Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service Japanese Sooiety for the Soienoe of Design
グ
ラ
フ
ィ ッ
ク
デ
ザ
イ
ンの
社会的次
元
ASocial
Dimension
ofGraphic
Design
小 林 昭世
武 蔵 野 美 術 大 学
KOBAYASHI ,Akiyo
Musashino Art University
1 .
グ ラフィ ッ クデ ザイン の知 覚 連 関か ら行 動 連 関へ の拡 張 グラ フ ィックデザ インにつ い ての言説の領 界を拡張 し ようと す る とき、
とりわけ他の領 域との境 界や接点 につ いて考 える とき、Gorge
Frascaraの論文 「グ ラ フィ ック デザ イン :純 粋美術 そ れ とも社 会的 な学か ?」[iy ] は示 唆 的です。Frascara
は、
グ ラフ ィ ッ ク デザ インが美 的 な領域を超えたものであると主 張 するのですが、
そ れ は、
た とえば社会 変革やコ ンピュー
タ の衝 撃が グラ フ ィック デ ザ インにこれまで にない 技 術や方法 論・
考 え方を余 儀な くする現実に よっ て で はあ りません。 デ ザ イン と そ れを視る者との 関係とい う、
デザ イン にと っ て当 然の成 立の基 盤 を直視 する ことに よっ て作 品の 社会 的 次元、
社会的責任 を問題に します。 グ ラ フィ ッ ク デザ インが 社会に お け る視 覚 的コ ミュ ニ ケー
シ ョ ン を行 う活 動であ る な ら、
コ ミュ ニ ケー
ショ ンの効 果、
そ れ が完成 するた めに使われる技術、
それ が他 者に及ぼ すインパ ク トす な わ ち社会的責任と 関わりを持 ちます。コ ミュ ニ ケ
ー
ショ ンの効 果に は、
メッセー
ジを うま く表現 するた めの美や知覚的明瞭 性とい っ た知覚連関 だ けでは な く、
視る者の態 度に影 響する行動 連 関が含 ま れ ます。 これには、
た とえば、
広告は人々 に製 品や サー
ビスを買 うこ と を期待し、
ま た 政 治 的・
理念 的プ ロ パ ガンダ は 人々 の行 動 や 信念に影響する こと を期 待 し、 高速 道 路のサ インは交 通の流れ をつ く りだすこと を意図し、
教育の ための もの は教 育効 果の.
改善を支援 す る とい っ た他者の態度の変 化をつ くりだすことが含 ま れ ます。 彼はこ の行動連関をデザインの目標に据え る の です。この観点 か らは
、
”
Of
Two Squares”
(EI Lissitzky)”
、
”
MERZII 誌の表紙 (
Kurt
Schwitters
)、
”
New York FilmFestival””のポス タ
ー
(Josef
Albers
)などの作品 に対して も批 判が投 げか け られ ま す。 前の二つ は、
こ れ らがデ ザ インである限 りにおい て、 作 者と見る者との コー
ド の共 有とい う点に、
ま た最 後のポス ター
は アルベ ル ス の作風は伝えてい る もの の、
フィ ルムフェ スティバ ル につ いて の メッセー
ジ を伝えてい ない とい う点か ら批 判され る ことになります。 も ちろん、
美は 大 切 で す が 唯一
絶対の尺度では ない の です。
2 .
グ ラ フ ィ ッ ク デ ザ イ ン の 機 能 と し て のperformance
これまでグラ フィ ック デ ザ インで は知覚的 な面が強 調さ れ て き ま し た。 た とえば表
現を形 成するための技 術とス タイル の発 展、
情 報の転移 に焦 点が当てられ て きました。 こうい う傾 向が グラ フ ィッ ク デ ザ イン を適 用する関心の縮小を導い て き ま し た。
一
方で、
Frascaraのい う、 行 動 連 関は自律した もの でな く、
コ ミュ ニ ケー
シ ョ ンシス テム に位置つ く個々 の作 品の機 能 (performance
)の尺度で す。 デ ザ イ ナー
は視 覚的コ ミュ ニ ケー
ションとク ライアン トの ニー
ス の 問 題解 決 をするとい われます。 そこでは、 公共の反 応を解釈する こと、
機能を評 価するこ と、
コ ミュ ニ ケー
シ ョン戦 略の適切な改 善に関して助 言 す ることが求 め られます。
したがっ て、
グ ラ フィッ ク デザ イン の 目 標 は、
内 容 をうまく表現する ことに留まりませ ん。 た とえば、
安全 性の シンボル のプロ ジェ クトで のデ ザ イン の目標は シン ボ ルをうま く作るこ とで はな く、
事 故を予 防する (そしてあるい は効果的 なコ ミュ ニ ケー
ション戦 略を生み出す )こ とです。 安全性 や危 険 を うま く表 現 する こ とは、
一
つ の手段であっ て もデ ザ イ ン の最終目標で はあ りませ ん。
この
performance
は、
た と え ば プロ ダ ク トデザインに お ける機 能に より接 近した もの にな りま す。 わ た しは グラフ ィッ ク デ ザ インに おいても機 能概念の批判が 必 要 だと思い ます。 」82 SPEcIAL LssuE OF JSSD vol
.
6 No.
1 1998 デ ザ イン学研 究 特集 号N工 工
一
Eleotronio Library SerUioeJapanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service Japanese Sooiety for the Soienoe of Design
3
.
表現行 為を捉え る 語 用論の 視 点Frascara
は、
さ ら に グラ フィ ック デ ザ イン の社会的 責 任啣 を概 観す ること を通して、
グラ フ ィックデザ イ ナー
の教 育につ いて の提 言を行 うの ですが、
こ こで は、 行 動連 関、 機 能といっ た 基本 概 念につ いて、 検 討 し ようと思い ます。performance
とい う言 葉に よっ て、
「あ る発話を行う こと が当の行 為を実際に行なうことにほ か な ら ない」 とい う言 語の 「遂 行 的(performative)」 側 面を問題にし た 言語行為論 〔融 を想 起 するこ とがで きま す。
た とえ ば、
「○ ○禁止」という
発話
は、
○ ○ 禁 止 とい う情報 やメッ セー
ジ を陳述 す る よう
に表現 してい るの で は な く、
禁止する とい う遂 行 的 行為を発話とい う形 を とっ て行っ てい ます。 発話の か わ りに、
サ イン表 示、
シ ン ボル、
プロ パ ガンダの ポス ター
の形 を とれ ば、
そ れ ら の表
現 は遂行的 サ イン、
遂 行 的シンボル、
遂行的 ボス ター
な どと呼ぶ こと も できま す。 これ まで記 号論的 視点は、
グラフ ィ ッ クデ ザ イン自 身の 関心を 反映して、
情報やメ ッセー
ジと それを表わ す表現 との意 味 論 的関係に 関心が 置 か れ てき ました。
例えば、
形、
色、
シン ボル に よっ て ○ ○ は ○ ○ を意味 す る関係 に あ る とい うように。 け れ ど も、
「○ ○ 禁 止」 のためのグラフ ィックスは、
○○禁止 を 意味する、
あ るい は表
現 す る ば か りで な く、
禁 止 す るとい う行 為 を この表
現と ともに行っ てい ま す。 この ように (視 覚 的) 表現の形 式 で 行 わ れ る行 為 (illocutionary
act>が グラ フ ィッ クデザ イン に存
在し ます。 ま た、「
○ ○ 禁止」 のた めの グラフ ィックス を警告、
制止、
助 言な どを与 えるた め にも用い るこ とがで きる ように、
視覚 表現 に よっ て媒 介的 に行わ れ る 行為 (perlocutionary
act) も また グ ラフ ィッ ク デザインに存 在します。 グ ラフ ィ ック デ ザ イ ン の ク ラ イ アン トやデ ザ イ ナー
とい っ た表現主体は、
単にメ ッセー
ジや情 報を伝 達す る の でな く、
警告 する、
訴 える、
推 奨する、
制止 する、
禁 止す る、
反 対する、
賛 成す る、
質問 を投 げかけ る…
な どの行 為を視る人に対 し て行っ てい ます。 もちろ ん、
こ れ らの行 為を遂行 するため に は、
表現の 送 り手と視る人とい っ た行 為者間の人間 関係、
そし て 行 為 者の置か れ た状況の適切性が前 提にな ります。 こ れ らの行 為は、
た と え ば広 告に お い て言わ れ る AIDMA のAの意味 する購入するとい っ た受け手の 行為 とは別 な、
送 り手と受け手の 間の相互作用(
干 渉)
的 な性格を持つ行 為です。4 .
グラフ ィ ッ クデ ザイン を開 く 表現行為の遂 行は、
言い換 えれ ば、
表現の他 者に 対 する力で す。 グ ラ フ ィ ッ ク デ ザ イ ン の 機 能 (performance
)とい う尺度に お ける表現 行為の遂行を デザ イン の 目標とするな ら ば、
たと え ば、
○ ○禁 止の グ ラフ ィッ ク ス の制作で はなく、
禁 止させ る とい うこ とを目標とするな ら ば、
グ ラフ ィックデザイ ナー
の仕 事は表現の 生成や伝達に留 まらず、
この 目標の た め に 別の 共働の形が問わ れ る こ と になる で しょう。 その よ うな事例は自然 環 境、
性差、
消費 者とい っ た問題 Cii4) の解 決場面で、
デザ イナー
の社 会 的責任や倫 理の議 論 を通して、
既に み ることが で きます。(注
1
>Frascara
,
G ,
:「IGraphicDesign
:Fine
Art
orSocial
Science
?” Morgolin,
V.
(ed.
): The Idea ofDesign(1995) (注
2
) 前掲 文 献に よ れば、
グ ラ フ イッ ク デザイン にお ける社 会 的 責任は、
「視 覚 的コ ミュ ニ ケー
ショ ン がコ ミュ ニ ティで持つ インパ クト、 そのコンテンツが 人々に影響 する仕 方、
視覚 的環境へ のイン パ ク ト、 コ ミュ ニ ティの安全 と関係 するコ ミュ ニ ケー
シ ョン が適 切に施行されること を確 固と した もの にするニー
ズ、
と関わる ことです。」 (注3
)こ の説 明は」.
L オー
ス テ ィン に した がっ てい ます。 た と え ば、 坂 本 百 大 (訳 ) : 「言 語と行 為 」 (1978)(注
4
)Whitely,
N.
:’
IDesignfor
Society
「
「
(1992)を参照。 これ らの デザ インの社会的とい わ れ る問題につい ては 稿を改め たい と思い ます。デ ザイン学 研 究 特 集 号 sPEclAL IssuE oF JssD vol