Osaka Gakuin University Repository
Title
走速度変化に伴う下肢筋活動の変化:ランニングとスプ リントの比較による肉離れ発症要因の検討
Changes in the lower limb muscle activity with increased running velocity : Investigations of cause of sprain.
Author(s) 松尾 信之介・大山 卞 圭悟(Shinnosuke Matsuo・Keigo Ohyama Byun)
Citation 大阪学院大学 人文自然論叢(THE BULLETIN OF THE CULTURAL AND NATURAL SCIENCES IN OSAKA GAKUIN UNIVERSITY),64:31-40
Issue Date 2012.03.30 Resource Type Article/ 論説 Resource Version
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フ 大阪学院大学 人文 自然論叢 <論 説
>
第64号 2012年 3月走速度変化に伴う下肢筋活動の変化
:ンニングとスプリントの比較による肉離れ発症要因の検討
松 尾
信 之介
・
大 山
本
圭悟
"
Changes
in
the
lower
limb
muscle
activity with
increased
running
velocity
:
Investigations
of
cause
of
sprain.
Shinnosuke
Matsuo'', Keigo Ohyama
Byun''
概 要 陸上競技短距離競技者 における傷害では、スプ リン ト時の肉離れ受傷が多 く報告 されて いる。最大速度走であるスプ リン トにおいて、特有の筋活動パ ター ンが認め られる筋や特 異的に動員が増大する筋 は、スプ リン トにおける肉離れ受傷 と関係が深 い と考 え られ る。 よって本研究では最大下速度 と最大速度での筋活動量、活動の タイ ミングの違いを明 らか に し、肉離れの原因や予防、トレーニ ングヘの示唆 を検討することを日的 とした。
4名
の 短距離競技 者 (100m自 己記録1058± 0.26sec)を 対象 と し、 ラ ンニ ング(6-8耐
s)、 ス プ リン ト (91n/s以 上)の
各一試技 を、高速度 カメラ撮影 と股関節周囲9筋
の表面筋電 図 により分析 を行 った。その結果、全被験者の平均走速度はランニ ングが728±042111/s、 ス プ リン トが958±034111/sであった。筋活動 の最大値が ラ ンニ ングか らスプ リン トで増大 したのは、支持期では大腿二頭筋、遊脚期では大腿直筋、大腿二頭筋、大内転筋であった。 顕著 な活動の増大がみ られた大腿二頭筋や大腿直筋 は、短距離競技者 において肉離 れの受 傷頻度の高い筋 として知 られている。 また大内転筋 はハムス トリングスの補助作用 を担 う ことが指摘 されてお り、 これ ら走速度の影響 を強 く受 ける筋の トレーニ ングや コンデ ィシ ョニ ングは、傷害予防や走能力向上の観点か ら、特 に重要であると考 える。1)大
阪学 院大学2)筑
波大学大学 院人間総合科学研 究科Osaka Gakuin University
Graduate School of Comprehensive Human Science, University ofTsukuba
J.t
-【
背景と目的】
走動作 中の筋活動 はこれ まで も多 く研究 されているが1)2)、 最大走速度下のみでの研 究 が多 く、 またリト腹筋、大腿二頭筋、大腿直筋、大殿筋等 といった下腿、大腿、殿部の代 表 的な筋のみの評価が多い。 陸上競技短距離競技者の傷害 に関する研究では、武 田3)は肉離れが最 も多 く、中で もハ ムス トリングス、大腿直筋、内転筋の順に傷害が多いことを報告 している。 この肉離れ と は、明 らか な外力の加 わ らない 自家筋力による筋損傷 を示す4)。 奥脇・)は受傷頻度の高 い ハムス トリングスの中で も、外側線維は支持期に、内側線維は遊脚期後半の振 り出 しで損 傷が多い ことを報告 してお り、向井5)は肉離れ受傷が半腱様筋 よ りも大腿二頭筋や半膜様 筋に多い と指摘 している。短距離競技者にとっては、受傷頻度の高い肉離れであるが、走 動作 中の筋活動量や タイ ミングとの関係 について検討 した研究は見当た らない。 また トレーニ ングや受傷後の リハ ビリテー ションにおいて適切 な走速度 を選択す ること は、パ フオーマ ンス向上のためのみならず、傷害予防の観点で も重要 な要素 となる。 リハ ビリテー シ ョン後期の競技復帰局面 においては、全力疾走の7∼ 8割
程度の速度か ら始め ることが教示 されている6)が、最大下速度 と最大速度での筋活動の違いを詳細 に検討 した 研究は少ない7)。 そ こで本研究では、股関節周囲の筋について、最大下速度 と最大速度での活動量、活動 の タイ ミングの違 いを明 らかに し、走速度上昇 によ り変化する活動の タイ ミングと、肉離 れ受傷頻度の高い筋における代表的な受傷局面 との関係性 について検討す ることを目的 と す る。【
方法】
1.実
験 とデ ータ処理 大学陸上競技部 に所属 し短距離走 を専 門とする男性4名
(ЪЫel)を
被験者 とし、 ラ ン ニ ング(6-8耐
s)と
スプ リン ト(9111/s―)の
各1試
技 を2台
の高速度 カメラ (CAS10, 丁able l 被験者の身体的特徴 と100m自己記録subject height(cm) weight(kg1 100m best
01
02
03
04
167.8 170.4 179.3 162.160.2 10.46
68.6 10.46
74.0 10.42
62.1 10.97
mean S.D. 169.9 7.16 66.2 6.31 10.58 0.26走速度変化に伴 う下肢筋活動の変化: ランニングとスプリントの比較による肉離れ発症要因の検討 EX―Fl,300Hz、 露出時 間l ms)を 用いて、それぞれの動作 につ いて
3次
元撮影 を行 った。 実験 で得 られた右側方 と正面の試技、お よび実空 間座標が既知 の コ ン トロールポイ ン ト 189点のVTR画
像 に関 して、動作解析 システ ムFramc DIAS Ⅱ(DKH社
製)を
用 いて毎 秒150フ レームにて手動 デジ タイズを行い、身体分析点両下肢6点
(股関節 中心、膝 関節 中心、足関節 中心、各左右)お
よびコン トロールポイン トの2次
元座標値 を得 た。得 られ た座標値か らカメラごとにDLT定
数 を算 出 し、3次
元DLT法
8)を 用いて各身体分析点の3次
元座標値 を算 出 した。3次
元座標系 は疾 走方 向 をY軸
、それに水平 に直交す る方 向 をx軸
、垂直方向をz軸
とす る右手系静止座標系 を定義 した。算出 した三次元位置座標 の標準誤差 は、x軸
:0.003m、Y軸
:0008m、Z軸
:0004mで
あった。座標系 の原点 を 走方向に向か って左下手前 に設定 し、30mの
助走 区間に続 く6mを
分析対 象区間 とした。 実験試技実施時の機材配置 と座標空間をFig lに示 した。 さらに3次
元 における身体各部 の座標値 についてデジタイズの誤差 を除去す るため残差分析法 によって決定 された最適遮断周波数
(59-11.9Hz)を
用い、位相ずれのない4次
のButtcⅣo■h dighJ nherで 平滑化した9'。 筋活動電位 は導 出部が直径
4mmの
Ag―AgCI表
面電極 を用い表面双極導 出法 に よ り導 出 した。電極 間の距離 は1 5cmと し、各筋の最大膨隆部 を避 けて両面粘着 カラーによって 筋束の走行 に沿 って貼付 した。電極貼付 に先立 ち、抵抗 を減 らし粘着 をよ くす るため、周 囲の剃毛お よびアルコールによる脱脂 を施 した うえで、電極接触部分の表皮の ご く一部 を 針 によって剥離 した。被験筋 は以下の9筋
で、全て右側 を用いた。1大
殿筋 (Gmax)、 2.中殿 筋 (Gmcd)、 3.大 腿筋膜張 筋 (TFL)、4大
腿 直筋 (RF)、5大
腿二頭 筋 長頭 (BF)、6半
腱 様筋 (ST)、 7.長 内転 筋 (AL)、 8.大 内転 筋 (AM)、 9.薄筋 (GR)。 導 出された電位 はマ ルチ テ レメー タシス テム (日本光 電、WEB-5000)を
用 い増 幅 し (時定数0 03sec)、 サ ンプ リング周波数1000Hzで
A/D変
換 後、 パ ー ソナ ル コ ンピュー タ (Apple,Macintosh 7200/66AV)に 取 り込んだ。動作 の計測 と筋電 図の計測 を同期す るため□ 国
「就
―
Fig.1 実験試技実施時の機材配置 と座標空間ヂ
H
s
v
Z:2.Om
20m
―- 33 -―プ
1計
b
hip angle
Fig.2 股関節の関節角度定義
に、 カメラの画角内に写 しこんだ
LEDの
発光 と同期 した電気信号 を、筋活動電位 と共 に 取 り込んだ。取 り込 まれた筋活動電位は、 アーチ ファク ト成分 をハ イパスフィルタで除去 した後、全波整流 し、遮断周波数15Hzの4次
の位相ずれのないButtcrwo■ h digitJ■ lterに て包絡線 を得た。 なおハ イパス フィルタは、デー タを遮断周波数10Hzで
4次
の位相ず れ の ないButtcrwonh digitd ilterに 通過 させ、得 られたデー タを原信号か ら差 し引 きす る方 法 を用いた。その後、等尺性随意最大収縮(MVC)時
の筋活動の最大値 を100%と
して活 動量 を規格化 した。 なお本研究は筑波大学人間総合科学研究科倫理委員会の承認 を得て行った。2.関
節角度定義 股 関節 の屈 曲伸展角度は、右股 関節中心 と右膝関節 中心 を結ぶ線分 を 子z平
面 に投 影 後、右股関節中心 と右膝関節中心 を結ぶ線分 と地面に対 して垂直な線分 とが成す角 を右股 関節屈曲 。伸展角度 とし、屈曲方向を正、伸展方向を負 とした。膝関節の屈曲伸展角度 は、 右股関節中心 と右膝関節中心 を結ぶ線分 と、右膝関節中心 と右足関節中心 を結ぶ線分 とが ΥZ平
面投影上で成す角 とした (Fig 2)。3.局
面定義 本研究では1サイクル(2歩
)に
ついて疾走局面 を以下の通 り定義 した。矢状面内にお いて接地瞬間か ら接地側大腿が地面 と垂直になるまでを支持期前半、大腿が地面 と垂直 に なった時点か ら離地 までを支持期後半、離地か ら同側大腿が地面 と垂直になるまでを遊脚 期前半、大腿が地面 と垂直になった時点か ら接地瞬間 までを遊脚期後半 とした。【
結果】
全 被験 者 の平 均 走 速 度 はス プ リ ン トが9.58± 034m/s、 ラ ンニ ングが7.28±0.42耐sであ った (Table 2)。 支 持期 、遊脚期 の それ ぞれ につ いて、全 被験 者 の平均 筋活動量 をFig 3、 Fig 4に示 した。走速 度変化 に伴 う下肢 筋活動 の変化:
ラ ンニ ング とス プ リン トの比較 に よる肉離 れ発症要 因の検討 丁
ab!e2
各試技 の走 速度 (m/s)subject running sprint
0102
03
04
7.46 6.67 7.63 7.35 9.62 9.52 10.00 9.17 mean S,D. 7.28 0.42 9.58 0.34 (%NIvC) 600Gmax Gmed TF RF BF ST AL AM
Fig.3 支 持 期 に お け る各 筋 の 平 均 筋 活 動Gmax Gmed TF RF BF ST AL AM
Fig.4 遊脚期 における各筋 の平均筋活動 ―- 35 -―支持 期 にお いて大幅 に活動 が増 大 したの は大腿二頭 筋 で あ った。遊 脚期 にお い て活動 が 大 幅 に増大 したの は大腿 直筋 、大腿 二頭 筋 、大 内転 筋 で あ った。最 大 活動 量 に顕著 な変 化 の あ った筋 につ い て、股 関節 角 度変 化 に対 す る筋活 動 の 変化 の典 型 例 をFig.5に、 股 関節 角 度 変化 に対 す る膝 関節 角 度 変 化 の典 型例 をFig 6に示 した。 なお典 型 例 と して掲 載 した 結 果 は全 て同一被験 者 で あ る。
-30 0 30 60 (deg) -30 0 30 60 (deg)
hip extension ―hip flexion hip extension
― hip flexion ▼ :support o:flight runnlng sprrnt Fig.5 股関節角度変化 に対する筋活動の変化 (典型例 :被 験者02) 上 :大 腿 直筋 中 :大 腿 二頭筋 下 :大 内転筋 knee extensron I。 蝙
60
(deg) (deg)hipextension
€
hipflexion
hipextension― hip flexion ▼ :support 。 :flight runnlng sprint Fig 6 股関節角度変化 に対する膝関節角度変化 (典型例 :被 験者02) (%NIVC) (%NIVC)
走速度変化に伴 う下肢筋活動の変化 : ランニ ングとスプリン トの比較 による肉離れ発症要因の検討 大腿直筋 は ラ ンニ ングにお いて弱 い活動 を示 すのみで あ ったが 、 スプ リ ン トにお いて は 離 地直後 に大 き く活動 が増 大 した。大腿 二頭 筋 は ラ ンニ ング、 ス プ リ ン トと もに遊脚 期後 半 と支持 期前 半 で二 峰性 の活動 様 態 を示 し、走速 度上 昇 とと もにその最大値 が増 大 した。 大 内転筋 は ラ ンニ ング、 スプ リン トともに接 地瞬 間 に大 きな活動 を示 したが 、 スプ リン ト で は ラ ンニ ング時 に大 きな活動 がみ られ なか った遊脚期 後半 と支持 期後半 で の活動 が大 き く増大 した。
【
考察】
本研究で得 られた ラ ンニ ング、 スプ リン ト各試技 の走速 度 は、9.58± 0.34耐 sと7.28土 0.42″sで あ り、阿江 らnが
定義 した走速度の区分 と類似 している ことか ら、最大走速度 としてのスプ リン トと、練習現場 において流 しや快調走 と言 われる最大下速度の ランニ ン グを代表 した ものであると考 え られる。1.股
関節進展局面 本研究では大腿二頭筋は接地の直前 と直後 に二峰性 の活動増大 を示 してお り、走速度上 昇による活動期の違いはみ られないが、活動量 は大 きく増大 した。大腿二頭筋の接地前後 の活動は、奥脇1'が指摘す るハムス トリングス肉離れ受傷 の多い タイ ミングと一致す る。 また同一の局面において大内転筋の活動 も大幅に増大 した。大腿二頭筋長頭 は起始 を坐骨 結節、停止 を緋骨頭 に もち、坐骨神経 に支配 される。大内転筋 は横行部 と垂直部 に分け ら れ、起始は ともに坐骨結節周囲であるが、停止 は横行部が大腿骨後面、垂直部が大腿骨内 佃1顆顆上線 で、閉鎖神経 と坐骨神経 にそれぞれ支配 されるH'。 本研究での表面電極の貼付 位置は大内転筋の垂直方向の線維 に該当 し、走行方向や神経支配は大腿二頭筋 と同様であ る。大内転筋の垂直部はハムス トリングス と同様の働 きをす ることが指摘 されてお り・ 、 横行部を内転筋部、垂直部 をハムス トリング部 と区分 している もの もあるH'。 大内転筋が ハムス トリングスの補助的作用 を担 う可能性がある7)こ とか らも、走速度上昇 に貢献が大 きな大腿二頭筋 と大内転筋の股関節伸展運動 に関す る重要性が高いことが明 らかである。 これ ら二つの筋 はともに股関節進展 に重要であ り、同一の神経 に支配 されるに も関わ らず、 傷害の頻度は大 きく異 なる。大内転筋が単関節筋であることに対 し、大腿二頭筋 は股関節 と膝関節 を跨 ぐ二関節筋であ り、股関節 だけでな く膝関節角度変化の影響 も大 きく受 ける ことがその背景 にあると考 える。半腱様筋 は大腿二頭筋 同様、ハムス トリングスの構成筋 であるが、ランニ ング、スプ リン トで活動量変化 は個人差が大 きかった。半腱様筋の肉離 れ受傷は大腿二頭筋や半膜様筋 に比べ少 な く5)、 内側ハムス トリングス受傷 は遊脚後期の 下腿振 り出 し時 に多い ことが指摘 されている4)。 このことか ら半腱様筋の役割 は、半膜様 筋が膝関節の伸展 を制限す る際に走速度に関わ らず補助的に作用す ることであると考 え ら れる。半膜様筋が走速度変化 によって活動 に変化が現れるかは本研究か ら明 らかではない ―- 37 -―が、飯干 ら
Dは
肉離れ受傷経験者は接地位置が前方に遠いことを報告 していることか ら、 本研究で顕著 に活動が増大 した大内転筋が、股関節最大屈 曲位 を最大活動量 とし股関節伸 展動作 に作用することによ り、接地位置 を近付 け、内側ハムス トリングスの負担 を軽減で きる可能性が考え られる。2.股
関節屈曲局面 遊脚期 において活動が増大 した筋の うち、大腿直筋は遊脚前期である股関節屈曲局面 に おいて唯一大幅に活動が増大 した。 ランニ ングとスプ リン トの大腿直筋の活動 を比較す る と、股関節最大屈 曲位か ら支持期 を経て、離地 まではどち らの走速度で も接地瞬間前後 に 若干 の活動がみ られたのみである。 この活動 は接地瞬間に発揮 される膝関節伸展 トル クD
を生 じさせ るため、大腿四頭筋 として膝伸展 に作用 していると考え られる。一方離地直後 は、 ランニ ング時 には活動がみ られなかったが、スプリン トでは急激な活動の増大 を認め た。大腿直筋は骨盤の下前腸骨棘か ら起始 し、膝蓋骨 を経て胆骨前面である腫骨粗面 に停 止 し、大腿神経の支配 をうける二関節筋であ りH)、 代表的な股関節屈筋である。離地直後 は、仲張性の収縮 を示 し1)、 ランニ ングか らスプ リン トヘの走速度上昇 によって急激 に屈 曲 トルクが増大す るЮ)。 離地後は、股関節が伸展 した後屈曲 し始めるが、膝関節 は離地直 後か ら屈 曲 し始める (Fig 6)。 離地直後の股関節伸展、膝関節屈曲時の活動 による伸張性 収縮 により、急激 な筋活動の増大が大腿直筋の肉離れに大 きく影響 していると考 えられる。 受傷後の最大走速度導入 には特 に注意が必要であ り、最大下速度では活動がみ られない こ とか ら、最大走速度導入前 に大腿直筋の活動 を生 じさせ る運動 を予め行 う必要がある。例 えば前後に大 きく脚 を開いたランジ姿勢での ジャンプ動作や後方への移動 を伴 うバ ックラ ンジなどを行 うことによ り、最大走速度を行わず に大腿直筋の伸張性の活動 を生 じさせ、 スプ リン ト時 に急激 に大腿直筋が活動することを避けることがで きると考 え られる。3.現
場への示唆 肉離れの受傷肢位推定、再受傷 リスクの タイ ミング、 リハ ビリテーシ ョンプロ トコルの 設定において、 ランニ ング、スプリン ト中の筋活動 を知 ることは有益である と考 える。特 に走速度上昇 による筋活動の変化 を知ることは、短距離競技者の肉離れ リハ ビリテー シ ョ ンプロ トコルにおいて、最 も再受傷 に対 して慎重であるべ き最大走速度獲得過程での リス クを低減 させ ることに大いに役立つ と考える。走速度上昇によって顕著 に活動が増大す る 筋 は、 リハ ビリテー シ ョン過程が順調であって も、最終的な競技復帰過程において急 な筋 活動の増大がお こることか ら、出現 した関節運動の タイ ミングによっては受傷 リスクが高 まる局面が発生す る可能性がある。特 に大腿二頭筋や大腿直筋は肉離れ受傷が多いことが 既 に知 られているが、その理 由 として二関節筋であるとい う構造的な要因に加 えて、走速 度上昇 による急激 な活動増大が関わっていると考 えられる。 リハ ビリテー シ ョン後期 には、走速度変化 に伴 う下肢筋活動の変化 : ランニ ングとスプ リン トの比較 による肉離れ発症要因の検討 よ り走運動 に類似 した運動 に よって トレー ニ ングや リハ ビ リテー シ ョンが行 われ るべ きで あ る こ とは明 白だが6)、 運 動形態 だけで な く、走速 度や下肢 の往 復 速度 の上昇 を効果 的 に 獲得 で きる運動 を考 える必要が あ る。牽引走 や坂 下 り走 の ようなア システ ッ ド トレー ニ ン グは低努力度で走速度 を上昇 させ るこ とが可 能 であ る。 また ゴムバ ーや ミニハ ー ドル を用 い て強制 的 にス トライ ドを短 くす るこ とに よ リピ ッチが上昇 し、走速度が高 くな くて も股 関節 の角速度 を大 き くす る こ とで、 スプ リン ト時 の筋 活動 に近づ けて発揮 で きる可能性 が あ る。 一方高速走行時に活動が顕著 に増大する筋以外 は、 ランニ ングの速度で も同様の筋活動 を示 している。最大下速度において最大速度 と同様の筋活動が認め られる筋 につ いては、 走速度上昇 に伴 って増大す る股関節 トルクに直接 的には関わ らない可能性がある と考 え ら れる。 しか し、最大下速度で も最大速度 と同様の筋活動が現 れていることか ら、特 に半腱 様筋のような二関節筋は関節の動 きに伴 う受動的な張力増大の影響 によ り、走速度が高 く ないにも関わ らず肉離れを受傷す る可能性 はタト除で きない。 また長内転筋や中殿筋の よう に走速度による影響 を受けず、 ランニ ング時か ら高い活動がみ られる筋 については、外傷 リスクは少な くとも、低速走行時か らの高い筋活動 によ り疲労 の蓄積や慢性傷害 には注意 が必要である。例 えば長内転筋 は大腿直筋 の補助作用 を担 う可能性が指摘 して されてい る7)が、長内転筋付着部である恥骨枝付近 はいわゆ る grOin pdnの 好発部位 で もあ るい。 低速走行時か ら活動がみ られる筋は肢位の保持や主働筋の補助 を担 っている可能性が高 く、 これ らの筋の疲労除去や柔軟性獲得は慢性障害 を軽減 させ る他、大腿二頭筋や大腿直筋の 肉離れ受傷 リスクを間接的に低減 させ る可能性がある と考え られる。 トレーニ ングや リハ ビリテー ションにおける走速度選択 は肉離れ受傷 ・再受傷 を防 ぐ重 要 な要素であ り、走速度の影響 を受ける筋であるか否かの区別は、 コンデ ィシ ョニ ングの 観点か らも重要である と考 える。 【参考文献】
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