岡山大学算数・数学教育学会誌
『パピルス』第
27
号(2020
年)57
頁~64
頁奇妙な因数分解
平井安久*
『---ー_―-研究の要約 — --- 高校数学であっかう因数分解の題材について, たすきがけを用いない通常とは異なる方法を 中学生用教材として再構成した。 数式の表記やカラクリを説明する方法を工夫して, 中学3年 生対象に授業実践をおこなった。 教材としての有用性や困難な点を謡論した。
key·words:
因数分解, 二次多項式, 二次関数のグラフ1. はじめに
因数分解は中学校第3学年および高校第1学年 で扱われる内容である。x2+2x-3のようにx2の 係数が1であるものは中学校3年で扱われ,
6x2 +7x-3のようにx2の係数が1でない場合は 高校1年で扱われる。
本稿で議論するのは, 因数分解の単元での一般 的な指導法ではない。x2の係数が1でない高校1 年生レベルの因数分解について, 興味のある話題 が
Steckroth(2015)
によって紹介されている。氏は 高校教師として指導の中で生徒の誤った因数分解 がきっかけで, 興味ある因数分解の手順を構築す るに至ったそうである。 具体的な内容は次節の例 で紹介するが, 教材としては珍しくおもしろいも のであり, 課題学習の話題にもなり得るものと考 える。本研究では, 高校生向けであるこの話題を中学 生用の教材として再構築して, 実際に授業実践を 行い, どのような授業展開が可能か等を考えてみ たVヽ0
2.
目的および教材について 2. 1目的本研究の目的は, 6x2+ ?x-3のようなx2の係
*岡山大学大学院教育学研究科
数が1より大きい場合の二次多項式の因数分解に ついて, 少々奇妙な方法を示し, そのカラクリを 考えることで, どんな場合でも成り立つ一般的な 手続きであることを中学3年生の生徒たちに理解 してもらうことにある。
この類の因数分解は, 現行のカリキュラムでは 高校
1
年生の内容となっている。Steckroth(2015)
では, この因数分解の方法を高校レベルの教材と して紹介されている。 本稿では, 数式表現や説明 方法を中学生向けに工夫した上で, 授業実践をお こなった内容を述べる。 中学生たちの興味•関心 の持ち方や教材自身のおもしろさについて議論を したい。
2. 2教材の内容と特徴
それでは, 二次多項式がどのように’'奇妙に”因 数分解されるかを具体的に述べよう。 以下の例1 や例2に示すような手順で’'変形’'をしていくので ある。 ただし, ①式から⑤式までのそれぞれのす ぐ次の行にある[ ]内のコメントは操作手順で あって, カラクリの解説ではないことに注意しよ う。
例
1
6x汀7x-3の因数分解① 6x2 +7x-3
[①式でX2の係数 6 を用いて最後の定数項 に6を乗じてー18とする。対の係数は1とす
る。]
②
x
2+7x-18
[②式で因数分解をする。]
③
(x+9)(x-2)
[③式で定数部分のみをそれぞれ6 で割る。
xの項は変化させないこととする。]
3 1
④
(x+-=-)(x--::-) 2 3
3 l
[④式で
(x+-=-)(x-- 2 3
)全体に6を乗ずる。]⑤
(2x+3)(3x-1)
[⑤ 式は①式を因数分解した結果になって いる。]
例
2 6x
2+5x-3
の因数分解それでは,
6x
2+5x-3
のように,結果的に整数 値のみで因数分解が表現できない場合はどうであ ろうか。 例1と同様の操作で変形していくと, ① 式から⑤式に対応する数式表現は以下の通りとな る:①
6x
2+5x-3
[①式で
x
2の係数6を用いて定数項に6を 乗じてー18
とする。x
2の係数は1
とする。]②
x
2+Sx-18
[②式で因数分解をする。]
-5
+ふ
7 -5-而
③ (x-
2
)(X-2
)[③式で定数部分のみをそれぞれ6で割る.
Xの項は変化させないこととする。]
-5+面 -5-向
④ (X-
12 --
) (X-12
) -5+ふ
” -5-荷
[④式で(x-�)(x-
12 " 12
に6を乗ずる。]-5+而 -5
ー荷
⑤
6(x-�)(x-�) 12 -- 12
)全体
この場合でも, ⑤式は①式を因数分解した結果
になっている。
例1も例2も同じ手続きによって, 結果的に正 しい結果が得られている。
この教材の特徴として以下のように言えるだろう。
・①式から②式への変形が,生徒たちの目にはき わめて奇妙に映ると予想される。
•高校 1年生で学習するような’'たすきがけ”を用 いた因数分解ではない。
•この方法を高校 で学習する訳ではない。
2.3
カラクリの解説本稿での教材開発のきっかけとなったのは
Steckroth(2015)
の高校生向け教材である。そこで は, 二次方程式の解の公式を用いて, ①式から⑤ 式までの手続きが意味をもつことを説明している。しかし, 本稿ではもう少し工夫して, 二次方程式 の解と係数の関係を使って説明することにしよう。
ただし, ここでの解説には高校生レベルの知識や 式表現を用いている。 つまり, 本稿後半で述べる 授業実践の内容や表現方法とは異なるものである ことに注意しよう。
まず,
f(x)=ax
豆bx+c
とおき, 二次方程式f(x)=O
の解をa,p
とする。 このとき,b c
a+P=-::..., ap=::...
a a である。
f(x) = a(x-aXx-P)
と書けるので,f(x)
をさらに,f(x) =.:...(ax-aa)(ax-ap) a
1と表した上で
X=ax
とおくと上式は,.:...(ax-aa)(ax-ap) 1
a=
ーa 1 (X-aa)(X -aP)
=ー(X
a1
2-a(a+ P)X +a 海)
1,,,.
2. -- b
.,.. __
2 C=-(
X
互a
!::....X+a
2�)
a a a
=-(X互bX+ac)
1a
と変形される。
これらの関係を用いて, 例1や例2での①式か ら⑤式までの一連の手続きが意味するもの, つま りカラクリを説明しよう。 まず, ①式から⑤式ま での数式を文字式で一般表現すると以下のように なる。
①
ax
2+bx+c
②
X互bX+ac
③
(X -aa)(X -ap) = (ax-aa)(ax-ap)
④
(x-a)(x-P)
⑤
a(x-a)(x-P)
例1や例2では, 意図的にxとXを区別せずに 表記することでカラクリに気づきにくくしている 訳であるが, ここでは, X と
X
はX=ax
の関係 にある別々の変数として区別する。まず,
f(x)
=ぷ+bx+c
( ①式) の値は,ー1
(X坪bX+ac)
に等しいのであるが, これを aX互bX+ac
とだけ書く。 これが②式である。
次に, 解と係数の関係より②式は,
X互bX+ac
= (X -aa)(X -ap)
と因数分解される(②式から③式へ) 。
(X -aa)(X -ap)
を2
度a
で除すると,(ax-aa)(ax-ap) +a+ a
=(x-a)(x-P)
となる(③式から④式へ) 。 最後にaを乗ずることで,
a(x-a)(x-P) = f(x)
となる(④式から⑤式へ) ので, ⑤式が
f(x)
の因 数分解を表すことがわかる。以上より, ①式から⑤式への一連の手続きは,
どんな係数の二次多項式の場合でも使うことがで きる。 解に虚数が含まれる場合でも成り立つので あるが, 次節以降ではむしろ教材としてのおもし ろさの方を議論したい。
3. 授業の展開
対象は岡山市内のA中学校(県立中学校) 第3 学年
120
名, およびB
中学校(国立中学校)第3
学年
180
名であった。 いずれの学校においても2016
年12
月に1
単位時間で実施した。「高1
の因 数分解を中3があっさりと解く」という題名で筆 者が授業をおこなった。全体的な授業の流れは, 以下の
4
つの学習活動 からなる。 ここでは, 授業者の発問や説明のみを 述べることにする。学習活動 1. 既習の二次多項式の因数分解につい て
3
つの例に取り組む。 さらに,3x
2+14x+8
の 因数分解は未習内容であることを確認する。学習活動
2. 3x
2+ 14x+8
および6x
2+Sx-4
に ついて, ’'奇妙な’'因数分解の具体的手続きを示す。学習活動3. 「タネあかしその1」
3x
2+14x+8
について, ①式と②式をもとにy=3x
2+14x+8
とY=X
戸14x+24
と い う 表 現を用意し, (x,y
)および(X,Y)
の数値の組を考 えることで, ①式から⑤式までの手続きに意味が あることを示す。学習活動4. 「タネあかしその2」
3x
2+14x+8
につ い て ,y=3x
2+14x+8
とY=X
2+14x+24
を二次関数と考えて両者のグ ラフを同じ座標平面上に重ねて表示することで,①式から⑤式までの手続きに意味があることを示 す。
以下, 学習活動1から4までに対応する細かい 具体的場面を示す。 個々の数式や図などの提示内 容や指示文面はすべてスライドで示する(以下の 枠で囲まれたものが使用するスライドの一部であ る)。
学習活動1. まず, 既習の因数分解の問題として 以下の3つを提示し, 因数分解するよう求める。
x2-4 x互5x+6 x2+2x-24
続いて, 3x2+14x+8の因数分解という未習の話 題へ入る:
では、
•因数分緞しなさい
3x2 +14x+8=
福‘V
人1vII:このとき,
•この内容は, 高校 1年生で学習する因数分解の 先取りではない。 紹介する方法はそれとは異なる ものである。
•この方法は高校 の授業でも聞くことはないだろ う。
と伝えておく。 ただし, 結果的に,
3x彗14x+8=(x+4)(3x+2)
と因数分解されることだけは生徒たちと共有して おく。
学習活動2. 「実は, 因数分解の楽な方法がありま す。」と言い, 以下の数式を1行づつ示していく:
3.x2 +14x+8 x'+l4x+24 (x+J2)(x+2) (x+4)(x+2 73 ) (x+4)(3x+2) スライドの各行に対応して,
「3を取り去って8に3をかける」,
「因数分解する」,
「それぞれ3で割る」,
「全体に3をかける」
「できあがり」
と説明する。
続いて別の例として, 6x2+5x-4の場合につ いても同様に説明する。
学習活動3. 「タネあかし その1」
3x2 +14x+8に ついて,
最初の式をy= 3x2 + 14x+8と表し,
次の式をY=x2 +I4x+24と表す。
さらに区別を明確にするためにXを用いて,
y =3x� +14x+8 2 Y =X2 +I4X +24
と表し, 両式を別々の色で表示する。
続いて以下のように(x,y)の数値の組を調べる。
,·=Iのとき.1•= 25 x=2(/)ときy=48 .<=3�)とき_v=77
さらに, (X,Y)の数値の話へ進む。 このとき, 意 図 的に(X,Y)の値を(3,75),(6,144),(9,23 1)とし て, 以下のように示す:
y=3ぷ+14x+8、 }’=X'+I4X+24
.r y x y I 25 3 75
2 48 <, 144 3 77 9 231 3x=X, 3y=J·
(x,y)と(X,Y)の関係に着目すると, 3x=X, 3y=Yという関係が見られることを強調する。次 に, 以下のように各数式に①から⑤までの番号を つける:
CD 3x2+14x+8
番号を書いて ヘ
ください ② .x'+14x+24
③(x+l2)(x+2)
④
(x+4)(x+;) 2 3⑤ (X+4)(3.Y+2)
これまでにわかった(x,y)と(X,Y)の関係から,
①式から⑤式までの数式どうしの関係は以下のよ うに表されることを示す:
① '- - - - ---―'
: r; •i• 14.X + 24 i②) 3x1+14x+8 =�
、3
‘’
c---―’国匹)
i
ふ土)」』竺直(3x+2) 3 3 3 x3④:-―
---j:
2 : '―---_----�-=:(X+4)(X+-)x3 =i(X+4)(3.r+2)i⑤ , '---' 3, ’ー一---'
3.
、
:=X. 3y=Y「タネあかし その1 」で使った以下のスライドを 見せて,「ここでは(x,y)の座標の値と(X,Y)の座 標の値だと考えよう。 」と説明する。
3x2 +14x+8以降の等式どうしの関係を順に説明 した上で, 「つまり。 ①式から⑤式は,3x=X, 3y=Yという関係を用いると,このように等号で
つな ぐことができる。 」と説明する。 さらに, 「こ のスライドで, 点線で囲まれた部分に①から⑤の 番号をつけて, X とXを区別せずにXだけで書き 並べてみると,このようになる。 」と説明して以下 のスライドを示す:
CD Jx2 + 14x+8
② . ..-'+14...-+24 (;;;(x+ 12)(.Y+ 2)
④(x+4)(x+ ;:-) 2 3
⑤(x +4)(3x+ 2)
I: = 3,\·’+ 14.\· + 8, } =.9· : •I i •IX •I• 24
I’ l’ :....L_ : I 25 ; 05 2 4� (, 144 3 77 9) 23 1
3x=X. 3,v=Y
3x=X,3y=Yという関係があるので,(x,y)「
の座標と(X,Y)の座標は, 以下の図のような対応 を考えるとおもしろい。つまり,原点から(x,y)ま での距離と原点から(X,Y)までの距離が,1 :3の 比になっている。 」と説明する。
.、.▲ x : + t•ix.i- 24
8 t x 4
ふ',. x, 3
n" ー
1fl学習活動4. 「タネあかし その2 」
「こんどは, グラフを使ってちょっとちがった説 明をしよう。 」と言って,2つの多項式(①式と② 式に対応) を以下の様に二次関数として表す:
グラフをかくと
y =Jr'+ l4x+8 Y =.\'! i• 1 4 X ·i 24
この類の二次関数は未習の話である点を ことわっ た上で,「グラフを描くと以下のようになる。 ただ し,(x,y)と(X,Y)の座標が同じ 平面上に描かれ ている。 」と説明する。
さらに, 学習活動2で用いた 6x2+Sx-4 の場 合で, 同じように二次関数として, それぞれを
y= 6x汀5x-4 Y=X豆5X-24
と表しておく。 この場合は,「 6x=X, 6y=Yと いう関係があるので, 原点から(x,y)までの距離 と原点から(X,Y)までの距離が,1 :6の比になっ ている。 」と説明する。
x 4 `”
ー: , r,
ー
I ーー‘、/)
>
\ \ 、 ヽ
\ \
ー\
4 x -r.
4・ ,' ‘, 0,'’
ベ
‘9● h●,‘. ー
9/•�
6 x •――、
‘、'‘”‘、‘’
' ‘, ‘,
\ 4 r-
x
u�• �. \9 .
• I
`『·L
ー
さらに, 「タネあかし その1 」での説明の形にな っているスライドを示し, その中の①式や②式が二次関数のグラフ上でどのように対応するかを以 下のように簡単に図示する:
0) ---―'
6x'+5x-4 � : x2 +5X-24匹‘;
③ :―----9 6 (X+8)(X-3)
•• 一---- --- = : (6x+8) (6x-J) x6
� . 6 6 6
(4), ‘-”, - - - -- - - - -- `4 1','―-- - ---- - -- - - -
(5
-�, ' 〉=!(x+�Xx--)ト6 ⇒(3x+4)(2x-l) !
�---3----_24 L--- --4
6x=X, · 6y=Y
-9
\:、.、三喜;=,
6x2i-5x •- 4②x五5X-24=()の解 ①6:<+5x-4cc0の解 y0X2+5X-2v
最後に以下のようにまとめる:
まとめ
・「あっさりと」解(方法は.意外とマジメな方法 だった
激式で説明しても.グうノで説明して辺追構味 わいがあった
·I注意)係数が無甥数の場合でも大丈夫
( 以上が授業の内容である。 )
4.教材としての注意点
元々高校生用の話題だったものを中学 生用に再 構成したのだから, 授業実践では以下のような配 慮が必要である:
・中学 生が未習の 「f(x)」という表記や 「解と係 数の関係」という話題は使用しない。 (第2節後半 部に述べたカラクリの解説は中学 生向けの記 述で はないことに注意。 )
一般的 に成 り立つ こ と を 示 す には ,
「ax2+bx+c」 という数式表現も必要であるが,
そのためには第2節で述べたような高校レベルの 説 明 が 必 要 と な る 。 し た が っ て ,今 回 は
「3 x2+ 14x+8」 のように係数が具体的な整数値 の場合のみの”解説’'とする。 さらに,第2節で紹
介した 「例2 6x
→
5x-3 の因数分解」 では, 途 中の因数分解の形が-5+
而
-5一面
③ (X -�)(X -2 2
)
となってしまい,今回の 「奇妙な因数分解」 とい う話題の”おもしろさ”が半減すると思われるので,このような事例も授業では使用しない。
・学習活動では, 「タネあかし その1」 と 「タネ あかし その2」の場面があり,それぞれ数式変形 での説明と二次関数のグラフを使用した説明をお こなっている。 しかし, これは証明方法が2通り あるという意味ではない。 同じ主旨の内容を数式 のみで表現したか関数のグラフとして表現したか の差異にすぎない。
・「タネあかし その2」 の場面では, 中学レベル で未習の二次関数y =3 x2+ 14x+8を用いている。
明らかに”中学校 の範囲外’'であるが,今回は, 2 つの放物線どうしの位置関係を視覚的に把握する ことは中学 生にとってそれほど困難でもないと判 断して, 授業で使用することにする。
( 「タネあかし その1」 での 3 x2+ 14x+8は,ニ 次関数ではなく多項式として使用されていること
に注意。 )
5考察
学習活動1では,生徒たちは3つの 多項式の因 数 分 解 を たやすく解く こ と が で き た 。 続く 3 x旦14x+8の因数分解が未習であることについ ては, 高校 1年生の教科書の該当ページを提示す ることで確認できた。さらに,「高校 へ行っても習 わない方法を紹介します。」と告げたので,関心を もたせることにはなったと思われる。 なお,
3 x五 14x+8= (x+4)(3 x+2)
と因数分解されるという結果を事前に知らせた形 になったが, 「逆に (x+4)(3 x+2)を展開すれば元 の式が得られるので,正しいことの確認が可能で ある」 と説明することで生徒たちには納得しても
らった。
学習活動2では,’'奇妙な’'因数分解を見せられ た生徒たちは一様に不思議な表情をしていた。 特 に 「3を取り去って8に3をかける」という説明 に対しては, 軽いどよめきのような声も聞かれた。
続く学習活動3へのスムーズな接続になったとい える。
学習活動3と4では, 上述のようにスライドを 使って平井からの説明が続いたので, 生徒たちの 細かい反応や理解については授業時間内は不明で あったが, 授業後の生徒からのコメントをいくつ か紹介してみたい。(文章は一部省略箇所あり。
( ) 内は平井が追加した文言である。)
まず, よく理解できていると思われる生徒のコ メントとしては, 以下のようなものがあった。
・ 「解き方よりもそこに至る過程が大切だ。( タネ あかしその1では) 解の公式と同じように考え て理解した。( タネあかしその2では) グラフ 上に表した時の距離の比という観点が思いつ かなく納得するのに時間がかったが理解でき た。」
・ 「数式と相似比の関係性が特におもしろかった。
ある意味数学を味わう ことができた。」
・「( タネあかしその2で) 二つのグラフが原点か らの相似拡大だと知ったときには驚いた。」
・「理由がわかったときは本当に驚きました。グラ フでの説明を見たときはさらに驚きました。」
・ 「意味不明な計算だと思っていたが,ちゃんと意 味があっておもしろかった。グラフも1: 3, 1 : 6になるという関係がありおもしろかった。」
・「一見, 筋が通ってなさそうなのに, 実は相似の 関係があると知って, 数学のおもしろさは この ようなことなんだろうと思った。」
•「XをX,yをYにおきかえて変形させる ことで 求める ことができることに驚いた。」
・ 「解き方を見たとき, めちゃくちゃなことをして いるなと思ったが,2通りの解説を聞いて納得 した。」
・「こんなおもしろい方法があったのかと驚きまし
た。 計算とグラフをいっしょに用いると説明が わかりやすくなる ことも新しい発見でした。」
上記のような感想は多数あったので, 生徒たち は少なくとも珍しさとか不思議な印象を受けたこ とは確かであろう。
次に, 内容の理解度はともかく,「いろいろな解 き方がある」 ことを評価したコメントとしては,
・「( タネあかしが2通りあったことについて) 複 数のやり方を知っていると便利だ。」
・「今日のお話しは 「多角的にものごとを見る」に つながる話だった。」
あたかも 「解法が2通りある」かのように生徒 に印象づけてしまったのは, 授業をした筆者の不 注意であった。
最後に, このようなコメントとは別に, 以下の ような興味を引くコメントもあった:
・ 「最初3x2+14x+8を間違えて二次方程式として 解いてしまったのですが, その解がx=--4,—ーで,2 3
④の(x+4)(x+-
2
)と何か関係がありそうですが 3どうなのでしょうか。」
普通, 中学校の教科書では, 二次方程式を解く 際に因数分解を使う簡単な事例は書かれているが,
因数分解の単元の学習時には二次方程式の解の公 式は未習なので, この生徒には 「二次方程式の解 の公式を使うことで, 二次多項式の因数分解に役 立つ情報が得られる」という認識がまだない(お よび経験もない) のであろう。
6. まとめと今後の課題
今回の授業は, 因数分解について既に学習済み の生徒たちが, 未習で少し複雑な形の因数分解に ついて,風変わりな方法を学習するものであった。
授業実践を通して, この教材自体が持っている 珍しさや不思議さは生徒たちに十分伝わったこと は生徒からのコメントによっても明らかであろう。
さらに, 生徒の中では, 因数分解が単なる「道具」
のようなイメージで固定しつつあったのが, 分析
対象という新たなイメージを与えたかもしれない。
今後の課題としては,
・ グラフ表示をすることで教材がもつ性質を説明 しやすくなるのは明白であるが, 別の解法とい う印象を与えないような説明の仕方が必要であ ること,、
•生徒の活動や発見ができるようなチャンスを具 体的に用意するように授業 内容を改善すること。
などである。
参考文献