Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service Japanese Sooiety for the Soienoe of Design
能 力障 害
へ
の
創
造
Creative
Design
for
Disability
的
な デ ザ
イ
ン
カ
を
荒井利春 ARAI
Toshihara
金 沢 美術工芸 大 学 Kanazawa College of Art
1
.
はじ めに21
世紀を 目の前にし た20
世紀 末の現 在、
ユ ニ バー
サル デ ザ インの概 念 や その事例 が語ら れて きてい る が、
そ れ は とて もシンボリ ックなことである。20
世 紀 を人類が工業 化 を達 成し てきた時代 として とらえ る な らば、
ユ ニ バー
サル デ ザ インは20
世紀の工業化 が積 残して き た問題 とい うこ とが で きるだろ う。 こ れまで の 工 業 社 会の道具や環境は、
その 多くが障 害 のある人々 や高 齢 者に とっ て使えなかっ た り、
使い やすい もの で は ない 状況であっ た。 障 害の有無に 関 わ らず 誰に で も使
い や すい製品 を作り 出 すユ ニ バー
サル デ ザ イン の 目標は、21
世 紀へ の 社 会 的課 題とい うこ とがで きるだろ う。ユ ニバ
ー
サル デザイン の 理念や 目標 を実 現し よう
と す ると、
す ぐ困 難に直 面 すること と な る。 それ は、
障 害の ある人々 とは誰なの か、
そ して どの よう な 問題が発 生 してい るの か、
ま た高
齢 者が どの よう な 問題を抱 えてい るのか、
そ れ ら はデザ インに どう 関わっ て くるの か、
問 題を どのような 方 法で解 明し てい け ばよい の か とい っ た こと など である。 こ こ で は、
上 記の 問題に対してオー
ル マ イテ ィー
な答
えを求め ること はで き ない が、
その答え を形づ くっ てい く作 用と して、
ま た手掛か りと して、
こ れ までの研 究 プロ ジェ ク トの経 験を 基にユ ニバー
サル デザ イン の 根 底を なす 能 力 障害とデザ インにつ い て ま とめ て み たい 。2
.能
力障害
と デ ザ イン かっ て、
障 害 者一
健 常 者と対 立 概 念で と らえるこ とが な さ れ てい た が、
現在
で も 日常生活や時には行 政計 画におい ても使わ れ る場 合 も見 受 けら れな くは ない が、WHO
は障 害を機 能 障 害 (lmpairment )、
能力障害 (
Disability)
、 社 会 的 不利(
Handicap
) の3
つ の概 念に分 けて とらえてい る。 こ こ で、
この3
概 念をデザ イン との 関 係であらた めて確 認して お き たい 。 たとえ ば、 高 齢 者の疾 病で多い 脳 卒 中の場 合で考えて み る。 脳血管の機 能 障 害に よ り片まひ杖 歩 行と なり入浴が出 来ない とい っ た能 力 障 害が発 生 し、
自立的 な生活が で き ない とい う社 会 的不 利 が 生 じ る。 しか し、
浴室
の設計を杖 歩 行 レベ ル で も使え る ような仕 様 と しておけば、
脳 卒 中 片 まひ で も・
一
人 で入浴で き入浴に 関する能 力 障 害は解消 し、
社 会 的 不 利 が解消 した り軽 減する。 す な わ ち、 脳血管の 機 能 障害は無 くな ら ない が、
浴 室 という
環 境をデザ イ ンす ることで入浴にお け る能 力 障 害の 発生 が解 消さ れ る とい うことである。 こ の よう な浴 室の設計や 開 発は、
今日で は標 準 仕 様の浴 室の 設計
に 反映さ れて きてい る。 デ ザ イン の 場で あ ら た めて問題を と ら え ると、 問 題はユー
ザー
にある の で は なく、能力
障 害 を発 生 させてい る浴 室の デザイン にある と言い換え ること も で きる だろう。 能 力 障 害の概 念を もっ た と きに、
障 害とデザ インの関 係 がかみ合 うよ うに な る。 す なわちデザイン にとっ て大切 なこと は、
能 力 障 害 を発 生 さ せ ない デザ イン を進め ることで あ り、
また発 生 してい る能 力 障 害を解 消 する デザ インの試 み を持 続しつ づ けてい くことであるとい える。3
.
実 感 しに く く、
見 え に くい能力障 害の問 題 デザ インを行 な うにあた り、
目標 を主 体 的にとら えるこ と や、
新た な デ ザ インの必要 性や 可能 性を実 感 し た り予 感 するこ と は必 要 不 可 欠 なこ と とい え る。 とこ ろ が、
能 力 障 害の 問題は 日常の デザ イン教 育やデザ イン の仕 事 環 境におい て と らえるこ と が困 難 な もの で あ る。
建築 領域で の設 計基準やマ ニ ュ ア ルが数 多 くま と められてい るが、
そこか ら新た な デ ザインを発 想 するの はむずか しい。
な ぜ、
そ うする の か、
そ う し な け れ ば な ら ない のか、
より良い 方 法 は他にない のか、
マ ニ ュ アルや基準
か ら は一
歩 踏み 出 す手
だ てが得ら れ ない 。 た と え ば、
脳 卒 中片 まひ 者の 歩行 動作や入浴 動 作に立 ち合 うこ とで、
手 す り26 sPEcIAL IssuEoF JssD vol
.
7 No.
1 1999 デザ イン学 研 究 特 集 号Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service Japanese Sooiety for the Soienoe of Design
や 操作の容易 な機 器の必 要 性 を実 感 を もっ て理 解 す るこ と がで き る
。
ま た、
どこ に で も手 す りを付け れ ば 良い の では な く、
手す りを付 けては いけ ない箇 所 が あ ること も 理解で き る。
さ ら に、
片 ま ひ者の動 作 が お ぼつ か ないだ けでな く、
時に は 思っ た よ り しっ か り し てい る といっ た全 体 状 況を実 感 するこ と が、
人 と機器や空間の新たな関 係や在り方を発想 する勇 気 や 自信へ とつ ながる こと に な る。
し か し、
能力 障 害の 問 題 は身近 に高 齢 者や障 害のある家 族がいた り しない限り実感す ること は むずか しい。
ま た、
身 近 に 問題が発生 して いた と して も、
そ れ が固 有な もの なのか、
共 通性のあ る ものなのか、
ま た積 極 的に発 想 す る方 向が機 能障害に悪 影響
と な るこ と はない の か とい っ たこ とへ の 答え はデザ イナー
だ けで は求め ること が 困難と な る。
現 在の ところ、
私た ちの社 会 はこういっ た能力障 害の問題 に対す る確か な方法を 日常 的 な デザイン のなか に組み込むこと がで きて い ない。
4 ,
能力障害
へ のデ ザイ ン の方法 につい て4.
1.
作 業 療 法士との協 同 こ こで、
箸が使え ない人々か ら考えたスプー
ン と フ ォー
ク開発 研究 プロ ジェ ク ト を も と に 問題を と ら えてみ たい 。 研 究 開発の プロセス を 大 き な単位で ま とめ る と、
現 状の把 握か ら仮 説モデル 製 作、
試用テ ス ト、
テス トモデル改 善、
長 期 試 用テス ト、
製 品 試 作、
試 用 テ ス ト、
製品化といっ たよ う に な る。 プロ セス のポ イン トご と に、
リハ ビ リテー
ショ ン の専門 家である作 業 療 法士が 関わる。 特に対 象となる障 害 像の抽出、
ビデオ 取材、
ビデオ 分析、
デザ イン条 件 の設 定 に お い て、
作 業 療法 士 との 協同 と徹 底した ディ ス カッ シ ョ ンは 不 可 欠 で あ る。
ま た、
仮 説 モデ ルの ユー
ザー
テ ス トや、…
定の性能を備え た 試 用 モ デルテス トにおい て も、
作 業 療 法士に よ るユー
ザー
の抽 出 と テ ス トの立ち合い、
作 業 療法 士 との テ ス ト 結 果の 評 価 判 定が 必 要 と な る。
ち な み に、
スプー
ン と フ ォー
ク開 発 研究におい て、
対象と し た 障 害 像 は リウマ チ、
パー
キン ソ ン氏 病、
脳 卒 中、
頸髄損 傷 と なっ て い る。 それ ぞ れの 障 害か ら3
〜4
名 ずっ の ユー
ザー
が 作 業 療 法士に よっ て選 ば れ、
調査 協 力や テス ト参 加が行な わ れ た。
4.
2.
デザイン の道具とし て の ビデオ 機 器 そ れ ぞ れの障 害に おい て食 事に関わる能 力障 害が どのよ うに発 生しているのか とらえる とともに、
障 害 を 超 え た 共 通の 問 題 と し て と ら え る2
つ の 分析が 必要と な る。
こ の 分析 に あ たっ てはビデオ映 像が不 可 欠で ある。
問 題 は日常 生 活の 動 作 に おい て発 生 し て いる わ けで、
その動 作のどこ に 問 題 がどの よ う に 発生 して い る のか を とらえる のに は、
動作を何 度も 繰り返し て見る ことや、
動 きをスロー
に し て体と機 器の関 係 を と ら え ること が 必 要 で、
ビデオ映 像 無し では おこな うこ と がで き ない。
ま た、
ビ デ オ映 像は 問題の発 生 し て い る現 場を つ の情景と し て とらえ る こと を可 能とする。
食 事という文 化 的な行 為が ど の よ う な空 気と時 間の流 れのなかで おこなわれ てい るのか、
そ れ が 普 通の食 事の情景 と ど う 異 なっ た も のなのか感じ ること ができ る。
スプー
ン・
フ ォー
ク か ら の能力障へ のデ
ザ イン は、
食 事の全体 情 景をよ り好 ましい もの と し てい くベ ク トル の 中にある とい う 問題の 構 造 的な把 握も おこないやすい。
4.
3.
実材モデル に よ る テス ト テス トモデル の 評価 には、
対 象と し た障 害 像の ユー
ザー
に よ る テ ス トをおこな う た め、
実 際に食 事 の 場で試用でき るモ デル が 必 要 と な る。
スプー
ン・
フ ォー
ク の場合にお い て は 製 品 と 同 じ 素 材である ス テンレス の 手 作りモ デル を複 数 個 作り、
その改 良を 何 度も繰 り返している。 実 材の モ デル でないか ぎ り、
食 事 動 作 に お け る 様々 な 使い方 や 力のか か り 具 合が わ か らない、
さ ら に 力の弱い ユー
ザー
に とっ て は機 器の重 さ が 重要な機 能となる こと が あ り、
モデ ルの 機 能や質 的 な 評価 等々 を検 討確 認 する には、
実 材モデル無し で おこな うこと が できない。
44 ,
ユー
ザー
参加のデ ザイ ン あ ら た めて確 認 する こ とと なるが、
能 力 障 害に対 するデ ザイ ン を進め ていくには、
問題の確認 か ら解 決 策 と し ての デ ザインの 評 価 に わ たっ て、
ユー
ザー
の参加 が 不 可 欠である。
特 定 な能力障害 を 対 象 と し ない デ ザイン の場 合 は、
デ ザイ ナー
の判 断で大 き な 間違いが 生 じない こ と もあろう が、
能 力 障 害を対 象 とする場 合、
デ ザイ ナー
だ けで は仮 説をたて る根 拠デ ザ イ ン学研究特粟号 sPEclAL tssUE oF JssD vol
.
7 No.
1 1999 27 N工 工一
Eleotronio LibraryJapanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service Japanese Sooiety for the Soienoe of Design
が得ら れない
。
ま た、
ユー
ザー
無し で は仮 説と して のデ
ザインを評 価 し た り、
よ り積 極 的 な 判 断 を 行 な うこ とがで きない。 リハ ビ リ テー
ショ ンの 専 門家で ある作 業 療法士 によ る説 明 だけで、
ユー
ザー
に接 す るこ と がで き ない と、
デ ザイ ナー
が問 題を動きとし て実 感 する こ と ができ ない。
例え ば、
ス プー
ン・
フ ォー
クの開発において、
ユー
ザー
の食 事動作の全 体をデ ザイ ナー
の 目 で確 認 すること は重要 で あ る。
ユー
ザー
の 使 用 して い る 椅 子 やテー
ブ ル と体の関 係、
体全体の 動き と 上肢の関 係、.
用 支と手の関 係、
そ して機器の関 係、
機 器と料理 と の関 係につ いてデ ザイナー
として総 合 的に とら え るこ と は、
問 題の 発 生 し ている場 を構 造 的に と え、
その全 体 を調整 す る な かで、
ス プー
ン・
フ ォー
クの問 題 を解決 して い く と いっ た方 法 をと ること を 可能と する。
4.
5.
学 際 的アプロー
チデ ザイン の立場か らの上記のような 視 点は
、
リハ ビ リ テー
シ ョ ン の分 野における習慣 的な方法 や考え 方の足 りな い要素を作業 療 法 士 がデザイナー
と相互 に確認 し、
リハ ビ リ テー
ション環 境の質を一
歩 前進 さ せ る とい っ たこと に もっ な がる。 ま た、
作 業 療 法 士と の協同はデ ザ イ ナー
に とっ て、
能 力 障 害 を機 能 障 害との 関 係で理解 するこ と や、
能 力 障害の発生の 仕 方や 特性といっ た ものを具体 的なデザイン の場で 理解するま た と ない機 会となる。 そ れ は、
これ ま で の デザ インが 当り前 なもの と し て き た 人 間の能力像 に対 する問題 提 起と も な り、
デ ザ インに おける人間 像を 再構成 するきっ か け と も なる。
つ まり能力障 害 に関わるデ
ザインは、
ユー
ザー
を 中心 と し た リハ ビ リテー
シ ョ ン の 専 門 家とデ ザイ ナー
の 協同 といっ た、 学 際 的アプロー
チの創 造的 な 現場ということ が でき る。5
.
創造的なデ ザインカ を5,
1.
感じる 力 を、
意 欲し具 体 化 する た め に能 力 障 害へ のデ ザイ ン に は
、
その発生 して い る現 場が 不 可 欠であ り、
現 場に おける ユー
ザー
の取 材 や 専門 性の こと なる作 業 療 法士 と の協同が課 せ られ る 制約の多いデ
ザ イン の現 場で も あ る。
これ を 制約と と ら える のか、
新 た な デ ザインの契 機と してと ら え るの かでデ ザインプロセス の内 容や結 果は大き く異 なっ て く る。
目の前のユー
ザー
と機 器や環 境との 関 係 や、
その姿に 何 を感じ取るか、
デザ イ ナー
に要求 さ れる ものは知 識の前に感 性で あ る といえ る。
つま り、
目の 前の情景 を既存の知識
に 当ては める の で は な く、
目の前の 情景 か ら新 た な 知識を形作る こ とが 要 求 さ れ る。
そのた め に は、
初めに感じ ることが 必 要 と な る。デ
ザイナー
と して感じ取っ た 分 だけ 問題 が浮上 し、
情 景のな かにデザイ ンの 問 題の 輪 郭 を 描 き出 すこと が 可 能 と な る。
スプー
ン・
フ ォー
クのプ ロ ジェ ク ト に おい て考えると、
既に リハ ビ リ テー
シ ョ ン の現場で は作 業 療 法士 に よ る様々なス プー
ン が選 択さ れ た り工夫さ れ ていた。
事 実 プロ ジェ ク ト の初め に おいて は、
もうスプー
ン・
フォー
ク につ い て は行な うこと は ないといっ た 意 見 も 出 た ほ どで あ る。
し か し、
デ ザ イナー
と して現 場の取 材を続 けて い る う ち に、
根 本的な問題に突き 当 たる こ と にな っ た。
そ れ は 日本の普 段の料 理が実に多 種 多 様である こと、
器の形状も欧 米に 比べ 種類 が多い こと。
さ ら に碗 や 鉢といっ た 深 い器 か らす くっ て食べ る動 作が と も な うこと。
これ ら は、
リハ ビリテー
ショ ンの先 進地である欧 米で は見られない こと といえ る。
し た がっ て、
主と して 欧米を 手 本 と してきてい る リハ ビ リ テー
ショ ンの 現場の方 法だけで は、
R
本の食 事に お け るユー
ザー
の動 作に矛盾が 生 じるとい っ た こ と が見えて き た。 現 場の取 材 をとおし て、
食 事文化と 能 力 障 害という よ り本質的なデ ザイン の 問題に向か い合 うこ と と なっ た とい うこ と がで きる。5.
2.
開 か れ た場で考える 能力障 害へ のデザインは現 場の 取材と 分析が 必 要 である こ とか ら 閉じた 世 界 で 考 え が ち と なるが、
問 題 解 決にあた りその問 題 と解 決方 法を開か れ た場で と ら え 直 す こと が 重要と な る。
た とえば長い間、
車 いすユー
ザー
の鏡と して斜めの鏡 が 「障 害 者用 トイ レ」 に と りつ けら れ て い た。
そ れ は、
問 題を車いす ユー
ザー
との 関 係 だけで しか と ら えて いない こ と に よ る弊 害といえ る。
杖 歩行ユー
ザー
に とっ ても十 分 に 広 い トイ レ は使いや す いもの で あり、 また 歩 行器 の ユー
ザー
に とっても同 じ である。
現在で は大き な 鏡を洗 面器のすぐ上 か ら取 り 付 け る方 法が と ら れる28 SPECIAL ISSuEoF JssD vol
.
7 No,
1 1999 デ ザ イ ン学研究 特集号Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service Japanese Sooiety for the Soienoe of Design
よ う に な り
、
車いすユー
ザー
に も 立っ て使うユー
ザー
に も使いや すいものと なっ て きて いる。
さ ら に 視 点 を 広げる な ら ば、
洗 面 器のすぐ 上 から取り付け た鏡は、
トイ レ 動作の 自立の始まる幼児 が大人 の手 を借 りずに自分で顔 を映 すこ と の で きる具合の良い ユ ニ バー
サ ル な ものとい え る。
5
.
3
,
動 作のパ ッケー
ジ とし て と らえ る 能 力障 害へ のデ ザインは、
連 続して い る生活 動 作 を一
定のま と ま り あ る もの と し てパ ッケー
ジ化し て とら える こと が 必要と な る。
スプー
ン・
フ ォー
クの 場 合では テー
ブル の スプー
ン・
フ ォー
ク を 取 り上げ て持つ とこ ろか ら、
食 事の終 了 する ところ までと な る。 テー
ブルの スプー
ン・
フ ォー
クを取り.
ヒげるこ と が できなければ、
どん なに持 ちやすくて も使うこ と は 出来ない。
言われ て みれ ば ごく当り前なこ とが 忘 れ ら れ が ちである。
た と えば、
高 齢 者に使いやす い浴 室の事 例が様々なマニ ュ ア ルで紹介
さ れ ている が、
動 作に関わ る問 題の大きい浴 槽ま わ り だけを紹 介して いる ものが多い。
とこ ろ が、
脳卒 中片 ま ひレ ベルの ユー
ザー
が入 浴 動 作を自立的に行
な う に は、
脱 衣 室にお ける衣 服の着 脱 動 作か らスター
トす る 入 浴 動 作の 連 続 性が必 要と な る。
脱 衣室 か ら洗い場、
洗い 場 と 浴槽との 関 係、
を 整理 し 矛盾がないよ うに することで初め て 入 浴 動作が 自立 する。
能力障害へ のデザ インは、
対 象とする動 作の始点と終点 を どこ に 設定 する かが重 要で、
い わば動 作の パ ッケー
ジ に 対す るデ ザイ ン と し て と ら える こ とが必要である。
5 .
4.
地 域 プロジェ ク トの増幅 ユー
ザー
を中心と し た作 業 療 法士 との 協同は 生 活 現場や動 作シ ミュ レー
シ ョン の場を中心とするだけ に、
地 域 的 な 日常に な か に組み込ん でいくこ とが 課 題 と な る。
現 場で もの を感 じ考え る。
そ れ を 日常の 地 域を超えて持 続 するの は容 易なこ とでは ない。
ま た、
地 域にお ける プロジェ ク トの持 続 は 当事 者相 互 の 問題の 認 識 力を高 めた り、
専 門性 を超え た共 通 言 語の獲
得な ど、
質の 高いデザイ ン行 動の土 壌 育 成と なっ て いく。
さ ら に、
能力障 害の問題 は 食 器 か ら家 具、
住 宅、
地 域の環 境、
公 共 建 築や公共 交 通へ と 連 続して 発 生 し て い る。
地域 プロ ジェ ク トの持続 は、
時 間 距離的 な側 面か らプロ ジェ ク トを形成しやすい だけ で は な く、
地 域環 境 全体を能 力 障 害との関 係で と ら え な おし、
総 合 的に整 備 し て い く基盤となる と もい える。
5.
5.
あ りの ま まの人 間へ のデ ザイ ン 能 力 障 害へ のデザインを進めて いく な かで多々 感 じ ること は、
デ ザイ ン に関わ る人 間 が デザ イン の与 件と して 問 題 を 知 り、
初め か ら能力障 害 が 発 生しな い デザ インを試み てい た な ら ば 問 題は生じな かっ た であろ う と い う こ と である。
こ の思い や 実 感 はユ ニ バー
サ ルデ ザインへ の震 源といえる。
と はいう もの のそ う簡 単な こ とではで はない の も事 実である。
し か し、
動 作 に 関 わ る能力障 害や視 覚や聴 覚に関わる 能力 障 害 と を 取 材し、
機 器 開 発研 究のなか で と ら え てい く試み を おこなっ て い るが、
全く不可 能な 問題 では な く、
可 能性 を どこまで切 り開くこ と ができ る か といっ た持 続 的、
継 続 的 な 問 題である こと が みえ てきて い る。一
つ の 試 み が、
さ らに新 たな可 能 性へ の欲 求を 生 み出 す。 試み の スパイラル な循 環が能力 障 害へ のデ ザイ ン の本 質とい えるだろう。 創 造 的な 課 題 と し て 能 力障害へ の デザ インをと ら え て い く に は、
そ れ が 特 殊 な 問題では な く、
あ りの ままの 人 間 へ のデザインと してと ら えてい く 感性が 求 め ら れ る といえよ う。 時 代はデ ザ イン の新た な る創 造 力を求 め てい る。
6 ,
お わ りに 工業 化の 手 法を特 定の 「型」に よ る 生産と してと ら え る な らば、
これ ま での 「型 1 に は障 害のある 人々や高 齢 者の必 要 と す る ものが含ま れ ていなかっ た ということ ができる。20
匿紀の 「型」 か ら、
新 た な21
世 紀の 「型」が求め られて い る といえ るだ ろ う。
その 「型」 は、
新た なデ
ザ イン の と ら え方 と進め方か ら生みださ れ てい くと いえる。
そ の鍵 と な るの が、
能 力 障 害へ の 創 造力豊か なデ ザイ ン プロジェ クトの持 続とい え る だ ろ う。
そ れ は、
地 域を 基 盤に しな がら従 来のデ ザ イン の フレー
ム を 超 え た 時 間 空 間 的 な拡が り の な か か ら 形づ くられ て い く とい え よ う。
デ ザ イン学 研 究特集 号 SPEcIAL IsSUE oF JSsD vol