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博 士 ( 工 学 ) 亀 川 尚 登

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 亀 川 尚 登

     学 1tL 論文題名

   Efficient Synthesis of  a , タ ‑Unsaturated    Carboxylic Acids and  [3 ‑Keto Acids by  Electrochemical Carboxylation:Application to a Synthesis of Anti‑inflammatory Agents

(電解カルボキシル化によるa ,p ―不飽和カルボン酸および    グ ー ケ ト 酸 の 効 率 的 合 成 :抗 炎 症 剤 合 成 へ の 応 用 )

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  

二酸化炭素の固定化は、地球温暖化問題と関連して極めて重要な課題である。これまで 様々なニ酸化炭素の固定化の研究がなされてきたが、その多くは二酸化炭素を直接的に還元 して別の物質へ変換することを目的としたものである。一方、二酸化炭素を有機基質へ固定 化して付加価値の高い有用な物質へ変換することも重要な研究である。本論文は、後者の固 定化研究を目的として、電解還元反応を利用して常圧の二酸化炭素を効率的に固定化し有用 な 有 機 カ ル ボ ン 酸 を 合 成 す る こ と に 焦 点 を し ぱ っ て 研 究 を行 っ たも の で ある 。

  

二酸化炭素の存在下有機基質を電解還元し有機カルボン酸を合成する電解カルボキシル化 反応は以前から知られていたが、収率、選択性において多くの問題があった。しかレ最近に なり、陽極にマグネシウムやアルミニウムなどの反応性金属を用いる方法が開発され、二酸 化炭素の固定化が高収率、高選択的に進行することが明らかとなった。反応性電極を用いる 二酸化炭素の固定化法は、電解装置が極めて簡単でスケールアップが容易であり、常圧の二 酸化炭素でも高収率に進行し、またクリーンな電子を試薬として用いているため省工ネルギ ー あ る い は 環 境 対 策 に 有 効 で あ る な ど の 特 長 と 有 用 性 を 有 し て い る 。

  

本論文は、反応性電極を用いる電解カルボキシル化反応を利用し、Q,p‐不飽和カルボン酸 やB・ケト酸の高効率的合成法の開発、ならびに非ステロイド系抗炎症剤の前駆体の新規で効 率的な合成法の開発についての研究成果についてまとめたものであり、

5

章から構成されて いる。

  

第1章は序論であり、本研究の背景および目的について述べた。

  

第2章では、反応性電極としてマグネシウム金属を陽極に用いたフェニル置換臭化ビニル の電解カルボキシル化によって

a

,p‑不飽和カルボン酸が高収率で合成されたことについて述 べた。常圧の二酸化炭素存在下陰極に白金、陽極にマグネシウム、溶媒にDMF、支持塩に

Bu4NBF4

を用いてさまざまなフェニル置換臭化ビニルを電解還元したところ、二酸化炭素の

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固 定化が 容易に進 行し、相 当する各種フェニル置換Q,B‐不飽和カルボン酸が63‑92%の高収 率 で得ら れること を見出し た。ま た、本電 解カル ボキシル化反応の立体化学について興味あ る 結果を 見出すこ とができ た。すなわち、D‐ブロモスチレンの電解カルボキシル化反応にお い て、E‑及びZ.体のいずれの基質を用いても熱力学的に不安定なZ‐体のケイ皮酸が選択的に 得られることを見出し、反応過程についても考察を行った。

  3章 では、ニ ッケル錯 体を触 媒とする 脂肪族 置換臭化 ビニル の電解カ ルボキシ ル化反応 に よってQp‐不飽和カルボン酸が効率的に合成されたことについて述べた。ニッケル触媒を 添 加 し ない 場 合 にはQB‐不 飽 和 カル ボ ン 酸の 収率は1443%と低 かった が、20 moI% NiBr2.bpy錯体 を添加す ること によって相当するQ,p‐不飽和カルボン酸の収率を58‑82%へと 飛 躍的に 向上させ ることが できた。また、ニッケル触媒を添加したp‐ブ口モスチレンの電解 カ ルボキ シル化反 応におい て、E‑及びZ‐体の基質からそれぞれ立体化学が保持されたケイ皮 酸 が 選 択的 に 得 られ ること も見出し た。反 応過程に ついて サイクリ ックボル タンメ トリー

CV)な どを用い て検討を 行った 結果、Ni(ll)の2電 子還元で 生成す るNi(0)が 臭化ビニルに 酸 化的付 加してビ ニルニッ ケル中 間体を形 成し、 その2電子還元 で生成 するビニ ルアニオン が二酸化炭素へ付加して進行する反応過程を提唱した。

  4章 で は 、第2章に おけるフ ェニル 置換臭化 ビニルの 電解カ ルボキシ ル化反 応の合成 へ の 応用と して、非 ステ口イ ド系抗 炎症剤前 駆体の 新規で効率的な合成法の開発に成功した結 果 につい て述べた 。近年、 エナン チオ選択 的な抗 炎症剤の合成研究が盛んに行われており、

最 も良好 な方法の ーっとし てQ,B‐ 不飽和カ ルボン 酸のRu/BINAP触媒による水素化反応を経 る ルートがあるが、これまで相当するQB一不飽和カルボン酸の簡便かつ効率的な合成法はほ と んど開 発されて いなかっ た。し かしなが ら、本 電解カルボキシル化反応を用いることによ ってIbuprofen,Naproxen,Cicloprofen,Flurbiprofen,Ketoprofen等の抗炎症剤前駆体であるa,p 不 飽和カ ルボン酸 を簡便か つ効率 的に合成 するこ とに成功した。一例をあげると、p‑ブロモ スチレンから81%の収率で得られる1‑bromo‑1‑(p ‑isobutylphenyl)etheneを出発原料として、

常 圧の二 酸化炭素 の存在下 電解カ ルボキシ ル化を 行ったと ころ、Ibuprofenの前 駆体である 2‑(p‑isobutylpheny)propenoic acid93% の 高 収 率 で 得 る こ と に 成 功 し た 。   5章 では、ビ ニルトリ フラー トの電解 カルボ キシル化反応によるp‐ケトカルボン酸の新 規 合成に ついて述 べた。ビ ニルト リフラー トを常 圧の二酸化炭素存在下陰極に白金、陽極に マ グ ネ シウ ム 、 溶媒 にDMF、支持塩 にBu4NBF4を用いて 電解還 元を行っ たとこ ろ、ビニ ルト リフラートの酸素‐硫黄結合が開裂してB‐ケト酸が良好な収率で得られるという、新規な電解 カ ルボキ シル化反 応を見出 した。CVを用いて 本電解 カルボキシル化について検討を行い、二 酸 化炭素 の電解還 元で生成 するラ ジカルア ニオン がメディエーターとなって進行する反応過 程を提唱した。

  以 上のよ うに著者 は、反 応性電極 を用いる 電解カ ルボキシル化反応を利用することによっ a,p‐不 飽和カル ボン酸 やpケト酸の高効率的な合成法を確立し、さらにそれらを利用した 非 ス テ ロ イ ド 系 抗 炎 症 剤 の 前 駆 体 の 新 規 で か つ 効 率 的 な 合 成 法 を 開 発 し た 。

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学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

徳 田 昌 生 宮 浦 憲 夫 米 田 徳 彦 折 登 一 彦

  Efficient Synthesis of a, [3‑Unsaturated   Carboxylic Acids and  B‑Keto Acids by Electrochemical Carboxylation:Application to a Synthesis of Anti‑inflammatory Agents

( 電 解 カ ル ボ キ シ ル 化 に よ るQ,p― 不 飽 和 カ ル ボ ン 酸 お よ ぴ   タ ― ケ ト 酸 の 効 率 的 合 成 : 抗 炎 症 剤 合 成 へ の 応 用 )

  二 酸 化 炭 素 の 固 定 化 は 、 地 球 温 暖 化 の 問 題 と 関 連 し て 今 日 の 極 め て 重 要 な課 題の ひ と っ と な っ て い る 。 こ れ ま で 様 々 な 二 酸 化 炭 素 の 固 定 化 の 研 究 が な さ れ て きた が、 そ の 多 く は 二 酸 化 炭 素 を 直 接 還 元 し て 別 の 物 質 へ 変 換 す る こ と を 目 的 と し た も の で あ る 。 本 論 文 は 、 常 圧 の 二 酸 化 炭 素 を 有 機 基 質 へ 効 率 的 に 固 定 化 し て 付 加 価 値の 高い 有 用 な 物 質 へ 変 換 す る こ と を 目 的 と し て 行 わ れ た も の で あ る 。 す な わ ち 、 反 応性 電極 を 用 い る 電 解 カ ル ポ キ シ ル 化 反 応 を 利 用 しQ,p― 不飽 和カ ルポ ン酸 やp― ケト 酸の 高効 率 的 な 合 成 法 を 開 発 し 、 さ ら に 非 ス テ 口 イ ド 系 抗 炎 症 剤 の 前 駆 体 の 新 規 で 効 率的 な合 成 法 の 開 発 に 成 功 し た 成 果 に つ い て ま と め た も の で あ る 。

  第 1章 は 序 論 で あ り 、 本 研 究 の 背 景 お よ び 目 的 に つ い て 述 べ て い る 。   第2章 で は 、 反 応 性 電 極 と し て マ グ ネ シ ウ ム 金 属 を 陽 極 に 用 い て 常 圧 の 二 酸 化 炭 素 の 存 在 下 で フ ェ ニ ル 置 換 臭 化 ピ こ ル を 電 解 還 元 す る こ と に よ っ て 、 相 当 す るa,p一 不 飽 和 カ ル ポ ン 酸 が 高 収 率 で 合 成 さ れ る こ と に つ い て 述 べ て い る 。 す な わ ち 、常 圧の 二 酸 化 炭 素 の 存 在 下 陰 極 に 白 金 、 陽 極 に マ グ ネ シ ウ ム 、 溶 媒 にDMF、 支 持 塩 にBu4NBF4 を 用 い て さ ま ざ ま な フ ェ ニ ル 置 換 臭 化 ピ ニ ル を 電 解 還 元 し た と こ ろ 、 二 酸 化炭 素の 固 定 化 が 容 易 に 進 行 し て 、 相 当 す る 各 種 フ ェ ニ ル 置 換Q,p一 不 飽 和 カ ル ポ ン 酸 が63− 92% の 高 収 率 で 得 ら れ る こ と を 見 出 し て い る 。 ま た 、 本 電 解 カ ル ポ キ シ ル 化反 応に お い て 熱 力 学 的 に 不 安 定 なZ‑体 のQ,p一 不 飽 和 カ ル ポ ン 酸 が 優 先 的 に 得 ら れ ると いう 興

(4)

味ある立体化学を見出している。反応過程についても考察を行っている。

  

3

章で は、こッケ ル錯体を 触媒とす る脂肪族 置換臭化ピこルの電解カルポキシル 化反応 によって相 当する

Q

p

―不飽和カルポン酸が効率的に合成されることについて 述べて いる。こッ ケル触媒 を添加しない場合には生成物の

a

p

一不飽和カルポン酸の 収率は14143%と低いものであったが、20 mol%のNiBr2.

bpy

錯体を添加することによ って収 率を58―

82

%へ と飛躍的に向上させ得ることを見出している。また、こッケル 触媒を 添加するこ とによっ て、立体選択的な電解カルポキシル化反応が可能であるこ とを 見出してい る。サイ クリック ポルタン ヌトリー (

CV

)など を用いて反 応過程に ついて検討を行い、Ni(II)の2電子還元で生成する

Ni

(0)の臭化ピこルヘの酸化的付加 を 経 由 し て カ ル ポ キ シ ル 化 が 進 行 す る 反 応 過 程 を 明 ら か に し て い る 。

  

4

章 では、第2章 における フェこル 置換臭化 ピニルの 電解カル ポキシル化 反応の 応用と して、非ス テ口イド 系抗炎症剤前駆体の新規で効率的な合成法の開発に成功し た結果 について述 べている 。近年、エナンチオ選択的な抗炎症剤の合成研究が盛んに 行われ ており最も 良好な方 法のーうとして、相当する

Q

p

―不飽和カルポン酸を

Ru

BINAP

触 媒を 用 い て水 素 化す る 合成方 法が知ら れている 。著者は 、本電解カ ルポキ シル化反応を用いることによってIbuprofen,Naproxen,Cicloprofen,Flurbiprofen,Keto‑

prof en

等の抗炎症剤の前駆体であるa,

B

一不飽和カルポン酸を簡便かつ高収率で合成 することに成功している。一例をあげると、1−bromo‑l‑(p‑isobutylphenyl) etheneを出発 原 料と し て常 圧 の 二酸 化 炭素 の 存 在下 電 解カ ル ポ キシ ル 化 を行うこと によって 、

Ibuprofen

の前駆体である2‑(p―isobutylpheny) propenoic acidを

93

%の高収率で得るこ とに成 功した。こ れらの成 果は工業的に価値があり、有機工業化学の進展に寄与する ところが大である。

  

5

章では 、ピニル トリフラ ートの電 解カルポ キシル化 反応による

p

―ケトカ ルポ ン 酸の新規合 成につい て述べている。ピこルトリフラートを常圧の二酸化炭素存在下 陰 極 に白 金 、 陽極 に マグ ネ シ ウム 、 溶 媒に

DMF

、支 持 塩 に

Bu4NB F

を用いて 電解還 元 を行ったところ、ピニルトリフラートの酸素―硫黄結合が開裂してp―ケト酸が良好 な 収率で 得られる という、 新規な電 解カルポ キシル化 反応を見出 している 。CVを用 い て本電解カ ルポキシ ル化について検討を行い、二酸化炭素の電解還元で生成するラ ジ カルア ニオンが メディエ ーターと なって進 行する新 規で興味あ る反応過 程を提唱 し ている。

  

こ れを要する に、著者 は、反応 性電極を 用いる新しい電解手法によって常圧の二酸 化 炭素をハ口 ゲン化ピ ニルヘ効率的に固定化し、

Q

p

ー不飽和カルポン酸や

p

−ケト酸 を 高収率で合 成する新 規手法を 開発し、 さらにそ の応用として非ステロイド系抗炎症 剤 の前駆体を 高収率で 合成する ことにつ いて成功 したものであり、有機合成化学なら びに有機工業化学に貢献するところ大なるものがある。

  

よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

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