要 旨 【目的】乾癬患者の quality of life(QOL)低下に及ぼ す諸因子と治療に対する満足度を把握するためにアン ケート調査を実施した. 【方法】東京医科大学病院皮膚科に通院する乾癬患 者 143 例に対して,皮膚疾患特異的な QOL の指標で あ る Skindex-16 日 本 語 版 と 精 神 健 康 度 を 評 価 す る GHQ-28 日 本 語 版 に よ り 調 査 し た.更 に Visual ana-logue scale(VAS)により瘙痒,爪症状,関節症状,外 用薬を塗布することに対するストレスを評価し,さら に外用薬塗布に要する時間,治療満足度をアンケート として実施した. 【結果】Skindex-16 のスコア(平均値±SD)は,総 合:42.4±21.7,症 状:26.3±22.3,感 情:61.2±26.2,機 能:29.0±27.3 と感情面の QOL が最も低下していた. GHQ-28 のスコアは 6.12 点±5.96(GHQ 採点法)とな り,ハ イ リ ス ク 症 例 は 55 例(39.3%)で あ っ た. Skindex-16 と psoriasis area and severity index (PASI)ス コ ア は 有 意 に 正 の 相 関 を 示 し た が(r= 0.381,p<0.01),GHQ-28 と PASI スコアの相関は低 か っ た.PASI ス コ ア 10 以 下 の 患 者 で あ っ て も Skindex-16,GHQ-28 が高値を示し,QOL が低下して いる患者が多く存在した.外用薬塗布時間が 10 分以上 になると,塗布することに対するストレス(VAS スコ ア)は有意に高値を示した.また,現在の治療に対し て約半数の患者は何らかの不満を持っていることが判 明した. 【結語】PASI スコア 10 以下の患者でも QOL や精 神健康度が低下している乾癬患者が多く存在した.日 常診療においては,現在の治療満足度や日常生活への 支障の程度,精神的健康度,治療の負担などを具体的 に患者に質問し,患者の立場に立って治療に取り組む ことが重要である. はじめに 乾癬は代表的な慢性炎症性皮膚疾患のひとつであ り,経過中に軽快・増悪を繰り返し,治療に難渋する 症例も少なくない.そのため乾癬患者の quality of life (QOL)が著しく障害されていることが最近の国内外 の報告で明らかにされた1)∼6).Rapp らの SF-36 を用 いた試験2)によると高血圧・糖尿病・心筋梗塞・癌な どの疾患に比較し,乾癬患者では身体的・精神的両面 で QOL が著しく低下していた.根本らや中川らの報 告では,約半数以上の乾癬患者は現状の治療に満足し ていないことが示されている2)3). 従来乾癬患者の重症度の判定や治療方針を決定する 指 標 と し て,罹 患 部 の 体 表 面 積 body surface area (BSA)や psoriasis area and severity index(PASI)ス コアが主に用いられてきた.しかし,患者の精神的お よび身体的な苦悩は医師が日常診療で感じるよりも深 刻で,この認識の差が,医師と患者の重症度評価や治 療目標にギャップを生じている7).このような背景か ら,患者の治療ニーズや QOL に基づいた治療方針を 立てることが求められており,米国では,すでにこの ような取り組みが始まってい る.National Psoriasis Foundation『米 国 乾 癬 財 団』や American Academy of Dermatology の乾癬治療コンセンサス・ステート メントにおいて,治療の選択に QOL を考慮した重症 度の評価が推奨されている8)9). そこで今回我々は,通院中の乾癬患者に対して QOL や精神健康度,治療満足度のアンケート調査を行い, それらに影響を及ぼす諸因子について検証した.
Skindex-16
!GHQ-28 を用いた乾癬患者に対する QOL 評価と
治療満足度調査
大久保ゆかり
荒井 佳恵
藤原 尚子
天谷 美里
坪井 良治
東京医科大学皮膚科学教室(主任:坪井良治教授) 平成 19 年 2 月 13 日受付,平成 19 年 7 月 24 日掲載決定 別刷請求先:(〒160―0023)東京都新宿区西新宿 6― 7―1 東京医科大学皮膚科学教室 大久保ゆかり方 法 2004 年 8 月から 2006 年 8 月までに東京医科大学病 院皮膚科を受診した乾癬患者 143 例を対象とした. 皮疹の重症度は PASI スコアで判定し,薬剤使用状 況を医師が記録した.下記にあげた QOL 評価を含む アンケートを患者が来院時に記入した.また,本調査 は書面による患者の同意取得後に行い,個人が特定で きないように無記名で行った. 1)皮膚疾患特異的な QOL 評価 皮 膚 疾 患 特 異 的 な 尺 度 と し て Skindex-16 日 本 語 版10)を用いた.Skindex は Chren らにより 1996 年にオ リジナル版(61 項目)が開発され11),その後に類似項 目 を 省 略 し た 短 縮 版 で あ る Skindex-2912),さ ら に 2001 年に Skindex-16 が作成された13).Skindex-16 は 症状・感情・機能の 3 つのスケールに分けられた合計 16 項目の質問から成り,各スコアと総合スコアで評価 する.各項目に対し 7 段階(0:まったく悩まされな かった∼6:いつも悩まされた)で患者自身が回答し, 各 16 項目を 0∼100 までの数字にスコアリングして各 スコアの平均値を求めた. 2)精神健康度の評価 GHQ は,主として神経症者の臨床把握,評価および 発見に有効と言われる精神健康度調査である.GHQ のオリジナル版(60 項目)は 1970 年 Goldberg らによ り開発され14),多くの言語に翻訳され研究や臨床現場 で使用されてきた.その後,GHQ-3015),GHQ-2816), GHQ-1217)が開発され,短縮版として広く用いられてい る.今回採用した GHQ-28 日本語版18)は 28 項目の質問 からなり,身体的症状・不安と不眠・社会的活動障 害・うつ傾向の 4 つの因子から構成されている.GHQ 法(2 段階法:0−0−1−1 点)で 28 点満点で採点し, 全神経症者の 90% 以上が 6 点以上,健常者の 86% が 5 点以下と報告されていることから,6 点以上を「何ら かの問題有り」のハイリスク症例と判定している.各 因子では「身体的障害」「不安と不眠」に関しては 7 点 満点中 4 点以上を中等度以上の症状,2∼3 点は軽度の 症状を持っていると評価し,「社会的活動障害」「うつ傾 向」に関しては 7 点満点中 3 点以上を中等症以上の症 状,1∼2 点で軽症の症状をもっていると評価してい る19).
3)Visual analogue scale(VAS)スコアによる各臨床 症状の評価 VAS を用いて瘙痒,爪症状,関節症状の 3 項目の評 価を行った. 瘙痒は, 左端(0mm)を“全く痒くない”, 右端(100mm)を“耐えられない痒み”とし,爪症状 は,左端(0mm)を“困っていない”,右端(100mm) を“大変困っている”とし,関節症状は,左端(0mm) を“全く痛くない”,右端(100mm)を“耐えられない 痛み”と記載したものを使用した.患者自身が VAS 上に付けた印の左端からの長さ(mm)を測定し,VAS スコアとして評価した. 4)外用薬の塗布時間と塗布することに対するスト レス 「外用薬は 1 日何度塗っていますか?」,「一度に塗る 時間はどのくらいですか?」の質問に対し患者が回数 と時間を記入し,1 日当たりの外用薬の塗布時間(分! 日)を割り出した.また外用薬を塗布することに対す るストレスを VAS スコアで評価した.VAS は左端 (0mm)を“全く感じない”,右端(100mm)を“大変 ストレスに感じる”とし,VAS 上に付けた印の左端か らの長さ(mm)を測定した. 5)治療満足度 現在行われている治療に対する満足度を 5 段階(満 足・やや満足・どちらでもない・やや不満・不満)で 回答させ,治療満足度として評価した. これらのデータに対する統計学的処理方法は,t 検 定(Student 法)を用い,各スコアの相関は Pearson 積算相関係数を用いた.すなわち,0.0∼0.2 は「ほとん ど相関関係がない」,0.2∼0.4 は「やや相関関係があ る」,0.4∼0.7 は「か な り 相 関 関 係 が あ る」,0.7∼1.0 は「強い相関関係がある」を示す.なお,有意水準は 0.05 とした. 結 果 1)患者背景 解析対象となった乾癬患者 143 例の背景を表 1 に示 す.平 均 年 齢 50.4±15.6 歳(19∼86 歳),男 性 98 例 (68.5%),女性 45 例(31.5%),病型は尋常性乾癬 126 例(88.1%),膿疱性乾癬 7 例(4.9%),関節症性乾癬 7 例(4.9%),滴状乾癬 2 例(1.4%),膿疱性乾癬と関 節 症 性 乾 癬 合 併 1 例(0.7%)で あ っ た.平 均 PASI ス コ ア は 10.5±9.4(0∼47.5)で,10 未 満 が 83 例
表 1 患者背景 例数 背景因子(n= 143) 例数 背景因子(n= 143) 83(58.0%) 10未満 PASIスコア 平均値 ±SD 10.5±9.4 最低 0 最高 47.5 98(68.5%) 男性 性別 43(30.1%) 10~ 19 45(31.5%) 女性 8(5.6%) 20~ 29 13( 9.1%) 30歳未満 年齢 平均値 ±SD 50.4±15.6 最少 19 最高 86 9(6.3%) 30以上 30(20.9%) 30~ 39歳 112(78.3%) 外用療法単独 治療方法 (アンケート実施時点) 26(18.2%) 40~ 49歳 31(21.7%) 全身療法 29(20.3%) 50~ 59歳 20(14.0%) エトレチナート 26(18.2%) 60~ 69歳 4( 2.8%) シクロスポリン 19(13.3%) 70歳以上 1( 0.7%) メトトレキサート 126(88.1%) 尋常性乾癬 病型 6( 4.2%) 光線療法 7( 4.9%) 膿疱性乾癬 7( 4.9%) 関節症性乾癬 2( 1.4%) 滴状乾癬 1( 0.7%) 重複型※ ※膿疱性乾癬と関節症性乾癬の重複例 表 2 Skindex-16および GHQ-28スコア ■ Skindex-16 スコア(平均値 ±SD)(n= 141) 機能 感情 症状 総合 29.0±27.3 61.2±26.2 26.3±23.3 42.4±21.7 ■ GHQ-28 スコア(平均値 ±SD)(n= 140) うつ傾向 社会的活動障害 不安と不眠 身体的症状 合計 0.67±1.66 1.01±1.55 2.14±2.10 2.30±2.03 6.12±5.96 ■ GHQ-28各因子の“症状有り”の症例数(n= 140) うつ傾向 身体的活動障害 不安と不眠 身体的症状 GHQ28スコア 31(22.1%) 62(44.3%) 72(51.4%) 81(57.9%) 55(39.3%) 症状有り 109(77.9%) 78(55.7%) 68(48.6%) 59(42.1%) 85(60.7%) 症状無し (58.0%),10 以上 20 未満が 43 例(30.1%),20 以上 30 未満が 8 例(5.6%),30 以上の患者が 9 例(6.3%)で あった. 治療方法(重複を含む)は,外用薬および外用薬と 抗ヒスタミン薬内服が 112 例(78.3%),エトレチナー ト 併 用 20 例(14.0%),シ ク ロ ス ポ リ ン 併 用 4 例 (2.8%),光線療法 6 例(4.2%),メトトレキサート併用 は 1 例(0.7%)であり,外用療法単独の患者は 78.3%, 全身療法を併用した患者は 21.7% であった(表 1). 2)Skindex-16 スコア 表 2 に示すように Skindex-16 のスコア(平均値± SD)は,総 合:42.4±21.7,症 状:26.3±23.3,感 情: 61.2±26.2,機能:29.0±27.3 であった.感情スケール が,他のスケールに比べて高値であることが特徴で あった.症状スケールの中では「皮膚にかゆみがある」 が高値を示し,感情スケールの中では「皮膚の症状の 見た目が気になる」,「皮膚の症状がうっとうしい」が高 く,機能スケールの中では「皮膚の症状のため日常生 活に支障がある」「皮膚の症状のために仕事や,余暇を 楽しむことがむずかしい」が高い傾向であった.
表 3 VASによる臨床症状の評価 ■瘙痒 “症状有りの患者※” 総患者 93(69.9%) 133(100%) 患者数 49.6±21.2 35.8±27.6 VASの平均値 ±SD ■爪症状 “症状有りの患者※” 総患者 68(48.6%) 140(100%) 患者数 58.7±24.3 29.3±33.3 VASの平均値 ±SD ■関節症状 “症状有りの患者※” 総患者 45(32.4%) 139(100%) 患者数 50.6±26.8 17.5±27.5 VASの平均値 ±SD ※VASスコアが 1以上を“症状有り”とした. 3)GHQ-28 スコア 表 2 に示すように,GHQ-28 のスコアの平均値±SD は,6.12±5.96(GHQ 採点法)となり,ハイリスク症例 (6 点以上)は 55 例(39.3%)であった.因子別の平均 値±SD は「身体的症状」の 2.30±2.03 がもっとも強く, 「不 安 と 不 眠」の 2.14±2.10,「社 会 的 活 動 障 害」の 1.01±1.55,「うつ傾向」の 0.67±1.66 の順であった. 各因子別の症状を有する(軽症以上の症状)割合は, 「身体的症状」が 81 例(57.9%),「不安と不眠」は 72 例(51.4%),「社会的活動障害」は 62 例(44.3%),「うつ 傾向」は 31 例(22.1%)であった.「身体的症状」の中 では「元気がなく疲れを感じたことは」の項目に『あっ た』,『たびたびあった』と回答した患者が多く,「不安と 不眠」の中では「夜中に目を覚ますことは」,「いつもス トレスを感じたことが」の 2 項目に『あった』,『たびた びあった』と回答した患者が多かった.「社会的活動障 害」の中では「いつもよりすべてうまくいっていると 感じることが」の項目に対し『なかった』,『まったくな かった』と回答した患者が多く,「うつ傾向」の中では 「自分は役に立たない人間だと考えたことは」に対し 『あった』,『たびたびあった』と回答した患者が多かっ た.さらに「うつ傾向」の中で「死んだほうがましだ と考えたことは」,「自殺しようと考えたことが」の項目 のいずれか,もしくは両方に『あった』,『たびたびあっ た』と回答した患者は 12 例(8.6%)存在した. 4)VAS スコアによる臨床症状 瘙痒・爪症状・関節症状の VAS の平均値±SD は 表 3 に示すように,瘙痒が 35.8±27.6,爪症状が 29.3± 33.3,関節症状が 17.5±27.5 であった.平均スコアは瘙 痒,爪,関節の順に高かった.図 1 に示すように各症 状の VAS スコア別患者割合は VAS スコア 10mm 未 満が多く,これらの患者はほぼ“症状無し”と見なし た.そこで VAS スコアが 10∼100mm の患者を“症状 有り”と判断し,解析を行った.その結果,表 3 に示 すように瘙痒の“症状有り”の患者数は 93 例(69.9%), 爪症状の“症状有り”の患者数は 68 例(48.6%),関節 症状の“症状有り”の患者数は 45 例(32.4%)であっ た.それぞれ“症状有り”の患者の平均値±SD は,瘙 痒 49.6±21.2,爪 症 状 58.7±24.3,関 節 症 状 50.6±26.8 であった. 5)PASI ス コ ア と VAS,Skindex-16,GHQ-28 の 相 関 臨床症状(VAS スコア)と PASI スコアの分布を図 2 に示す.瘙痒と PASI スコアの相関係数は r=0.249 (p<0.05),爪 症 状 と PASI ス コ ア は r=0.205(p< 0.05),関 節 症 状 と PASI ス コ ア は r=0.272(p< 0.01)で,それぞれの VAS スコアは PASI スコアと有 意に正の相関を示した.しかし,PASI スコアが低値で あっても瘙痒,爪,関節症状を強く訴える患者も少な からず存在していた. PASI スコアと Skindex-16 および GHQ-28 の相関関
図 1 臨床症状に対する VASスコア別の患者割合 ■瘙痒 □爪症状 関節症状
図 3 Skindex-16,GHQ-28と PASIスコアの相関 GHQ-28合計 6点以上はハイリスク症例を示す. 図 4 外用薬塗布に要する時間とストレスの関係 (平均値 ±SD,* p< 0.05,** p< 0.01) 係 を 図 3 に 示 す.Skindex-16 と PASI ス コ ア は r= 0.381(p<0.01)で有意な正の相関を示したが,GHQ-28 と PASI スコアは r=0.184(N. S. )で 相 関 性 は 低 か っ た.ま た,PASI ス コ ア 10 以 下 で あ っ て も Skindex-16,GHQ-28 が高値である患者も目立ち,必 ずしも皮疹の重症度に関係なく QOL の低下や精神的 健康度に影響していることがわかった. 6)外用薬塗布時間と外用薬塗布ストレス 1 日 当 た り の 外 用 薬 塗 布 時 間 の 平 均 値±SD は 16.1±17.2 分であった.図 4 に示すように塗布時間の 割 合 は,1 日 10 分 未 満 の 患 者 が 51 例(37.0%),10 分以上 20 分未満が 41 例(29.7%),20 分以上 30 分未満 が 20 例(14.5%),30 分以上 60 分未満の患者が 18 例 (13.0%),60 分以上の患者が 8 例(5.8%)であった.
図 5 治療満足度 外用薬を塗布することに対するストレスの VAS(平均 値±SD)スコアは,外用薬塗布間が 10 分未 満 で は 29.9±28.4,10 分以上 20 分未満が 50.9±32.7,20 分以 上 30 分 未 満 が 49.2±34.7,30 分 以 上 60 分 未 満 が 53.2±34.6,60 分以上が 77.5±18.0 となり塗布時間が 10 分以上になると塗布に対するストレスが有意に上 昇した. 7)治療満足度 現在の治療効果に対する満足度を図 5 に示す.「満足 している」と回答した割合は 20.6%,「やや満足してい る」は 33.8%,「どちらでもない」は 25.7%,「やや不満」 と「不満」はそれぞれ 15.4% と 4.5% であった. 8)各パラメーターの相関関係(表 4) GHQ-28 の 各 因 子(合 計・身 体 的 症 状・不 安 と 不 眠・社会的活動障害・うつ傾向)と Skindex-16 の各ス コア(総合・症状・感情・機能)の相関係数をピアソ ンの積率相関係数を用いて計算した.GHQ-28 の合計 スコアと Skindex-16 の総合スコアの相関係数は r= 0.492 で有意な正の相関を示した(p<0.01).各下位因 子間でも弱い正の相関関係を認めた.Skindex-16 は, 瘙痒と外用薬を塗布することに対するストレスと正の 相関を示し,関節症状や PASI スコア,治療満足度とは 弱い正の相関を示した.爪症状とは相関は低かった. GHQ-28 は,瘙痒,関節症状,外用薬を塗布することに 対するストレスと弱い正の相関を示したが,PASI ス コアや治療満足度,爪症状とは相関しなかった. 考 察 近年,乾癬患者に対する治療は外用薬,全身投与薬 ともに選択肢が増え,個々の患者によって使い分けが 可能となってきた.しかし,いまだ根本的な乾癬の治 療法は見つかっておらず,治療が長期化するため乾癬 患者の QOL は著しく低下している.QOL の評価法と しては,一般的な健康関連 QOL の SF-3620)21),SIP22) や,皮膚疾患特異的な Skindex-2912),Skindex-1613), DLQI23)などが最近用いられ,いずれも日本語版が開発 さ れ て い る10)24).乾 癬 特 異 的 な 指 標 と し て PDI や PLSI,PSORIQol が報告され1)6)25)26),このなかで最も 用いられている PDI も最近日本語に翻訳された27).一 方,乾癬患者の精神神経関連については GHQ28)∼31)や the Carrol rating scale for depression(CRSD)32)を用い た報告などがある.今回はその中で皮膚疾患に特異的 な Skindex-16 日本語版に加えて,精神面での健康度に ついて GHQ-28 日本語版を用いて QOL を評価し,臨 床症状や外用塗布時間,治療満足度との関係を解析し た. 檜垣らの報告10)によると健常人における Skindex-16 の各スコアの平均値±SD は,総合:1±2,症状:2± 4,感情:2±4,機能:0±1 であり,それに比較すると, 湿疹・皮膚炎,乾癬,良性腫瘍などの皮膚疾患患者 100 例の平均値±SD は,総合:36±23,症状:29±30,感 情:54±28,機能:16±22 で有意に高値を示した.そ の中で乾癬患者 11 例の平均値±SD は,症状:27± 20,感情:66±24,機能:12±18 であり,我々の結果と ほぼ同様な値を示した.また,神田らによる,乾癬患 者 92 例の QOL に関する最近の報告でも,Skindex-16 の ス コ ア は 症 状:29±23,感 情:67±28,機 能:30± 29 とされている33).いずれも感情スケールが高値であ るのが特徴で,我々のデータでは感情スケールの「皮 膚の症状の見た目が気になる」,「皮膚の症状がうっと うしい」のスコアが高いことから,皮疹が完全に改善 されていないために感情スコアが高くなっていること が推測された. 今回の GHQ-28 解析結果ではカットオフ値の 6 以上 の患者が約 40% 存在し,何らかの神経症症状を持って いる可能性が示唆された.黒江らによると糖尿病患者 は カ ッ ト オ フ 値 以 上 が 13.2% で あ る と 報 告 し て お り34),これと比べても乾癬患者の精神的健康度の低下 は明らかである.海外においても乾癬患者を対象にし た GHQ-28 の調査で,カットオフ値を超えた患者の割 合は 45% であると報告されており28),我々の結果と ほぼ同様であった.今回解析した乾癬患者のなかで「う つ傾向」の症状を有する患者が 22.1% も存在した.
表 4 臨床的重症度,治療満足度,Q O L 尺度の相関 VA S G HQ-28 S k in d ex -1 6 外用薬 ストレス 関節症状 爪症状 瘙痒 うつ傾向 社会的 活動障害 不安と 不眠 身体的 症状 合計 機能 感情 症状 総合 治療 満足度 P AS I 0. 38 1 0. 10 6 -0 .0 49 0. 19 7 -0 .0 23 0. 02 1 -0 .0 86 0. 03 6 -0 .0 20 0. 23 4 0. 23 8 0. 17 4 0. 27 0 0. 23 6 0. 15 0 外用薬塗布時間 0. 21 6 0. 11 6 0. 19 5 0. 26 6 0. 26 4 0. 25 8 0. 21 3 0. 30 9 0. 34 6 0. 51 6 0. 23 2 0. 47 8 0. 35 5 0. 27 8 外用薬ストレス VA S 0. 33 3 0. 23 8 0. 33 5 0. 25 5 0. 14 3 0. 09 1 0. 23 9 0. 28 1 0. 21 7 0. 38 5 0. 33 6 0. 05 9 0. 27 2 関節症状 0. 07 9 0. 09 0 -0 .0 01 0. 11 7 0. 05 9 0. 08 6 0. 13 6 0. 08 4 0. 18 2 0. 15 0 -0 .0 24 0. 19 8 爪症状 0. 29 3 0. 31 6 0. 24 0 0. 11 5 0. 28 9 0. 37 6 0. 36 4 0. 65 5 0. 52 9 0. 22 2 0. 25 3 瘙痒 0. 35 0 0. 56 9 0. 39 8 0. 70 0 0. 38 7 0. 30 9 0. 27 0 0. 39 6 0. 16 5 0. 29 2 うつ傾向 G HQ-28 0. 64 3 0. 49 9 0. 76 9 0. 30 7 0. 29 2 0. 31 7 0. 36 8 0. 18 9 0. 05 5 社会的活動障害 0. 61 8 0. 90 2 0. 38 7 0. 40 0 0. 30 5 0. 45 4 0. 10 9 0. 08 3 不安と不眠 0. 81 0 0. 26 6 0. 36 0 0. 20 6 0. 35 7 0. 13 8 0. 17 1 身体的症状 0. 41 7 0. 43 0 0. 33 9 0. 49 2 0. 18 1 0. 18 0 合計 0. 59 9 0. 41 5 0. 84 1 0. 20 6 0. 28 5 機能 S k in d ex -1 6 0. 42 1 0. 89 1 0. 36 9 0. 30 0 感情 0. 66 7 0. 10 5 0. 33 5 症状 0. 30 9 0. 36 7 総合 0. 25 1 治療満足度 ピアソンの積率相関係数(r ) 相関係数の絶対値解釈:0 .0 ~0 .2 ほとんど相関関係がない,0 .2 ~0 .4 やや相関関係がある,0 .4 ~0 .7 かなり相関関係がある,0 .7 ~1 .0 強い相関関係がある
Gupta ら の 報 告 に よ る と,乾 癬 患 者 の う つ 傾 向 を CRSD で 調 べ た と こ ろ 自 殺 企 図 を 訴 え る 患 者 が 約 10% 存在した32).我々の結果でも 8.6% の患者が死を 考えたことがあったと回答している.つまり,乾癬患 者の約半数は何らかの神経症症状を持っており,さら に約 2 割の患者がうつ傾向を有する可能性が示唆され た.実際にこのような神経症症状をもつ患者を皮膚科 の日常診療で見極めることは非常に困難であった. 従って,GHQ のような質問表を活用し,患者個々の精 神状態やストレスを評価することが有用であると考え る. 海外での乾癬患者に対する GHQ-12 や Skindex-29 等を用いた調査35)によると,GHQ-12 は PASI スコアと の相関は低い(r=0.054)が,Skindex-29 との相関は良 好(症状:r=0.431,感情:r=0.596,機能:r=0.615)で あると報告されている.我々の調査でも GHQ-28 と PASI スコアとの間に相関はなかったが(r=0.180), GHQ-28 と Skindex-16 の下位因子(症状:r=0.339,感 情:r=0.430,機能:r=0.417)とは正の相関を示した. このように QOL の尺度として GHQ と Skindex は整 合性があり,皮膚疾患患者の精神健康度を調査する場 合,GHQ は一つの有用な手段であると考える. これまで外用薬の塗布時間や外用薬を塗布する煩わ しさについて解析した報告は多くない.中川らの報告4) によると自宅での治療に要する時間とストレスの関係 は,自宅での治療時間が 10 分を超えるとストレスを訴 える患者が増加する傾向がみられ,約半数の患者が「外 用薬を塗ること」にストレスを感じると回答している. 我々の調査でも同様に 10 分を超えると外用薬を塗布 することに対するストレスが増加していた.実際には 調査対象患者の平均外用薬塗布時間は 15 分を超えて おり,30 分以上を要している患者が約 20% 存在した. 今後は外用薬治療に対するストレスを軽減するため に,内服療法や光線療法などの全身療法を積極的に取 り入れ,外用薬塗布面積を減少させ,外用薬治療の煩 わしさを軽減させることが QOL 改善につながると思 われた. 治療満足度は約半数が「どちらでもない」か「やや 不満」「不満」と回答していた.今回の調査結果では PASI スコアが低い患者でも QOL や精神健康度が低 下している患者が多く,軽症でも現在の治療に満足し ているとは限らないことが判明した.治療の選択に関 しては,PASI スコアなどの客観的な皮疹の重症度だ けではなく,QOL や精神的健康状態を把握するために 具体的な質問を行って,個々の患者のニーズにあった 治療を提案していくことが重要である. 今回の調査では Skindex-16 と GHQ-28 とい う 2 つ の QOL 尺度を用いて解析した結果,それぞれの特徴 が明らかとなった.つまり Skindex-16 は,外用薬塗布 に対するストレス・瘙痒・関節症状・治療満足度と いった主観的な項目や客観的評価である PASI スコア と正の相関を示したことから,乾癬の自他覚所見を反 映する良い指標であると考えられた.一方,GHQ-28 では主観的,客観的項目との相関は低く,臨床症状や PASI スコアから患者の精神的健康度を把握すること は難しいといえる.従って皮膚疾患の QOL を評価す る場合には,皮膚疾患または疾患特異的な QOL と同 時に一般的精神健康度調査を行うことが,より正確に 患者の QOL を把握するために重要であると考える. 文 献
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Key words:
Assessment of the Quality of Life of Patients with Psoriasis Using Skindex-16 and GHQ-28
Yukari Okubo, Kae Arai, Shoko Fujiwara, Misato Amaya and Ryoji Tsuboi Department of Dermatology, Tokyo Medical University
(Received February 13, 2007 ; accepted for publication July 24, 2007)
Objective: Recently, the importance of improving a patient’s quality of life(QOL)has been emphasized for skin diseases. The aims of this study were to evaluate the QOL of patients with psoriasis and their satisfac-tion with their current treatment. Methods : This was a prospective, open study performed at Tokyo Medical University Hospital. The patients were asked to complete both the Skindex-16 and General Health Question-naire(GHQ)-28 questions and a Visual analogue(VAS)scale rating of itching, nail lesions, joint pain and stress experienced while applying ointment. They also reported the time spent applying ointment and rated their level of satisfaction with the therapy. Results : The emotional scales of Skindex-16 were particularly impaired. In QOL measures with GHQ-28, 39.3%were revealed to be possible cases of non-psychotic psychiatric disor-ders. Some patients had impaired QOL despite low PASI scores. When the duration of applying ointments lasted more than 10 minutes, patients felt stress. Half of the patients reported dissatisfaction with the current treatment. Discussion : The evaluation of QOL should be considered for patient-orientated treatments. It is very important for physicians to ask questions about QOL during each clinical consultation in order to better understand each patient’s outcome.
(Jpn J Dermatol 117 : 2495∼2505, 2007)