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<症例報告>第5腰椎および仙骨全摘術を行った仙骨骨巨細胞腫の1例 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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第 5 腰椎および仙骨全摘術を行った仙骨骨巨細胞腫の 1 例

佐 藤 栄 一,前 川 慎 吾,河 野 秀 樹,萩 野 哲 男,

佐 藤 信 隆,市 川 二 郎,浜 田 良 機

山梨大学医学部整形外科教室 要 旨:症例は 39 歳,女性で,当科受診の約 2 ヵ月前から,両殿部から下腿後面への疼痛および しびれ感が出現した。近医を受診し,MRI で仙骨腫瘍が疑われ,当科を紹介受診した。画像所見 から悪性骨腫瘍を疑って生検を行なった。その病理組織学所見では悪性骨腫瘍と診断されたため, 化学療法を行なうが効果ないため,第 5 腰椎・仙骨全摘術後に 2 期的に再建術を行った。手術時間 は両手術で 14 時間 30 分,総出血量は 4,500 g であった。摘出した仙骨骨腫瘍の病理組織所見は骨 巨細胞腫であった。術後 3 年の現在,再発はなく杖なしでの歩行は可能である。 キーワード 骨巨細胞腫,仙骨全摘出術,再建 仙骨に発生した骨巨細胞腫に対して第 5 腰 椎・仙骨全摘術後に 2 期的に再建術を行い,良 好な成績が得られた 1 例を報告する。 症例: 39 歳,女。 主訴:両殿部から下腿後面への疼痛およびし びれ感。 既往歴・家族歴:特記すべきことなし。 現病歴:当科受診の約 2 ヵ月前から,両殿部 から下腿後面への疼痛およびしびれ感が出現。 近医を受診し,MRI で仙骨腫瘍が疑われ,当 科を紹介受診した。 初診時現症:両殿部から下腿後面への疼痛お よび知覚低下のほか仙骨部に圧痛をみた。 画像所見:初診時単純 X 線所見(図 1)では, 骨の破壊像は不明瞭である。しかし MRI(図 2) では第 1, 2 仙骨椎体は T1 強調像では低信号, T2 強調像では高信号と低信号が不均一に存在 し,Gd 造影像では造影効果のある骨破壊像を みた。骨シンチグラムでは第 1, 2 仙骨部のみ異 常集積像をみとめた。さらに血管造影像では腫瘍 濃染像をみとめ,栄養血管は主に両側上殿動脈 であった。以上の臨床,画像所見から悪性骨腫 瘍を疑って生検を施行した。その病理組織学所見 では悪性骨腫瘍(MFH, Giant cell rich

osteosar-coma, Malignant GCT)と診断された(図 3)。 血液検査所見:血液生化学検査では,アルカ リフォスファターゼの軽度上昇と軽度炎症所見 をみたが,その他には明らかな異常はない。 経過:生検で悪性骨腫瘍と診断されたので, CDDP 動注(100 mg/m2)を 3 回施行したが, MRI で病巣には壊死を思わせるような所見を 認めず,第 5 腰椎および仙骨全摘術を計画した。 まず手術前日に上殿動脈の塞栓術を施行して 前・後方アプローチで第 5 腰椎および仙骨切除 術を行った。まず仰臥位で両側傍腹部アプロー チから小骨盤腔を展開,内・外腸骨動静脈分岐 部にて,両側内腸骨動脈を同定,これより分岐 する上殿動静脈を結紮切離した。次いで腫瘍と 直腸,骨盤腔との間をできるかぎり切離した。 ここで術前に切除縁と考えた両仙腸関節および 第 5 腰椎前面に T-saw を設置ののち,腹臥位に 山梨医科学誌 21(4),103 ∼ 107,2006 〒 409-3898 山梨県中央市下河東 1110 受付: 2007 年 1 月 26 日 受理: 2007 年 4 月 13 日

症例報告

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単純 X 線所見

図 1. 仙骨骨破壊像や軟部腫瘤陰影をみない。

MRI 所見

図 2. 第 1, 2 仙骨椎体に T1 強調像で椎体と比較して低信号,T2 強調像で等信号,Gd 造影像で造影される 腫瘤を認め,腫瘤により脊柱管は圧排されている。

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体位を変換,Y 字状皮切を加え,大殿筋を剥離 し外側へ翻転,仙後仙腸靭帯,仙結節靭帯,仙 棘靭帯および梨状筋を切離した。そののち肛門 挙筋を尾骨から切離ののち,仙骨腫瘍と直腸の 間を用手的に剥離,第 5 腰椎の椎弓切除を行っ たのち,脊柱管を結紮・切離した。最後に前方 より設置してあった T-saw で仙腸関節および第 4 および第 5 椎間板を切離し,第 5 腰椎および 仙骨の全摘出を行い,摘出後の死腔には感染予 防のため抗生剤入りのセメントビーズを充填, 創を閉鎖した。切除術後 2 週目より,四肢機能 の回復と脊椎の末梢へ沈下させるため積極的に ベット上で座位をとらせた。初回の手術後 6 週 で感染兆候がないことと全身状態が改善したこ とを確認して,再建術を行った。再建法は両腸 骨に椎弓根スクリューを刺入,これと第 1 から 3 腰椎の椎弓根スクリューをロッドで連結固定 し,次いで両腸骨間を 2 本の仙骨ロッドで架橋 した。さらに 1 本の仙骨ロッドの中央部から第 4 腰椎椎体に 1 本のスクリューを刺入した。さ らに腸骨稜間を架橋するように腸骨と腓骨から 採取した自家骨を移植した(図 4)。手術時間 は両手術で 14 時間 30 分,総出血量は 4,500 g であった。 病理組織所見:摘出した仙骨骨腫瘍の病理組 織所見では多核巨細胞と類円形ないし短紡錘形 の細胞質に類円形の核をもつ単核細胞よりなる 病巣で,細胞異型はほとんどなく,一部に細胞 分裂像をみる骨巨細胞腫と考えられる所見であ った(図 5)。 術後経過:再建術後 8 週から腰椎部固定用硬 性装具を装着し立位訓練,12 週から平行棒内 歩行訓練,15 週から 1 本杖歩行を開始した。 支持歩行は可能であったが,排尿は間欠的自己 導尿,排便はオムツの使用が必要であった。術 後 5 年の現在,再発はなく杖なしでの歩行は可 能で,日常生活動作の障害はほとんどない。 考  察 仙骨腫瘍は臨床症状に乏しいため巨大な状態 で発見されることが多い。その中で発生頻度が 高い腫瘍は,脊索腫と軟骨肉腫であるが,骨肉 腫,骨巨細胞腫,転移性骨腫瘍も発生する。仙 骨腫瘍のうち骨巨細胞腫の占める割合は 10 % であり1),また骨巨細胞腫のうち仙骨発生頻度 は 4 ∼ 8 %と報告2)されている。 仙骨骨巨細胞腫は良性骨腫瘍であるが,比較 的局所浸潤性の強い腫瘍であり,手術療法の適 応となる。手術方法は一般的には病巣内掻爬術 105 骨巨細胞腫に対する仙骨全摘術 病理組織学的所見(生検時) 図 3. 多核巨細胞に,明瞭な核小体をもつ単核細胞をみる。また核分裂像や腫瘍内に好酸性物質の沈着を認 める。

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である。しかし神経組織が近接しているため, 完全な掻爬が困難な場合も多く,再発率は四肢 発生例よりも高い。そこで補助療法として放射 線治療や手術時にフェノールまたは液体窒素を 併用する方法がある。 今回行なった仙骨全摘出術の適応3)は骨巨 細胞腫,比較的悪性度の低い脊索腫や軟骨肉腫 で本法以外では切除が不完全となる場合,さら に悪性度の強い骨肉腫やユーイング肉腫などで は,周囲の組織,特に坐骨神経や総腸骨動脈に 単純 X 線所見(二期的手術後 2 ヵ月) 図 4. 再建法は両腸骨にスクリューを刺入,これと第 1 から 3 腰椎の椎弓根スクリューをロッドで連結固定, さらに腸骨間を前方と後方の 2 本の仙骨ロッドで架橋し,前方ロッドから第 4 腰椎椎体にスクリュー を刺入した。 病理組織学的所見(仙骨全摘後) 図 5. 多核巨細胞と単核細胞をみる。好酸性に染まる物質は類骨と考えられるが,骨芽細胞の縁取りがみら れ反応性と考えられ,骨巨細胞腫と診断した。

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浸潤していない場合である。 仙骨腫瘍に対する仙骨全摘術とその後の再建 は,現在においても最も困難な手術の 1 つであ る。それは仙骨全摘術後の再建には力学的に腰 椎と両仙骨間には矢状面での回旋力,垂直方向 へのせん断力などの強い応力が加わるので,こ れに耐えうる内固定材の使用と骨への強固な固 定が要求される。Sacral bar を第 5 腰椎椎体に 貫通して固定する方法4)や最近ではカスタム メイドの人工仙骨を用いた方法が報告されてい るが5),いまだ良好かつ安定した結果を得るに 至っていない。それは腰椎・骨盤間の回旋力に 対しては今までの報告でも対処可能であるが, せん断力に対しては対処していないことによる と考えた。そこでわれわれは腰椎・骨盤間の回 旋力に対しては,従来法に準じて第 4 腰椎と両 仙骨間にロッドを刺入することにより,せん断 力に対しては仙骨間ロッドから第 4 腰椎にスク リューを刺入するという新しい工夫により,支 持性を獲得できたと考えている。 仙骨全摘と再建を一期的に行うか二期的に行 うかに関しては今も意見の一致をみない6,7)。わ れわれが 2 期的手術を選択したのは,2 回に手術 を分けることで,1 回の手術での侵襲や感染の リスクの軽減が可能なこと,脊椎を自然に低下 させることにより腸骨と下位腰椎の固定が容易 になること,また切除例では肛門周囲部を切除す るため,同時に内固定材を使用することで感染 の危険性が高くなると考えて5),切除術と大き な異物を用いる再建術とを別の時期に行った。 仙骨全摘出後の主な神経脱落症状は,下肢の 運動,排尿,排便,性機能である。一般には安 定歩行は両側 S2 神経以上の温存,排尿,排便 および性機能は両側 S3 神経以上の温存が必要 である8)。本術式には術後に極めて大きな影響 を及ぼすため,術前に患者や家族への十分な説 明が必要である。 本症の生命予後は良好であるが,肺転移をお こすこともあり,臨床経過は注意深く観察する 必要がある。 文  献 1) 日本整形外科学会骨軟部腫瘍委員会:全国骨腫 瘍患者登録一覧表(平成 14 年度),国立がんセ ンター,東京: 42, 2002. 2) 久田原郁夫,内田淳正:骨巨細胞腫.黒川高秀, 富田勝郎編.腫瘍.中山書店,東京: 211–214, 1995. 3) 沢口 毅,富田勝郎:仙骨(仙骨高位切除術, 仙骨全摘術).黒川高秀,富田勝郎編.腫瘍. 中山書店,東京: 188–194, 1995. 4) 四方實彦,琴浦良彦,三河義弘ほか:仙骨原発 性腫瘍に対する仙骨全摘術と再建術.整形外科 38: 761–770, 1987. 5) 松本守雄,千葉一裕,丸岩博文ほか:仙骨全摘 術 2 期的再建を行った脊索腫の 2 例.脊椎・脊 髄神経手術手技 4: 104–106, 2002. 6) 司馬立,大田康人,曽雌茂ほか:仙骨全切除後 の再建術.臨整外 29: 651–657, 1994.

7) Wuisman P, Lieshout O, Dijk M, et al : Recon-struction after total en bloc sacrectomy for os-teosarcoma using a custom-made prostesis: A technical note. Spine 26: 431–439, 2001. 8) 藤村祥一:仙骨部腫瘍に対する全摘出術後の神

経機能.脊椎脊髄 8: 353–360, 1995.

107 骨巨細胞腫に対する仙骨全摘術

A Giant Tumor of Bone of Sacrum and Fifth Vertebra; A Case

Eiichi SATO, Shingo MAEKAWA, Hideki KONO, Testuo HAGINO, Nobutaka SATO, Jiro ICHIKAWA, and Yoshiki HAMADA

Dept. of Orthop. Surg.,Yamanashi University, Yamanashi 409-3821

Abstract: Total sacral resection including subsequent reconstruction may be one of the difficult surgical procedures. We reported our surgical procedure of En block resection with wide surgical margin and reconstructive strategy. For obtaining successful results, it is essential to avoid the postoperative infection and achieve good stability. We recom-mend two staged operation for huge tumor located on sacral region.

参照

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