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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

スクールカウンセリング活動におけるうつ状態を有 する中学生への予防的支援 : 抑うつ尺度(DSRS-C)の 教師へのフィードバック面接を中心に

山口, 祐子

九州大学大学院人間環境学府

https://doi.org/10.15017/25150

出版情報:九州大学心理学研究. 13, pp.117-123, 2012-03-30. 九州大学大学院人間環境学研究院 バージョン:

権利関係:

(2)

スクールカウンセリング活動におけるうつ状態を有す る中学生への予防的支援

  詠うつ尺度(DSRS−C)の教師へのフィードバック面接を中心に

山口 祐子  九州大学大学院人間環境学府

Prevention of Depressio  in Ju ior High School Students thrgugh Scheol Cou seli g Activities:

Feedback lnterview for Teachers Regarding the Depression Scale (DSRS−C)

Yuko Yamaguchi (Graduate School ofHuman−Environment Studies, Kyushu University)

  The present study investigated the prevention of depression among junior high school students through schoot counseling activities. The aims were to (1) create a feedback interview process utilizing the DSRS−C, (2) clarify the teachers  awareness process during the feedback interview, and (3) to present a preventative support model for depres−

sion in school counseling. The following stages were observed in the interview process, (1) Rapport formation stage:

Building a sense ofsecurity,(2)Awareness stage:Becoming aware of those students with depression, and(3)Concrete support stage: Counselor s efforts to meet teachers  needs,

  Based on the results, a model for preventing depressien through scheol counseling activities was formulated, STEP 1:Helpjng teachers to understand the occurrence of depression among students, STEP 2:Increasing teachers awareness to enable early detection of depression among students through the feedback interview. STEP 3: Counselor s profes−

sional involvement based on school s needs. lssues that remain to be addressed are implementing concrete support by the school counselor and teachers as well as generalizing the results to other ¢ounselors.

Key Words: prevention of depression, school counseling activities, feedback interview, DSRS−C

1 はじめに

1.中学校におけるうつ病・うつ状態への予防の現状と課題  近年,児童・思春期を対象としたうつ病・うつ状態の 存在が明らかとなり,(傳田ら,2004,山口ら,2009)

その予防的取り組みがなされつつある(倉掛ら,2006,

石川ら,2007,佐藤ら,2009)。しかし,その効果は一 定せず,その理由として,①専門家の不在,②ターゲッ トタイプの実践におけるレッテル貼りの危険性などが挙 げられた(倉掛ら,2006,石川ら,2007)。

 ①について,近年,学校内におけるこころの専門家と してスクールカウンセラー(以下,SCと略記)が多く の小・中・高に配置されており,日本においても学校内 に専門家が定期的に訪れる環境が整いつつある。SC活 動の対象は不登校や問題行動等の対応,災害や犯罪の被 害児童生徒の心のケアであるが,実際の対象は不登校の みならず,発達障害,心身症,暴力・問題行動,リスト カット,いじめ,ひきこもり,非行と多岐にわたってい る。岩坂(2008)は教育現場でみられやすいうつ病の可 能性のある不適応状態として不登校,いじめ,非行,自 傷,無気力・学力低下,身体症状・易疲労感を挙げてお り,SC活動の対象者と重なる部分が多く, SC活動の対

象者はうつ状態を伴う場合が多いことが予測される。う つ病・うつ状態の予防的支援は不登校のみならず,SC が関わる多くの問題の予防につながると考える。

②について,石川ら(2006)が海外の文献を中心に児 童青年期のうつ病予防を全員に行う介入であるユニバー サルタイプとなんらかの対象者を選抜して介入するター ゲットタイプに分類し,海外での取り組みについて報告 した。その中でターゲットタイプのプログラムのうつ病 予防の有効性を指摘する一方で,ユニバーサルタイプの 効果は一定していないことを指摘した。学校場面におけ るターゲットタイプのプログラムの実践報告は見当たら ないが,影山(2005)はうつ状態の疑いのある児童生徒 に対して,教師が気づくべき日常生活歯の観察ポイント を教師が周知しておく必要性について述べており,生徒 と教師への調査によって明らかになった生徒の日常生活 上にみられるうつ状態に関して,教師を対象に面接する ことはうつ病・うつ状態の生徒の早期発見に焦点をあて たターゲットタイプへのアプローチにつながるのではな いかと考える。

2.スクールカウンセラーによるフィードバック面接  岡田ら(2008)は児童のうつ病の早期発見の第一段階

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118 九州大学心理学研究 第13巻 2012

にチェックリストによるスクリーニングの実施を提案し ており,チェックリストを通じた教師のうつ病・うつ状 態にある生徒への気づきの重要性を示唆しているが,チェッ クリストの扱いには慎重:になる必要があり,チェックリ ストの選択を含め,専門家であるSCの介在が必要では ないかと考える。伊藤(2003)はSCのコンサルテーショ ン過程において,対象を見立て,伝えることで教師らの 認識を安全に変化させると述べている。SCの心の健康 に関するアンケートの実施には批判があるが,一方で SC活動では非常に少ない情報で適切なアセスメントと 見立てを求められており,ス.トレスチェックなどの調査 を行なうことで生徒に関する情報を得ることができ,教 師とのコーディネートを勧める際に活用できる(東山ら,

2011)との指摘もある。うつ病・うつ状態の予防的支援 に質問紙調査を用い,結果のフィードバックを通して具 体的な支援をSCと教師が協働して考えることはうつ状 態の生徒への教師の認識の変化が,生徒の対応の変化に つながり,うつ状態の生徒の減少が期待できるだろう。

 学校場面におけるアンケート調査のフィードバックに 注目した報告として,坂本(2005)はSCの立場で勤務 校にてアンケート調査を実施し,校内研修にてフィード バックした事例を報告し,取り組みの効果として教師と の以後の関係形成のきっかけとなったと述べた。SC活 動外での報告では三浦(2006)はストレスチェックを生 徒に実施し,不登校感情得点の高い生徒26名について 心理の専門家と担任教師が協働で働きかけを行った。そ の結果,不登校感情などの得点が有意に低下し,友人サ ポート得点が有意に上昇し,心理の専門家の役割を今後 SCが担うことができれば,教師とSCが積極的に協働 するための方法の一つとして提案できるだろうと述べた。

岡田ら(2008)は学校場面におけるうつ病の早期ケアの 担い手として養護教諭やSCを提案しており,校内で教 師・生徒・保護者に定期的に関わることができるSCに よる予防的支援が有効であろうと考えるが,SCがフィー ドバック面接を行い,うつ病・うつ状態の予防的支援に 役立てた報告はみあたらない。まずは支援として活用可 能なフィードバック面接の流れを作成し,フィードバッ ク面接を通した教師自身の気づきプロセスを明らかにす る必要があろう。

 河合(1999)は心理検査のフィードバックを行う際,

どのような表現をするかについて細心の注意が必要であ ること,すぐに「解釈」を伝えるのではなく,クライエ ントの反応の特徴を指摘したり,クライエントがどう考 えているかを尋ねたりしながら,治療者と共に「解釈」

を見つけていくようにすること,そうすることでフィー ドバックも治療的効果を持つと述べた。学校場面におい て,教師と生徒について話し合う際,教師がどのように 考えているか尋ね,共に理解を深める必要があると考え

る。

4.本研究の目的

 よって本研究では,教師に行ったフィードバック面接 を通して,①うつ状態を有する生徒を早期発見し予防す るために,教師への フィードバック面接の流れ を作 成し,② フィードバック面接による教師の気づきプロ セス を明らかにした上で,③ sc活動におけるうつ病・

うつ状態の予防的支援モデル を提示することを目的と

する。

皿 事例の概要

1.事例:筆者がSCとして勤務するZ市近隣の2校の  中学校の教師33名。

2.調査方法

 X年8〜10月に教師が勤務する中学校の生徒に Birleson自己記入式唄うつ尺度(DSRS−C)を実施した。

DSRS−Cは子どもの耳うつ症状に関する18項目からな り,最近1週間の状態について子ども自身が3段階評価

(0点,1点,2点)を行うものである。Cut−off point・ 16 点以上が抑うつ群,15点以下が非呪うつ群とされてい る(傳田ら,2004)。わが国では村田ら(1996)により 日本語版を作成され,信頼性と妥当性が検討・確認され ている。なお,本研究においてCut−off point以上の点数 を有する生徒をうつ状態を有する生徒とし,予防的支援 の対象者とする。

 次に教師に各担任は自分の担任の生徒,学年主任は所 属学年の生徒,その他の教師は全生徒について抑うつ症 状の質問紙で高得点をとると思われる生徒6〜8名(一 定のうつ症状を有する中学生が全体の22.8%いるという 先行研究(傳田ら,2QO4)を基準とした)を得点が高い

と思われる順に学籍番号を記入してもらった。

3.フィードバック面接に至るまで

 生徒のうつ状態を教師がどの程度把握しているかを調 査した。その結果,うつ状態の中には気付きやすい状態 と気付きにくい状態があることが判明した。そのことを ふまえて,職員朝会にて研究の趣旨,全体の結果を説明 し,生徒個人の結果については個別面接にてフィードバッ クすることを伝えた上で,フィードバック面接を実施し た。時間は1人当たり約50分(教師35名分で合計30 時間)を目標とした。面接の時間帯は授業の空き時間が 2時間以上ある教師に声をかけた。都合が悪い場合は希 望を聞き,勤務にさし障りのないよう配慮した。場所は 相談室や職員室の一角を使用した。

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4.倫理的配慮

 調査前,調査の同意や実施に関して校長・養護教諭と 協議した結果,調査時質問紙と封筒を配布し,封をした まま担任が回収しSCに手渡すこと,無記入であっても 生徒本人に不利益を与えないこと,この調査をよりよい 学校生活を送るために活用したい旨を伝えること,フィー ドバックに関して生徒に対しては希望者にはSCが直接 フィードバックを行うこと,担任,養護教諭,学年主任 に面接によるフィードバックを行うこととした。また,

生徒に対しては質問紙の回答に際し,自己不全感など訴 える生徒が存在した場合,SCが面接や授業見学を行な い,フォローし,教師に対しては,その後の生徒の様子 や教師の対応について話し合った。

皿 経  過

1.事例1〜6(○は教師の発言,●はSCの発言)

(1)面接内容(教師1名のみ記載)

 ①1,S2, S3, S4, S5, S6が気になる。②S1は自分の ことをあまり言わない。S2ははっきりした目標がない。

S7とトラブルが多い。(S7はどんな子?)この子は他 の子ともトラブルが多い。かっとなって手がでる。女の 子とはトラブルが少ない。③周囲がうまく扱ってくれる と少し落ち着くような感じ?(話を聞くと落ち着きます)

④S8の子はどんな様子?⑤表面上は明るい。気を遣う 友達がいて,その子とトラブル。⑥親や先生に話せる?

(ハイ)⑦ソーシャルスキルなど取り組んでみたい。⑧ 相談に来た子の情報がほしい。そして…緒にどうして行っ たらいいか,アドバイスがほしい。

(2)事例1〜6のフィードバック面接の流れの検証  面接開始から6名終了した時点でフィードバック面接 の流れを検証した。

 ①面接平均時間53分目あり,授業時間をオーバーし ているため,時間縮小が必要。

 ②「自分が気づいていない生徒を教えてほしい」とコ メントがあり,現在のフィードバックでは教師が生徒の うつ状態に気づいていない生徒とうつ状態に気づいてい る生徒の区別がつきにくく,教師の気づきに繋がりにく

い。

 ③「具体的内容がわかると自分の見えていない子ども の様子がわかるかも」とアンケートに記載があり,もっ と日常に還元できるようなフィードバックが必要。

 ④教師へのアンケートの集計(4点満点()内は SD):満足度:フィードバック面接は役に立ちましたか?

3.75(0.5),理解度1フィードバック面接はわかりやす かったですか?3.50(0.57),意欲度:実践に生かせそう

ですがP3.25(0.5)。

2.事例7〜33

(1)面接内容(教師1名のみ記載)

 ①S11, S12, S13, S14の生徒が気になる。②その中で 実際高かったのはS11の生徒。この生徒は普段どんな 様子?③この子は友達関係がうまくいっていない。④こ の生徒さんは眠れない,何をしても楽しくないなどの項 目が高かったD(日記の中にびっしり書いてくる)先生 と日記のやりとりができるといい。⑤挙げられていない 生徒で実際高かった生徒はS15の生徒。この生徒は普 段どんな様子?⑥好き嫌いが激しい子。⑦この生徒さん はとても退屈な気がするなどの項目が高かった。(口で なかなか話さない)⑧(取り組んでみたいこと)アサー ショントレーニングをさせたい。⑨(SCへの期待)生 徒全体に話してもらう場があるとよい。

(2)事例7〜33のフィードバック面接の流れの検証  面接開始7人目以降でフィードバック面接の流れを検

証した。

 ①平均時間38分であり,授業時間が45〜50分である ことを考えると適当な時間だろう。

 ②アンケートに「今まで知らなかった生徒の様子がわ かったし,思い当たるところがあった」と記載があり,

気づきにつながっている。

 ③アンケートに「子供たちのことが大分把握できそう だから定期的に取り入れていきたい」と記載があり,日 常の生活との繋がりができた。

 ④教師へのアンケートの集計(4点満点()内は SD):満足度3,87(0.34),理解度3.73(0.44),意欲度

3.6 (O.49).

 ⑤面接の流れにおいてすでに気づきを得ている生徒を 挙げてもらうことで面接に対する緊張感が薄れ,SCと

のうポールが形成しやすいことから「ラポール形成段階」,

教師が気づいていなかった生徒を挙げ,その状態を伝え ることで,日常生活での状態とうつ状態とつなげる気づ きとなり得ることから「気づきの段階」,これからどう いつだ援助を行なっていくか話し合ったことから「具体 的援助に向けての段階」の3段階を フィードバック面

接の流れ とした(Fig.1)。

3.フィードバック面接による教師の気づきプロセス  33事例すべてのフィードバック面接において得られ た情報を フィードバック面接の流れ にそってまとめ たものを フィードバック面接による教師の気づきプロ セス とし,Fig.2に示した。

4.教師へのアンケートの自由記述

 教師へのアンケートの自由記述として肯定的な意見で は「知らなかった子どもの様子に気づくことができてよ

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120 九州大学心理学研究 第13巻 2012

     ;①気になる生徒を挙げてもらう。

     i④高得点の項目を伝える。

     :⑤抑うつ傾向が高い生徒で抽出されなかっ

,・づき・

ナ篇騰鶉かがう.

     :⑦高得点の項目を伝える。

濃㈱欄二.;⑧今後取り組みたいこと

1むけての段職…⑨SCへの期待

Fig.1フィードバック面接の流れ

 (●:SCの発言,○:教師の発言)

かった」「クラス全体のこともわかってよかった」など があり,今後の要望では「攻撃的な生徒,引っ込み思案 な生徒への具体的対処方法を知りたい」「エンカウンター を行ないたいので,情報がほしい」「SCを毎日配置して ほしい」などの意見がみられた。なお,否定的意見は見 られなかった。

5.フィードバック面接後の具体的援助

 フィードバック面接終了後,SCと担任が話し合い,

教師が希望した取り組みの中で構成的エンカウンター・

グループ,ソーシャルスキル教育をSCと教師が協働し て行なう計画を立て,部分的に実施した。また,子ども のうつ病やうつ状態についてわかりやすく記載し,SC 便りとして月1回のペースで発行し,うつ状態の予防的 支援を行なった。

N 考

1.  フィードバック面接の流れ の作成

 うつ病の早期発見では気づきの感度をどのようにして 高めておくかが重要(影山,2005)と言われているが,

気づきにつながる自己理解を進めるためのフィードバッ クはクラエイントが脅威を感じやすいため,伝え方に配 慮する(野島,1986)必要がある。

 本研究において面接開始前,授業時間内の面接など教 師の負担にならない面接設定を配慮した上で,①「ラポー ル形成段階」→②「気づきの段階」→③「具体的援助に 向けての段階」の3段階を フィードバック面接の流 れ とした。

 ①「ラポール形成段階」では,気づきを受け入れる土 壌づくりに留意し,すでに教師がうつ状態に気づいてい る生徒を挙げることで,教師が見えている部分や工夫に 焦点をあてた。Stephen(2GO7)はフィードバック面接の 早い段階で肯定的な所見に焦点を合わせるとその後で話

される結果をより受け入れやすくなると述べており,こ の段階はこの点に留意した段階と言えるだろう。

 ②「気づきの段階」では,教師が気づいていない生徒 の名前を挙げて直面化を行った。吉岡(2001)は援助者 がズレの内容や意味を考えたり,援助者の理解が広まっ たり,深まったりすることで,援助に新たな視点が加わ り,被援助者との関係性がより望ましいものになるであ ろうと述べている。本研究において,教師と生徒との関 係性がより円滑になったと考える。

 ③「具体的援助に向けての段階」では,②「気づきの 段階」で得られた気づきから教師本人が取り組みたいこ と,SCへの期待を尋ねた。学校場面で,具体的援助を 行う際,現状に応じた教師の対応やSC活動においては 学校側のニーズを確認しておく必要があるが,これらを

面接内容

フ i一ル ニロ1ての

ie

教師の日常生活での関わりや生徒との距離の取り方対応保護看との迎携 など具体的な取り組みを言語化して伝える。伝える際あいつちなとの非言話 側面も加える。

個人の高得点項目のみ伝える。その後はSCは発言を控え教師のへ一スで 言吾ってもらう。

実施しているにニーズに沿う取り組みがあれば伝 え実施可能な取り組みについて他校の実践例など 伝え実施可能性について琵し含う。

Fig.2フィードバック面接による教師の気づきプロセス

(6)

言語化して確認しておくことは,今後の活動の動きやす さにつながると考えられる。

2.  フィードバック面接による教師の気づきプロセス の作成

(1)面接開始前

 面接を行う前に心がけたことは,①調査のフィードバッ クを行うことを事前に伝えておくこと,②面接は授業の 空き時間が一日に2時間以上空いている教師を中心にお 願いしたことであった。フィードバックの面接の実施を 事前に伝えておくことは,一緒に考えていきたい姿勢を 伝えることにもつながり,面接に応じてくださった教師 の多さにもつながつたと考える。吉岡(2001)は,面接 を行う前に心がけたこととしてフィードバック面接の希 望の時間を事前に一人一人聞いておくこと,各援助者と 個別に顔合わせを行ったことをあげた。本研究において 日頃SC活動で勤務していることもあり,改めて顔合わ せの設定は行わなかったが,個別の面接の際,特にラポー ル形成段階において,教師との関係づくりを心がけた。

(2)「ラポール形成段階」

 「ラポール形成段階」ではうつ状態に気づいている生 徒像,教師・SCの工夫について検討した。カウンセリ

ングにおいて,初回〜導入期はカウンセリング過程の中 でも大切で細心の注意を払う必要がある。野島(1986)

はこの時期のねらいをカウンセラーとクライエントの間 に安心でき,信頼できるような関係をつけることと述べ ている。SCによって教師が意識している生徒の様子や 生徒への工夫を尋ね,受容していくことは安心感の構築 につながるのではないかと考える。

(3)「気づきの段階」

 気づきの段階ではうつ状態の気づいていない生徒像を 教師から聞いた後,SCより当該生徒の高得点項目を伝 え,教師の気づきを検討した。うつ状態に気づきにくい 生徒像として「真面目な子」と挙げられた生徒が65名 存在した。うつ病と親和性が高いメランコリー親和型性 格は,秩序を重んじる性格で,几帳面,律儀,生真面目 であまり融通が利かないといった性格とされており,一 般的に真面目なので周りからも信頼が厚いといわれてい る。学校場面においても,真面目な生徒は見過ごされや すいことが明らかとなった。また面接よりうつ状態に気 づく視点として生徒の表現の気づきとしてコミュニケー ションの苦手さや保健室利用・体調不良が,教師の対応 の気づきとして起こることが多いことが挙げられた。兵 庫県医師会・教育委員会が行なった調査(1997)による と中学校における児童生徒の心の問題は「一週間以上連 続して不登校」(中学校全件数の39.7%),「孤立的であ る」(38.2%),「ぼんやりした表情」(33.6%)が出現頻

度の高いものであり,また,日本学校保健会が行った養 護教諭対象の調査(2008)では保健室に来室した中学生 の主な相談内容として「身体症状」(35.6%)「友人関係」

(18.0%)「その他の学校生活」(10.3%)が多かった。以 上より行動化したりアピールしたりするように見える問 題とされる生徒と,真面目で内面に葛藤を抱えているこ とがわかりにくい,ある意味意外な生徒が存在すること が明らかとなった。特に後者の生徒についてはうつ状態 の尺度を用いて,調査しフィードバック面接を行うこと が有効であろうと考えられる。また,気づきの段階にお いてSCは生徒の高得点項目のみを伝え,教師のペース で話してもらうよう工夫したところ,教師の発言は一言 程度にとどまった。このように有益な気づきが得られる ためには設定の工夫が必要であろう。

(4)「具体的援助に向けての段階」

 具体的援助に向けての段階では現在の取り組み,SC への期待を尋ね,検討した。現在の取り組みでは日常生 活での取り組みが,SCへの期待として個別対応や,予 防教育の実施などが挙げられた。荒木ら(2009)は教師対 象の面接調査を行い,予防的支援における教師とスクー ルカウンセラーの機能・役割のモデルを作成した。その 際,一般の集団を対象とした「一般タイプ」の予防的支 援として海外で報告されているような心理教育をはじめ とする一般タイプの予防的支援に関する教師やSCの役 割についてはほとんど見出せなかったことを課題として 挙げている。一一方,本研究においては構成的エンカウン ター・グループやソーシャルスキル教育などの予防的支 援のニーズが見出された。その理由として調査対象の学 校でエンカウンターを実施した教師が存在し,一般タイ プの予防的支援へのなじみがあったこと,本研究では予 防的支援の対象をうつ状態に限定したことなどが考えら れる。また,一般にうつ病の治療には認知療法が使用さ れることが多いが,学校場面のニーズとは異なることが 明らかとなった。これは中学生のうつ病への認識の乏し さも影響していると考えられるため,フィードバック面 接後,SC便りを用い,子どものうつ病やうつ状態,そ

の対応などについて生徒にわかりやすく記載して伝えた。

本研究では教師にとって見えにくい部分をSCが「お便 り」という形で生徒に伝えたことは専門性を生かした関 わりであると考える。

(5)SCの工夫

 学校におけるコンサルテーションの対象として教師を 挙げられるが,近年では「コンサルテーション」という 言葉ではなく同じ立場であることを強調して「協働(コ ラボレーション)」という言葉がよく使用される。村瀬

(2008)はコラボレーションを意味あるものにするため

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122 九州大学心理学研究 第13巻 2012

の要因としてコラボレーションに関わっている専門家は それぞれの自分の特質とそれに基づく役割期待を自覚し,

協働,協調を念頭に置きつつ関わることの重要性を指摘 している。本研究において,SCが,教師の立場を思い 描き,対応を共に考えていくことに留意し,今後の関係 性をつなぐことを念頭にフィードバック面接を通じた支 援を行った。学校場面においてうつ病・うつ状態が認識 され始めた段階であり,これらの工夫は学校にてうつ病 の予防的支援を行う際,重要な配慮と言えるだろう。

3. スクールカウンセリング活動におけるうつ病・うつ  状態の予防的支援モデルの提示

 荒木(2007)は不登校の予防的支援を一次予防,二次 予防,三次予防に分けた予防に焦点を当てた枠組みと環 境の修正,個人の変容に焦点を当てたアプローチの2つ の枠組みから述べた。不登校という概念は学校に浸透し ている概念である一方で,うつ病・うつ状態は学校場面 では新しい概念であるため,その予防的支援に取り組む 際,SCが予防的支援に関わる必要性を学校全体で認識 することが必要であろう。そこで,第一,第二研究の知 見を踏まえて, SC活動におけるうつ病・うつ状態の予 防的支援モデル を提案する(Fig.3)。

 このモデルでは,①STEP 1:調査を通じた生徒のう つ状態の把握,②STEP 2:フィードバック面接を通し たうつ状態の早期発見への気づきの獲得,③STEP 3:

SCによる専門性とニーズを生かした関わりの3つの段 階からなる。

 ①STEP 1は,調査を通じて生徒のうつ状態を把握す る。ある一定のうつ症状を持つうつ状態である中学生は 22.8%存在する(傳田ら,2004)と言われているが,学 校場面においてうつ病・うつ状態の認識がほとんどない 可能性がある。そのため,教師にとって,生徒のうつ状 態を把握し,自分たちが関わる生徒の問題として具体的 に考えることができること,SCにとって,全校生徒の

STEP2=フィードバック面接

Fig.3 SC活動におけるうつ病・うつ状態の予防的支援モデル

状態が把握できることがメリットとして挙げられる。

 ②STEP 2では,フィードバック面接を通じて,教師 は生徒のうつ状態に気づき,SCはうつ状態の予防的支 援に取り組む際の学校のニーズを知る。Stephen(2007)

はフィードバック面接の目的はクライエントの治療的介 入をはかることであり,そのためにはクライエントの不 安を和らげること,新しい気づきから生じるクライエン トの思いを支持すること,検査所見と現実生活の具体例 と結びつけることなどの必要性を述べており,本研究に おけるフィードバック面接の目的とも重なる部分が多い。

 ③STEP 3ではフィードバック面接で得たうつ状態を 有する生徒への気づきや予防的支援に取り組む際のニー ズに応じた関わりや,こころの専門家としての専門性を 生かした具体的な取り組みを行う。村山ら(2007)は教 師とSCとの協働関係を構築していくことで,教師のエ

ンパワーメントを図り,多様な対応の可能性を広げてい くと述べており,本研究において,うつ状態の予防的支 援での教師・SC双方の専門性を生かした関わりが可能

になると考えられる。

 これらのSC活動におけるうつ状態の予防的支援は,

うつ病のみならず,うつ状態を伴う不登校やいじめなど 多岐にわたって有効であろう。

V 今後の課題  今後の課題として以下の4点が挙げられる。

 ①具体的支援の実施:教師とSCの専門性を生かした それぞれの予防的支援は明らかにできたが,具体的支援 の実施まで至らなかった。今後,実践を行っていく必要

があろう。

 ②教師の自発的関わりの明確化:本研究では教師から 生徒への援助は教師の自発性に任せ,具体的内容は把握 できなかった。教師の自発的な関わりとしてどのような ことが可能であるか,検討する必要であろう。

 ③SC活動内でのフィードバック面接の利用の工夫:

今回の調査ではSCが勤務する中学校ですべての教師を 対象に面接を行ったが,全面接時間が30時間となった。

今後SC活動の中でこのフィードバック面接を組み込ん でいく場合,SC活動内でフィードバック面接が行うこ とができるよう,対象者を限定するなどの工夫が必要で

あろう。

 ④フィードバック面接実施者の問題:本研究において フィードバック面接は実施者が筆者1名であり,SCの 個人の特性や,学校側におけるSCのポジションによっ てフィードバック面接の流れが異なる可能性があるD今 後,SCの経験年数などに合わせたフィードバック面接 の流れを検討する必要がある。今後さらなる検討を行い

たい。

(8)

謝辞

 丁寧なご指導をいただきました,九州大学大学院人間

環境学研究院野島・・一一一彦教授,九州大学大学院学術協力員

金子光代先生に心から感謝いたします。

引用文献

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河合隼雄(1999):心理検査と心理療法,精神療法,25

  (1), 3−7.

倉掛正弘・山崎勝之(2006):小学校クラス集団を対象   とするうつ病予防教育プログラムにおける教育効果

  の検討 教育心理学研究,54,384−394.

三浦正江(2006):中学校におけるストレスチェックリ   スト活用と効果の検討一不登校の予防といった視点   から一 教育心理学研究,54,124−134.

村田豊久・清水亜紀・森陽二郎・大島祥子(1996):学   校における子どものうつ病一Birlesonの小児期うつ   病スケールからの検討  最新精神医学,1,131−

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村瀬嘉代子(2008)コラボレーションとしての心理的援   助 臨床心理学 8(2),179−185.

村山正治・滝口俊子編(2007):事例に学ぶスクールカ   ウンセリングの実際 pp 170−173.

日本学校保健会(2008):保健室利用状況に関する調査   報告書(平成18年度調査)22−62.

野島一彦(1986):カウンセリングの進め方(前田重治   編)カウンセリング入門 有斐閣選書 pp51−61.

坂本憲治(2005):コミュニティに調査結果を治療的に   生かすためのフィードバック・プロセスー病院臨床   における心理検査の施行・解釈・伝達プロセスとの   比較一 福岡大学大学院論集 37(2),1−15.

佐藤 寛・今城知子・戸ヶ崎泰子・石川信一・佐藤容子・

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岡田三津子・岡 孝和・田中くみ・渡口あかり・原之薗   裕三枝・平島ユイ子ら(2008):小児うつ病早期発   見を目指した養護教諭と精神科専門医との連携の確   立 小学校養護教諭の視点から見た現状一,九州女   子大学紀要.自然科学編,45(2),43−61.

山口祐子・山口日出彦・原井宏明・渡辺亜紀・田中恭子・

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  29.

参照

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