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日本産科婦人科内視鏡学会雑誌Vol.35 No.1; , 2019.

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【抄  録】  腹腔鏡手術は、美容面では開腹手術を凌駕して いるが、近年、美容面をさらに考慮した単孔式手 術が婦人科領域において行われるようになった。 多孔式の腹腔鏡手術と比較して、単孔式手術は鉗 子どうしの干渉・鉗子とカメラの干渉などによっ て術中のストレスが高い。そのためその実施件数 は減少してきている。  そこで今回、電動内視鏡用スコープホルダーシ ステムを用いることによって単孔式手術における 鉗子の干渉を減らし、より容易な手術を施行でき るか否かを検証するために片側卵巣腫瘍に対する 手術を施行した。  症例は、22歳女性。妊娠中に左卵巣嚢腫を指摘 され当科紹介となった。MRIにて奇形腫と診断さ れたため、本人と相談の上、分娩後に手術を行う こととした。分娩後も卵巣嚢腫は5cm大のまま 妊娠中と変化ないことから、単孔式による腹腔鏡 下卵巣嚢腫核出術を行った。臍部にEZ-access及 びラッププロテクターを留置した後、ViKY EP システムTMを設置した。手術は基本的に一人で行 い、手術時間は2時間とやや長かったものの、ス ムーズに手術を完遂することができた。  ViKY EPシステムTMを用いることにより、単 項式手術におけるカメラと鉗子の干渉に伴うスト レスが軽減する可能性があると考えられた。 【緒  言】  腹腔鏡手術は婦人科手術において必須のツール となったが、女性に対する手術ということで美容 面 で の 配 慮 が 行 わ れ、 当 初 よ りreduced port 2019 April 日産婦内視鏡学会 第35巻第1号

症例報告

Single-site laparoscopic surgery using a solo-surgery system

Kazuko Takagi, Keiichi Matsubara, Toshiaki Yasuoka, Yuka Uchikura, Tomoka Usami, Yuko Matsubara, Toru Fujioka, Takashi Sugiyama

Ehime university hospital Abstract

Objective: Laparoscopic surgery is cosmetically superior to laparotomy. Recently, single-site laparoscopic surgery (SSL) is being performed in clinical practice because it requires a small incision. However, owing to the technical difficulty in performing this procedure, it is performed in gynecology departments only at a few hospitals. Forceps interfere with the charge-coupled device camera used during SSL (single-site laparoscopic surgery) owing to the restricted surgical field available in such cases. The SSL operation is more difficult than multi-port laparoscopic surgery owing to technical obstacles. We report the efficacy of the scope holder system (ViKY EP systemTM, Endocontrol, La Tronche, France) used

during SSL in such technically difficult cases.

Case presentation: A 22-year-old pregnant woman was diagnosed with a left ovarian tumor. She underwent SSL after delivery. The surgery was performed by a single surgeon using the ViKY EP systemTM.

Conclusion: The ViKY EP systemTM may be a safe to reduce operator stress during operations.

Key words: single-site laparoscopic surgery, solo-surgery, ViKY systemTM

ソロサージャリーシステムを用いた単孔式手術

愛媛大学医学部附属病院

髙木香津子、松原圭一、安岡稔晃、内倉友香、

宇佐美知香、松原裕子、藤岡 徹、杉山 隆

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surgeryという概念が広がっていた。その後、手 術手技や様々なデバイスの進歩によって、臍にお ける単孔式手術が行われるようになった。本術式 は創部が臍の中になるため、従来の腹腔鏡手術と 比較すると美容面でのメリットは非常に大き い1)。その結果、多くの婦人科腹腔鏡手術に単孔 式手術が用いられるようになったが、以下のよう な理由から近年単孔式手術の実施件数や実施施設 は減少している。  単孔式手術を行うにあたって、大きな問題の一 つは、鉗子どうしの干渉、もう一つはカメラワー クである。本法では、狭い範囲で手術をすること はもちろんであるが、腹腔外での操作においても 可動域は限られる。さらにカメラと鉗子が干渉し あうことによって手術はより困難となるため、カ メラを操作する術者のスキルが求められる。二つ 目の問題点であるカメラワークに関して、近年、 新しいデバイスが開発された。Endocontrol社が 開発したViKY EPシステムTM(ヴィッキー エ ン ド ス コ ー プ  ポ ジ シ ョ ニ ン グ  シ ス テ ム: Endocontrol, Grenoble, France)( 図 1) は、 ボ イスコントロールもしくはフットコントロールに よって左右・上下・前後にカメラを動かすことが できるため、単孔式手術におけるカメラワークを 改善させる可能性がある。我々は、良性卵巣嚢腫 に対してViKY EPシステムTMを用いた単孔式手 術を行い、本システムの有効性を経験することが できた。 【症  例】 22歳女性 既往歴:特記すべきことなし 妊娠分娩歴:G2P1 (正常経腟分娩) 現病歴:前医での妊婦健診において充実性部分を 含む左卵巣嚢腫が認められたため、精査加療目的 に妊娠11週0日、当院紹介受診となった。 初診時超音波所見(図2a):左卵巣に4cm大で充 実性部分を含む奇形腫様の嚢胞性腫瘤を認めた。 腹水貯留は認めなかった。 MRI(14週1日、図3):骨盤腔の左側に直径4 cmの腫瘤を認め、内容液は脂肪抑制され、DWI で高信号を示す壁在結節を認めることから成熟嚢 胞奇形腫と考えられた。

腫瘍マーカー:CEA 1.1、CA19-9 31, CA125 27.8, NSE 11.2, SCC 0.5  以上の検査結果から、左卵巣腫瘍に悪性を疑わ せる所見を認めず、成熟嚢胞奇形腫と診断したた め、分娩後の手術を予定した。産褥1ヶ月、卵巣 嚢腫は5cm大で変化はなかったが(図2b)、本人 の希望もあり、産褥6ヶ月に腹腔鏡下卵巣嚢腫核 出術を行うこととした。 【手  術】  臍部に2.5cmの縦切開を加え、E・ZアクセスTM (八光メディカル、長野)とラッププロテクタ ーTM(八光メディカル)を装着し、5mmのE・ Zトロッカー3本を挿入した。ViKYシステムの ホルダーを手術台に装着し、ViKY EPシステムTM をカメラに結合して、最も頭側のトロッカーに挿 入した(図4,5)。子宮・右付属器には視診上異 常なく、左卵巣は術前検査通り5cm大に腫大し、 表面は平滑で周囲に癒着を認めなかった(図6)。 有窓腸鉗子とバイポーラシザーズを用いて卵巣被 膜を赤道面に沿って切開し、卵巣嚢腫を露出した

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後、有窓腸鉗子とバイポーラ鉗子を用いて鈍的に 卵巣から嚢腫を切除した。カメラは術者の音声に 反応して動くため、術者に必要な視野を得ること ができた。更に、ViKYは手術台のフレームに固 定しているため、鉗子が干渉してもぶれることな く手術を遂行することができた。EZパースTM(八 光メディカル)に嚢腫を入れ、臍の切開創から腹 腔外に摘出した。止血を確認し、腹腔内を生食で 洗浄した。カメラワークは全て自動で行ったが、 手術経過には支障なく終了した。出血量は少量、 手術時間は120分であった。(本手術では、ViKY のセッティング及び動作確認に約30分を費やし、 手術終了時に吸引管の先端の破損が見つかったた めこれを腹腔内から探すのにさらに30分を要した ため、実際の腹腔鏡下卵巣嚢腫核手術に要した手 術時間は1時間であった。) 【組 織 型】  良性の成熟嚢胞奇形腫(左卵巣)。皮膚付属器 腺を伴う上皮性の嚢胞であり、粘液上皮性の嚢胞 も認める。未熟な部分や悪性の所見を認めない 【術後経過】  術後経過は順調であり、術後3日目に退院とな った。 【考  察】  単孔式手術は、美容面でのメリットだけでなく、 術後の疼痛軽減や術後回復にも有用であることが 報告されている2)。近年では、良性疾患だけでな く、悪性疾患においても単孔式手術が行われるよ うになった3)。この様な腹腔鏡手術の進歩は、術 者のスキルアップや独創的な発想だけでなく、 様々なdeviceの発達にも助けられてきた。  現在、単孔式手術には術者とカメラ操作者との コンビネーションや鉗子の操作制限などの問題が あり、それがこの手術方式が広く普及しない原因 となっている。さらに、これらの問題点が手術操 作上の合併症を生じる要因ともなっている。これ まで、術中操作に伴う問題点を解決するために 様々な工夫がなされてきた。たとえば、弯曲鉗子 が製作され、鉗子どうしの干渉を減ずることがで きるようになった。当初、臍周囲の筋膜に直接ト ロッカーの距離を測りながら穿刺(SSL:single-site laparoscopic surgery)していたが、トロッ カー挿入を容易にするために、様々なdeviceが開 発されてきた。SILSTM port(Covidien, Minneapolis, MN, USA)が開発され、外科から婦人科にも単 孔式が広まるきっかけとなった。我々も本device を使用したが、トロッカーの穿刺が容易になった ものの、トロッカーの可動範囲が狭く、手術操作 は容易ではなかった。最近ではラッププロテクタ ーTMとE・ZアクセスTMの併用によって、トロッ カー設置はより簡便に、かつより安価に施行でき るようになった。また、E・ZアクセスTMを用い ることで操作に用いる鉗子間の距離を広くとるこ と が で き る た め( ト ロ ッ カ ー 間 距 離 SILS: 15mm, E・Zアクセス: 30mm)、E・ZアクセスTM は単孔式手術に適したデバイスであると考えら れ、現在広く普及している。一方、トロッカーを 1本追加してエネルギーデバイスの先端が見える ようにする2孔式を行う施設も多い4,5)。また、単 図3.骨盤単純MRI所見 a T1強調画像 b T2強調画像 c 脂肪抑制画像 内容液はT1WI/T2WI高信号で,脂肪抑制されており,脂肪成分と思われる。内部にはT1WI/T2WI軽度低信号を示す充実性部分があり,成 熟嚢胞奇形腫を示唆する所見である。 a c b

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孔式手術で鉗子やカメラの干渉を防ぐために、瓦 林らは6)、通常の1.5倍の光学視管を用いることに よってカメラと鉗子の干渉を防ぐ努力をしてい る。更に、弯曲鉗子を用いることで、鉗子操作を 容易にすることができるようになった。我々も含 め、現在多くの施設で単孔式手術に弯曲鉗子が用 いられている。しかし、これらのデバイスの開発 や術者等の努力によってもカメラワークの困難さ はさほど改善していない。通常の単孔式手術の場 合、内視鏡が鉗子と干渉するだけでなく、鉗子や 内視鏡を動かす助手のストレスも大きくなる。 ViKY EPシステムTMでは、ボイスコントロール もしくはフットコントロールによって左右・上下・ 前後に内視鏡を動かすことができる。その結果、 カメラがぶれない、単孔式手術の際に鉗子に干渉 しない、ソロサージャリーが可能であるといった 利点が生じた。一方では、システムが高価である という欠点や、微細な動作に関しては人間の手に 劣る部分はあるが、ぶれない画面が長時間維持で きるため、術者としてはストレスが大きく軽減さ れる。また、本deviceは通常の腹腔鏡手術から単 孔式手術におけるカメラ操作に加え、ダヴィンチ 手術におけるマニピュレーター操作など多岐にわ たって使用できる。最初はセッティングに若干の 時間を要するが、実際の手術手技に必要な時間は 通常の腹腔鏡手術と同程度であり、本システムが 単孔式手術を操作しやすい手技にしていると思わ れる。  今回、ViKY EPシステムTMを単孔式手術に使 図5.ViKY EPシステムTM配置図 a ViKY  b ViKY設置用リング c ポール 図4.手術風景 カメラを保持する助手の腕がカメラポート上にないことによって術者の両手は自由に動くことができる。さらに,カメラが固定 されていることによって鉗子があたっても術野がぶれることはない。 a c b d

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用した結果、単孔式手術におけるやりにくいとい ったイメージが変わった。完全なストレスフリー とは言わないまでも鉗子が当たってもカメラはぶ れず、術者の手を邪魔する前立ちもいないため容 易に手術を行うことができた。本deviceを用いる ことで、単孔式手術の応用性が広がり、ソロサー ジャリーにつながっていく可能性がある。  本論文の要旨は第58回日本産科婦人科内視鏡学 会学術講演会において発表した。  本論文に関して全ての著者は開示すべき利益相 反はない。 【文  献】

1) Yeung PP Jr, Bolden CR, Westreich D, Sobolewski C. Patient preferences of cosmesis for abdominal incisions in gynecologic surgery. J Minim Invasive Gynecol. 2013, 20: 79-84.

2) Song T, Kim ML, Jung YW, Yoon BS, Joo WD, Seong SJ. Laparoendoscopic single-site versus conventional laparoscopic gynecologic surgery: a metaanalysis of randomized controlled trials. Am J

Obstet Gynecol 2013, 209: 317-319.

3) Ahn S-H, Son S-Y, Jung do H, Park YS, Shin DJ, Park do J, Kim H-H. Solo Intracorporeal Esophagojejunostomy Reconstruction Using a Laparoscopic Scope Holder in Single-Port Laparoscopic Total Gastrectomy for Early Gastric Cancer. J Gastric Cancer 2015, 15: 132-138.

4) 大歳 愛由子, 宮武 崇, 手向 麻衣, 神野 友里, 德川 睦 美, 塚原 稚香子, 久松 武志, 柏原 宏美, 久本 浩司, 西 尾 幸浩. 当科における単孔式腹腔鏡手術導入後の創 感染発生危険因子の検討. 日本産科婦人科内視鏡学会 雑誌 2017, 33: 69-73. 5) 坂本 愛子, 菊地 盤, 熊切 順, 田中 綾子, 鈴木 泉, 深瀬 正人, 内藤 成美, 門 智史, 辻井 篤. 2孔式腹腔鏡下筋腫 核出術におけるEZアクセスTMの有用性. 日本産科婦 人科内視鏡学会雑誌 2012, 28: 453-458. 6) 瓦林 靖広, 横山 幹文, 赤澤 宗俊, 濱崎 洋一郎, 梶原 涼子, 竹内 正久, 河本 裕子, 妹尾 大作, 本田 直利. 当 院における単孔式腹腔鏡下手術の改良点~プリベン ド鉗子および5mm径ロングスコープの使用~. 日本 産科婦人科内視鏡学会雑誌 2015, 31: 109-113. 投稿日:2018年9月12日 採択日:2019年2月7日 図6.術中所見 a 左卵巣のう腫 表面平滑で癒着はなかった b 卵巣のう腫核出術 バイポーラシザーズで卵巣皮膜を切開した後,卵巣のう腫を鈍的に摘出する c 術後の所見 d 摘出標本(卵巣のう腫) a c b d

参照

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38) Comi G, et al : European/Canadian multicenter, double-blind, randomized, placebo-controlled study of the effects of glatiramer acetate on magnetic resonance imaging-measured

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