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大学生のPMSと月経困難症に関する調査

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Academic year: 2021

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(1)Title. 大学生のPMSと月経困難症に関する調査. Author(s). 齋藤, 和佳子; 中野, 沙保; 芝木, 美沙子; 笹嶋, 由美. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 58(2): 95-107. Issue Date. 2008-02. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/88. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第58巻 第2号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.58,No.2. 平成20年2月 February,2008. 大学生のPMSと月経困難症に関する調査 斎藤和佳子・中野 沙保・芝木美沙子*・笹嶋 由美*. 北海道教育大学大学院 教育学研究科 *北海道教育大学旭川枚 臨床医科学・看護学教室. AStudyonPremenstrualSyndromeand DysmenorrheaamongUniversityStudents SAITOWakako,NAKANOSaho,SHIBAKIMisako*andSASAJIMAYumi* GraduateSchoolofEducation,HokkaidoUniversityofEducation 不DepartmentofClinicalScienceandNursing,AsahikawaCampus,HokkaidoUniversityofEducation,AsahikawaO70−8621. 要 旨 私たちは,女子大学生763名を対象に大学生のPMSと月経困難症に関する知識や月経前・月経中に起こ る不快症状についてのアンケート調査を実施した。回答数は全体で453部であり,回収率は59.4%であった。. PMSについて,「聞いたことがある」は26.3%であり,月経困難症について「聞いたことがある」は24.3% であった。月経前の不快症状の有無について,「毎回ある」は33.3%,「時々ある」は41.1%であり,月経中 の不快症状の有無について,「毎回ある」は40.6%,「時々ある」は41.3%であった。月経前・月経中の不快 症状が生活に及ぼす影響については,「恋人・友人・家族にあたってしまう」が35.4%と最も多かった。. 調査結果から,PMSや月経困難症の認知度は低いものの月経前や月経中に何らかの不快症状を感じてい る者は多く,実際に日常生活や学校生括に支障をきたしていることが明らかになった。月経と肯定的に付き 合っていくには,月経についての正しい知識を持ち,自己の身体について知ることや周囲の人の理解が大き く関わると感じる。周囲の人の月経の不快症状に対して理解を深めることを考えると,学校におけるPMS や月経困難症も含めた集団での月経に関する教育は重要であると考える。. Ⅰ.はじめに 月経前症候群(PremenstrualSyndrome:以. 日頃に浮腫,てんかん,喘息や精神症状が周期的 に起こり,月経開始とともに消失する症状を示す 患者について,月経前緊張症と報告されたのが最. 下PMSとする)とは,月経開始の3∼10日位前. 初である。現在では,Greenらの碇唱による月経. から始まる精神的,身体的症状で月経開始と共に. 前症候群の名称が用いられている1)。PMSの症状. 減退ないし消失するものであり,月経前緊張症と. がみられる者は,北村ら2)3)の報告によると,高. 同義語である。1931年にFrankが,月経前7∼10. 校生では68%,大学生では99%であるが,PMS. 95.

(3) 斎藤和佳子・中野 沙保・芝木美沙子・笹嶋 由美. を知っている者は,高校生では19%,大学生では. (119名),その他の課程に所属する者(以下その. 39%とPMSはあまり知られていないことが報告. 他の課程とする)70.4%(319名),無回答3.3%(15. されている。. 名)であった。. また,月経困難症は,月経期間中に,月経に随. 伴して起こる病的症状である。北村ら3)の報告に よると,大学生では調査対象308名全員が月経困 難症の症状があると回答し,月経困難症の認知度 は51%であった。. PMSや月経困難症は,下腹部痛や乳房痛,腰. 2.調査対象者の月経について 初経年齢について,最も多かったのは「12歳」. 38.2%(173名),次いで「11歳」23.8%(108名), 「13歳」14.6%(66名),「14歳」10.2%(46名), 「10歳以下」8.6%(39名),「15歳以上」2.9%(13. 痛などの身体症状だけでなく,憂鬱や怒りっぼく. 名)であり,全体の平均初経年齢は12.0歳であっ. なるなど精神症状も現れ,日常生活だけでなく学. た。. 校生括にも支障をきたしているのが現状である。. 今回私たちは,大学生のPMSと月経困難症に. 月経の定期性の定義を「定期的とは,月経周期 (月経の開始日から起算して,次回月経開始前日. 関する実態を把握するとともに,その症状によっ. までの日数)が25日∼38日の間にあり,その変動. て生活にどのような影響を受けているのか,そし. が6日以内にあるもの」と示して月経の定期性に. て症状を和らげるために何らかの対処をしている. ついて聞いたところ,「定期的にある(以下周期. かを調べ,今後の学校での月経教育の方法・内容. 群とする)」は67.1%(304名),「定期的ではない. を検討することを目的として本調査を行った。. (以下不順群とする)」は29.1%(132名),「わか らない」は2.9%(13名)であった。. Ⅱ.調査対象および方法 2005年10月に,北海道内のA大学の女子学生763. 課程別でみると,周期群は健康系63.9%(76名),. その他の課程68.7%(219名)であったが,有意 差はなかった。. 名を対象としてアンケート調査を実施した。調査. 月経周期日数については,周期群の304名では,. 方法は無記名自己記述式の質問用紙をゼミ単位で. 「30日」が38.8%(118名)と最も多く,「28日」. 配布し,プライバシー保護のため,記入後封筒に. 20.4%(62名),「25日」11.8%(36名)と続いた。. 入れて回収した。回収数は453部であり,回収率. 平均月経周期は28.8日であった。. は59.4%であった。. 調査結果の解析は,ズ2検定を行い,有意水準 5%をもって差があるとした。なお,集計及び統 計解析にはMicrosoftExcelおよびExcelアン ケートVer.3.0太閤を使用した。. Ⅱ.結 果 1.調査対象の概要. 学年別内訳は,1年生26.3%(119名),2年生 23.4%(106名),3年生24.3%(110名),4年生 22.1%(100名),無回答4.0%(18名)であった。. 月経が「定期的にある」「定期的ではない」と. 答えた者436名に月経持続期間について質問した ところ,3∼7日の正常範囲内である者79.1% (345名),2日以内の過短月経0.5%(2名),8 日以上の過長月経6.0%(26名)であった。. 3.学校での月経教育 学校での月経教育の有無を質問したところ,「受 けたことがある」93.8%(425名),「受けたこと がない」1.8%(8名)であった。. 月経教育を受けた場所では,最も多かったのは 「/ト学校」95.1%(404名)で,次いで「中学校」. 課程別内訳は,保健や社会福祉について学んでい. 79.1%(336名),「高校」49.9%(212名),「大学_1. る課程に所属する者(以下健康系とする)26.3%. 11.8%(50名)であった。. 96.

(4) 大学生のPMSと月経困難症に関する調査. 月経教育を受けた機会について最も多かったの. は月経指導を受けたことがある者26.1%(111名). は「保健の授業」86.1%(366名)で,次いで「初. に対し,月経指導を受けたことがない者12.5%(1. 経指導」56.0%(238名),「学校行事の前」40.5%. 名)であったが,有意差はなかった。. (172名),「保健室来室時」4.2%(18名),その. 以下の項目は,PMSについて聞いたことがあ ると答えた119名に質問した。PMSを何で知っ. 他1.9%(8名)であった。. 月経教育の内容について最も多かったのは「生. たのかでは,最も多かったのは「雑誌」47.1%(56. 殖器官の発達と月経の仕組み」92.7%(394名)で,. 名)であった。次いで「家族・友人」26.1%(31. 次いで「妊娠・出産について」80.2%(341名),「月. 名),「TV」17.6%(21名),「学校」16.8%(20. 経に関する個人差について」76.9%(327名)な. 名),「インターネット」14.3%(17名),「新聞」「病. どが多かった。しかし,「月経困難症について」. 院」がそれぞれ7.6%(9名),その他4.2%(5名). は4.5%(19名)であり,「PMS(月経前症候群). であった。課程別でみると,「学校」が健康系27.3%. について」は4.2%(18名)と少なかった。. (12名)に対し,その他の課程11.0%(8名)と, 健康系が有意に高かった(P<0.05)。. PMSの症状について質問したところ,「知って. 4.PMS・月経囲証症の認知について 1)pMSについて. いる」84.0%(100名),「知らない」14.3%(17名). PMSについて「聞いたことがある」26.3%(119 名),「聞いたことがない」は72.8%(330名)であっ. であった。課程別でみると,「知っている」は健. 康系88.6%(39名)に対し,その他の課程80.8% (59名)であったが,有意差はなかった。学年別. た。. 課程別でみると,「聞いたことがある」は健康. でみると,「知っている」は1・2年生80.5%(33. 系37.0%(44名)に対し,その他の課程22.9%(73. 名)に対し,3・4年生86.5%(64名)であった. 名)と健康系が有意に高かった(P<0.01)(図1)。. が,有意差はなかった。 PMSの改善策について質問したところ,「知っ. 学年別でみると,「聞いたことがある」は1・. 2年生18.2%(41名)に対し,3・4年生35.2% (74名)と3・4年生が有意に高かった(P<. ている」32.8%(39名),「知らない」65.5%(78 名)であった。課程別でみると,「知っている」. は健康系45.5%(20名)に対し,その他の課程. 0.001)。. 定期性でみると,「聞いたことがある」は周期. 26.0%(19名)と健康系が有意に高かった(P<. 群26.0%(79名)に対し,不順群28.0%(37名). 0.05)。学年別でみると,「知っている」は1・2. であったが,有意差はなかった。. 年生22.0%(9名)に対し,3・4年生37.8%(28 名)であったが,有意差はなかった。. 月経指導の有無でみると,「聞いたことがある」. 全体 n=453. 全体 ∩=453. 健康系∩=119. 健康系∩=119. その他n=319. その他n=319. 0% □ない. 50% ■ある. 100% 日無回答. 0%. 100%. 50% ロない. ■ある. 日無回答 *Pく0.05. **Pく0.01. 図1 PMS認知(課程別). 図2 月経困難症認知(課程別). 97.

(5) 斎藤和佳子・中野 沙保・芝木美沙子・笹嶋 由美. 2)月経囲瓢症について 月経困難症について「聞いたことがある」24.3% (110名),「聞いたことがない」は74.0%(335名) であった。. 課程別でみると,「聞いたことがある」は健康. は健康系48.6%(18名)に対し,その他の課程 23.5%(16名)と健康系が有意に高かった(P< 0.01)。学年別でみると,「知っている」は1・2. 年生30.0%(12名)に対し,3・4年生33.8%(23 名)であったが,有意差はなかった。. 系31.1%(37名)に対し,その他の課程21.3%(68 名)と健康系が有意に高かった(P<0.05)(図2)。 学年別でみると,「聞いたことがある」は1・. 2年生17.8%(40名)に対し,3・4年生32.4% (68名)と3・4年生が有意に高かった(P< 0.005)。. 定期性でみると,「聞いたことがある」は周期 群25.0%(76名)に対し,不順群25.0%(33名) と同様であった。 月経指導の有無でみると,「聞いたことがある」. 5.月経前・月経中の体の変化について 月経前・月経中の身体の変化について聞いたと. ころ,月経前・月経中ともに症状があるのは 67.8%(307名),月経中のみは13.5%(61名), 月経前のみは4.9%(22名),症状がない者は8.6% (39名)であり,月経前または月経中に症状があ る者は86.1%(390名)であった。 定期性でみると,症状がある者は周期群86.5% (263名)に対し,不順群84.8%(112名)であっ. は月経指導を受けたことがある24.0%(102名). たが,有意差はなかった。. に対し,月経指導を受けたことがない37.5%(3. 1)月経前の不快症状の出現について. 名)であったが,有意差はなかった。. 以下の項目は,月経困難症について聞いたこと. 月経前の不快症状については,「毎回ある」 33.3%(151名),「時々ある」41.1%(186名),「な. があると答えた者110名に質問した。月経困難症. い」23.0%(104名)であった。「毎回ある」「時々. を何で知ったのかでは,最も多かったのは「家族・. ある」を『症状あり』としたところ,74.4%(337. 友人から」37.3%(41名)であった。次いで「雑. 名)であった。. 誌」33.6%(37名),「学校」26.4%(29名),「T. 課程別にみると,『症状あり』は健康系82.4%(98. V」15.5%(17名),「新聞」12.7%(14名),「イ. 名)に対し,その他の課程70.8%(226名)と健. ンターネット」9.1%(10名),「病院」7.3%(8. 康系の方が有意に多かった(P<0.05)。. 名),その他4.5%(5名)であった。課程別でみ ると,「学校」で知った者が健康系40.5%(15名). に対し,その他の課程19.1%(13名)と,健康系 が有意に高かった(P<0.05)。. 月経困難症の症状について質問したところ, 「知っている」77.3%(85名),「知らない」20.9%. 定期性でみると,『症状あり』は周期群75.3%. (229名)に対し,不順群72.7%(96名)であっ たが,有意差はなかった。 PMSの認知別でみると,『症状あり』は認知群 84.9%(101名)に対し,非認知群71.2%(235名) と認知群の方が多かった(P<0.01)。. (23名)であった。課程別でみると,「知っている」. PMS解消法の認知別でみると,『症状あり』は. は健康系86.5%(32名)に対し,その他の課程. 解消法認知群89.7%(35名)に対し,解消法非認. 73.5%(50名)であったが,有意差はなかった。. 知群82.1%(64名)であったが,有意差はなかっ. 学年別でみると,「知っている」は1・2年生. た。. 75.0%(30名)に対し,3・4年生79.4%(54名) であったが,有意差はなかった。 月経困難症の改善策について質問したところ, 「知っている」31.8%(35名),「知らない」66.4% (73名)であった。課程別でみると,「知っている」. 98. 月経前の不快症状は何日前から始まり何日間続 くか質問したところ,平均で4.6日前から,3.7日 間であった。最大で17日前から始まる者がおり, 最長で14日間続く者もいた∩.

(6) 大学生のPMSと月経困難症に関する調査. 表1 月経前の症状とPMS認知. 2)月経前の不快症状(表1). 名(%). 月経前の不快症状で,最も多かったのは「いら いら」49.3%(166名)で,次いで「眠気」47.2%. n=337. (159名),「下腹部痛」46.0%(155名),「乳房痛」. 39.2%(132名),「にきび」38.6%(130名),「食. いらいら. 欲克進」37.1%(125名)などであった。. 眠気. PMSの認知別でみると,「いらいら」「食欲克進」. 下腹部痛. 「情緒不安定」「肩こり」(共にP<0.001),「乳 乳房痛 房痛」「ゆううつ」「不機嫌」「感情的になる」「涙 もろい」「妄想的になる」(共にP<0.01),「眠気」. にきび. 「怒りっぼい」「疲れやすくなる」「足腰がだるい」. 食欲克進. 「不安感」「意欲減退」「落ち着かない」「口数が. 怒りっぼい. 増える,減る」「吐き気」(共にP<0.05)が,. ゆううつ. PMSを「聞いたことがある」と答えた認知群の. 情緒不安定 102. 方が有意に高く,「聞いたことがない」非認知群. 不機嫌. の方が有意に高い項目はなかった。. 月経前の不快症状の数は1∼29個で平均7.0個 であった。 3)月経中の不快症状の出現について. 月経中の不快症状については,「毎回ある」 40.6%(184名),「時々ある」41.3%(187名),「な い」13.5%(61名)であった。「毎回ある」「時々. 腰痛 感情的になる 疲れやすくな る. 便秘 足腰がだるい 不安感. ある」を『症状あり』としたところ,81.9%(371 名)であった。 課程別にみると,『症状あり』は健康系84.9% (101名)に対し,その他の課程80.9%(258名). であったが,有為差はなかった。 定期性でみると,『症状あり』は周期群82.6% (251名)に対し,不順群80.3%(106名)であっ. 集中力低下 意欲減退 頭痛 むくみ. 落ち着かない 涙もろい. たが,有意差はなかった。 月経困難症の認知別でみると,『症状あり』は 認知群87.3%(96名)に対し,非認知群81.5%(273 名)であったが,有意差はなかった。. 月経困難症解消法の認知別でみると,『症状あ り』は解消法認知群91.4%(32名)に対し,解消. 法非認知群84.9%(62名)であったが,有意差は. 微熱 肩こり 下痢 口数が増え る,減る. 妄想的になる 吐き気. なかった。. 月経中の不快症状は月経開始何日目から何日間 続くか質問したところ,平均で1.2日目から2.9日 間であった。最長で10日間続く者がいた。. PMS認知. 全体. 食欲不振 その他. 知ってる n=101 知らか− n=235 検定. 166 (49.3) 159 (47.2) 155 (46.0) 132 (39.2) 130 (38.6) 125 (37.1) 111 (32.9) 104 (30.9). 69 96 *** (68.3) (40.9) 58 100 * (57.4) (42.6) 48 107 (47.5) (45.5) 52 79 ** (51.5) (33.6) 46 83 (45.5) (35.3) 51 74 *** (50.5) (31.5) 43 68 (42.6) (28.9). *. 43 61 ** (42.6) (26.0). (30.3) (43.6) 44(24.7). 58 ***. 102 (30.3) 98 (29.1) 91 (27.0) 89 (26.4) 86 (25.5) 76 (22.6) 65 (19.3) 61 (18.1) 57 (16.9) 49 (14.5) 45 (13.4) 43. 42 60 ** (41.6) (25.5) 35 63 (34.7) (26.8). 42 (12.5) 40 (11.9) 39 (11.6) 28 (8.3) 27 (8.0) 26 (7.7) 11 (3.3) 10 (3.0) 18 (5.3). 20 22 ** (19.8) (22.0) 14 26 (13.9) (11.1). 39 52 ** (38.6) (22.1) 35 (34.7) (23.0) 33 53 (32.7) (22.6). 54 *. 31 45 (30.7) (19.1). *. 38 *. 27 (26.7) (16.2) 17 44 (16.8) (18.7). 32 *. 25 (24.8) (13.6) 14 35 (13.9) (14.9) 18 27 (17.8) (11.5) 19. 24 * (12.8) (18.8) (10.2) 21 18 *** (20.8) (7.7) 10 18 (9.9) (7.7) 14 (13.9) (5.5). 13 *. 14 12 ** (13.9) (5.1) 7. 4 *. 3. 7. (6.9) (1.7) (3.0) (3.0) 7 11 (6.9) (4.7). (*p<0.05 **p<0.01***p<0.001). 99.

(7) 斎藤和佳子・中野 沙保・芝木美沙子・笹嶋 由美. 表2 月経中の症状と月経困難症認知. 4)月経中の不快症状(表2) 名(%). 月経困難症認知. 全体 n=371. 下腹部痛 腰痛 眠気 足腰がだるい いらいら ゆううつ 疲れやすくな る. 不機嫌 下痢 集中力低下 怒りっぼい にきび. 情緒不安定 意欲減退 頭痛 食欲克進 感情的になる 乳房痛. 落ち着かない 肩こり 食欲不振 むくみ 吐き気 便秘 不安感 微熱 口数が増え る,減る. 涙もろい 妄想的になる その他. 部痛」85.4%(317名)であった。次いで「腰痛」. 知ってる n=96 知らか− n=273 検定. 317 (85.4) 214 (57.7) 194 (52.3) 149 (40.2) 148 (39.9) 133 (35.8) 118 (31.8) 97 (26.1) 86 (23.2) 85. 84 (87.5) 58 (60.4) 55 (57.3) 42 (43.8) 46 (47.9) 37 (38.5) 36 (37.5) 26 (27.1). 57.7%(214名),「眠気」52.3%(194名),「足腰. 233 (85.3) 156 (57.1) 138 (50.5) 107 (39.2) 101 (37.0) 96 (35.2) 82 (30.0) 71 (26.0). 31 55 (32.3) (20.1) 24 61. がだるい」40.2%(149名),「いらいら」39.9%(148 名),「ゆううつ」35.8%(133名),「疲れやすく なる」31.8%(118名)などであった。 月経困難症の認知別にみると,「乳房痛」(P< 0.01),「下痢」「落ち着かない」「吐き気」「微熱」 (共にP<0.05)が,月経困難症を「聞いたこと. がある」と答えた認知群の方が有意に高く,「聞 いたことがない」非認知群の方が有意に高い項目 はなかった。. *. 月経中の不快症状の数は1∼30個で平均7.5個 であった。. (22.9) (25.0) (22.3) 84. 26. 57. (22.6) (27.1) (20.9). 6.月経前・月経中の症状解消について. 78 20 58 (21.0) (20.8) (21.2) 72 25 47. 月経前の不快症状について,『症状あり』と答 えた337名に月経前の症状を解消するためにして. (19.4) (26.0) (17.2) 69 (18.6) 65 (17.5) 63 (17.0) 61 (16.4) 59 (15.9) 47. 21 (21.9) 22 (22.9) 20 (20.8) 19 (19.8). 48 (17.6) 43 (15.8) 43 (15.8) 41 (15.0). 45 (12.1) 44 (11.9) 42 (11.3) 40 (10.8) 39 (10.5) 39 (10.5) 34 (9.2) 30 (8.1) 27 (7.3) 19 (5.1) 17 (4.6). 15 30 (15.6) (11.0) 16 28 (16.7) (10.3) 14 28 (14.6) (10.3). いることを聞いたところ,最も多かったのは「睡 眠」46.9%(158名)で,次いで「下腹部保温」37.4% (126名),「薬服用」30.9%(104名)などであり, 「何もしない」19.6%(66名)であった(表3)。. PMSの認知別にみると,「下腹部保温」「気分. 24 35 ** (25.0) (12.8) 18. 29 * (12.7) (18.8) (10.6). 17 23 (17.7) (8.4) 14 25 (14.6) (9.2) 10 29 (10.4) (10.6). 転換」(共にP<0.001),「冷やさない」「マッサー. ジ」(共にP<0.01),「薬服用」(P<0.05)は PMS認知群の方が有意に高く,「何もしない」は 非認知群の方が有意に高かった(P<0.01)。. 定期性,課程別,PMS解消法の認知別にみた. *. 20 *. 14 (14.6) (7.3) 12 18 (12.5) (6.6) 8 18 (8.3) (6.6) 4 15 (4.2) (5.5) 6 10 (6.3) (3.7). (*p<0.05 **p<0.01***p<0.001). 100. 月経中の不快症状で,最も多かったのは「下腹. が,有意差はなかった。 月経中の不快症状について,『症状あり』と答 えた371名に月経中の症状を解消するためにして いることを聞いたところ,最も多かったのは「下 腹部保温」48.2%(179名)で,次いで「薬服用」 43.1%(160名)などであり,「何もしない」11.3% (42名)であった(表4)。. 課程別にみると,「マッサージ」について健康 系21.8%(22名)に対し,その他の課程10.1%(26 名)と,健康系が有意に高かった(P<0.01)。 月経困難症の認知別にみると,「下腹部保温」「薬.

(8) 大学生のPMSと月経困難症に関する調査. 表4 月経中症状の解消法と困難症認知. 表3 月経前症状の解消法とPMS認知 名(%). PMS認知. 全体 n=337. 睦眠. 下腹部保温 冷やさない 気分転換 マッサージ. その他 何もしない. 困難症認知. 全体. 知ってる n=101 知らか− n=235 検定. 158 55 103 (46.9) (54.5) (43.8) 126 52. 74 *** (37.4) (51.5) (31.5). 薬服用. 名(%). 65 *. 104 39 (30.9) (38.6) (27.7) 94 39 55 ** (27.9) (38.6) (23.4) 61 30 31 *** (18.1) (29.7) (13.2) 38 20 18 ** (11.3) (19.8) (7.7) 16 7 9 * (4.7) (6.9) (3.8) 66 12. 53 ** (19.6) (11.9) (22.6). n=371. 下腹部保温 179. 分転換」「マッサージ」(共にP<0.05)は,月経. (48.2) (62.5) 60(43.2) 160. 118 **. 54. 106 **. 49. 105 *. 薬服用. (43.1) (56.3) (38.8). 首垂眠. (41.5) (51.0) (38.5). 冷やさない 気分転換 マッサージ. 154. 39. 79 *. 19. 32 *. 49. 19. 30 *. 13. 7. 118. (31.8) (40.6) (28.9) 51. (13.7) (19.8) (11.7) (13.2) (19.8) (11.0). 6 *. その他. (3.5) (7.3) (2.2). 何もしない. 37 * (11.3) (5.2) (13.6). 42. 5. (*p<0.05 **p<0.01***p<0.001). (*p<0.05 **p<0.01***p<0.001) 服用」(共にP<0.01),「睡眠」「冷やさない」「気. 知ってる n=96 知らか− n=273 検定. 8.受診・治療について. 月経前または月経中に不快症状があると答えた. 困難症認知群の方が有意に高く,「何もしない」. 者390名に月経前・月経中の不快な症状に対する. は非認知群の方が有意に高かった(P<0.05)。. 治療の有無について聞いたところ,治療を受けた. 月経困難症解消法の認知別にみると,「薬服用」 「冷やさない」「マッサージ」(共にP<0.05)が. 月経困難症解消法の認知群の方が有意に高かっ た。 定期性では有意差はなかった。. ことが「ある」6.2%(24名),「ない」85.9%(335 名),「受診したいと思うが行ったことはない」 5.4%(21名)であった。受診しない理由としては, 「抵抗がある」「怖い」等があげられていた。 定期性でみると,「ある」は周期群4.6%(12名). に対し,不順群8.0%(9名)であったが,有意 7.知りたい情報. 差はなかった。. PMSや月経困難症について,学べるとしたら, どのような方法・内容の教育を受けたいかを聞い たところ,「対処方法を教えてほしい」59.6%(270. 9.生活への影響と周囲の理解. 月経前・月経中に不快症状があると答えた390. 名)が最も多く,次いで「症状などの具体的教育」. 名に月経前・月経中の不快症状が生活に及ぼす影. 48.8%(221名),「初経指導・月経指導の時に話. 響について聞いたところ,最も多かったのは「恋. してほしい」44.2%(200名),「周囲の理解が深. 人・友人・家族にあたってしまう」36.4%(142名). まる教育」29.1%(132名),「個人に合わせた教育」. で,次いで「食生活が乱れる」29.7%(116名),「保. 28.0%(127名),「月経の仕組みなど具体的な教育」. 健室に行く」29.5%(115名),「思うように運動. 21.9%(99名)であり,「学びたくない」という. ができない」26.7%(104名),「登校が困難」22.3%. 者が1.5%(7名)であった。. 不快症状の有無でみると,「症状について知り. (87名),「学習が困難」7.4%(29名),「その他」 3.1%(12名)であり,「影響がない」という者は. たい」では,不快症状のある者50.5%(197名). 17.7%(69名)であった。その他の影響について. に対し,症状のない者30.8%(12名)と,不快症. 自由記述を求めたところ,「(主に男性の)教官に. 状のある者が有意に高かった(P<0.05)。. 理解してもらえない」「月経困難症による欠席が,. 101.

(9) 斎藤和佳子・中野 沙保・芝木美沙子・笹嶋 由美. 通常の欠席扱いになるのは納得いかない」などの. とした調査では,月経周期28∼31日の者が92.2%. 回答があった。. であり,平均月経周期は29.0日であった。また,. 定期性でみると,「思うように運動ができない」. 北村ら2)が高校生を対象とした調査では平均月経. が周期群23.6%(62名)に対し,不順群では34.8%. 周期は28.4日であった。これらの調査では,質問. (39名)と不順群の方が有意に高かった(P< 0.05)。. 月経前,月経中の不快な症状に対する周囲の理 解は,「ある」23.1%(90名),「少しある」34.4%. に月経周期の正常範囲は定義されておらず本調査 と同様の方法とはいえない。しかし,このことを. 踏まえても初経から8年程経ち,高校生に比べる と身体的な発達が安定してきてはいるが,身体的. (134名),「どちらともいえない」24.9%(97名),. に未熟な面によりホルモンの分泌に影響するなど. 「あまりない」9.2%(36名),「ない」4.6%(18. 個人差があると思われる。その他にも食事や睡眠,. 名)であった。. 周囲の理解が「ある」と「少しある」を『理解 あり』とし,「あまりない」と「ない」を『理解 なし』として,生活への影響をみると,「学習が 困難」も『理解あり』では5.8%(13名)に対し, 『理解なし』では14.3%(8名)と有意に高かっ た(P<0.05)。. ストレスなどの生活習慣も影響していると考えら れる。 また,月経の定期性について,少数ではあるが. 「わからない」と答えていた者がいた。続発性無 月経や周期を覚えていないという理由が考えら れ,月経を記録して,自己のからだについて理解 する必要があると思われる。. 月経持続期間は,約8割の者が正常範囲内で Ⅳ.考 察 1.初経年齢について. あったが,過短月経が2名,過長月経27名であり,. 場合によっては婦人科の受診の必要性も考えられ る。. 全体の平均初経年齢は12.0歳であり,今回対象 とした大学生が小学生・中学生であった頃の1997. 年の全国平均初初経年齢は12歳2.0ケ月であり4), ほぼ同様であった。 初経年齢が早発月経にあたる9歳の者が1名,. 3.PMS・月経困難症の認知 PMSの認知度については,「聞いたことがない」. 72.8%で,2004年に志渡ら6)の看護・医療福祉系 大学生を対象とした調査の「PMSを聞いたこと. 遅発月経にあたる15歳以上の者が13名であった。. がない」78.3%と同様であり,PMSの認知度は. 平成11年5月改訂の小学校学習指導要領では,初. 低かった。また,月経前の不快症状が「毎回ある」. 経を含む「思春期の体の変化」を第4学年で指導. 33.3%,「時々ある」41.1%であることから,症. することになっており5),児童の発育・発達の早. 状はあってもPMSとは知らない者が多いという. 期化へ対応しているが,本調査でみられた早発月. ことが示唆される。. 経や遅発月経への個別的な配慮も重要であると考 える。. 課程別でみると,「聞いたことがある」で健康 系が有意に高かった。これは,健康系には養護教 諭養成課程や保健体育科の学生が含まれており,. 2.月経について. 月経の定期性について,約3割の者が「定期的 ではない」と答えていた。2001年の北村ら3)の大. これまで受けてきた教育や興味・関心などが影響 したためと考えられる。. PMSについての情報源を課程別でみると,「学. 学生の調査では「定期的ではない」が16.7%,2002. 校」は健康系27.3%に対し,その他11.0%と,健. 年の北村ら2)の高校生の調査では「定期的ではな. 康系が有意に高かった。このことは,健康系の学. い」が39.9%であった。北村ら3)の大学生を対象. 生に養護教諭養成課程や保健体育科の学生が含ま. 102.

(10) 大学生のPMSと月経困難症に関する調査. れており,これまでに受けてきた教育が影響した. 4.月経前・月経中の体の変化について. ためであると考えられる。. 1)月経前について. PMSを聞いたことがあると答えた者にPMS. 月経前の不快症状は77.4%の者が「毎回ある」. の症状について質問したところ,84.0%の者が. 「時々ある」と答えていた。PMSの認知度は低. 「知っている」と答えたが,PMSの改善策にっ. いものの,月経前に何らかの不快症状を感じてい. いては,「知っている」と答えた者が32.8%であっ. る者は多く,日常生活や学校生括に支障をきたし. た。このことから,PMSの症状は認知している. ている可能性があると考えられる。定期性でみる. が,改善の方法はほとんど知られていなかった。. と,有意差はなく,周期群と不順群共に約7割の. 月経困難症の認知度については,「聞いたこと. がない」は74.0%であった。2002年に北村ら2)が. 者が月経前の不快症状を感じていた。. 課程別では,健康系の方が症状を訴える者が多. 高校生に実施した調査では「知らない」が68.9%. く,PMSについて聞いたことがある認知群の方. であり,月経困難症の認知度は低いといえる。. が症状を訴える者が多かった。これは,PMSを. 課程別でみると,「聞いたことがある」で健康 系が有意に高かった。これは,PMSの認知度と 同様に健康系には養護教諭養成課程や保健体育科. 知っている者の方がより月経前の身体の変化を自 覚しているためと考えられる。. 月経前の不快症状の内容について,2001年の北. の学生が含まれており,これまで受けてきた教育. 村ら3)の大学生の調査では「いらいら」が最も多. や興味・関心などが影響したためと考えられる。. く,「眠気」「下腹部痛」「乳房痛」と続いた。本. 月経困難症についての情報源において,課程別 でみると,「学校」では健康系40.5%に対し,そ. 調査でもほぼ同様の結果であった。. PMSのそれぞれの症状をPMSの認知別でみ. の他の課程19.1%と,健康系が有意に高かった。. ると多くの項目で認知群の方が有意に多かった。. このことは,PMSについての情報源と同様に健. これは,PMSという症状があることを知ってお. 康系の学生に養護教諭養成課程や保健体育科の学. り,月経前の症状を自覚しやすいためと思われる。. 生が含まれており,これまでに受けてきた教育が. 「食欲克進」は,特にこの年代の女性において. 影響したためと考えられる。. 月経困難症を聞いたことがある者では,その症. は悩みになりやすい症状である。PMS特有の症 状であることを知っていれば,そのような悩みや. 状について,77.3%の者が「知っている」と答え. ストレスを感じずに過ごせる可能性も考えられ,. たが,月経困難症の改善策については「知ってい. PMSの症状に関する具体的な知識も学ぶ必要が. る」と答えた者は31.8%であった。PMSと同様. ある。. に月経困難症の症状は認知しているが,改善の方 法はほとんど知られていなかった。. 月経を肯定的にとらえさせるためには,月経随. 一般にはストレスが多いとPMSの症状も悪化 するといわれているが,ストレスが月経前症状を 悪化させるというよりも,PMSの女性は,気分. 伴症状をセルフケアできることが大切である。自. や葛藤,人間関係での不満を内在化し,ストレス. 分の身体の変化を理解することや問題に対処でき. を蓄積しやすく,そのことによって自らの症状を. る力を育むことで,月経を女性の健康のバロメー. 悪化させるという可能性があると言われており7),. ターと肯定的にとらえさせる教育が望まれる。. 一人ひとりの性格特性も考慮した指導が展開され. PMSと月経困難症について,ともに認知度の 低さを解消するために,保健室を健康情報セン ターとして位置付け,正しい情報を発達段階にあ わせて提供していくことが望まれる。. るべきである。 2)月経中について 月経中の不快症状の有無について,81.9%の者. が「毎回ある」「時々ある」と答え,月経前より 月経中の方が不快症状を感じている割合が高かっ. 103.

(11) 斎藤和佳子・中野 沙保・芝木美沙子・笹嶋 由美. た。. 月経中の不快症状の内容について,2001年の北. 月経前の症状を解消するためにしていることに ついて,PMS認知群の方が多くの項目で解消法. 村ら4)の大学生を対象とした調査では「下腹部痛」. を実施している者が多く,PMSを知らせること. が最も多く,「いらいら」「腰痛」「眠気」と続いた。. で,PMSの症状に対し,積極的に対処すること. 本調査でもほぼ同様の結果であった。. が出来るようになると思われる。. 月経困難症のそれぞれの症状を月経困難症の認. 月経中の症状を解消するためにしていることに. 知でみると,有意差があったのは5項目だが,ほ. っいて,2003年の野田10)の調査では「備になる」. とんどの項目で症状を自覚している者が認知群の. が最も多く,次いで「鎮痛剤の服用」「下腹部の. 方が高かった。これは,月経困難症の症状の内容. 保温」「暖かい服装」などがあげられ,本調査で. を知っている認知群の方がより月経中の身体の変. もほぼ同様であった。しかし本調査においては,. 化を理解しているためと考えられる。月経の成熟. 月経中に症状のある者の約1剥が「何もしていな. には初経から7年を要する辛が明らかにされてい. い」と答えており,この学生の中には「症状が出. るが,受験勉強,家庭生活での不安という持続的. ても我慢する」と考える者も含まれていると思わ. ストレス状況が,月経周期の発達に影響すること. れる。. が示唆されている8)。このため大学生の年代にか. 月経困難症を知っている者の方が多くの項目で. かっても思春期に多く見られる機能性月経困難が. 解消法を実践している者が多く,PMSと同様に. 現れていることも考えられる。また,子宮の疾患. 月経困難症について知らせることで,症状に対し,. である器質性月経困難が存在している可能性もあ. 積極的に対処出来るようになると思われる。また,. り,月経困難症に関わる疾患や発達段階に合った. 月経困難症の解消法を知っている者の方が有意に. 指導が必要である。. 多く,解消法を実施していたが,全体的にセルフ. 月経前から月経中にかけて「いらいらする」な. ケア行動の知識不足を感じさせる。全国規模で行. どの精神症状を訴える者も多く,長い月経時期を. われたMSG研究会の調査11)によると,20歳∼24. 考えると日常生活に与える影響は大きいと思われ. 歳のうち月経中に不快症状がある者の割合が9割. る。月経随伴症状はストレスや偏った食事,痛く. に達し,このことからも,小・中学生のうちから. なるのではないかという不安感でひどくなる場合. 自分のからだの変化を理解し,症状に適切に対処. も多いと言われ9),月経指導の中に月経中の食生. するセルフケア能力の育成が望まれる∩. 活や月経痛を軽減するためのストレッチなど積極 的な対処法を取り入れ,快適に生活できるよう援 助する必要がある。. 6.知りたい情幸馴こついて. 知りたい情報において,不快症状の有無でみる と,「症状について知りたい」では,不快症状の. 5.月経前・月経中の症状解消について 月経前の症状を解消するためにしていることと. ある者50.7%に対し,症状のない者30.8%と不快 症状のある者が有意に高かった。このことは,不. して,北村らの3)自由記述による調査では,「気. 快症状のある者は自己の不快症状について,月経. 分転換」「カラオケ」「運動」「音楽鑑賞」「趣味な. 随伴症状に当てはまるのか知り,より理解したい. どでストレス発散」など積極的対応があげられて. という思いがあるように感じた。. いたが,本調査では「睡眠」の割合が高い結果と なっている。「睡眠」と答えた学生の中には,症 状に対処しようと積極的に睡眠をとる者もいると. 7.受診・治療について. 月経前,月経中に不快症状があると答えた者412. 思われるが,認知度の低さを考えると,症状を紛. 名の中で受診・治療を行ったことが「ある」6.1%. らわそうとして睡眠をとる者が多いと思われた。. であった。北村ら3)の大学生を対象とした調査で. 104.

(12) 大学生のPMSと月経困難症に関する調査. は,PMSもしくは月経困難症で婦人科などを受 診したことがある者は7.8%であり,同様の結果 であった。PMSや月経困難症の認知度が低かっ. Ⅴ.まとめ 北海道内のA大学の女子学生763名を対象に大. たことから,月経前や月経中に不快症状を感じな. 学生のPMSと月経困難症に関する知識や月経. がらも婦人科などの受診を考えなかったり,婦人. 前・月経中に起こる不快症状についての実態調査. 科を受診することへの抵抗感や恐怖心のため,受. を行い,453名の学生から次のような結果を得た。. 診しない者がいることがわかった。産婦人科医や. 1)月経の定期性について,29.1%の者が「定期. 保健師等の学校外の専門家に協力を依頼し,連携. 的ではない」と答えていた。初経から8年程経. を図り月経を含めた性教育を積極的に行うこと. ち,高校生に比べると身体的な発達が安定して. で,抵抗感や恐怖心を軽減する一助になるのでは. きてはいるが,身体的に未熟な面によりホルモ. ないかと感じる。また,近年増加している思春期. ンの分泌に影響するなど個人差があると思われ. の婦人科外来にも期待したい。. る。その他にも食事や睡眠,ストレスなどの生 活習慣も影響していると考えられる。. 8.生活への影響と周囲の理解. 2)pMSの認知については,「聞いたことがない」. 生活への影響について,北村ら3)の大学生を対. 72.8%,月経困難症については74.0%であり,. 象とした調査では「恋人・友人にあたってしまう」. PMS・月経困難症の認知度は低かった。課程. が最も多く,「保健室で休む」「思うようにスポー. 別でみると,ともに「聞いたことがある」で健. ツができない」「登校困難」と続いた。本調査で. 康系が有意に高かった。これは,健康系には養. もほぼ同様の結果であった。. 護教諭養成課程や保健体育科の学生が含まれて. 月経前・月経中の不快症状について小・中学校 や高等学校では養護教諭が中心となって情報を碇 供し,教員間の共通理解を図り,学生が症状を訴. えやすい環境作りを進める必要性がある。また, 大学においても不快症状について教員に対して理 解を求めていることがわかった。. 月経前・月経中の不快な症状に対する周囲の理. おり,これまで受けてきた教育や興味・関心な どが影響したためと考えられる。. 3)pMSを聞いたことがあると答えた者にPMS の症状について質問したところ,84.0%の者が. 「知っている」と答えたが,PMSの改善策に ついては,「知っている」と答えた者が32.8%. であった。このことから,PMSの症状は認知. 解は,約6割の者が「ある」「少しある」であった。. していても,改善の方法はほとんど知られてい. 2002年の北村ら3)の高校生の調査において,. ないことがわかる。. PMSの行動に対する周囲の理解は「理解がある」. 4)月経困難症を聞いたことがあると答えた者に. 21.0%,「わからない」76.7%であり,月経困難. 月経困難症の症状について質問したところ,. 症についてもほぼ同様の結果である。これと比較. 77.3%の者が「知っている」と答えたが,月経. すると,肯定的な意見を示す者が多かった。月経. 困難症の改善策については「知っている」と答. 前の不快症状では74.4%の者が,月経中の不快症. えた者は31.8%であった。このことから,. 状では81.9%の者が「毎回ある」「時々ある」と. PMSと同様に月経困難症の症状は認知してい. 答えており,自分も同様の症状を持つために相手. ても,改善の方法はほとんど知られていないこ. のことも理解ができることや,高校生などの思春. とがわかる。. 期の頃よりも月経についての話がしやすい環境に 変化してきたためと考えられる。. 5)月経前の不快症状は,77.4%の者が「毎回あ. る」「時々ある」と答えていた。PMSの認知 度は低いものの,月経前に何らかの不快症状を. 感じている者は多く,日常生活や学校生括に支. 105.

(13) 斎藤和佳子・中野 沙保・芝木美沙子・笹嶋 由美. 障をきたしている可能性があると考えられる。 6)月経前の不快症状で,最も多かったのは「い. 家族にあたってしまう」36.4%であった。次い で「食生活が乱れる」29.7%,「保健室に行く」. らいら」49.3%で,次いで「眠気」47.2%,「下. 29.5%であり,「影響がない」という者が17.7%. 腹部痛」46.0%,「乳房痛」39.2%,「にきび」. であった。. 38.6%,「食欲克進」37.1%などであった。 7)月経前の不快症状の内容について,PMSの. 15)その他の影響について自由記述を求めたとこ ろ,「(主に男性の)教官に理解してもらえない」. 認知別にみると,多くの項目で認知群が非認知. 「月経困難症による欠席が,通常の欠席扱いに. 群よりも有意に高かった。これは,PMSの症. なるのは納得いかない」などがあり,大学にお. 状の内容を知っている認知群の方がより月経前. いても不快症状について教官に理解を求めてい. の身体の変化をを自覚していることによるもの. た。. と考えられる。 8)月経中の不快症状の有無は,81.9%の者が「毎. 以上の結果により,PMSや月経困難症の認知. 回ある」「時々ある」と答えていた。PMSと. 度は低いものの月経前や月経中に何らかの不快症. 同様に,月経困難症の認知度は低いものの,月. 状を感じている者は多く,実際に日常生活や学校. 経中に何らかの不快症状を感じている者は多. 生括に支障をきたしていることが明らかになっ. く,日常生活や学校生括に支障をきたしている. た。. 可能性があると考えられる。 9)月経中の不快症状で,最も多かったのは「下. PMSや月経困難症は身体面だけでなく精神面 にも影響を与え,何も知識がない場合,毎月訪れ. 腹部痛」85.4%で,次いで「腰痛」57.7%,「眠. る痛みや不安感にふさぎ込んでしまう場合も考え. 気」52.3%,「足腰がだるい」40.2%,「いらい. られる。そして,女性が月経を健康のバロメーター. ら」39.9%,「ゆううつ」35.8%,「疲れやすく. と肯定的にとらえ,生涯にわたって心身ともに健. なる」31.8%などであった。. 康で充実した生活を送るためには月経に伴う不快. 10)知りたい情報において,不快症状の有無でみ ると,「症状について知りたい」では,不快症. な症状を解決する行動が必要であると感じる。. そこで,PMSや月経困難症についての止しい. 状のある者50.5%に対し,症状のない者30.8%. 知識を持つことで,「これはPMSや月経困難症. と不快症状のある者が有意に高かった。. によるものだ」と自分自身を落ち着かせ,症状へ. 11)「婦人科を受診したいと思うが行ったことは. の対処行動につながると考える。月経に関する悩. ない」と答えた者に,受診しない理由を聞いた. みは個人差があり,プライバシーに配慮しながら. ところ「抵抗がある」「怖い」と婦人科を受診. 一人ひとりの健康課題を把握し,それに応じた個. することへの抵抗感や恐怖心があることがわ. 別指導は不可欠となる。また,月経と肯定的に付. かった。産婦人科医や保健師等の学校外の専門. き合っていくには,周囲の人の理解が大いに関わ. 家に協力を依頼し,連携を図り月経を含めた性. ると感じる。周囲の人の月経の不快症状に対して. 教育を積極的に行うことで,抵抗感や恐怖心を. 理解を深めることを考えると,PMSや月経困難. 軽減する一助になるのではないかと感じる。. 症も含めた集団での月経に関する教育は重安であ. 12)月経前,月経中に不快症状があると答えた者. るといえる。. の中で月経前,月経中の不快な症状に対する周 囲の理解は,約6割の者が「ある」「少しある」 であった。 13)月経前・月経中の不快症状が生活に及ぼす影. 響について,最も多かったのは「恋人・友人・. 106. ノ稿を終えるにあたり,お忙しい中調査にご協力. くださいました北海道内のA大学の学生の皆様に 心より感謝申し上げます。.

(14) 大学生のPMSと月経困難症に関する調査. 引用文献. 1)川瀬良美:悩んでいるのはPMS(月経前症候群)で すか それともPEMS(月経期症候群)ですか,(松 本清一監),月経らくらく講座,18−27,文光堂,2004 2)北村陽共・絵裕美・木村洋子:高等学校女子生徒に おける月経前症候群の実態一高等学校女子生徒392名の 調査より−,奈良教育大学紀要,53(2):51−60,2004 3)北村陽英・内さゆり:月経前症候群が学校生括に及 ぼす影響について一大学女子学生308名の調査より−, 奈良教育大学紀要,51(2):38−43,2002 4)日野林俊彦・赤井誠生・南徹弘・糸魚川直祐:発達. 加速現象の研究その17−2002年2月全国初潮調査 64,290人の結果より−,日本心理学会第67回大会発表. 論文集,1066,2003 5)文部科学省:小学校学習指導要領解説 体育編, 61−64,1999 6)志渡晃一・藤村麻衣・長手誠嗣・徳橋圭佑:本学女. 子学生における月経前症候群とライフスタイルに関す る研究,北海道医療大学看護福祉学部紀要,11: 101−105,2004 7)川瀬良美・佐藤秋子・戸梶亜紀彦・森和代・余語真. 夫:心理学からみたPMS,(松本清一監),PMSの研 究一月経・こころ・からだ−,33−64,文光堂,1995 8)森和代:ストレス・月経周期への影響一発達心理・ 教育の立場から−,女性心身医学,3(1):37−38,1999 9)古口聡美:高校生の初経と月経随伴症状に関する調 査,鹿児島純心女子短期大学研究紀要,35:37−42,2005. 10)野田洋子:女子学生の月経の経験一第1報 月経の 経験の経時的推移−,日本女性心身医学会雑誌,8(1) :53−63,2003. 11)MSG研究会:月経に関する意識と行動の調査, MSG研究会,29−36,1990. (斎藤和佳子 旭川校大学院生) (中野 沙保 旭川校大学院生) (芝木美沙子 旭川校准教授) (笹嶋 由美 旭川校教授). 107.

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参照

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