• 検索結果がありません。

分娩後出血のリスク因子および予防的介入に関する文献レビュー

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "分娩後出血のリスク因子および予防的介入に関する文献レビュー"

Copied!
12
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

日本助産学会誌 J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 27, No. 1, 4-15, 2013

*1東京慈恵会医科大学附属病院(Jikei University Hospital) *2聖路加看護大学(St Luke's College of Nursing)

2012年3月6日受付 2013年3月30日採用

総  説

分娩後出血のリスク因子および

予防的介入に関する文献レビュー

Literature review of risk factors and preventive interventions

for postpartum hemorrhage

前 田 菜穂子(Naoko MAEDA)

*1

片 岡 弥恵子(Yaeko KATAOKA)

*2

江 藤 宏 美(Hiromi ETO)

*2

堀 内 成 子(Shigeko HORIUCHI)

*2 抄  録 目 的  分娩後出血は,母体死亡の主要な原因であり世界的に取り組むべき課題である。本研究は,既存の文 献レビューにより,分娩後出血の定義,発生頻度およびリスク因子,予防への適切な介入を明らかにす ることを目的とした。 方 法

 The National Guideline Clearinghouse,The Cochrane Library,PubMed,医中誌Webを用いて2011 年11月まで検索した。タイトルおよびアブストラクトから内容の合致する文献について批判的吟味を 行った。 結 果  分娩後出血については,従来分娩後24時間以内の500mL以上の出血と定義されていたが,近年日本 では単胎の場合,経腟分娩では800mLが産科出血量の診断基準とされた。母体の健康への影響を重視し, 1000mL以上の出血は重症分娩後出血と定義されており,日本における頻度は2∼5%と報告されてい る。妊娠期に査定できる分娩後出血のリスク因子は,「胎児推定体重4000g以上」「分娩後出血の既往」「多 胎」「4回経産以上」「35歳以上」「低置胎盤または前置胎盤」「羊水過多」「妊娠期の異常出血」「BMI25以上」 「妊娠貧血」「子宮筋腫」「帝王切開の既往」「妊娠高血圧症候群」「過期産」,分娩期のリスク因子について は,「分娩第1・2期遷延」「分娩第3期遷延」「絨毛膜羊膜炎」「陣痛促進・誘発」「器械分娩」「胎盤遺残」「回 旋異常」「会陰膣壁裂傷」「クリステレル児圧出法」であった。有効な予防介入として子宮収縮剤の予防的 投与を含む分娩第3期の積極的管理,胎盤娩出後の子宮底マッサージ,分娩誘発のための乳頭刺激,胎 盤娩出後の乳頭刺激・直接授乳が明らかになった。 結 論  日本においても分娩後出血は稀なことではない。同定されたリスク因子を持つ者に対し,予防介入を

(2)

行うことで分娩後出血をある程度予防することが可能となる。本研究結果を基盤に,助産所および院内 助産システムにおける分娩後出血の対応ガイドラインの作成が急務である。

キーワード:分娩後出血,頻度,リスク因子,予防介入,妊産婦

Abstract Objectives

Postpartum hemorrhage (PPH) is the leading cause of maternal mortality worldwide. We sought to identify the current definitions, prevalence, risk factors and preventive interventions for PPH.

Methods

We searched the National Guideline Clearinghouse, the Cochrane Library, PubMed and Ichushi Web begin-ning through November 2011. We performed a systematic literature review. After title and abstract screebegin-ning, study quality was assessed.

Results

Blood loss from genital tract of 500mL or more in the first 24 hours after the delivery is defined as PPH. Recently in Japan, 800mL or more was diagnostic criteria for abnormal bleeding after vaginal delivery. Severe PPH was defined as 1000 mL or more and was more important in terms of maternal health. The prevalence of PPH, (blood loss over 1000 mL after vaginal delivery), in Japan was 2-5 %. Risk factors identified during pregnancy were: macrosomia, re-currence of PPH, multiple gestation, grandmultiparous (4 and more), maternal age over 35 years, low-lying placenta, polyhydramnios, antepartum hemorrhage, obesity (BMI is 25 and over), severe anemia, uterine myoma, and history of cesarean-section, PIH (Pregnancy Induced Hypertension), post-term delivery. Prolonged first and second stage labor, prolonged third stage labor, chorioamninitis, induction of labor, assisted delivery retained placenta, anomaly of the rotation, vaginal laceration and Kristeller maneuver were risk factors identified during delivery. Effective pre-ventive interventions were active management strategies to promote uterine contractions in the third stage of labor; especially prophylactic uterotonics, nipple stimulation for induction of labor, breast feeding after the delivery of baby. Conclusions

PPH is no longer unusual in Japan. It appears that some PPH cases are preventable by risk screening and pre-ventive interventions. Based on the results of this literature review we should develop PPH prevention guidelines for midwives.

Keywords: postpartum hemorrhage, prevalence, risk factor, preventive intervention, pregnant

Ⅰ.は じ め に

 分娩後出血は,母体死亡の主要な原因であり世界 的に取り組むべき課題に位置づけられている(Khan, Wojdyla, Say, et al., 2006)。分娩後出血への対応は,早 期に止血が行われることが最重要と考えられるが,助 産所および院内助産システムでの分娩後出血への予防 ・対処方法はエビデンスに基づいて標準化されていな い。分娩後出血の既存のガイドラインとして,助産所 業務ガイドライン(日本助産師会,2009)や産婦人科診 療ガイドライン(日本産科婦人科学会,2011)があるが, 分娩後出血を来たすリスク因子や急変が疑われる状況 が出現してから搬送に至るまで,どのような処置をす ればよいかは不明確である。また,助産所における出 血の対処や搬送の判断について,江澤(2008)により 出血の様態別のフローチャートが作成されているが, 予防介入は示されていない。  2003年にICM(国際助産師連盟)とFIGO(国際産婦 人科連合)による共同声明で分娩第3期の管理方法と して,臍帯の早期結紮,臍帯の注意深い牽引,子宮収 縮剤の投与を組み合せた積極的管理(Active manage-ment)が推奨された。しかし長谷川(2008)は都内9か 所の助産所における出血時の対応を調査し,助産所の 現状として児娩出以降,待機的管理(Expectant man-agement)の原則に基づいた助産ケアを実施しており ローリスク産婦のルーチンマネジメントとして積極的 管理が行われていないことを結論付けている。また, 医療設備や人材が不十分な発展途上国においては積極 的管理の実施が難しい環境があったことから,2011年 のICMでは,分娩第3期の管理として待機的管理がガ イドラインに採択され,必ずしも積極的管理でなく, 待機的管理または積極的管理を選択できることとなっ た。栄養状態もよく医療体制の整った先進諸国におい て分娩第3期の積極的管理を行う必要があるかどうか,

(3)

索した。なお,分娩後出血の発生頻度については,以 上の検索からヒットした文献から抽出した。

 分娩後出血の予防的介入については,既存の診療ガ イドラインについて上記のデータベースを用いての検 索に加えて,一次文献はPubMed,医中誌Web Ver.5, 二次文献の検索はThe Cochrane Libraryを用いて行

った。PubMed,医中誌Web Ver.5では,「分娩後出血

/postpartum hemorrhage」「弛緩出血/atonic bleed-ing」「分娩第3期/labor stage, third」「オキシトシン/ oxytocin」「エルゴメトリン/ergometrine」「プロスタ グランジン/prostaglandins」「infusions, intravenous」 「injections, intravenous」「injections, intramuscular」「子

宮底マッサージ・輪状マッサージ/uterine compres-sion, fundal massage」「冷罨法・寒冷療法/ cooling」 「乳 頭 刺 激 / nipple stimulation」「胎 盤 娩 出 」を キ ー

ワードとして検索を行った。The Cochrane Libraryは, 「postpartum hemorrhage」をキーワードに検索した。  文献検索にてヒットした文献は,表題と抄録を読ん で内容が合致するものを抽出し,批判的吟味を行い, エビデンスレベル(中山,2004)を示した。批判的吟味 の方法はEBMの手法に基づき「はじめてコホートシー ト」(南郷,2011a)「はじめてケースコントロールシー ト」(南郷,2011b)を用いた。なお,採択された診療 ガイドラインについては,引用文献も検討の吟味対象 に含めた。

Ⅲ.結   果

1.分娩後出血:Postpartum hemorrhage(PPH)の 定義と発生頻度  一次分娩後出血(Primary PPH)は,分娩後24時間 以内に起こる多量出血と定義される(Leduc, Senikas, Lalonde, et al., 2009)。これまで,分娩後出血(PPH) は,経腟分娩後500ml以上の出血とされてきたが, WHO(2009)は重度分娩後出血(severe PPH)を定義 し,分娩後24時間以内の1000ml以上の出血としており, 500ml以上の出血よりも重要な分娩アウトカムに位置 づけている。また,二次分娩後出血(Secondary PPH) については,分娩後24時間から12週間の間に起こる 産道からの異常/多量出血と定義されている(WHO, 2009)。日本では単胎の場合,経腟分娩は800ml,帝 王切開分娩は1500mlが分娩時出血の90パーセンタイ ル値であり,産科出血量の評価基準とされている(日 本産婦人科学会,2011)。 はっきりとした結論を引き出すには至っておらず,今 後日本の医療状況や出産環境を考慮して,分娩後出血 への予防介入を検討する必要がある。  日本産科婦人科学会(2003)では,分娩中と分娩後2 時間までの出血量を分娩時出血量とし,500ml以上の 出血を分娩時異常出血と定義している。しかし健康な ローリスク妊婦では500∼1000ml程度の出血では何ら の症状を呈しないことが多く(竹村,2002),Williams Obstetrics(Cunningham, Leveno, Bloom, et al., 2010) によれば,平均分娩時出血量を経膣分娩500ml,帝王 切開1000mlと記載されている。日本の異常基準が平 均値であるのは不適当と考えられるようになり,近 年経腟分娩の異常出血量は800mlに変更された(久保, 2010)。助産師が対象とするローリスク妊婦の妊娠分 娩期における分娩後出血のリスク因子が特定できれば, 該当する妊産婦への介入が可能となる。  本研究の目的は,既存研究およびガイドラインを検 索し,分娩後出血の定義,発生頻度,リスク因子,有 効な予防介入を明らかにすることである。本研究の結 果は,今後分娩後出血に対する助産所および院内助産 システムにおける対応アルゴリズム作成のための示唆 を得ることができる。分娩後出血に対する搬送までの ケアを標準化することは,出産施設における安全性の 確保が期待できる。

Ⅱ.研 究 方 法

 本研究は,分娩後出血の定義と発生頻度,リスク因 子,分娩後出血の予防的介入の有効性について,既存 研究から探索する文献レビューである。分娩後出血の 定義については,米国のThe National Guideline Clear-inghouseおよびtrip database,国内については,東邦 大学診療ガイドライン情報検索システムおよびMinds データベースを用いて既存の診療ガイドラインを検索 した。分娩後出血のリスク因子については,既存の診 療ガイドライン(上記のデータベースを使用)の検索 に加えて,PubMed(検索対象年1966∼2010.6)を用い て「postpartum hemorrhage [MeSH]」をキーワードに Clinical QueriesのResearch Methodology

FiltersのEti-ology [Narrow]を用いて検索した。分娩後出血のリス

ク因子に関する和文献については,医中誌Web Ver.5

(検索対象年1982∼2011.11)を用いて,「分娩後出血」

「分娩時出血」「産科出血」「弛緩出血」と「危険因子」「リ

(4)

 分娩後出血の発生頻度は,Carroli, Cuesta, Abalos, et al.(2008)のシステマティックレビューによると, 分娩後出血( 500ml)は全分娩の約6%,重度分娩後 出血( 1000ml)は約1.86%と示されているが,研究間 での異質性が高いことが指摘されている。また,近年 の分娩後出血の推移としては高齢化や帝王切開の増 加に伴い増加していることも報告されている(Knight, Callaghan, Berg, et al., 2009)。日本では,帝王切開と 経腟分娩を合わせた全分娩に対して,500ml以上の出 血は42.4%(花岡・筒井・久保,2009),1500ml以上の 出血は1.7%(野平,2010),1.5%(佐々木・高橋・長壁 他,2008)であった。   経 膣 分 娩 で は,500ml以 上 の 出 血 は27.6%(花 岡 ・筒井・久保,2009),16.8%(佐村・水之江・江川 他,2008),15.2%(坂根,2010),10.0%(松岡,2009), 1000ml以上は4.8%(松岡,2009),4.7%(花岡・筒井・ 久保,2009),2.4%(坂根,2010),2.1%(佐村・水之江 ・江川他,2008)であった。対象施設は総合周産期母 子医療センター(松岡,2009),地域周産期母子医療セ ンター(坂根,2010;花岡・筒井・久保,2009;佐村 ・水之江・江川他,2008)に認定されており,ハイリ スク産婦の割合や搬送の受入れなど施設特性によって 異なっていた。 2.分娩後出血のリスク因子に関するエビデンス  診療ガイドラインは,NICE(The National Institute of health and Clinical Excellence, 2007),ACOG(Amer-ican College of Obstetricians and Gynecologists, 2006), SOGC(Society of Obstetricians and Gynecologists of Canada, 2009),WHO(World Health Organization,

2009),日本産科婦人科学会(2011)の5件を採用した。 英文献については,PubMedの検索によって223件が ヒットしたがタイトルとアブストラクトを読み,内容 が合致していた文献は13件でありすべてを採用した。 さらに診療ガイドラインの引用文献を加えた。和文献 は,1,324件がヒットしたが,内容が合致していたの は45件であった。これらの文献を吟味した結果,多 変量解析にて交絡因子を調整されていた28件(英文献 25件,和文献3件)を採用した。なお,1件は英文献と 和文献で同一の研究と考えられたので,英文献を採用 した。 1 ) 妊娠期に特定できるリスク因子  妊娠期に特定できるリスク因子について検討され ていたのは,25件の英文献のうち,複数のリスク因子 を検討した文献9件,単一リスク因子について検討し た文献12件(分娩後出血の既往,年齢,多産,巨大児, 妊娠中期の低置胎盤,肥満妊婦,過期産)であった。  英文献では,第一に巨大児があげられている。調 整済みオッズ比が1.7から3.5であり複数の研究で分 娩後出血のリスクが高いことが報告されている(Bais, Eskes, Pel, et al., 2004; Jolly, Sebire, Harris, et al., 2003; Saunders, Paterson, & Wadsworth, 1992; Sosa, Althabe, Belizán, et al.,2009; Stotland, Caughey, Breed, et al., 2004)。分娩後出血の既往,つまり分娩後出血再発の リスクについて,Henry, Birch, Sullivan, et al.(2005) は500ml以上の分娩後出血の既往は調整済みオッズ比 14.1,1000ml以上の重症出血既往は45.4と報告してい る。また,分娩後出血2回の既往が3回目を起こすリ スクは調整済みオッズ比5.0であった(Ford, Roberts, Bell, et al., 2007)。年齢については,35歳以上の場合 調整済みオッズ比が1.4から3.0であり(Jolly, Sebire, Harris, et al., 2000; Ohkuchi, Onagawa, Usui, et al., 2003; Tsu, 1993),40歳以上は1.7であった(Bateman & Berman, Riley, et al., 2010)。 多 産 は,Yasmeen, Dan-ielsen, Moshesh, et al.(2005)では調整済みオッズ比1.2 で有意な差を認めたが,Bugg, Atwal, & Maresh(2002) およびHumphrey(2003)では認められなかった。そ の他,初産(Magann, Doherty, Briery, et al., 2008; Oh-kuchi, Onagawa, Usui, et al., 2003), 多 胎(Bateman, Berman, Riley, et al., 2010; Sosa, Althabe, Belizán, et al., 2009),妊娠貧血(Tsu, 1993),妊娠中期の低置胎盤 (Ogueh, Morin, Usher, et al., 2003; Ohkuchi, Onagawa,

Usui, et al., 2003)または前置胎盤(Rueangchainikhom, Srisuwan, Prommas, et al., 2009),妊娠性高血圧を含 む 妊 娠 合 併 症(Bateman, Berman, Riley, et al., 2010; Henry, Birch, Sullivan, et al., 2005; Selo-Ojeme & Oko-nofua, 1997),前回帝王切開(Ohkuchi, Onagawa, Usui, et al., 2003),肥満(Robinson, O'Connell, Joseph, et al., 2005; Sebire, Jolly, Harris, et al., 2001),過期産(Olesen, Westergaard, Olsen, et al., 2003),羊水過多(Bateman, Berman, Riley, et al., 2010 ),妊娠中の異常出血(Bate-man, Ber),妊娠中の異常出血(Bate-man, Riley, et al., 2010),子宮筋腫(Ohkuchi, Onagawa, Usui, et al., 2003)がリスク因子として報告 されている。

 和文献では,複数の因子を検討した文献3件であ った。リスク因子として,分娩回数が多いほど分娩 後出血は少ないこと(斎藤・内田・徳永,2002;坂根, 2010),また非妊時BMI 25,IVF-ET(松岡,2009),

(5)

児体重 3500g(松岡,2009;斎藤・内田・徳永,2002), 低位胎盤(松岡,2009)であると示されている。抽出し た項目で英文献の項目と異なる点は,「児体重 3500g」 「BMI 25」であり,体格的に日本人は欧米人と比較し て低身長であること,児の平均体重が少ないことから より低いカットオフ値となっていた。  診療ガイドラインには,推奨としてリスク因子が示 されていたものといないものがあった。NICEでは,9 項目のリスク因子「PPHまたは胎盤遺残の既往」「最終 Hb値8.5g/dl以下」「BMI35以上」「4回経産以上」「妊 娠中の出血」「子宮の過伸展(多胎,羊水過多,巨大 児)」「子宮の奇形」「低置胎盤または前置胎盤」「35歳 以上」が示されていた。SOGCガイドライン(2009)で は,各リスク因子のエビデンスは示されていないも のの,4つのT(Tone/ Tissue/ Trauma/ Thrombin)に 位置づけられる35項目のリスク因子が示されていた。 日本産科婦人科学会(2011)は,主要な8項目(前置・ 低置胎盤,巨大子宮筋腫,既往帝王切開,癒着胎盤疑 い,羊水過多,巨大児,誘発分娩,多胎)をあげ,リ スクがある妊産婦の高次医療施設での分娩を推奨して いる。しかしWHOガイドライン(2009)では,最も頻 度が高い弛緩出血(atonic PPH)は,分娩後出血のリ スク因子がない女性の方がある女性よりも発生は多い ため,リスクアセスメントせずに,全産婦に予防的介 入を行った方がよいと述べられていた。 2 ) 分娩期のリスク因子  分娩期のリスク因子としては,分娩誘発が報告 さ れ て い る(Sosa, Althabe, Belizán, et al., 2009)。 分 娩第2期・3期の遷延も複数の研究にて報告されて いる。分娩第2期遷延は調整済みオッズ比が5.5∼ 5.8(Henry, Birch, Sullivan, et al., 2005; Selo-Ojeme & Okonofua, 1997),分娩第3期遷延の調整済みオッズ 比 は3.2か ら4.9で あ り(Bais, Eskes, Pel, et al., 2004; Rueangchainikhom, Srisuwan, Prommas, et al., 2009; Selo-Ojeme & Okonofua, 1997), 分 娩 第3期 所 要 時 間が15分を超えると6.5となることが報告されてい る(Magann, Doherty, Briery, et al., 2008)。 さ ら に, Magan, Evans, Chauhan, et al.(2005)は分娩第3期所要 時間が長くなれば長くなるほど,分娩後出血のリスク は上がることを示している(10分OR2.1,20分OR4.3, 30分OR6.2)。また,胎盤遺残も調整済みオッズ比が2.9 から21.6でありリスク因子と考えられる(Bais, Eskes, Pel, et al., 2004; Bateman, Berman, Riley, et al., 2010; Henry, Birch, Sullivan, et al., 2005; Rueangchainikhom,

Srisuwan, Prommas, et al., 2009; Sosa, Althabe, Belizán, et al., 2009)。絨毛膜羊膜炎(Bateman, Berman, Riley, et al., 2010; Magann, Doherty, Briery, et al., 2008),回 旋異常(Tsu, 1993),会陰膣壁裂傷(Bais, Eskes, Pel, et al., 2004; Rueangchainikhom, Srisuwan, Prommas, et al., 2009; Sosa, Althabe, Belizán, et al., 2009), 吸 引・ 鉗子分娩(Ohkuchi, Onagawa, Usui, et al., 2003)もリ スク因子として報告されている。  和文献では,分娩誘発および促進(松岡,2009),分 娩第1期・2期遷延(斎藤・内田・徳永,2002),会陰 切開,クリステレル児圧出法,膣壁裂傷(坂根,2010), 吸引・鉗子分娩(松岡,2009;坂根,2010),分娩第3 期所要時間(斎藤・内田・徳永,2002;坂根,2010)が リスク因子であることが報告されている。  NICEガイドラインは,分娩中のリスク因子として 「分娩誘発」「分娩第1期/第2期/第3期の遷延」「オキ シトシンの使用」「墜落産」「吸引/鉗子分娩または帝 王切開」をあげていた。SOGCガイドライン(2009)は, 妊娠中と分娩中を分けずにリスク因子を示していた。 3.分娩後出血の予防的介入の有効性  分娩後出血の予防的介入の有効性については,The Cochrane Libraryでは,36件のシステマティックレビ ューがヒットした。これらのうち内容が合致したもの は,11件(子宮収縮剤の予防的投与7件,子宮収縮剤 の治療的投与1件,臍帯結紮1件,子宮マッサージ1件, 乳頭刺激1件)であった。PubMedでは5,258件がヒッ トした。介入となる検索キーワードを加え,メタアナ リシスおよびRCT,レビューで絞り込み,上記のコ クランシステマティックレビューで吟味された文献を 除いた結果,3文献(子宮収縮剤1文献,臍帯牽引1文献, 子宮下部マッサージ1文献)を採用した。和文献の検 索は,1,327件がヒットしたが,メタアナリシスおよ びランダム化比較試験(RCT)はなかったが,子宮収 縮剤に関する3文献,その他の出血予防に対する文献 5件(胎盤娩出方法2件,乳頭刺激1件,冷罨法2件)を 採用した。 1 ) 子宮収縮剤の予防的投与の効果

 Begley, Gyte, Devane, et al.(2011)のシステマティ ックレビューでは,分娩第3期の積極的管理(子宮収 縮剤の予防的投与,臍帯の早期結紮,臍帯の注意深 い牽引)を実施した場合,1000ml以上の異常出血発生 率(RR0.34; 95% CI 0.14-0.87),産後のヘモグロビン値 9g/dL以下(RR0.50; 95% CI0.30-0.83)について待機的

(6)

管理より有意に少なかったが,収縮期血圧の上昇,嘔 吐,後陣痛等の悪影響も認められた。したがって,分 娩第3期の管理も個別的状況を査定すべきと結論づけ られている。また,子宮収縮剤の予防的投与のみの 場合についても分娩後出血は,複数のシステマティッ クレビューの結果から減少するとされている。子宮 収縮剤の種類や投与経路は,オキシトシン(静脈内注 射または筋肉注射),シントメトリン(筋肉注射),エ ルゴメトリン(静脈内注射または筋肉注射),ミソプ ロストール(筋肉注射)と様々である(Cotter, Ness, & Tolosa, 2001; McDonald, Abbott & Higgins, 2004; Gülmezoglu, Forna, Villar, et al., 2007; Liabsuetrakul, Choobun, Peeyananjarassri, et al., 2007; Su, Chong, & Samuel, 2007)。オキシトシン単独の投与と比べてオ キシトシン・エルゴメトリン合剤(シントメトリン) 投与例において,収縮期血圧の上昇,悪心,嘔吐な どの副作用の発現率が有意に多いと報告されている (McDonald, Abbott, & Higgins, 2004; Rashid, Clark, &

Rashid, 2009)。診療ガイドラインではオキシトシン10 単位(筋肉注射)を推奨しているもの,10∼40単位を 1ℓの乳酸リンゲルか生理食塩水に溶解して10ml/分 の速度での投与を推奨しているものがあった(ACOG, 2006; NICE, 2007; SOGC, 2009)。また,エルゴメトリ ンはオキシトシンが無効の場合の第二選択薬に位置づ けられていた(ACOG, 2006)。また,オキシトシンの 投与時期について,胎盤娩出前と後を比較したシス テマティックレビューでは,どちらの方法でも出血 量は変わらないという結果も報告されている(Soltani, Hurchon, & Poulose, 2010)。

 日本において分娩第3期に予防的に用いられる子宮 収縮剤は,オキシトシン,エルゴメトリンなどが挙げ られ,薬剤の種類や投与経路,量,時期についての 研究がなされており(武内・舟木・藤田,2004;梶谷 ・中西・内田,2006;Saito, Haruki, Takahashi, et al., 2007),児娩出後にオキシトシン5単位を静脈注射す るという方法が最も出血量を減少させるという報告が 多い。

 分娩第3期の積極的管理の中で子宮収縮剤の早期投 与,臍帯早期結紮,controlled cord traction全てを行 わず,1つ選択したり2つを組み合わせたバリエーショ ンがあることが分かった(Begley, Gyte, Devane, et al., 2011)。

2 ) 臍帯の早期結紮と牽引の効果

 臍帯の結紮時期についてWHO(2009)は遅延結紮

を,NICE(2007)は早期結紮を推奨している。臍帯の 早期結紮と後期結紮を比較したMcDonald &

Middle-ton(2008)のシステマティックレビューでは,異常出

血の発生率に有意差はみられていなかった(RR1.22; 95%CI 0.96-1.55)。

 胎盤娩出方法の出血量への効果についてAlthabe, Alemán, Tomasso, et al.(2009)のRCTで は,204人 の 産婦を対象に児娩出後10単位の予防的オキシトシン 投与,臍帯の後期結紮を行った上で,controlled cord traction(CCT)群とHands-off群を比較した。両群にお いて500ml以上のPPH発生率(RR0.74; 95%CI 0.42-1.32), 1000ml以上のPPH発生率(RR0.58; 95%CI 0.14-2.37)に 有意差はなかった。また,深澤(2006)によると,ロー リスク産婦138人を対象に予防的に子宮収縮剤を投与 しない状況のもと,分娩後2時間までの総出血量は積 極的臍帯牽引群551.9 431.8g,胎盤剥離自然待機群 520.7 359.0gで両群において有意差はなかった(p= 0.692)。西平・瀬口(1989)が同様の研究を行い,児娩 出後ブラント・アンドリュー法を用いて胎盤娩出した 群が有意に出血量を減少させたという結果を得たが, 予防的子宮収縮剤の使用については不明である。 3 ) 子宮マッサージの効果  ルチーンの胎盤娩出後子宮マッサージについて Hofmer, Abdel-Aleem, and Abdel-Aleem(2008)のシス テマティックレビューには,1件のRCTのみが採択さ れていた。このRCTは,分娩第3期の積極的管理後に 子宮マッサージを受ける群と受けない群に割り付け られていたが,500ml以上の出血した女性の数は少な いため,信頼区間は広く,統計学的有意差は認めら れなかった(RR0.52, 95%CI0.16-1.67)。しかし,分娩 30分後の平均出血量(MD-41.60; 95%CI -75.16to-8.04), 分娩60分後の平均出血量(MD-77.40; 95%CI -118.71to-36.09)には有意差が認められた。このシステマティ ッ ク レ ビ ュ ー の 後 に,Aleem, Singata,

Abdel-Aleem, et al.(2010)によって,胎盤が娩出する前から 持続的に子宮底をマッサージすることの予防効果を 検討するため,エジプトと南アフリカにてランダム 化比較試験が行われた。1964名の女性は3群(オキシ トシンの筋肉注射,持続的な子宮底マッサージ,そ の両者)にランダムに割りつけられた。分娩後30分以 内の300ml以上の出血は,マッサージとオキシトシン 群(エジプト:RR1.88; 95% CI1.29-2.74,南アフリカ: RR1.3; 95% CI1.00-1.68)そしてオキシトシンン群(エジ プ ト:RR1.7; 95% CI1.11-2.61, 南 ア フ リ カ:RR2.24;

(7)

95% CI1.54-3.27)よりマッサージ群の方が有意に多か った。結論としては,子宮底マッサージは,300ml以 上の分娩後出血を減らすためにオキシトシンよりも効 果は低く,予防的なオキシトシン使用時はマッサージ によるさらなる効果は見込めない。また,マッサージ 群の女性の54.0%が痛みや不快感があった。  また,分娩後異常出血が発生した場合,通常ケア に加え子宮下部圧迫を行ったChantrapitak, Srijanteok, and Puangsa-art (2009)のRCTでは,子宮下部圧迫後2 時間の出血量に有意差がみられた(120 211ml対225 401ml; p=0.026)。 4 ) 乳頭刺激の効果  乳頭への刺激による分娩後出血の予防効果を検討 したシステマティックレビューはなかった。しかし, Kavanagh, Kelly, and Thomas(2005)の乳房刺激の分娩 誘発効果に関するシステマティックレビューにて,妊 娠末期の女性を対象に分娩誘発のための乳房および乳 頭を刺激することにより,産後の多量出血を有意に減 少させることが報告されている(0.7%対6% ; RR0.16; 95%CI 0.03-0.87)。しかし日本においては市坪・星野 ・藤川(1996)が,分娩直後に直接授乳や乳頭刺激を した場合,子宮収縮剤の使用頻度が減少するも,出血 量が500ml以上になる頻度に有意差はなかったと報告 している。したがって,乳頭刺激の効果は見込まれる ことが予測されるが,エビデンスは十分ではない。 5 ) 子宮冷罨法の効果  子宮冷罨法のエビデンスについて大隅・堀内(2007) によると,胎盤娩出後から児娩出後2時間までの総出 血量は下腹部に冷罨法を実施する介入群153 79g,冷 罨法は実施せずに経過を自然観察する対照群122 47g で両群において有意差はなかった。また,分娩直後 にオキシトシン5単位を使用しているが松岡・三宮 (2002)の研究でも同様の結果が得られている。しかし, RCTによる結果は出されていないため,冷罨法の効果 に関しては,現在のところ十分なエビデンスがあると は言えない。

Ⅴ.考   察

1.分娩後出血の定義と頻度  日本においては,「分娩中及び分娩後2時間までの出 血量を分娩時出血量とし,500ml以上を分娩時異常出 血と名づける」と定義されていたが(日本産科婦人科 学会,2003),近年800ml以上という基準が提示され ている。Williams Obstetricsには,500mlとする理由に ついて出血量を過小評価する可能性を示唆し,基準と しての正当性を述べている。今後,診断基準の妥当性 を吟味するさらなる研究が必要だろう。国際的な定義 としては,WHOが重度分娩後出血1000ml以上の出血 を重視しているため,研究的にはこのアウトカムを用 いる必要性が高いと考えられる。  日本における分娩後出血の頻度は,海外の文献を統 合したレビュー結果よりも高いことがわかった。この 理由は,対象施設の特性,人種がリスクファクターと なる可能性または出血量の測定の正確性が考察され る。和文献では1次施設を対象としたものはなく,海 外の文献と比較しハイリスク妊婦が多い可能性が考え られる。また,アジア人種が分娩後出血のリスクファ クターであるという文献は見当たらなかったが可能性 は否定できない。さらに,Carroli, Cuesta, Abalos, et

al.(2008)のシステマティックレビューで指摘されて いるように出血量の測定法が統一化されておらず正確 性が問題視されている。日本での出血量の測定法は ほぼ標準化されていること,日本の出血量の平均値は, Williams Obstetrics等の教科書に示された値と類似し ていることからも測定の正確性は高いことが推測され る。日本のデータは,リスクファクターの同定や分娩 後出血への介入の評価においても信頼性が高いと考え られる。 2.分娩後出血リスク因子の検討  妊娠中のリスク因子について,高次医療施設にて分 娩を予定するハイリスク妊産婦と考えられる「多胎」 「低置胎盤または前置胎盤」「妊娠合併症」「帝王切開既 往」「妊娠中の異常出血」「羊水過多」「過期産」「子宮の 奇形」を除き,ローリスク妊産婦に認められる可能性 がある因子は「分娩後出血の既往」「子宮筋腫」「胎児推 定体重4000g以上」「妊娠貧血(Hb8.5mg/dl以下)」「年 齢35歳以上」「BMI25以上」「多産(4回経産以上)」,分 娩期のリスク因子については「陣痛促進・誘発」「器械 分娩」を除き,「分娩第1・2期遷延」「分娩第3期遷延」 「回旋異常」「絨毛膜羊膜炎」「胎盤遺残」「会陰膣壁裂 傷」「クリステレル児圧出法」があげられる。これらの リスク因子にいても,重症度が高い場合は,高次医療 施設での分娩が勧められる。他の分娩リスクに加えて 分娩後出血のリスク因子を分娩施設の選択基準の策定, インフォームドコンセントの情報として使用すること が望ましい。

(8)

 また,須川・石河(1983)は,分娩時出血予知スコ アを作成し複数のリスク項目を用いてスコア化して基 準を設定し,事前検査,血液の確保など分娩時の出血 対策に生かす試みを提案している。近年予知スコアに 関する報告は見られないが,リスクを持った妊産婦に 対して通常とは異なる対応を必要とすることは,以前 より考案されていた。しかし,これらの文献では,ハ イリスク者への分娩後出血を予防する介入の実施につ いては言及されていなかった。今後,ローリスク妊産 婦を主とした分娩施設においても,特に妊娠期にアセ スメントできない分娩期に発生するリスク因子を加味 して,リスク因子を持つ妊産婦への予防介入を含め迅 速な対応を行うことで,分娩後出血の発生および重症 化の予防が期待できる。 3.予防介入の検討  ローリスクの妊産婦への子宮収縮剤予防的投与は, 日本では実施されていない施設も多いことが推測され る。ICM(2011)は,各国の状態にて子宮収縮剤の予 防的投与を含む積極的管理の採択を決定してよいと述 べている。日本での方針を決めるためには,まず根拠 となるエビデンスを知っておく必要があり,本研究の 結果の利用価値は高い。また,日本における分娩後出 血の実態と対処に関する信頼性の高い調査結果も必須 であろう。その上で,社会,経済および医療のシステ ムと状況を踏まえ,スタンダードを決定することが望 ましい。  分娩第3期の積極的管理,子宮収縮剤の予防的投与 のエビデンスは,既存の文献から分娩後出血の予防効 果が明らかにされており,海外のガイドラインではそ の使用が推奨されている。子宮収縮剤の種類として, オキシトシンは麦角アルカロイドに比べ,副作用発現 率が低いとされていることより,オキシトシン投与が 第一選択になるといえる。投与経路は,静注または筋 注が挙げられた。点滴静注する場合は分娩時に血管確 保をしておく必要があるが,フリースタイルを多く取 り入れている助産所等では,児娩出前に血管確保をす ることは状況的に難しいため,予防的に投与する場合 は投与方法を検討する必要があると考えられる。オキ シトシンの投与量は,国内の文献のみ5単位で,海外 では投与方法により異なるが10単位以上とするもの がほとんどであり相違がみられた。投与時期は,前在 肩甲娩出後,児娩出後,胎盤娩出後と様々な時期での 投与が考えられるが,文献では胎盤娩出前後で変わら ないという結果であった。したがって,胎盤娩出前に 早急に行う必要もないと解釈できる。薬剤の種類や投 与経路,量,時期はさまざまなバリエーションが存在 しており,アルゴリズムを作成するにあたりより実践 可能性が高い方法を採用する必要があるといえる。  逆に実践で用いられているが有効性が認められない 介入については,今後のその実施の是非について検討 するべきであろう。例えば,子宮の冷罨法,胎盤娩出 前からの子宮底マッサージの実施は,産婦に痛みや不 快を引き起こす可能性もあるため,今後実施を継続す べきか考える必要がある。 4.今後の課題  既存の分娩後出血対処フローチャートは,出血が出 始めた時点からの対処が記載されているものがほとん どであり予防介入は示されていなかったが,本研究で 分娩後出血のリスク因子が明らかとなり,分娩後出血 対応のガイドラインなど助産のケアスタンダード作成 のための示唆が得られた。またリスク因子の有無によ り,リスクのある妊産婦にのみ予防的介入を行うこと で,ルチーンに分娩第3期の積極的管理を実施してい ない助産施設においても分娩後出血の予防に貢献する ことができると考えられる。  一方,助産ケアには研究が行われておらずエビデン スが確立されていないケアも多くあり,既存のエビデ ンスだけで記述内容を決定することには限界があると いえる。臨床での適応性・実用性を考慮し,今後エビ デンスが明らかとなったものは追加していく必要があ る。以上より,本研究を基に助産実践で使用できるス タンダードを作成することが次の課題である。

Ⅵ.結   論

 本研究は,文献レビューから分娩後出血定義と頻度, 分娩後出血のリスク因子,予防への適切な介入を検討 した。その結果,ローリスク妊産婦が主になってい る助産所や院内助産システムでは,「分娩後出血の既 往」「子宮筋腫」「胎児推定体重4000g以上」「妊娠貧血 (Hb8.5mg/dl以下)」「年齢35歳以上」「BMI25以上」「多 産(4回経産以上)」,分娩期のリスク因子については 「分娩遷延」「回旋異常」「絨毛膜羊膜炎」「胎盤遺残」「会 陰膣壁裂傷」「クリステレル児圧出法」がリスク因子と して同定が可能である。予防介入として子宮収縮剤の 予防的投与,胎盤娩出後の子宮底マッサージ,妊娠中

(9)

の乳頭刺激,胎盤娩出後の乳頭刺激・直接授乳が挙げ られた。これらの結果を基盤に,妊娠期,分娩期のリ スクアセスメントおよび適切な介入のスタンダードを 定めることが期待される。  本研究は2010年度聖路加看護大学大学院課題研究 を一部加筆修正したものである。 引用文献

Abdel-Aleem, H., Singata, M., Abdel-Aleem, M., Mshwesh-we, N., Williams, X., & Hofmeyr, G.J. (2010). Uterine massage to reduce postpartum hemorrhage after vaginal delivery. International Journal of Gynecology &

Obstetrics, 111(1), 32-36.

Althabe, F., Alemán, A., Tomasso, G., Gibbons, L., Vitureira, G., Belizán, J.M., et al. (2009). A pilot randomized con-trolled trial of concon-trolled cord traction to reduce post-partum blood loss. International Journal of Gynecology

& Obstetrics, 107(1), 4-7.

American College of Obstetricians and Gynecologists (2006). Postpartum hemorrhage. ACOG practice bulletin; no.76, Obstetrics & Gynecology, 108(4), 1039-1047. Bais, J.M., Eskes, M., Pel, M., Bonsel, G.J., & Bleker, O.P.

(2004). Postpartum haemorrhage in nulliparous en: incidence and risk factors in low and high risk wom-en. A Dutch population-based cohort study on standard (> or = 500 ml) and severe (> or = 1000ml) postpartum haemorrhage. European Journal of Obstetrics &

Gynecol-ogy Reproductive BiolGynecol-ogy, 115(2), 166-172.

Bateman, B.T., Berman, M.F., Riley, L.E., & Leffert, L.R. (2010). The epidemiology of postpartum hemorrhage in a large, nationwide sample of deliveries. Anesthesia

Analgesia, 110(5), 1368-73.

Begley, C.M., Gyte, G.M.L, Devane, D., McGuire, W., & Weeks, A. (2011). Active versus expectant management for women in the third stage of labour. Cochrane Da-tabase of Systematic Reviews 2011, Issue 11. Art. No.: CD007412. doi: 10.1002/14651858.CD007412.pub3. Bugg, G.J., Atwal, G.S., & Maresh, M. (2002).

Grandmultipa-rae in a modern setting. British Journal of Obstetrics &

Gynaecology, 109(3), 249-253.

Carroli, G., Cuesta, C., Abalos, E., & Gulmezoglu, A.M. (2008). Epidemiology of postpartum haemorrhage: a systematic review, Best Practice & Research Clinical Obstetrics &

Gynaecology, 22(6), 999-1012.

Chantrapitak, W., Srijanteok, K., & Puangsa-art, S. (2009). Lower uterine segment compression for management of early postpartum hemorrhage after vaginal delivery at Charoenkrung Pracharak Hospital. Journal of the

Medical Association of Thailand, 92(5), 600-605.

Cotter, A.M., Ness, A., & Tolosa, J.E. (2001). Prophylactic oxytocin for the third stage of labour. Cochrane Database of Systematic Reviews, Issue 4. Art. No.: CD001808. doi: 10.1002/14651858.CD001808.

Cunningham, F.G. Leveno, K.J., Bloom, A.L., Hauth, J., Rouse, D. & Spong, C. (2010). Obstetrics Hemorrhage. Williams Obstetrics 23rd Ed. The McGraw-Hill Companies. New

York, 757-777.

江澤綾(2008).助産所における分娩時出血の対処および 搬送の判断のためのフローチャートの作成.2007年度 聖路加看護大学大学院修士課程課題研究.

Ford, J.B., Roberts, C.L., Bell, J.C., Algert, C.S., & Morris, J.M. (2007). Postpartum haemorrhage occurrence and recur-rence: a population-based study. The Medical Journal of

Australia, 187(7), 391-393.

深澤洋子(2006).子宮収縮剤を予防的に用いない状況下 における二つの胎盤娩出方法の出血量への効果̶積極 的牽引法と自然待機法ランダム化比較試験̶.聖路加 看護大学大学院修士論文.

Gülmezoglu, A.M., Forna, F., Villar, J., & Hofmeyr, G.J. (2007). Prostaglandins for preventing postpartum haemorrhage. Cochrane Database of Systematic Reviews, Issue 3. Art. No.: CD000494. doi: 10.1002/14651858.CD000494.pub3. 花岡正智,筒井淳奈,久保隆彦(2009).産科出血の臨床 的検討.日本周産期・新生児医学会雑誌,(45)3,834-838. 長谷川文子(2008).助産所における助産ケアと分娩時出 血の関連性.2007年度聖路加看護大学大学院修士課程 課題研究.

Henry, A., Birch, M.R., Sullivan, E.A., Katz, S., & Wang, Y.A. (2005). Primary postpartum haemorrhage in an lian tertiary hospital: a case-control study. The

Austra-lian & New Zealand Journal of Obstetrics & Gynaecology,

45(3), 233-236.

Hofmeyr, G.J., Abdel-Aleem, H., & Abdel-Aleem, M.A. (2008). Uterine massage for preventing postpartum haemor-rhage. Cochrane Database of Systematic Reviews, Issue 3. Art. No.: CD006431. doi: 10.1002/14651858. CD006431.pub2.

(10)

Humphrey, M.D. (2003). Is grand multiparity an indepen-dent predictor of pregnancy risk? A retrospective observational study. The Medical Journal of Australia, 179(6), 294-296.

市坪史子,星野妙子,藤川妙子(1996).乳頭刺激による 子宮収縮剤使用頻度の減少̶自然分娩の取り組みの中 で.日本看護学会論文集:母性看護,27,126-128. ICM (2003). Joint statement. Management of the third stage

of labour to prevent post-partum hemorrhage.

http://www.pphprevention.org/files/ICM_FIGO_ Joint_Statement.pdf [2011-07-29]

ICM (2011). Guideline for a physiological (expectant) third stage of labour. 評議会資料.

Jolly, M., Sebire, N., Harris, J., Robinson, S., & Regan, L. (2000). The risks associated with pregnancy in women aged 35 years or older. Human Reproduction, 15(11), 2433-2437. Jolly, M.C., Sebire, N.J., Harris, J.P., Regan, L., & Robinson, S.

(2003). Risk factors for macrosomia and its clinical con-sequences: a study of 350,311 pregnancies. European

Journal of Obstetrics & Gynecology Reproductive Biology,

111(1), 9-14.

梶谷恵子,中西俊一郎,内田学,坂本能基(2006).児娩 出後の子宮収縮剤の効果に関する研究.周産期医学, 36(8),1051-1056.

Kavanagh, J., Kelly, A.J., & Thomas, J. (2005). Breast stimu-lation for cervical ripening and induction of labour. Cochrane Database of Systematic Reviews, Issue 3. Art. No.: CD003392. doi: 10.1002/14651858.CD003392.pub2. Khan, K.S., Wojdyla, D., Say, L., Gülmezoglu, A.M., & Van

Look, P.F. (2006). WHO analysis of causes of maternal death: a systematic review. The Lancet. 367 (9516), 1066-1074.

Knight, M., Callaghan, W.M., Berg, C., Alexander, S., Bouvier-Colle, M.H., Ford, J.B., et al. (2009). Trends in postpartum hemorrhage in high resource countries: a review and recommendations from the International Postpartum Hemorrhage Collaborative Group. BMC

Pregnancy Childbirth, 9, 55.

久保隆彦(2010).母体死亡の更なる減少を目指して(1)産 科危機的出血への対応.母子保健情報,61,55-60. Leduc, D., Senikas, V., Lalonde, A.B., Ballerman, C.,

Bir-inger, A., Delaney, M., et al. (2009). Clinical Practice Obstetrics Committee; Society of Obstetricians and Gynaecologists of Canada. Active management of the

third stage of labour: prevention and treatment of post-partum hemorrhage. Journal of Obstetrics &

Gynaecol-ogy Canada, 31(10), 980-93.

Liabsuetrakul, T., Choobun, T., Peeyananjarassri, K., & Is-lam, Q.M. (2007). Prophylactic use of ergot alkaloids in the third stage of labour. Cochrane Database of Systematic Reviews, Issue 2. Art. No.: CD005456. doi: 10.1002/14651858.CD005456.pub2.

Magann, E.F., Evans, S., Chauhan, S.P., Lanneau, G., Fisk, A.D., & Morrison, J.C. (2005). The length of the third stage of labor and the risk of postpartum hemorrhage.

Obstetrics & Gynaecology, 105(2), 290-293.

Magann, E.F., Doherty, D.A., Briery, C.M., Niederhauser, A., Chauhan, S.P., & Morrison, J.C. (2008). Obstetric char-acteristics for a prolonged third stage of labor and risk for postpartum hemorrhage. Gynecologic & Obstetric

Investigation, 65(3), 201-205. 松岡真紀,三宮由紀(2002).分娩直後の子宮冷罨法の効 果を検証する.日本看護学会論文集:母性看護,33, 6-8. 松岡隆(2009).「産科出血と胎盤異常」(1)胎盤異常並びに 諸因子の多変量解析に基づく分娩時出血多量の予知に 関する研究.日本産科婦人科学会雑誌,61(9),1821-1832.

McDonald, S.J., Abbott, J.M., & Higgins, S.P. (2004). Pro-phylactic ergometrine-oxytocin versus oxytocin for the third stage of labour. Cochrane Database of Sys-tematic Reviews, Issue 1. Art. No.: CD000201. doi: 10.1002/14651858.CD000201.pub2.

McDonald, S.J., & Middleton, P. (2008). Effect of timing of umbilical cord clamping of term infants on maternal and neonatal outcomes. Cochrane Database of Sys-tematic Reviews, Issue 2. Art. No.: CD004074. doi: 10.1002/14651858.CD004074.pub2. 中山健夫(2004).EBMを用いた診療ガイドライン作成・ 活用ガイド.82-85.東京:金原出版. 南郷栄秀(2011a).はじめてコホートシート4.1. http://spell.umin.jp/BTS_Cohort4.1.pdf [2011-07-29] 南郷栄秀(2011b).はじめてケースコントロールシート2.5. http://spell.umin.jp/BTS_CCS2.5.pdf [2011-07-29] NICE clinical guidelines (2007). Intrapartum care -care of

healthy women and their babies during childbirth. http://www.nice.org.uk/nicemedia/live/11837/36275/ 36275.pdf [2011-07-29]

(11)

日本助産師会(2009).助産所業務ガイドライン(改訂版). 23,東京:日本助産師会. 日本産科婦人科学会編(2003).産科婦人科用語集・用語 解説集(改訂新版).327,東京:金原出版. 日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会(2011).産婦人 科診療ガイドライン.152-158,東京:日本産科婦人科 学会事務局. 西平佐代子,瀬口和(1989).胎盤娩出手技による出血軽 減の比較調査.助産婦雑誌,43(10),857-860. 野平知良(2010).産科出血を考える̶臨床の現場におけ る産科出血への対応と問題点.東京母性衛生学会誌, 26(1),22-25.

Ogueh, O., Morin, L., Usher, R.H., & Benjamin, A. (2003). Obstetric implications of low-lying placentas diagnosed in the second trimester. International Journal of

Gynae-cology & Obstetrics, 83(1), 11-17.

Ohkuchi, A., Onagawa, T., Usui, R., Koike, T., Hiratsuka, M., Izumi, A, et al. (2003). Effect of maternal age on blood loss during parturition: a retrospective multivariate analysis of 10,053 cases. Journal of Perinatal Medicine, 31(3), 209-215.

大隅香,堀内成子(2007).胎盤娩出後の子宮収縮を促す ケアに対する産婦の身体的・心理的変化̶冷罨法と 自然観察法(非冷罨法)の比較.聖路加看護学会誌, 11(1),10-18.

Olesen, A.W., Westergaard, J.G., & Olsen, J. (2003). Perinatal and maternal complications related to postterm deliv-ery: a national register-based study, 1978-1993.

Ameri-can Journal of Obstetrics & Gynecology, 189(1), 222-227.

Rashid, M., Clark, A., & Rashid, M.H. (2009). A randomised controlled trial comparing the efficacy of intramuscular syntometrine and intravenous syntocinon, in preventing postpartum haemorrhage. Journal of Obstetrics &

Gyn-aecology, 29(5), 396-401.

Robinson, H.E., O'Connell, C.M., Joseph, K.S., & McLeod, N.L. (2005). Maternal outcomes in pregnancies compli-cated by obesity. Obstetrics & Gynecology, 106(6), 1357-1364.

Rueangchainikhom, W., Srisuwan, S., Prommas, S., & Sarapak, S. (2009). Risk factors for primary postpartum hemor-rhage in Bhumibol Adulyadej Hospital. Journal of The

Medical Association of Thailand, 1586-1590.

Saito, K., Haruki, A., Takahashi, H., Ishikawa, H., Takahashi, T., Nagase, H., et al. (2007). Prospective study of

intra-muscular ergometrine compared with intraintra-muscular oxytocin for prevention of postpartum hemorrhage. The

Journal of Obstetrics and Gynaecology Research, 33(3),

254-258. 斎藤創,内田香,徳永英樹,今井紀昭,斎藤善雄,阿美 雅文(2002).弛緩出血発症予知のための危険因子の 再評価.日本産科婦人科学会東北連合地方部会報,49, 83. 佐村修,水之江知哉,江川美砂,花岡美生,熊谷正俊 (2008).分娩時大量出血への対応̶当院における産科 出血の要因とその対応に関する検討.日本周産期・新 生児医学会雑誌,44(4),995-998. 坂根綾子(2010).分娩時出血量に関連するリスク要因の 検討.京都母性衛生学会誌,18(1),17-22. 佐々木徹,高橋千絵,長壁由美,野平知良,岡部一裕 (2008).分娩時大量出血症例の臨床的検討.日本産科 婦人科学会東京地方部会会誌,57(2),211-213. Saunders, N.S., Paterson, C.M., & Wadsworth, J. (1992).

Neo-natal and maternal morbidity in relation to the length of the second stage of labour. British Journal of Obstetrics &

Gynaecology, 99(5), 381-385.

Sebire, N.J., Jolly, M., Harris, J.P., Wadsworth, J., Joffe, M., Beard, R.W., et al. (2001). Maternal obesity and preg-nancy outcome: a study of 287,213 pregnancies in Lon-don. International Journal of Obesity & Related Metabolic

Disorders, 25(8), 1175-1182.

Selo-Ojeme, D.O., & Okonofua, F.E. (1997). Risk factors for primary postpartum haemorrhage. A case control study.

Archives of Gynecology & Obstetrics, 259(4), 179-187.

Soltani, H., Hutchon, D.R., & Poulose, T.A. (2010). Timing of prophylactic uterotonics for the third stage of labour after vaginal birth. Cochrane Database of Systematic Reviews, Issue 8. Art. No.: CD006173. doi: 10.1002/14651858. CD006173.pub2.

Sosa, C.G., Althabe, F., Belizán, J.M., & Buekens, P. (2009). Risk factors for postpartum hemorrhage in vaginal deliveries in a Latin-American population. Obstetrics &

Gynecology, 113(6), 1313-1319.

Stotland, N.E., Caughey, A.B., Breed, E.M., & Escobar, G.J. (2005). Risk factors and obstetric complications associ-ated with macrosomia. International Journal of

Gynae-cology & Obstetrics, 87(3), 220-226.

須川佶,石河修(1983).分娩時大出血の予知̶Retrospec-tiveな検討より.産婦人科の実際,32(3),463-468.

(12)

Su, L.L., Chong, Y.S., & Samuel, M. (2007). Oxytocin ago-nists for preventing postpartum haemorrhage. Co-chrane Database of Systematic Reviews, Issue 3. Art. No.: CD005457. doi: 10.1002/14651858.CD005457.pub2. 竹村秀雄(2002).分娩後出血予防に対する適切な介入とは.

ペリネイタルケア2002新春増刊,134-142.

武内享介,舟木馨,藤田一郎,丸尾猛(2004).分娩後異 常出血の予防を目的とした分娩後の子宮収縮剤の投与 法に関する検討.産科と婦人科,71(2),245-250. Tsu, V.D. (1993). Postpartum haemorrhage in Zimbabwe: a

risk factor analysis. British Journal of Obstetrics &

Gyn-aecology, 100(4), 327-333.

World Health Organization (2009). WHO recommendations for the prevention of postpartum haemorrhage. Ge-neva, Switzerland: World Health Organization (WHO). Yasmeen, S., Danielsen, B., Moshesh, M., & Gilbert, W.M.

(2005). Is grandmultiparity an independent risk factor for adverse perinatal outcomes?. Journal of

参照

関連したドキュメント

A wait-list controlled pilot study of eye movement desensitization and reprocessing (EMDR) for children with post-traumatic stress disorder (PTSD) symptoms from

ductile fracture stage から brittle fracture stage へ移行する点(Point 1)と brittle fracture stage から final degradation stage に移行する点(Point 2)を決定する

Taichi ISHIZAWA, Satoshi WATANABE, Shingo YANO, Masaki ABURADA , Ken-ichi MIYAMOTO, Toshiyuki OJIMA, Shinya HAYASAKA:Relationship between Bathing Habits and Physical and

の後方即ち術者の位置並びにその後方において 周囲より低溶を示した.これは螢光板中の鉛硝

The system evolves from its initial state without being further affected by diffusion until the next pulse appears; Δx i x i nτ − x i nτ, and x i nτ represents the density

日林誌では、内閣府や学術会議の掲げるオープンサイエンスの推進に資するため、日林誌の論 文 PDF を公開している J-STAGE

大地 Child Labor , W orking Children, Bonded Labor Sla v ery

第 3 章ではアメーバ経営に関する先行研究の網羅的なレビューを行っている。レビュー の結果、先行研究を 8