Title
肝内胆汁うっ滞に対するウルソデオキシコール酸の有用性
とその機序に関する実験的研究( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
住田, 敦子
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)乙 第915号
Issue Date
1994-06-15
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/15357
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氏名(本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 員 住 田 敦 子(愛知県)
博
士(医学) 乙第 915 号 平成 6年
6月15
日 学位規則第4条第2項該当肝内胆汁うっ滞に対するウルソデオキシコール酸の有用性とその機序に
関する実験的研究 (主査)教授 武 藤 泰 敏 (副査)教授 佐 治 重 畳 教授 安 田 圭 吾 論 文内
容 の 要旨
1984年・当教室において遷延する肝内胆汁うっ滞症例に対し,ウルソデオキシコール酸(UDCA)の投与が著明な減黄効 果をもたらすことを初めて報告した0当時は血中に胆汁酸が著増している肝内胆汁うっ滞に,さらに胆汁酸製剤を投与すれは 病態の悪化につながるとの批判もあったが・1987諷フランスから原発性胆汁性肝硬変患者においてUDCAの有用性が報告 されるに及んで・新たな関心が高まった。事実,現在では遷延する肝内胆汁うっ滞に対して,UDCAは第一選択薬と見なさ れるに至っているoUDCAの有効性の機序としては胆汁酸非依存性胆汁分泌,特に分泌型利胆による可能性が提示されてい るが・その詳細は不明である0そこで申請者はt肝内胆汁うっ滞の動物モデルを用いてUDCAの効果と作用機序について検 討を行った。 対象および方法 1)肝内胆汁うっ滞の動物モデルの作製‥堆性ウイスター系ラットを用い,17-aethynylestradiol(EE:5mg/kg/日, 5日間皮下)または・ファロイディン(Ph:500mg/k-g/日,5日間腹腔内)を投与し,2種類の肝内胆汁うっ滞の動物モ デルを作製した。 2)UDCAの投与 (1)EEとの同時投与(Ⅰ群):EE投与直後より,5%ブドウ糖溶液に溶解したUDCAを5日間.自由飲水させ.5%ブ ドウ糖溶液のみの群を対照群としたoEEの5回目の投与直後より絶食とし,その24時間後に実験に供した。 (2)肝内胆汁うっ滞作製後の投与(II群):EE又は,Phの5回目の投与直前までは自由摂食,自由飲水とし,5回目の薬 剤投与後より絶食とした0その24時間後に・頚静脈にポリエチレンチューブを挿入生理的食塩水に溶解したUDCAを20分 間で持続注入した。対照群はケノデオキシコール酸(CDCA)投与とした。 3)胆汁の採取:Ⅰ・Ⅱ群のラットを用い・総胆管にポリエチレンチューブを挿入し,経時的に胆汁を採取した。そして胆 汁流量と胆汁中胆汁酸9種類を,ガスクロマトグラフィー法により個々に測定し,これらの総和を総胆汁酸とした。また重炭 酸イオン濃度は逆適定法により測定し・胆汁中乳酸脱水素酵素(LDH),アルカリフォスファターゼ(ALP),胆汁採取後に 大動脈より採血した血清中のT・Bil,ALPの測定は,日立製作所(株)社製726型オートアナライザーによった。 4)EE投与ラットにおけるインドシアニングリーン(ICG)負荷:Ⅰ群のラットの総胆管にポリエチレンチューブを挿入し, その40分後に注射用蒸留水に溶解したICGを大腿静脈より注入したo注入乱20分毎に胆汁を採取し,胆汁中ICGの排泄量 ならびに排泄率を測定した。ICGの測定は光電比色法によった。 結果 1)EEあるいはPh投与ラットの胆汁ならびに血液生化学所見:EEおよびPh投与ラットにおいて,正常ラットに比し, 胆汁流急胆汁酸排泄率の有意な減少と血清中総胆汁酸濃度の上昇が観察された。また正常ラット,EE投与ラットおよび Ph投与ラットのいずれにおいても胆汁流量と胆汁中への胆汁酸排泄率は有意な正の相関を示した。それぞれの回帰直線にお いて,胆汁中への胆汁酸排泄が零となる時点の胆汁流量を胆汁酸非依存性胆汁とすると,正常ラットEE投与ラット,Ph 投与ラットで,それぞれ4・5(pP/分/100g体重),2・2,0・01で,EE投与ラットとPh投与ラットの両者で,胆汁酸非依存 性胆汁分泌の減少を認めた。さらに各々の胆汁流量から胆汁酸非依存性胆汁分泌を減じた値を胆汁酸依存性胆汁分泌とすると, 47正常ラット,EE投与ラット,Ph投与ラットでそれぞれ2.43±1.30(M±SD),0.85±0.81,2.23±0.89であり.EE投与ラッ トは正常ラットに比し胆汁酸依存性胆汁分泌の有意な低下(P<0.0001)が認められたが,Ph投与ラットでは正常ラットとの 間に明らかな差異はみられなかった。 2)EEあるいはPh投与ラットにおけるUDCAの影響 (1)Ⅰ群における検討:EE投与と同時にUDCA溶液を経口投与させた群での胆汁流量(JLP/分/100g休軍)と胆汁中 のALP値は,UDCA投与群は対照群に比し,胆汁流量の増加傾向(EE単独投与群:3.42±0.38;UDCA併用群:4.32± 0.87)と胆汁中ALP濃度(IU/L)(EE単独投与群:570±340;UDCA併用群:317±108)の低下傾向を認めた。 (2)Ⅱ群における検討:Ph投与ラットは薬剤の投与終了後のUDCA溶液の静脈内持続注入により,胆汁流上の正常域ま での回復と,血清中T.Bil値が対照群に比し有意な減少(P<0.001)を認め.はぼ正常値まで低下した。また,EE投与ラッ ト,Ph投与ラットの両者でUDCAの静脈内持続注入後,胆汁中胆汁酸排泄率の上昇がみられ,それに伴い胆汁流JLも増加 した。その乱 胆汁中胆汁酸排泄率は急速に減少し,UDCA投与前値に復したが,胆汁流量の増加は持続した。一方,Ph投 与ラットでUDCAに変えCDCAを静脈内持続注入した対照群における胆汁流iは.CDCA投与後わずかに一過性の増加 を認めたに過ぎなかった。一方,UDCAではその後も著明な増加がみられ,投与後40分から100分ではCDCAに比し有意差 が認められた(P<0.05)。胆汁流土と胆汁中書炭酸イオン濃度との関連では,Ph投与ラット,EE投与ラット両者で.UDCA の静脈内投与により胆汁流上の増加と胆汁中書炭酸イオン濃度も上昇し,胆汁流量と胆汁中量炭酸イオン濃度ははぼ同様に推 移した。 3)EE投与ラットにおけるICGの胆汁中への排泄に及ぼすUDCAの影響:EE投与ラットでICG負荷をおこなった結果, UDCA併用投与群でのICG排泄率は,ICG負荷後180分までEE単独群に比し高く.特に負荷後60分の時点において有意差 が認められた(P<0.05)。 考♯ UDCAによる利胆は正常動物を用いた検討から,胆汁酸非依存性胆汁分泌の増加であることが示唆されている。本研究で は,完成した胆汁うっ滞の動物モデルに一定上のUDCAを静脈内投与し,胆汁流量について検討した結果,血中胆汁酸の著 増しているEEおよびPh投与ラットにおいてもUDCAの静脈内投与により胆汁流JLの増加を認めた。胆汁流量と胆汁中胆 汁酸排泄率との関連では,いずれにおいても胆汁中胆汁酸排泄率はUDCA投与後,一旦上昇し,その後,はばUDCA投与 前値に復したが,胆汁流iは胆汁中胆汁酸排泄率がUDCA投与前値に復した後も減少がみられず,持続的に増加した。また, 胆汁中重炭酸イオンの排泄は胆汁酸非依存性胆汁の生成に極めて重要であると考えられているが,EE.Ph投与ラットいずれ においてもUDCA投与による胆汁流iの増加とともに胆汁中重炭酸イオン濃度も上昇し,胆汁流量とほぼ同様な推移を示し たことから,血中に胆汁酸が著増している肝内胆汁うっ滞という病態時にもUDCA投与により正常な状態と同様に胆汁酸非 依存性胆汁分泌の増加により利胆がもたらされることが判明した。また.EEによる肝内胆汁うっ滞ラットにUDCAを同時 投与し,血中でヒリルビンと同様な挙動を示す,肝指向性有機酸であるICGを投与すると,胆汁中ICG排泄率.排泄tとも 増加し,UDCA非投与群に比し有意差を認めた。すなわち.肝内胆汁うっ滞ラットにUDCAを投与することにより認めら れた血清T.Bil濃度の減少は,胆汁中へのどリルビン排泄の増加によることが示唆された。