双方錯誤の歴史的考察(4・完) : ドイツ法の分析
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(2) 横浜国際経済法学第18巻第1号(2009年9月). の際の両者に渡る錯誤2りという論文でこの問題について包括的に論じでいる3〕。. 以下、Oer亡mann論文の内容を紹介することにしよう。 (i)導入4). 契約締結にあたり両当事者がその表示の内容に関してBGB119条[錯誤に基づ く取消可能性]5)の意味において錯誤していることがしばしばある。以下の6 つがそのことを裏付ける例である。. a)土地取引における表示の誤り(lrrung)の場合。これは、譲渡されるべ き土地の登記簿の表記に関する錯誤である。たとえば、当事者双方が、譲渡さ れるべき土地の登記簿の番号は1224だと考えたが、実際は番号は1225であり、. それにより譲渡人が実際に所有する1225番の土地の取引が行われる場合であ る6)。. ’b)Aが宝くじ販売員Bのところで、1313番のくじを注文するが、両当事 者が気づかなかったミスによって、1331番のくじをAが得る場合。 c)契約文:書が公務員(Bearnten)ないし従業員(Angestellten)に口述筆. 記され、この者が、指示を誤って理解し、両当事者が、同人らの意思が不正確 に再現された証書にそれが正確であると信じて署名した場合。. d)建物の管理人のところで、個々の階層に閤する別々の賃貸借契約書が署. 名される場合。たとえば、賃借人Aは権利を委任された管理人Bと合意して 4階を借りるつもりである。しかし、錯誤に陥って契約書が2階に関して作成 され、署名される場合。. e)Aは、葦毛の馬Castorと黒毛の,ee Polluxの所有者であるが、 Bに Castorを売るつもりである。しかし、誤ってPolluxのことを記載するか、ま たは口頭で伝える。Bは、 Polluxという名前を、自らが望んだ葦毛の馬の名前 と誤って思うことによって、それを買い受ける場合。. f)Aの画廊のカタログにおいて、ある特定の絵画がレンブラント (Rembrandt)のものと誤ってi表記されているが、実際は、フランツ・ハルス (Franz Hals)作であるか、またはレンブラントの模写に過ぎない。 Bは、レ 86.
(3) 双方錯誤の歴史的考察(4・完). ンブラント絵画収集家としてAに知られているが、その絵画に対して50万マ ルクを出し、その絵画を受領する。そのあとで、錯誤が明らかになる場合(275 頁∼277頁)。. (ii)両者に渡る錯誤とは何か. 「両者に渡る錯誤」について研究するためには、まずその領域を限界付けな ければならない。. 第一に、双方の表示が単に錯誤に基づくだけでなく、さらにその錯誤に基づ く表示自体がお互いに一致しない場合は、両者に渡る錯誤ではない。例えば、 VI.(1)(i)e)の事例で、 AがCastorを売るつもりで、 Poluxと表示し・Bが. Polluxを買うつもりでCastorを買うという場合には、取引締結の客観的な要 件を欠くために、契約不成立である(277頁)。. 第二に、双方の表示が錯誤に基づくものであり、現実と食い違う不正確なも のでなければならない。現実との食い違いとは、客観的な観点から生じるもの ではなく、主観的な観点から生じるものである。つまり、表示されたことと現 実に意欲したこととの食い違いである。従って、両者に渡る錯誤とは、双方一 致した表示が目指すことと異なったことを契約締結当事者双方が意欲した場合 に生じる(277頁∼278頁)。. しかし、このことは性状錯誤の場合には、厳密に言うと、当てはまらない。 たとえば、V[.(1)(i)f)の事例では、 AとBがレンブラント作と思われた絵. 画の売買に関して、合意する場合、当事者双方の意思は・表示と一致してこの 特定の絵画に向けられており、意思と表示は完全に一致する。レンブラント作. であることは売主たるAには全く重要でないし、買主たるB(レンブラント 作品収集家)にとっても効果意思の動機でしかない(効果意思の内容にはな らない)7)。つまり、両者に渡る錯誤の場合には、何らかの性状に関して誤っ. た一致した観念を「両当事者」が抱いているが、その観念それ自体は単なる 動機に過ぎない。しかし、両当事者が双方一致して、且つ意識して決定する 動機が、契約の基礎(Vertragsgrundlage)ないし行為の基礎(Grundlage des. 87.
(4) 横浜国際経済法学第18巻第1号1(2009年9月). Gesch舐es)−Windscheidの言葉を借りれば、「前提」一として、根本的に高 められている場合には、動機が考慮に値する。ただし、この場合にも、動機は 取引条件になるわけではない。R Leonhardのいうような黙示的条件説は、一 方的な性状錯誤を説明し得ないので、両者に渡る性状錯誤についても根拠がな Vl (278頁∼280頁) 8)。. 第三に、表示が双方によって現実に意欲されたことと食い違うことが必要で ある9)。つまり、双方の意思は、双方の表示がお互いに一致するのと同じく一. 致するが、相手方の意思と表示が一致しないように、表意者の意思と表示も一 致しないのである10)。この場合、表示の表記(外部に現れている文言)が真. の意思と食い違うことに、表意者も相手方も気づかないのだから、表示の表 記(外部に現れている文言)が、 BGB133条[意思表示の解釈]11)に基づいて、. 修正されることはありえない。従って、表示の文言が不正確なままであるが、 意思はお互いに合致しているのだから、この不正確さがどの程度修正されるか が問題となる(281頁一一 282頁)。. 第四に、双方の表示が真の意思と食い違うことは、無意識でなければならな. い。意識して相違する場合には、仮装行為か譜誰表示であり、BGBI17条[仮 装行為]12)ないし同118条[真意の欠如]13)によって取り扱われるべき問題 である(282頁∼283頁)。. 第五に、意思と表示の食い違いは、両当事者において同じ内容でなければな らない。各々の当事者が異なったことを目指した表示に関して錯誤し、現実に. 意欲されていることが共通していない場合には、両当事者に錯誤はあるが、両. 者に渡る共通の錯誤は存在しない。たとえば、賃貸借契約においてAは4階 を借りようとし、Bは2階を貸そうとするが、両者が誤って3階を賃貸借する という内容の契約書に署名する場合は、両者に渡る錯誤ではない(283頁)。. 第六に、両者に渡る錯誤が効力をもつためには、BGB119条[錯誤に基づく 取消可能性]1項2項における意味での重大な(erheblich)錯誤である必要が あるのだろうか。錯誤が両者に渡っていること(Doppelseitigkeit)が、取消 呂8.
(5) 双方錯誤の歴史的考察(4・完). 権に加えて、または取消権の代わりに別の効果、たとえば「双方に現実に意欲. されたことに適したことの実現」を生じさせる場合には、錯誤がBGBI19条 [錯誤に基づく取消可能性]の意味において重大であることとは無閏係である。. 即ち、別の観点での積極的な効果意思が双方一致している場合、それが表示 と「本質的に」食い違うかは到底重要ではない。また、性状錯誤の場合に、性 状の存在についての観念が、両当事者において、取引を決定させるのに本質的 (wesentlich)であったであろうことは、非常に稀なことでしかない。従って・. 錯誤が双方にとって重大(erheblich)であることではなく、何か別のことを 要件とすべきである。性状錯誤の場合には、まず、一方当事者にとって錯誤が. BGB119条[錯誤に基づく取消可能性]2項の意味において重大であることが 必要である。次に、相手方はその者が錯誤していたことを知っている必要はな いが、表意者が観念した事情がその者の意思決定にとって重大ある、即ち、そ の性状が欠ける場合には取引を受け入れなかったであろうことを知っているこ とが必要である。もちろんこの場合にも性状についての双方の観念が契約の基 礎になっていることが必要である。そのような場合には、性状についての両当 事者の双方的な観念が契約の基礎とみなされるのである(283頁∼284頁)。. ㈹現実に意欲されたことと双方に表示されたこととの関係 ①現実に意欲されたことと双方に表示されたこととの内容上の関係を明らか にすることで、はじめて、両者に渡る錯誤の様々な場合が事態に即して判断さ れ得る。両者の関係については以下の場合を挙げることができる。. a)双方の一致した真の意思が、双方の表示と異なっている取引に積極的に 向けられていること b)意思が、それ自体を超えている表示に反して、より少ないもの〔Minder) に向けられていたこと、. c)b)とは逆に、当事者意思が表示に反してより多いもの(Mehr)に向 けられていること、. d)一方当事者の効果意思が錯誤によってのみ惹起されており、真の事態を s9.
(6) 横浜国際経済法学第18巻第1号{2009年9月). 知っているならば、i契約締結に至らなかったであろうこと、 ° である。. ”VI.(1)㈹①a)については、上記(VI.{1}(i))で挙げた例示のうち、a)∼e). がこれに当てはまる。V互.{1}岡①b)については、当事者双方がある土地の 不動産譲渡の合意(Aufiassung)t‘1)をするにあたり、既にその土地の一部が 経済上(wirtschaftlich)分筆されており、その分筆地を不動産譲渡の合意から. 排除しようとしたが、当事者双方が登記韓においてその分筆地が未だに削除さ れていなかったことを見落としたという場合(RGZ66,21)である。 VI.(1)㈱. ①c)については、売主が、経済上(wlrtscha皿ch)ひとまとまりのある土地 を買主に譲渡するにあたり、その土地の一部が登記簿によれば特別の土地とし て、別の用紙に登記されていることを見落とす場合(RG in GruchoL Bd.41, S639. 参照)である。W、(1)㈹①d)については、上記(V[.{1)〔i))f))で挙げ た共通の性状錯§呉の場合である。これらの場合について、VI.(1)価}①a)やW.. ω㈹①c)の場合には、実際に表示されていることや直接表示されているこ とではなく、別の観点で積極的に意欲されたことが取引内容になることが考え られるが15}、W.(1)倒①b)やW.(1)(ili)①d)の場合には、表示を弱める. 効力や表示を破棄する効力しか認められえない16)。. ところが、学説はこれらの区別をしていないか、厳密に区別しておらず17)、. 判例も様々な事例を区別してこなかった。たとえば、旧法(とくにプロイセン 法)のもとでの判例では、ある土地の不動産譲渡の合意にあたり、その土地の 一部を不動産譲渡の合意から排除しようとしたが、その範囲に錯誤があったと いう場合に、その一部が譲渡人のみの意思によって排除されるのか、双方一致 した当事者双方の意思志洵(Willensrichtung)に従って排除されるのかを区別. せ壬不動産蹴鰺舗金魏無効とした・当臨一方当事者のみの意思が双 方一致した表示と一方自雪に食い違うことでも無効とされていたのだから、今述 べた両方の場ttLを磁々に取り扱う余地がなかったのである(284頁∼288頁)。. ドイツ民法典薗定以来、このような状況は変わった。即ち.一方錯誤の場合 go.
(7) 双方錯誤の歴史的考察(4・完). には、消極的利益の損害賠償をすることのもとでの取消可能1生という結論が導. かれる。しかし、双方一致した当事者意思が双方によって表示されことと食い 違うという共通錯誤の場合にもこのことが当てはまるのだろうか。この問題に 閤してはライヒ裁判所(RGZ66, 21)の判決がある(筆者一事案については脚 注参照)IB)。ライヒ裁判所は、以下のように述べた。. 「錯誤に基づく取消の本質というのは、表示の相手方が表意者をその表示の 内容につなぎとめておこうとする場合に、表示の相手方に対して、表意者が、 表示されたことは自らの真の意思に合致しないという主張をもって対抗する; とである。従って、取消の相手方は、表意者の意思と表示の不一致を知らない ことが前提になっているのであり、表意者が表示の有効性を拒むこの事情、即 ち、表意者における意思と表示の不一致を相手方に知らせることに錯誤取消の 意義がある。」. しかし、ライヒ裁判所は、本件(RGZ66, 21)では、このことが問題になっ. ているのではないという。当事者双方は一定の土地部分を不動産譲渡の合意か ら排除するという意思で一致しているだけでなく、この意思の合致を自覚して いただろうという。この場合に錯誤は、以下のことにのみ存するという。即ち、. 当事者が双方一致して意欲したことを同じく双方一致している当事者の表示に よって明確にしたと信じたが、実際には、表示したことは意欲したことを越え ていたということである。この食い違いは、一方の意思によってではなく、当 事者双方の表示によってのみ裏付けられた対象に関して・契約が法的に有効に 成立することを阻害するという。この場合に、その部分の無効を主張するため に、錯誤取消は必要ないという。. しかし、この結論は本稿のテーマ全部を判断するためには不十分である。な ぜなら、このライヒ裁判所の判決は、双方一致した意思が・双方一致して表示 されたことに反して、より少ないこと(Weniger)に向けられている事例に関 するものであり、双方一致した意思が、双方一致して表示されたこととは別の こと(Anderes)、または双方一致して表示されたことより多いこと(Mehr). 91.
(8) 横浜圏際経済法学第18巻第工号(2009年9月). に向けられている場合を扱うための解答を与えていないからである(288’頁∼ 289頁)。. ②従って、両者に渡る錯誤のあらゆる場合に対応するには、私見によれば、 以下の原則として三通りの異なった方法がある。. a)両者に渡る錯誤があったとしても、第一に、双方一致して表示したこと. が有効である。この有効性を排除する場合には、BGB119条〔錯誤に基づく取 消可能性]以下に従った取消をする必要があるが、この場合には、どちらの当 事者も取消権を行使できるという特殊性が認められねばならない。この場合、 相手方が錯誤者の真の意思を知っているときにも、錯誤者に損害賠償義務があ るか否かが問題になる。. b)当事者双方の表示と双方一致している真の意思が食い違う場合には、そ の表示によってはじめから有効な契約は成立しない。しかし、別の観的で当事 者双方に共通して意欲されたことが有効であるというのではなく、むしろ正確 には意欲されていない範囲における取引すべては効力がないのである。. c)双方一致して表示されたことではなく、その表示に対して双方一致して 意欲されたことが有効である。この場合には、意恩が表示に対して制限されて いる場合(W.(1)㈹①b))、または性状錯誤の場合のように真の事態を知っ ていたなら効果意思が全く存在しなかったであろう場合には、V[[.r(1}㈲①b). と同じ取扱いになる。当事者双方が、双方一致して表示したことと異なってい ること(Anderes)、または双方一i致して意欲したことより多いこと(Mehr) を実際には意欲していたという場合は「falsa demonstratio non nocet(誤表は 害にならない)」が問題となる。この見解は普通法および現行法の通説であり19)、. ライヒ裁判所もこの見解に傾倒している(289頁∼291頁)。. 固展開 ①双方一致している当事者意思と相容れない表示でも、取消を留保して法的 に有効であるという学説(VI.{1}㈹②a))=取消可能tis三論)は、いくつか. の重要な結果を有する。第一に、取消権が行使され、双方によって表示された 92.
(9) 双方錯誤の歴史的考察(4・i完). ことが効力を失うとしても、双方によって一致して意欲されたことが有効に なるわけでない。第二に、双方に誤って表示された行為(Akt)の法的拘束力 は、両当事者にとって様々であるということである。双方の性状錯誤があった 場合、BGB 119条[錯誤に基づく取消可能性]2項の意昧で取消が可能である。. 双方の性状錯誤の場合、取消可能な者は、一方当事者、相手方当事者または例 外的に両当事者であることもある。双方にとって重大な錯誤は、一方当事者が. 自らが誤ってなした表示を追認するか(BGB144条[法律行為が取消可能な場 合の追認]20〕)、取消期間を徒過することで取消権を失うことがあるが(BGB121. 条[取消期間]21り、そのこと自体は相手方の取消権に影響を与えない。これ は完全に分離した独立の取消権である。 ・ 両者に渡る錯誤の場合でも、取消者は損害賠償義務があるだろうか(BGB 122 条[取消者の損害賠償義務]ee))。取消者の賠償義務は、(表示錯誤の場合には). 表意者の真の意思が表示と食い違うこと、(性状錯誤の場合には)性状の存在. についての表意者の観念が実際の性状と食い違うことを相手方が知っていた か、知らねばならなかった場合には生じない(BGBI22条[取消者の損害賠償 義務]2項)。しかし、双方が錯誤する場合には、つうじょう相手方がその食 い違いを知っていることはありえない。ただし、一定の場合に例外が認められ る(291頁∼295頁)。. ②私見によれば、この学説(取消可能性論)の根拠は、意思表示の本質から 導かれるに過ぎない。即ち、1法律効果の発生にとって決定的な原因は・意思の. 表示であって、真の意恩ではない。意思という要素は、法律上の個々の規定に 従って、法律効果を妨げるか、取消可能にするという消極的な効果を有するに 過ぎないということである。. しかし、この考え方にはいくつかの疑問が生じる。. a)以上のような考え方は、原則として表示を過大評価することから出発し ている。確かに生活および法においては、第一に、意思ではなく表示が重要で あるが、その表示は意思と合致する表示であるが故に、相手方は表示を信頼す. 93.
(10) 横浜国際経済法学第18巻第1号(2009年9月}. るという意味において妥当しなければならない。従って、相手方が表示を全く. 信頼せずに、表意者の表示と食い違う真の意思を知っていた場合にまで、取消 可能性を留保して、その表示を有効にする法政策的理由はない。. b)表示に与えられているように見える効力以上のものが現実に表示に 適していると認められる場合、こういった表示のもとでは何が理解され るべきであろうか。この場合には、取引の事実内容全部(geschal]licher Gesamttatbestand)が基準として理解されるべきである。このことはBGB133 条[意思表示の解釈]からも明らかである。それゆえ、失敗した文言は、現実 の意思に従って修正されねばならないeこの場合の現実の意思とは、表示とは 明らかに異なった観点で表明されており、取引における事実内容全部(契約交 渉など)において顕在化しており、且つそれに基づいて相手方に知られている か、認識可能になっている意恩のことである(295頁∼297頁)ee) Zl)。. このことは両者に渡る錯誤の場合には、以下のように区別することができる。. (7)現実に考えられた契約の目的物がすでに行われた交渉(取引の事実内容 全部)から判明する場合。この場合には、表示の形式(Erkltirungsformel)に. おいて誤って表示されたことが、取引の事実内容全部に基づいて修正される。. つまり、事実内容全部に従って意欲されたことと矛盾する範囲内で、始めか ら、表示の形式は効力を有しない。もっとも、事実内容全部に照らして意欲さ. れたことが表示されたものとして有効になるかは別問題である。たとえば、取 引が法的に効力をもつ要件として双方の意思と表示の一致の他に、現物の引渡 し(Nil.(1)(i)b)の例)や方式(Form)(VI.(1)(i)a)の例)が必要になる 場合もあるas)(V[.{1}(i)a)∼d)の事例はこれに属する26})。ともあれ、表. 示の意味を、その文言に反して、相手方に知られている方法で表意者が表示し ようとした内容(BGB 133条[意思表示の解釈])に従って解釈する場合、失 敗した表示においては、法的な意味で、表意者が実際に意欲したことが間接的 に共に表示されているのである。. (イ)しかし、このことは、両者に渡る錯誤のすべての場合に当てはまるわけ 94.
(11) 双方錯誤の歴史的考察(4・完). ではない。即ち、たとえば、特別な契約交渉を行うことなく、売主Aが特定 sの馬(葦毛の馬Castor)をBに売却するにあたり、書面において「Pollux」と. 誤記し、その書面によって買主Bに申込み、Bがそれを承諾するという場合 (VI.(1){i}e)の事例)には当てはまらない。この場合には、葦毛の馬Castor. を示唆する取引における事実内容(契約交渉)が欠けているため、表示は修正 されない。falsa demonstratio non nocetではなく、内容の錯誤が問題になる。. たとえば、Bが黒毛の馬PoUuxを買うつもりだった場合には、両当事者の真 の意思はまったく一致していない。Bが葦毛の馬(名はCastor)を購入するつ もりで、その馬の名前をPoluxだと錯誤した場合にも同様である。というのは・. 確かにAとBは内容において同じもの(葦毛の馬)を意欲しているし、表示 も一致しているが(「PoUux」という名で一致)、意思と食い違う双方一致した 表示は、ここでは、(ア)の事例(falsa demonstratio non nocet)の場合のように. ll参正され得ない。なぜなら、契約とは、一方で、双方によって意欲されたこと. が実際に一致し、他方で、双方によって表示されたことが実際に一致するだけ でなく、意識Lた意思の一致でもあるのだから。今述べた事例では、一見する と意識した意思の一致があるように見えるが、それは取引における事実内容(契. 約交渉)から生じたのではなく、Aによる誤記およびBによる名前の取り違 えという相互に作用する錯誤によって、意思が一致しているに過ぎない。この. 場合には、たとえば、契約締結後に、Aが自らの誤記を発見するか、またはB が自らが名前の取り違えをしていたことを発見するとしても・お互いに相手方 の錯誤は全く認識していない。むしろ相手方の表示を信頼し・ただ自分だけが 錯誤していると考えるだろう。従って、第一に、自分が錯誤していると悟った 者に取消可能性を留保して、問題になっている表示の意味(Pollux)で取引を 成立させなければならない。この場合、一方当事者は、最初に意欲した意味(葦. 毛の馬Castor)で契約が成立するとは考えないだろう。それゆえ・この者が・ その取引内容(葦毛の馬Castorの売買)を維持することは不当である。他方で・. この者は自分が取消をしない限り、取引は表示の内容で成立すると信じている. 95.
(12) 描浜国際経済法学第18巻第1号(2009年9月). し、信じてもよい。この場合に相手方がその者自身の錯誤を発見し、取消をす. るなら、BGB122条[取消者の損害賠償義務]に従った損害賠償義務がある。. 従って、双方に表示されたことが現実に意欲されたことと表示の趣旨 (Tenoi2’))においてのみ食い違う場合、締結する取引の形式(Geschaftsformel). で、その食い違いが生じるならば、取引の事実内容全部(契約交渉など)に基 づいて、その食い違いは修正される(falsa demonstratio non nocet)。それに. 対して、双方に表示されたことと双方に意欲されたこととの食い違いが、取引 交渉全部に関係する場合、取引の形式は修正されないので、両方の錯誤者に取. 消権を留保した上で、双方一致して表示したことが有効となる(299頁∼305 頁)。. (v)結論 さて、問題となるのは、今述べた原則が普遍的に当てはまるか、.それともと. くに方式が限定されている法律行為の場合には一定の制限ないし例外に服する かである。. ①真の意思が表示されたことに単に達していないだけの場合には(RGZ66, 21)es)、方式が限定されている法律行為でも制限されない。真の意思が表示さ. れたことを越えている場合も同じである。即ち、ライヒ裁判所が、一方で、不. 動産譲渡の合意において、(真の意思が表示されたことに単に達Lていないだ けの場合に)当事者の意思に含まれていない部分を無効とし、他方で、(真の 意思が表示されたことを超えていた場合に)当事者が意欲していた部分を有効 としたのは正当である29)。. ②共運の性状錯誤が問題になる場合には、方式が限定されている取引ははじ めから問題にならない。なぜなら、ある性状が重要であるという当事者双方の 観念は、契約条項や黙示の条件に基づくものではないからである。共通の性状. 錯誤の場合には、この問題は、Windscheidが「前提」と呼び、私が契約の基 礎(Vertragsgrundlage)と名イ寸けたい領域に属する。前提ないし契約の基礎は、. 契約の事実内容(Vertragsbestandteil)ではない。もし当事者双方がそれに関 96.
(13) 双方錯誤の歴史的考察(4・完). して約束していたなら、前提された性状と食い違う約束された性状(zugesagte. Eigenschaft)が問題になるだけである(BGB旧459条[物の蝦疵に対する責 任]30り。むしろ、意思形成においては、一方当事者が、相手方に認識可能な 方法で且つ相手方が認識している方法で自らの意思の基礎としたそれ自体は意 思内容にはならない心理的な諸要因が問題になる。従って、動機が問題になる が、それは一方の動機ではなく、双方の意思の一致において客観的な基礎31) に高められている動機が問題なのである。それゆえ・そうy・つた動機が顧慮さ れ得るとしても、それは決して取引に反するもの(verkehrsfeindlich)ではなく、. 公正な判断および考慮によって、認められるのである。. 共通の性状錯誤の場合に、契約の基礎が法的重要性を欠いていないことは、. BGB119条[錯誤に基づく取消可能性]2項から導かれる。同条は、一方の 性状錯誤についての規定であるが、相手方が表意者と同一の性状錯誤に陥っ ており、聞違って考えられた性状が一方の契約当事者にとって決定的である ことを認識していた場合にも当てはまらねばならない。また・この場合には・. BGB122条[取消者の損害賠償義務]に従った取消者の損害賠償義務は排除さ れる。なぜなら、取消の相手方は、錯誤者の錯誤を認識していなかったとしても、. 錯誤者にとって決定的であった性状を認識し、その性状が欠如する結果、錯誤 者が取消権を行使する場合には、相手方は表示が法的に存立することへの信頼 が裏切られたことにはならないからである。. しかし、この場合に、BGBll9条[錯誤に基づく取消可能性]以下の要件に 結び付けられた取消可能性を全く度外視してはならないのだろうかee}。ロー. マ人たちは、共通の性状錯誤ないし一方の性状錯誤の場合に、法律上当然に (ipso iure)生じる無効(UngUltigkeit oder Unwirksandgeit)を認めていたよ. うであるが、今日ではそれが認められる余地はないか、または全く需要がない。. 理由としては、そういった無効が、たとえば、錯誤者が性状が欠けていると認 識したにもかかわらず、取引を存続させるかどうか決断する機会を奪うからと. いうことのほか、相手方としてもBGB121条[取消期間]1項却の意昧にお {7.
(14) 横浜国際経済法学第18巻第1号(2009年9月). ける厳格な取消期間(筆者一「遅滞なく」)は必要ないからである。ここでは. 契約の解除34)が認められるのが法政策的に正しいと思われる。そして、期間. としてはBGB(筆者一旧)355条[期間設定に従った解除権の消滅]矧の規 定が考慮に値するだろう。. ③当事者が、双方一致した表示の代わりに、別の観点での積極的な法的効力 を意図した場合には、以下のようになる。即ち、a)当事者双方の意思が一致. しており、お互いにそのことを知っている場合には、意図された法的効力が 生じ、そして、失敗した表示の形式(Erldtirungsformel)は事実内容全部に基. づいて相応に修正される36)。b)しかし、法律効果が発生するために意思の 一致に加えて、現実の行為、とりわけ引渡しが必要である場合には異なる。た. とえば、Aが宝くじ売り場で、1313番のくじを申込み、注文を受ける際に販 売人Bが錯誤して別の番号(1331番)を考えた場合には、債務法においては、 意思の不一致「一表示も一致していないのであるが一を理由に、契約を不成立と. するのがよい。しかし、販売人Bも1313番のくじを売るつもりであるが、お 互いが気づかないミスによって、1331番のくじがAに渡る場合、1313番のく じに関して契約は有効であるe「)。c)物の取得について登記が必要な場合、 d). 要式取引の場合もこれに類する(305頁∼312頁)。. (vi)以上がOertmann論文の全容である。 Oertmannは、本論文において、. 従来学説および判例によって厳密に区別されてこなかった両当事者が錯誤す る様々な場合を、「両者に渡る錯誤」という視点のもとに分析・整理した。両. 者が共通して錯誤する場合に対してOertmannが提示する解決方法は、大 別すれば以下の三つになるだろう。即ち、①双方一致した表示と双方一致し た意思が食い違う場合に、取引の事実内容全部(契約交渉など)から、双方 一致した意思が明らかになる場合には、取引の形式が修正されること(falsa demonstratio non nocet)。②双方によって表示されたことと双方によって意欲. されたこととの食い違いが取引の事実内容(契約交渉など)全体に関係し、取 引の形式が修正されないため、両方の錯誤者に取消権を留保して、双方一致し 98.
(15) 双方錯誤の歴史的考察(4・完). た表示の意味で契約を成立させること。③共通の性状錯誤のように契約の基礎 (Vertragsgrundlage)が問題となる場合には、錯誤取消や無効ではなく、法政. 策的に解除権が認められること、である。このように、Oertmannによれば、 共通錯誤が問題となる事例において、ほとんどの場合に錯誤規定によらないの である。. ㈲ Oertmannは、この論文の発表後、「契約の基礎」の問題を発展させ、 将来に対する共通の期待が裏切られた場合、事情変更約款(clausula rebus sic. stantibus)の問題謝を併せて「行為基礎論」を形成する。以下、この「行為 基礎論」について、若干の:補足をしておこうso)。. Oertmannは、本論文(1919年)では、「i契約の基礎(行為基礎)」,を十分に. 定義づけしていなかったが、1921年に発表した『行為基礎一新たな法概念一』 において、以下のように定式化してv}る。即ち、Oertmannによれば、取引締. 結にあたり顕在化しているところの、相手方当事者がその重要性を認識し且 つ異議を唱えていない一方当事者の観念ないし複数の当事者に共通する観念 (Verstellung)が、一定の事情の存在ないし発生に関係しており、且つ当事者 の効果意思(Geschiiftswille)がその事情の基礎に基づいているとき、「行為基. 礎」である4e)。この「行為基礎」が問題となる事例には、共通の性状錯誤町 共通の裏切られた期待42}、後発的な事情の変更43)やドイツ民法典に規律され. ているいくつかの条文(779条[和解の概念和解の基礎に関する錯誤]44)、. 担保責任に関する旧459条以下など)含まれる45}。もっとも・Oertmannが上 述の定義によって後発的な事情の変更も含めようとしたことは後に批判を招く ことなる46)。. Oertmannによれば、行為基礎の欠訣(共通錯誤)の場合の標準的な効果は、 とくに契約の基礎がはじめから完全に欠けている場合には・解除ないし一一方 的な意思表示の場合一撤回(widerruf)である47〕。行為基礎が欠けることを理. 由とする無効(Unwirksam)は、ドイツ民法典において個別にそれを認める 条文が存在するが(779条[和解の概念、和解の基礎に関する錯誤]・2077条[婚. 99.
(16) 横亨兵匡ll祭田…済法学第18巷第1号(2009ゴF 9月). 姻ないし婚約の解消にあたっての終意処分の不確定的無効(Unwirksamkeit)ユ ‘IS) )、それは特別な場合であり、行為基礎が欠ける場合の効果として一般化は. できないというコ19)。もちろん、標準的な効果として、無効(nichtig)や錯誤 取消も認められていないsu}。もっとも、 Oertmannは、共通の性状錯誤の場合. にも、一方の当事者がBGBIl9条[錯誤に基づく取消可能性]2項の意昧での 錯誤に陥っていたなら、勿論解釈(argumentum a fordori)から、 BGB119条[錯. 誤に基づく取消可能性]2項が適用される余地があることを認めるが、当事者 がそれよりも適切な解決を望む場合には、当事者が望んだ適切な解決が問題に なるとしている51)。. ㈹ 以上のようにOertmannは、立法においてほとんど考慮さ.れなかった共. 通錯誤の問題を包括的に取扱い、詳細に分析検討している。Oertmannによれ ば、共通錯誤が問題となる場合には、必ずしも錯誤取消の規定が問題になるわ けではない。双方一致する意思と双方一致する表示が乖離する場合(共通の表 示錯誤)には、双方一致する意思が契約交渉などから明らかになるならば、表 示は修正されるのである(falsa demonstratio non nocet)。また、共通の性状. 錯誤の場合に、両者の動機が契約の基礎に高められているならば、錯誤取消の. 規定(BGB119条[錯誤に基づく取消可能性]2項)によらずに、法政策的に 契約の解除が認められる。このように、Oertma皿によれば、共通錯誤が問題 となる事例において、ほとんどの場合に錯誤規定によらないのである。 また、共連の性状錯誤(契約の基礎)については以下のことが指摘できよう。. 第一に、Oertmannは、 Windscheidの前提論(W,{6)参照)を土台にしなが ら52)、共通錯誤論一般と関連させて共通の性状錯誤を端緒として行為基礎論. を築いたのである。windscheidの前提は一方の当事者のみを対象としたのに 対し、Oertmannの「契約の基礎」は当事者双方を対象とする。従って、「契 約の基礎」が当事者双方に共通するという「共通性」の観点は共通錯誤論一般 から引き出されたものといえよう。加えて、Savignyが意思ドグマの立場から. 否定した共通錯誤という概念をOertmannが復活させた意味は大きいであろ lOO.
(17) 双方錯誤の歴史的考’察(4・完). う。もっとも、このことは、ドイッ民法典がその編纂過程でSaVigny錯誤論 および意思ドグマから解放され、「錯誤者と相手方または第三者の対立する利 益を可能な限り融和させて、妥当性(Billigkeit)の要求に相応しい法を創出す. ることが重要である」という立場から錯誤規定を立法化したことが素地となっ ているといえる。. 第二に、0,rtmannが「両者に渡る錯誤」の論文において・共通の性状ま鵠. の効果を解除とした点は重要である。Oertmannによれば、共通の性状錯誤が. BGB119条[錯誤に基づく取消可能性]2項の要件を満たしていたとしても、 錯誤取消よりも法政策的に契約の解除の方が正しいという。従って、共通の性. 状錯誤はBGB119条[錯誤に基づく取消可能性]2項によっても解決可能であ るにもかかわらず、Oertmannはこれを否定するのであるss)。. 第三に、Oertmannは共通の性状錯誤の法律効果を解除としている以上、当 事者を契約から離脱させることを志向していることは疑いない。しかし、共通. の性状錯誤を規律する明文がない以上、Oertmann論文において、同人自らが 指摘するようにローマ法源50に範を採って、法律上当然の無効という結論を とることも可能であったはずである。にもかかわ.らず、Oertma皿が、当事者 において錯誤が明らかになった後にも契約を維持することを望む可能性がある. ことを考慮して、法律上当然の無効という法律効果を拒否していることは特筆 されるべきであろう。また、その後に発表されたモノグラフィーである『行為 基礎』においても、行為基礎欠訣の効果として不確定的無効(UnxVirksamkeit). ss)を定めている実定法規があるにもかかわらず・Oertrna皿はそれを特別な場. 合だとして一般化することを認めていないのである。このように・Oertmann が共通錯誤(行為基礎の欠訣)の効果として解除を認めていることは・以上の 限りで、相対的に契約の尊重(favor contractus)を志向しているとも評価し 得よう。. なお、Oertmannは、上記の行為基礎論に関するモノグラフィーを世に送り 出し後も、註釈書において、「両者に渡る錯誤」という見出しのもとで・上記(W・. 101.
(18) 横浜国際経済法学第18巻第1号(2009年9月). (1}㈹)で挙げた共適錯誤の三つの分類を維持しているss)。 ’. こうしてドイツ民法典編纂時にほとんど考慮されなかった共通錯誤の問題. はOertmannによって分類整理された。共通錯誤論を端緒として成立した Oertmannの行為基礎論は、その後、ライヒ裁判所によって採用され、更に発 展していくこととなる。以下に、その経緯を紹介し、検討することにしよう。. ②立法後の経緯一ドイツ民法典制定1虻 (i)ライヒ裁判所の判例①. 本節では、ドイツ民法典制定以降の共通錯誤論(行為基礎論)の展開をライ ヒ裁判所の判de 57}を中心に検討していくこととする。. Oertma㎜の著作の発表と前後するが、ドイッ民法典制定後、いわゆる計算 錯誤(計算間違いや計算の基礎の間違い。実際の株式相場を誤解する株式相場 の錯誤も含まれる。)が問題になった事案において、ライヒ裁判所は、BGB119 条[錯誤による取消可能性]1項である内容錯誤の規定を用いて解決した。い わゆる「拡大された内容錯誤」論である。この考え方は共通の計算錯誤が問題 になる場合にも適用された。以下にその経緯を述べる。. まずは、計算錯誤がBGB119条[錯誤に基づく取消可能性] 1$1における内. 容の錯誤と評価される可能牲があることを示した判決から紹介することにし よう。ライヒ裁判所の1906年11月9日の判決(RGZ64, 266=破産財団事件) であるss)。. ①破産財団事件(1906年11月9日判決(RGZ64,266)) 事笑:原告である破産管財人は、被告に対して個々に目録を作成したいくつ. かの破産財団の目的物を、6300マルクで一括売却した。購入代金の支払いを 求める原告の訴えに対して、被告はとくに以下のことを主張した。即ち、被告は、. 価格の契約交渉にあたり、その価格計算の基礎になっていた破産財団の目的物 の価格が、実際には売却価格から減額されたものであったが、仕入価格から減. 額されたものであると信じていたという錯誤に陥っていたのだから、BGB119 1⑪2.
(19) 双方錯誤の歴史的考察(4・・完). 条[錯誤に基づく取消可能性]に基づいて購入を取消すというものである。一 審、二審ともに被告が勝訴した。. 判旨:ライヒ裁判所は以下のように判示して、被告の主張を退けた。. BGB119条[錯誤に基づく取消可能性ユによる表示の内容に関する錯誤は本 件では認められない。売買契約の締結にあたっての被告の表示は、6300マル クという売買価格の支払いを基礎としていた。表示の文言と内容は一致して いる。さらに、売買価格の計算にあたっての売主の計算間違いは、原則とし て、購入価格の検討にあっての買主の動機における錯誤でしかなく、それ自体. では価格申込みの内容に関する錯誤を認めることを正当化しないということ (RGZ55, 367iD))が維持されるべきである。 、. この計算が、契約締結にとって決定的な交渉の対象にされていた場合で・契 約締結にとって決定的な契約交渉にあたり、売主が相手方に求めたないし申し 込んだ売買価格が詳細に示された計算によって成立したものとして、相手方当 事者に認識可能に特色づけられている場合にだけ、事情は異なる。この場合に は、表示の内容は契約締結にあたりこの計算をも含んでおり、この計算におけ. る錯誤は、疑わしいときには、BGB119条[錯誤に基づく取消可能性]1項に 基づいて取消を正当化する表示の内容に関する錯誤一場合によってはその錯誤 は売買価格の修正をするだけかもしれないが一なのである。. 以上のように、本判決では、被告の錯誤は動機の錯誤であるとして錯誤取消 の主張は退けられた。しかし、傍論において、このような動機の錯誤が顧慮さ. れる場合があることが述べられている。即ち・ライヒ裁判所によれば・計算 錯誤は原則として顧慮されるべきでない動機の錯誤であるが・計算が契約締 結にとって決定的な交渉の対象とされており・その交渉において・売主が相手. 方に申し込んだ価格が詳細に示された計算によって成立したものとして、相 手方に認識可能になっている場合には、この計算は表示の内容になっており・ BGB119条[錯誤に基づく取消可能性]1項の内容錯誤になるという。つまり、 「内容の錯誤」という概念を「拡大」しているのである。また、ライヒ裁判所が、. so3.
(20) 載浜国際経済法学第18巻第1号(2009年9月). この場合の取消が、場合によっては、価格の修正を導くだけであると指摘して いることは特筆されるべきである。本判決は、共通錯誤の事例ではないが、次. に紹介する1917年5月23日の判決(RGZ90, 268=屑鉄事件)において、共 通錯誤の場合に、本判決の傍論における理論が認められることになる。. ②屑鉄事件(19]7年5月23日判決(RGZ90,268)) 事実:被告は、原告に一定量の屑鉄を売却し、その際に、両当事者によつて. 屑鉄一山が40車両(鉄道の貨車)分と見積られた。それに従って、売却価格 は最終的に37000マルクとなった。その後、被告は、売却価格の基準となった. 屑鉄一山は、実は80車両分であったことを理由に錯誤に基づく取消を主張し た。これに対して、原告が異議を唱え、屑鉄の運び出しの認容を求めて訴えを 提起した。一審、二審とも原告の主張が認められた。. 判旨:ライヒ裁判所は以下のように判示して被告の上告を認めた。. BGBll9条[錯誤に基づく取消可能1生]による錯誤に基づく売買契約の取消. を根拠付けるためには、不正確な見積もりのために被告が40車両分の屑鉄の みを売買価格の言1貴1の基礎としたことを理由に意思表示の内容に関する被告の. 錯誤が認められるかどうかが検討されるべきである。ライヒ裁判所の確定した 判例(RGZ55, 367;RGZ64, 266(破産財団事件))と一致して、 i契約締結に先. 立って一方が価格計算するにあたって生じる過誤は、後に行われる法律行為上 の表示の内容に関する錯誤を基礎付けるのに十分でないことが基礎にされるべ きである。そのような過誤は、本来の法律行為の将外にあるし、顧慮されるべ きでない動機における錯誤である。しかし、当該価格計算が契約締結のために. 決定的な交渉の対象にされた場合、とくにこれに関して、一方当事者によって 要求されたか、または申出られた売買価格が詳細に説明された特定の計算に基 づいていることが相手方当事者に認識可能になった場合には、法状況は異なっ. ている。そのような場合には、価格計算は法律行為上の表示の対象にされてお り、それをもって契約内容にされているのである。それに従って、とくに計算. の誤りないし不正確な計算因子(Rechnungsfaktoren)を採用したことに基づ 1e4.
(21) 双方錯誤の歴史的考察(4・完). く価格が不正確であると明らかになる場合には、表示の内容に関する錯誤があ. り、BGBIl9条[錯誤に基づく取消可能性]1項に基づく取消を基礎付けるの に適している。. 以上のように、ライヒ裁判所は、価格計算の基礎に関する共通錯誤の場合に、. BGB119条[錯誤に基づく取消可能性]1項による取消を認めたのである。もっ とも、判旨ではそのことには触れられておらず、もっぱら価格計算の過誤(動. 機)が法律行為上の表示の内容になるかが問題とされている。①破産財団事件 と異なり、本件では破産財団事件での傍論の理論が採用され被告の錯誤取消が 認められた。しかし、本件では、①破産財団事件の傍論で暗示された価格の修 正という解決方法は採用されていない。. また、1918年10月16日の判決(RGZ94,65)において、ライヒ裁判所は、 取引相場に関して両当事者が誤解していたという事案についてs「拡大された 内容の錯誤」論を用いて解決した。事案はおよそ以下のようなものである。. ③取引相場事件(1918年10月16日判決(RGZ94, 65)) 事実:原告は1916年10月に、A株式会社の株を購入しようとし、1916年 10月10日に被告である銀行に委託用紙を手渡し、売買の申込みをした。そ の用紙において原告は価格として、最大でも額面額の340∼342%で購入す るよう知らせた。被告銀行は、その株券を市場代理人(BOrsenvertreter)を. 通して1916年10月10日に株式取引所で買付けさせた・代理人はその株券を 4375%の相場で購入したが、被告銀行に渡すメモーこのメモによって被告にど のような相場で株式を購入したかが知らされ、相場用紙が作成される一におい て、437.5%と記載するところを337%と記載した。被告銀行は・このメモに基. づいて、原告に337.5%で株券を購入したと知らせた。その後・メモの誤りが. 明らかになり、被告の行員は原告に相場は実は4375%であったとして錯誤取 消を主張したが、原告はそれを認めず、損害賠償を求めて訴えを提起した。一 審二審ともに原告敗訴。. 判旨:ライヒ裁判所は、以下のように述べて原告の上告を退けた。. 105.
(22) 横浜国際経済法学第18巻第1号(2009年9月). 被告の表示は、もちろんその文言に照らして、自らが337.5%で株券を給付 するつもりであったということのみに向けられている。しかし、表示において 字義どおりに表現されていないことのすべてが、そのこと自体を理由として、. 純粋な動機における錯誤となるのではない。一錯誤に陥って正しいと看倣され た一表示の基礎は、それ自体は動機における錯誤に過ぎないが、表示の基礎が 相手方に認識可能な方法で表示に影響を及ぼし、且つ当事者双方の法律行為上 の表示の対象になっている場合には、表示の内容になる(RGZ64,268; RGZ85,. 323)e本件では、このことが問題になっているのである。被告が337.5%とい う当日の相場で委任に応じたということは、原告に認識可能な方法で表現され た。つまり337,5%という当日の相場で委任が実行され、それゆえ被告は自ら が契約当事者としてこの相場で給付しようとしたということが明らかになる。 このことは表示の内容であった。従って、被告が遅滞なく行った錯誤取消は正 当化される。. 以上のように、ライヒ裁判所は、上記の破産財団事件(RGZ64,266)に従っ て、表示に明確に現れているわけではない表示の基礎、即ち動機でも、それが 相手方に認識可能な方法で表示に影響を及ぼし、且つ当事者双方の法律行為上 の表示の対象になっている場合には、表示の内容になるとして、BGB119条[錯 誤に基づく取消可能性]1項の内容錯誤を拡大して、錯誤取消を認めているの である。. 間v.Tuhrの学説 しかし、ライヒ裁判所の以上のような「拡大された内容の錯誤」論は、学説 によって批判された。一例として、v. Tuhrによる批判を紹介することにしよ う゜°)。v. Tuhrは、上記の取引相場事件(RGZ94,65)を批判しつつ以下のよ うに説く。. ある者が自らが用いた言葉の意義に関して誤った観念を抱く場合、表示の内 容に関する錯誤が問題になる。たとえば、ある者が「当日の相場」で株券を購 入し、この相場を額面額の337%だと信じているが、実際は437%であった。買 ]06.
(23) 双方錯誤の歴史的考蓑(4・完). 主は437%について約束したことになるが、実際は337%分だけ支払うつもり であった。買主はその表示の内容に関して錯誤していたのである。それに対し て、取引相場事件(RGZ94, 65)では、銀行が買主に株券を売却するにあたり、. 実際の相場は437%であるが、錯誤に陥って、337%で売却すると表示している。. この場合の表示の意義は、全く明確で一義的である61)。もっとも、銀行が当 日の相場は437%だと実際に知っていたなら、337%で売却するという決定はし. なかったであろうが、そのような錯誤は、原則として取消権が与えられない典 型的な動機における錯誤である62)。. しかし、動機における錯誤の場合でも取消を認めないと法感覚 (RechtsgefCihl)および妥当性(Billigkeit)に適わないという場合もある。ライ. ヒ裁判所は、BGB119条[錯誤に基づく取消可能性]1項の内容の錯誤という 概念を拡大し、特定の事情を考慮して、相場に閲する錯誤を考慮しようとした。. その特定の事情とは、一方では、錯誤がとても重大であったこと(当日の相場 に関する銀行の観念ぱ同人の決定の基礎であった)、他方では、この動機の認 識可能性である。. 第一の事情は、取消を正当化し得ない。というのは・あらゆる動機は・それ. が決心にとって具体的に決定的であった場合に遮律行為上の表示の基礎とし て特色付けられるに過ぎないからである。たとえば・ある者が錯誤に陥ってあ る農場を相続して所有していると信じている。そして、その者が、相続したと. 誤って信じている農場がなければ必要のない物件を購入する場合には、物件購 入契約の基礎(相続したと誤って信じている農場)が存在しないにもかかわら ず、取消ができないのである。第二の事情(契約の相手方にとって決定的な動 機の認識可能性)も、法律行為の存立を揺るがせるのに一1一分ではない。先の農. 場の例でいえぱ、売主が、買主による知らせまたは他の情報源に基づいて・買 主がどのような目的で当該物件を購入するかを知っているとしても・売買は・ 有効でなければならない。というのは、売主は、買主の予測が正しいこと(買 主が農…場を相続したと信じていること)に自らの決定を依存させるつもりはな. le7.
(24) 横i兵匡1際莞…満法学第18塑き第1号(2009dF−9月). いからである⑬。 .. 法秩序が法律行為の動機を原則として顧慮せず、また法的安定性という利益 において顧慮してはならないという命題は、一方当事者ないし相手方当事者の 一方的な動機一その動機がそれぞれの相手方に知られていようといまいと一に のみ当てはまる。それに対して、両当事者が双方一致して、両当事者にとって 決定的な観念を基礎にして、その法関係を秩序づけたが、その後、この観念が 誤りであることが明らかになる場合には、当事者双方が現実の状況とは全く異 なった状況を共通して考えた上で締結した契約を維持する理由はまったくない 61)。. では、当事者を契約関係から離脱させるにはどのような法的手段が正当であ ろうか。ライヒ裁判所は、両当事者が自らにとって非常に重要な事実の存在に ついて考えたことを意思表示の構成要素と理解し、それによって各々の当事者 に表示の内容に関する錯誤に基づく取消を可能にすることで、このような場合 を救済しようとする。しかし、ある事実が正しいという観念は、それが言葉で 表現され、決心にとって決定的なものとして特色づけられるとしても、やはり 動機のままである。動機は、たとえそれが両当事者に共通しており、且つ両当 事者によって双方一致して口に出されるとしても、意思表示の内容にはならな い。というのは、法律行為上の表示は、当事者の意思に従って生じる法律効果 とのみ関係し、どんなに重要だとしても事実についての当事者の観念に関係す るのではない。そのような観念を外部へ表明することで、意思表示の内容と看 倣されるならば、錯誤取消の限界を危険にさらすことになる㈲。. また、錯誤者の賠償義務という観点からも、この種の事案に錯誤法が適用. されることは疑問である。たとえば、AとBが契約の基礎に関する同一の錯 誤に陥っている場合に、Aが契約を取消すならば、122条[取消者の損害賠償. 義務]2項からAには信頼利益の賠償義務が生じるだろう。なぜなら、Bは Aと同一の錯誤に陥っていたのだから、Aの錯誤を知りえないからであるas)。. しかしこれは不当である。たとえぱ、AからBに有価証券が売却され、両当 108.
(25) 双方錯i誤の歴史的考察(4・完). 事者が売買価格の計算の基礎にした相場表に誤植があった場合に、相場表の数. 字が誤植により実際よりもあまりに低く示されていたときは、Aが契約を取 り消し、Bに信頼利益の賠償をするだろうe他方、相場表の数字が誤植により 実際よりもあまりに高く示されていたときは、今度は、Bが契約を取り消し、 相手方に信頼利益の賠償をすることになるだろう。このように、共通の契約基 礎が欠ける場合には、どちらの当事者が損害を負担するかは、偶然に左右され るのであるfi7〕。. 結局、この種の事例に錯誤取消を適用するのは理論的にも実務的にも正当な 手段ではない。ライヒ裁判所で問題になった事例では、銀行によって知らされ た相場の正確さは、当事者双方によって基礎にされた事実として、または端的 に契約の基礎として特色づけられ、当事者が契約締結に際して、または契約締 結前の交渉において、相場が正確であると確信することが自らの決心にとって 決定的であるとお互いに知らせた限りで、契約内容から、この契約の基礎は生 じるのである。契約の基礎が現実に合致しない場合に対しては、ドイツ民法典. で779条[和解の概念和解の基礎に関する錯誤]において和解の無効が規律 されているが、それ以外の契約については規律がない。私見によれば、契約締 結の際に両当事者にとって決定的である諸事情がその者ら共通の観念と食い違 い、その食い違いが当事者が事情を知っていたならばその契約を締結しなかっ たであろうと一般に言い得るほどのものであるとき、契約は無効とされなけれ ばならない。和解に対してBGB779条[和解の概念、和解の基礎に関する錯誤] で定められていることは、その他の契約の場合にはBGB242条[信義誠実に従っ た給付]es>の原則に基づいて根拠付けることができる。たとえば、先にあげ た相場表の誤植の例で、売買が相場表の誤植に基づいて締結されているのだか ら・一方契約当事者がその契約の履行を求めるならば、明確に信義誠実に違反 するだろう。信義則は解釈(BGB157条[契約の解釈]69))の補助手段である だけでなく、契約から生じる権利を限界付け、極端な場合には契約全部の有効 性を妨げるのである70)。 10{.
(26) 横浜国際経済法学第18巻第1号(2eo9年9月). 以上のように、v.・Tuhrによれば、単に一方当事者の動機錯誤は重要ではな. いが、両当事者の共通動機錯誤、即ち、契約の基礎に関する共通の錯誤の場合 には、錯誤取消を適用して解決するのは理論的にも実務的にも妥当ではなく、 このような場合には和解(BGB779条[和解の概念、和解の基礎に関する錯誤]). の考え方から推し量って、和解以外の契約においては信義則に基づいて、契約 を無効とするのである。ただし、v. Tuhrは、契約の基礎に関する共通錯誤の. 全ての場合に、信義則に基づいて無効と考えているのではなく、契約から生じ る権利を阻界付ける場合があるとしていることに注意が必要である〒1}。従っ. て、肌Tuhrにおいても、共通錯誤の場合に契約が維持されることは、完全に 等閑視されているわけではない。. 圃 ライヒ裁判所の判例②. 学説の批判を受けたライヒ裁判所は、徐々に「拡大された内容の錯誤」論 から信義則的な構成へ移行する72)。たとえば.L既に指摘した1924年3月3 日の判決(RGZ108,105=遺産分割事件)がその例として挙げられる。なお、. 口督≧a斑は、註釈書において、行為基礎が問題となる例として本判決を挙げ ている79)。. ④1蓮産分劃事件(]924年3月3日判決(R〔∋Z108,105) 霧婁:雇告・被告が両親の遺言に基づいてそれぞれ別の土地を輻続したが、 童言の勧童において、原告が相続した土地における家撞店舗の花営業のために 被告が泰仕するという「負担(Aufiage)」が含まれていたため、遣産分割協議. にあたロて、当事著は,原告が稲続した土地の家撞にある店を1913年5月14 置の蓮量の6籔において{轟…i彊されているように、童物とともに鐙41年4月1 11まで隼1{]ξiθマルタの価播で賃措する「権利および義務」が被告にはあると「承. 認」してい潅亘雇告珪,董告に鱈董書上賃摺する頚担のみがあるのであって権 利は童い(童}こいえ壁,璽書には貿貸する義霧ほない)にも渉渉おらず、これ を誤撮していたξして、鑓纏堰荊登いし不当網{』返量鐙求を童墨して睾亘莚。 判量1ライ琶墾判所{藁,厘萱韓錯i纏}藁塾{幾韓垂纏iであるとして誹し、また事 1憩.
(27) 双方錯誤の歴史的考察(4・完). 当利得も認めなかったが、以下のように述べて「承認」の効力を否定し、二審 の結論を維持した。. 原告が、賃貸する義務を承認するにあたり、義務があることが双方にとって 行為基礎(Geschaftsgrundlage)を形成したことを考慮していたことは明瞭で. ある。そして、当事者の交渉にあたって源告が店舗を賃貸すると思っていた ことに関して錯誤していただけでなく、被告も同一の錯誤に陥っていたこと は、当該紛争事件が特殊であることを示している。それゆえ、原告の単なる 一方錯誤ではなく、原告・被告によって締結された承認契約の客観的な基礎に 関する両当事者の錯誤が存在するのである。しかし、原告はそのような諸事情 のもとで承認したのだから、原告は、自らに対してその承認を有効にさせる必 要はない(v. Tuhr, ln’tum ttber die Grun(Uage des Vertrags, Leipz三g 1921 Sp. 153/159, Oertmann, Gesc臆ftsgrundlage, S.50f£, S.125 u. S.156ff)。被告が原告を. その承認に拘束しようとするなら、当該事件の状況によれば被告は信義誠実に 反するであろう。それをもって、ドイツ民法典も黙示に認めている一般悪意の 抗弁7‘1)が原告に与えられ‘その基礎については、一方の当事者が、本件では. 被告がなすであろうように、自らの権利追求ないし権利防御をもって、自らが かつて為した態度と信義則上相容れない態度に出ることで十分である」。 このように、ライヒ裁判所は、当事者双方が同一の錯誤、即ち、共遜錯誤に陥っ. ていた場合に、BGB 119条[錯誤に基づく取消可能性]による内容錯誤によっ て解決するのではなく、信義則によって解決する方法を採用したのである。本. 件では、明示的にv. TuhrやOerma皿が引用されていること、および行為基 礎(Geschaftsgrundlage)という言葉が採用されているという点から、肌T血・ およびOer亡mannが判例に影響を与えたことは疑いない「}e 本件では、信義則に基づく・」般悪惹の抗弁が認められ、原告は承認に拘束さ. れないという結論(権利の制限)にとどまoたが、次に紹介する過26年註丹 2日の判決(RG, Gruchot69,216=交換事件)では、主…GB242条[摺義誠ii墜こ養ロ. た給付]に基づいで契約内容が修正されるという結論が導かれて口るo. i11.
(28) 横浜国際経済法学第18巻第1号(2GO9年9月). ⑤交換事件(1926年11月21ヨ判決(RG, Gruchot69,21 6」). 事実:1923年ll月6日に原告は被告と、原告がある株式会社の株を被告に 引渡し、それに対して被告は三相交流モーターを給付するという内容の契約を 締結した。契約締結にあたり、両当事者は、株式が3700金マルク(Goldrriark =当時の金本位制のもとでのドイツの通IEt 7fi))に値する価値であると認めた. がπ〕、実際には、3400金マルクの価値しかなかった。当事・者双方は、25台の. モーターが376α50金マルクの価値で供給されることで一致しており、原告が 差分の60.50金マルクを現金で支払うこととなった。錯誤が明らかになった後 で、原告は被告に300金マルク(原告が利得する分)を清算する準備があると 表示したが、被告は錯誤取消を主張し、モーターの供給を拒否した(株自体は 1923年11月7日に受け取っていたが、後に原告に返還している)。原告はモー ターの引渡しを求めて提訴した。一審は原告が勝訴したが、二審では被告の控 訴および原告の5150ライヒスマルク78)の填補賠償7D)および利息の支払いを. 求めた付帯控訴醐がそれぞれ一部認められた。即ち、二審は、被告の控訴に 基づいて、被告が25台のモーターを原告に供給するよう判示した一審判決の うち23台以上について一審の判決を破棄し、原告の付帯控訴に基づいて、被 告は株の引渡しを受けることと引き換えに4340ライヒスマルクおよび利息を 原告に支払うよう命じた。被告は錯誤取消などを主張して上告したが棄却され た。. 判旨1ライヒ裁判所は以下のように述べて被告の上告を棄却した。 二審の判決は、株の評価に閲する錯誤に基づいて被告が契約の取消を表示し たことを、それ自体は根拠があると判断している。しかし、同判決は、本件の 諸事情に照らせば、取消は契約全部の無効を帰結せず、むしろ取引は、錯誤に よって影響を受けていない限りでご正当化されるべきことを認めているのであ る。この二審の詳論に完全に賛同するかどうかは未決定のままであってよい。 というのは、いずれにせよ、結果としては、この点についての二審の判断は正 当なものであったためである。 工12.
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