博 士 ( 医 学 ) 西 岡
健
学 位論 文題 名
REDUCTION OF RADIATION‑INDUCED XEROSTOR/IIA IN NASOPHARYNGEAL CARCINOIVIA USING CT SIMULATION WITH LASER PATIENT IVIARKING AND THREE
,FIELD IRRADIATION TECHNIQUE
(上咽 頭腫 瘍の 放射 線治 療に よる口腔乾燥の軽減を目的としたCTシュ
ミ レ ー タ ー と レ ー ザ ー 光 マ ー キ ン グ に よ る
3
門 照 射 法 の 考 案 )学位論文内容の要旨
「目的」
上 咽頭 腫瘍 に対しては放射線治療が最も有効な治療法である.この腫瘍の特徴は高い頚 部リンバ節転移率にあり、早期であっても原発部のみならず全頚部の照射が必要とされる・
この ため 放射 線治療による晩期障害は他の頚頭部腫瘍の放射線治療に比ベ高頻度に出現す る. その なか でも 口腔 乾燥 は最 も頻 度が 高く出現し患者のQOLを低下させる最大の要因と なっ てい る. 本疾 患の 照射 は通 常対 向2門 で行われ、耳下腺の大部分が照射野に含まれる こと が口 腔乾 燥の 原因 と考 えら れる .本 研究 は放 射線治 療計 画専 用CTシュミレー夕一を 用 い 、 耳 下 腺 へ の 照 射 線 量 を 減 少 さ せ 、 唾 液 腺 障 害 の 軽 減 を 試 み た も の で あ る .
「対象と方法」
1983
年より1993年の期間に治療された78例を解析対象とした.放射線治療計画は1987年 以前の33
症 例(GroupI)ではX線シュミレーターをもちい原発部は左右対向2門法により、頚部は前方一門法により照射された.1987年以降の45例(GroupII)はCTシュミレ一夕ーを もち い 原 発 部 は 左 右 よ り
2
門 、前 方 よ り1
門 、 計3
門 に より 照射 した .CTシュ ミレ ータ ーによる照射計画の手順は以下のものである. 1) CTスライス上で病変部およぴ耳下腺、脊髄の輪郭を入カする.2)3次元再構成プ口グラムにより各々の臓器の立体形態を得る.
3
)ビ ーム ズァ イヴ ューブログラムを用い、耳下腺が可能な限り照射されないよう原発巣 への照 射野 を設 定す る.4)線量分布を専用プログラムにより描出し、最適な分布が得ら れるよう照射野の設定をくりかえす.照射線量はGroupIでは原発巣は65Gy/26回/6.5週間、Group IIで は66Gy/33回/7.5週 間 で あ り 、 頚 部 リ ン バ 節 域 へ は そ れ ぜ れ40Gy/16回/4週 間 、 50.6Gy/23回 パ .5週 間 で あ る . こ れ ら の 治 療 計 画 に よ る 耳 下 腺 へ の 線 量 はGroupIで は 65Gy/26回/6.5週 間 、Group IIで は44Gy/30回/7.5週 間 と なる .両 群の 背景 因子 には 大き な差 を 認 め な か っ た . 生 存 率 と 無 病 生 存 率 の 算 出 に はKaplan‑Meier法 を 用 い た . 口 腔 乾 燥 は 臨 床 症 状 を も と に4段 階 に 評 価 し た : Grade0; 乾 燥 な し 、Grade1; 軽度 の乾 燥が ある が水 を飲 ま な く て も 食 事 が で き る 、Grade2; 中 等 度 の 乾 燥 が あ り 食 事 に は 常 に 水 を 必 要 と す る 、 Grade3: 高 度 の 乾 燥 が あ り 常 に 水 筒 を も ち 歩 い て い る . さ ら に 耳 下 腺 機 能 を 客 観 的 に 評 価 す る た め に185MBqの99mTc‑pertechnateを 静 注 し 、5% し ゆ 石 酸 に よ る 唾 液 分 泌 刺 激 の 前 後 て 耳下 腺へ のRIの集 積をyカメ ラで 測定 し、 分泌 率[Secretion ratio (SR)〓 刺激 前のRT count
/ 刺 激 後 のRT count]を 算 出 し た 。 こ の 唾 液 腺RIシ ン チ グ ラ フ イ ー は1985年 よ り 開 始さ れた た めGroupIで は3症 例 に の み 検 査 が 可 能 で あ っ た 。 こ の た めGroupIと 同 様 の 照 射 方 法 ( 対 向2門 ) と 照 射 線 量(65Gy/26回/6.5週 間 ) で 治 療 さ れ る 中 咽 頭 癌14症 例 をGroupIに 追 加 し Group IIとの間で耳下腺分泌機能の比較を行った。
「結果」
5年 生存 率は 全78例 で47.0% 、GroupI (n=33)で46.6%、Group II(n=45)で46.8% であ り、
Group間 で 相 違 を 認 め な か っ た 。 局 所 再 発 、 頚 部 リ ン バ 節 再 発 、 遠 隔 転 移 はGroupIで は そ れそれ36 c70(12/33),12c70 (4/33),27'70(9/33)であり、Group IIでは20c70 (9/45),llc70(5/45), 22% (10/45)で あ り 、 そ れ そ れ 有 為 差 を 認 め な か っ た 。 口 腔 乾 燥 は 、GroupIて は23症 例 で 評価され、grade0‑I tjs0%,grade IIが48%(llf23),grade IIIが52%(12/23)で あった。Group II では35例で評価されgradeo JJS30/o(1/35),gradel/j537%(13/35)ヽgrade2/Ji57c70(20/35),grade3 が 6c70 (2/35)であった.この 結果grade0あるいはgradelであった割合はGroupIではOc70であり Group IIで は40%と な り 有 為 (pく0.05)にGroupIIで 口 腔 乾燥 の程 度が 軽度 であ った .唾 液腺 RIシン チグ ラフ イーによる耳下腺分泌率(SR)の平均値はGroupIで3.8%(standart error 2.40/0) でありGroup IIでは15.2c70(standart error 2.2c70)でありGroup IIで有為(pく0.01)にSRが高い傾 向がみられた・
「考察」
放 射 線 治 療 に よ る 口 腔 乾 燥 を 軽 減 さ せ る 試 み は 、 い く っ か 報 告 さ れ て い る . 経 □ 薬 の Pirocarpinは治 療後 に口 腔乾 燥が ある 患者 の30c70から50c70の患者で有効と報告されて いるが、
そ の 軽 減 の 程 度 を 客 観 的 に 評 価 し た 報 告 は 少 な い .Pirocarpinの 薬 理 機 序 は 、 副 交 感 神 経 系 の 分 泌 刺 激 で あ り 、 細 胞 障 害 そ の も の を 回 復 さ せ う る も の で は な い . 放 射 線 治 療 に よ る 唾 液 腺 障 害 の 特 徴 は60Gy程 度 以 上 が 照 射 さ れ た 場 合 に は 、 機 能 障 害 は 永 統 的 で ほ と ん ど 回 復 が み と め ら れ な い こ と に あ る . そ れ ゆ え 、 そ の 障 害 軽 減 に は 唾 液 腺 へ の 線 量 を 極 力 少 な く す る こ と が 肝 要 と 考 え ら れ る . 通 常 病 変 が 両 側 に ま た が る 上 咽 頭 腫 瘍 て は 、 耳 下 腺 を 照 射 野 か ら は ず す こ と は 、 こ れ ま で のX線 シ ュ ミ レ ー タ ー を 用 い た 治 療 で は 困 難 で あ り 、
その 報告 はな い. 本研究 では 治療 計画 にCTシュミレーターを用いることで、耳下腺を照 射野 から 可能な限りはずし、その総照射線量をこれまでの2/3に減少させることが可能と なった。その結果、自覚的に口腔乾燥が軽減し、また耳下腺機能の温存がRIシンチグラフ イーで客観的にも確かめたられた.耳下腺機能が大部分の症例で温存された理由として、
耳下腺への総照射線量の減少に加え3門照射によるー回線量の減少(1.6 Gy)も考えられる.
「結 論」
放射 線治 療計 画に
CT
シ ュミ レ一 夕一 を用い るこ とで耳下腺への照射線量を減少させた3
門 照 射 法 が 可 能 と 毅 っ た 。 同 照 射 法 は 治 療 後 の口 腔 乾燥 の軽 減に 有効 であっ た。学位論文審査の要旨
REDUCTION OF RADIATION‑INDUCED XEROSTOR/IIA IN NASOPHARYNGEAL CARCINOh/IA USING CT SIINtIULATION WITH LASER PATIENT IvIARKING AND THREE‑FIELD IRRADIATION TECHNioUE
( 上咽 頭腫瘍 の放 射線 治療 によ る口腔乾燥の軽減を目的としたCTシュ
ミ レ ー タ ー と レ ー ザ ー 光 マ ー キ ン グ に よ る
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門 照 射 法 の 考 案 )近 年CTシュ ミレ ーター が放 射線 治療 計画 に利 用されるようになり、線量分布の改善が 可能 とな った 。本 研究の 目的 はCTシュ ミレ ータ ーによる照射方法の改善により上咽頭腫 瘍の放射線治療の障害である口腔乾燥を軽減することにある.1983年より1993年の期間に 治療された78例を解析対象とした.1987年以前の33症例(対照群)は治療計画にX線シュミ レー ター をも ちい 原発部およびりンバ節域が左右対向2門法により照射された.1987年以 降の
45
例 (研 究群 )はCTシュミレーターをもちい原発部およびりンバ節領域は左右より2 門、 前方 より1
門、 計3門 によ り照 射さ れた .こ の際、前方よりの照射野の設定は、耳下 腺を可能な限り照射野から除外する様に行った.腫瘍への照射線量は両群で相違なく、一 回線 量が2.2Gy
から2.5Gy
、総 線量 は65Gyか ら66Gyである.両群の背景因子には差を認め なかった. Dose‑volume histogram法による耳下腺の容積線量解析により、研究詳で各線量 にお ける 耳下 腺照 射容積の軽減がみとめられた.口腔乾燥は臨床症状をもとに4段階に評 価した: GradeO;乾燥なし、Grade1;軽度の乾燥があるが食事に水は不要、Grade2;中等度‑ 87
一良 厚
夫 男
長 和
征 和
木
部
山
坂
玉
阿
犬
宮
授
授
授
授
教
教
教
教
査
査
査
査
主
副
副
副
の乾燥があり食事には水が必要、Grade3;高度の乾燥.対照詳ではgrade0あるいはgradelで あった割合は0ワ。であり、研究群では400/0となり有意(pく0.01)に研究詳で口腔乾燥の程度が 軽度であった.99mTc‑pertechnateおよび酸刺激をもちいたRI sialographyによる耳下腺の分 泌率は対照群で4C/oであり研究群では15%であり研究群で有意(pく0.01)に高い傾向がみられ た,Kaplan‑Meier法による5年生存率は両群とも47ワ。であり、5年無病生存率は対照群で47
% 、研 究群で31%であり両詳に有意差を認めなかった.局所再発、頚部リンバ節再発、遠 隔転移は対照群ではそれぞれ36%,12%,27%であり、研究群では20%,11ワ。,22c70であり、
それぞれ有意差を認めなかった.
口頭 発表に際し、犬山教授よルピロカルピンの併用による障害軽減の可能性について、
ま た重 粒子線陽子線等の使用による線量分布の改善の可能性について、阿部和厚教授より 耳 下腺 障害の組織学的背景と腺房再生への導管部の役割について、宮坂教授より研究群に お ける 脳幹脊髄への線量分布とその影響について、玉木教授より顎下腺等、耳下腺以外の 唾 液腺 の障害、また今後の線量分布の改善とそれにともなう腫瘍線量の増加の可能性につ い て質 問が なさ れた .申 請者 は各 唾液腺 の機 能、 改良 され たCTシュミレーターおよび異 な った 放射線の種類による線量分布、実験動物における組織学変化、薬物併用による障害 の 軽減 、脳幹脊髄の耐用線量等について、文献あるいは自験例を引用し概ね妥当な回答を 行った.
これ まで左右どちらかに存在する頭頚部腫瘍については、対側の耳下腺の照射線量およ び 容積 を軽減する試みは報告されているが、上咽頭腫瘍では、本研究の様に、線量分布の 改 善お よびそれによる唾液腺障害の改善について客観的に評価した研究は少なく学位論文 に値するものと判断した.
審査 員一同は、これらの成果を高く評価し、臨床における研鑽および関連する研究発表 などを併せ申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有するものと判定した.