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潜在マーケット

ドキュメント内 橡卒業論文全体.PDF (ページ 31-35)

第二章  コンテンツからの

第八節   潜在マーケット

  第八節では、読者層に注目してみよう。

  【グラフ2‐1】、【グラフ2‐3】から、『Number』の読者層は、性別では男性がほと んど(86%)で、年齢層も35歳未満だけで81.8%を占めている。この層がいわゆるコ ア・ターゲット(core target)である。

  『SPORTS Yeah!』についても、「創刊当初から一貫して20 代から 30 代の男性という ターゲットに絞ってやっている。」(中島氏)ことから、コア・ターゲットは『Number』

とほぼ同じであると考えてもよいだろう。

  発行部数を伸ばすためには、このコア・ターゲットをさらに膨らますことも重要であ ろうが、しかし、スポーツ総合誌のさらなる発展のためにはコア・ターゲット以外の層、

つまり潜在マーケットを開拓することも戦略のひとつとしてまた重要ではないだろう か。

  そこで私は潜在マーケットとしてまず「女性」に注目してみた。『Number』の女性

読者が 14%しか存在しないように、女性読者をさらに獲得できればスポーツ総合誌の

市場全体を大きくすることができるのではないか、そう考えたのである。しかし、

  女性読者については全く意識していません。潜在マーケットとしても女性に読んでもらおう という考えはなく、創刊当初から一貫して20 代から 30 代の男性というターゲットに絞ってやっ ています。つまり、部数を増やすためには、新たな層を開拓するのではなく、既存のターゲッ トのなかで、その層の読者をいかに増やしていくか、ということです。少し年代を広げようとし て、野球や競馬を特集すると、今度はコアな層が逃げていってしまう、そういう難しさがありま す。女性の読者に関しても、同じことが言えますね。だからまだそういう時期ではなく、まずは 最初に定めた特定のターゲットに向けて定着させなければならないと思います。(中島氏)

  男性のアスリートのメッセージを加工して女性に伝えていくということもできますけど、なん といっても女性はミーハーすぎますね。それだったら、女性アスリートを取り上げて共感させる というほうがいいです。しかし、日本の女性選手は本当に自立できているかというと疑問です。

きちんとプロとしてやっていく意識があるか、そういう意味でいったら、まだまだアスリートとし ての意識に達していないし、見る側の目も肥えていないですね。また、女性の選手とは話す 機会があるのですが、オリンピックでメダルを取った選手にせよ、企業に所属する選手にせよ、

考えが未熟で甘いです。指導者にしても、ソフトボールの宇津木さんやシンクロの井村さんな ど優れたコーチはいますが、それでも数えるほどしかいません。そういう意味で、「女性が活 躍したからじゃあ特集しよう」というのは表面的な考えではないか、そう思います。あくまでも 私の考えですけど。まあ、未開拓の分野なのでこれからですね。(川田氏)

  予想外の答えが返ってきた。現場の意見としては、女性読者はターゲットとしてはあ まりふさわしくないらしい。『SPORTS Yeah!』については創刊して間もないため、ま ずはコア・ターゲットに向けて発信してその地盤を固めるという戦略は理解できる。し かし、創刊から 20 年もの年月を経た『Number』はどうであろうか。川田氏や編集長 の井上氏は同じようなことを述べている。

  ある層に向けて創っているという意識はありません。マーケティングはほとんどやっていま せんね。編集部の人間がそういう世代の編集者なので、自分たちがおもしろいと思ったもの を創っています。(川田氏)

  雑誌の多くで導入されているマーケティングも『Number』ではほとんど行っていません。つ まり、作る側としては読者層を特に意識していません。読者の半分は10 代から20 代ですが、

10 代はもちろん昔から読んでいる40〜50 代の読者もいる。それだけ幅広いとマーケティング も意味がありません。自分たちがおもしろいと思うものを、読者にどうやって発信していくか。

これが基本的な考え方です。(井上氏)

 

  やはり、20 年間の努力によってある程度の読者は根づいているという自負があるの であろうか。余裕に近いものが感じられる。

  また、この二人の意見には、ある特定のターゲットに向けた極端な誌面づくりをする と、それ以外のターゲットが逃げてしまうという中島氏の見解を含んでいるのではない だろうか。この点こそがスポーツ総合誌の難しい論点なのである。

  女性読者に論点を戻そう。ここで、女性をコア・ターゲットしているサッカー専門誌

の例を挙げる。『サッカーai』(日刊スポーツ社)である。『日本サッカーは本当に強く なったのか』(中央公論社)のなかで荻島弘一編集長はその狙いについて語っている。

  完全に若い女性層にターゲットを絞っています。類似誌が存在しなかったのでそうしたの ですが、サッカーに興味はあるけれども『サッカーマガジン』は難しいという人に読んでほしい という思いもありましたし、女性ファンを増やすのも、たとえ最初はミーハー人気であっても、

サッカーを見る層を増やすためにもそういう雑誌は必要だという動機でした。(1 ) 

  このように女性をコア・ターゲットとして成立しているサッカー専門誌も存在するの である。ということは市場として成り立っているわけだから、スポーツ総合誌にとって も開拓する価値と可能性はあると考えてもよいのではないだろうか。

  そうはいっても、『サッカーai』の場合は専門誌であるからそれができるのであって、

先ほども触れたように、総合誌にはそうした誌面づくりができないのである。

  であるから、潜在マーケットとしての女性は、スポーツ総合誌を発展させるための可 能性のひとつとして今後も考察していく必要があるだろう。

  もうひとつの潜在マーケットとして川田氏は「子供」を提起している。

  私は潜在マーケットとしては「子供」だと思います。例えば、サッカーが強くなった理由は、

ナショナルトレーニングセンターをきちんと整えてセレクションを行ったり、コーチの強化を推 進したり、子供にあたる部分に力を注いできて、こうした草の根レベルからの努力が実を結 んだんですね。そういうことから、女性よりも子供のほうが重要だと思います。例えば、サッカ ーの中村俊輔選手。子供たちにはとても人気があるのですが、彼らは新聞を読まないし、

『Number』もそうだけど、これまでのスポーツ誌は大人向けだし、情報を知りたいと思っても 知れないわけです。しかし、知りたいという欲求はあるわけだから、そういうニーズを満たす ことができる雑誌を創りたいと思っています。(川田氏)

  川田氏の言う「子供」とは何歳未満をいうのかはわからないが、仮に「子供」を 15 歳未満と定義した場合、『Number』というのは「子供」向けとはいい難いし、彼らに とっては、文章が多い「読みもの」であろう。しかし、かといって『Number』を「子 供」向けにするわけにはいかない。そこで、『Number』とは別の「子供」向け『Number』

を創るというのである。なるほど、それによってスポーツ総合誌の市場が拡大する可能 性もあるだろう。

 

1大住良之/後藤健生『日本サッカーは本当に強くなったのか』、2000   (中央公論社)p157

  また、「高齢者」という潜在マーケットについてはどうであろうか。

  第一章・第一節において、世代交替という社会情勢の影響によって熟年誌の充実につ いて述べた。やはり、この少子高齢化の時代にあってますます多くなるであろう「高齢 者」という層は、スポーツ誌にとっても無視のできない存在であることは間違いない。

  しかし、『Number』などは字数も多く、「高齢者」に優しい雑誌とはいい難いだろう。

  「女性」、「子供」と同じように、市場を拡大するための可能性のひとつとして「高齢 者」という層について考察していくことも非常に重要であろう。

   

  最後に、この節で考察した読者層についてのモデルを構築して終わる。

【図2‐9】スポーツ総合誌読者概念図モデル

       

                

 

 

    

       

                     

         

                

    (20〜30代の男性)

女性

子供

サッカー

野球

高齢者 コア・ターゲット

潜在マーケット

※ コア・ターゲットとは20代〜30代の男性であり、そのなかにそれぞれ  のスポーツ が大小異なって存在する。様々な種類のスポーツが好きな読者もいれば、あるひとつ のスポーツだけが好きな読者もいる。そして潜在マーケットとして、「女性」や「子 供」、「高齢者」など、これから成長する余地のあるマーケットが存在する。

ドキュメント内 橡卒業論文全体.PDF (ページ 31-35)

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