学校カウンセリングによる中学生不登校への再登校 支援 −学校、家庭、実践センターの連携システム を中心として−
著者 小野 昌彦, 大橋 勉, 城 律男, 辻本 雄一, 上田
光子, 吉田 初子, 苧木 達司, 大井 閑代, 柳田 健 次, 岡本 真治
雑誌名 教育実践総合センター研究紀要
巻 11
ページ 121‑127
発行年 2002‑03‑31
その他のタイトル Shaping Going‑to‑school Behavior in a Junior High School Student with Non‑attendance at School by School Counseling
URL http://hdl.handle.net/10105/4114
学校カウンセリングによる中学生不登校への再登校支援
一学校、家庭、実践センターの連携システムを中心として‑
小 野.i n
(奈良教育大学附属教育実践総合センター)
大橋 勉・城 律男・辻本雄一・上田光子・吉田初子・苧木達司・大井閑代・柳田健次・岡本真治 (明E]番村立聖徳中学校)
Shaping Going‑to‑school Behavior in a Junior High School Student with Non‑attendance at School by School Counseling
Masahiko ONO
(Center for Educational Research and Development, Nara University of Education)
Tutomu OHASHいNono JO・Yuuiti TUJIMOTO・Mituko UEDA・Hatuko YOSHIDA
Tatuji OKI・Sizuyo OHI・Kenji YANAGIDA・Shinji OKAMOTO
(Shoutoku Junior High School)
要旨:不登校6名を対象として再登校及び登校の維持を目的として学校カウンセリングを実施した。学校カウンセリ ングは、平成12年7月〜平成13年10月末まで約1年3ケ月間実施した。その結果は以下の通りである。 (彰6名の再登 校を望む不登校児が1年間という短期間内で再登校した、 (塾第1 ‑3学年全ての学年の不登校児が再登校した、 (診学 校カウンセリング開始初期は、専門機関に子ども‑の直接支援を仰いでいたが、徐々に学校長自らが家庭訪問を実施 するなど学校・学年全体で取り組み、最終的には教師の取り組みのみで支援を成功させた、以上であった。再登校へ の明確な学校方針の基で対象児のアセスメントによる実践センター、学校、家庭の有機的連携による再登校支援が有 効であった。
キーワード:不登校non‑attendance at school、学校カウンセリングschool counseling、親指導Parents guidance
1.問題と日的
現在、学校教育現場において不登校が大きな問題と なっている。文部科学省による2000年度学校基本調査 の結果によると、小・中学校で1年間に30日以上欠席 した不登校児童・生徒は合計約134,000人であった。
その内、小学生は1.2%増加して26,372人、中学生は 2.63%増加して107,910人であった。これは、いずれ も過去最多の人数であった。これらの問題への対策と して各学校における教育相談、生徒指導の充実やスクー ルカウンセラーの設置、 「心の教室相談員」の設置な ど多様な載り組みがなされてきている。
文部科学省によるスクールカウンセラー制度の導入 以来、学校カウンセリングが全国各地で実施されてい る。学校カウンセリングとは、 「学校において、学習 面と適応面に焦点を当て、学校心理学、カウンセリン グ理論、臨床心理学などの心理学上の知見を生かしな
がら行われる心理・教育的援助のこと」 (小林、 2001) をさす。
学校カウンセリングで行われる具体的な活動は主に 以下の3つがあるといえよう。 1っめは、心理教育ア セスメントである。児童・生徒の学習面と心理・適応 面における状況と背景を総合的に理解し、児童・生徒 の能力や特徴を把握して、児童・生徒に援助的な介入 の必要性を検討し、必要に応じて援助の計画を立てた り、計画を修正するための資料を提供することである。
2つめは、カウンセリング及びガイダンスである。児
童・生徒の認知的、情緒的な悩みを改善し、自己理解
を促進し、発達課題に対処できるように援助すること
などを目的として、治療的、予防的、開発的なカウン
セリングやガイダンスを個別あるいは集団で行うこと
である。 3つめは、コンサルテーション及び啓蒙活動
である。保護者や教師、教頭、校長などの教育スタッ
フに対して、児童・生徒の問題行動や発達に効果的に
援助できるように関わり、また、広く各学歯斜こ共通す る課題などに関する心理学的知見を啓蒙して共通理解 を図る一方で、必要に応じて外部の専門機関と連携を
していくことである(小林、 2001)。
これらの活動は、日本においては学校精神衛生コン サルテーション活動として山本和郎氏により1962年、
市川市の小中学校の教師を対象に実質的には開始され たといえよう(山本、 1997)。その後、関(1995)に よる福岡県のある「荒れた」中学校を3年間の取り組 みで立て直した介入例等の実践例が報告されるように なった。
さらにスクールカウンセラー制度の導入以来、学校 カウンセリングやスクールカウンセラーに関する研究 が増加してきた。井村(2001)は、最近の学校カウン セリングにおける実践研究の研究動向を以下のように まとめている。
まず、この分野の実践的研究とは、スクールカウン セラーとしての実践体験を報告し、それに基づいて援 助方法などの提言を行う研究であったとしている。そ の実践研究として、スク‑ルカウンセリングで20答法 を利用し、カウンセリングへの導入の工夫を報告して いる原(2000)、私立中・高校におけるスクールカウ ンセリングの実践から、学外者が行うカウンセリング のメリットを論じ、カウンセラーの中立性が保証され る点が重要としている高山・佐々木(2000)、スクー ルカウンセラーとしてPAC分析を行いながら解決志 向的に教師を支援し、教師が自分の役割の葛藤に気づ くと葛藤が軽減されると報告してた青木(2000)、ス クー‑ルカウンセラーの活動実践として不登校の親の会 の形成過程に関する報告をした植木・夏野(2000)と いった研究概要を報告している。
そして、以上の実践的研究においては、援助には3 つの方向性があることを指摘している。すなわち、生 徒に対する援助、教師に対する援助、親に対する援助 である。そして、これらの生徒と教師と親の関係を調 整し、統合して行く方向性が必要であり、これらの援 助の方向性とはスクールカウンセラーの役割であり、
研究が展開されるべき領域と考えることができるとし ている。
そして、スクールカウンセリングに関しては、全国 レベルで多数の実践が行われているが、研究として報 告されたものは少ないとの指摘もしている。
以上の事から、学校カウンセリングの実践研究にお いては、児童・生徒、教師、親への様々な形の援助を 一つの方向へ調整、統合していったモデル研究の蓄積 が必要であるといえよう。
そこで、本研究においては、ある中学校への再登校 を希望する生徒へのアセスメントを基に生徒、教師、
親への学校カウンセリングを実施し、その結果6名の 再登校を達成した実践を報告する。
2.学校カウンセリングの方法について 2. 1.学校カウンセリング依頬の経緯
7月中旬、 A中学校校長による実践センターへの学 校カウンセリングの依頼があった。依頼理由はまとめ
ると以下のようなことであった。中学校において不登 校生が何人かみられるようになったが、学校長、教師 として以前から不登校生に対して何もできない悩みが あった。固定概念として、不登校生は、専門のカウン セラーしか取り扱えないというものがあり、母親だけ がカウンセラーに相談し教師としては不登校児への対 応の手立てが分からなかった。教師として最低限実施 していたのは、電話連絡・家庭訪問のみであった。そ して、専門機関に学校から問い合わせると「今、本人 はエネルギーを蓄えているから」等の回答があるが生 徒本人に変化が見られないまま時間が過ぎていくこと が多かった。学校長としては、本人の将来を考えると、
1日たりとも粗末にできないと考えて、様々な研修会、
講演会に出席し対応法を探していた。
そのような中で昨年2月、実践センターにおける再 登校事例の研究発表(奈良教育実践学会)を聴講した。
不登校児本人の実態を正確に把握して手続きを実施し ていること、本人に段階的に目標をもたせていること、
保護者・学校・カウンセラーの支援の在り方が明確で あることから中学校への導入を依頼したいとのことで あった。
実践センターとして学校カウンセリング依頼の目的 が明確であり、学校長の不登校生への深い情熱と愛情 が感じられたことから依頼を受諾することとした。
2. 2.学校、家庭、実践センターの連携の基本シス テム
学校と家庭、実践センターの連携のための基本シス テムは以下の通りである。
第1段階:学校としての学校カウンセリングの依頼。
すなわち学校(学校長)からの明確な方針(再登校等)、
内容を示した上での援助依頼。実践センターとして受 諾可否の判断をする。
第2段階:事例の依頼。依頼を受講した場合、可能 であるならば学校長、担任教師、不登校児本人、保護 者との話し合いを実施し、本人の判断を尊重しながら 今後の方針等を決定する。実践センターへの学校カウ ンセリング依頼方針と同一の場合は、支援依頼要請に 関する点を話し合い決定する。
第3段階:契約成立。不登校児本人、学校、保護者 からの実践センタ‑への支援要請決定の場合、実践セ ンター‑の連絡、面接を実施する。面接において本人 へ再登校援助・指導方針、方法等を説明する。そして、
本人からの直接、または後の電話による「援助依頼」
学校カウンセリングによる中学生不登校への再登校支援
があった場合、援助主担当者(以下、 Tと略す)が
「受諾」したことによって契約成立とする。本人以外、
家庭、学校からの依頼も状況に応じて受諾する。
第4段階:再登校援助期。本人との援助契約成立の 場合、本人とT乃至は学校長、担任、保護者との間で 援助計画を立案する。その際、実践センターの役割、
学校側の役割、保護者の役割を明確にする。実践セン ター適所による指導の場合、過1‑2回適所する。状 況に応じて学校・保護者へ面接、 Eメール、電話助言・
指導を実施する。間接援助の場合は、アセスメントに 基づくTによる援助計画立案、実行時における助言を
ifKK
第5段階:終結期。再登校後、登校が安定し専門的 観点から本人・保護者・学校による支援で登校維持可 能と判断された場合は学校において学校長・担任・本 人・保護者による面接を実施する。経過報告、今後の 留意点をTから学校・家庭・本人に伝え質問等を受け 終結する。
2. 3.不登校事例への介入方法について‑アセスメ ントとトリートメントの着眼点一
不登校児本人からの援助依頼があり、受諾した場合 には、個々の事例から情報収集し対応を決定する。基 本的には、小野・小林(2000)のアセスメントのポイ
ントから情報収集し、それを基にトリートメントを実 施する。以下にその着眼点の概要を示す。
2. 4.不登校の行動アセスメントの着眼点
不登校行動の行動アセスメントは、 「不登校状態を 形成し、それを維持している条件を明らかにし、再登 校行動のシェ‑ビングにあたって必要とされる情報を 収集することである」 (小林、 1988)と定義される。
情報収集は、 (1)発現前の発達状況、学習状況も含む 行動特性、 (2)発現から慢性化に至るまでの経過、 (3)坐 活状況、日中変動も含む全般的症状の変化、 (4)学校・
学習をめぐる状況、 (5)家庭をめぐる状況、 (6)その他 (不登校により生じた対人関係を含む生活全般的な乱 れ一体力・学力の低下などを含む)といった項目を中 心に行われる(小林、 1988;中林ら、 1989)。
2. 5.不登校のトリートメントの着眼点
アセスメントで得られた情報を統合してトリートメ ントは進められる。基本的な考え方としては、 「不登 校状態を誘発し、持続させている要因の除去または軽 減と登校するという行動パターンの形成を如何に有効 に効率的に進めるかが問題となる」 (小林、 1980)と いえる。
基本的な手順は、 (1)不登校児本人、家庭そして学校 との援助関係の設定、 (2)援助計画の予定表の設定、 (3)
トリートメント内容<1>として体力・学力の増強、
社会的スキル訓練などの基礎的アプローチ、 (4)トリー トメント内容<2>として神経症的不安や再登校行動 のシェービング等の問題解決のための技法が選択され る、 (5)トリートメント<3>その他として登校安定化 の為の介入や再発時の再介入、追跡調査が組み込まれ る(小林、 1980;小林、 1988;小林ら、 1989;小林、
1984)。
3.実践研究
3. 1.学校カウンセリングの実施状況と対象児概要 前述した学校カウンセリングシステムによって平成 12年7月下旬から平成13年10月末までに6名の再登校 を希望する不登校事例への援助を行った。学校カウン セリングの実施の概要をTablelに示す。
対象は、主に実践センターへの適所による再登校の 指導を受けた生徒4名、主に学校長、担任による学校 場面における指導を受けた生徒2名、合計6名であっ
た。適所指導により再登校した事例をTable2、学校 Tablel 学校カウンセリングの実施状況
I H 事 項 内 容
7 月 中 旬
7 月下 旬
9 月初 旬
9 月下 旬
10 月
学 校 か らの 依 頼 学 校 カ ウ ンセ リ ン グ の 依 頼 学 校 長 来学
事 例 A 来 談
(受 諾 ) (実 践 セ ン タ ー)
通 所 に よ る指 導 依 頼 (受 諾 ) (母 親 同 伴 ) (実 践 セ ンタ ー)
事 例 A 登 校 予 定 日登 校 学 校 に お け る 事 例 の 状 況 視 (学 校 訪 問 )
事 例 A 終 結 面 接 ( 本 人 . 察
担 任 へ の 登 校 と適 所 の 併 用 説 明
( A 中 学 校 )
本 人 挨 拶 . 経 過 報 告 と今 後 保 護 者 . 学 校 長 . 担 任 . の留 意 点 等 の打 ち合 わ せ
p ( A 中 学 校 )
B 事 例 別 室 登 校 開 始 保 護 者 へ の 来 談 目 的 の 明 確 化
教 師 へ の 不 登 校 児 . 保 護 者 11 月
12 月初 旬
C 事 例 来 談 面 接 及 び 教 師 へ の コ ン サル テ I シ ヨン
保 護 者 へ の 電 話 に よ る助
と の か か わ り方 . 家 庭 訪 問 の仕 方 の助 言
(実 践 セ ン タ ー 及 び 不 登 校 児 宅 )
子 供 と の約 束 の仕 方 の助 言
計 画 設 定 と今 後 の留 意 点 12 月 中旬
1 月 初 旬
2 月
ト ll'tl ii]
7 月 中 旬 口
T . C 担 任 と の 同 行 家 庭 訪 問 実 施
( B 事 例 段 階 的 登 校 開始) B 事 例 終 結 面 接 (本 人 . 保 護 者 . 校 長 . 担 任 . 再 登 校 を支 援 した 保 護 者 . T )
校 長 . 担 任 に よ る別 室 登
( A 中学 校 )
高 校 合 格 後 の 集 団 生 活 の 必 校 児 へ の面 接 実 施 要 性 に 関 す る説 得 C 、 D 教 室 登 校 達 成 ( A 中学 校 )
E 事 例 コ ンサ ル テ I シ ヨ 本 人、 校 長 、担 任、 保 護 者 、 ン
F 事 例 来 談
T に よ る話 し合 い ( A 中学 校 )
本 人 、 保 護 者 、 T に よ る 話 し合 い
保 護 者 、 本 人 、 T 、 校 長 、 10 月 E 、 F 登 校 安 定
F 終結 面 接 担 任 (A 中 学 校 )
※実践センタ‑主担当教官は、 Tと略す.
Table2 適所指導により再登校した事例の概要(1) (平成12年7月〜平成13年10月末)
香 ロ
午 齢
不 登 校 期 間
不 登 校 の 契 機
セ ッ シ ョ ン数 (再 登 校 ま で
主 な解 決 し '; i:ii堪 予 後
7jA の 期 間) と 方 法
1 13
断 続 的 友 人 関 係 セ ッ シ ョ ン 9 生 活 リ ズ ム の 登 校 継 不 登 校 体 調 不 良 回 . 学 校 訪 問 調 整 ( 自 己 記 続 中
3 ケ月 2 回 . 家 庭 訪
'il l 回 (約 1 ケ月 )
録 法 ) 偏 食 の 改 善 (母 親 によ る調 理 法 の工 夫 )
2 14
不 登 校 教 師 と の セ ッ シ ョ ン 1 主 張 す る こと 、 登 校 継 1 蝣 蝣 蝣 トラ ブル 回 . 家 庭 訪 問
4 回 . 学 校 訪 問 1 回 . 教 師 と の 電 話 相 談 3 回 . 親 と の 電 話相 談 3 回 . 教 師 と の メ I ル 相 談 2 回
(約 2 ケ月 )
約 束 を 守 る こ と、 (行 動 契 約 法 )
基 礎 的 社 会 的 ス キ ル 訓 練 (学 校 場 面 で の ロ I ル プ レイ )
続 中
3 14
不 登 校 給 食 時 の セ ッ シ ョ ン 10 不 安 低 減 (筋 弛 登 校 継 3 ケ月 トラ ブ ル 回
(約 2 ケ月 )
緩 訓 練 ) 生 活 リ ズ ム の 調 整 ( 母 親 へ の 助 言 に よ る 生 活 指 導 )
続 中
4 13
不 登 校 友 人 関 係 セ ッ シ ョ ン12 不 安 低 減 ( 筋 登 校 継
3 ケ月 の ト ラ プ 回 弛 緩 訓 練 ) 続 中
(別 室 登 1 ケ 月 半 )
ノ レ (約 3 ケ月 ) 生 活 習 慣 の 改 善 (生 活 指 導 ) 段 階 的 登 校 ( 自 己記 録 法 . 保 健 室 の 利 用 )
Table3 学校教師の介入により再登校した事例の概 要(平成12年7月〜平成13年10月末)
香 一テ
年 齢
不 登 校
期 間
不 登 校 の 契 機
セ ッ シ ョ ン数 ( 再登 校 ま で
主 な 解 決 しt f!!│勘 予 後 の 期 間 ) と 方 法
1 15
不 登 校 友 人 関 係 学 校 での両 親 . 別 室 登 校 習 慣 中 学 卒 13 ケ月 の不 調 本 人 学 校 長 . の 形 成 ( 保 護 業 時 ま 担 任 と の 話 し 者 によ る説 得 . で 登 模 合 い ( 5 回) 登 校援 助) 継 続 高 担 任 に よ る 家 教 室 で の 授 業 校 に お 庭 訪 問 ( 5 回 ) 参 加 ( 校 長 . い て 予 実 践 セ ン タ ー
機 関 に よ る 担 任 . 保 護 者 電 話 助 言 実 施
(別 室 登 校 2 ケ月 . 教 室 登 校 6 ケ月)
担 任 の 説 得 、 行 事 の 活 用 、 別 室 維 持 要 因
の 除去 )
後 良 好
2 15
不 登 校 友 人 関 係 学 校で の両 親 . 別 室 登 校 習 慣 中 学 卒 4 ケ月 の 不 調 本 人 . 学校 長 . の 形 成 ( 保 護 業 時 ま 担 任 と の 話 し 者 . 担 任 に よ で 登 校 合 い ( 4 回 )
担 任 に よ る 家 庭 訪 問 ( 5 回 ) 実 践 セ ン タ I 機 関 ス タ ッ フ
に よ る 学 校 訪 問 . 担 任 . 煤 護 者 へ の 電 話 助 言
( 別 室 登 校 3 ケ月 . 教 室 登 校 6 ケ月 )
る 説 得 . 登 校 援 助 ) 教 室 で の 授 業 参 加 (学校 長 . 担 任 の 説 得 、 行 事 の 活 用 、 別 室 維 持 要 因
の除 去 )
m a
による取り組みで再登校した事例をTable3にその概 要を示す(保護者掲載了承済、プライバシー保護のた
め簡略化)。その結果、いずれの事例においても再登 校行動の形成に成功し、現在追跡研究中である。
ここでは、これらの事例の中から代表的な事例の援 助経過について報告する。
3. 2.主に学校の取り組みによる再登校援助事例 3. 3.対象:K.男子.15歳(援助開始時、中学3
年生)
3. 4.主訴:不登校。対人関係の悩み。
3. 5.不登校をめぐる情報
(1)不登校前の行動特性:幼少時からKはおとなしく友 人も少ない方であったとのこと。行動傾向として、
何か自分のできないことがあると親の責任にして、
結局自分は何も身につけないということがあるとい う。成績は主要教科は中程度であった。体育が苦手 であった。
(2)不登校の経過:小学校5年生においては年間134日 欠席、 6年生においては、 219日(全欠)不登校で あったとのこと。中学2年11月から学級内の友人関 係の悩みを訴え継続的不登校状態となった。保護者 が登校を催促すると「こんな姿を友達にみせられな
い」といって抵抗し家に閉じこもっていた。母親は、
2カ月に1回の頻度で某専門機関でカウンセリング を受けていたc Table4にKの中学2年時の出欠席 状況をTable5に中学3年時7月までの出欠状況を
示‑i¥‑
Table4 出欠状況(2年生時)
月 4 5 6 7 10 ll 12 1 2 3 出席日数 18 20 23 15 17 23 ll 1 0 0 0 欠席日数 0 1 1 0 4 1 ll 18 17 22 19
Table5 出欠状況(3年生時7月まで)
月 4 5 6 7
出席日数 0 1 1 4 欠席日数 18 20 23 11
(3)全般的症状の変化: Kは、登校時に身体症状を訴え た。学校を休みそのまま家にいると不調は訴えなく
蝣^ss
(4)学校・学習状況をめぐる状況:担任は、継続的不登 校期においてもコンタクトをとることが可能であっ た。少数の友達とかかわりがあった。学習に関して
も進学のために塾で学習をしていた。
(5)家庭内外での行動: Kの家庭には、祖父母が同居し ており家庭に滞留するKに対して注意をするなど緊 張感があった。起床時問は、午前7時であった。
(6)その他:家庭、学校は、 Kの再登校‑の援助に関し
学校カウンセリングによる中学生不登校への再登校支援
て協力的であった。
3. 6.行動アセスメントとしての情報統合
本事例は、不登校に至る発症要因として、対人スキ ル不足による学級内の友人関係の不調が考えられた。
そして、家庭に滞在することによって学校場面におけ る学習理解困難など不快場面が増加し、学校を回避す るようになったと考えられた。
3. 7.援助方針及び援助内容
本事例において、援助方針としては、本質的には、
社会的スキルの増加が重要であると考えられた。しか しながら、話し合いの結果、中学3年生後期という時 期、 K本人が高校進学のための出席日数等、学力を気 にしているという意志を尊重し、段階的な登校しなが らの学習の援助を中心とすることとした。技法として は、不安低減を考慮し現実脱感作法を適用することと した。そして、このKの目標へ家庭と学校が連携しな がら援助するためにTが助言をすることとした。以下
に主な援助・助言内容を記述する。これらの目標は、
Kから申請されたものである。
(1)基本的な援助関係の設定及び計画立案:学校長、担 任、保護者とKによる話し合いで目標を決定し実行 すること。その際、 Kによる目標設定を援助するこ と。また、本人の目標と実際の行動が矛盾する時は、
話し合いを実施し、 Kに気づかせるように援助する か、指導をすること。基本的に月1回話し合いを実 施すること。
(2)学校長、学級担任の役割と援助内容:学校場面にお ける援助責任は学校長であることを基本とした。学 校長は、 Kに必要なことを説得する役割、学級担任 は、 Kの聞き役という役割を試みる。学校における 援助は、以下のことを試みる。 ①Kの不安の低い状 況からの学校場面‑の参加を試みる(職員室、別室、
教室)0 ②学級の友人とも不安の低い状況から機会 を捉えて徐々に慣れさせるように試みる(同級生と の接触、給食時間、掃除時間などの利用)0 ③学校 現場で可能な限りの学習の補強を実施する。 ④教師 のKへのかかわりとして、話を良く聞くこと、個人 内評価を行い、できるようになったことは賞賛する こと。 ⑤高校進学に関することに関して可能な限り 援助すること。
(3)家庭の役割と援助内容:学校に入るまでの援助責任 は家庭であることを基本とした。家庭における援助 内容は、以下のことを試みる。 ①体調管理に関する こと(朝食、帰宅後の入浴等)0 ②通学の援助(壁 校時に不安が強い場合は、車での登校援助)。 ③教 師と同様、 Kへのかかわりとして、話を良く聞くこ と、個人内評価を行い、できるようになったことは 賞賛すること。
(4)Tの役割と援助内容:教師、家庭をサポートする役 割を基本とした。 Kへの前述の手続きが、 Kの不安 の低いものから高いものへ現実脱感作法の手続きど おり実施されるように学校、家庭と連絡を取りなが ら助言する。すなわち、 Kの目標設定が、自分自身 の不安の段階把握していない場合の助言、同時に実 施手続きが不安段階の高い方から実施している場合 への指導、手続き実施の時期の助言を試みる。
3. 6.援助経過
以下にKの登校行動の再形成経過を、その援助内容 から2期に分けて記述する。学校カウンセリング援助 期間は、平成12年9月から平成13年3月までの約7ケ 月間であった。実践センターカウンセリングスタッフ は、主担当者1名であった。
3. 7.第i期(平成12年9月‑平成13年1月)別室 登校期
この時期は、 Kからの主に別室登校の申し出を援助 した。学校場面における面談6回(月1回)、母親面 接1回、 Tから学校、家庭への助言5回であった。以 下、この時期の援助概要を述べる。
中学3年時の7月にKから「高校に進学したい。そ のため期末試験を受けたい」という発言があった。学 校長、担任が意思確認をし、実践センター‑の学校カ ウンセリング事例として依頼した。 7月下旬に母親の み実践センターに来談し面接を実施した。 Kの目的が 明確となった段階であるので達成のために学校側との 話し合いを実施することを勧めた。また、学校側へは、
Kに関するアセスメント情報から援助方針等を連絡し m
9月初旬、中学校においてK本人、保護者、担任、
学校長で第1回面談を実施した。 Kの高校に進学した い意志が再確認された。学校長からこの目標の達成の ためには、高校入試のための学力をっけ、そして出席 日数を増加させることが必要であるとし、その為には、
学校側としては、援助を惜しまないとの話をした。
そこで、学校長から別室登校の提案があり、 Kは了 解した。午前9時30分に別室登校し、別室授業を受け 午前11時30分に下校という計画を立てた。登下校は、
母親が車で送迎した。この後、毎日別室登校した。
Tからの助言として、学校長、担任‑登校ステップ が適切であったこと、同じ課題が長期に渡ると習慣化 するので話し合いを実施して次の課題を設定すること を勧めた。
10月初旬にK本人・保護者・担任・学年主任・学校
長で第2回面談を実施した。 Kが、登校に徐々に慣れ
たところで新しい計画の設定が実施された。学校長か
らKのがんばりを賞賛すると同時に学校滞在時問の拡
大を提案した。 Kは、了解し午前8時40分〜12時30分
の午前中4校時を別室で過ごすことが決定された。中 学校としては、教師の空き時間を活用し全教科指導体 制を確立した。この後、 Kはほぼ毎日登校した。
10月中旬、第3回目の面談が実施され、徐々に登校 に慣れたところで学校内でのKの活動範囲、時間を広 げるように試みた。別室教室の開閉をK自身でする課 題を決定し、職員室に鍵を取りに来るようになった。
また、同学年のMも一緒に別室授業を受けることとなっ m
ll月初旬、 K、保護者、担任、学年主任、学校長と 第4回面談を実施した。学校長、担任からいままでの がんばりを賞賛し、次のステップとして自転車通学ま たは給食ありの1 E]学校で学習のどちらかを選択させ た。 K本人は、自転車通学を選択した。その後、毎日 自転車通学をした。また、別室おいて担任に対して要 求が強くでてくるようになった。学習指導の先生へは、
「先生ちゃんと教えてほしい」、 「プリントもらってい ない」との発言ができるようになった。
12月初旬、 K、保護者、担任、学年主任、学校長と 第5回面談を実施した。学校長から、徐々に学校にな れてきたことから給食と掃除はみんなと一緒にするこ とを提案した。それに対して、 Kは、 「みんなと一緒 にできない。別室であればできる」とのことであった。
そこで、 Kから給食を教室に取りに行き、別室で食べ て6時間目まで学校にいるという課題が提案された。
ほぼこの課題は実行された。
1月初旬、 K本人・保護者・担任・学年主任・学校 長で第6回の面談した。他の生徒に対しての不安が、
Kの学校の様子から低減したと判断された。次のステッ プとして他の生徒と形式的な集まりへの参加を勧める。
学校長から「高校受験するためには学年説明会・受験 を一緒にすることが必要である」等の説得をした。 K 本人も必要性を納得し、説明会に出席することが可能 であった。
3. 8.第IJ期(平成13年2月〜3月末)教室登校期 この時期は、 Kからの教室登校の要請があり、その 目的への援助を実施した。学校における面談2回、 T と学校の連絡3回であった。以下のこの時期の援助内 容の概略を述べる
2月初旬、私立高を受験し合格する。学校長とKの 7回目の話し合いを実施する。教室登校について話し 合う。 Kは、 「どうして別室はだめなのですか」、 「給 食と掃除はみんなと一緒にしなければならないのです か」という拒否にあった。学校長が、高校進学をした 後のことを考えて集団生活の必要性を説明するとKは、
やや納得しプリント類は教室へ取りに行くようになっ た。学級担任も徐々にKができることは本人に任せる ようにした。
Tは、教室内にいても普通に生活できたとの報告を
担任から受けた。そこで、タイミングを見てKの得意 なところから教室登校が可能な段階ではないかと助言
した。
2月15日、夕方からK、保護者、担任、学年主任、
校長で第8回目の面談をした。 Kの目標である高校に 合格し、高校入学後の生活と現在の生活とのギャップ について話し合った。学校長から、 「K君はみんなと 一緒に生活できる力をもっている。これを乗り越えよ う。」と説得した。高校の入試を受験できたことから 期末試験からの教室登校を勧めた。 17時〜22時までは、
自分で努力しないで常に責任を他に押し付けている言 動が見られた。 22時〜23時30分にかけて今まで少しず つ頑張ってきたことをはげましをしながら、目標から 回避しないで準備をして目標を達成することの重要性 を説得した。学校長から「月曜、火曜、水曜の試験を 受験するのが不安であるならば、明E]の土曜日から登 校してなれた方が無理がない。」と説得するとこの案 に納得した。そして、教室にはいる際の入りやすい条 件を話し合った。
2月16日、学級担任がKの入りやすい机の位置(教 室後方の入り口付近)を設定した。教室の雰囲気確認 し学級担任がKの後ろから誘導し教室に入った。別室 にも職員配置した。学級担任から事前に他の同級生に 説明しKが入室と同時に拍手で迎えた。友達が声をか けたりした。無事授業終了まで教室に滞在し笑顔で友 達と一緒に帰宅した。
2月17日、休日に同級生2人と一緒に買い物に半日 行動を共にした。
2月18日(月)、期末試験を全部受験した。休み時 間も教室から出て行かず教室内で友達と話をしていた。
家に帰ると堰を切ったように学校や友達の様子を親に 話したとのことであったO このE]、学校長からTにK が教室に入れたという喜びの報告があった。
以後、卒業式まで継続教室登校した。 Table6に学 校カウンセリング開始後の出欠の状況を示す。
高校進学後も学校長からの情報では登校を継続して いるとのことであった。
Table6 出欠状況(援助開始から3年生時終了まで)
月 10 11 12
出席日数 21 22 21 16 15 18 12 欠席目数 2 1 1 2 3 3 0
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