリターン型の戦略である。もし先発であれば、当該ブランド と製品カテゴリーとを結びつける連想戦略を進めるとよい。逆に後発であれば、先発ブ ランドといかにして差別化するかが課題となる。

  

  

【表3‐4】ブランド基本戦略1

既存ブランド 新規ブランド 既存市場 ブランド強化 ブランド変更 新規市場 ブランド・

リポジショニング ブランド開発

 

フォロワーである『SPORTS Yeah!』が採用すべき戦略がまさに「ブランド強化」で あろう。市場への浸透が不十分であるから、対象市場やコンセプトは変更することなく、

現在の対象市場における強い基盤を構築することが重要であろう。

  『Number』が採用すべき戦略については、「ブランド強化」、または「ブランド・リ

ポジショニング」が考えられる。ある程度のブランドを構築しているが、さらなるブラ ンドの強化も必要だろうし、また、第二章で検証したように「女性」や「子供」といっ た新規市場を開拓することも重要だろう。

  このことは、『編集会議』(宣伝会議)が「長く続く雑誌の条件」2の条件1として述 べていることと合致する。

条件 1  ブランドにとらわれない     

  編集者が雑誌の枠にとらわれ、発想の道筋が決まってしまうと、新しいものは生まれない。 

  いわゆる「売れている雑誌」は、一定のブランド力を保ちながら、変化を恐れず、時代に応 じて果敢に変化を求めている。その結果としてますます強固なブランド力を得ている。 

  しかし、過去にブランドが培ってきた力を全く無視しているわけではないことも確かである。

各誌はそれぞれの媒体の本質〜刺激や人間ドラマや先進性〜を形を変えて表現しようとし ている。その媒体の らしさ を決して失わないことが真の力だといえる。 

 

1  和田充夫・恩蔵直人・三浦俊彦 『マーケティング戦略』1996(有斐閣)p184      の図を修正して作成

2 『編集会議』2000年6月号(宣伝会議)p66

  このように、ブランド基本戦略として、4 つの戦略からスポーツ総合誌が採るべき戦 略を述べてきたが、しかしこれらはあくまでも代表的な戦略であって、実際にはそれぞ れ独自の戦略を導き出すことが必要ではないだろうか。 

 

  ちなみに、残りの3つの条件についても参考までに挙げておく。

条件 2  二兎を追う者は一兎を得ず   

  変化を求めると、これまで雑誌を愛読してくれた読者を裏切ることになりかねない。しかし、

変化を欲したときには、確実に離れる読者がいる.それを受け入れなければ、新たな読者を 獲得していくことはできないだろう。 

 

条件 3  継続は力なり   

  雑誌が市場に定着するまで、あるいは期間を堪え忍ぶことも必要である。特に、それまで に類型の雑誌がない場合、読者がその媒体に慣れるまでの時間をどう考えるか。雑誌は 様々な企画の切り取り方がある。様々な試行錯誤を経て独自の編集スタイルを確立していく ケースも多い。試行錯誤の期間を堪え忍ぶか否かは、雑誌の基本のコンセプトをどこまで信 じられるかが分岐点のようである。 

 

条件 4  新陳代謝がよいこと     

  雑誌は常に時代とともに変化している。変化を促す要因は様々だが、おそらく雑誌の力を 維持していくためには、スピードが重要なファクターとなる。まだブランド力がありながらも、わ ずかでも時代と合わない、と感じた時に先んじて変化する俊敏さが、雑誌の命を長らえさせ るのである。 

   

第三項   商品価値構造モデル

 

顧客は商品の語りかけを自分のライフシーンのなかでコード化し語りはじめる。そし て、その媒介物はブランドであり、ブランド価値である。一般に商品はその基本価値や 便宜価値を持つと同時に、消費に感覚的な楽しさを与えたり生活の意味を与えたりする。

  【図3‐5】は、このような商品の4つの価値を階層的に示したものである。ここで、

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