Palliative care Emphasis program on symptom management and Assessment for Continuous medical Education
臨床疑問
• がん患者の痛みをどのように評価すれば よいのか? • 痛みを緩和するためにどのような薬物を 使えばよいのか? • オピオドの使い方・注意点は? • 薬物以外の対処策としてどのような方法 があるか?メッセージ
• 痛みを緩和することにより、睡眠、食欲、 気持ちのつらさが改善し、その人らしい 生活を取り戻すことができる • 痛みの原因や機序を評価し、それに基づ いた治療を計画することが重要である • 薬物療法、特にオピオドの使用法に習 熟することが大切である • 非薬物療法やケゕも重要であるCancer pain relief (WHO)
• がん疼痛は治療可能であり治療されるべき • がん疼痛の評価と治療はチームゕプローチに よって最善の結果が得られる • がん疼痛治療の主軸は薬物療法である • 非オピオド鎮痛薬、オピオド鎮痛薬、 鎮痛補助薬を、痛みの機序に応じて適切に 組み合わせることで、おおむね良好な鎮痛が 得られる症例1
• 膵臓がんのため化学療法中の54歳女性 • これまでは特に痛みを感じていなかった が、1週間前より心窩部から背部にかけて の痛みを自覚するようになり、次第に増 悪してきたため、本日外来を受診した 痛みを評価するためにどのようなことを聞けば よいでしょうか?痛みの評価
• 痛みについて患者の訴えを信じ、過小評価しない • 患者の痛みの強さを測定し、把握する • 患者の心理状態を把握する • 訴えている痛みの経過を詳しく問診すること • 丁寧に身体診察を行う • 必要な検査をオーダーし、自ら検査結果を判定する • 痛み治療を開始する初期評価の段階から、薬以外の治療法 の適応についても検討する • 治療を開始したら鎮痛効果と副作用を必ず判定する痛みの部位と経過を聞く
• 「どこが痛みますか?」と部位を確認し、 身体診察を行う • 痛みの原因となる病変があることを、必 要に応じ画像検査などを用いて評価する • 新しく出現した症状は、新しい病変や合 併症の出現の可能性を考える必要がある • がん患者の痛みがすべてがんによる痛み とは限らないがん患者に生じる痛みの原因
• がん自体に起因する痛み – 内臓や神経の破壊・虚血・圧迫・牽引 • がん治療に伴って生じる痛み – 術後痛、化学療法や放射線治療の有害事象 • 消耗や衰弱によって生じる痛み – 筋肉や関節の萎縮・拘縮、褥瘡 • がんとは直接関係のない痛み – 変形性関節症、胃潰瘍や胆石などの偶発症痛みの性状と分類
特徴 治療戦略 内臓痛 腹部腫瘍の痛みなど局在があいまいで鈍い痛み ずーんと重い オピオドが効きやすい 体性痛 骨転移など局在がはっきりした鋭い痛み ズキっとする 突出痛に対する レスキューの使用が重要 神経障害性 疼痛 体性感覚神経・神経叢 への浸潤により、びりびり 電気が走るような/しびれ る/じんじんする痛み 難治性で鎮痛補助薬を 必要とすることが多い 侵 害 受 容 性 疼 痛Numerical Rating Scale (NRS) – 症状の程度を数値化して聞く 痛み 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 全く なかった これ以上 耐えられないほど ひどかった
痛みの強さを聞く
症状が全くないときを0、 これ以上ひどい症状が考えられないときを 10とすると、今日の(症状の)強さは どれくらいになりますか?痛みのパターンを聞く
痛みはそのパターンから、持続痛と突出痛 に分けられる 一日中ずっと痛い 時々痛くなる 10 0 10 0 10 0 持続痛 持続痛+突出痛 突出痛 がん疼痛の薬物療法に関するガドラン2014年版 p23症例1 つづき
• 1週間前より、心窩部から背部にかけて、 一日中持続する鈍痛(NRS 5/10)を 自覚するようになったという • 画像検査を行ったところ、膵体部の 腫瘍は4cm大に増大し、門脈浸潤、 多発肝転移、大動脈周囲リンパ節転移も 認められた症例1に戻ると…
• いつからどこが痛いのか? – 1週間前から、心窩部から背部にかけて痛い • どのように痛いのか? – 持続する鈍痛 → 内臓痛の可能性が高い • 痛みのパターンと強さ – 一日中持続する痛み – 強さはNRS 5/10 • 痛みの原因となる病変があることの確認 – 腫瘍の腹腔神経叢浸潤を疑う症例1 つづき
• 膵臓がんの54歳女性 • 1週間前より、心窩部から背部にかけて、 一日中持続する鈍痛(NRS 5/10)があり、 膵臓がんによる内臓痛と判断した • 化学療法中であるが、この痛みに対しては 迅速な対応が必要である! 痛みを緩和するための薬物療法について学んで いくことにしましょう鎮痛薬の使い方に関する5原則
• 経口的に (by mouth)
• 時刻を決めて規則正しく (by the clock)
• 除痛ラダーに沿って (by the ladder)
• 患者ごとの個別的な量で (for the individual)
• その上で細かい配慮を (with attention to detail)
WHO三段階除痛ラダー
3
2
1
第一段階の薬から 順次試して
いきましょう
WHO三段階除痛ラダー
IASP. Pain Clinical Updates 2005 継続的な評価を繰り返しながら 順番に上がっていく「階段方式」 痛みが徐々に増強する場合 適切なフロゕを即時に選択する 「エレベーター方式」 痛みが放置されていた場合 強い痛みが急激に出現した場合 中等度から強度の 痛みに用いる オピオド 軽度から中等度の 痛みに用いる オピオド 非オピオド 強い痛みにも 効く薬を早速 始めましょう
がん疼痛治療のアルゴリズム
ゕセトゕミノフェン またはNSAIDsの開始 オピオドの導入 残存・増強した痛みの治療 持続痛の治療 突出痛の治療がん疼痛治療のアルゴリズム
ゕセトゕミノフェン またはNSAIDsの開始 オピオドの導入 残存・増強した痛みの治療 持続痛の治療 突出痛の治療アセトアミノフェン
• 消化管障害や腎機能障害を生じにくい • ゕルコール多飲者や肝機能障害のある患者 では肝不全に注意が必要 • 内服薬、坐薬、注射薬がある • 常用量(投与経路によらずほぼ同様) – 1回300~1,000mgを投与 – 1日最大投与量は4,000mg – 投与間隔は4~6時間以上 – 腎不全患者では投与間隔を8時間以上あける非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs)
• NSAIDsは、鎮痛効果、作用時間、副作用など を考慮して薬剤を選択する • いずれかのNSAIDが他のNSAIDsよりも優れて いるという研究報告は存在しない • 胃潰瘍の予防 – ミソプロストール、プロトンポンプ阻害薬または 高用量H2ブロッカーを併用する症例1 つづき
• 膵臓がんの54歳女性 • セレコキシブを1回100mg、1日2回で 開始し、3日後に再診とした • しかし再診時にも痛みはNRS 4/10と 十分にとれてはいなかった どうしたらよいか学んでいきましょうがん疼痛治療のアルゴリズム
ゕセトゕミノフェン またはNSAIDsの開始 オピオドの導入 残存・増強した痛みの治療 持続痛の治療 突出痛の治療オピオイド
• オピオド受容体と親和性を有する物質の 総称で、モルヒネ様の薬理作用を発揮する がん疼痛の薬物療法に関するガドラン2014年版 p42-44 • わが国で使用できるオピオドのうち、 がん疼痛治療薬として推奨されている 代表的なもの – コデン、トラマドール – モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、 タペンタドール、メサドンオピオイド導入のポイント
• 時刻を決めて、定時に投与 • 非オピオド鎮痛薬を継続するか、中止 するかは、個々の症例において判断する • 体格が小さい、高齢者、全身状態が不良 などの場合には少量から開始する • 患者の状態や、副作用などを考慮して オピオドの種類を選択する第2段階のオピオイド
• 軽度から中等度の痛みに – 非オピオド鎮痛薬の定時投与によって 痛みが十分に緩和されない場合、第2段階の オピオド(コデン、トラマドール)投与に より、良好な鎮痛効果が得られる可能性がある • 第2段階のオピオイドをスキップして、 第3段階へ – 低用量の第3段階オピオドを、コデンやトラ マドールの代わりに用いてもよいコデイン
• ゕヘンから抽出される天然のオピオド • 体内でモルヒネに変化して効力を発揮 • 主な副作用はモルヒネとほぼ同様 • コデン120mg=経口モルヒネ20mg • 鎮痛用量のコデンを投与する際には、 服薬負担の小さい10%散または20mg錠 を用いるトラマドール
• μオピオド受容体への結合と、セロトニン およびノルゕドレナリンの再取り込み阻害 作用により、鎮痛効果を発揮する • トラマドール100mg=経口モルヒネ20㎎ • 重篤な副作用として、セロトニン症候群や 痙攣があるGrond S, et al.. Clin Pharmacokinet 2004
WHO第3段階オピオイドの剤型と製剤
経口 非経口 速放性製剤 徐放性製剤 注射剤 坐剤 貼付剤 オプソ・モルヒネ(錠・散) オキノーム ーフェン・ゕブストラル モルヒネ注 フェンタニル注 オキフゔスト注・パビナール注 ゕンペック坐薬 デュロテップMTパッチ フェンタニル3日用テープ フェントステープ・ワンデュロパッチ MSコンチン・カデゖゕン・パシーフ ピーガード・MSツワスロン・モルペス オキシコンチン オキシコドン徐放カプセル タペンタモルヒネ
• 剤形が豊富であり、経口(速放性・徐放 性製剤)、静注、皮下注、経直腸など 様々な投与経路の変更に対応が可能 • 各投与経路間の換算比が確立している • 腎障害がある場合には、活性代謝産物で あるM-6-Gが蓄積して、傾眠や呼吸抑制 などが生じやすいオキシコドン
• 経口製剤(速放性製剤・徐放性製剤)と、 注射剤がある • 活性代謝産物は微量しか生成されず、腎 機能障害による影響を受けにくい • 主として肝臓のチトクロームP-450(CYP) により代謝される – 薬物相互作用に関して薬剤師と相談することフェンタニル
• 注射剤、経皮吸収型貼付剤、口腔粘膜吸 収剤、舌下錠がある • 経皮吸収型貼付剤 – 増量や減量の際の調節性は劣る – 原則として他のオピオドから切り替えて使 用する • 他のオピオドに比して便秘、眠気など の副作用の頻度が低いオピオイド鎮痛力価換算比
モルヒネ 経口薬 60mg/日 モルヒネ 坐薬 40mg/日 モルヒネ 注射液 30mg/日 フェンタニル 貼付剤 25μg/時 フェンタニル 注射液 0.6mg/日 オキシコドン 注射液 30mg/日 オキシコドン 経口薬 40mg/日 = = = = = = タペンタドール 経口薬 200mg/日 = トラマドール 経口薬 300mg/日オピオイド鎮痛力価換算表
• ここに各施設の換算表を載せて紹介して経口投与での開始量
• モルヒネの場合は20~30mg/日 – 徐放性製剤:12時間または24時間ごと – 速放性製剤:4時間ごと • オキシコドンの場合は10~20mg/日 – 徐放性製剤:12時間ごと – 速放性製剤:6時間ごと非経口投与での開始量
• 持続静注・皮下注 – モルヒネの場合は10~20mg/日 – オキシコドンの場合は10~20mg/日 – フェンタニルの場合は0.2~0.3mg/日 • 経直腸投与 – モルヒネ坐薬を1回5~10mg 1日3回 • フェンタニル貼付剤をオピオド開始薬と して使用することは推奨されないレスキュー
• 痛みの増強や突出痛に備えて、追加(頓用)で使 える鎮痛薬も準備しておく • 定時使用しているオピオドと同じ種類のオピオ ドを使用するのが基本 • 1回量の目安 – 内服・坐薬は1日量の10~20%(約1/6量) – 持続注射では1時間量を早送り • 内服は1時間以上あけて、持続注射では15~30分 以上あけて繰り返し使用可 Caraceni A. JNCCN 2013 Swarm R. NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology 2012症例1 つづき
• 膵臓がんの54歳女性 • セレコキシブを1回100mg、1日2回で 開始し、3日後に再診とした • しかし再診時にも痛みはNRS 4/10と 十分にとれてはいなかった症例1 つづき
• 非オピオドによる除痛が不十分 • オピオドの処方が必要であると判断 オピオイドを導入するときにはどのような 点に配慮が必要でしょうか? 具体的な処方内容を考えてみましょう!オピオイド導入時に注意すること
• オピオド導入の際には、副作用への対策を 行うことが重要 • オピオドの主な副作用 – 悪心・嘔吐 – 便秘 – 眠気 – せん妄・幻覚 – 口渇 – 掻痒感 – …悪心・嘔吐
• オピオド投与初期や増量時にみられる • 出現頻度は30%程度で、継続使用により1〜2週 間で耐性を生じるが、一旦出現すると継続投与が 困難になることが多く、予防対策が大切 • 制吐薬をオピオドと同時に開始し、1~2週間で 漸減・中止可 – プロクロルペラジン 1回5mg 1日3回 – ハロペリドール 1回0.75~1mg 1日1回 – メトクロプラミド 1回5~10mg 1日3回便秘
• ほとんどの患者に生じるため、オピオド 開始時にあらかじめ下剤を併用する • 耐性が生じないため、オピオド使用中は 継続的な対策が必要 • 水分・食物繊維の摂取を促す • 下剤には、便を軟らかくする浸透圧下剤と、 腸蠕動を亢進させる大腸刺激性下剤がある • 便秘の状況により下剤を使い分ける眠気
• オピオド開始時や増量時は、眠気や軽い傾 眠が見られることが多い • 「眠気は心地よい感じですか?それとも不快 な感じですか?」と聞き、不快であれば対応 を検討する • 対応方法 – オピオドの減量や種類・投与経路の変更 – 他の薬剤の見直し – 他の原因がないかを検索症例1 オピオイド導入例
定時薬、レスキュー、副作用対策を同時に処方 ① オキシコンチン®錠(10) 1回1錠 1日2回 (8時と20時) ② ノバミン®錠(5) 1回1錠 1日3回毎食前 ③ 酸化マグネシウム 1回330mg 1日3回毎食後 ④ セレコックス®錠(100) 1回1錠 1日2回朝夕食後 ⑤ パリエット®錠(10) 1回1錠 1日1回朝食後 ⑥ オキノーム®散2.5mg 痛い時に頓用 1時間以上間隔を空けて繰り返し服用可症例1 つづき
• 膵臓がんの54歳女性 • 心窩部から背部にかけて持続する鈍痛に対し、 オキシコドン徐放錠20mg/日を処方し、3日 後に再診とした • 再診時、NRS 3/10とまだ痛みは残存 • オキシコドン速放散使用し、NRS は1/10程 度になるが、しばらくすると痛みが再燃する • レスキューを1日4回使用している 処方をどのように変更すればよいでしょうか?がん疼痛治療のアルゴリズム
ゕセトゕミノフェン またはNSAIDsの開始 オピオドの導入 残存・増強した痛みの治療 持続痛の治療 突出痛の治療残存・増強した痛みの治療
• オピオドを開始しても痛みが残存する 場合、持続痛か突出痛かを区別する – 持続痛の場合には、定時オピオドの増量 – 突出痛の場合には、レスキューを使用 • 持続的な痛みがコントロールできていな い場合と、持続的な痛みはコントロール できているが突出痛がある場合を区別し て対応することが重要症例1 つづき
• 膵臓がんの54歳女性 • 心窩部から背部にかけて持続する鈍痛に対し、 オキシコドン徐放錠20mg/日を処方し、3日 後に再診とした • 再診時、NRS 3/10とまだ痛みは残存 • オキシコドン速放散使用し、NRS は1/10程 度になるが、しばらくすると痛みが再燃する • レスキューを1日4回使用している 持続痛の残存と考えられるがん疼痛治療のアルゴリズム
ゕセトゕミノフェン またはNSAIDsの開始 オピオドの導入 残存・増強した痛みの治療 持続痛の治療 突出痛の治療持続痛の治療STEP
• 非オピオド鎮痛薬最 大投与量まで併用 • 定時オピオド増量 30~50%/1~3日ごと • オピオドの種類変更 or 鎮痛補助薬STEP 1 STEP 2 STEP 3
STEP 1/2
• 非オピオド鎮痛薬が使用されていなければ、 その定期投与を考慮 • 傾眠が生じない範囲でオピオドを増量 – オピオドの投与量に絶対的な上限はない • 増量幅 – 経口モルヒネ換算120mg/日以下の場合には 50%ずつ – 120mg/日以上・体格が小さい・高齢者・全身 状態が不良な場合には30%ずつ症例1に戻ると…
• 持続痛がコントロールされていないので、 定時オピオドを増量する • 基本的には50%増量するので、現在の 20mg/日を、30mg/日に増量 • 前日に使用したレスキュー使用量の合計量を 上乗せしてもよい – レスキューを1日4回使用している – 2.5mg×4=10mgを追加 – 20mg/日+10mg=30mg/日症例1 つづき
• 痛みを評価しながら、オキシコドン徐放 錠を徐々に増量した • 100mg/日から120mg/日に増量したとこ ろ、痛みは軽減したものの、眠気が不快 になり、何とかしてほしいと訴えている より満足度の高い鎮痛を達成するために 何か良い方法はないでしょうか?STEP 3
• 眠気などの副作用のために増量が困難な 場合や、十分な鎮痛が得られないときに 考えること – オピオドの種類や投与経路の変更 – 鎮痛補助薬の併用 – 放射線療法や神経ブロックなど非薬物療法の 適応について再検討オピオイドの種類変更
• 十分な鎮痛が得られない、副作用のため に継続できない際に検討する • オピオド間の鎮痛力価比を勘案して、 投与量を調整する • 中等量(経口モルヒネ換算120mg/日) 以上のオピオドが使用されている場合 には、専門家にコンサルテーションする鎮痛補助薬
• びりびりした痛みやじんじんした痛みなどの神経障害 性疼痛で有効な可能性がある • 抗うつ薬、抗けいれん薬、抗不整脈薬、NMDA受容体 拮抗薬、コルチコステロドなどが用いられている がん疼痛の薬物療法に関するガドラン2014年版 p78-83 • がんまたはがん治療に起因する神経障害性疼痛に対す る有効性と安全性は確立されていない – 副作用(眠気が多い)と鎮痛効果を定期的に評価し、漫然 と長期投与することは慎む • 使用経験が少ない場合には、痛みの専門家や経験豊富 なスタッフに相談することが望ましい放射線治療
• 痛みの原因となる責任病巣が明確な場合、適 応について早期から十分に検討する – 痛みの原因となる病巣を画像診断で明確に把握 することが重要 • 局所制御や根治も視野に入れた設定が可能 – 適応については、放射線治療専門医に相談 • 骨転移による痛みの緩和と、骨折の予防に対 する放射線治療の有用性は証明されている神経ブロック
• 膵臓がんによる上腹部痛や背部痛、骨盤内臓 がんによる肛門痛や会陰部痛、胸壁の痛みな どで適応になる場合が多い • 適応となる痛みが出現した全ての場合で、早 期に専門家と相談する – 全身状態が悪化してからでは、ブロック処置を 行うことができないことがある – 出血傾向や感染症がある場合には施行できない ことがある 日本ペンクリニック学会. がん性痛に対するンターベンショナル治療ガドラン 2014症例1に戻ると…
• 膵臓がんの痛みは、腹腔神経叢ブロック の適応になることがある
• オピオドの種類変更を検討 • 鎮痛補助薬の使用を検討
専門家へのコンサルテーション
• 中等量以上のオピオドが使用されてい る状況で、オピオドの種類を変更する とき • 使い慣れない鎮痛補助薬を使用するとき • 放射線治療を考慮するとき • 神経ブロックを考慮するとき症例2
• 乳がん、腰椎転移の50歳女性 • ジクロフェナク75mg/日、モルヒネ徐放錠 180mg/日を定期内服し、レスキューとして モルヒネ内服液5mgが処方されている • 安静時には痛みはないが、トレに行く時に は腰がとても痛い • レスキューは現在使用していないという この状況における問題点は何でしょうか?症例2
• 乳がん、腰椎転移の50歳女性 • ジクロフェナク75mg/日、モルヒネ徐放錠 180mg/日を定期内服し、レスキューとして モルヒネ内服液5mgが処方されている • 安静時には痛みはないが、トレに行く時に は腰がとても痛い • レスキューは現在使用していないという 突出痛がコントロールされていない!がん疼痛治療のアルゴリズム
ゕセトゕミノフェン またはNSAIDsの開始 オピオドの導入 残存・増強した痛みの治療 持続痛の治療 突出痛の治療突出痛の治療STEP
• 非オピオド鎮痛薬最大 投与量まで増量 • 骨転移部の固定 • 「薬の切れ目の痛み」へ の対応 • 十分量のレスキューを 正しく処方 • レスキューの使い方の 指導 • 定時オピオドの慎重 な増量STEP 1 STEP 2 STEP 3
突出痛
• 持続痛の有無や程度、鎮痛薬治療の有無に関 わらず発生する一過性の痛みの増強
• 定時オピオドを使用していても、70%の 患者は突出痛を経験する
Deandrea S. J Pain Symptom Manage 2014
• 特徴
– ピークまでの時間:3分程度 – 平均持続時間:15-30分
– 発生部位:8割が持続痛と同じ部位
突出痛の治療エッセンス
• 突出痛の原因や出現パターンを評価する • 定時鎮痛薬の切れ目の痛み(end-of-dose failure)のある患者では、オピオド定時 投与量の増量や投与間隔の短縮を行う • 放射線照射、ビスホスホネート製剤の適応 を検討 • レスキューの使用法を患者・家族に指導レスキューの必要性の説明
• レスキューの使用により「鎮痛薬の必要量を早く 見積もることができること」、「突出痛による苦 痛へ対応できること」を説明する • レスキューを使いこなせるようになれば、「自分 で痛みへの対応ができる感覚」が高まり、生活や 治療への意欲が増すことが期待できる – 「痛みが出てきたら、頓用で出している薬を飲んでく ださい。1時間あけて何回でも使用可能です」 – 「リハビリの前など、いつも痛くなる時間の前に予防 的に使っておきましょう」放射線治療
• 骨転移による痛みの緩和と骨折予防に対する 放射線治療の有用性は証明されている
Lutz S, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys 2011
• 実際の放射線治療 – 外照射 – ゕソトープ治療 • ストロンチウム • 放射性ヨード(甲状腺がんの骨転移の場合のみ) • 放射線の量や範囲は、状況によって判断 – 骨折や脊髄圧迫のリスク – 併用治療や期待される生存期間などへの配慮
ビスホスホネート製剤
• ビスホスホネート製剤には、骨転移による痛みお よび骨折の予防の効果がある
Coleman RE, et al. Bone 2011
– ゾレドロン酸 4mgの点滴投与(4週毎)など • 重篤な副作用として顎骨壊死がある – 投与前に顎骨壊死を生じるリスクの有無に ついて、歯科または口腔外科にコンサルト • 腎機能低下例においては排泄が遅延するため投与 量を調節する必要がある
デノスマブ
• 抗RANKL抗体 • 固形がんの骨転移による痛みに対して有効 – 痛みのない状態で投与を開始した場合、オピオドを 必要とする痛みになるまでの期間を延長する – 痛みの悪化や痛みによる日常生活への支障を予防するPatrick DL, et al. Support Care Cancer 2015
• 腎機能低下例においても比較的投与しやすい
• 重篤な低カルシウム血症を予防するため、カルシ ウム・ビタミンD配合薬の投与が必要
症例2 つづき
• 腰椎への放射線照射を考慮 • ビスホスホネート製剤の点滴投与を検討 • 標準的なレスキューの投与量は1日投与量の10~ 20%(1日量の1/6量) – 180mg/日の10~20%は18~36mg – 180mg/日の1/6量は30mg – 5mgでは量が不足しており、効果が乏しい? • レスキューはなるべく使わないほうがよいと患者 や家族が考えているかもしれないがん疼痛の非薬物療法・ケア
• 痛みに関与する要因は? – どのような時に痛みが強くなり、どのような 時に痛みが軽くなるだろうか? • 薬物治療以外の痛みを緩和する方法は? – 薬物療法以外の疼痛緩和の方法を考えてみる痛みの閾値に影響する因子
不快 不眠 疲労 不安 恐怖 怒り 悲しみ うつ状態 倦怠感 孤独感 内向的心理状態 社会的地位の喪失 症状緩和 睡眠 周囲の人々の共感 理解 休憩 人とのふれあい 気晴らしとなる行為 不安減退 気分高揚 鎮痛薬 抗不安薬 抗うつ薬 これらを高める ケゕを考える Twycross著、武田文和訳. 末期患者の診療マニュゕル第2版 1991ケアは薬物療法と並行して行う
• ケゕは薬物療法と並行して行う必要がある
• 患者本人や家族が行っている疼痛時の対処方法 を尋ね、より良いケゕの方法を一緒に考える
痛みを和らげるケア
• マッサージをする • 温罨法・冷罨法 • 軽い運動を取り入れる • 環境の調整 – 痛みが増強する動きが避けられるように • 装具や補助具の利用 – コルセット、頸椎カラー、歩行器の使用など • ひとりで抱え込まない – 患者も家族も医療従事者もまとめ
• 痛みを緩和することにより、睡眠、食欲、 気持ちのつらさが改善し、その人らしい 生活を取り戻すことができる • 痛みの原因や機序を評価し、それに基づ いた治療を計画することが重要である • 薬物療法、特にオピオドの使用法に習 熟することが大切である • 非薬物療法やケゕも重要であるメサドン
• NMDA受容体拮抗作用を有するオピオド • 半減期が長く、その個人差も大きいため、 タトレーションが難しく、がん疼痛治療の 専門家(有資格者)によってのみ使用される べきオピオイドである • QT延長による致死的な不整脈を生じるリス クがある • モルヒネと比較して、腎機能低下例において 安全に使用できるタペンタドール
• μオピオド受容体への結合と、ノルゕドレナリン の再取り込み阻害作用により、鎮痛効果を発揮する • 鎮痛力価
– タペンタドール:モルヒネ=1:3.3
Mercadante S, et al. Curr Med Res Opin 2013
– タペンタドール:オキシコドン=1:5
Afilalo M, et al. Clin Drug Investig 2010
• 他の第3段階オピオドと比較して便秘や悪心・嘔 吐を生じにくい
• がん疼痛治療における位置づけは確立されていない
Schikowski A, et al. J Pain Res 2015 Kress H, et al. Pain Physician 2014
レスキューに用いるフェンタニル製剤
• 口腔粘膜吸収剤(バッカル錠)と舌下錠 • Rapid Onset Opioid (ROO)
– 速放性製剤よりも鎮痛効果の発現がやや速い • 定時投与されているオピオドの量とレキュー に用いるフェンタニル製剤の1回量との間には、 相関性が乏しい • 必ず最低用量(50μgまたは100μg)から開始 • 効果と副作用を見ながら1回量を漸増する • 1日あたりの使用回数に制限がある Smith H. CNS Drugs 2012
プレガバリン
• 抗けいれん薬のひとつで、Ca2+チャンネルに作用 して脊髄における神経伝達を抑制する • 副作用:眠気、浮動性めまい、口渇、浮腫など • 少量(25~50mg/日)から開始して数日毎に増量 • 腎機能低下例では投与量を減じる必要がある • 薬物相互作用は起こりにくい • がんあるいはがん治療による神経障害性疼痛に対 する有効性と安全性は確立されていないBennett MI, et al. Pain Med 2013 Fallon MT. Br J Anaesth 2013
がん疼痛の薬物療法に 関するガイドライン 2014年版 日本緩和医療学会 緩和医療ガドラン委員会 編 このモジュールの内容は概ね このガドランに準拠して 作成されています
参考
患者さんと家族のための がんの痛み治療ガイド 日本緩和医療学会 緩和医療ガドラン委員会 編 一般市民向けに記述された 平易なガドブックです 患者・家族への説明にも ご利用ください