《
編
集
後
記
》
『 日 蓮 学 』 第 四 号 を お 届 け い た し ま す。 本 号 は 左 記 の 六 先 生 よ り、 国 内 外 の 日 蓮 学 研 究 の 最 先 端 と も い う べ き 玉 稿 を 賜 り ま し た。 まず渡邊寶陽先生の「日蓮聖人の伝教大師観をめぐって~日蓮聖人筆『秀句十勝鈔』を契機として~」は、叡山における日蓮 聖人の研学についての記録がないのは何故かという疑問に対して『秀句十勝鈔』を手がかりとして考察を加えられた論考です。 先生は、聖人が弟子たちと共に伝教大師『法華秀句』を読み『法華経』の伝統を確かめていったのではないかとされ、最後に後 学の私たちに聖人の叡山での研鑽姿勢の解明と『秀句十勝鈔』の更なる研鑽を期待すると述べられています。 次に庵谷行亨先生の「日蓮聖人教学における仏法の弘通(一)―
四依の菩薩を中心として―
」は、能弘の師である「四依 の 菩 薩」 を 中 心 と し て 「日 蓮 聖 人 教 学 に お け る 仏 法 の 弘 通」 に つ い て 考 察 さ れ て お り 、 本 稿 は 特 に 「五 義 の 概 要」 「四 依 の 菩 薩」 に つ い て 述 べ ら れ て い ま す 。 こ の 後 に は 「日 蓮 聖 人 教 学 に お け る 仏 法 の 弘 通 (二) 」( 『身 延 山 大 学 仏 教 学 部 紀 要』 第 二 十 一 号) に おいて付法蔵と付嘱を視点として「仏法とその弘通者」 、 付嘱についての「天台大師の解釈」について検討され、 また「日蓮聖人 教 学 に お け る 仏 法 の 弘 通 (三) 」( 『身 延 論 叢』 第 二 十 六 号) で は 「日 蓮 聖 人 教 学 に お け る 仏 法 弘 通 の 次 第」 に つ い て 考 察 さ れ る そ うです。 岡田行弘先生は「六或示現と普現色身三昧」と題し、三昧とは菩薩の高度な能力 ・ その境地であるとの理解に基づき、釈尊の 神 力 と し て の 「六 或 示 現」 と 菩 薩 の 「普 現 色 身 三 昧」 の 関 係 を 考 察 し 、『法 華 経』 の 独 自 性 と 日 蓮 聖 人 の 解 釈 に つ い て 明 ら か に さ れています。そして薬王品以下で「普現色身三昧」が説かれる理由について、その構成 ・ 配置の意味を検討され、また他の経典 において「普現色身三昧」がどのように説かれているかを確認されています。 88
岡田文弘先生は、
米国ハーバード大学の令和元年度秋学期講義である「
EASTD 260:-The Lotus Sutra: Texts, Narratives, and
Translations 」 に ス ペ シ ャ ル ・ ゲ ス ト と し て 参 加 さ れ、 令 和 二 年 三 月 一 九 日 に は 同 大 学 ラ イ シ ャ ワ ー 日 本 研 究 所 に お い て 開 催 予 定であったワークショップ「 Interdisciplinary Approaches to the Study of Pre-modern Japanese Buddhism 」にて「経典をめぐ る 経 典 :『法 華 経』 の レ ト リ ッ ク」 と 題 し て 発 表 さ れ る 準 備 さ れ て い ま し た 。 し か し 新 型 コ ロ ナ ウ ィ ル ス 感 染 拡 大 に よ って 発 表 は 中止を余儀なくされ、それを本稿「経典をめぐる経典
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『法華経』の文学的技法―
」の英文附録として寄稿されました。主 論である「経典をめぐる経典―
『法華経』の文学的技法―
」は、文学作品としての『法華経』の技法やその効果、また後代 における受容について「自己言及の技法」を中心として検討されています。 ジ ャ ク リ ー ン ・ I ・ ス ト ー ン 先 生 は 「“Admonishing the State
” in the Nichiren Buddhist Tradition
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The History and Sig
-nificance of Kokka kangyō
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」と題して、日蓮聖人が行った国家諫暁について、まず聖人の遺文を中心にその意義と行動実践 について述べられ、その後に聖人滅後の日蓮教団における国家諫暁のあり方とその変容について考察を加えられています。特に 聖人滅後から日本近代に至るまでの視座は、広角的に日蓮教団の国家諫暁をとらえた論考として興味深い内容となっています。 最後にジル ・ エマ ・ ストロースマン先生の「 Alternatives to Khamouk in Southeast Asia ( 2020 )」は、本研究所のラオスプロ ジ ェ ク ト に お い て ジ ル 先 生 が 中 心 と な って 研 究 さ れ て い る 「カ モ ク」 の 研 究 論 文 と な り ま す 。 カ モ ク 研 究 に お い て 第 一 人 者 と な っ た ジ ル 先 生 は 、 今 回 特 に そ の 使 用 法 や 配 合 分 率 な ど を 研 究 さ れ て お り 「ラ オ ス 漆 工 材 料 『カ モ ク』 の 製 造」 ( Hiroshi Oyabu Ph.D.and Isao Saito, Kyoto Municipal Institute of Technology and Cul
ture 2020 Research Report
) に 多 く の 視 座 を 受 け な が ら 本 稿 を ま とめられました。 末筆ではございますが、本研究所に対するご理解 ・ ご支援の程、今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。 (木村中一記) 89