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自分の思いを伝える喜びを感じて

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Academic year: 2021

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自分の思いを伝える喜びを感じて

−6年2組『6の2ワールドミュージックフェスティバル』の実践から−

高 橋 麻里子

1.教材に込めるもの

初めて「風になりたい」という曲を聴いた子どもたちは、サンバという耳慣れない他の国の音楽に 対して興味を示し「おもしろそうだな」「楽しいリズムだね」と、すぐに演奏してみたいという意欲 を見せた。このような新しい音楽と出会った時にそのよ′さを自然に感じられる姿から、′6年2組の子

どもたちが、今までに出会ったことのないリズムや音楽を求める気持ちにあふれていることを感じた。

グループ合奏が始まると、子どもたちは、きらきらと輝く明るい日差しの様子を表す音を加えたり、

人々が陽気に踊っている感じを思い浮かべ.ながら、躍動感あるリズムを太鼓でたたいたりして、それ ぞれがサンバを演奏している国や人々の様子を思い描き、活動していた。子どもたちが、音楽を聴い て自由に思い描いたことを、音で表していくことの楽しさや魅力を兄いだしているのだと私は感じた。

このように、サンバから多様にイメージをふくらめて音づくりしていく子どもたちだからこそ、もっ と幅広くイメージを思い浮かべることができるように、音づくりの舞台を世界へと広げていきたいと 考えた。きっとこの子どもたちなら、自由に発想を広げ、思い浮かべた興味のある国の雰囲気や様子 を、自分たちなりの音で表していくだろう。音楽専科という立場の私ではあるが、子どもたちと一緒

にその昔づくりを楽しみながら、子どもたちの音づくりへの思いをとらえていきたいと思った。

本教材は、子どもたちが自分の興味のある国のイメージをもとにして音づくりをする活動である。

ワールドミュージックをつくろうと投げかけると、子どもたちは、自分の興味のある国へと思いを馳 せ、「どこの国のどんな様子を音で表していこうかな」と自由に思いをめぐらせる。その中で自分の 自由な発想が発揮できると感じるだろう。そして、自分の思いを生かしてその国らしいリズムをっくっ たり、その国に行くと聴こえてきそうな旋律をつくったりして、音で表現することを楽しんでいく。

そうする中で、その国の代表的な音楽を実際に聴いたり、その国独特の雰囲気を表せる楽器を探した りするだろう。そして、今までに出会ったことのない新しい音楽を発見した喜びやその国独特の音楽

?よさを味わっていくことができるのである。また、よりよい表現にしていこうと友達と共に活動し ていく中で、友達と意見を出し合ったり、お互いのつくった音を聴き合ったりして、自分の表現巷見 つめ直しながら、共に試行錯誤して音づくりしていく楽しさを味わっていくことが期待できる。この 昔づくりの過程を楽しむこと自体が、あたかも世界を旅しているかのように、音で国際色を味わう楽

しいフェスティバルなのだと考える。子どもたちが、自分の思いを音で表現していく楽しさを味わい ながら、自分が納得のいく音楽を表現していくことを願うた。

2.N子さんのとらえと願い

学級歌づくりの話し合いの中で、よりよいものにしたいという思いのもとに、真剣に歌詞や曲のイ メージを考えているN子さんの姿に出会った。私は、その自分が納得のいくまで取り組んでいこう とする彼女の姿に魅力を感じ、それが彼女のよさだと伝えた。その後、彼女から一通の手紙をもらっ た。その手紙には、「私は音楽については不器用でセンスないと思うことがよくある。自分は周りの 子よりも前にでたいというわけではないけど、この学級歌は最高のものにしたい。なんか先生の言葉 で自分にもパワーがついてきてますます意欲がわいてきたよ」と書いてあった。彼女が音楽活動の中 で、少しずっ自分を出していこうとしていることを感じ、私はそんな彼女を支えていきたいと患った。

その後の音づくりの中でも、自分が納得のいく音楽を求めて、自分の意見を友達に伝えていこうと する彼女の姿があった。一方的に自分の意見を通そうとするのではなく、彼女は友達の思いも考えな がら、言葉を選んで自分の意見を伝えていた。そこに、友達の思いも尊重していこうとする彼女らし さを感じた。そんな彼女は、自分の意見が友達にうまく伝わらず困っていることもあったが、自分の

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思いを伝えることで、よりよい音楽にしていこうと前向きに動き出した彼女の姿をうれしく思った。

その時のN子さんの音楽ノートには、「今まで自分たちが考える音楽づくりをしてきて、友達と自 分が納得するまで考えてきたのがとても楽しかった」と書かれていた。短い文章ではあるが、彼女が 音づくりを介して思いを出し合ってつくりあげていく楽しさと自分の思いも伝えていくことの大切さ に気づくことができたということが伝わってくる。

本教材に出会うと、彼女は、興味のある国のこ とを自由に発想して、自分の音づくりのイメージ をもつだろう。そして、ためらいなく思いを語れ る友達とグループを組んで音づくりを進めていく に違いない。友達と考え合う中で、イメージが明 確になり、より自分のイメージに合った音で表そ うと夢中になっていく。その中では、友達との思 いの違いを感じることもあるだろう。彼女は、自 分の思いを伝えられるか悩むかもしれない。そん

な時には、彼女が自信をもって自分の思いを伝え        <昔づくりの様子>

ていけるように支えていきたい。音づくりに少しずつ自信を深めてきている彼女だからこそ、自分の 思いが音づくりに生かされるように積極的に友達に働きかけ、納得のいくまで音づくりしていってほ しい。このように、友達と思いを出し合い、納得のいくまで音づくりに取り組む中で、自分の思いを 発拝して音づくりしていく楽しさを味わっていってほしいと願った。

3.「フィンランドの一日」を音で表したい

世界の国についてみんなで話し合う中で、彼女はフィンランドに興味を示し、同じ国に興味を示し た仲良しの友達5人とグループを組んだ。友達の持ってきた旅行パンフレットやビデオを見ながら、

彼女は、オーロラの輝きや雪の夜といったフィンランドの静かな神秘的な雰囲気に魅力を感じていた。

それから、キーボードやいろいろな楽器で音を試しながら、神秘的な感じを出す音を探していた。そ んな中で、彼女は、自分の音づくりのイメージを固めてきているようだった。

そのように自分の音づくりへの思いを強めてきている彼女が、音づくりのテーマについて話し合う 中で、「物語風にしたい。最初は澄んだ空から始まって、途中に降る雪とか牧場のトナカイの様子と か入れて、最後は夜のオーロラカ亨見えたって感じにフィンランドの一日みたいな流れのある音楽にし たい」という自分の考えを友達に伝えた。私は、自分の考えたイメージを伝えていく彼女の姿をうれ

しく思うとともに、その考えを自分の力で実現していってほしいと思った。

彼女たちは、一日を表すために、朝、昼、夜という3つのイメージに分けて考え始めた。朝と夜の 音楽は、ウィンドチャイム、鈴、トライアングル、キーボード、グラスハープの音を微妙な問をとっ て重ねている演奏であった。聴いている人をも神秘的な雰囲気に包み込むような音楽に、彼女たちは 満足しているようだった。次に、昼の音楽をっくり始めた。彼女は、朝から昼への雰囲気の変わり目 がはっきりわかるように、昼の音楽を明るく楽しい感じにしようと考えていた。

T 難しいって言ってた昼はどうするの?

C(D子)昼はこのラッパ。トナカイのおじさんのところで使う。

C もっと他の音もないかな?こんな音でこんな風にしたらトナカイの足音みたいじゃない?

彼女は、トナカイの走っている様子を表す音をキーボードで試していた。具体的な音を示す中で、

彼女の表したいものが明確になってきていることを感じた。また、自分で考えた昔を示しながら意見 を友達に伝えていく彼女の姿から、彼女の表現への気持ちの高まりも感じた。

次の時間、彼女たちは、中間発表を行った。朝の部分だけ発表するつもりだったが、友達からリク ェストされ、朝と昼を発表した。昼の部分で彼女は、右手でトナカイの走っている様子を表す音をキー ボードで弾き、それに左手に持った竹製の民族楽器の音を上手に合わせて演奏していた。N子さん

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たちの演奏は、最後がだんだんゆっくりになり、次の夜の音楽につながるような余韻を感じることが できた。聴いていた友達からも、N子さんのキーボードの音がおもしろくてよかったという感想が 述べられ、彼女はうれしそうに笑っていた。その満足した彼女の様子から、自分でイメージに合った 音を見っけたことに彼女自身が自信を深めていることがうかがえた。自分の考えが音づくりに反映さ れることがますます彼女を意欲的にさせているようだった。自分の思いを友達に伝えて音づくりして いく楽しさも味わいながら、さらに自分たちの音楽をよくしていきたいという思いを強めている彼女 を感じた。

4.昼の音楽を変えていきたい

中間発表後、彼女たちは、友達からのアドバイスや他のグループの演奏を聴き、自分たちも昼の音 楽をもっと工夫していきたいという気持ちを表した。そして、彼女たちは、昼の部分に明るい雰囲気 の旋律をつけて変えていこうと、話し合った。そんな中、G子さんがN子さんのキーボードの音を やめようと提案した。N子さんのトナカイの走っている様子を表すキーボードの音は、旋律にはな らないと考えたからである。N子さんは、その友達の提案を笑顔で聞いていたが、決して首を縦に は振らなかった。そんな彼女の姿から、自分で思いを込めて見っけてきた音だから生かしたいのだと 私は考え、彼女がその昔を生かすことができるように、音の組み合わせ方によって旋律がつくれるこ とを彼女に伝えた。しかし、彼女は、音の組み合わせを変えて旋律をつくることを一度は試すが、納 得がいかない表情で、すぐにやめてしまった。

その後、グループの友達からジング/レベルのような既存の旋律を使って音づくりしていこうという 意見が出された。友達思いの彼女は、あからさまには反対しなかったが、その意見にも同意しかねる 様子だった。いっもの笑顔を見せずに何かを考え込んでいるような彼女の様子から、彼女には自分の やりたいことがあったのだが、それをなかなか言葉で言い表せずにいるように感じた。今まで順調に 音づくりに取り組んできた彼女が、そこまで納得できない表情を見せている裏には、きっと何か彼女 なりの思いがあるに違いない。私は、彼女が何を考えているのか知ろうと、まずは、彼女たちの様子 を見守ることにした。

C(G子)メロディーを入れようと話し合ってるんだけど、今までつくってきたものを壊して しまうという意見もあって……。

C(D子)飽きないようなみんなが知ってる曲をアレンジしてもいいと思うよ。

C 確かにメロディーも入れたいし変えたいとは思うけど、なんかコロッと変わっちゃうのはど うかな? 最後のオーロラを強調する曲にしたいし、性格みたいのは変えたくないっていう

か‥…・。

この言葉から、彼女には自分が納得のいくような音楽をつくりたいという強い思いがあることを私 は感じた。彼女は、既存の旋律を加えると、今までつくってきた朝や夜の神秘的な雰囲気と変わって しまうから、一連に流れている音楽の奏囲気のようなものは変えずに、昼の部分に自分たち独自の明 るい感じの旋律を入れていきたいと考えていたのだろう。彼女は最初から思い描いていたフィンラン ドの神秘的な雰囲気を表す音楽をつくりたいという思いは譲ることができず、友達の提案を受け入れ られなかった。しかしその一方では、友達と考えを出し合いながら音づくりを進めたいという思いも あり、彼女は揺れていた。何とかして自分の考えていることを友達に伝えようと言葉を言いかけるが、

うまく説明できず、戸惑っていた。その時彼女は、自分がつくりたい音楽をどう表したらいいのか考 えていたのだろう。私は、彼女の思いを受けとめて支えたいと患っていたが、彼女が求めている音楽 は具体的にどんなものなのかつかめず、どう声をかけていいのかわからなくなってしまった。そして、

彼女が新たに動き出すためにはどうしたらいいのか考えていった。彼女は、自分の思いをどのように 音で表していけばいいのかという明確な昔のイメージが見えていないのだろう。私は、彼女の求めて いる音楽が具体的にどういうものなのか知りたいと思い、彼女にいくつかの音楽を提示してみようと 考えた。

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5.この音楽がいい!

次の時間、私は、彼女たちの音づくりに参考になりそうな曲を何曲か準備して、彼女たちがどのよ うに活動を進めていくか見守ることにした。彼女たちのグループは、前の時間に意見がまとまらなかっ たことから、いっものように声をかけ合うこともなく、重苦しい雰囲.気であった。友達と共に納得の いく昔づくりをしたいと考えていた彼女にとって厳しい沈黙の時間が流れた0友達と思いが離れたま までは音づくりはできないと患いながらも、具体的なアイデアを思いっかない彼女はこうしていこう と友達に声をかけることもできないでいた0それでも楽器を準備して音を出している彼女の姿から、

何とか具体的な音のアイデアを見っけたいという思いを感じ、彼女に曲を聴くことをもちかけたq曲 を聴くことで、彼女が音づくりのアイデアとして生かせるものを見つけ、そこから納得のいく音づく りへの活路を兄いだせるのではないかと考えたからである0音楽を聴いていくうちに、自然と彼女の 周りには友達が集まってきた。そして、演奏している楽器について話したり、聴いた曲の中で参考に なりそうな曲の感じについて意見を交換したりして、しだいにいっもの和やかな雰囲気が戻ってきた0 何曲も聴き比べているN子さんが、ある一曲を聴いた時、「この音楽はなんか町の人たちが明るく 踊っているみたいな感じだね」と目を輝かせて言った0一緒に聴いていた友達もまた、彼女と同じよ ぅにそのよさを感じたのだろう。旋律を口ずさみながら身体を動かし始めた。彼女が示した曲を聴き ながらグループの友達も彼女の求めていた音楽を感じとることができたのだろう。彼女は、言葉では なく音楽を示すことで自分の思いを友達に伝えることができたのである0私は、彼女が自分なりの思 いの伝え方を見つけたことをうれしく思った。彼女たち

は、今まで話し合いの中で言葉では言い表せなかったっ くりたい音楽のイメージを明確にし、思いを一つにして 再び音づくりを始めた。そして、試行錯誤を繰り返しな がら、自分たちが納得できる独自の音楽をつくりあげた。

発表会では、N子さんは、笑顔で演奏をしていた0 その明るくやる気に満ちている表情から、自分の思いを 伝えながら音づくりができたことに満足していることが うかがえた。彼女は、友達との厳しい時間の中で、こん なにしてまで思いを貫いていこうとする自分自身と向き

合っていた。その中で彼女は、自分の納得のいく音楽を   <発表会でのN子さんたち>

っくりたいという強い思いを改めて見っめていたのだろう0自分の思いの強さを感じたからこそ、友 達に何とかして自分の思いを伝えようとしていくことができたのだ0彼女にと_つて、自分の思いを貫 いて納得のいく音楽をつくり上げたことは、何より大きな喜びとなったことだろう0このことは、きっ と彼女の音づくりの楽しさを広げていくことにもつながっていくと考える0

6.追究を終えて

追究の中で私は、彼女の言葉を頼りに彼女をとらえようとしていたため、なかなか彼女のつくりた い音楽がどういうものなのかつかめなかった○つくりたいものが音楽であるがゆえに、表したい音楽 を言葉で表すことや言葉から音楽のイメージを感じとることの難しさを感じ、行き詰まっていた0私 はどうしたらいいのかと考え、彼女に何曲かの曲を提示した0すると、彼女は、自分の表したかった 音楽のイメージを明確にしただけではなく、曲を示すことで自分の思いを伝えていったのである。彼 女の姿から、私は、この関わりが彼女にとっては、大きな支えになったことを感じた0

その子の今をとらえ、その子の取り組みを見っめていくと、その子を支えるのは、言葉をかけてア ドバイスすることだけではなく、さまざまなのだということを改めて考えさせられた0だからこそ、

子どもの表れやそこに込められている思いにも心を寄せ、子どもが今何を感じ見つめているのか、何 にこだわっているのかと、より深く子どもをとらえ続けていくことが大切なのだと実感した0これか

らも、その子らしい取り組みを支える関わりについて、自分なりにもっと考えていきたいと思う0

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