第3節 日本における平成20年改訂以降における指導展開例
今節では前節と同様に指導展開例について考察をする。尚,前節では学習指導要領に「つ くって表現する」という文言を用いられ,日本に創造的音楽学習が導入された平成元年以 降の指導展開例を考察してきた。平成元年の学習指導要領改訂以降に行われた多くの実践 から教育現場では混乱が起こったことは第1章でも触れた通りである。教育現場ではその 混乱から見えてきた問題点に対して,様々な改善が試みられた。その集大成として平成20 年に学習指導要領が改定され,「つくって表現する」という文言が「音楽づくり」という文 言に変更される形となった。ここでは,平成20年に改定された学習指導要領にのっとって 実践された指導展開例を考察していきたいと考える。その中で,ここでも第1章で触れた
ように日本における創造的音楽学習の問題点の一つである,単元目標の設定とその評価に 焦点をおいて考察を行いたいと思う。
〈指導展開例①〉
この実践は小学校2年生という低学年を対象に考えられたものである。学習指導要領にお いて低学年では「声や身の回りの音の面白さに気付いて音遊びをすること。」という記述が 見られる。このように低学年においては,身近な素材を使った音遊びから創作の楽しさを 体験することが重要だと考えられる。この展開例は児童たちに身近な楽器(音楽室にある 楽器)を使ってイメージをしゃすい動物の様子を表すという活動が主である。そして最後 には自分の表現を他の児童に発表し,批評し合うことで振り返りもしっかりと行われてい
る。
本授業の 単元内容 打楽器の響きと表現 概要
単元目標 楽器の音色や奏法に関心をもち,意欲的に動物にあった表現を見っ
ける。
楽器の音色や奏法を知覚・感受し,「動物が〜している様子」を音で 表す工夫をする。
楽器の音色や奏法に気を付けて,動物の様子を音で表現する。
授業展開 (後述のとおり)
評価 【観点1】音楽への関心・意欲・態度
楽器の音色や奏法に関心をもち,意欲的に動物に合った表現を見つ
けている。
【観点2】音楽表現の創意工夫
y器の音色や奏法を近く・感受し,「動物が〜している様子」を表 キ音を工夫している。
【観点3】音楽表現の技能
y器の音色や奏法に気を付けて,動物の様子を表現している。
題材名:打楽器の響きと表現
教材名:「動物の様子を音を表現しよう」
教材:音楽室にある楽器(大太鼓,小太鼓,コンガ,ボンゴ,タンブリン,マラカス,ギ ロ,クラベス,ウッドブロック,カスタネット,すず,トライアングル,アゴゴベ ル,カウベル,フィンガーシンバル,カバサ,スレイベル)
対象学年:小学校2年 単元目標:
・楽器の音色や奏法に関心をもち,意欲的に動物にあった表現を見つける。
・楽器の音色や奏法を知覚・感受し,「動物が〜している様子」を音で表す工夫をする。
・楽器の音色や奏法に気を付けて,動物の様子を音で表現する。
指導計画(全2時間)
時 学習活動
第1時
①「動物が〜している様子」を想像しながら,いろいろな楽器を鳴らす。②自分のイメージした場面や様子にふさわしい音色の楽器を選び,奏法を工夫する
③場面や様子にふさわしい音色や奏法をさらに吟味し,工夫して表現する。
第2時
⑤前時に選んだ楽器で,「動物が〜している様子」を表現し,それぞれの発表から@音色や奏法の工夫について聴き取り,共有し合う。
評価計画
評価の観点 評価の基準 評価方法
【観点1】
ケ楽への関心・
モ欲・態度
1−1 楽器の音色や奏法に関心をもち,意欲的に動物
@ に合った表現を見つけている。
(観察)
【観点2】
ケ楽表現の創意
2−2 楽器の音色や奏法を知覚・感受し,「動物が〜
@ している様子」を表す音を工夫している。
(観察)
i発言)
工夫 (ワークシート)
【観点3】
ケ楽表現の技能
3−1楽器の音色や奏法に気を付けて,動物の様子を
@ 表現している。
(演奏)
展開く第1時〉
学習活動 指導上の留意点 児童の反応(評価)
1.機物が〜している様子」
を想像しながら,いろい うな楽器を鳴らす。
①「動物が〜している様子」 ・いろいろな楽器を試すことができる ○様々な打楽器に触れながら,
を想像しながら,いろい ように,様々な種類の楽器を用意す 意欲的に自分の思い描く動
うな楽器を鳴らしてみ る。 物に合った音色を見つけよ
る。 ・音量や音色の観点から,楽器の配置 うとしている。
を工夫する。 【観点1(観察)】
・場面や様子に合う音を探すために, ○耳を近づけて他の楽器の音 いろいろな楽器を鳴らしながら音を と聴き比べながら,色々な楽 探すように助言する。 器を鳴らしている。
【観点1(観察)】
一 一 用 ▼ 一 噌 一 囚 一 一 一 層 一 曽 一 一 一 一 一 一 一 昌 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 巳 一 一 一 一 臨 一 一 幽 } 一 臨 一 幽 一 薗 幽 一 一 幽 一 一 一 一 凹 一 一 噌 一 一 甲 一 一 髄 一 一 幽
2.自分のイメージした場面 や様子にふさわしい音 色の楽器を選び,奏法を 工夫する。
①自分のイメージした場面 ・「動物が〜している様子」を想像し易 ○一つの楽器に集中して場面 や様子に合う音色の楽器 くするために,身近な動物の写真な や様子に合う音を模索して
を一つ選び,いろいろな どを用意する。 いる児童もいる。
鳴らし方を試してみる。 ・「動物が〜している様子」を想像しな 【観点2(観察)】
がら,耳を澄まして自分の鳴らす打
楽器の音を聞くよう助言する。 ○自分のイメージした場面や
・一ツの楽器を取り上げて,何種類も 様子にふさわしい音色の楽 の音の出し方があることを提示す 器を選ぶことができる。
る。 【観点2(観察)】
○まだイメージが固まらずに 迷っている児童もいる。
【観点2(観察)】
3.何名かの友達の発表を聴 き,音色や奏法について 気付いたことを発表し
@合う。
@友だちの発表を聴き,音 ・いろいろな鳴らし方をしている児童 o他の児童の演奏を聴き,場面 色や奏法について気付い に注目させ,奏法の工夫に気付かせ や様子と結びつけて打楽器
たことを発表する。 る。 の音色を知覚・感受できるよ
・「00という音が△△みたい」と音色 うになる。
と感じ取ったことを結びつけて言葉 【観点2(観察)】
で表すように助言する。
o音色を聴き比べながら様々 な奏法を試して,その違いを 知覚・感受することができる
【観点2(観察)】
。他の児童の発表を聴いて「こ の音は〜に似ている」や「こ の奏法だと〜にも聞こえる」
といった感想を言う。
【観点2(発言)】
一 一 一 吊 凹 一 一 一 一 一 胴 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 辱 一 一 甲 昌 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 雫 凹 P 一 冑 一 騨 幽 櫓 一 噌 齢 膚 層 旧 網 一 一 一 一 一 一 一 一 ● . 一 一 「 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 甲 9 躍 一 一 冒 圃 一 一 冒 r 幽 冒 一 一 一
4.場面や様子にふさわしい 音色や奏法をさらに吟
味し,工夫して表現す
@る。
@友達の発表を基に,自分 ・表現の工夫に行き詰まっている児童
のイメージした場面や様 にはいくつかの奏法を提示し,試し 子にふさわしい音色や奏 てみるように助言する。
法をさらに工夫する。
②自分のイメージした場面 ・児童が知覚・感受したことをワーク ○楽器の音色をイメージして や様子,選んだ楽器と音 シートに記入させ,二時につなげる。 いる場面や様子に合わせて
の出し方をワークシート 吟味する。
に記入する 【観点2(ワークシート)】
※ワークシート(*a)の概要 は欄外に記載。
※(*a)ワークシートの概要
楽器の名前 音色の特徴 どんな感じ
ボンゴ ボンボン たぬきがお腹をたたいてい
驫エじ
フィンガーシンバル チーン 小鳥が話している感じ
ウッドブロック カッコカッコ リスがくるみをわっている
エじ
展開く第2時〉
学習活動 指導上の留意点 児童の反応(評価)
5,前開に選んだ楽器で,「動 物が〜している様子」を 表現し,それぞれの発表 から音色や奏法の工夫 について聴き取り,共有
し合う。
①前時に選んだ楽器で,「動 ・音色や奏法について聴き合うことを 。前時で選んだ楽器で想像し 物が〜している様子」を 伝え,聴く観点を明確にする。 た場面や様子を自分が選ん 発表し,互いに音色や奏 ・児童の気付きを実際に音で確かめ, だ楽器で奏法を工夫しなが 法の工夫について聴き取 イメージと音色や奏法の関連を全員 ら表現することができたが,
り,共有し合う。 で共有できるようにする。 他の児童にイメージを伝え ることは出来ない。
【観点3(表現)】
〈考察〉
この実践を通して考察を行うに当たって,注目したいのは前節のイギリスにおける授業実 践・計画の考察でも述べたように,学習活動と単元目標(評価)の連携である。まずは授 業者による反省と今後の課題を[授業者の評価]として〔筆者の批評]を加え,更なる考 察を行っていく。
そして学習活動が,各学習活動においても[着眼点]と[筆者の批評]という項目を立 て,単元目標に則した学習活動が展開されているか,児童とって無理なくこなせる内容に なっているか,ということに焦点を当てて,授業の構成を中心に考察していく。
[授業者の評価]
授業者はこの授業を通しての考察において「本単元では,全ての子供がどの評価の観点に おいても,〔概ね満足できる状況〕を満たすことができた。これは,評価基準を基に具体的 な児童の姿を想定して授業に臨んだことにより,学習状況をこれまでより的確に捉え,児 童に適切な助言をすることができたからであると考える。今後は,評価基準を踏まえて想 定する具体的な児童の姿と評価方法が,より一層妥当で適切なものとなるよう検討を重ね ていきたい。」と述べている。
[筆者の批評コ
評価基準(各活動における達成目標)を明確にすることで,授業計画を立て易くなった。
これは到達目標がはっきりしているため,児童の実態を踏まえたうえでどのような活動を
取り入れれば児童が到達目標に到達できるようになるか,という思考で学習活動を構成す ることが出来る。これは通常の授業を構成する手順である,教材研究を行い,その教材を 用いて指導できる題材を見つけ出し,それに合わせた授業構成を考えるという方法とは思 考の順番が逆行している。このため,より児童の実態に合ったオーダーメイドの学習活動 が展開できると考えられる。
また教師の指導もより的確にできるようになると考えられる。それに加えて評価が明確 になり,児童の学習理解度などが抽象的になりにくいとも考えられる。
[着眼点①]
自分の思い描いた動物に合った音色を見つけようとしている。
〔筆者の批評①]
動物の様子を表すということを児童に伝えた上で,打楽器に触れさせるという順序を取っ たことにより,単に打楽器に触れさせる活動よりも児童たちの集中力が格段に上がると考 えられる。さらにこの段階で児童たちに最終的に他の児童の前で発表をすることを伝える と,児童たちは自分の表現を他の児童に伝えることを意識して音の響きへのこだわりが増 すのでは無いかと考えられる。
[着眼点②]
中間発表において他の児童の発表を聴いて「この音は〜に似ている」や「この奏法だと〜
にも聞こえる」といった感想を言う。
[筆者の批評②]
他の児童の発表を中間発表において数例聴くことで,自分では考えつかなかった表現方法 を知る。そうすることでさらに児童の中で表現へのこだわりが深まっていくと考えられる。
さらに,他の児童の発表を聞くことによってこの時点でまだ,表現方法が考えついていな い児童に対しても表現を考えるヒントが得られる機会になる。さらに,発表した児童も他 の児童から批評を受けることにより,創意工夫の機会になると考えられる。この時点で特 に他の児童が思いついていない表現を考えている児童に発表をさせることを指導者は意識
する必要があると考える。なぜならば,他の児童が思いつかないような奏法を考え出した 児童が全員の前で発表することで,その発表を聴いた児童にとっては打楽器の響きへの興 味が深まり,自分も誰も思い付かないようなイメージに合った表現を考えたいという意欲 を持つ機会になると考えられるからである。これは評価の【観点1】にある音楽への関心・
意欲・態度の項目に当たる。さらに,発表した児童自身の音楽表現への楽しさを持たせる ことも出来る。そうすることで児童全員の表現への創意工夫がさらに深くなると考えられ
る。
[着眼点③]
楽器の音色をイメージしている場面や様子に合わせて吟味する。児童に自分が見つけ出し た表現をワークシートに記入させる。
[筆者の批評③]
二時の発表へ向けて第1時の学習活動で各児童が見つけ出した打楽器の表現をワークシー トに記入させることは必須であると考える。そのワークシー一一 Fを基にした資料が以下のワ ークシートの概要:である。
※ワークシートの概要(*a)
楽器の名前 音色の特徴 どんな感じ
ボンゴ ボンボン たぬきがお腹をたたいてい
驫エじ
フィンガーシンバル チーン 小鳥が話している感じ ウッドブロック カッコカッコ リスがくるみをわっている
エじ
これを見るとワークシートに記入する項目は「楽器の名前」「音色の特徴」「どんな感じ1 の3つである。本授業の展開では,児童に対して授業の始めに「動物が〜している様子を 想像しながら楽器の音を出してみよう」という指示を出している。この指示によって児童 の中では動物が何か動作をしているというイメージが先行して頭の中に存在し,そのイメ
一ジに合った打楽器の表現を考えるという授業展開がなされている。
そう考えると,ワークシートの項目の順序は「イメージした動物の様子」「楽器の名前」
「音色の特徴」とした方が児童たちの思考の順を追う形でワークシートへの記入ができる ため,授業の振り返りとして活動用しているワークシートの意図にかなっていると考えら れる。さらに学習活動の流れを生かして児童たちの学習を深めるために,「イメージした動 物の様子」「楽器の名前」「音色の特徴」の3っの項目に加えて,「楽器の演奏の仕方」「音 色の気に入った点」「すごいと思った児童の表現」の項目を付け加えてワークシートを作成
したい[ワL・一一・クシートの概要(*b)]。
ワークシートの概要(*b)
イメージした ョ物の様子
楽器の名前 音色の特徴 楽器の演奏の仕方 音色の気に入った点
たぬきがお腹を
@いている感じ
ボンゴ ボンボン 手で真ん中を叩く たぬきの大きなお腹を
@いているような低い ケが出るところ 小鳥が話して
「る感じ
ブインガー Vンバル
チーン 楽器を少しだけ ヤつける
小鳥みたいに高くて可
、い音がなるから リスがくるみを
墲チている感じ
ウッドブロック カッコカッ R
バチで両方を順番 ノ叩く
小さなリスがくるみを
@く音がするから
児童の名前
すごいと思ったところ○○くん ウッドブロックを棒じゃなくてブラシを使って鳴らしていたところ
△△ちゃん すずとスレイベルを一緒に使っていたところ
[着眼点④]
前時で選んだ楽器で想像した場面や様子を自分が選んだ楽器で奏法を工夫しながら表現す ることができたが,他の児童にイメージを伝えることは出来なかった。
[筆者の批評④]
ここでは自分なりの表現を他の児童の前で発表することはできているが,他の児童に自 分のイメージを伝えきれなかったことに注目する。音楽の最大の意義である表現を通して
自分のイメージや考えを聴衆に伝えることができずに,自分の中で表現が終わってしまっ ていることが非常に残念である。音楽は他人に伝わってこそ,その本当の楽しみを経験で きる。この授業は小学校2年生が対象であることから,音だけでイメージを正確に伝える ことは表現者役の児童にとっても聴衆役の児童にとっても難しいと思われる。
よって発表を始める前に表現者役の児童が聴衆役の児童に対してこれから表現するのは,
何の動物であるかだけでも伝えるという工夫を凝らすことで,聴衆役の児童も表現者役の 児童の表現が何を表しているのかという,イメージを汲み取りやすくなると考えられる。
〈指導展開例②〉
この実践は小学校2年生という低学年を対象に考えられたものである。学習指導要領に おいて低学年では「声や身の回りの音の面白さに気付いて音遊びをすること。」という記述 が見られる。このように低学年においては,身近な素材を使った音遊びから創作の楽しさ を体験することが重要であることは指導展開例①でも触れた通りである。この指導展開例
②では,展開例①よりも更に児童たちに馴染みがある擬音語を使って展開していく。擬音 語を使う利点を挙げると,特殊な技術を要しないため,どの児童でも自分が思った通りの 表現ができることであると考えられる。グループごとにくじを引き,引いた五十音の「○
行」の音を使ってリズムパターンを作り,それを反復し,パターンを反復することによっ て生じるエネルギーを感じる。そしてそのエネルギーを身体表現に移行させ,グループご とに身体表現をリズムパターンのイメージに合わせて工夫していく。最終的に他の児童た ちの前で自分たちの表現を発表する。
更に,この展開例においても最後には自分の表現を他の児童の前で発表をし,児童がお 互いの表現に対して批評し合うことで振り返りもしっかりと行われている。
本授業の概要 単元内容 反復
単元目標 反復に関心を持って意欲的に音楽づくりに取り組むことがで ォる。
反復を知覚・感受し,イメージに合った擬音語の繰り返し方 竚セい方を工夫することができる。
反復を意識してイメージに合った音楽をつくることができ
驕B
考察方法 評価を行い易い活動になっているか,児童に無理なくこなせ 體燉eになっているか,ということに焦点を当てて授業の構 ャを考察していく。
授業展開 (後述のとおり)
評価 反復に関心をもって意欲的に音楽づくりに取り組んでいる 反復について知覚・感受している。
反復を生かして,イメージに合った擬音語のくりかえし方や セい方を工夫している。
反復を意識しておはなしに合った音楽をつくって表現するこ ニができる。
題材名:反復
教材名:ことばをくりかえしておはなしをつくろう 教材:擬i音語
日時:平成21年6,月26日間金)〜7H3日(金)
対象学年:小学校2年生
単元目標:・反復に関心を持って意欲的に音楽づくりに取り組むことができる。
・反復を知覚・感受し,イメージに合った擬音語の繰り返し方や言い方を工 夫することができる。
・反復を意識してイメージに合った音楽をつくることができる。
指導計画:(全4時間)
時
第1時 第2時 第3時 第4時
学習活動
・グループで4拍のリズムパターンをつくる。
・「○行」のくじをひき,リズムパターンにことばをあてはめる。
・作ったりズムパターンを何度も唱えて遊ぶ。
・グループ同士で聴き合い,響きに合うタイトル(題名)をつける。
・反復のあるなしを聴き比べ,反復について知覚・感受する。
・タイトル(題名)を想像して,何度も唱える。
・タイトル(題名)に近づくように,リズムパターンの反復を工夫する。
・中間発表をし,表現の工夫について知覚・感受する。
・さらにグループで表現を工夫する。
・グループごとにつくった表現を発表し,交流する。
評価計画:
評価の観点 評価基準 評価方法
【観点1】 ・反復に関心をもって意欲的に音楽 (観察)
音楽への関心・意欲・態度 づくりに取り組んでいる
【観点2】 ・反復について知覚・感受している。 (観察)
音楽的な感受や表現の ・反復を生かして,イメージに (発言)
工夫 合った擬音語のくりかえし方や (アセスメントシート)
言い方を工夫している。
【観点3】 ・反復を意識しておはなしに合った (観察)
表現の技能 音楽をつくって表現することが (演奏)
できる。
展開 (第1時)
学習活動 指導上の留意点 児童の反応(評価)
1.グループで4拍のリズムパタ 一ンをつくる。
①リズムカードを使って様々な ・色々なリズムパターンを次々と ○組み合わせを変えて様々な リズムパターンをつくる。 変え,児童をリズム打ちに慣れ リズムパターンを作って楽
させる。 しんでいた。
【観点1】
②与えられたリズムパターンを ・「お気に入りのリズムパターンを ○与えられたリズムパターン 自分なりにアレンジする。 一つつくりましょう」という声 を何度も手拍子で打ち,打ち かけをし,次の段階に繋げる。 にくい部分のリズムを変え
ていた。
【観点2】
脚 層 嚇 冑 冒 一 一 暫 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 } 甲 層 騨 o 一 一 一 一 一 一 r 一 一 騨 一 一 一 一 甲 一 塵 鱒 一 一 甲 9 鞘 聯 鞭 一 回 一 卿 昌 噌 駒 「 即 } 一 一 騨 冑 曹 の 層 闘 嘗 騨 一 噌 卿 一 一 一 層 ■ 一 一 一 一 冨 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 需 幽 一 一 一 一 一 冒 一 一 一 一 一 一 一 一 甲
2.「○行」のくじをひき,リズ ムパターンにことばをあて
はめる。
①教師が提示したにとばのり ・リズムパターンを反復させない ○じっとして[ことばのりズム ズムパターン]を1回だけ模 ことで反復をした際のエネルギ パターン]を一生懸命に唱え
唱する。 一に気づかせるようにする。 ていた。
②教師が提示した[ことばのり ・反復することによって生じるリ 。足踏みから始まり,身体全体 ズムパターン】を反復して模 ズムのエネルギーに気付かせる を動かして楽しそうに唱え
唱する。 ような声かけを行う。 だした。
一 曽 一 一 一 一 一 応 願 ■ 曽 一 一 一 疇 幽 甲 轄 r 開 層 一 一 一 一 一 幽 一 噸 一 一 略 F 胃 一 一 一 . 昌 幽 一 , 一 曜 一 一 一 一 一 一 畠 甲 一 一 ▼ P F 一 , 層 一 嘱 一 一 一 璽 幽 幽 一 騨 騨 腎 一 一 胴 一 一 一 ■ 一 幽 脚 昌 一 辱 早 響 r 冒 一 一 一 闇 冒 噛 一 一 一 謄 , 一 一 一 一 一 幽 一 一 幽 一 申 一 , 騙 P
3,つくったリズムパターンを 何度も唱えて遊ぶ。にとばの
リズムパターン1を作ってグ ・「○行」は各グループにくじを引 ○身体を活発に動かしてグル ループで反復しながら,唱え かせてグループ同士でかぶらな 一プごとに[ことばのリズム
る。 いようにする。 パターン]を作っていた。
・グループ活動に入ってから教師 は指導よりも支援に回るように、
する。 ○「バ行」を使ったグループは
リズムパターンを反復する うちにジャンプをしていた。
o「ザ行」を使ったグループ では前に進んでいくような
動きをしていた。
○リズムパターンの「反復」が 生み出すエネルギーを感受 し,自然と身体を動かしてい
た。
【観点2】
展開(第2時) ※授業中に出た児童からの発言は下記に記してある。表中の アルファベットと対応するように記入している。
学習活動 指導上の留意点 児童の反応(評価)
1.各グループの響きにあったタ イトルをつける。
①各グループのリズムパターン ・目を瞑らせることで聴覚に感覚 ○目を瞑り,耳を澄ませて発表 を聴きイメージを出し合う。 を集中させる。 者の演奏を聴いている。
・イメージを考えさせる際に「頭 O他のグループの演奏を聴い の中のテレビに何かが動き出し て,自分になりに感じたイメ ましたか?」といった声かけを 一ジを積極的に発表してい することで児童にイメージを持 た(*A)。
たせやすいように工夫する。
・反復をするバージョンと反復を ○反復している時と反復して しないバージョンを比較させ, いない時を比較し,反復の効 その違いに気付かせる。 果を感じていた(*B)。
【観点2(観察)】
【観点2(発言)】
②イメージに合った題名をグル ・児童たちのグループでの話し合 ○他の児童から出されたイメ ープごとに考える。 いに重点を置き,児童たちの話 一ジを参考にしてグループ
に耳を傾ける程度に留めておく で題名を考えていた。
ように注意する。
・話し合いがうまく進んでいない o自分たちのイメージを基に グループに対しては話し合いに 題名を決めているグループ 参加するかたちで助言を行う。 もあった。
oリズムパターンを唱えなが ら自然に身体が動いていた グループは特に動きから題 名を連想していた(*C)。
*A 〈イメージを出し合う場面の様子〉 教:教師,児:児童
・つくったリズムパターンを8回唱えて聴き合う
3班「ザゼゼ ・ゾゾザゼゼ ・ゾゾ ザゼゼ ・ゾゾ ザゼゼ ・ゾゾ ・…」
教「どうですか?なにか動き出した人」
児「見えた」
教「K君,何が見えた?」
児「リズムが,電車が走る音みたいで,目をつむってなんか聴いてたら,前に電車が通ってる みたいな感じがしました。」
教「今のおもしろいね。もう一度3班さん言えるかな?」
教「わけを言える念いる?2番の方が歩いている感じがするのはどうしてかな?」
児1「リズムにのってて,トントンって行進して歩いているようにきこえたから2番だと思い
ました。」
児2「1回名は何か止まっている感じで,2回目は歩いていると思いました。」
児3「1番は「ザ ジズ ゼ ゾザ」って止まったけど,2番は「ザ ジズ ゼ ゾザ ザ ジ ズ ゼ ゾザ」ってずっと言っていました。」
教「そうやってずっと言っていることを何て言うんやった?」
児(全員)「はんぷく一」
リズムパターンを何度も唱えるうちに,自然と身体が動き出す。
(1)「パ ピピ ペペ ・」を唱えながらジャンプする。「・… パ ピピ ペペ ・ パ ピピ ペペ!(最後の「ぺぺ」を強く言って終わる)」→題名《はねるボール》
(2)「パ ピ ププ ペポ」と唱えながら,足を開いたり,閉じたりしてジャンプしている。
→《ペンギンダンス》
展開(第3時 ※各グループの具体的な表現の工夫は下記に記した通りである。表中の アルファベットと対応するように記入している。
学習活動 指導上の留意点 児童の反応
1.表現を工夫する。
①題名に近づくように,リ ・机間指導を行い,各グループが表現 ○[ことばのリズムパターン]
ズムパターンの反復を練 において悩んでいる場合は相談に に対して具体的なイメージ
習する。 のるようにする。 を持つことで表現もイメー
ジに合ったものに変化させ
ていった。
【観点1(観察)】
○《ぞうの一日》という題名を つけたグループは[ことばの リズムパターン]を象らしさ が出るように工夫していた
(*A)。
【観点2(観察)】
○《ようかいパニック!》とい う題名をつけたグループも 妖怪が人に近づいてくる様 子を表せるように工夫して
いた(*B)。
【観点2(観察)】
P − 一 一 一 騨 幽 一 一 幣 騨 層 一 曹 鴨 一 一 一 一 幽 幽 一 一 胃 噌 層 一 一 一 一 一 一 ・ 一 一 冒 − 一 一 一 一 一 幽 F 刷 曾 闇 一 一 謄 一 一 一 幽 一 一 一 } ¶ 門 闇 − 一 一 曽 一 一 一 一 騨 r 騨 曜 胃 冒 騨 層 一 9 薗 一 一 一 ■ 一 一 辱 一 一 層 } , 層 胴 需 一 一 冒 謄 塵 一 階 一 一 一 一 一 一 一 擢 , 辱
2.中間発表を行う。 ・他のグループの発表を聴いて自分た ○他の児童たちの発表をみて ちの表現には無かったものを見つけ 全てのグループが自分たち 出し,自分たちの表現にさらなる工 の表現に「〜が○○している 夫をするように助言する。 様子」というお話を付けるよ
うになった。
*A 《ぞうの一日》のグループの工夫
・「ギグ グ ゴ ガ ゴ」というにとばのリズムパターン]をゆっくりと低い声で繰り返す 言い方で象らしさを音声的に表現する。
・音に合わせた動きをつけて,象が鼻をゆらしながら歩いている様子を視覚的に表現した。
*B 《ようかいパニック!》のグループの工夫
・「ザ ゾジ ・ ゼjというにとばのリズムパターン]を低い声からだんだんと高い声に変 化させることで妖怪が人に近づいてくる様子を音声的に表現する。
・妖怪が自分たちに近づいてくるという「怖い」イメージをもって妖怪の動きを取り入れて 視覚的な表現の工夫をした。
展開(第4時) ※発表・交流の場面の詳細な記述は下記にある通りである。
また,アセスメントシートの内容についても下記にある通りである。
それぞれが表中のどの場面に相当するかは,アルファベットで対応 するように記してある。
学習活動 指導上の留意点 児童の反応
1.グループごとに最終発表を
する。
①発表をする前にどのような ・発表の方法は必要最低限の ○言い方を工夫した点を分かりや
「言い方の工夫」をしたのか 取り決めをする以外は児童 すく説明するためにイメージか を説明する(*A)。 たちに任せるようにする。 ら連想されたお話を発表するグ
・発表が終わったあとに早い ループもあった。
ていた児童たちにどんな感 【観点2(観察)】
じがしたかを発表させ,交 【観点3(演奏)】
流をさせる。 o発表を聴いていた児童は題名か らどのような登場人物や物が何 をしているかを想像しながら聴
いていた。
。発表を聴いたあとに自分が感じ たことを言葉にしていた。
9 辱 , 騨 , o 曹 雪 冒 . . ■ 冒 ■ . . 一 巳 「 巳 閲 o 6 曹 ● 一 一 一 . 一 一 一 一 . 「 騨 一 , 側 昌 曽 . 塵 冒 冒 ● 墨 「 o o 圃 嘘 , . 一 一 一 一 . 一 . 一 9 一 . 緊 「 墨 } 嶋 , ・ 曽 冒 一 冒 ■ 囲 一 一 一 . 一 一 一 . 一 一 一 一 鳴 卿 甲 , F
2.アセスメントシートを記入 ・反復しているリズムパター 。反復の感受については全員が正 する(*B)。 ンと反復していないリズム 解していた。
パターンを聴き比べさせ, 【観点2 (アセスメントシート)】
「反復」のあるなしを記述
させる。
・「反復があるリズムパター o「反復があるリズムパターン」に ン」と「反復がないリズム ついての記述では連続する動き パターン」の感受の違いを をイメージした内容が多かった。
アセスメントシートに書か 【観点2 (アセスメントシート)】
せる。 ○「反復がないリズムパターン」に ついての記述では非連続的なイ メージを書いていた。
【観点2(アセスメントシート)】
*A 《発表・交流の場面の様子》
ワニのお食じタイム 「ガー グギ ゴ」
○子どもの説明
「ワニが川でお食じをしていると,ヘビがやってきました。ワニは,ヘビが 大こうぶつです。でも,今,たべているたべものと,ヘビ,どっちを
たべようかまよいました。『よし,ヘビをたべにいこう』たべようとしたとき,
さっきたべていたものは,にげていきました。『あ一どうしょう。』j
○表現の工夫
ワニがどっちのエサを食べるか迷う様子では,「ガー」がゆっくりと なり声の高さがずり上がる。最後はテンポが速まる。
「ギグ グ ゴ ガゴ」
ぞうの一日
(動きがついた発表)
○表現の工夫
はじめは象の鼻を大きく左右に揺らす動作をし,重そうな感じで 歩きながら,リズムパターンを唱える。象の鼻で物を拾う
(食事の)動作をすると,さらにゆっくりな動きになりリズムパターンも ゆっくり唱えるようになる。最後には眠るような動作になり,声も小さくなる。
ようかいパこニツク! 「ザ ゾジ ・ ゼ」
○子どもの説明
「言い方は,声がだんだん高くなります。なぜなら,ようかいが人に 少しずつ近づいてくるからです。」
○表現の工夫
だんだんと全体的に声の高さが高くなって,音量も小さくなっていく。
*B 《アセスメントシートの記述内容》
リズムパターンを反復している
・ダンスがしたくなるし,わくわくするような感じ
・音楽がつづいていてさいごに,パーとひろがるような感じ
・おんなじリズムだからなにかがいっぱいうこいているような感じ
・リズムにすごくのれてどんどんたのしくなります。
・こうしんをするような感じ リズムパターンを反復していない
・カタ コト カタ コトッとびっくりするような感じ
・音がつまずくような感じ
・少ししかなにかがうこいているような感じ
・リズムにのれないかんじ。こうしんがとまったような感じ
〈考察〉
この実践を通して考察を行うに当たって注目したいのは反復という音楽的な要素を擬音 語という児童にとって身近な素材を使って学習を進めたことである。児童が活動をこなし ていくうちに反復によって生まれるエネルギーを自然と知覚・感受できるようになってい る。ここからは,各学習活動と指導上の留意点や児童の反応において[問題点],[着眼点]
をあげ,それらに対して[筆者の批評・改善点]という項目を立てることで,この実践に ついて考察を深めていきたいと思う。
その際に,評価を行い易い活動になっているか,児童に無理なくこなせる内容になって いるか,ということに焦点を当てて授業の構成を考察していく。
(第1時について)
[着眼点①コ
学習活動について,リズムパターンを自分なりに作る→教師が提示したリズムパターン
を模唱する。
[筆者の批評①コ
教師が示したりズムパターンを模唱→自分なりのリズムパターンを作るという手順の方 が授業のテーマでもある反復についてしっかりと感受した上で児童たちが自分なりのリズ ムパターンを作ることができる。よって,筆者が新たに示した順序の方が先に挙げた手順 よりも児童の集中力がより高まると考えられる。
[着眼点②]
にとばのリズムパターン】を1回だけ模唱し,その後に反復をして模唱する。
[筆者の批評②]
この方法を取ることによって教師が口頭で反復のエネルギーについて説明するよりも実際 にエネルギーの変化を体験することでより明確に児童たちに反復によるエネルギーの変化 を理解させることができる。
[着眼点③]
つくったリズムパターンを何度も唱えて遊ぶ(その際にグループで「○行」の言葉をくじ で引き,その「○行」の言葉をリズムパターンにはめ込んで唱える。)
[筆者の批評③]
教師が示したにとばのリズムパターン】を単に繰り返して練習させるのではなくて,言葉
(音)という新しい要素を学習活動に取り入れることで新鮮さが加わり,児童たちが練習 に飽きてしまうという現象を避けることができると考えられる。
(第2時について)
[着眼点④]
各グループで考えたりズムパターンの中間発表を行う。
[筆者の批評④]
児童どうしで聴き合う活動を取り入れることで,やりっ放しの状態で終わらずに自分たち のグループでは考えつかないようなアイディアやイメージを他の児童から提示される。そ のことによって更に創意工夫を試みることができる。
[着眼点⑤]
反復するバージョンと反復しないバージョンを比較させ,その違いに気付かせる。
[筆者の批評⑤]
この段階で再度,反復についての学習を行うのは,学習活動の流れを断っているように考 えられる。題である反復の学習を強調したい気持ちはわかるが,学習活動の流れから考え るとグループでイメージ(題名)に合わせた練習をする段階になってから,机間指導の形 を取って行った方が学習活動の流れがスムーズにいくと考えられる。
[着目艮、【慧⑥]
リズムパターンを唱えながら自然に身体が動いていたグループは特に動きから題名を連想
していた。
[筆者の批評⑥]
身体が自然に動いているということは反復によるエネルギーの移り変わりを感受出来てい るということである。この授業を通して最も児童に伝えたい内容であった「反復」を児童 たちに知覚・感受させることが出来ている。よって,この授業はこの時点で8割方成功し ていると考えられる。さらに,児童たちから自然と出てきた,動きから連想された題名はに
とばのリズムパターン1にあったものであると考えられる。
(第3時について)
[着眼点⑦]
[ことばのリズムパターン】に対して具体的なイメージを持つことで表現もイメージに合っ たものに変化させていった。
[筆者の批評⑦]
低学年の児童にとって抽象的なイメージを表現することは非常に難しいことである。しか し,この学習のように具体的な題名とイメージを持つことができれば,それに表現を近付 けていくことができる。よって,グループで練習を重ねていく中で,改善すべき点やもっ
と工夫したい点を児童たちの中から引き出すことができ,児童たちは「自分たちの作品」
を作ることができると考えられる。
[問題点⑧]
中間発表を行う。自分たち以外のグループの表現を見ることで,
工夫を凝らしていく。
自分たちの表現にさらに
[筆者の批評⑧]
この段階でグループごとに表現を発表している。しかし,あるグループの工夫である表 現の内容に説明をつけるという工夫を最終的に全てのグループが取り入れることになった。
これは表現の内容を説明してから,より具体的にイメージを伝えようとしたそのグループ だけの工夫になるはずだったものを取り上げてしまったようにも感じる。七時で発表をす るのであれば,この中間発表はもっと早い段階で取り入れるか,希望者だけが他のグル・一一・
プを見て回るという活動に変更:したほうが良いのではないかと考える。
[着眼点⑨]
発表を聴いていた児童は題名からどのような登場人物や物が何をしているかを想像しなが ら聴いていた。そして発表を聴いたあとに自分が感じたことを言葉にしていた。
[筆者の批評⑨]
児童が他の児童の表現をどのようなことを表現しているかを考えながら聴くという態度と 発表が終わったあとに自分の感じたことを発表するという活動は鑑賞において最も重要で ある批評に当たると考える。この一連の学習活動を通してこのような態度を児童が取れる ようになったのは音楽表現に対して興味をもって望む姿勢を常に保てたことであると考え
られる。
[問題点⑩]
「反復があるリズムパターン」と「反復がないリズムパターン」の感受の違いをアセス メントシートに書かせる。
[筆者の批評⑩]
実践者がf成果と課題」の欄に「課題としては,アセスメントシートなどの作り方に関 して,事前に十分な検討が必要であることが挙げられる。アセスメントシートで個々の「反 復」に対する知覚・感受を書かせる場合,「反復」の有無によってもたらされる雰囲気の違 いに注意を向けるような問いかけに気をつけなければならない。問いかけが曖昧だと焦点 がぼやけてしまい,記述内容が「反復」に対する知覚・感受からそれてしまうこともある。
今回の実践でも,ほんの少しの問いかけの違いで,記述内容に差が表れた。準備物におい ても,学習の一貫性を意識することの重要性を感じた。」と述べている。この実践では「反 復」によるエネルギーの移り変わりに重点が置かれていた。アセスメントシ・一一一一トの記述内 容を見るとこの実践において児童たちは実践者が意図した通りに反復について理解できて いると考えられる。しかし,アセスメントシ・一・一トでは各グループの発表には触れていない。
「反復」について児童の理解度を確認するのであればグループごとの発表を利用しても良 いのではないかと考えられる。
〈指導展開例③〉
[実践事例③の概要]
実践事例③においては,学習指導要領の小学校中学年の欄で触れられている「いろいろな 音の響きやその組み合わせを楽しみ,様々な発想をもって即興的に表現すること。」に着目
した以下の実践を考察したいと考える。学習指導要領には「中学年では,いろいろな音の 響きやその組み合わせを楽しみ,様々な発想をもって即興的に表現する活動に親しむよう にする。そのためには,音楽の仕組みを生かし,思いや意図をもって,〔共通事項〕との関 連を十分に図り,まとまりのある音楽をつくる喜びを味わうようにすることが大切であ
る。」と述べられている。音の響きに着目し,自分なりにその組み合わせを即興的に工夫し,
〔共通事項〕にある「五線,小節,終止線,スラー,全音符,2分音符,ハ長調」を学習 していく授業展開になっている。さらにドレミフォソラシの七音を虹の七色に見立てるこ とで,和音のイメージを児童が視覚的にも捉えられるように工夫されている。しかし,こ こで注意するべきことは音と色のイメージを特定するのではなく あくまで便宜上で虹の 七色を和音に例えている。色に合わせた音選びをするのではなく 音同士が醸し出す響き の特質にこだわらせることとする (*A)
本授業の概要 単元内容 いろいろな音のちがい(2和音による響きのちがい)を感じ取ろ
、。
単元目標 声の響きや楽器の音の重なりを楽しむ。
考察方法 児童による音の重なりについての理解と授業内で和音のイメー Wとして使われた虹の扱いについて焦点を当てる。
授業展開 (後述のとおり)
評価 【観点1】音楽への関心・意欲・態度
ゥ分の思いやイメージを膨らませ,積極的に音の組み合わせを H夫しようとする。
【観点2】音楽的な感受や表現の工夫
ンいにつくった音楽を聴き合い,そのよさや美しさを感じ取る。
【観点3】表現の技能
ツくった音や音楽を工夫して記適する。
単元名:いろいろな音のちがい(2和音による響きのちがい)を感じ取ろう 教材名:音のにじをかけよう
教材:鍵盤ハーモニカ,五線譜,メタロフォン,グロッケン,ハンドベル トーンチャイム
対象学年:小学校4年生
単元目標:声の響きや楽器の音の重なりを楽しむ。
学習計画:
時 学習活動
第1時
・和音を学習する第2時
・虹をイメージした作曲をする。評価計画
評価の観点 評価基準 評価方法
【観点1】
ケ楽への関心・意欲・態度
自分の思いやイメージを膨らませ,
マ極的に音の組み合わせを工夫 オようとする。
(観察)
【観点2】
ケ楽的な感受や表現の工夫
互いにつくった音楽を聴き合い,その 謔ウや美しさを感じ取る。
(発表)
【観点3】
¥現の技能
つくった音や音楽を工夫して記譜 キる。
(学習カード)
展開(第1時)
学習活動 指導上の留意点 児童の反応(評価)
1,和音を学習する。
@「和音」について知る。
・和音の定義は2つ以上の音の重な
@りとおさえる。本授業においては a声が複雑になり,和声の違いな
Q和音とは何なのかについ ト実際の音を聞きながら 揄 することができる。
どを児童が感じられないという 状況を防ぐため2つの音の重なる 和音と限定する。
・音程の「完全,長,短,減,増」
については内容が複雑になりす ぎると考えられるため,本授業に おいては踏み込まないようにす
る。度数の数え方については鍵盤 ハーモニカの白鍵の数を数える
ことで理解させる
・「音のとけ合い」という感覚で協 和音程,不協和音程を捉えさせ,
名称や区分については本授業に おいては触れない。
②和音の響きの違いを追求す O和音の好みについて,児童
る。 ごとに差が出る。
○自分のフィーリングに合 つた音を選んで,和音つく
りを楽しむ
【観点1】
③気に入った響きを記譜す 〇五線に音符や休符を用い
る。 て自分でつくった和音の
表現を記譜する。
※【観点3】
展開(第2時)
学習活動 指導上の留意点 児童の反応(評価)
1.グループで虹をイメージし
@た作曲をする。
①気に入った和音をグループ ・机問指導を行い,児童たちがそ 。グループで自分のお気に入 に持ち寄って音のイメージ れそれ気に入った響きの和音を りの和音を発表する。
を話し合う。 つなぎ合わせて,虹のイメージ 【観点2】
.に近づけるように選択できるよ. 。グループ内で他の児童の発
.うに助言する。(*B) 表を聞くことで自分が知ら
なかった和音の響きを知る。
※【観点2】
②虹のイメージに合わせて ・必ず,「ドレミファソラシ」の7 。和音をイメージの中核とし 和音の順番を考える。 音(7色)がグループでそれぞ てグループでそれぞれの児
れ1回以上使うことを虹の表現 童が発表した和音を選び,順 においてのルールにする。 番を話し合う。
【観点1】
・1オクターブの跳躍を用いた和 ○必ず「ドレミファソラシ」の 音(転回形を含む)は表現の工 7音を使うというルールを守 夫の1つとして尊重する。 れているかをグループで確
認する。
③グループで決まった表現を ・虹の7色を使って音符を五線に o和音で表した虹のイメージ 記譜する 記譜したり,スラーは彩色を五 を,分かりやすいように彩色
線に施すことで表現するといっ などの工夫をして楽譜に起 た助言を行い,楽譜をみて虹の こしている。
イメージを持ちやすいように指 【観点3】
導する。
〈考察〉
この授業を考察するにおいて焦点を当てたいのが,児童による音の重なりについての理 解と授業内で和音のイメージとして使われた虹の扱いについてである。この授業を見る中 で児童による和音の理解については少々の問題はあるもののきちんとなされているように
思われる。しかし,虹の扱いについては授業を計画する前と構成を組み立てたあとでは授 業者の中で理解が変化しているように感じられる。
よって本考察では以上のことに[着眼点]を見出しながら,[筆者の批評]を授業の流れ に沿って挙げていくこととする。
[着眼点①]
この実践を行うに当たって始めに実践者が「しかし,ここで注意するべきことは音と色の イメージを特定するのではなく,あくまで便宜上で虹の七色を和音に例えている。色に合 わせた音選びをするのではなく,音同士が醸し出す響きの特質にこだわらせることとする。
(*A)」と述べている。しかし実際の授業展開を見ていくと「虹のイメージに近づけるように 選択できるように助言する。(*B)」という記述が見られ,矛盾が生じている。これは,実践 者が授業展開を考える内に,「何か具体物を想像して,それに合った効果音を考える」とい
うよく見る授業展開に思考を引きずられてしまったことによると考えられる。
[筆者の批評①]
この授業の最大の焦点は和音を児童に知覚・感受させることと考えられる。このことを軸 に考えると,やはり「虹をイメージした音づくり」という活動は取り入れない方が良いと 考えられる。虹:の扱いについては,和音が重なることを児童に体験させる時に「色んな音 が虹みたいに重なっているね」といった指導言に留めることが必要ではないかと考えられ る。またはグループごとに和音を持ち寄って表現を考える際に「音の虹を各グループで考 えてみよう」といった様に和音という固有名詞の代替として使用するのが良いと考える。
このことは和音の詳しい名称には触れないという授業の趣旨にもかなっていると考えられ
る。
[着眼点②]
第1時での授業展開の流れと第2時の授業展開の流れについて
[筆者の批評②]
第1時では児童がそれぞれ好き好きに音を重ね,和音(重音)を作り,それを記譜する活 動にとどまっているのに対して,虹のイメージに近づけるように選択できるように助言す
る。(*B)と述べられているように,第2時では急に虹のイメージに合った表現をグループで 考えるような学習計画になっている。第1時で次回にグループで表現を考えることを伝え ていたとしても,思考の順番を飛ばしているため,どうしても学習活動に集中しきれない
(参加しきれない)児童が出てくることが考えられる。そうであるのならば,第1時の段 階から和音(重音)のイメージを虹として児童に伝え,虹の色の重なりと音の重なりを児 童にリンクさせるような学習展開が望ましいと考える。
[着眼点③]
グループで考えた表現を発表する場を設けている。
[筆者の批評③]
児童が自分たちで考えた表現を他の児童の前で発表することは必要であると考える。特に この教材は0から児童たちが表現を考えていることからも完全なる「オリジナル作品」で あるといえる。このオリジナル作品を他の児童に聴かせることで発表した児童は創作の楽
しさを体験でき,発展的な学習への意欲につながると考えられる。
〈指導展開例④〉
実践事例④は11月に前項で行われる音楽会に向けた音楽物語を創造する授業である。この 授業で注視したいのが,教師側から提示されるのが話のあらすじのみであるということで ある。児童たちは最初の授業で音楽物語がどのようなものかを鑑賞し,そこからは教師が 提示した,物語のあらすじから自分たちで話の細かい流れを作り,それに合わせた効果音 や歌などの音楽を造りあげていくのである。まさに本当の意味での児童による創作である と考えられる。ここで考察を行うのはストーリーを考えながら,場面に合った音楽を創っ ていく活動である。
本授業の概要 単元目標 音楽物語をつくろう 〜場面に応じた音楽を工夫しよう〜
単元目標 自らの欲求に応じて必要な道具(楽器・からだ・ことばなど)
を用いて『私』を表現しようとする。
他者の表現を味わい,他者とともに新たな音楽表現を生み出 そうとする。
考察方法 「自分らしさ」を表出することに対して消極的である児童た ちにこだわりを持って「自分らしさ」を表出することに焦点
を当てる。
授業展開 (後述のとおり)
評価 【観点1】音楽への関心・意欲・態度
自分のこだわっている場面に適していると思う音を探し,演 奏の仕方を工夫する。
【観点2】音楽表現の創意工夫
友だちの発表を聴いて自分なりに受け症め,感じたことを言
葉にする。
【観点3】音楽表現の技能
友だちとともに,それぞれの役になったつもりでのびのびと 気持ちよく歌う。
題材名 音楽物語をつくろう 〜場面に応じた音楽を工夫しよう〜
教材名 われこそはネコ
教材=リコーダー,打楽器(詳細は不明)
実施日 平成22年9月10日(金)
トーンチャイム,「ドラネコロック」
対象学年:小学校4年生 単元目標:
・自らの欲求に応じて必要な道具(楽器・からだ・ことばなど)を用いて『私』を表現し ようとする。
・他者の表現を味わい,他者とともに新たな音楽表現を生み出そうとする。
指導計画(全23時間)1
時 学習活動
第1次(1時間) お話の音楽を楽しもう(鑑賞活動を含む)。
第2次(4時間) ストーリーを考え,場面に応じた音楽を工夫しよう。
m報時はこの活動の2時問目]
第3次(6時間) いろいろな役になって音楽物語を楽しもう
第4次(6時間) それぞれの役を責任もって分担し,みんなで音楽物語をつく
?、
第5次(3時間) 全校のみんなと発表しあい,聴きあおう(音楽会)
第6次(2時間) 振り返りをしよう
評価計画:
評価の観点 評価の基準 評価方法
【観点1】
ケ楽への関心・意欲・態度
自分のこだわっている場面に適している ニ思う音を探し,演奏の仕方を工夫する。
(観察)
【観点2】
ケ楽表現の創意工夫
友だちの発表を聴いて自分なりに受け止 ゚,感じたことを言葉にする。
(観察)
i発言)
【観点3】
ケ楽表現の技能
友だちとともに,それぞれの役になった ツもりでのびのびと気持ちよく歌う。
(演奏)
授業の展開(第2次 2時間目) ※学習活動3の①で出た児童のつぶやきは下記に記してある。
表中のアルファベットと対応するように記入してある。
学習活動 指導上の留意点 児童の反応(評価)
1.自由な音探しをする。
音楽室に来た児童から音素 ・各児童が興味をもって楽器に向 ○自由に楽器に触れ,音探しを し,音づくりを始める。 かう姿を尊重する。 する。
○木琴やピアノに女子が多く こだわりを見せ,男子は打楽 器を中心にあれこれ探って 友だちと音を合わせる姿が 多く見られる。
○盲捜に関心をもつこの周り に児童が集まり,様子を見る ことで活動に参加している 姿も見られる。
【観点1】
ロ 一 一 回 一 冒 層 冒 噂 一 一 ロ 一 謄 胴 一 一 一 囲 一 鯛 層 , 噌 一 騨 圃 , 噌 一 曙 印 卿 騨 一 一 一 一 一 一 ■ 一 一 一 一 盲 一 一 曽 層 一 冒 冒 腎 一 , 一 一 一 一 9 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 冒
2・息を合わせ演奏する。
全員でリコーダー演奏する。 ・6日後に全校集会発表で演奏す ○自信のない児童は楽譜を見 る「テルーの歌(2部合奏)」を たり,他の児童の指使いを見 互いのパートが見えるように座 たりしている。
らせる。
3.「われこそはねこ」の音楽 づくりを進める。
①自分たちで考えた音・音楽 ○打楽器を中心とした男子グ
を聴き合い,イメージを交 ループの発表を聴き,自分の
流する。 イメージを言葉にして交流
し合う。(*A)
【観点2】