Title
免疫機能に関与する生理活性複合糖質の合成研究( 内容の要
旨 )
Author(s)
大坪, 伸将
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(農学) 甲第226号
Issue Date
2001-03-13
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/2567
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(国籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与 の 要件 研究科及 び専攻 研究指導を受けた大学 学 位 論 文 題 目 審、査 委 員 大 坪 伸 将 (岐阜県) 博士(農学) 農博甲第226号 平成13年3月13日 学位規則第4粂第1項該当 連合農学研究科 生物資源科学専攻 岐阜大学 免疫機能に関与する生理活性複合糖質の合成研究 主査 岐 阜 大 学 教 授 木 曾 眞 副査 岐 阜 大 学 助教授 石 田 秀 治 副査 信 州 大 学 教 授 茅 原 紘 副査 静 岡 大・学 教 授 衛 藤 英 男 論 文 の 内 容 の 要.,旨 生体内におけるセレクチンと糖鎖間の凄着現象は、白血球の炎症部位への諌尊やリンパ
球のリンパ組織へのホーミング等、いくつかの免疫炎症反応において正常に桟能する一方
で、同時にこれらの接着を介した細胞間相互作用が自己免疫性の血管炎や癌の血行性転移 等の病理的な過程の一つとして作用することも知られている。本学位論文では、このセレ クチン分子但-,PIL-セレクチン)に焦点を当て、これらが認識Lて凄著することので きる天然型リガンド糖鎖の全合成研究について述べている。また第三章では、セレクチン を介した新規免疫調節機構の解明を目的として、Ⅳ脱アセチル化シァル酸及びラクタム 化シァル酸を含む糖脂質ブロープの合成についても論述している。 第一章ではP-セレクチンの生理学上のリガンドとして報告されているPSGLl上の0結合型糖鎖の全合成について述べ七いる。Ⅳアセチルグルコサミンの・4位及びⅣアセチ
ルガラクトサミンの3位が遊離となる5糖受容体を調製し、希釈したTMSOTfを縮合 プロモーターとして用いることにより 2残基のシアリルガラク トースエニットを同時に 導入することができ、効率的な仝合成法を確立することができた。この合成戦略はLセ レクチンのリガンドであるGlyCAM-1糖鎖の仝合成にも応用し、6位をMP¢-methoxyphenyl)基にて保草したグルコサミン供与体を鍵ユチットととして用いることで目 的とする硫酸化糖鎖の全合成を達成することができた。一方、モノシアリル化型PSGLl糖鎖の合成において1ま、Ⅳアセテルガラクトサミ.シの3位水酸基へのガラクトシル化
反応がこの合成研究における律速段階であった。しか_し塘供与体が分解することのない極 歓喜のTMSOTf(0.0025eq,50mMinC鴫C12)を分割`して加え、ゆっくりと反応を進行さ せることによりこの障書を乗り遇え、目的糖鎖の全合成を達成することができた。また、ー92-これらの全合成過程において調製した幾つかの合成中間体を利用することで敦種の部分糖 鎖構造の系統的な合成を行い、.さらにスぺ-サーであるラクトースを介して月旨安部分を導 入することによりオリゴ糖鎖から人工糖脂質へと諌導することができた。これらの人工糖 脂質は生化学的にも応用範囲の広い分子種であり.、実際にこれらの糖脂質を用いた実験に より、NCCちT439・抗体の認識抗原が6型母核構造の直上に捏われたシアリルルイスⅩ 糖鎖であることが判明した。NCC-ST-439抗体は乳癌及び消化富癌の腫瘍マーカーとし て用1、られいるが、これまでその認識抗原は不明であったため、今回の新知見は今後の癌
関連糖鎖抗原の発現や機能に関する研尭に大いに役立っもめと期待される。
第三章では、シァル酸部分における構造変化を介した新規免疫調節根橋の解明を目的と して、Ⅳ脱アセチル化シァル酸及びラグタム化シァル酸を含む糖脂質ブロープの合成を行い、その戚呆について琴ぺている。まず最初に、あらゆる糖脂質あるいは糖タンパク質
糖鎖の末端に共通に見られる糖鎖配列であるGM4エピトープにおいて先行実験を行い、 効率的なⅣ脱アセチル化シァル酸及びラグタム化シァル酸含有糖脂質の合成法を確立した。さらにこの方法をセレクチン共通リガンドであるシアリルルイスⅩ糖鎖にも応用す
ることでその有効性を実証することができた。これらの合成語脂質プローブは現在、新規 セレクチンリガンドの探索等へと応用し、新たな免疫調節機構の解明に向けてさらなる研 究を進めて■いる段階である。この他、本論文ではラクタム化シアリルガラクトースユニッ トの開発についても述べており、この2糖ユニットは今後シアリル6-スルホルイスⅩを はじめとする様々な塘鎖への応用が期待される分子である。 以上、本研究ではPSGL-1及びGlyCAM-i上の0結合型糖鎖の全合成法を確立し、 さらに数檀の部分糖鎖構造をゑ統的に合成Lた。また、新規免疫調節機構の解明を目的と したⅣ脱アセチル化シァル酸及びラクダム化シァル酸を含む溝脂質ブロープならびにビ ルディングブロックの合成にも成功した。 審 査 結 果 の 要 旨 生体内におけるセレクチンと糖鎖間の凄着現象は、白血球の炎症静位への誘導やリンパ球のリンパ 組戯へのホーミング等、いくつかの免疫炎症反応において正常に棟能する一方で、同時にこれらの接 着を介した紳絶間相互作用が自己免疫性の血管炎や癌の血行性転移等の病理的な過程の一つとして作 用することも知られている。本研究では、このセレクチン分子駄F;Lセレクチン).に焦点を当て、 これらが認諭して接着することのできるリガンド糖鎖の合成研究を1).天然に存在する内在性糖鎖リ ガンドの全合成法の確立2)新規免疫調節後構の解明 という二つの目的を主眼に置きながら行っ た。 第一章ではFセレクチンの生理学上のリガンドとして報告されている巧Gし1上の0結合型糖鎖 の全合成について述べた。JVアセチルグルコサミンの-4位及びjVアセチルガラクトサミンの3位が 苺敢となる5埴受容体を調製し、希釈したTM慧丁伴を縮合プロモーターとして用いることにより2 残基のシアリルガラクトースエニットを同時に導入することができ、効率申な全合成法を確立する ことができた。この合成戦略は第二章で述べた以騨1糖鎖の全合成にも応用し、6傲をM埠一 柳町D基にて保護したグルコサミン供与体を錬ユニットざとして用いることで目的とする硫は、jVアセチルガラグトサミンの3位水酸基へのガラグトシル化反応がこの合成研究における律速 段階であった。しかし塘供与体が分解することのか、極微量の.TM双刀7め.00駁=租50Ⅱ混血C鵠OJ を分割Lて加え、ゆっくりと反応を進行させることによりこの障書を乗り越え、目的糖鎖の全合成を 達成することができた。また、これらの全合成過程において調製した幾つかの合成中間体を利用する ことで数雀の部分糖鎖構造のゑ統的な合成を行い、さらにスぺ⊥サーであるラグトースを介七て脂質 部分を導入することによりオリゴ糖鎖から人工糖脂質へと誘導することができた。これらの人工糖脂 質は生化学的にも応用範囲の広い分子雀であり、実際にこれらの糖脂質を用いた実験により、NCC m39抗体の認敦抗原が6型母核構造の直上に担われたシアリルルイスⅩ糖鎖であることが判明 した。NCC一肌39抗体は乳癌及び消化暴癌の腫瘍マーカーと.Lて用いられいるが、これまでその 認鼓抗原は不明であったため、今回の新知見は今後の癌関連糖鎖抗原の発現や稔能に関する研究に大 いに役立つものと期待される。 第三章では、シァル酸部分における構造変化を介した新規免疫調節橡構の解明を目的として、JV脱 アセチル化シァル酸及びラクタム化シァル酸を含む塘脂質プローブの合成を行った。まず最初に、あ らゆる糖脂質あ患いは糖タン′くク貿糖鎖の末端に共通に見られる糖鎖配列であるGMエピトープに おいて克行実験を行い、効率的なjV脱アセチル化シァル酸及びラクタム化シァル酸含有糖月旨質の合 成法を確立した。さらにこの方法をセレクチン共通リカンドであるシアリルルイスⅩ糖鎖にも応用 することでその有効性を実証することができた。.これらの合成糖脂質プローブは現在、新規セレクチ ンリガンドの探索等へと応用し、新たな免疫調節機構の解明に向けてさらなる研究を進めている段階 である。この他、本研究ではラグタム化シアリルガラクトースユニットを開発することにも成功し、 この2糖ユニットは今後シアリル6-スルホルイスⅩをはじめとする様々な塘鎖への応用が期待され る分子である。 このように本論文では、P氾」1及びGl騨1上の0縫合型糖鎖の全合成法を確立し、また 新規免疫調節後構の解明を目的としたバリアント型のシァル酸を含む塘備貿ブロープの合成にも成功 Lた。これらの研究により得られた戚呆は、今後の準鎖合成化学及び糖鎖生物学の発展に大いに寄与 するものと期待される。
以上について、審査鼻全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合農学研究科の学位論文とLて十分価
値あるものと認めた。 学位論文の基礎となる学術論文1)Synthesis ofsialyl◆LeX ganglioside analogues modified atC-60fthe galactoseresidue to elucidatethemechanismofselecdonrecogmt10n. N.Otsubo,H.Ⅰ由ida,M.kisoandA.Hasegawa,Ca沌0妙Res・,306,517-530(199S)・
2)The血st,highlye鱒Cientsynthesisofspacer-armedO一如canSOnQyCAM-1andPSGL-1:
thecounter寸eCePtOrSforL-andP-Selectin. N.Otsubo,H.IshidaandM.Kiso,乃trahed[onLett.,41,3879-3S82(2000).-94-3)Synthesis ofnovelganglioside GM4甲alogues contaimingルdeacety1ated andlactamized Sialicacid:PrObesforsearchingnewligandstruCtureSforbumanL-Selectin. N.Otsubo,H.IshiddandM.Kiso,Cb蕗07D/血Res.,330,ト5(2001). 既発表学術論文 1)SpeCificdetectionofsialylLewisXdeterminantCarriedonthemucinGIcNAcβ1→6Ga雨Acc( COreStruCttFeaSattmOr-aSSOCiated狐tlgen. K.KumamOtO,C.Mitsuoka,M.Izawa,N.Kimura,N.Otsubo,H.Ishida,M.Kiso,T.Yamada, S.HirohashiandR.K弧:nagi,Biochem・Biqp7DnRes、Commun.,247,514-517(1998). 2)Chemoe呵maticsynthesisofgangliosideGM4analogsaspote血alirrmunOSuPpreSSive agen短、 Ⅹ.Zhang,T・Kam1ya,N・Otstibo,H・IshidaandM・Kiso,JCarbohyd・・C72em■,18,225-239 (1999).