論文内容要旨
論文題名
Functional analysis of endothelial permeability driven by glycosaminoglycans composing the glycocalyx
(Glycocalyx
層を構成するGlycosaminoglycans
による血管内皮透過性の 機能解析)掲載雑誌名 Intensive Care Medicine(投稿中)
歯科麻酔科学 阿部 響子 内容要旨
敗血症では血管透過性の亢進により肺水腫や浮腫等が生じ、周術期の輸 液管理に大きな影響を及ぼす。敗血症の際に血管内皮細胞の内腔側に存在 する Glycocalyx 層が破壊されることは明らかになっているが Glycocalyx 層の破壊と血管透過性亢進の関連は明らかにされていない。当該研究では Glycocalyx 層の主たる構成要素である Glycosaminoglycans(GAGs)の消 失が肺血管透過性に与える影響についての解析を行った。
ヒト臍帯静脈内皮細胞株(HUVEC)に対し GAGs を消化し、血管透過性の解 析として電気抵抗値を測定した。血管透過性亢進物質として Histamine を 使用した。
6 週齢 C57/6J 雄マウスを用いて LPS の腹腔内投与による敗血症マウス および尾静脈内 GAGs 消化酵素投与による GAGs 消化マウスを作成した。電 子顕微鏡にてマウスの肺血管内皮細胞における GAGs 検出を行った。血管 透過性の解析には尾静脈内 FITC-labeled Dextran 投与を行い、新鮮凍結 切片を作製し蛍光顕微鏡にて血管外漏出の有無を観察した。肺の血管内皮 細胞の遺伝子解析を行うため、敗血症モデルマウス、GAGs 消化マウス、
未処理マウスの肺血管内皮細胞をフローサイトメトリーにて単離し、その 遺伝子発現プロファイルを作製し、GAGs の消化によって血管内皮細胞に 変化の起こるシグナル経路について解析を行った。
HUVEC を用いた電気抵抗値測定による血管透過性の解析では GAGs 消化に よる透過性の亢進は認めなかった。Histamine 刺激は GAGs 消化の有無に 関わらず電気抵抗値の減少を認めたが、GAGs 消化と Histamine 組合せに
よる電気抵抗値の更なる減少は確認できなかった。
電子顕微鏡における肺血管内皮細胞での GAGs 検出では、敗血症マウス 及び GAGs 消化マウスの肺血管では未処理群と比較して GAGs の減少が確認 された。尾静脈内 FITC-labeled Dextran 投与による血管外漏出状態の観 察では敗血症モデルマウスのみで蛍光色素の血管外漏出が観察された。
GAGs 消化モデルでは明らかな血管外漏出は認めなかった。遺伝子発現プ ロファイルを行った結果、GAGs 消化モデルにおいて、未処理マウスと比 較して炎症反応に関連した遺伝子発現の有意な上昇を認めた。
HUVEC による透過性機能解析の結果より、Histamine 刺激による血管透 過性亢進に、GAGs の有無は関連していない可能性が示唆された。GAGs 消 化マウスにおいては高分子物質の血管外漏出が認められなかった。しかし GAGs 消化後に血管透過性を亢進させるシグナル入力が生じている可能性 が考えられた為、遺伝子発現プロファイルの解析を行った。解析結果より、
Glycocalyx 層における GAGs の消失は炎症時の血管透過性亢進に関わる遺 伝子発現変化と関連していることが示唆された。