重症下肢虚血症例に対するDistal bypass術の現状
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(2) 日本フットケア・足病医学会誌 Vol. 2 No. 2. below knee popliteal( BKP )artery continues to expand. There is a difference in thinking between some endovascular physicians and vascular surgeons about the positioning of EVT for BKP arteries and distal bypass in CLTI treatment. This paper introduces the GVG latest treatment guidelines for CLTI, and shows clinical results of the distal bypass in our hospital, followed by two or more EVT for BKP arteries have adversely affects later distal bypass results (2-year AFS, 2-year graft patency) . It is desirable to correctly understand the surgical treatment results including distal bypass and carefully establish their EVT indications. Key words : chronic limb threatening ischemia, global vascular guideline, WIfI classification, GLASS classification, distal bypass 下肢,②虚血要素は軽度でも感染により創傷治癒が遅延. はじめに. した糖尿病性足病変,③ 2 週間以上治癒しない潰瘍のあ. 従来の虚血肢治療では虚血重症度と血管病変の局在に. る下肢,④壊死を認める下肢” の 4 つの病態を包括する. より血行再建法を決定する治療方針が取られてきたが,. と定義され,重症度は WIfI 分類で評価するようになっ. 糖尿病の増加により虚血肢の病態が変化し,加えて血管. た.WIfI 分類は,患肢の病態を創部,虚血,感染の 3. 内治療(EVT: endovascular treatment)の進歩により. つの点から評価し臨床重症度を決定する方法である.こ. 治療法の選択肢が増えたため治療方針の決定は複雑化し. れに伴い治療ガイドラインも血管病変型により推奨する. てきた.本稿では血管外科における最新のガイドライ. 治療法を分類した TASC Ⅰ,Ⅱ. ン,distal bypass 法の実際と臨床成績を示し,包括的高. に合わなくなり,EVT の進歩も重なり,2019 年に米. 度慢性下肢虚血(CLTI: chronic limb threatening ische-. 国,ヨーロッパ,世界の血管外科学会共同作成で CLTI. mia)治療における distal bypass の現在の位置付けにつ. に対する治療ガイドライン GVG が発表された .. いて血管外科の立場で考察する.. GVG の概要. 3, 4). では実地臨床の実情. 5). CLTI を疑われたすべての患者は,緊急切断が必要で. CLTI の GVG(global vascular guideline) による治療指針. ない限り血管専門医へ紹介する.下肢重症度を WIfI 分 類で行い,低リスクは経過観察,中から高リスクは救肢. 糖尿病患者の増加により末梢血管疾患の病態は変化し. 適応について判断する.平均余命が限られている,歩行. 従来の虚血度分類では患肢の状態をうまく捉えることが. 不能,または救肢不能と判断された患者には一次切断ま. 1). できなくなり 2014 年に WIfI 分類が発表され ,2017 2). たは緩和医療が考慮される.救肢適応と判断されたら. 年から CLTI という概念が提唱された .CLTI は,“下. GLASS(global limb anatomic staging system)分類に. 肢虚血,組織欠損,神経障害,感染などの肢切断リスク. よる動脈病変の staging を行い,患者リスクに応じて. を持ち治療介入が必要な下肢の総称であり,具体的に. EVT か open surgery かを決定する(図 1) .. は,①安静時疼痛があり WIfI grade 3 の虚血を認める. 図1. 治 療 方 針 決 定 に は,WIfI 分 類 に よ る 下 肢 重 症 度,. global vascular guideline による CLTI 治療指針. − 60 −.
(3) 日本フットケア・足病医学会誌 Vol. 2 No. 2. 表1. WIfI 分類表. WIfI grade 分類. WIfI score と Stage 分類 潰. 瘍. Wound. Rutherford 分類. 深さ. 部位. 0. 4. −. −. 1. 5, 6. 表層のみ. どこの部位でも. 深層まで. 趾. 表層のみ. 踵. 2. 5, 6. 3. 5, 6. Ischemia. 深層まで. 趾. どこの部位でも 趾以外に及ぶ. 足関節血圧 (mmHg). WIfI スコア. 足趾血圧(mmHg) tcPO2(mmHg). 0. ≧ 0.80. > 100. ≧ 60. 0.6-0.79. 70-100. 40-59. 2. 0.4-0.59. 50-70. 30-39. 3. ≦ 0.39. < 50. Stage . 下肢切断リスク 非常に低い. −. 1. Stage2 低い. Stage3 中等度. Stage4 高い. W0 l0 fl0,1 W0 l0 fl2. W0 l0 fl3. W0 l1 fl0. W0 l2 fl1,2 W1 l1 fl3. W0 l1 fl1. W0 l1,2,3 fl3. W1 l0 fl0,1 W0 l2 fl0,1 W0 l3 fl2. W1 l2,3 fl2,3. W1 l1 fl0. W0 l3 fl0. W1 l0 fl3. W2 l0 fl3. W1 l0 fl2. W1 l1 fl2. W2 l1 fl2,3. W1 l1 fl1. W1 l2 fl1. W2 l2 fl1,2,3. W1 l2 fl0. W1 l3 fl0,1 W2 l3 fl0,1,2,3. W2 l0 fl0,1 W2 l0 fl2. W3 l0 fl2,3. W2 l1 fl1,2 W3 l1,2,3 fl0,1,2,3 W2 l2 fl0 W3 l0 fl0,1. < 30. 局所感染. 全身感染 (SIRS). 0. −. −. 1. 皮膚,皮下組織(限局-2 cm). −. 2. 皮膚,皮下組織(広範囲> 2 cm). −. 3. 深部(膿瘍,骨髄炎,筋膜炎). +. foot Infection. Stage. 死 −. 踵を除く. 深層まで. ABI. 壊. 図2. GLASS 分類の考え方. GLASS 分類による解剖学的重症度,全身リスク評価の. スと EVT では戦略が本質的に異なり,バイパスでは. 3 つを用いて行うので,それぞれについて解説する.. 良好な静脈グラフトと末梢吻合部を含む outflow の良. ① WIfI 分 類 は,wound,ischemia,foot infection の 3. 否が重要であるが,EVT では足部への inflow を確保. 項目を grade 分類し,これをクラス分類した後に. す る た め の 標 的 動 脈 経 路( TAP:target arterial. stage 分 類 を 行 う.Wound は 潰 瘍 の 深 さ と 部 位,. path)を決定し経路内の動脈硬化病変の積算が成否. ischemia は TBI や TcPO2,foot infection は感染部の. に関わる.Aortoiliac 領域は既存の治療指針が適切で. 大きさと深さや全身感染の有無などにより grade 分. あるため今回の対象外とし,TAP の起点を浅大動. 類する.3 項目を合わせたクラス分けを行い,WIfI. 脈根部(SFA: superficial femoral artery)とし,FP (femoro-popliteal)と IP(infra-popliteal)の直列セグ. stage を決定する(表 1) . ② GLASS 分類は,足部への拍動性の血流回復を目標と し,肢全長にわたる管理戦略を推奨している.バイパ. − 61 −. メントで評価する(図 2) . FP,IP 領域それぞれの grade 分類を表 2 に示す.病.
(4) 日本フットケア・足病医学会誌 Vol. 2 No. 2. 表2. FP grade. GLASS grade 分類表. IP grade. P grade. [文献 5)より抜粋]. 表3. GLASS stage 分類,WIfI stage 分類と血行再建法の選択基準. 変の長さの総和,CTO(chronic total occlusion)病. distal bypass の成否に関わる極めて重要なポイントと. 変の有無や長さにより 0-4 までの grade を決定する.. なる.GLASS 分類では FP, IP grade を基に stage 1-3. 高度な石灰化がある場合は grade を 1 プラスする.. に分類する(表 3-a) .FP 病変では病変長が 2/3 以. 足関節以下足部の血管病変に関しては,血管内治療医. 上,IP 領 域 で は 病 変 長 が 1/3 以 上 や 3 cm 以 上 の. は one-straight line と angiosome 概念を重要視して治. CTO 病変がある例ではそれぞれ grade 3 以上になり,. 療を行っているもののまだ有力なエビデンスはないた. どちらも grade 3 以上であれば GLASS stage は 3 に. め修飾因子として P0 から P2 を記載し,将来の研究. なる.さらに WIfI stage と GLASS stage から血行再. 課題とされている.一方,血管外科医としては足部に. 建方法の選択基準が決められる.WIfI stage 2 かつ. 吻合可能な動脈があるか,足部の runoff はどうかが,. WIfI ischemia grade 2 以上に血行再建の適応があり. − 62 −.
(5) 日本フットケア・足病医学会誌 Vol. 2 No. 2. 表4 Tool. CLTI 患者のリスク評価ツール比較. End points. Critical factors. Reference. Taylor et al. Mortality, ambulatory failure(median Age, race, ESRD, CAD, COPD, DM, dementia, baseline Taylor, 2006 follow-up of 2 years) ambulatory status. Finnvasc. Perioperative(30-day)mortality, limb DM, CAD, gangrene, urgent operation loss. PREVENT III AFS(1 year). ESRD, tissue loss, age > 75 years, CAD, anemia. Biancari, 2007 Schanzer, 2008. BASIL. Survival(2 years). Age, CAD, smoking, tissue loss, BMI, Bollinger score, serum creatinine concentration, AP( number mea- Bradbury, 2010 sured and highest value) , prior stroke/TIA. CRAB. Perioperative(30-day)mortality, morbidity. Age > 75 years, prior amputation or revascularization, tissue loss, ESRD, recent MI/angina, emergency Meltzer, 2013 operation, functional dependence. Soga et al. Survival(2 years). Age, BMI, nonambulatory status, ESRD, cerebrovascular disease, tissue loss, left ventricular ejection Soga, 2014 fraction. VQI. AFS(1 year). Age, tissue loss, DM, CHF, serum creatinine concentration, ambulatory status, urgent operation, weight, Simons, 2016 bypass conduit used. VQI. Survival(30 days, 2 and 5 years). Age, CKD, ambulatory status, CAD, CHF, COPD, Simons, 2018 tissue loss, diabetes, smoking, beta-blocker use. AFS, Amputation-free survival; AP, ankle pressure; BASIL, Bypass vs Angioplasty in Severe Ischaemia of the Leg; BMI, body mass index; CAD, coronary artery disease; CHF, congestive heart failure; COPD, chronic obstructive pulmonary disease; CRAB, Comprehensive Risk Assessment for Bypass; DM, diabetes mellitus; ESRD, end-stage renal disease; MI, myocardial infarction; PREVENT III, Project of Ex-vivo Vein graft Engineering via Transfection III; TIA, transient ischemic attack; VQI, Vascular Quality Initiative. [文献 5)より抜粋]. (表 3-c),GLASS stageⅠは EVT,Ⅱは境界域,Ⅲ はバイパスが推奨されている(表 3-b) .. ral bypass)は減り,足関節付近から足部へのバイパス (paramalleolar-pedal bypass)が多くなっている.途中. ③患者リスク評価. の下組織へは吻合部から中枢側へ向かう back flow も. 下肢救済適応の患者リスク評価は,周術期リスクとし. しくは末梢本幹分枝から回る血流が期待されるが,基本. て手術死亡率 5%以下,平均余命については 2 年生存. 的に足部へのバイパスでは下の claudication を改善さ. 率 50%以上が最低条件とされている.リスク評価の. せる根拠とはならない.足部の虚血性疼痛,潰瘍を治癒. 参考文献を(表 4)に示す.エンドポイント(評価項. させるのに十分な血流を供給することが主目的となるた. 目)は,すべての死亡原因,大切断,非切断生存率. め distal bypass の適応は重症虚血肢に限られる.手術. (AFS: amputation free survival) ,術後合併症などが. では,.術中造影による末梢吻合部位の最終決定,. 設定され,予測因子として高齢(> 75 or 80 歳),慢. .inflow 確保,.グラフト調製,.中枢・末梢吻. 性腎不全,冠動脈疾患,うっ血性心不全,糖尿病,喫. 合,.バイパス後の判断,.静脈グラフト内膜肥厚. 煙,脳血管疾患,組織欠損,BMI,痴呆,歩行不能,. についての知識が必要となるので要点について順に述べ. 衰 弱 な ど が 指 摘 さ れ て い る.末 期 腎 不 全( ESRD:. る.. end-stage renal disease)は最大のリスク因子とされ. ઃ.術中造影による末梢吻合部位の最終決定. ている.. 足部動脈は石灰化,流量低下により術前の血管造影, 術前造影 CT,MRA,超音波検査などで開存の確認が. Distal bypass 方法. できていないことがある.それでも麻酔下に血管造影. EVT との最大の相違は,病変部位を飛び越えて直接. (DSA: digital subtraction angiography)を行うと,ほ. 虚血部位へ血流を供給できることにある.糖尿病が激増. とんどの例でわずかに開存している動脈本幹が見いださ. した近年の下肢閉塞性動脈硬化症では下びまん性動脈. れる.稀にまったく見えない例に遭遇するが,現在まだ. 病変が強く,透析も重なり高度石灰化病変を有する例が. 足部組織が生きているのであれば何かしらの血流が存在. 大多数を占める.このため下動脈へのバイパス(cru-. するはずで,側副血行源となっている中枢の動脈,たと. − 63 −.
(6) 日本フットケア・足病医学会誌 Vol. 2 No. 2. えば腓骨動脈や腓腹動脈などへバイパスすることも考慮. も吻合部に静脈パッチをあててからグラフト吻合を行. する.ドップラー音が聞こえ超音波検査でカラードップ. う.グラフトの端-側吻合では outflow となる toe 側 3. ラーが描出されても vasavasorum 血流であり本幹内腔. 針に最大の注意をはらい狭窄とならないよう吻合する.. は閉塞していることがあるため注意が必要である.やは. この 3 針は連続縫合による巾着化を嫌い必ず結節縫合で. り麻酔下の血管造影(DSA)が golden standard であ. 行う.. る.. ઇ.バイパス後の判断. .Inflow 確保. 遮断解除後すぐは流量が少ない.末梢動脈 spasm に. 確実な inflow を確保することはグラフト血流だけで. 加えて微小塞栓などの可能性がある.術後造影で静脈グ. はなく,宿主動脈側副血行路から末梢への血流を確保す. ラフト,吻合部,末梢動脈の異常の有無を確認し,血管. る意味がある.腸骨動脈病変は EVT 治療成績が良好で. 拡張薬(PGE1 : prostaglandin E1 )のグラフト注入を行. これを行う.総大動脈高度石灰化病変には血栓内膜摘. う.原因が解消されれば流量は増え次第に安定する.安. 除(TEA: thromboendarterectomy)を確実に行い,大. 定しても 20 ml/min 以下の流量であれば dual bypass や. 深動脈根部も可能な限り形成する.浅大動脈病変が. PI カテーテル(27G)をグラフト分枝から挿入し PGE1. 軽度であれば EVT により中枢吻合部を膝下膝窩動脈. +ヘパリンを持続注入する.術後急性期の末梢血管攣縮. (BKP: below knee popliteal)とする.浅大動脈病変. によるグラフト流量低下は早期グラフト閉塞原因となる. が高度もしくは膝窩動脈病変がある場合には無理はせず. ので,これを防止するために有用な方法である.. 中枢吻合部は総大動脈とするが,グラフトとなる静脈. ઈ.静脈グラフト内膜肥厚. 性状との兼ね合いで考慮する.膝窩動脈付近は下への. バイパス術後はじめの 1-2 年間に 30-40%の静脈グラ. 重要な側副路が分枝するので,総大動脈と同様に屈曲. フトに内膜肥厚病変を生じる ため,抗血小板薬とスタ. によるステント破綻の問題だけではなく,主要分枝を閉. チンの内服を原則としている.術後定期的経過観察が重. 塞させるような EVT は控える.. 要で,もともと径が細く拡張性の乏しい静脈グラフトで. અ.グラフト調製. は revision 手術が必要となる可能性が高く,特に注意. 下動脈以下領域のバイパスでは自家静脈以外に長期. 6). をはらう必要がある.. 開存を期待できる代用血管は現時点で存在しない.グラ. CLTI に対する当院での distal bypass 成績. フト流量が 150-200 ml/min 以上あれば人工血管による. 過去 5 年間(2016 年 1 月から 2020 年 12 月)に診療. バイパスの一時的な開存が期待できるかもしれないが, この領域へのバイパスでは一般的にそれほどの高流量は. した CLTI 症例 128 肢の臨床経過を図 3 に示す.初期大. 期待できない.50 ml/min 以下程度の低流量で長期間開. 切断 3 肢は,紹介時すでにガス壊疽・敗血症状態 1 肢,. 存するためには内皮機能をもつ自家静脈グラフトが必須. 他院で EVT 施行後一気に急性増悪し救肢不能であった. で大伏在静脈を第一選択とした in situ または reversed,. 1 肢,高度心不全ハイリスク例のため手術適応なしと判. non-reversed 法で自家静脈を調製する.術前静脈エ. 断された 1 肢であった.125 肢に血行再建を行い,内訳. コー検査で使用可能な静脈の部位,長さを確認してお. は distal bypass 105 肢,その他血行再建 20 肢(バイパ. く.重症虚血肢では下から足部の創治癒不全がグラフ. ス 10 肢,EVT 5 肢,TEA + EVT 4 肢,TEA1 肢)で. ト閉塞の原因となることがあるので,皮膚切開・創管理. あった.血行再建後の大切断は 7 肢で,Ax-F-F バイパ. にも細かな配慮が必要である.また静脈弁部はグラフト. スにより断端治癒を見込める状態に inflow を改善して. 狭窄・閉塞の主な原因となるので慎重な弁切開処理が必. から予定切断した 1 肢,FPBK バイパス後 no-option と. 要である.in situ,non-reversed 法では十分な弁切開が. 判断された 1 肢と Distal bypass 後の大切断は 5 肢あり,. 達成されるまでややしつこく,かつ丁寧にバルブカッ. 創治癒不全から感染併発 2 肢,創治癒不全によるグラフ. ターを操作する.Reversed 法でも弁部が狭窄原因とな. ト閉塞 2 肢,遠隔期に他院で切断された 1 肢であった.. る可能性があり,弁切開を行うことがある.. その他血行再建を施行した 118 肢では全例で症状改善も. આ.中枢・末梢吻合. しくは治癒を得た.. 中枢吻合部狭窄を防止するためには,十分な口径の静. Distal bypass105 肢の治療成績. 脈グラフトを病変の少ない動脈壁に吻合することが目標. 男性 73 例 88 肢,女性 16 例 17 肢,年齢 48-92 歳(平. で,大伏在静脈の sapheno-femoral-junction 部位を大. 均 71.5 ± 9.5 歳)で,合併症は糖尿病 77.1%,ESRD. 静脈に切り込み大きな吻合口をとれるようにすること,. (維持透析)58.1%,虚血性心疾患 61.9%などで,WIfI. グラフト口径が細い場合や吻合部の動脈性状が不良な場. stage 平均 3.33 ± 0.84,GLASS stage 2.59 ± 0.49 であっ. 合には動脈切開部に静脈パッチを行いパッチ部位にグラ. た.バイパスはすべて自家静脈を用い,全例術中グラフ. フトを吻合する.末梢吻合部に高度石灰化がある場合に. ト流量をドップラー血流計で計測し 20 ml/min 以下は. − 64 −.
(7) 日本フットケア・足病医学会誌 Vol. 2 No. 2. 図3. 過去 5 年間における当院 CLTI 症例の診療経過. 表5 患者背景因子. Distal bypass 例の患者背景. 術前 EVT1 回以下群(n = 77). 術前 EVT2 回以上群(n = 28). p値. 年齢. 70.13 ± 9.96. 75.36 ± 7.07. 0.004**. 高血圧(HT). 51(66.2%). 17(60.7%). 0.601. 糖尿病(DM). 61(79.2%). 20(71.4%). 0.400. 脂質異常症(HLp). 31(40.3%). 8(28.6%). 0.273. 末期腎不全(ESRD). 38(49.4%). 23(82.1%). 0.003**. 虚血性心疾患(IHD). 47(61.0%). 18(64.3%). 0.762. CABG/PCI 既往. 33(42.9%). 15(53.6%). 0.330. 脳血管疾患(CVD). 26(33.8%). 10(35.7%). 0.852. 認知症 術前 Albumin 値. 6(7.8%). 8(28.6%). 3.39 ± 0.51. 0.006**. 3.17 ± 0.77. 0.030* * : p < 0.05,** : p < 0.01. グラフト側枝から PI カテーテル(27G)を挿入して. 5).術中グラフト流量も 66.7 ± 44.3 ml/min vs 34.0 ±. PGE1+ヘパリン加生理食塩水を約 1 週間持続注入した.. 25.2 ml/min(p = 1.32 × 10 )と有意に 2 回以上群のグ. 2 年間での成績は,生存率 73.6%,AFS(amputation. ラフト流量は少なかった.. -5. free survival)69.3%,グラフト一次開存率 62.5%,二. EVT 回数が増えるとなぜ成績が不良となるかの原因. 次開存率 89.2%,救肢率 95%であった(表 5,6,7) .. の考察では,① EVT により一時的に開存しても再閉塞. Distal bypass 術前の EVT 回数 1 回以下群と 2 回以上群. 時には EVT 前より広範囲に血栓閉塞を生じ outflow を. を比較し,先行する下への EVT が distal bypass に及. 減少させてしまう可能性があること,②術前 EVT 2 回. ぼす影響について調べた.2 群の患者背景を見ると,2. 以上群では足部動脈穿刺や足背動脈弓の EVT が行われ. 回以上群では,年齢が高く,ESRD,認知症例が多く,. ている症例が多く,吻合可能部位への穿刺によりバイパ. 術前アルブミン値が低かった.両群の WIfI,GLASS. スをより困難とさせている,などが考えられる.EVT2. stage に有意差はないが,GLASS 分類 P grade の比較. 回以上群はハイリスク例が多く EVT を選択する根拠は. では,それぞれ平均 0.63 ± 0.49 vs. 1.18 ± 0.48(p =. あるが,結局はバイパスを依頼するのであればもう少し. -6. 4.24 × 10 )で有意に 2 回以上群の P grade が高く,. 早くバイパスの適応を考慮しても良い.. pedal bypass の比率も有意に高かった(p < 0.05) .2 年. Distal bypass の役割. 成績をみると生存率に有意差はなかったが,AFS 75.2% vs. 52.3%(p < 0.01) ,一次開存率 69.4% vs. 42.9%(p. ઃ.EVT first 戦略の危険性 重症虚血肢の血行再建の第一選択治療は,世界的傾向. < 0.01) ,二次開存率 94.8% vs. 71.2%(p < 0.001)では 2 回以上群で有意に成績が不良であった(表 7,図 4,. として EVT が主となり 75%以上に及んでいる. − 65 −. 7−11). .も.
(8) 日本フットケア・足病医学会誌 Vol. 2 No. 2. 表6 inflow artery. 中枢,末梢吻合部位およびグラフト使用方法 術前 EVT1 回以下群(n = 77) 術前 EVT2 回以上群(n = 28). Common femoral artery. 44.2%. Superficial femoral artery. 19.5%. Above-knee popliteal artery. 32.1% 68.9%. 5.2%. p値 0.076. 14.3%. 50.0%. 3.6%. Below-knee popliteal artery. 31.1%. 50.0%. 54.5%. 28.5%. Outflow artery Crural artery Anterior tibial artery. 11.7%. 7.1%. Posterior tibial artery. 37.7%. 21.4%. 5.2%. −. Peroneal artery Pedal artery. 46.5%. Dorsal pedis artery. 39.3%. 0.044※. 71.5% 53.6%. Tarsal artery. 1.2%. 3.6%. Plantar artery. 2.5%. 10.7%. Medial plantar artery. 1.2%. 3.6%. Lateral plantar artery. 2.5%. −. in situ. 67.5%. 35.7%. 0.003※※. non-reversed. 24.7%. 50.0%. 0.013※. reversed. 7.8%. 10.7%. 0.316. spliced. 6.5%. 21.4%. 0.027※. Vein graft fashion. * : p < 0.05,** : p < 0.01. 表7. Distal bypass 症例の術前 EVT 回数による臨床成績の比較. 術前 EVT1 回以下群(n = 77). 術前 EVT2 回以上群(n = 28). p値. WIfI stage. stage2 = 26.0%, 3 = 20.8%, 4 = 51.9% (平均 3.24 ± 0.86). stage2 = 17.9%, 3 = 14.3%, 4 = 67.9% (平均 3.50 ± 0.79). 0.16. GLASS stage. stage2 = 44.2%, 3 = 55.8% (平均 2.54 ± 0.53). stage2 = 32.1%, 3 = 67.9% (平均 2.68 ± 0.48). 0.21. P grade. 0.63 ± 0.49. 1.18 ± 0.48. 4.24 × 10-6 **. PI カテ挿入率. 5 / 77(6.5%). 12 / 28(42.9%). 7.70 × 10-6 **. 術中グラフト流量. 66.7 ± 44.3 ml/min. 34.0 ± 25.2 ml/min. 1.32 × 10-5 **. 2 年生存率. 75.0%. 70.3%. 0.45. AFS. 75.2%. 52.3%. 5.32 × 10-3 **. 2 年一次開存率. 69.4%. 42.9%. 1.50 × 10-3 **. 2 年二次開存率. 94.8%. 71.2%. 5.28 × 10-4 ** ** : p < 0.01. ちろんこの EVT 数は全例が下動脈に対するものでは. くなり,何より救肢に悪影響があると考えるのは下へ. なく,腸骨-大動脈領域の EVT が多く含まれている.. の EVT 後の再閉塞により足部 runoff 血管を減少させる. CLTI の大部分は下びまん性病変を有し下 EVT 治. ことにある.下 EVT 3ヵ月後の血管造影で 73%に再. 療には限界があり,EVT 後のバイパス成績が不良であ. 狭窄(40%の再狭窄,33%の再閉塞)を認め,12ヵ月再. 12). ることが指摘されている. が,患者リスクや手技の手. 狭窄率 82%で,48%で 12ヵ月以内に治療の再介入が必 13). が,再狭窄率の高さに加. 軽さから challenging な EVT が選択され不成功後に血. 要であったとの報告がある. 管外科へ紹介されることが多い.このためバイパスを行. えてこの EVT 後の再閉塞パターンは,EVT を施行し. う時点ではすでに WIfI stage, GLASS stage 進行例が多. た動脈部位に新たなフィブリン血栓が形成され重要な側. − 66 −.
(9) 日本フットケア・足病医学会誌 Vol. 2 No. 2. 図4. 生存率および非切断生存率. 図5. 一次,二次開存率. 副血管や末梢 runoff を閉塞させる可能性がある.Distal. 身治療を行うことにより救肢だけではなく生命予後も. bypass にとって runoff は極めて重要な因子で,“血管造. QOL も改善できる可能性をもつ.修練をうけた血管外. 影スコアリング法は大-下動脈バイパスの結果予測. 科医であれば高い確率で distal bypass を成功できる.. に有用で全長に渡る outflow が良好な症例の長期成績は. 末梢吻合可能な動脈が存在し runoff が保たれている. 14). .Runoff の減少により限界状. (最低 20 ml/min 程度)ことが成功の条件となるので時. 態で組織血流が保たれていた虚血肢は急激な悪化を生. 機を逸さず早い段階でバイパスを行いたい.初回から適. じ,唯一吻合可能であった足部動脈吻合部位も,runoff. 当な静脈が存在しないことは極めて稀である.血管内治. 良い”と報告されている. も,バイパスまでの時間までも失って大切断に至ること. 療医は distal bypass 施行可能な血管外科医と連携し,. になる.血管内治療医はこの急性増悪発症パターンを知. 血行再建法について気軽に協議できる体制をとることが. り,2 回 以 上 の 下 へ の EVT の 適 応 を 慎 重 に 行 い,. 望ましい.. EVT が不成功ならバイパスへという考えは後のバイパ. おわりに. スを難しくすることを理解して欲しい.. CLTI 患者はハイリスク例が多く,治療法の選択に悩. .血管外科医の考える distal bypass の限界 患者リスク評価で生命予後 2 年以内,透析患者,虚血. むことが多い.GVG には WIfI 分類と GLASS 分類を用. 性心疾患,脳血管疾患などが重複すると手術適応はない. いた最新の CLTI 治療指針が示され,EVT と distal. と判断されるが,生命予後は必ずしも明確なものではな. bypass の適応決定について分かりやすく分類されてい. く,冠動脈リスクは術前精査により診断がついて治療さ. る.実臨床では術者の得意な方法が選択されることにつ. れることで生命予後が改善する.CLTI 患者は一般的に. いて一定の理解はできるが,各専門分野の英知を結集し. 全身動脈硬化症の進行段階にあり,全身精査で必要な全. 救肢と患者 QOL の向上を目指すためには,お互いの治. − 67 −.
(10) 日本フットケア・足病医学会誌 Vol. 2 No. 2. 療指針とその根拠,臨床成績を正しく理解し,協力でき る環境を形成する必要がある.. (1) : 53-58, 2011. 7)Biancari F: Meta-analysis of the prevalence, incidence and natural history of critical limb ischemia. J Car-. 文. diovasc Surg, 54(6):663-669, 2013.. 献. 8)http://www.worldometers.info Dover, Delaware, U.S.A. 1)Mills JL Sr, Conte MS, Armstrong DG, et al: The Society. 10 February, 2021.. for Vascular Surgery Lower Extremity Threatened. 9)Kudo T, Chandra FA, Woo-Hyung Kwun, et al: Changiong. Limb Classification System: risk stratification based on. pattern of surgical revascularization for critical limb. wound, ischemia, and foot infection(WIfI). J Vasc Surg,. ischemia over 12 years: Endovascular vs open bypass. 59(1):220-234, 2014.. surgery. J Vasc Surg, 44(2):304-313, 2006.. 2)Aboyans V, Ricco JB, Bertelink ML, et al: Editor ʼ s. 10)Goodney PP, Beck AW, Nagle J, et al: National trends in. Choice-2017 ESC guidelines on the diagnosis and. lower extremity bypass surgery, endovascular interven-. treatment of peripheral arterial disease, in collaboration. tions, and major amputations. J Vasc Surg, 50(1): 54-. with the European Society for Vascular Surgery. 60, 2009.. ( ESVS ). Eur J Vasc Endovasc Surg, 55( 3 ): 305-368,. 11)Siracuse JJ, Menard MT, Eslami MH, et al: Comparison of open and endovascular treatment of patients with. 2018.. critical limb ischemia in the Vascular Quality Initiative.. 3)Dormandy JA, Rutherford RB: Management of peripher-. J Vasc Surg, 63(4):958-961, 2016.. al arterial disease( PAD ): TASC Working Group. TransAtlantic Inter-Society Consensus(TASC). J Vasc. 12)Conte MS: Bypass versus Angioplasty in Severe Ischaemia of the Leg( BASIL )and the( hoped for ). Surg, 31(1Pt2):S1-S296, 2000.. dawn of evidence-based treatment for advanced limb. 4)Norgren L, Hiatt WR, Dormandy JA, et al: Inter-Society. ischemia. J Vasc Surg, 51(5S) : 69S-75S, 2010.. Consensus for the Managemant of Peripheral Arterial Disease(TASC II). Eur J Vasc Surg, 33(Suppl 1):S1-. 13)Iida O, Soga Y, Kawasaki D, et al: Angiographic Restenosis and Its Clinical Impact after Infrapopliteal. 75, 2006. 5)Conte MS, Bradbury AW, Kolh P, et al: Global vascular. Angioplasty. Eur J Vasc Endovasc Surg, 44( 4 ) : 425-. guidelines on the management of chronic limbthreatening ischemia. J Vasc Surg, 69( 6S ): 3S-125S,. 431, 2012. 14)Biancari F, Alback A, Ihiberg L, et al: Angiographic. 2019. 6)東. Runoff Score as a Predictor of Outcome Following. 信良,稲葉雅史,赤坂伸之,ほか:グラフト変性. 末梢血行再建における静脈グラフトの運命.脈管学,51. − 68 −. Femorocrural Bypass Surgery. Eur J Vasc Endovasc Surg, 17(6):480-485, 1999..
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