博 士 ( 工 学 ) 田 中 文 基
学 位 論 文 題 名
加工プロセスのモデル化に基づく工程設計に関する研究 学位論文内容の要旨
近年,製造業の停滞による不況を打破するために,製造技術のさらなる高度化ととも に,従来の製造技術の伝承のために暗黙知である製造知識の形式知化が求められている・
すなわち,製造システムの高度化においては,生産システム等のハードウエアの高機能 化とともに,生産にかかわる知識・技術・資源の再利用・再編集可能な形式での蓄積と 交換を可能とする情報モデル化技術と,それを用いた生産準備支援システムが重要とな る,生産準備アクテイピテイは,製品モデルから加工プロセスの選択,工作機械の選択,
冶具やデータム面の決定,加工順序の決定など素材から製品へ変換する全体的な生産工 程に関する意思決定を行う工程設計,切削条件などの詳細情報を決定する作業設計,NC プログラ ムを作成 すうNCプロ グラミング,工程設計の結果から工場全体の生産スケジ ユーリングを行う生産計画から構成される,このうち,生産準備の最初のアクテイビテ イである工程設計において,製造技術のコンピュー夕支援技術として早くからその重要 性が指摘され,多数研究が行われてきたにもかかわらず,高度な自動化は進んでいない.
機械部品のフライス加工に対する従来の加工フイーチャを用いた工程設計システムに おいては,加工フイーチャと加工プロセス情報との関連づけが経験的で曖味であるため,
作業者の介在を必要とするなどの問題点があった.すなわち,加工フイーチャと加工プ ロセス情報との関連づけが経験的で曖味である理由として,加工フイーチャ研究の多く は,Hole,Slotといった加工形状に基づく分類が中心であり,単に幾何学的な取り扱い の容易性から選択されており,その分類が加工プロセスとの理論的な関連性がないため である.従って,この問題を解決するために,製品設計データの解釈と加工プロセス選 定 の 自 動 化 を 実 現 す る た め の 基 礎 理 論 構 築 が 必 要 と さ れ て い る . 本論文では,従来の加工フイーチャを用いた工程設計システム構築方法の問題点であ る,加工フイーチャと加工作業情報との関連づけが経験的で曖味であるとぃうことの解 決法として,形状創成関数が表現する数学的な加工プロセスを体系的にモデル化するこ とにより加工プロセスモデルを構築し,それ.に基づき工程設計モデルを構築する方法論 を提案した.具体的には,加工プロセスをV.T. Portmanらの提案した形状創成関数によ ルモデル化し,加工プロセスの入力情報,出力情報,参照情報を明らかにした.すなわ ち,工作機械の種類に依存しない入力情報モデルとして,マクロ工具,制御されたテー ー156−
ブル運動,包絡拘束式から構成するoperating stepを,素材に依存しない出力情報モデ ルとして,工具の作用を表すスイープマクロ工具,スイープマクロ工具包絡面,作用切 刃 から 構成 するworking toolを提案することにより,入力情報と出力情報の関係が1 対1となる排他的な分類を可能とした.また,加工プロセスのモデルとしてoperat ing stepからworking toolへの変換アクテイビテイを提案し,その逆変換アクテイビテイ として工法割付作業を表す工程設計モデルを提案した.
次に,工程設計モデル構築のために,入力情報と出力情報の特徴を表すバラメータを 抽出し,それに基づき加工プロセスをモデル化してパラメトリックな加工プロセスモデ ルと提案した,具体的には,バラメトリックな加工プロセスモデルにおける入力情報モ デルであるoperating stepのノゞラメータとして,マクロ工具の次元数,送り運動の自由 度及ぴ包絡拘束式数を提案した.また,出力情報モデルであるworking toolのパラメー タとして,スイープマクロ工具,スイープマクロ工具包絡面,作用切刃のパラメー夕数 を提案した.さらに,それらの定義域を示し,加工プロセスが15種類存在することを示 し た. 一方 ,operating stepのパラメータとworking toolのパラメータとの関係を1 次式で表現する事により.工法割付規則の定式化を行いパラメトリックな工程設計モデ ルを提案し,具体例に適用することにより,パラメトリックな工程設計モデルの妥当性 を検証した.
次に,実際の加工工程設計へ適用するため,パラメトリックな工程設計モデルから幾 何情報を考慮した工程設計モデルヘと拡張した.まず,入力情報と出力情報との関係を 幾何学的観点から明らかにするためにV.T. Portmanらの提案した形状創成関数を用い,3 軸フライス工作機械の加工プロセスを数式にて表現し,operating stepとworking tool のべクトル表現の具体形を示した.次に,operating stepとworking toolのべクトル 表現に基づき,包絡拘束式を用い,幾何情報を考慮したエ法割付規則を導出し,パラメ トリックな工程設計で示した点切刃工具と,線切刃工具に対する10種類の加工法が,幾何 学的な工程設計の観点から,16種類に分類されることを示した.さらにパラメトリッ クな工程設計と幾何学的な工程設計とを考慮したoperating stepとworking toolの情 報モデル表現をEXPRESS−Gにて示した.
最後に,提案した加工プロセスのモデルに基づく工程設計の具体的な適用例を通して,
本研究の有効性を示した.
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学位論文審査の要旨 主査 教授
副査 教授 副査 教授 副査 教授
岸 浪 建 史 島 公 脩 土 谷 武 士 大 森 隆 司
学 位 論 文 題 名
加工プロセスのモデル化に基づく工程設計に関する研究
近 年、 製 造 業の 国 際 的連 携 お よぴ 製 造 シス テ ムの 高機能化 におい て、生産 システム 等 の ハ ー ドウ エ ア の高 機 能 化と と も に、 生 産 にか か わる知識 ・技術・ 資源の 再利用・ 再編 集 可 能 な形 式 で の蓄 積 と 交換 を 可 能と す る 情報 モ デル化技 術と、そ れを用 いた生産 準備 支 援 シ ステ ム の 構築 が 重 要と な っ てき た 。 生 産準 備の中核 機能で ある工程 設計にお い て 、 コ ンピ ュ ー 夕支 援 技 術導 入 の 重要 性 が 早く か ら指摘さ れ、多数 研究が 行われて きた に も か かわ ら ず 、高 度 な 自動 化 は 進ん で い ない 。 機械部品 のフライ ス加工 に対する 従来 の 加 工 フ イ ー チ ャ を用 い た 工 程設 計 シ ステ ム に おい て は 、Hole、Slotと ぃ っ た加 工 形 状 に 基 づく 分 類 が中 心 で あり 、 単 に幾 何 学 的な 取 り扱いの 容易性か ら選択 されてお り、
そ の 分 類が 加 工 プロ セ ス との 理 論 的な 関 連 性が な いため加 工フイー チャと 加工プロ セス 情 報 と の関 連 づ けが 経 験 的で 曖 味 であ る た め、 作 業者の介 在を必要 とする などの問 題点 が あ っ た。 従 っ て、 こ の 問題 を 解 決す る た めに 、 製品設計 データの 解釈と 加工プロ セス 選 定 の 自 動 化 を 実 現 す る た め の 基 礎 理 論 構 築 が 必 要 と さ れ て い る 。 本 論文 で は 、従 来 の 加工 フ イ ーチ ャ を 用い た 工程 設計シス テム構 築方法の 問題点で あ る 、 加 工フ イ ー チャ と 加 工作 業 情 報と の 関 連づ け が経験的 で曖味で あると ぃうこと の解 決 法 と して 、 形 状創 成 関 数を 用 い て加 工 プ ロセ ス を数学的 かつ体系 的にモ デル化す るこ と に よ り加 工 プ ロセ ス モ デル を 構 築し 、 そ れに 基 づき工程 設計モデ ルを構 築する方 法論 を 提案した 。具体 的には、 加工プロ セスをV.T. Portmanら の提案し た形状 創成関数によ ル モ デ ル化 し 、 加工 プ ロ セス の 入 力情 報 、 出力 情 報、参照 情報を明 らかに している 。す な わ ち 、工 作 機 械の 種 類 に依 存 し ない 入 力 情報 モ デルとし て、マク ロ工具 、制御さ れた テ ー ブ ル運 動 、 包絡 拘 束 式か ら 構 成す るoperating stepを、素 材に依存 しない出 力情報 モ デ ル とし て 、 工具 の 作 用を 表 す スイ ー プ マク ロ 工具、ス イープマ クロ工 具包絡面 、作 用 切 刃 から 構 成 するworking toolを 提 案 する こ とによ り、入力 情報と 出力情報 の関係 が 1対1と な る 排 他 的 な 分 類 を 可 能 と し て い る 。 ま た 、 加 工 プ ロ セ ス の モ デ ル と し て ―158−
operating stepからworking toolへの変換アクテイビテイを提案し、その逆変換アク テ イ ピ テ イ と し て 工 法 割 付 作 業 を 表 す 工 程 設 計 モ デ ル を 提 案 し て い る 。 次に、工程設計モデル構築のために、入力情報と出力情報の特徴を表すパラメータを 抽出し、それに基づき加工プロセスをモデル化してパラメトリックな加工プロセスモデ ルと提案した。具体的には、パラメトリックな加工プロセスモデルにおける入力情報モ デルであるoperating stepのパラメータとして、マクロ工具の次元数、送り運動の自由 度及ぴ包絡拘束式数を提案している。また、出力情報モデルであるworking toolのパラ メータとして、スイープマクロ工具、スイープマクロ工具包絡面、作用切刃のパラメー 夕数を提案している。さらに、それらの定義域を示し、加工プロセスが15種類存在する ことを示している。一方、operating stepのパラメータとworking toolのパラメータ との関係を1次式で表現する事により、エ法割付規則の定式化を行いパラメトリックな 工程設計モデルを提案し、具体例に適用することにより、′ヾラメ卜リックな工程設計モ デルの妥当性を検証している。
次に、実際の加工工程設計ヘ適用するため、パラメトリックな工程設計モデルから幾 何情報を考慮した工程設計モデルヘと提案モデルの拡張を行なっている。まず、入力情 報と出力情報との関係を幾何学的観点から明らかにするためにV.T. Portmanらの提案し た 形状 創成 関数 を用 い、3軸フ ライ ス工 作機 械の 加工プ ロセ スを数式にて表現し、
operating stepとworking toolのべ クト ル表 現の 具体 形を 示し てい る。 次に 、 operating stepとworking toolのべクトル表現に基づき、包絡拘束式を用い、幾何情 報を考慮した工法割付規則を導出し、パラメトリックな工程設計で示した点切刃工具と 線切刃工具に対する10種類の加工法が、幾何学的な工程設計の観点から、16種類に分 類されることを示している。さらにバラメトリックな工程設計と幾何学的な工程設計と を考慮したoperating stepとworking toolの情報モデルをEXPRESS←G用い表現するな ど独自の基礎理論を展開すると共に、提案した加工プロセスのモデルに基づく工程設計 の具体的な適用例を通して、本研究の有効性を示している。
これを要するに、著者は、工程設計のための基礎理論に対する新知見を得たものであ り、システム情報工学および生産情報工学に対して貢献するところ大なるものがある。
よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。
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