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インドの五ヶ年計画と外国経済援助

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43

インドの五ヶ年計画と外国経済援助

河  本  博  介

   目   次

一 5ケ年計画の年次目標と開発資金 二 国際機構による多角的援助 三 インドに対する多角的援助の概況 四 むすび

1.

 1961年4月よりインドは意欲的な第3次5ケ年計画の実施に踏みだしたが,それにさき だって第1次5ケ年計画の出発は1951年にさかのぼる。インドの5ケ年計画は5次に及ぶ 長期経済開発計画であるが,現在までのところ,年次計画の目標とするところは若干その 重点が異っている。 (拙稿,経済開発計画と資金調達一インドにおける場合,東南アジア研究年報 第3集)

 第1次5ケ年計画の主たる目標は,農業を申心とする生産力の拡充のための灌概,ダム の建設及び発電力の開発に向けられた。経済開発は独立インドの重要な国家的要請で,イ

ンド経済が農業に傾斜した敲行的産業構造を示し,軽工業は棉花,ジュートなど伝統的な 織物工業を主とする状態であったことから.経済水準の引上げ,且つ当面の食糧不足を克 服してゆくためには何よりも食糧の自給化が望まれたことは当然で,農業生産力の増強に 開発計画の主たる目標がおかれたものである。

 1956年3月,第1次5ケ年計画は目標を上廻って達成され,政府はこのあと20ケ年にわ たる長期工業化計画をたて,鉱工業に重点をおく長期構想をたてることになった。経済開 発計画は第2次5ケ年計画によって本格的段階を迎えることになった。農業部門への投資 増加と同時に基幹産業と公共部門への投資計画がたてられ,その投資規模も第1次5ケ年 計画のそれの2倍以上に引きあげられた。

 第2次5ケ年計画の目標とするところは,工業化をおしすすめ,インド国民経済の近代

化にあった。第1次5ケ年計画が農業生産力の増強に重点がおかれたに対し,第2次5ケ

年計画では鉄鋼をはじめとする鉱工業部門と運輸部門との成長に主たる目標がおかれ,投

資計画の60パーセントをこれに配分しようとするものであった。その投資規模は第1次5

(2)

は675億ルピー(142億ドル)に増大した。この間曲1次5ケ年計画の過程で,純国民生産 は163億ルピーの増加を示し,一人当り国民所得は246ルピー(52ドル)から274ルピー(57 ドル)に上昇した。第2次5ケ年計画では,当初純国民生産の増加を286億ルピー見込み,

4.5パーセントの経済成長率を実現せんとしたが実際には186億ルピーの増加にとどまり,

第1次5ケ年計画の実績をやや上廻る程度であった。一人当りの国民所得も274ルピー,

(57ドル)から299ルピー(63ドル)へ上昇したにとどまり,人口増加の圧迫もあってそ の伸びは十分ではなかった。

 第3次5ケ年計画の構想はかなり早くからねられていたが,その最終案は1961年8月に 決定された。フ。ランニングが早かったにもかかわらずその最終的計画の確定が遅れたのは,

第2次5ケ年計画の実績を評価したうえで必要な計画の修正をなさんとした意図と,外国 援助の見通しが判明しなかったことによると考えられる。

 第3次5ケ年計画は前の1次,2次の5ケ年計画の継続であると同時に,次にくる4次,

5次の計画と有機的な関連をもつ。第5次5ケ年計画中に自立的な成長を達成せんとする のであるが,第3次5ケ年計画の目標とするところは次のようである。

 (1)年間5パーセントの経済成長率を見こむ。

 (2)食糧の自給化を達成し,工業及び輸出の要求に対応しうる如くに農業生産の増加を   はかる。

 (3)鉄鋼,燃料,電力の如き基幹産業を拡大し,機械製造能力を確保し,国内資源の利   用による工業化の達成。

 (4)国内の人的資源を十分に利用し,雇用機会の拡大をはかる。

 (5)古血所得と富の不平等の格差を縮少し,経済力における分配の均等化をはかる。

 第3次5ケ年計画で食糧の自給化を達成し,工業及び輸出の要請に応じうる如く,農業 重視の方向を再びかかげたζとは,第2次5ケ年計画初期の食糧不足の苦い経験からであ る。その投資規模は209億ドルと第2次5ケ年計画の142億ドルを大きく引離している。且 つ一人当りの国民所得も年74ドルに引きあげようとするものである。

2.

 東南アジア諸国の経済開発計画における開発資金については国内貯蓄と外国からの資金 導入によって調達している。ζの点はインドにおける場合も同様である。その資金計画は 対内的には増税,国内借入すなわち公債公募,小額貯蓄,各種基金によるものに依存して いる。増税及び国内借入による資金調達で政府の計画投資をまかなうことをえなければ,

結局中央銀行の国債引受或いは政府貸付金の形式による赤字財政に依存せざるをえない現 状である。 (拙稿前掲論文)

 第3次5ケ年計画における政府の資金調達計画は次の如くである。

(3)

・fンドの5ケ年計画と外国経済援助 45

経常歳入剰余 政府事業剰余

   鉄道からの繰入金    その他(註1)

国 内 借 入

   公

   小 額 貯    各 種 i基 増     税

外 国援助

赤字財政

債 蓄 金

合 計

55 55

194

1了1

220 55

10 45

80 60 54

750(註2)

(註1) 政府事業i剰余のその他は鉄鋼,肥     料を含む。

(註2) Third Five Year Plan, a Draft     Outlineでは,はじめ合計725億     ルビ門であったが,1962年6月資     金計画に修正があって25億ルピー     の増加となった。

単位億ルピー・

 この資金計画から明らかなことは外国援助に対する依存の大きいことである。農業生産 力の増強に主たる目標をおいた第1次5ケ年計画が天候に恵まれて順調な実績をあげえた にもかかわらず.第2次5ケ年計画は凶作,これに基づくインフレ及び食糧輸入需要の増 大,従って外貨準備の減少,さらに重点をおいた重工業部門の建設の遅延と種々の困難に 遭遇することになった。天候不良による農作物の不作は,インド農業の抵抗力の弱さをあ らわすものであるが,そのための食糧輸入の激増は資本財輸入の増加と相まって甚だしい 外貨の流出を惹起し,途中で計画の修正を余儀なくされ,所期の実績をあげることができ なかった。

 第2次5ケ年計画ではうえの外貨危機を招来するにおよんで第2年度のなかば頃から積 極的に外国援助を要請するに至った。第3次5ケ年計画でも政府の資金計画では一応220 億ルピーがあてられているが,外国援助の資金計画における比率は年次計画毎に上昇し,

第2次計画では24パーセント,第3次計画では29パーセントとさらに高くなっている。こ の点でインドの第2次5ケ年計画にしても第3次のそれにしても,他力本願的な色彩のき わめて強いものであることはこれを否定できない。いわば開発計画のための必要資金とし て民間外資,借款などで補充しなければ計画自体の遂行が困難な状況である。

 外国資金は計画の遂行に必要な国内貯蓄の不足を補なうとともに,必要な開発資材を輸

入するためのものである。外国資金のうち民間外資は10パーセントに満たず,大部分がい

わゆる援助であるが,インドでは供与国別に見て,アメリカの余剰農産物援助を除き,19

51〜61年間の10ケ年間の援助額は45億ドルにのぼる。このうち世界銀行など国際機関によ

るものが882百万ドル,19。6パーセントを占めるに対し,アメリカ,ソ連などによる2国

間援助が3,620百万ドル,80.4パーセントにおよんでいる,全体のうちアメリカの援助が

(4)

最も大きく30.8パーセント,ついでソ連が17.9パーセントと第3位の西ドイツ以下を大き く引離している。供与国別に見たインドに対する外国援助は下表の如くである。(日銀調査 局,調査月報38年1月,:東南アの開発資金調達方法と若干の改善策)これを見てもインドの5ケ年 計画が東西援助競争の舞台となった観がある。

インドの供与者別外国援助

供  与  者 世 界 銀 行 第 2 世 銀 国連特別基金

(国際機関計)

ア ソ

西

カ 日

メ  リ

ド イ ギ  リ ナ

ス ダ 本

援助額

 784.6  88.5  9.3

(882.4)

1,385.8  808.7  423.7  385.5  248.5  138.1

比  率   % 17.4

2.0 0.2

(19.6)

30.8 17.9  9.4  8.6  5.5  3.1

供  与  者

チ  エ  ッ  コ イ  タ  リ 一

二L   F噌   コ    F一

オFストラリア

ポ 一 ラ ン ド ス   イ   ス ニユージρランド ノ F ルウェ伊

(2国間援助計)

合      計

援助額

 48.5  45.0  40.0  30.1  30.0  22.9   7.2   6.7

(3,620.7)

4,503.1

比  率   %

 1.4  1.0  0.9  0.7  0.7  0.5  0.1  0.1

(80.4)

100.0 単位100万ドル Government of lndia, External Assistance,1961.

 低開発国の開発援助の国際機構としては,世界銀行(lnternational Bank of Reconstruc 4ion and Development, I B R D),国際開発協会(Intemational Development Association, IDA),国際金融公社(International:Finance Corporation, IFC),

米州開発銀行(Inte卜American Development昼ank, IDB),国際連合の技術援助機

関などがある。

 ζれら諸機関は,その活動の対象分野,資金援助の条件,或いは資金の拠出方法など相 異があるが,これらは2国間の双務的援助と異なって,国際機構を通ずる多角的援助であ

『る。

 世界銀行は国際機構を通ずる資金供与のうちで最も大きな比重を占め,その総額の60パ ーセントを占めている。その融資は当初は先進工業国に対するものが多かったが,近年は 低開発国向けが圧倒的に大きくなっている。

 その融資対象は,電源開発,道路,港湾など運輸部門が全体の70パーセントを占め,つ いで一般産業部門及び灌概など農業部門となっている。融資条件は15〜25年の返済期間で,

金利は5〜6パーセント,硬貨返済であるQ

(5)

インドの5ケ年計画と外国経済援助 47  その資金調達は,払込資本金,世銀債発行による借入金及び保有貸付債権の売却によっ

てまかなわれている。

 国際開発協会は1960年に発足した機関である。その融資対象は,道路,港湾,灌概,電 源開発などが中心で,世界銀行の融資分野と重複している部分が多いが,低開発国の国際 収支上の負担をできる限り軽減させるために,世界銀行がハード・ロr一ンであるに対し,

これは大幅に融資条件を緩和し,ソフト・ローンである。融資条件は,返済期間50年(10 年の据置期間を含む),無利子(0.75パーセントの手数料)という如き寛大な融資を行な

っている◎

 国際開発協会の資金は,ソフド・ローンの立前からも世界銀行の如く国際金融市場から の借入れに依存することは事実上困難であり,従って加盟国の出資によっている。加盟国 は第1部国(工業国)と第2部国(非工業国)とにわかれ,出資は第1部国は全額,金ま たは交換性保有通貨で行なわれ,第2部国は10パーセントは前記のもので,残り90パーセン

トは自国通貨で払込むことを認められている。従ってこの部分は融資の財源にあてること を得ず,結局第1部国の出資及び第2部国の出資の10パーセントに限定されることになる。

1962年6月末における出資額は次のようになっており,同期でそρ)42パーセントが払込ま れているが,残りも1964年11月までに払込まれることになっている。 (通産省,経済協力の

現状と問題点,PP.253−4,)

第1:部(工業i国)

オーストラリア オースト リア カ  ナ  』ダ

デンマ停 ク フインランド

フ  ラ  ン  ス

西 ド イ ツ イ タ リ F 日     本

(註1)

20.18 5.04 37.83 8.74 3.83 52.96 52.96 48.16 33.59

ナ ラ シ ダ ノドルウェド 南アフリカ共和国 スウェーデン イ ギ リ ス

ア  メ  リ カ

27.74  6.72 10.09 10.09 131.14 320.29

第.1部国 計739.36・

第2部国(非工業国)計 177.80      (註2)

総 計 917.16

     lDA, Annual Report       単位100万ドル   (註1) ベルギr(22.70),ルクセンブルグq.01)が宋応募である。

  (註2) 第2部国はアルゼンチン,ゾラジル,中華民国,インド,インドネシア,メキシコ,パ      キスタン,フィリッピン,スペイン,トルコ,アラブ連合,ヴエネズエうその他39ぴ国で      ある。

 国際金融公社は,低開発国の民間企業に対し融資を行なわんとするもので,1955年の設 立になる。融資条件は,返済期問ね年,金利6〜7パーセントが主である。

 これら機関による融資額を見ると次のとおりである。(通産省,−前掲書,1962, p.40.)

(6)

世  界  銀  行

国際開発協会

国際 金 融 公 社

援 助 実 行  額

1960 1961

341.0

13.0

320.7  0.5  7.9

援助供与約束額 1960 1961

568.6

14.6

568.3 183.6 12.6

単位100万ドル  経済援助には,資本援助と技術援助とがある。国際連合は,技術援助国及び各種の専門 機関によって,低開発国に対する技術援助を行ない,また国連救済機関を通じて救済援助 を行なっている。この資金は共産圏諸国をも含めて,加盟国の自発的拠出によってまかな われている。

 国連の技術援助には通常技術援助計画,拡大技術援助計画,国連特別基金の3つの計画 が含まれている。その資金の拠出状況は次の如くである。 (通産省,前掲書,1962,P.260.2

65.)

ア メ リ カ イ ギ リ ス 西 ドイ ツ スウェーデン

.カ  ナ  ダ オ ラ ン ダ ソ    連

フ  ラ  ン ス

デンーマー ク イ  ン  ド イ タ リ F

拡:大技術援助計画 国連特別基金

196111962

17,822 3,000 2,120 1,005 2,150 1,565 2,000 1,853 1,158

 75G  900

196111962

19,314  19,525 3,000  5,000 2,620   3,450 1,500  2,103 2,150  2,350 1,492   2,561 2,000  1,000・

1,852   1,072 1,737     579  820   1,750  900   1,350

24,626 5,000 4,880 5,000 2,350 2,561 1,000 1,072 1,158 2,055 1,350

ノ例ルウェー 日    本

ス  ンで  ス ベ ル ギ _ ト  ル  コ ヴエネズェラ

パキスタン

:オーストリア

そ の 他

拡大技術援助計画

1961i1962

合 計

6051

 135  349  438  210  350  170

 58

4,616

41,566  759  135  465  300  267  350  170  100 4,118

45,137

国連特別基金

196111962

 597 1,422  465

 322  100  130  260 2,997

47,036 1,330 1,596 1,047  625  322  100  250  260 3,289

59,871

外務省国際連合局経済社会課資料 単位1000ドル

 世界銀行(IBRD)

 1944年7月のブレトン・ウッヅ協定にもとづいて設立された国際復興開発銀行は,一般 に世界銀行と呼ばれ,国際通貨基金(IM:F)とともにブレトン・ウッヅ機構の一環をなす 国際機関である。

 世界銀行の目的は,国際投資の促進を通じて加盟国の復興開発を援助するための長期資

(7)

インドの5ケ年計画と外国経済援助 49 金の貸付を行うことにあるが,現在では低開発国の開発援助が重要な業務となっている。

業務開始以来,1960年末までに協定した借款は,54ケ国277件におよび,5,473百万ドルに 達している。IMFが為替の安定を目的とするに対し,長期融資を使命とするが,1955年 頃から低開発国に対する貸付が行われるようになった。

 世界銀行の資金は加盟国の出資,特別準備金及び世銀債の発行により調達した借入金よ りなる。1958年10月のニュー。デリーにおける年次総会で増資が決定され,授権資本を従 来の100億ドルから210億ドルに引きあげた。アメリカゐ出資割合は1960年6月末で応募総 額の32.9パーセントを占めている。

 世界銀行のインドに対する貸付は1959年までの協定で次の如くである。(通産省,前掲書,

1960,P.173.、

受入れ機関・

政 政 政 政 三 二 政 政 政 政 政

府 丁 丁 丁 丁 丁 丁 丁 丁 府 府

インド鉄鋼会社 インド鉄鋼会社 タタ系電力会社 タタ系電力会社

1 C  l C  I タタ鉄鋼株式会社 タタ鉄鋼株式会社 インド航空会社

カ ル  カ ッ タ

港湾委員会

マ ド ラ ス 港

湾信託会社

工業信用投資会社

援助の対象

鉄   道

電力設蒲

多目的ダム 鉄   道 下 . 道 下  .三 二   道

電力設備

鉄   道

電力設備

鉄   道

工業設備 工業設備 電力設備 電力設備 工業設備 工業設備 工業設備 航空設備 港湾設備 港湾設備 工業設備

契約成立日 金額

1949。 4。18 50.4.18 53.1.23  57.7.12  57.7.12  57.7.12  57.7.12  58.7.23  58.9.16  59.4.8  59。7.15  52。12.18  56.12.19  54。11.19  57.3.29  55.3.14  56.6.26  57。11.20  57.3.5  58.6.25

58。6.25

59.7.15 34.0 18.5 19.5 24.0 19.11 11.2 35.7 25.0 85.0 25.0 50.0 31.5 20.0 16.2 9.8 10.0 75。0 32.5 5.6

29.0

14.0

10.0

金利

% 4 4

4τ倉

5%

5弓§

5ラ盒

5%

5り盒

5%

5%

6 4髄 5 4%

5ウ§

4弘 4%

6 5施

5↓色

5施 貸出時

決定

実行額 償 還 期 間

32.8 16.721 10.5 24.0 19.1 11.2 35.7 10.35 85.0

0 0 25.66 14.297 12.806 6.558 3.223 75.0 30.881

4.724 2.083

0.901 0

     14年 据置き5年後15年

〃 3年後21年

〃 4年後11年

〃 4年後11年

〃 4年後11年

〃 4年後11年

〃 3年後11年

〃 5年後16年

〃 6年後19年

〃 4年後16年

〃 7年後8年

〃 4年後7年

〃 4年後16年

〃 3年後15年

〃 6年後8年

〃 3年衝2年

〃 3年後11年

〃 8年後1年

〃 5年後15年 ク 6年後15年

〃 3年後7年

単位100万ドル

(8)

 なお1962年度の融資状況は,炭坑合理化資金として35百万ドル(返済期間15年),同じ く19.5百万ドル(同12年)の2件,カルカッタ港のしゅんせつ事業に21百万ドル(同25年

),鉄道部門に50百万ドル(同20年),開発銀行に20百万ドル(同15年)とそれぞれ借款 が与えられている。 樋産省,前掲書.1962,P.250.)

 世界銀行の融資方針は民間投資銀行の慣行にもとづいて,企業の経済的価値,実施計画 の安全確実性,元利返済能力がとわれている。また政府以外の政府関係機関または民間企 業に対する場合は政府の保証を要求している。融資条件がきびしくハード。ローンである。

 世界銀行はすでに第一次5ケ年計画以前において,政府の中央インドの開墾計画,国有 鉄道の改良計画及びダモダール流域(Damodar Valley)の電源開発計画にそれぞれ融資 を行なっているが,第1次5ケ年計画以来相ついで重要な開発計画に融資してきたが,そ の重点は鉄道関係におかれている。1962年末における事業別融資の状況は次のようである。

(藤田恒郎氏,アジア諸国における国際復興開発銀行および国際開発協会の融資活動(1),アジア経 済第4巻第5号)

対象事業

電   力 帯   道 港   湾 航 空 二 二   業 産   業 多目的事業

件数

5 9 3 1 1 10 1

30

金創

81.120 377.810

64  5.6  7.204 271.203

10.5

817.437

単位100万ドル

つた共産圏諸国の経済援助に対抗する必要が感じられたことである。

金利2.5パーセント,償還期限10ケ年以上,

るというが如き寛大な条件に対し,

外貨不足になやむ低開発国の実情にそわない面があった。低開発国側からすれば,

度商業的採算ベースにとらわれない長期融資を行なう援助機関が要望されたわけである。

 第二世銀は協定第1条に「低開発地域の重要な開発計画に対し,通常の融資よりも弾力 的かつ国際収支上の負担が軽い条件で融資を行ない,それによって世界銀行の活動を補完

し,低開発国の経済開発を促進し,生産性および生活水準の向上に資する」と設立の目的 をうたっている。開発援助めためにソフト・ローンで世界銀行の融資でまかない得ない部 門を補足する役割をもっている。 (川崎弘氏,「先進諸国グループの経済援助」,高:木氏編先進諸

 第二世界銀行(IDA)

前にあげた国際開発 協会の通称である。 (以下第二世 銀と呼ぶ)低開発国の経済開発に対する世界銀行の補 完機関である。もともとこの第二世銀の構想は1958年

2月,アメリカ上院におけるモンロー二議員の通貨委 員会に対する提案に発している。1960年2月アメリカ,

イギリス,酋ドイツ,カナダ,オーストラリア,イタ リー,南阿連邦,スウェーデン,ノールウエーの9工 業国と低開発国6ケ国の承認を得て発足した。世界銀 行の加盟国はすべてIDA協定を受諾すれば,無条件

にその加盟が認められた。

 第二世銀の設立の背景には,1954年頃から活計とな        共産圏の経済援助が     返済も被供与国の現地通貨で生産物を買付け 世界銀行のハード・ローンは開発計画の遂行のうえで,

       ある程

(9)

インドの5ケ年計画と外国経済援助 51

国の対アジア経済協力,PP。118−21.)

 第二世銀の融資はこれまでのところ直接政府に対して行なわれている。インドに対して は,世界銀行と第二世銀の融資は同一事業に対し協力的になされている。すなわち世銀融 資の場合,当該国の金利負担が外貨事情を悪化せしめるが如き場合,所要資金の一部を第 二世銀が融資することが行なわれる。第二世銀の場合も世界銀行におけると同様に,アジ ア地域でインドが最も多くの融資を受けている。1962年末の事業別融資額及びその状況は 次のとおりである。門田氏,前掲論文)

1対舞業件数

血 道 無 二 三

力 路 湾 信 業

2 1 1

1噛

6

金  額

合 計

36 60 18 42 56.5

質 212。5

単位100万ドル

 第二世銀は1961年以来,第3次5ケ年計画の開発事 業に融資しはじめた。世界銀行の融資が鉄道に重点が おかれたに対し,第二世銀は道路及び農業部門にむけ られている。すなわちインド政府は196!年7月,高速 道路の建設に6,000万ドルの融資を受けた。1961年9 月以来インド政府は5,650万ドルにおよぶ農業開発の ための融資を受けてきた。その内訳はウタル。プラデ シ(Uttar Pradesh)州における一概用井戸の建設に 600万ドル,インド東部のオリッサ(Orissa)州のサ ランジ川の用水路の建設に800万ドル,西部のグジャ ラート(Gujarat)州の用水路に450万ドル,パンジャップ(Punjab)州の排水施設及び堤 防建設に1,000万ドル,さらに西ビハール(Bihar)州のソン川の心隔設備に1,500万ドル 及びマハラシトラ(Maharashtra)州のプルナ流域開発に1,300万ドルと6件に及ぶ灌概 事業に対するもので,それによる生産性の向上をねらったもあである。また通信部門の融 資は第3次5ケ年計画の通信施設の拡充のたあの電話施設の拡充のためのものである。事 業別融資額としては最も少い港湾部門の融資は,ボンベイ港改築のためのもので,しゅん せつ船,荷揚げ設備及び荷揚げ用船舶の輸入にむけられる資金である。

 国際金融公社(IFC)

 国際金融公社は1955年7月設立,翌年から業務を開始した。加盟国における生産的民間 企業に対し,民間投資家と協調して融資することを主要業務とする,経済開発のための国 際金融機関である。設立の歴史も浅く,資本金も小さい(払込資本金9650万ドル)ので融 資額は僅少である。1959年6月末におけるアメリカの出資割合は全体の37.6パーセントで

ある。

 東南アジア地域の経済開発計画は一般に政府のイニシアチブのもとに遂行されている。

その結果政府の計画的事業の圧迫で,民間企業が資本面で圧迫されがちである。この場合

国際金融公社の果す役割は重要である。世界銀行と異なるところは,国際金融公社は生産

的民間企業の発展を助長するために,妥当な条件で民間資本が十分に調達できない場合,

(10)

政府の保証を必要とせずして,民間投資家と共同で融資せんとすることである。開発資金 の不足に直面する民間企業に対し,先進国側からの対外民間投資を促進するうえで重要な 意味をもっているといえる。従来ブラジル,チリー,アルゼンチン,ペルーを中心とする 中南米むけの融資が大部分を占めているが,東南アジア地域ではインド,パキスタン,タ イ,イランに融資されているが,その融資額は多くない。インドに対する融資は次の如く である。 (崎山昭治氏,「国連および専門機関による国際経済協力」,高木氏編前掲書,PP.90−1.)

融  資  企  業 カ・一Pスカー・オイル

ニ  ン ジ  ン 会 社

(ディーゼル。エンジン)

アッサム・シリマナイト会社   (耐  火  煉  瓦)

契 約 日

1959年4月

1960年6月

融  資  条  件

利 息, 6施%

支払期,1965〜70年 利益に応じて支払う 利 息, 6施%

支払期,1965〜74年 利益に応じて麦払う

融 資額

85万ドル

137万ドル

 国際連合

 国際連合及びその専門機関により実施されている国際経済協力は,技術援助であって資 本援助ではない。経済援助は技術援助と区別せられる場合と,それを含んで考えられる場 合とある。低開発国の開発援助を促進する目的に合致する限り,ここでは技術援助を含め て考える。この技術援助に次の3つの計画がある。

(a)通常技術援助計画(Regular Programs of Technical Assistance)

(b)拡大技術援助計画(Expanded Programs for Technical Assistancc,EPTA)

(c)国連特別基金(United Nations Special Fund)

順を追ってこれら3つの計画について見ることにする。

(a)通常技術援助計画

通常技術援助計画は,国連の通常予算によって実施されるもので,経済開発,社会福祉,

人権及び公共行政の4部門を対象とするものである。その年間予算額は200万ドル程度で,

具体的な実施計画で重要なのは次のものである。 (通産省,前掲書,1960,PP.338−9.)

  1.経済開発計画作成のためる専門家調査団の派遣   2.加盟国の海外留学生及び研修生に対する奨学金の供与   3.低開発国内における技術者養成の援助

  4.低開発国に対する技術者の派遣及び設備の供与に関する援助

(b)拡大技術援助計画

 拡大技術援助計画は,通常技術援助計画の活動をさらに拡大するために1949年設置され,

その翌年から活動をはじめた。その目的は,被援助国の経済的社会的福祉の向上をはかる

ために,農業及び工業開発により当該国経済を強化せんとするにある。この計画の実施は国

連及び8つの専門機関の参加によって行なわれている。すなわち,国際原子力機関(IA

(11)

インドの5ケ年計画と外国経済援助 53

EA),国際労働機関(ILO),国連食糧農業機関(FAO),国連教育科学文化機関(U NESCO),国際民間航空機関(ICAO),世界保健機関(WH:0),国際電気通信連合

(ITU),世界気象機関(WMO)である。さらにこの計画の内容について見よう。

(崎山氏,前掲論文)

 拡大技術援助計画における援助の方法は次のとおりである。・

 (1)技術者の派遣

 (2)フェローシップの供与

 (3)技術者訓練センターの設置及びゼミナールの開催

技術者の派遺は,被援助国の要請により行なわれ,これら専門家は開発計画の立案,勧告,

プロジェクトの調査や被援助国の関係職員の訓練などの分野で活動する。フェローシップ の供与は,低開発国の国民を先進工業国に派遣して研修させるものである。これと併行し て,低開発国に技術者の訓練機関を設けている。経費の点ではフェローシップの供与によ

るよりもこの方が経済的である。インドにおいては酪農訓練センターを設置している。

ゼミナールは地域単位で開催し,知識及び技術の交流や普及をはかっている。なお拡大技 術援助計画は人による援助であるが,被援助国で設備,物品が生産されない場合など設備,

物品がデモンストレーション及び教材として供与されている。WHOによる環境衛生計画 では支出の約10パーセントがこれにあてられている。

 世界銀行,第二世銀及び国際金融公社による経済援助が借款であるに対し,拡大技術援 助計画は贈与であるところにその相異の特徴がうかがわれる。なお拡大技術援助計画では 専門家の派遣が全体の経費の3分の2以上で,フェローシップがこれにつづき,これが人 による援助を主としたものであることを示している。これら資金は各国政府の自発的拠出 によってまかなわれており,このうちアメリカの拠出は毎年最も多く,1962年において全 体の42.7パーセントにおよんでいる。

 国連のインドに対する技術援助の概況は次の如くである。(通産省,前掲書,1960,付表)

援 助 項

統      計

労働機関及び職業訓練

漁   業   開   発 インド国際科学センター カラガルインド按術研究所

ポンペイ技術研究所

マドラス結核予防運動と訓練所 ナグブ伊ル結核予防運動と訓練所

援助機関

UNTA(註)

I  L  O F  A  O

UNESCO

  〃   〃 W  H  O   〃

経  費 823 637 697 87 793 716 274 159

うち機械

設備費

678 426 220 28 97 289 107 60

実施期間 1954〜58  53〜58   〃   〃  54〜58  55〜58   〃  56〜58

(註)各国の拠出資金は技術援助局(UNTA)により管理され, UNTAは地域別,

国別及び実施機関である専門機関別の資金計画を作成する。 単位1000ドル

(12)

国連特別基金は1959年1月の発足になるものである。拡大技術援助計画に比して,その歴 史は浅いが,重要な活動を行なっている。その目的とするところ,援助の方法,資金など

は次の如くである。 (通産省,前掲書,/962,PP。264−5。)

 特別基金は,低開発国の開発に対し,組織的,継続的な技術援助を与えることを目的と するものであって,その援助の対象とするところは,天然資源(労働を含む),工業(中 小企業を含む),農業,運輸,通信,建築,住宅,教育,保健,統計及び公共行政の分野 にわたる計画である。その計画が長期かつ大規模であって,その遂行によって被援助国の 経済開発に役立ち,新投資を促進できるものを援助しようとする。いわば低開発国の投資 水準を引上げることを可能とする如き環境を整備しようとするものである。

 特別基金の行なう援助の方法は,通常,調査,研究,訓練などに限定されているが,具 体的には専門家の派遣,設備やサービスの供与,或いは研究所や訓練センターの設置,フ

ェローシップの授与などである。

 計画の実施にあたっては,その必要経費を被援助国とともに分担する立前をとっている。

特別基金の資金は,拡大技術援助計画の場合と同じく,国連加盟各国の自発的拠出による ものである。1962年度の加盟各国の拠出総額は59,871千ドルで,このうちアメリカの拠出 分が最も多く24,626千ドルである。

 特別基金のインドに対する援助の概況は次のようである。(崎山.氏・前掲論文)

援 助 項 目 特別基金援助

      1

自国出資 産業才旨導員調ll練研究所

機械工学:研究 所 地域労働研究 所

電力機械工学調査研究所 中央公衆衛生工労調査研究所

漁業訓練研究所

中央鉱山調査研究所 グレイタ戸カルカッタ の水供給資源の調査 潜在的電源の調査

 950  708  351 1,954  525  610  696  324 2,361

2,140  967 1,190 2,731 3,590  730  840  156 5,000

経費総額

3,090 1,675 1,541 4,685 4,115 1,340 1,536

 480

7,361

期 閤

3年 3年 3年 3年 4年 3年 5年 2年 3年

実施機関

I  L  O

UNESCO

I  L  O

UNESCO W

F

I

W

u E A

L

H 0 0 0 O N

単位1,000ドル

 1960年代は「開発の10年」といわれる。東南アジア地域で各国において,それぞれ経済

開発計画が種々の困難に直面しながらも遂行されつつある。先進工業国からの経済援助も

(13)

インドの5ケ年計画と外国経済援助 55 増大し改善されつつある。国際機構を通ずる経済援助もまた同様である。経済開発におけ

る外国援助の重要性はいうまでもなく,これなくしては開発計画自体の円滑な遂行が困難 な事情にある。

 この経済援助に二国間の双務的援助と,国際機構を通ずる多角的援助があることはすで に述べたところである。前者は技術援助を含め,贈与,借款供与,民間ベースによる投資 など特定国間で行なわれる。後者は,世界銀行,第2世銀,国際金融公社などによる借款 供与,国際連合の低開発国援助機関に加盟国が資金を拠出し,この資金をプールして諸機 関が技術援助を行なうなどであるが,多角的援助も増大しているが,なお二国間援助が主 流を占めている。これは特定国間の歴史的,政治的,経済的関係を反映するものであるが,

ブラック世界銀行総裁のいうが如く,政治的考慮が優先されるきらいがあり,従ってひも つき援助となって必要部門に資金が注入されないきらいもある。この点多角的援助は特定 国間の関係を遮断し,政治的考慮を離れて経済的観点から,援助機関の方針に従って行な われるところに特色がある。被援助国にとっても国際機構を通ずる援助は,政治的考慮に とらわれず好都合であるが,一方援助国側の資金拠出の面で,殊に第二世銀では資金調達 の面で問題があり,融資財源の不足の事情にある。この場合,世界銀行主催のもとで行な われている対インド債権国会議は,今後の援助の方式のうえで重要な意味をもつものであ るといえようQ

 以上,インドに対する国際機構を通ずる多角的援助について,若干述べてきたが,なお

検討さるべき問題も多い。さらに二国間援助の問題もあるがこれは別の機会にゆずること

にしたい。

参照

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