論文内容要旨
論文題名
Analgesic Efficacy of a Combination of Fentanyl and a Japanese Herbal Medicine
“Yokukansan” in Rats with Acute Inflammatory Pain
(ラット急性炎症性疼痛モデルを用いたフェンタニルと抑肝散の併用による鎮痛作用の検 討)
掲載雑誌名
Medicines Vol.7 No.12 :75. doi: 10.3390/medicines7120075. 2020年
医学研究科生理系生理学(生体制御学分野)専攻 博士課程 赤沼 裕子
内容要旨
【背景・目的】フェンタニルは単回の高用量投与でオピオイド誘発性痛覚過敏を誘発し、急 性オピオイド耐性を形成する可能性がある。また、漢方薬の抑肝散(YKS)は鎮痛作用を有し、
モルヒネ鎮痛耐性の抑制効果を有することを我々は報告している。本研究では、ラット急性 炎症性疼痛モデルを用い、フェンタニルとYKSの併用による鎮痛効果を検証した。
【方法】ラットを対照群、ホルマリン注射群(FOR)、YKS投与群(YKS)、フェンタニル投与 群(FEN)、YKSとFEN投与群(YKS+FEN)に分けた。YKSは7日前から混餌で (3%YKS)、Fen は疼痛誘発の10 分前に投与 (0.08µg/kg; i.p) した。ホルマリン (5%, 50µl; s.c) を右 足底部に投与し、投与後60分間における疼痛関連行動を示す時間の測定と、蛍光免疫染色 法にて脊髄後角のpERK陽性細胞数計測により鎮痛効果を判定した。また、HEK293T 細胞を 用いたホールセルパッチクランプ法によるCaイメージングにて、TRPA1 チャネルに対する YKSとFENの影響を評価した。
【結果】疼痛関連行動の初期(0-10分)と中間期(10-20分)では、YKSとFENの併用で有意な 鎮痛効果が認められた。後期(20-60 分)では、FEN群の疼痛関連行動が最も長く、YKS群 と比較して有意に増加した。脊髄におけるERK経路への影響では、YKSはpERKの発現を有 意に抑制する傾向がみられ、後期における YKS の鎮痛効果と関連している可能性が示唆さ れた。Caイメージングでは、YKS とFENによる基底電流変化は見られず、TRPA1チャネルへ の阻害効果を確認することは出来なかった。
【考察】Fen による鎮痛効果は、YKS との併用により増強されることが示唆された。また、
YKSはFENの使用量を減らすことができ、YKSとFENの併用は臨床的に有用であると考えら れた。