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雑誌名 教育実践総合センター研究紀要

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(1)

「総合的な学習の時間」に生かす魅力ある地域題材 開発の試み  −町家での宿泊体験活動からの発展可 能性をさぐる−

著者 今野 博信, 岡本 定男, 大西 香菜, ツェンドマー,

花岡 宗憲

雑誌名 教育実践総合センター研究紀要

巻 16

ページ 169‑174

発行年 2007‑03‑31

その他のタイトル An Attempt to Develop Attractive Regional

Theme for Period for Integrated Study   − A Case of Experience Activity to stay at the Machiya House −

URL http://hdl.handle.net/10105/509

(2)

1.はじめに

「各学校が地域や学校の実態等に応じて創意工夫を 生かして特色ある教育活動を展開できるような時間を 確保すること」を趣旨にして創設された「総合的な学 習の時間」(以下「総合」と略す)は、小中学校では 2002年から本格的に実施されてきたが、より一層の充 実を図る観点から2003年12月には、その内容を規定し ている学習指導要領の一部改正が行われている。改正 の主な点は、各教科等で身に付けた知識・技能を相互 に関連付け、総合的に働くようにすること、全体計画 を作成することなどを新たに加えている。これらの改 正点に反映されていたのは、それまでに学年進行で実 施されていた際に課題として認識されていた内容(例 えば、教科や他の領域との関連性の捉えにくさ、学校

間での取り組みの格差拡大など)への対応が図られた 結果といえる1)

ところが2003年12月に、OECD生徒の学習到達度 調査(PISA2003)が発表されると、その結果が子ど もの学力低下を示すものとして取り上げられ、教育界 に収まらない論議を呼ぶことになった。「総合」の成 果が吟味され始めた時期であるにもかかわらず、学力 低下の原因と結びつけての指摘も多く見られ、「総合」

創設の背景となっていた「ゆとり教育」そのものに対 する批判的な議論も巻き起こった。こうした流れを受 ける形で、現行学習指導要領の全面的な改定が当時の 文部科学大臣から示唆されると、一挙に「総合」に対 する見直しの風潮が高まるという経過をたどることに なった。

中央教育審議会の教育課程部会、生活・総合的な学

−町家での宿泊体験活動からの発展可能性をさぐる−

今野 博信

(奈良教育大学大学院修士課程)

岡本 定男

(奈良教育大学学校教育講座)

大西香菜・ツェンドマー・花岡宗憲

(奈良教育大学大学院修士課程)

An Attempt to Develop Attractive Regional Theme for Period for Integrated Study

− A Case of Experience Activity to stay at the Machiya House −

Hironobu KONNO

(Graduate School of Education, Nara University of Education)

Sadao OKAMOTO

(Department of School Education, Nara University of Education)

Kana OHNISHI, Tsendmaa, Motonori HANAOKA

(Graduate School of Education, Nara University of Education)

要旨:大学院生グループによる自主的な企画として、小学生を対象とした伝統的な民家(町家)での宿泊体験活動 を実施した。計画段階から「総合的な学習の時間」を想定しての取り組みであったが、実際の活動を経験するなか で、魅力ある地域題材として提案できることを確認できた。さらには、準備期間から実施までの間の、地域の人達 とのつながりの持ち方や協力者との交渉などの体験は、指導者としてのマネジメント能力の獲得を促進することも 確認できた。「総合的な学習の時間」の新しい単元開発には、いまだに定式化された実習を構想しにくい実態がある が、今回の実践事例から教職課程での企画実習構想への発展可能性を探ることができた。

キーワード:総合的な学習の時間、地域題材、ならまち、町家、宿泊体験、マネジメント能力

(3)

習の時間専門部会では、イギリスのクロス・カリキュ ラムやアメリカのインテグレイテッド・カリキュラム についても議論され、「総合」のもつ意義については 国際的な流れであるとの認識が定着していたようであ る。2005年10月には、「新しい時代の義務教育を創造 する(答申)」が中央教育審議会から出され、そこで は、「思考力、表現力、知的好奇心などを育成する上 で総合的な学習の時間の役割は今後とも重要である」

と示されていた2)

ついで2006年2月に出された、中央教育審議会の初 等中等教育分科会、教育課程部会審議報告3)では、

「総合的な学習の時間は、本来、学校の裁量を拡大す るとのねらいがあるのであり、授業の準備を含めて現 場での実践が容易ではないことは理解するが、徐々に 定着しせっかく良い芽が育ち始めているということも あり、各学校や教員にもう一段の創意工夫を求めたい との意見も強く示されている」と言及されている。こ うした学校現場に対する要求が強調されるのには、い かに「総合」を実践場面で組み立てていくことに困難 さがあり、またそれが成果に結びつくものになるかど うかに対して不安が大きいことが想像できる。

そうした困難さへの認識に対して、同じ審議報告の 中で述べられている小学校段階の英語教育充実につい ての項目では、その実施のための時間を「総合的な学 習の時間」の一環とする可能性が示唆されている。こ のような例示がなされたことで、困難さを回避する口 実を得て多くの小学校が英語教育を組み込んでいく傾 向も予想される。当初の趣旨を全うする形で「総合」

の実践例が積み上げられていくのには厳しい状況が待 ち構えているのかもしれない。

いずれにしろ、簡便な方法で「総合」の伸展は望め ないので、地道に実践を積み重ねていくことが求めら れており、そのための題材開発に努力する必要がある。

その際に考慮すべき視点としては、橋本(2002)が取 り上げているように、教科との関連性の問題があり4)、 地域題材の開発については、外池(2004)による、

「斬新な地域学習の実践の場は社会科ではなく」なっ てきているとの指摘も参考になる5)。さらに、保護者 などからは、「総合よりも基礎学力を身に付けさせて ほしい」などの意見も出されている(専門部会配付資 料 2005)ことから、学校外に向けての説明責任につ いても考慮に入れる必要がある6)

上述の視点についてまとめると、次のようになる。

一つは子ども自身に関わって、主体性や意欲の確保な どの視点について。二つ目は題材に関わることで、地 域性や時代性などの視点。三つ目は指導者に関わるこ とで、目標や全体像への位置づけなどと結果の評価方 法も含まれる。また、学校外へ視野を広げるなら、四 つ目として保護者や社会の中での受け止められ方など も考慮に入れなければならない。加えて大事なことは、

それらが相互に関連し合っていることへの配慮であ る。その相互関係については、例としてつぎのように 考えることができる。

表1 題材との関連を考えた例

ある題材が、子どもの自主性を引き出し、他の教科 や領域と関連づけがしやすく、保護者にも意義を説明 しやすいかどうかを検討する場合の枠組みである。視 点とする項目は他にも考え得るが、実際に「総合」を 組み立てていく際には、このような検討が欠かせない ものとなる。

今回取り上げる地域題材の開発に際しても、これら の視点は検討課題とされた。具体的に当てはめるとつ ぎのようになる。

表2 「泊まろう!」体験の関連性

本実践では、表に示したような「総合的な学習の時 間」を意識した視点で実際に活動を組み立てていく試 みから、新しい地域題材の開発を目指した。さらに、

計画から実施までの過程で体験する内容が、指導する 側にとっての「マネジメント能力」へどのように影響 するかについても検討することにした。この視点は、

酒井ら(2005)が、「総合的な学習に関しては、大学教 育、あるいは現職研修において単元開発に関するノウ ハウを教師は学ぶ機会が与えられてきたわけではな」

7)、と指摘している点から引き出されたものである。

また、中教審教育課程部会の生活・総合的な学習の時 間専門部会などでも議論されていた内容である8)

2.目 的

本実践の目的は、体験活動の試みから新しい地域題 材を開発することである。加えて、その実施までの過 程で、指導者側にどのような「マネジメント能力」が 獲得されるかを検討することにした。

題 材 

子 ど も  指 導 者  保 護 者  自主的な取り

組みになるか 

教科との関連 がとれるか 

生活に反映さ せ得るか 

町 家 で の 宿 泊 体 験 

子 ど も  指 導 者  保 護 者 

・主体的な関 わりを促進し 維持できるか。 

・協働的な活 動場面を用意 できるか。 

・助け合える か。  

・個々の活動目 標を適切に設定 できるか。 

・教科と関連さ せた表現活動の 場をつくれるか。 

・安全への意識 をもたせ得るか。 

・ 活 動 内 容 が 理 解 さ れ やすいか。 

・ 他 の 活 動 で は 得 ら れ に く い 内 容 を含むか。 

(4)

3.実践概要

3.1.対 象

参加者募集に応募してきた小学生8名(内訳は、1 年生2名、3年生3名、4年生1名、6年生2名)

他に幼稚園児1名、保護者1名

3.2.実施者

奈良教育大学大学院生4名

3.3.時 期

2006年6月中旬から8月5日6日の実施当日まで

3.4.計 画

6月中旬に、「伝統的な建て方をしている奈良の町家

(まちや)で泊まりがけの体験活動をし、現代生活では 味わえない五感を存分に働かせる経験をしてみる」こ とを目的にして、つぎのような実施計画を立てた。

表3 実施計画

7月中旬までに参加者確定

主催者準備:告知、募集、スタッフ確保、講師手配、

機器の用意、印刷など

参加者準備:食事、寝袋などの寝具、筆記用具類、

カメラなど、洗面用具 プログラム例:

当日昼すぎに現地集合 

スタッフ紹介と自己紹介 オリエンテーション 昼の間に町家の中を探検しておく

デジカメやスケッチで記録、珍しい物、

用途不明な物などを見つけておく 夕食までの時間で、それらの「発見」を発表でき

るように各自で準備する かまどでの炊飯

(できない場合は、各自持参の夕食)

食後の片付けを終えてから発表会

発表会には、建築や家庭科(生活科学)

などの講師を招きコメントをもらう 就寝準備をしてから、民話の語りを楽しむ会

語りの専門家に依頼するとか、スタッフ で練習しておく

照明などに工夫をして雰囲気づくり 適当な時間に各自で就寝

翌日は、洗面や朝食(サンドイッチなど)を済ま せて部屋の掃除をする

午前日程で、町家や奈良町の歴史や特徴を専門家 に解説してもらう

近所の奈良町界隈の散策を含めてもよい 昼食前には、お互いに感想を話し合って解散

実際の宿泊場所として、奈良女子大学の「奈良町セ ミナーハウス」を想定し交渉する。さらに、所有者を 訪ね、計画を説明し了承を得る(7/9)。

3.5.準 備

計画当初は、特定の学級や学年による取り組みを想 定していたのだが、その可能性が準備段階の途中でな くなり、参加者を一般募集する形に切りかえた。

実施メンバー間で、計画の検討(目的の再確認・活 動内容の意義・食中毒などを含めた安全対策・暑い時 期特有の不安条件・人数確保の方法・お話会などへの 協力者の依頼など)を繰り返した。また、実施に際し て、地域住民への説明と了承を得ることがセミナーハ ウス側から指示されたので、メンバーで訪問し計画内 容を説明した。

夜の気温や虫の飛来状況などを確かめるために、試 験的に仮の宿泊体験を実施した(7/12)。室温にも 虫にも、大きな問題は感じられなかった。

7月中旬には、参加者募集の案内をインターネット 上の地域情報サイトに掲載依頼し、それとは別に独自 に開設したホームページ上でも告知と募集を開始し た。また、ホームページ上からの申し込みができるよ うに、フォームメール用のページも用意した。

7月20日には、学内メーリングリスト(学部生、院 生用)に、参加者募集と協力スタッフ募集についての 案内メールを流した。

7月21日には、学内で開催された院生対象の集まり

「第1回知のコロシアム(マスターズ・フィールド)」

で、企画の紹介をし、参加者からの批判検討を求めた。

そこでの意見の一つに、「参加の応募がないのには、

企画自体に魅力が乏しいのか、告知が行き渡っていな いのかを分析しなければならない」というものがあっ た。広く知らせるには、手間をかける努力をするか、

費用をかけるかのどちらかが必要になるとの提言を受 けて、新聞へのチラシ折り込みを申し込むことにした。

チラシは7月28日朝刊1万部(奈良市東部地域の3紙)

に折り込まれて配達された。

7月24日に最初の参加申し込みがあった。

チラシを見た地元紙『奈良新聞』の記者から取材の 申し込みがあり、8月2日にメンバー3名で取材を受 けた。紹介記事は翌朝に掲載された9)。その記事には、

蚊帳の貸し出しを求めている内容があったので、その 日のうちに蚊帳を貸し出す協力者の申し出があった。

夜には、蚊帳を借り受けに行った。

奈良女子大学の学部学生から、参加者に依頼するア ンケート調査の質問内容について問い合わせがあり、

電子メールのやり取りを数回行った。

前日の4日には、必要な道具類(掃除用具、蚊取り 線香など)、食材(6日の朝食用、お茶)の購入を済 ませた。また夕方には会場の町家に出向いて、参加者

(5)

持参の夕食を保存しておくための冷蔵庫を運び入れ、

掃除をし、お話会用の行灯も完成させた。お話会に来 てもらえることになったボランティアの方との連絡も 済ませた。

3.6.当日の活動

実施当日の5日は、午前10時にメンバーで集合し、

受付準備などの作業を始めた。女子大の学部学生の手 伝いもあった。予定の12時半には参加者が集まって来 た。実際のプログラムはつぎのように進められた。

表4 実施プログラム

(後日、活動の記録を文書とビデオ編集したDVDに まとめて参加者に送った。)

4.まとめ

「総合」のこれからの動向について岡本(2005)は、

「今後、どう成熟ないし衰退(?)の道を辿るのかは、

予断を許さない」と危惧の念を吐露している10)。その 上で、「全国的に見て、教育現場における様々な努力や 工夫の中で漸く芽を出しつつある小・中学校での『総 合学習』は、筆者の提示する『生活学力』形成と強い 関わりを有している」として、期待感をもまた表明し ている。ここでは、この「生活学力」の視点も加味し て本実践の成果と課題に検討を加えることにする。

まず、参加者の活動の様子と感想から伺えるのは、

今回の宿泊体験活動が、子ども自身の興味関心を刺激 し、自発的で意欲的な学習へと導いたことが強く示唆 された点である。アンケート調査に書き込まれた内容 には、一番楽しかったこととして、「町家たんけん」

や「発表会」が上位に挙げられており、さらにもう一 度泊まりたいかの問いには、全員が「はい」と答えて いる。また、今度やりたいこととして、「もっと詳し く調べる」や「発表会」が挙げられているのは、この 活動がもつ知的な魅力を示しているものと解釈でき る。実際の発表内容にも、一つの発見から推論を進め 独自の仮説を展開する例も見られた。(図1では、箱 階段での足の置き方に言及している。)

図1 発表内容の例 8

月 6 日

(日) 

7:00  7:30  8:30  9:00    11:00    12:00

起床、洗面  朝食  全員で掃除  奈良町たんけん 

 十輪院、大乗院、元興寺  帰宅準備 

全員でミーティング、感想発表  解散 

8 月 5 日

(土)

 

時 間  活 動 内 容  12:30 

13:00          13:30  14:00 

                  15:30  17:00  18:00 

                  19:30  21:00

受付開始 

全員でミーティング   アイスブレーキング   自己紹介 

 注意事項確認   グループづくり  町家の案内 

グループごとに町家たんけん    

               

発表の準備、打ち水体験、休憩  夕食準備、夕食、かたづけ  発表会 

                  

お話会準備、お話会  就寝準備 

(6)

このような自分自身の生活感覚と結びつけて思考を 巡らせることが、「生活学力」を形成していくと捉える ことができる。生活能力の基底を為すものとして「生 活学力」があり、それは生活を知的科学的に改善しう る実践知としての特質を有するものだからである。

一方、この体験活動を今回のように学校外の活動で はなく学校の「総合」として実施した場合について、

保護者向けの事後アンケートで質問した。そこでの回 答には、期待感と不安感の両方が見られた。安全面へ の配慮が挙げられていたのは、ガラス戸が多く暗い部 分も多いという家屋のもつ構造が一つの不安要素とな っていると考えられる。また、学校での学習活動とし て捉え直した場合に、どのような内容が追求されるべ き課題となるのかについての疑問も示されていた。実 際に活動を組む場合には、保護者向けの説明が必要と されるのは当然であろう。

しかし、今回の実践で気づかされたのは、魅力的な 題材を用意し、指導者が共に学ぶ姿勢で立ち合うだけ で、子ども達は多くの気づきとその発展を自分達で組 み立てていく力を見せてくれたことである。指導者側 が予め「気づくべきこと」を用意しておくのは当然で あっても、そのことに気づかないからといって、無理 に気づかせる必要もないし、当人がこだわりを持って 見つけ出した内容に対して指導者側から評価を加える 必要はないのではなかろうか、と感じられたのである。

この見解については、実施メンバー間でも議論が分 かれていて容易に結論は導き出せそうにないが、大き く教育や学習を捉え直す際の拠り所としての視点を得 られたことは確かである。メンバー間での反省会で、

「子どもが自分で見つけたものを、そのまま発表する とは限らなかった」との発言があったが、これは、当 人の中で整理ができていない発見について戸惑いがあ ったからではなかろうか、と想像してみることはでき そうである。当人の中での重要度は、周りから見てい るだけでは判断できない可能性があるからである。

指導者側から子ども達の活動を評価する視点として は、その子が何に気づいたかよりも、気づきのために どのような努力が見られたか、となるのではなかろう か。もちろん、そこには手助けできるように予めの準 備が、指導者側に求められている。

「生活学力」は、子ども達にだけ要求されるもので はなく、高等教育段階における「課題探求能力」とし ても追求されなければならないものである。具体的に は、4つの力「思考力・想像力・実践力・表現力=

TIPE(タイプ)」として構想されている11),12)。今回 の実施メンバーの体験をこの視点から検討してみるな ら、まず挙げられるのは、実践力を試すことができた という点であろう。計画立案からの準備段階では、多 くの人々との交渉能力が求められた。また、実施に向 けて配慮すべきこととして、食品の安全性確保、環境

条件の検討とプログラム内容の意義付け、スケジュー ル調整や道具類の用意などがあった。さらに、今回は 一般に参加者を募ることになったので、それらを含め た「マネジメント能力」も要求された。

このような体験には、想像力をはたらかせて予め計 画に組み入れられるものも多くあるが、予想し得ずに その場で初めて気づかされるものも出てくる。例えば、

一日目最初の活動である「町家たんけん」で子ども達 が自分の興味に合わせて探し始めても、何人かの保護 者が立ち合ったままの状況が生まれた。これは受付を 済ませた後はすぐに保護者は帰るものだと思っていた のが、そうでなかったことに気づかされたという意味 である。こうした展開を事前には予想することができ なかった。自分の子どもが低学年で参加しているので、

親として心配する気持ちは理解できたが、一緒に行動 する親の姿に子どもが頼ってしまう傾向が見られたの も事実であった。このような例は、事前に検討しつく しておいて、当日に慌てるようなことがあってはいけ ないのであろうか。

メンバーの反省の一つとして、「その場その場で判 断してきた。それがうまくいった感じでよかったが、

もっと事前にいろいろ想定した話し合いをしておけば よかったのでは?」という内容があったが、この点で も共通の見解には至っていない。今後とも引き続いて 論議が必要となろう。とは言え、少なくともこのよう な検討されるべき課題の存在に気づけた体験は、意義 深かったと言える。また、考え方の枠組み自体を広げ て、最初から保護者と共同しての取り組みを構想する こともできる。子ども達同士が、異年齢間でもスムー ズに活動できていた実例を前にしたなら、保護者との 共同で授業や活動を組み立てていく形態を考えること も、さほど難しいことではないのかもしれない。

実施メンバーにとっても大きな収穫が得られた今回 の実践が示唆するのは、大学における教職教育におい ても、このように学生自身が企画して子ども達からの 反応が得られるような実習の意義深さである。現実に は、条件整備に必要な手続きが数多くあることが予想 されるが、得られる教育的効果には他では代え難い内 容が含まれているものと実感できた。さらには、他大 学との交流も実践の内容に含まれていたが、このこと も広がりをもつものだと実感できた。

付け加えるなら、現職教員にとっての研修として位 置づけることもできよう。「総合」についての新しい 見方を提供してくれる可能性を、大学が積極的に担う ような状況が生まれてくることを大いに期待したい。

5.さいごに

今回の実践にあたり、深いご理解と多大なご協力を いただいた奈良女子大学生活環境学部長の上野邦一教

(7)

授に、心よりのお礼を申し上げます。また、会場の提 供や蚊帳の貸し出し、おはなし会の実施などにご尽力 くださいました皆さま、そして、参加してくださった 子ども達と保護者の方々に、あらためてお礼申し上げ ます。

注およびURL

1)中央教育審議会「初等中等教育における当面の教 育課程及び指導の充実・改善方策について(答申)」 2003.10.7

http://www.mext.go.jp/b̲menu/shingi/chukyo/

chukyo0/toushin/03100701.htm

2)中央教育審議会「新しい時代の義務教育を創造す る(答申)」2005.10.26

http://www.mext.go.jp/b̲menu/shingi/chukyo/

chukyo0/toushin/05102601/all.pdf

3)中央教育審議会初等中等教育分科会 教育課程部 会審議報告 2006.2.13

http://www.mext.go.jp/b̲menu/shingi/chukyo/

chukyo0/toushin/06021401.htm

4)橋本健夫(2003)「教科学習と相互的な学習に関 する一考察」長崎大学教育学部紀要 40,15-29 5)外池智(2004)「秋田県の小学校における地域学

習の現状と課題−社会科と『総合的な学習の時間』

の実践事例として−」『秋田大学教育文化学部実 践研究紀要』26,1-12

6)中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部 会「中央教育審議会義務教育特別部会審議経過報 告」に関する意見募集((第25回(第3期第11回)) 議事録・配付資料 2005.9.7

http://www.mext.go.jp/b̲menu/shingi/chukyo/

chukyo3/siryo/004/05111601/s002.pdf

7)酒井朗・無藤隆・野嶋栄一郎・浅田匡(2005)

「『総合的な学習の時間』の年間計画作成等に関す る実践研究」実施報告書 総合的な学習の時間調 査研究会 お茶の水女子大学子ども発達教育研究 センター内1ページ

http://www.kodomo.ocha.ac.jp/Projects/sogo/

8)中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部 会 生活・総合的な学習の時間専門部会(第8回)

議事録・配付資料7 2006.7.19

http://www.mext.go.jp/b̲menu/shingi/chukyo/

chukyo3/siryo/021/06072702/006.htm

9)奈良新聞 2006.8.3付け朝刊に「『町家』に泊まり、

わくわく体験を」の見出しで掲載

10)岡本定男(2005)「『生活学力』を育む大学教育実 践の掘削力−『書く力』の向上を中心として−」

『奈良教育大学紀要』54,1,(人文・社会)1-16 11)岡本定男(2004)「『TIPE(タイプ)』を拓く

教育の実践的可能性」『奈良教育大学紀要』53,1,

(人文・社会)1-16

12)岡本定男(2006)「『自己再構築』を促す大学教育 実践力の作用力−『ストリート・クリエーション』

の手法を中心として−」『奈良教育大学紀要』55, 1,(人文・社会)11-26

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