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Academic year: 2021

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論文内容要旨

前立腺肥大症患者におけるタダラフィル少量持続投与による動脈硬化 改善の可能性

日本性機能学会雑誌,第 32 巻 3 号,275-281 項,2017 年

専攻名 外科系泌尿器科学(江東豊洲病院) 林圭一郎

内容要旨

前立腺肥大症(Benign Prostatic Hyperplasia:BPH)に伴う下部尿路症状 (Lower Urinary Tract Symptoms:LUTS)に対する薬物治療は以前からα1- 阻害薬が長らく中心であった。現在ではそれに加えて前立腺体積の大きな 患者には 5α還元酵素阻害薬、過活動膀胱を合併している患者には抗コリ ン薬、β3 刺激薬との併用がコンセンサスを得ており、患者それぞれに合 った「オーダーメイド」の治療ができる時代となった。加えて今回、

(Phosphodiesterase-5:PDE-5)阻害薬タダラフィル(ザルティア錠®)が新 たに治療薬に加わった。タダラフィルは以前より 勃起障害(Erectile Dysfunction:ED)治療薬として使用されていたが、2014 年に BPH に対して 新たに保険承認された薬剤である。2017 年に改訂された最新の診療ガイ ドラインにおいてタダラフィルはα1-阻害薬と同様に BPH 治療薬として 推奨グレード A と高い評価を得ている。

膀胱頸部の閉塞を改善させるα1-阻害薬と異なり、タダラフィルの機序は 血管内皮、膀胱、尿道、前立腺、海綿体の平滑筋に分布する PDE-5 を阻害 し、組織内の一酸化窒素(NO)の刺激により産生される環状グアノシン一リ ン酸の濃度を上昇させる血管、平滑筋が弛緩することで組織内の血流や供 給酸素量が増加し、ED や LUTS が改善する。PDE-5 は上述のように血管内 皮に発現いるため、我々は長期に投与することにより全身の動脈硬化の改 善を認めるのではないかと考え、タダラフィルによる動脈硬化改善の可能 性について前向きに研究した。

対象は LUTS にて関連3病院を受診した患者 103 例を対象とした。方法は タダラフィル 5mg を連日投与し、投与前、12 週後、24 週後、36 週後の脈 波伝播速度(Pulse Wave velocity: PWV)を測定した。PWV は脈が心臓から 出て動脈を伝わる速度を表していて、PWV が亢進していれば動脈硬化が進 展している状態と考えられる。

また、同期間で国際前立腺症状スコア(IPSS)、勃起機能を評価できる

(2)

Erection Hardness Score(EHS)を同時に評価した。

結果は PWV において投与前と比較しいずれの期間においても有意な改善 は認められなかった。しかし、サブ解析として、心血管イベント発症の高 リスクである 1800cm/sec 以上の患者、あるいは 75 歳以上の患者のみを抽 出し再度解析を行った。結果は心血管イベント発症の高リスク群において、

投与 12 週、24 週後において PWV が有意な改善を認めた。75 歳以上の患者 群においては 24 週後のみ有意な改善を認めた。IPSS に関して、投与前と 比較し 12 週後から有意な改善を認め、24 週、36 週後もその効果は維持さ れ、EHS に関しても同様にいずれの期間においても有意な改善を認めた。

タダラフィルにより排尿障害や勃起機能の改善に加えて動脈硬化の改善、

あるいは進展の抑制の可能性が示唆された。特に心血管イベントの高リス ク群の患者、75 歳以上の患者においてはその恩恵が大きいと考えられた。

今後はさらなる長期間の観察を行っていきたい。

参照

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